ゲスト
(ka0000)
【闘祭】モト・リゼリオ、GOGO!
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/29 22:00
- 完成日
- 2016/07/12 16:30
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
冒険都市リゼリオの街は賑やかで活気にあふれている。
大通りには人が多く、立ち並ぶ商店に出入りする人や呼び込みの声も響く。
ざわめきや幸せそうな笑い声は絶えることなく、荷馬車が急ぎ魔導トラックがゴトゴト通り過ぎる。
ただ、中心から外れた住宅街は閑静なものだ。
その辺りは人口密集地でもあり二階建て三階建てのアパートメントが立ち並ぶ。その隙間に大小の通りが入り組むさまは峡谷の秘境のよう。
小鳥が舞い降り石畳の道で何かをついばみ、端に置かれた樽の上では野良猫が口を開けて大あくび。道行く人ものんびりと。買い物帰りで長いパンを抱えた主婦たちは知った顔を見つけては取り留めのない雑談に花を咲かせる。
「聞きました? 最強決定戦ですって」
「ええ。ハンターさんたちが張り切ってらっしゃいますね」
「そうそう。でも何を勘違いしたかウチの旦那も『本気を出せば俺だって』とか……」
「ええ~っ。ウチもそう。『ついに俺の時代が来た!』とか言い出してお玉と鍋で武装しだしたり……」
「まあ、お宅も? ウチの旦那なんか『十人のハンターを相手に腹を抱えてもんどり打たせてやったこともあるんだぜ』とか……」
「あら、お宅の旦那さんは元お笑い芸人というかコメディアンでしたはず……」
いい歳してねぇとか、お料理できないからサラダだけにしてやったわとか、それただ単に抱腹絶倒ということですわよねとか。
男の老人たちはそんな主婦たちから離れた樽に腰掛け決して近寄ることはない。とばっちりを受けてしまわないよう、必ずある程度離れるようにしているのだ。
ご覧のように住宅街では主婦たちが圧倒的な権力を持っている。
ただし!
――ぶろん……ぱぴらぱぴらぱぴら……。
「いやっほぅ!」
突然の爆音。
イっちゃってるような奇声。
そんな暴力的な騒音が近寄って来る!
――ばぅん……。
「ひゃっ、はー! このあたりはサイコーだぜ」
「おお。馬車も通らんし魔導トラックも来ねぇ。ここでレースでもしたら気持ちEよなっ」
魔導バイクに乗った輩の登場だ。
「こりゃ、お前たちっ!」
この傍若無人な振る舞いに、主婦らと距離を取っていた老人たちが立ち上がった。主婦らはそそくさと身を引いて遠巻きにジト目で様子をうかがっている。
「なんだ、ジィさん」
「ここらで騒ぐんじゃない。赤子も寝とるし迷惑じゃ。……ハンターオフィスなんかで聞いとらんか? 住宅街では騒音に気を付けろと!」
「知らねぇなぁ」
「俺っちらがどこ走ろうが勝手じゃねぇかよ!」
――ばるんばるん!
ライダーたちは嫌がらせのようにエンジンを空噴かしする。
その時だった!
――どぅん……。
「おっと、そこまでだ」
赤いバイクがぐわんとジャンプしライダーたちの頭上を越えて着地した。きききっ、と背後で新たに何台か停車する音も響く。
「これで囲んだぜ、暴走族さんよ。『兵は神速でカッ飛ぶ』。マッハ・リーとその仲間たちから逃げられると思うなよ?」
「くっ……畜生、ここに逃げりゃ巻けると思ったのによぅ」
どうやらマッハ・リーがこいつらを追っていたらしい。無事に捕縛し任務完了だ。
「おお、ありがとうのぅ」
「……なあ。いい加減、バイクを認めてくれねぇかな」
感謝する老人にマッハが優しく声を掛けた。
「この地域がバイクの乗り入れを嫌うことは分かってるんだが、だからこそああいう輩がここを狙う。通り抜けるくらい認めてくんねぇか?」
老人、ちらと背後にいる主婦たちを見た。少しばつが悪そうでもある。
「……わしらがええという日時ならいくら走ってもろうても構わんよ。バイク乗りはいつだって、突然やって来ては騒音だけ残していく。日時が分かりゃ、赤子を抱いて中心部に買い物に行って留守にしとくとかできるわい」
「そうか……じゃ、それで手を打つようバイク乗りに相談してみるかなぁ」
マッハ、それだけ言って引いた。
時に、町は闘祭で盛り上がっている。
「そんじゃバイクレースでスピードキングを決めようじゃねぇか」
そんな話がバイク仲間で持ち上がる。
日時を決めたレースなので、住宅街の住民も条件を飲んだ。これをきっかけに良好な関係を築きたいようだ。
というか、活気が全くないのも寂しいのだ。
そんなこんなで、モト・リゼリオの開催である。
大通りには人が多く、立ち並ぶ商店に出入りする人や呼び込みの声も響く。
ざわめきや幸せそうな笑い声は絶えることなく、荷馬車が急ぎ魔導トラックがゴトゴト通り過ぎる。
ただ、中心から外れた住宅街は閑静なものだ。
その辺りは人口密集地でもあり二階建て三階建てのアパートメントが立ち並ぶ。その隙間に大小の通りが入り組むさまは峡谷の秘境のよう。
小鳥が舞い降り石畳の道で何かをついばみ、端に置かれた樽の上では野良猫が口を開けて大あくび。道行く人ものんびりと。買い物帰りで長いパンを抱えた主婦たちは知った顔を見つけては取り留めのない雑談に花を咲かせる。
「聞きました? 最強決定戦ですって」
「ええ。ハンターさんたちが張り切ってらっしゃいますね」
「そうそう。でも何を勘違いしたかウチの旦那も『本気を出せば俺だって』とか……」
「ええ~っ。ウチもそう。『ついに俺の時代が来た!』とか言い出してお玉と鍋で武装しだしたり……」
「まあ、お宅も? ウチの旦那なんか『十人のハンターを相手に腹を抱えてもんどり打たせてやったこともあるんだぜ』とか……」
「あら、お宅の旦那さんは元お笑い芸人というかコメディアンでしたはず……」
いい歳してねぇとか、お料理できないからサラダだけにしてやったわとか、それただ単に抱腹絶倒ということですわよねとか。
男の老人たちはそんな主婦たちから離れた樽に腰掛け決して近寄ることはない。とばっちりを受けてしまわないよう、必ずある程度離れるようにしているのだ。
ご覧のように住宅街では主婦たちが圧倒的な権力を持っている。
ただし!
――ぶろん……ぱぴらぱぴらぱぴら……。
「いやっほぅ!」
突然の爆音。
イっちゃってるような奇声。
そんな暴力的な騒音が近寄って来る!
――ばぅん……。
「ひゃっ、はー! このあたりはサイコーだぜ」
「おお。馬車も通らんし魔導トラックも来ねぇ。ここでレースでもしたら気持ちEよなっ」
魔導バイクに乗った輩の登場だ。
「こりゃ、お前たちっ!」
この傍若無人な振る舞いに、主婦らと距離を取っていた老人たちが立ち上がった。主婦らはそそくさと身を引いて遠巻きにジト目で様子をうかがっている。
「なんだ、ジィさん」
「ここらで騒ぐんじゃない。赤子も寝とるし迷惑じゃ。……ハンターオフィスなんかで聞いとらんか? 住宅街では騒音に気を付けろと!」
「知らねぇなぁ」
「俺っちらがどこ走ろうが勝手じゃねぇかよ!」
――ばるんばるん!
ライダーたちは嫌がらせのようにエンジンを空噴かしする。
その時だった!
――どぅん……。
「おっと、そこまでだ」
赤いバイクがぐわんとジャンプしライダーたちの頭上を越えて着地した。きききっ、と背後で新たに何台か停車する音も響く。
「これで囲んだぜ、暴走族さんよ。『兵は神速でカッ飛ぶ』。マッハ・リーとその仲間たちから逃げられると思うなよ?」
「くっ……畜生、ここに逃げりゃ巻けると思ったのによぅ」
どうやらマッハ・リーがこいつらを追っていたらしい。無事に捕縛し任務完了だ。
「おお、ありがとうのぅ」
「……なあ。いい加減、バイクを認めてくれねぇかな」
感謝する老人にマッハが優しく声を掛けた。
「この地域がバイクの乗り入れを嫌うことは分かってるんだが、だからこそああいう輩がここを狙う。通り抜けるくらい認めてくんねぇか?」
老人、ちらと背後にいる主婦たちを見た。少しばつが悪そうでもある。
「……わしらがええという日時ならいくら走ってもろうても構わんよ。バイク乗りはいつだって、突然やって来ては騒音だけ残していく。日時が分かりゃ、赤子を抱いて中心部に買い物に行って留守にしとくとかできるわい」
「そうか……じゃ、それで手を打つようバイク乗りに相談してみるかなぁ」
マッハ、それだけ言って引いた。
時に、町は闘祭で盛り上がっている。
「そんじゃバイクレースでスピードキングを決めようじゃねぇか」
そんな話がバイク仲間で持ち上がる。
日時を決めたレースなので、住宅街の住民も条件を飲んだ。これをきっかけに良好な関係を築きたいようだ。
というか、活気が全くないのも寂しいのだ。
そんなこんなで、モト・リゼリオの開催である。
リプレイ本文
●
「はいはい、危ないからレースは部屋の窓からか路地の影から。コース上には絶対に出ないようにな!」
コースを低速巡航しているマッハ・リーがコース沿道に詰めかけた人たちに呼び掛けていた。
「ん、こんなにたくさん見に来てくれるとは思ってなかったんだよ」
オフローダーの魔導バイク「バルバムーシュ」に跨り、一緒に走行をしている狐中・小鳥(ka5484)も感心している。
「珍走団も取り締まったっすし、今度はバイクの良さを広める時っすね!」
無限 馨(ka0544)もいる。乗るは試作魔導バイク「ナグルファル」。
「ん、そうだね。楽しんでもらえるといいね」
頷く小鳥。同じく頷くマッハとともにばるんと速度を上げてピットに戻る。
そのピットでは。
「おー、お帰り。どうだった?」
準備していたウーナ(ka1439)が三人に呼び掛けた。
「コースの沿道中に住民やらがいたっす。わくわくしてたっすよ」
「このレースでバイクに対して好感度が上がりゃ、バイク仲間がここを通っても邪険にゃされねぇだろ」
熱を伝える馨とマッハ。
が、ウーナは虚を突かれたような表情をした。手にしていた、銃床に死神の意匠が彫られた銃をホルスターに収めることなく、そっとピットの一角に戻した。
「どしたの?」
「ん、ちょっとね……それより見てよ。蒼き流星『魔導バイク「ゲイル」』先輩!」
小鳥に不審に思われたが、すぐに表情を変えて自らのバイクをぽんと叩く。
「長らく倉庫で埃を被ってたんだけど、ようやく活躍の場が来たって感じだよ!」
子供のように嬉しそうに言うウーナ。レーシングタイプの蒼い機体におおー、と三人の歓声。
「楽しそうじゃな」
そこへ、鉄腕ドワーフのミグ・ロマイヤー(ka0665)がやって来た。
「倉庫で被るは埃ばかりではない。見よ、倉庫で隅々までいじくり倒したバルバを」
ばばん、と背後にあるオフローダーの魔導バイク「バルバムーシュ」を紹介する。
「そも、バイクと言うものは、要は橇(そり)と一緒でな?」
おっと、バイクの説明かと思ったら話が飛んだ。
軍属時代は雪深い山岳地帯にも赴任してたことのあるでの、技術将校で防衛の要衝とは縁遠い基地に島流しにされた無為の日々かと思いきや毎日皆で橇で滑って遊びまくったのう、それまでの橇の機動性が悪いのでいじってやったら今度は滑りすぎてけが人続出、これしきのことでどうすると一喝してやると中央に呼び戻されたのじゃ、とかやたら長い昔話。
「話が滑ってねぇかい? つーか、歳は一体いくつ?」
「いじれば光るし滑るのも方向次第、ということじゃ。……歳? ご覧の通り十三じゃの」
マッハの突っ込みにカラカラ笑うだけ。
「……たしかにいじってるね」
長い話の隙にメルクーア(ka4005)がミグの機体をじっと見ている。無駄に装甲を付けてハーレーもかくやと言う重量級バイクに仕上げている。
が、メルクーアの注目しているのはそこではない。
「このキャラクターはミグさん?」
「そうじゃ。家族に描いてもらったの。なかなかの痛バイクになっておろう」
眼帯付けて右手義手のライダーを小さな子供が応援している絵にほっこりするメルクーア。ミグは胸張ってわはは。
「メルクーアのもいじってるじゃない?」
ここでウーナがメルクーアの魔導バイクに気付いた。
「あたしの『アップルジャック』はこのくらいしかこだわってないよ~」
メルクーア、リンゴとカクテルグラスのマークを指差して言う。
「……これがこだわってないとでも?」
ウーナはそこではなく、シートを指差す。跨るシートから座るシートに大きく変更されている。
「そこはほら、あたしの脚の長さじゃあ、跨れないしねえ」
「ちょっとわたしも座ってみていいかなー」
照れ笑いするメルクーア。小鳥がこの言葉にぴぴんと来て座らせてもらう。
「ん、これは便利だね~」
「でしょ~」
「……ンだよ、ヤケにちっこいのが多いじゃん…」
メルクーアと小鳥がきゃいきゃいやっているところにぬうっと人影。
「…ま、いいけどよぅ。事故ンなよ?」
大伴 鈴太郎(ka6016)である。女性にしてはタッパがある。濃紺カラーのセーラー服を上着の裾を詰めて腕まくり、足元はロングロングな袴風プリーツスカートの硬派仕様。つっぱったネーちゃんである。
「へー、ナグルファルっすね。でもハンドルがくねってるっすよ?」
鈴太郎の愛車が同型と分かって馨が寄って来たのだが、明らかにウイングのように改造してあるハンドルを見て「乗りにくくないっすか?」。
「し、仕方ねーじゃんかよ。オレが改造したんじゃねーぞ。店のオヤジが試作品だからってんで安く譲ってくれたんだ」
その思いを尊重してやるのが筋ってもんじゃねーかよ、と熱く語り元通りにしない理由を話す鈴太郎だったり。
「すまね。盛り上がってるとこ悪ぃが、そろそろスタートだ」
ほっとけばいつまでも続きそうなバイク談義。マッハがそろそろだからと声を掛けるのだった。
●
「さあ、【闘祭】の一環で開催されるバイクレース「第一回モト・リゼリオ」。そそり立つ二階建て三階建ての住居の谷間を抜ける石畳のスリリングでテクニカルなコースで開催です」
レースのアナウンスが声高く解説する。おおー、と沿道の観客。なんだかんだで期待されている。
「レースは凹字型のコースを5周。安全対策のため、前日までに砂を馬車で運びコーナーの外側にバンクを作るなどしています。……さあ、出場する6人の選手が一周の慣らし運転を終えて戻ってきました。スターティンググリッドにつきます」
ばるん、と次々ホームストレートに戻ってくると一番端に移動した。
スターティンググリッドは以下の通り(インコースから)。
1)無限 馨
2)ウーナ
3)ミグ・ロマイヤー
4)メルクーア
5)大伴 鈴太郎
6)狐中・小鳥
うわん、ばるん、と各選手空ぶかしするなど準備万端。
「いくぜ? 用意はいいか?」
ここでマッハがチェッカーフラッグをバサッと派手に振った。
モト・リゼリオ、スタートだ!
●
「あっ!」
スタートと同時に観客から声が上がった。
「やっぱり大きな物を持ってたらうまくいかないね」
何と、メルクーアが騎乗前状態のバイクもろともジェットブーツを使用したのだ。
一瞬で前に行くがバランスを崩したりしないようほんのちょっと前に行っただけ。すぐにバイクに騎乗してエンジンを掛ける。
はたして一連の行動でどれだか有利になったかは……。
――ウォン、ウォン……。
「って、エンジン始動とか考えたらほとんど変わらないか~」
無事に前からスタートしたメルクーアが、てへ♪
「ちょ、待てやコラ! ちっと停まれオラァ!!」
隣にいた鈴太郎があっけにとられスタートに失敗。後ろから鬼の形相で追ってくる。
もちろんほかの選手は失敗せずメルクーアを抜き去っていた。
いや、馨も遅れているぞ。
「ちょっとよしとくっす」
スタート直後混乱を嫌ったか、わざと後ろについたようだ。
「いやっほーっ」
先頭はウーナだ。
騎乗のゲイルはパワーウエイトレシオに優れる上、距離に恵まれる内側というグリッド位置もあり第一コーナーに一直線。ちょいと身を沈めてマシンを押さえると桃色の長い髪をなびかせながらさっそうとクリアしていく。
「ええい、バルバ。言うことを聞かぬか―」
続いて、ミグ。
パワーウエイトレシオって何? そんなん出力高けりゃいいじゃん、なパワー至上主義のバルバムーシュでコーナーに。車体を内側に倒して曲がるが勢いで上体が外に振られながらも力でねじ伏せ駆けていく。
「ん、直線はいけるけど曲がるのは苦手だから気をつけないとっ」
さらに後ろから小鳥。
こちらもオフローダーながら馬力だけは負けないバルバムーシュを駆り、手堅くアウト・イン・アウトでクリアしていく。アウトサイドスタートだったためスムーズだったらしく直後の立ち上がりで前を行くミグを捕えパスして行った。
「ん? やるの!」
「まずは慣れること優先なんだよー。無茶して最初に転んでもなんだしね」
ミグ、無理に追わないが小鳥も特に急いでいるわけではない。
続いて騒がしいの、来たッ!
「タイヤ鳴かせて女泣かすなってな! 鬼のローリング見せたンぜッ」
鈴太郎だ。
ものすごい勢いで突っ込んできて、ド派手にアウトに流れつつもじゃじゃ馬ナグルファルを押さえ込んでクリア。ロングのプリーツスカートがばさーと以下略でクマちゃんプリントが白地ににっこり☆。気迫でクリアしていく。
「あたしもー」
後続のメルクーア、鈴太郎の魂のコーナリングに乗り気になった様子。
今度はどんな柄がちらりん☆するのか、観客のおっさん連中が手に汗握ってぐぐぐと身を乗り出す。
「いくよーっ!」
メルクーア、小さなお尻を突き出しドリフトでどりどりとリアを滑らせクリア。
しかし、彼女はビキニアーマーのトップに作業用ツナギの袖をウエストに巻き付けたへそ出しスタイル。ひらめくスカートなどないっ!
だああ、と頭を抱え天を仰ぐおっさんたち。
「変にもりあがってるっすね……ん?」
最後尾の馨が無理せずコーナリングしつつおっさんたちに呆れるが、ここでずりっとリアが滑ったことに気付いた。
「……何っすかね?」
首をひねるばかりである。
●
さて、快調に飛ばすトップのウーナ。
すでに三週目に入っている。
「……意外と妨害してこないわね」
後続からの、コース上に植木を落とすなどの嫌がらせがない。
「武器、ピットに預けてきて正解だったかな?」
そんなことも呟く。
ウーナはCAM大好きだ。そんなCAMがみんなに嫌われたらヤだし、という思いがある。バイクレースも、初めて見る人に妨害合戦だとは思われたくない。
周りを気にしてみる。
「あのお姉ちゃん、速~い」
「すごい迫力だわね~」
窓から観戦する母と娘が感心しているのが見えた。
「……こっちもすごい迫力だよね」
前を向く。迫る二階建ての建物の間を高速で抜けるスリル。ちょっと他では味わえない。
「少しサービスしとくかな」
ウーナ、前輪をぐっと上げてウィリー走行。
その場で回って手を挙げるなど曲乗りで歓声にこたえる。
「あたしも何かやるー」
二番手だったメルクーア、この隙にウーナを追い越していたがパフォーマンスをしていたことに気付きその気になった。
ききっ、と止まるとその場で左足を軸にしてアクセル全開。リアをスライドさせるアクセルターンを披露して逆走するとウーナにハイタッチして順位を元に戻すという紳士対応を見せる。
が、後続には超本気の人が来ているぞッ!
「や、やべえ! ぬおおお、ファイトー! いっぱー……っ」
鈴太郎が突っ込んできていた。
速度の落ちた二人をかわすが、このスピードでコーナーは曲がれずクラッシュ……おっと、金剛で頑健になった脚で廃油樽を蹴って何とか転倒はこらえて停車。
「ん、どしたの?」
「サービスしてたのー」
さらに後ろからやって来てジャックナイフで止まって聞く小鳥。無邪気に答えるメルクーア。
「必要なことではあろうの」
ミグも痛バイクを見せつけるようにリアを流しつつ停車。
「……ん? なんかやってるっすか?」
馨も到着しすぐに雰囲気に気付いた。コース端に土を盛り上げた土手を利用しジャンプ。アクロバティックなターンを披露した。
「おおー」
観客、示し合わせて曲乗りをしたのだと理解し盛り上がる。
「じゃ、再スタートするわよっ」
ウーナの号令でレース再開だ。
●
その後、空気を察して順位の変動はない。ただし、距離は詰まっている。
「抜いて抜かれてのデッドヒート。盛り上がるっすよ!」
最下位だった馨がぐんぐん上がって来た。
「ええい、ライドファイトじゃ」
抜かれたミグも奥の手で食らいつく。
が、直線一気だった分、コーナリングでやや放された。
「残り1週。…少し頑張ってみようかな? 攻めていくんだよっ」
その前の小鳥もぐっと身を屈めて瞳に力を込めていた。直線で速度を上げる。
ちょうどその背後から馨が迫っていた。
「え、ちょっと……」
「道の轍(わだち)には細かな砂が残ってるっすよ。限界で走るとリアが流れるっす」
やや膨らんだ小鳥の内からパスしていく馨。どうやらコース整備で砂を運んだ分、残っているようだ。
「痛てて……」
その前のメルクーアは路面の影響もあり転倒していた。馨、小鳥、ミグがその隙に追い抜いて行く。
「まだあきらめないよん!」
メルクーア、スタート時と同じようにジェットブーツでレースに戻る。敢闘精神とテクニカルなスタートに周りから拍手が起こる。
そして先頭の二人は最後の直線に入ろうとしていた。背後に馨。ついに前を捕えていた。コース観察していた成果の積み重ねだ。
「おら、攻めるぜ!」
「インは危ないのよね」
これまでどおりガンガン仕掛ける鈴太郎とそれをいなすウーナ。激しいバトルは時にベストラインを外すこともあり、後続に追い付かれる原因ともなっていた。
「もらったっす!」
二人がやや膨れたところを馨がパス。
いや、ウーナもコーナー後を重視して曲がっていた。すぐに追いつく。
焦ったのは鈴太郎だ。
「ちっくしょう、奥の手だ」
振り返って後方確認。誰もいないと分かると手をかざした。
「くらえ、全身全霊の青竜翔咬波!」
どごぉ、とマテリアル放出。反動で加速を狙う!
が、これは無反動砲。反動推進効果はない。
「これならどうだ!」
今度は横の壁に手を当て、どごぉ!
さすがに至近で命中すれば反動はある。
ところが、当然車体はやや斜行することとなるッ!
「あ、あぶねえっ」
ウーナのリアにぶつかりそうになった。わざと転倒して回避する。
レースの決着は!
「ゲイル!」
「頼むっす」
ウーナと、レーシングヘルメットを被った頭を屈めて祈るように突っ込む馨がほぼ同時にチェッカーを受けた。
判定の結果は……。
「ウィナー、馨!」
わあっ、と歓声が上がる。馨、メットを取って晴れやな笑顔で手を挙げ観衆に応えるのだった。
そして後続。
「いい感じに上がって来たんだよ」
「なかなか楽しかったの」
小鳥、ミグがチェッカーを受ける。
メルクーアは。
「どうしたの?」
最後の直線で転倒したまま胡坐をかいて座っていた鈴太郎をパスしつつ心配そうな視線を送った。
「……納得いかねぇんだよ。オレ自身に、な」
接触寸前になった走行をしてしまったことが納得がいかない様子だ。スキルを使って全力を尽くしたことには満足している。ただ、他人の妨害につながりそうになったことを悔いている。
それでも沿道から「頑張れ」と応援を受けた。
ゆらりと立ち上がると再スタートし、ゴールする。
レースには負けたが自分には勝ったのだ。
※リザルト
優勝)無限 馨
二位)ウーナ
三位)狐中・小鳥
四位)ミグ・ロマイヤー
五位)メルクーア
六位)大伴 鈴太郎
「はいはい、危ないからレースは部屋の窓からか路地の影から。コース上には絶対に出ないようにな!」
コースを低速巡航しているマッハ・リーがコース沿道に詰めかけた人たちに呼び掛けていた。
「ん、こんなにたくさん見に来てくれるとは思ってなかったんだよ」
オフローダーの魔導バイク「バルバムーシュ」に跨り、一緒に走行をしている狐中・小鳥(ka5484)も感心している。
「珍走団も取り締まったっすし、今度はバイクの良さを広める時っすね!」
無限 馨(ka0544)もいる。乗るは試作魔導バイク「ナグルファル」。
「ん、そうだね。楽しんでもらえるといいね」
頷く小鳥。同じく頷くマッハとともにばるんと速度を上げてピットに戻る。
そのピットでは。
「おー、お帰り。どうだった?」
準備していたウーナ(ka1439)が三人に呼び掛けた。
「コースの沿道中に住民やらがいたっす。わくわくしてたっすよ」
「このレースでバイクに対して好感度が上がりゃ、バイク仲間がここを通っても邪険にゃされねぇだろ」
熱を伝える馨とマッハ。
が、ウーナは虚を突かれたような表情をした。手にしていた、銃床に死神の意匠が彫られた銃をホルスターに収めることなく、そっとピットの一角に戻した。
「どしたの?」
「ん、ちょっとね……それより見てよ。蒼き流星『魔導バイク「ゲイル」』先輩!」
小鳥に不審に思われたが、すぐに表情を変えて自らのバイクをぽんと叩く。
「長らく倉庫で埃を被ってたんだけど、ようやく活躍の場が来たって感じだよ!」
子供のように嬉しそうに言うウーナ。レーシングタイプの蒼い機体におおー、と三人の歓声。
「楽しそうじゃな」
そこへ、鉄腕ドワーフのミグ・ロマイヤー(ka0665)がやって来た。
「倉庫で被るは埃ばかりではない。見よ、倉庫で隅々までいじくり倒したバルバを」
ばばん、と背後にあるオフローダーの魔導バイク「バルバムーシュ」を紹介する。
「そも、バイクと言うものは、要は橇(そり)と一緒でな?」
おっと、バイクの説明かと思ったら話が飛んだ。
軍属時代は雪深い山岳地帯にも赴任してたことのあるでの、技術将校で防衛の要衝とは縁遠い基地に島流しにされた無為の日々かと思いきや毎日皆で橇で滑って遊びまくったのう、それまでの橇の機動性が悪いのでいじってやったら今度は滑りすぎてけが人続出、これしきのことでどうすると一喝してやると中央に呼び戻されたのじゃ、とかやたら長い昔話。
「話が滑ってねぇかい? つーか、歳は一体いくつ?」
「いじれば光るし滑るのも方向次第、ということじゃ。……歳? ご覧の通り十三じゃの」
マッハの突っ込みにカラカラ笑うだけ。
「……たしかにいじってるね」
長い話の隙にメルクーア(ka4005)がミグの機体をじっと見ている。無駄に装甲を付けてハーレーもかくやと言う重量級バイクに仕上げている。
が、メルクーアの注目しているのはそこではない。
「このキャラクターはミグさん?」
「そうじゃ。家族に描いてもらったの。なかなかの痛バイクになっておろう」
眼帯付けて右手義手のライダーを小さな子供が応援している絵にほっこりするメルクーア。ミグは胸張ってわはは。
「メルクーアのもいじってるじゃない?」
ここでウーナがメルクーアの魔導バイクに気付いた。
「あたしの『アップルジャック』はこのくらいしかこだわってないよ~」
メルクーア、リンゴとカクテルグラスのマークを指差して言う。
「……これがこだわってないとでも?」
ウーナはそこではなく、シートを指差す。跨るシートから座るシートに大きく変更されている。
「そこはほら、あたしの脚の長さじゃあ、跨れないしねえ」
「ちょっとわたしも座ってみていいかなー」
照れ笑いするメルクーア。小鳥がこの言葉にぴぴんと来て座らせてもらう。
「ん、これは便利だね~」
「でしょ~」
「……ンだよ、ヤケにちっこいのが多いじゃん…」
メルクーアと小鳥がきゃいきゃいやっているところにぬうっと人影。
「…ま、いいけどよぅ。事故ンなよ?」
大伴 鈴太郎(ka6016)である。女性にしてはタッパがある。濃紺カラーのセーラー服を上着の裾を詰めて腕まくり、足元はロングロングな袴風プリーツスカートの硬派仕様。つっぱったネーちゃんである。
「へー、ナグルファルっすね。でもハンドルがくねってるっすよ?」
鈴太郎の愛車が同型と分かって馨が寄って来たのだが、明らかにウイングのように改造してあるハンドルを見て「乗りにくくないっすか?」。
「し、仕方ねーじゃんかよ。オレが改造したんじゃねーぞ。店のオヤジが試作品だからってんで安く譲ってくれたんだ」
その思いを尊重してやるのが筋ってもんじゃねーかよ、と熱く語り元通りにしない理由を話す鈴太郎だったり。
「すまね。盛り上がってるとこ悪ぃが、そろそろスタートだ」
ほっとけばいつまでも続きそうなバイク談義。マッハがそろそろだからと声を掛けるのだった。
●
「さあ、【闘祭】の一環で開催されるバイクレース「第一回モト・リゼリオ」。そそり立つ二階建て三階建ての住居の谷間を抜ける石畳のスリリングでテクニカルなコースで開催です」
レースのアナウンスが声高く解説する。おおー、と沿道の観客。なんだかんだで期待されている。
「レースは凹字型のコースを5周。安全対策のため、前日までに砂を馬車で運びコーナーの外側にバンクを作るなどしています。……さあ、出場する6人の選手が一周の慣らし運転を終えて戻ってきました。スターティンググリッドにつきます」
ばるん、と次々ホームストレートに戻ってくると一番端に移動した。
スターティンググリッドは以下の通り(インコースから)。
1)無限 馨
2)ウーナ
3)ミグ・ロマイヤー
4)メルクーア
5)大伴 鈴太郎
6)狐中・小鳥
うわん、ばるん、と各選手空ぶかしするなど準備万端。
「いくぜ? 用意はいいか?」
ここでマッハがチェッカーフラッグをバサッと派手に振った。
モト・リゼリオ、スタートだ!
●
「あっ!」
スタートと同時に観客から声が上がった。
「やっぱり大きな物を持ってたらうまくいかないね」
何と、メルクーアが騎乗前状態のバイクもろともジェットブーツを使用したのだ。
一瞬で前に行くがバランスを崩したりしないようほんのちょっと前に行っただけ。すぐにバイクに騎乗してエンジンを掛ける。
はたして一連の行動でどれだか有利になったかは……。
――ウォン、ウォン……。
「って、エンジン始動とか考えたらほとんど変わらないか~」
無事に前からスタートしたメルクーアが、てへ♪
「ちょ、待てやコラ! ちっと停まれオラァ!!」
隣にいた鈴太郎があっけにとられスタートに失敗。後ろから鬼の形相で追ってくる。
もちろんほかの選手は失敗せずメルクーアを抜き去っていた。
いや、馨も遅れているぞ。
「ちょっとよしとくっす」
スタート直後混乱を嫌ったか、わざと後ろについたようだ。
「いやっほーっ」
先頭はウーナだ。
騎乗のゲイルはパワーウエイトレシオに優れる上、距離に恵まれる内側というグリッド位置もあり第一コーナーに一直線。ちょいと身を沈めてマシンを押さえると桃色の長い髪をなびかせながらさっそうとクリアしていく。
「ええい、バルバ。言うことを聞かぬか―」
続いて、ミグ。
パワーウエイトレシオって何? そんなん出力高けりゃいいじゃん、なパワー至上主義のバルバムーシュでコーナーに。車体を内側に倒して曲がるが勢いで上体が外に振られながらも力でねじ伏せ駆けていく。
「ん、直線はいけるけど曲がるのは苦手だから気をつけないとっ」
さらに後ろから小鳥。
こちらもオフローダーながら馬力だけは負けないバルバムーシュを駆り、手堅くアウト・イン・アウトでクリアしていく。アウトサイドスタートだったためスムーズだったらしく直後の立ち上がりで前を行くミグを捕えパスして行った。
「ん? やるの!」
「まずは慣れること優先なんだよー。無茶して最初に転んでもなんだしね」
ミグ、無理に追わないが小鳥も特に急いでいるわけではない。
続いて騒がしいの、来たッ!
「タイヤ鳴かせて女泣かすなってな! 鬼のローリング見せたンぜッ」
鈴太郎だ。
ものすごい勢いで突っ込んできて、ド派手にアウトに流れつつもじゃじゃ馬ナグルファルを押さえ込んでクリア。ロングのプリーツスカートがばさーと以下略でクマちゃんプリントが白地ににっこり☆。気迫でクリアしていく。
「あたしもー」
後続のメルクーア、鈴太郎の魂のコーナリングに乗り気になった様子。
今度はどんな柄がちらりん☆するのか、観客のおっさん連中が手に汗握ってぐぐぐと身を乗り出す。
「いくよーっ!」
メルクーア、小さなお尻を突き出しドリフトでどりどりとリアを滑らせクリア。
しかし、彼女はビキニアーマーのトップに作業用ツナギの袖をウエストに巻き付けたへそ出しスタイル。ひらめくスカートなどないっ!
だああ、と頭を抱え天を仰ぐおっさんたち。
「変にもりあがってるっすね……ん?」
最後尾の馨が無理せずコーナリングしつつおっさんたちに呆れるが、ここでずりっとリアが滑ったことに気付いた。
「……何っすかね?」
首をひねるばかりである。
●
さて、快調に飛ばすトップのウーナ。
すでに三週目に入っている。
「……意外と妨害してこないわね」
後続からの、コース上に植木を落とすなどの嫌がらせがない。
「武器、ピットに預けてきて正解だったかな?」
そんなことも呟く。
ウーナはCAM大好きだ。そんなCAMがみんなに嫌われたらヤだし、という思いがある。バイクレースも、初めて見る人に妨害合戦だとは思われたくない。
周りを気にしてみる。
「あのお姉ちゃん、速~い」
「すごい迫力だわね~」
窓から観戦する母と娘が感心しているのが見えた。
「……こっちもすごい迫力だよね」
前を向く。迫る二階建ての建物の間を高速で抜けるスリル。ちょっと他では味わえない。
「少しサービスしとくかな」
ウーナ、前輪をぐっと上げてウィリー走行。
その場で回って手を挙げるなど曲乗りで歓声にこたえる。
「あたしも何かやるー」
二番手だったメルクーア、この隙にウーナを追い越していたがパフォーマンスをしていたことに気付きその気になった。
ききっ、と止まるとその場で左足を軸にしてアクセル全開。リアをスライドさせるアクセルターンを披露して逆走するとウーナにハイタッチして順位を元に戻すという紳士対応を見せる。
が、後続には超本気の人が来ているぞッ!
「や、やべえ! ぬおおお、ファイトー! いっぱー……っ」
鈴太郎が突っ込んできていた。
速度の落ちた二人をかわすが、このスピードでコーナーは曲がれずクラッシュ……おっと、金剛で頑健になった脚で廃油樽を蹴って何とか転倒はこらえて停車。
「ん、どしたの?」
「サービスしてたのー」
さらに後ろからやって来てジャックナイフで止まって聞く小鳥。無邪気に答えるメルクーア。
「必要なことではあろうの」
ミグも痛バイクを見せつけるようにリアを流しつつ停車。
「……ん? なんかやってるっすか?」
馨も到着しすぐに雰囲気に気付いた。コース端に土を盛り上げた土手を利用しジャンプ。アクロバティックなターンを披露した。
「おおー」
観客、示し合わせて曲乗りをしたのだと理解し盛り上がる。
「じゃ、再スタートするわよっ」
ウーナの号令でレース再開だ。
●
その後、空気を察して順位の変動はない。ただし、距離は詰まっている。
「抜いて抜かれてのデッドヒート。盛り上がるっすよ!」
最下位だった馨がぐんぐん上がって来た。
「ええい、ライドファイトじゃ」
抜かれたミグも奥の手で食らいつく。
が、直線一気だった分、コーナリングでやや放された。
「残り1週。…少し頑張ってみようかな? 攻めていくんだよっ」
その前の小鳥もぐっと身を屈めて瞳に力を込めていた。直線で速度を上げる。
ちょうどその背後から馨が迫っていた。
「え、ちょっと……」
「道の轍(わだち)には細かな砂が残ってるっすよ。限界で走るとリアが流れるっす」
やや膨らんだ小鳥の内からパスしていく馨。どうやらコース整備で砂を運んだ分、残っているようだ。
「痛てて……」
その前のメルクーアは路面の影響もあり転倒していた。馨、小鳥、ミグがその隙に追い抜いて行く。
「まだあきらめないよん!」
メルクーア、スタート時と同じようにジェットブーツでレースに戻る。敢闘精神とテクニカルなスタートに周りから拍手が起こる。
そして先頭の二人は最後の直線に入ろうとしていた。背後に馨。ついに前を捕えていた。コース観察していた成果の積み重ねだ。
「おら、攻めるぜ!」
「インは危ないのよね」
これまでどおりガンガン仕掛ける鈴太郎とそれをいなすウーナ。激しいバトルは時にベストラインを外すこともあり、後続に追い付かれる原因ともなっていた。
「もらったっす!」
二人がやや膨れたところを馨がパス。
いや、ウーナもコーナー後を重視して曲がっていた。すぐに追いつく。
焦ったのは鈴太郎だ。
「ちっくしょう、奥の手だ」
振り返って後方確認。誰もいないと分かると手をかざした。
「くらえ、全身全霊の青竜翔咬波!」
どごぉ、とマテリアル放出。反動で加速を狙う!
が、これは無反動砲。反動推進効果はない。
「これならどうだ!」
今度は横の壁に手を当て、どごぉ!
さすがに至近で命中すれば反動はある。
ところが、当然車体はやや斜行することとなるッ!
「あ、あぶねえっ」
ウーナのリアにぶつかりそうになった。わざと転倒して回避する。
レースの決着は!
「ゲイル!」
「頼むっす」
ウーナと、レーシングヘルメットを被った頭を屈めて祈るように突っ込む馨がほぼ同時にチェッカーを受けた。
判定の結果は……。
「ウィナー、馨!」
わあっ、と歓声が上がる。馨、メットを取って晴れやな笑顔で手を挙げ観衆に応えるのだった。
そして後続。
「いい感じに上がって来たんだよ」
「なかなか楽しかったの」
小鳥、ミグがチェッカーを受ける。
メルクーアは。
「どうしたの?」
最後の直線で転倒したまま胡坐をかいて座っていた鈴太郎をパスしつつ心配そうな視線を送った。
「……納得いかねぇんだよ。オレ自身に、な」
接触寸前になった走行をしてしまったことが納得がいかない様子だ。スキルを使って全力を尽くしたことには満足している。ただ、他人の妨害につながりそうになったことを悔いている。
それでも沿道から「頑張れ」と応援を受けた。
ゆらりと立ち上がると再スタートし、ゴールする。
レースには負けたが自分には勝ったのだ。
※リザルト
優勝)無限 馨
二位)ウーナ
三位)狐中・小鳥
四位)ミグ・ロマイヤー
五位)メルクーア
六位)大伴 鈴太郎
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【相談?】元・リゼリオは今… ウーナ(ka1439) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/06/29 19:48:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/25 19:25:34 |