ゲスト
(ka0000)
【詩天】ウェブアタック
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/02 19:00
- 完成日
- 2016/07/13 07:03
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●天ノ都――龍尾城
エトファリカ征夷大将軍の朝は早い。
太陽が顔を出す前には起き、緊急の案件が無いか確認。身支度を終えると中庭での鍛錬になる。
「……そうですか、詩天内での動きはハンターを通じて、引き続きの調査を」
刀を振るいながら立花院 紫草(kz0126)は報告に来た配下に応えた。
型を忠実に守りながら、ひたすら繰り返して刀を振るう。
征夷大将軍という立場であり戦場に出る機会は少ないが、刀の腕は、達人の域である。物腰柔らかく表情穏やかな雰囲気とは真逆に苛烈な技を多様し、敵を圧倒する姿は阿修羅を彷彿とさせると言われている。
「詩天周辺についても、調査が必要ですね。表立って動く事は……できませんが……」
ビシっと刀を止め、一礼して鍛錬を終える。
身の回りの世話をする者が居れば、さっと脇から手ぬぐいが出てくる所ではあるが、今のこの国に、そんな余裕はない。
「歪虚の動向には、特に気をつけなければなりませんね。もちろん、『武家』も同様ですが」
今後も詩天で何らかの動きがあるだろう。
問題なのは、その隙を狙っている輩がいるという事だ。
●とある商人の屋敷にて
「今時、武家などと、古臭い事よ。歪虚はいなくなったのじゃ。これからは銭の時代よ」
でっぷりと丸く太った商人がそんな言葉を発した。
もっとも、商人自身もかつては武家であった。落ちぶれてしまったが、東方解放に至り、西方との商売で成功した経緯がある。
「稼ぐには、余るものを無い所へ。『無い』所を作れば作るだけ……ですからね」
グシシと柄の悪い男が笑う。
商人と男は共に越地家の者だ。
「ちゃんと、やれているのか?」
「へい、今の所は……ただ、なにやら、嗅ぎつけている者がいるみたいです」
「分かった。それはこちらで始末する」
稼ぎの邪魔をする者は誰かと商人は考える。
最初に浮かんだのは商売敵だ。詩天への商売を主体としている所は多くないはず。
行商の類はいるだろうが、規模という点では話にならない。
「死天に世の中の銭を残すわけにはいかんからのぉ」
眉間にシワを寄せながら商人は呟いた。
●天ノ都――城下町
ジトジトと雨が降る中、傘を手に持ち、侍は歩いていた。
昨日は天気が良かったのに、今日は朝から雨だ。目的地に到着すると、雨から逃れるように侍は店の中に入った。
「いらっしゃいませ! タチバナさん!」
看板娘が分かりやすい程嬉々とした表情で侍を出迎えた。
「……かけを、一つ」
「はい。畏まりました!」
注文すると、適当な畳に腰を降ろす。
「タチバナさん、今日はどちらへ?」
女将が手ぬぐいを渡した。
小さくお礼を言いながら受け取るとタチバナは雨で濡れた身体を拭きながら答える。
「仕事を出してきました」
「あれま! 仕官先を探しているタチバナさんが、仕事を?」
「いえ、先に、お世話になった方からのお使いです」
タチバナは先日、ハンター達と共に詩天に至る街道に出没する雑魔の退治に向かった。
そこでいくつか判明した事があったが、その縁で、再び仕事が出来たのだ。
「タチバナさんも、また、行くのかい?」
その女将の問いに侍は頷いた。
●詩天に至る街道
雑魔が出没したという緊急の情報はすぐに街道傍の茶屋にも伝えられた。
大慌てで店を閉じ、逃げる準備をする。旅人や行商もおろおろとするばかりだ。
「今月に入って何件目だ?」
「やっぱり、詩天は危ないのじゃ?」
「この街道は広くて楽に詩天まで行けるというのに……」
何人かが来た道を引き返していった。
詩天に至る道はこの街道だけではない。迂回すればいい。
茶屋の主人が、そんな状況にも関わらず、呑気に茶を飲み続ける一団に向かって声をかけた。
「そ、そろそろ、店を閉じますよ」
「代金は置いた。湯呑はここに置いていくゆえ、主人は先に逃げておれ」
一団の一人の言葉に茶屋の主人は「ここに残ってどうなっても知りませんよ」と言って立ち去った。
完全に人の気配が無くなった茶屋で一団がニヤリと口元を緩めた。
「懸命な判断だな。ここに残っていたら、命はないわけだからな」
エトファリカ征夷大将軍の朝は早い。
太陽が顔を出す前には起き、緊急の案件が無いか確認。身支度を終えると中庭での鍛錬になる。
「……そうですか、詩天内での動きはハンターを通じて、引き続きの調査を」
刀を振るいながら立花院 紫草(kz0126)は報告に来た配下に応えた。
型を忠実に守りながら、ひたすら繰り返して刀を振るう。
征夷大将軍という立場であり戦場に出る機会は少ないが、刀の腕は、達人の域である。物腰柔らかく表情穏やかな雰囲気とは真逆に苛烈な技を多様し、敵を圧倒する姿は阿修羅を彷彿とさせると言われている。
「詩天周辺についても、調査が必要ですね。表立って動く事は……できませんが……」
ビシっと刀を止め、一礼して鍛錬を終える。
身の回りの世話をする者が居れば、さっと脇から手ぬぐいが出てくる所ではあるが、今のこの国に、そんな余裕はない。
「歪虚の動向には、特に気をつけなければなりませんね。もちろん、『武家』も同様ですが」
今後も詩天で何らかの動きがあるだろう。
問題なのは、その隙を狙っている輩がいるという事だ。
●とある商人の屋敷にて
「今時、武家などと、古臭い事よ。歪虚はいなくなったのじゃ。これからは銭の時代よ」
でっぷりと丸く太った商人がそんな言葉を発した。
もっとも、商人自身もかつては武家であった。落ちぶれてしまったが、東方解放に至り、西方との商売で成功した経緯がある。
「稼ぐには、余るものを無い所へ。『無い』所を作れば作るだけ……ですからね」
グシシと柄の悪い男が笑う。
商人と男は共に越地家の者だ。
「ちゃんと、やれているのか?」
「へい、今の所は……ただ、なにやら、嗅ぎつけている者がいるみたいです」
「分かった。それはこちらで始末する」
稼ぎの邪魔をする者は誰かと商人は考える。
最初に浮かんだのは商売敵だ。詩天への商売を主体としている所は多くないはず。
行商の類はいるだろうが、規模という点では話にならない。
「死天に世の中の銭を残すわけにはいかんからのぉ」
眉間にシワを寄せながら商人は呟いた。
●天ノ都――城下町
ジトジトと雨が降る中、傘を手に持ち、侍は歩いていた。
昨日は天気が良かったのに、今日は朝から雨だ。目的地に到着すると、雨から逃れるように侍は店の中に入った。
「いらっしゃいませ! タチバナさん!」
看板娘が分かりやすい程嬉々とした表情で侍を出迎えた。
「……かけを、一つ」
「はい。畏まりました!」
注文すると、適当な畳に腰を降ろす。
「タチバナさん、今日はどちらへ?」
女将が手ぬぐいを渡した。
小さくお礼を言いながら受け取るとタチバナは雨で濡れた身体を拭きながら答える。
「仕事を出してきました」
「あれま! 仕官先を探しているタチバナさんが、仕事を?」
「いえ、先に、お世話になった方からのお使いです」
タチバナは先日、ハンター達と共に詩天に至る街道に出没する雑魔の退治に向かった。
そこでいくつか判明した事があったが、その縁で、再び仕事が出来たのだ。
「タチバナさんも、また、行くのかい?」
その女将の問いに侍は頷いた。
●詩天に至る街道
雑魔が出没したという緊急の情報はすぐに街道傍の茶屋にも伝えられた。
大慌てで店を閉じ、逃げる準備をする。旅人や行商もおろおろとするばかりだ。
「今月に入って何件目だ?」
「やっぱり、詩天は危ないのじゃ?」
「この街道は広くて楽に詩天まで行けるというのに……」
何人かが来た道を引き返していった。
詩天に至る道はこの街道だけではない。迂回すればいい。
茶屋の主人が、そんな状況にも関わらず、呑気に茶を飲み続ける一団に向かって声をかけた。
「そ、そろそろ、店を閉じますよ」
「代金は置いた。湯呑はここに置いていくゆえ、主人は先に逃げておれ」
一団の一人の言葉に茶屋の主人は「ここに残ってどうなっても知りませんよ」と言って立ち去った。
完全に人の気配が無くなった茶屋で一団がニヤリと口元を緩めた。
「懸命な判断だな。ここに残っていたら、命はないわけだからな」
リプレイ本文
●流浪の侍再び
降り続く雨……激しくもなく、まばらでもない。
タチバナと待ち合わせの場所に一行が到着すると、流浪の侍は傘も差さず、雨の中に佇んでいた。
長い灰色の髪が濡れ、三十路は超えているのに大人な色気が感じられた。
「タチバナさーーんっ!」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)が傘を宙に投げ、タチバナに突貫。
腰のあたりに抱きつくと、キラキラと輝く瞳で見上げる。
「この間ぶりですっ」
「えぇ、また、よろしくお願いします」
タチバナの優しげな微笑みに、犬っぽい返事をしながら、アルマは後ろから近づいてきたミリア・エインズワース(ka1287)を迎える。
「僕のお嫁さんのミリアですー」
今度はミリアの周囲をアルマが駆け回る為、彼女は動き回るアルマの身体を抱えて動きを止めた。
「よろしくだな、タチバナさん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
まるで、大型犬とその飼主なのかと思うタチバナであった。
表情そのままに視線を天竜寺 詩(ka0396)に向ける。それに気がつく詩。
「タチバナさん、今日もよろしくね」
「詩さんも、また、お世話になります」
「雑魔がまた出たという事で……死天の名を返上する為にも、コツコツとやっていくしかなさそうだね」
苦笑を浮かべる詩にタチバナは何度も頷いて応える。
原因を突き止める事ができればいいが、今は一つ一つ、解決していくしかない。
「あんたもコレを使ってくれ」
ジャック・エルギン(ka1522)がタチバナに笠を手渡す。
雨でも両手が使えるようにという配慮だ。かたじけないと一言、発すると流浪の侍は笠を受け取り、被った。
「折角、初めての土地に来たってのに、雨とはツイてねーな」
雨模様を眺めるジャックは視線をタチバナに戻す。
「なーんか、嫌な感じがすんだが気のせいかねえ」
「これ以上、酷くならなければいいですけどね」
どうも、ジャックの心配をタチバナは雨の事だと思っているようだ。
そんなやり取りをジッと眺めながら、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は心の中で呟く。
(……刀の腕は一流って、タチバナさんの技を見れるかな?)
ボロボロで質素な鞘の大太刀……振り回すだけでも技量が必要だろう。
「どうかしましたか?」
盗み見していた訳ではないはずなのだが、タチバナが声を掛けてきた。
「……いや、良い刀だなと思って」
「刀は武士の命、ですから」
ニッコリと笑ったタチバナにつられてしまう。
誤魔化しで言ったつもりだったが、鞘のボロさと比べ刀の柄はしっかりと作られているようだった。
歴戦のハンターと流浪の侍をみつめ、ライラ = リューンベリ(ka5507)は内心不安になってきた。
「こ……これから、向かうのは、ぞ……雑魔の討伐で、よ……よろしかったですよね?」
メンバーの構成や経歴を見れば、雑魔や並みの歪虚どころか、歪虚兵や歪虚軍長でも倒せそうな勢いである。
「高位歪虚の討伐に行くとかありませんよね」
「……それも、良いかもしれませんね」
ライラの心配にタチバナがポンと手を叩いて応えたのであった。
●雑魔
空を飛んでいる雑魔の姿を確認できたと思った矢先、雑魔が発する声が聞こえてきた。
まるで、歌っているかのようではあるが……。
「街道の平和は、物流において最重要なものです。必ず……討伐……し……て……」
意気込んでいる最中のライラが突然、うつらうつらと始める。
「雑魔なんぞ、ぶっ……つ……」
「頭を抑えれば……低く……飛ば……」
ミリアとジャックも同様だった。
「寝ちゃだめですよ~。寝ると死んじゃいますよ~」
「そりゃ……凍死の事……だぞ……」
飼主を必死に起こす姿の様だとタチバナはアルマの行動を眺めていた。
雑魔の能力だろう。厄介な力だ。
事前に対策を練っていた者も居たが、負のマテリアルが作用しているのだろう。聞こえるか聞こえないかは、あまり関係が無かったかもしれない。
「あれは、ハーピー? とりえあず、歌には歌で対抗だよ」
詩が意識を集中し、聖歌を唱えて仲間を雑魔の能力から解放させていく間に、アルトが前に出る。
ウィップで空を飛ぶ雑魔を引き落とそうと思った矢先だった。街道脇の川から手足の生えた魚の雑魔が飛び出してきたのだ。
「遅いよ!」
慌てる事なく冷静に反応するアルト。
あっという間に切り刻まれる雑魔。
「次は、サハギン?」
サルヴェイションを続けて行使しながら詩は、切り刻まれて崩れていく雑魔を見て呟いた。
東方というのに、いかにも西洋風の雑魔ばかりだ。
「アハハハハハ!」
奇声を発しながらアルマが機導術を放つ。
三筋の光が、空を飛ぶ雑魔へと突き刺さる。その威力だけで粉砕されていく。
結局、空を飛んでいた上半身人型で両腕に翼を持つ雑魔をアルマの機導術で、川から飛び出してきた魚人もどきの雑魔はアルトの刀によって、倒されたのであった。
「既に……終わっているのです!」
「ぶっと……ばしてない!!」
「大勢のお出迎えだったが、呆気なかったな……」
戦闘に参加できなかったライラ、ミリア、ジャックの声が重なり、
「なにもしないまま終わりましたね」
タチバナもただ雨に打たれているだけだった。
これは、本当に高位歪虚の討伐に行けたかもしれないと侍は心中で思ったのだった。
●歪虚
雑魔を退治し、撃ち漏らしが居ないか確認し終わった頃だった。
詩天の方角から街道をふらりふらりと人影が向かって来た。
「うそ、ゴルゴン!?」
詩が驚く。人型ではあるが、髪には無数の蛇が蠢いていたからだ。
西洋では魔物として認識されている。その者に見つめられたら、石になってしまうとか。
「目を合わせたら駄目!」
盾を構えて様子を見るが、石になる様子はない。
というか、蛇の髪はおぞましいが、それ以外は美人なお姉さんのようにも見えた。
「なんのようだ? 仕事中なんだが……」
街道脇の川の中を調べながらミリアが気にした様子も無く尋ねる。
同様に草むらを、物足りなさそうにザッザッと確認していたジャックも口を開いた。
「悪いが気が立ってんだ。要件は手短に頼むぜ」
そして、アルトは警戒している様子は最低限で、やはり、雑魔の生き残りが居ないか確認している。
仲間達の姿を見てライラが言った。
「皆様……慣れすぎです……」
一人、剣を構えて警戒しているのが、逆に恥ずかしくなる。
そっと、剣を下ろす。もちろん、警戒を解いた訳ではない。
歪虚が感心した様子で両手を広げた。
「容姿を見るに、西方の人達かな?」
「はい! そうなんですよー!」
アルマが飛びかかる勢いで返事をする。
「あんまり迷惑かけんなよ、アルマ。忙しいかも知れないだろ?」
「お喋りしたいだけみたいですしー」
元気な大型犬(アルマ)の返事に、ミリアはアルトに視線を向けた。
彼女は両肩を竦めるだけだった。
ライラが丁寧な口調で問い掛ける。
「あなたは一体何者なのですか? 只の歪虚という訳ではないのでしょう」
「僕は只の歪虚なんだけどね……ちょっと、話を聞きたくて、さ」
その言葉にジャックが間髪入れずに言い放つ。
「交渉事なら応じねぇぞ」
「大丈夫だよ。すこーし仲良くしたいだけだから。僕もニンゲンと話していたら同族から煙たがられるからさ」
ニコッと笑うと美人な上に可愛い歪虚だった。
「仲良くできるなら大丈夫です! お友達になれますー? お名前は?」
場の空気を感じているのかいないのかアルマがぐるぐると歪虚の周りを駆け回る。
カオスだ……とタチバナはこの状況を見て思ったが、特に声を出すことなく見守ろうと思い至る。
「僕の名は、虚博――コハク――。ご覧の通り、憤怒に属する歪虚さ」
髪の毛替わりの蛇が一斉に真っ赤な舌をチロチロと出す。
琥珀色の目の瞳は、人のそれではなく、虫の形をしている。
「貴方、さっきのハーピーやサハギン、先日のミノタウロスについて何か知ってるの?」
詩の質問に、虚博という名の歪虚の表情がパッとなる。
「皆どう見ても、この土地にそぐわない、西洋風のぞう……」
「でしょ! でしょ! 意外だったでしょ!」
「え……えぇ……」
思った以上の歪虚の反応に、思わずたじろぐ詩。
「ほら、歪虚も異文化交流で、新しい形をね!」
「「「異文化」」」
ハンター達の言葉が重なる。
これほど、人間にとって、はた迷惑な交流はない。
「新しく雑魔を作ったのは良かったのだけどさ、ほら、僕が作ったからか、見境ないのばかりでさ。すぐに居なくなっちゃったんだよー」
「それって、誰かに連れて行かれたって事?」
詩の質問に歪虚は頷いた。
「多分、ニンゲンを追いかけて行ったのかな。人里から離れた場所だと油断してたよー。君達が倒したの?」
「そうですよー。こう、ズバーズバーと!」
「アルマ!」
遠慮ない大型犬(アルマ)の言葉と態度に対し飼主(ミリア)が名前を呼んで諌める。
「街道まで現れたので、倒させてもらいました」
「そういう事だ」
ライラとジャックの台詞に、落胆するかと思いきや、歪虚は瞳を輝かせる。
「どうだった? 僕の作った雑魔、どうだった!?」
「あ……いや、その……だな……」
顔がくっつくほど近く迫った美人歪虚の両肩を、髪の蛇を警戒しながら押し返すジャック。
まさか、先ほどの戦闘で、自分はほとんど戦えていなかった事を言いづらく、アルトに救いの視線を向けた。
「……雑魚過ぎた」
「アルト!」
遠慮のない戦友の言葉に、思わず名を呼ぶミリア。
「そっかそっか。まだまだ改良の余地はありそうだね。感想を聞けて良かったよ。ありがとね」
クルッと踵を返す歪虚。
新しく雑魔が改良されて出て困るが、そんなハンター達の心の声など聞こえもせず、歪虚はステップを踏んで、雨の中へと消えて行った。
「……タチバナ様。雑魔って、簡単に捕らえたり、誘拐できませんよね?」
呆然と見送りながらライラが尋ねる。
「そう思いますね」
となると、誰かが雑魔を誘導してきたという事なのだろうか。
だが、誘導してきても雑魔を操る事ができなければ、意味はない。
「なんで、こんな事を……」
詩が詩天へと続く街道を見つめながら、そんな言葉を口にしたのであった。
●襲撃
雨が少し強くなった。雷も鳴り始めている。
虚博という名の憤怒に属する歪虚の存在について、アレコレ言いながら天ノ都へと戻る一行。
「キャァ!?」
突然、ライラが背を押され倒れかける。
直後、乾いた金属音が響く。
「ッ!?」
最後尾だったアルトは見た。
タチバナがライラの背を押し、かつ、抜刀して、飛翔物を弾いたのだ。
間髪入れずに街道脇に伏せて隠れていた忍者姿の者が数名同時に襲いかかってくる。
その間にも、雷鳴に混じって銃撃音が聞こえる。だが、尽く、タチバナはそれらを弾いていた。
「襲撃だ!」
警戒の声を上げながらアルトはタチバナを見て思った
ただの浪人じゃない。刀の腕が一流とか言うが、達人の域を遥かに越えている。雷雨の中、狙撃に気がつき、反応しているのだ。
明らかにタチバナが狙われているようだが、銃弾は彼にかすりもしない。
「オイオイ、タチバナの旦那は何やらかしたんだよ」
ジャックが忍者を迎え討ちながら言った台詞にタチバナが応える。
「私もサッパリです」
「気ぃつけろよ! 雑魔なんぞより、人間の方が厄介だぜ」
太刀と苦無の二刀流で忍者の四肢を切りつける。
狙撃がある以上、迫ってくる忍者は攪乱を目的としているのだろうと予測した。ならば、無力化すればいいだけだ。
「今日は雨と雑魔。時々歪虚、所により暗殺者ってか。物騒だな!」
「先程は守られましたが、タチバナ様は私が守ります」
ライラが竜尾刀で忍者の攻撃を受け止め、弾き返す。
そして、刀の機構を作動させた。
「これは、隠しておきたかったのですが、逃がしませんよ」
刃に仕込んである細い鎖が節ごとに独立し、鞭状となる。
巧みに操り、忍者の一人を絡め取った。
「動くと……切れますよ」
ニッコリと微笑むメイド。
「僕のお友達を狙うなんて、相応のご覚悟をお持ちだと見做します」
アルマが怒りの目をしながらニタリと笑っている。
本気で怒るとこういう人間ほど怖い者は居ない。
「アルマ、逃がすなよ? 最低でも一人は残せ。ああ、アルトがやるか……」
巨大刀を構えてミリアがタチバナの横に回った。
自身が壁になるつもりなのだ。
「く……駄目だ。狙撃箇所の把握が出来なかった」
忍者の一人を叩き伏せながら、アルトは周囲を見渡した。
奇襲~忍者の襲撃の間に続いていた銃撃は止まった。襲撃の失敗を悟ったのだろう。
「この忍者らは覚醒者じゃないみたいだけど、狙撃は猟撃士だったのかな?」
回復の魔法を準備していた詩がため息を付きながら言った。
「……まぁ、こいつらに聞いてみれば分かるだろう。きっと、どこかで監視しているかもしれないしな」
アルトが残忍な表情を浮かべる。
誰が、どうして、タチバナを狙ったのか、身体に訊いてみるつもりなのだろう。
忍者らは全員捕縛され、ライラによって猿轡されていた。
「タチバナさん、命を狙われる心当たりはあるのかい?」
「色々な仕事をしてきたから、全くないとは言い切れない……ですね」
真面目な顔してタチバナは答えた。
「周囲を警戒してくる」
ジャックが笠を直しながら言った。相手はこの雨の中でも正確な狙撃をしてくるのだ。また狙われるかもしれない。
「後は、アルトに任せ、僕らも周囲を警戒しに行くか」
「そうする……」
ぷるぷると小刻みに震えながらアルマは飼主(ミリア)の裾を引っ張る。
これから始まる尋問の事を想像すると……体の震えが止まらない。
「私も周囲をみてきます」
詩が盾を構えながらジャックの後を追いかけ、ライラは残った縄を両手で構える。
「それでは、アルト様。始めましょうか」
「タチバナさんは?」
「……最後まで見届けさせてもらおう」
忍者達の悲鳴が雷鳴の為に響かなかったのは、彼らにとって不幸だったかもしれない……。
ハンター達は街道に出没した雑魔を討伐し、その後、襲いかかてきた忍者らを捕らえた。
尋問した結果、忍者らはただの浪人で、雇われた身である事が分かった。
詳細な作戦や目的は聞かされておらず人相書きの侍を殺すように指示されただけとの事だった。
おしまい。
●???
越地家の屋敷でも雨が降り続いていた。
「申し訳ございませぬ。例の浪人、撃ち漏らしました」
長大な銃身を持つライフルを手に、その男は続けて報告した。
「供も、いずれも手練でありました」
「ふむ……我らの所業とは勘付かれていないだろうな?」
でっぷりとした腹をさすりながら商人は訊く。
「はい。なにも知らぬ浪人を捨て駒に使いました故」
「それは結構。ゴミはゴミらしく処分されれば、なお良しだな」
「全くです」
男の言葉に商人は甲高い笑い声を上げるのであった。
降り続く雨……激しくもなく、まばらでもない。
タチバナと待ち合わせの場所に一行が到着すると、流浪の侍は傘も差さず、雨の中に佇んでいた。
長い灰色の髪が濡れ、三十路は超えているのに大人な色気が感じられた。
「タチバナさーーんっ!」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)が傘を宙に投げ、タチバナに突貫。
腰のあたりに抱きつくと、キラキラと輝く瞳で見上げる。
「この間ぶりですっ」
「えぇ、また、よろしくお願いします」
タチバナの優しげな微笑みに、犬っぽい返事をしながら、アルマは後ろから近づいてきたミリア・エインズワース(ka1287)を迎える。
「僕のお嫁さんのミリアですー」
今度はミリアの周囲をアルマが駆け回る為、彼女は動き回るアルマの身体を抱えて動きを止めた。
「よろしくだな、タチバナさん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
まるで、大型犬とその飼主なのかと思うタチバナであった。
表情そのままに視線を天竜寺 詩(ka0396)に向ける。それに気がつく詩。
「タチバナさん、今日もよろしくね」
「詩さんも、また、お世話になります」
「雑魔がまた出たという事で……死天の名を返上する為にも、コツコツとやっていくしかなさそうだね」
苦笑を浮かべる詩にタチバナは何度も頷いて応える。
原因を突き止める事ができればいいが、今は一つ一つ、解決していくしかない。
「あんたもコレを使ってくれ」
ジャック・エルギン(ka1522)がタチバナに笠を手渡す。
雨でも両手が使えるようにという配慮だ。かたじけないと一言、発すると流浪の侍は笠を受け取り、被った。
「折角、初めての土地に来たってのに、雨とはツイてねーな」
雨模様を眺めるジャックは視線をタチバナに戻す。
「なーんか、嫌な感じがすんだが気のせいかねえ」
「これ以上、酷くならなければいいですけどね」
どうも、ジャックの心配をタチバナは雨の事だと思っているようだ。
そんなやり取りをジッと眺めながら、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は心の中で呟く。
(……刀の腕は一流って、タチバナさんの技を見れるかな?)
ボロボロで質素な鞘の大太刀……振り回すだけでも技量が必要だろう。
「どうかしましたか?」
盗み見していた訳ではないはずなのだが、タチバナが声を掛けてきた。
「……いや、良い刀だなと思って」
「刀は武士の命、ですから」
ニッコリと笑ったタチバナにつられてしまう。
誤魔化しで言ったつもりだったが、鞘のボロさと比べ刀の柄はしっかりと作られているようだった。
歴戦のハンターと流浪の侍をみつめ、ライラ = リューンベリ(ka5507)は内心不安になってきた。
「こ……これから、向かうのは、ぞ……雑魔の討伐で、よ……よろしかったですよね?」
メンバーの構成や経歴を見れば、雑魔や並みの歪虚どころか、歪虚兵や歪虚軍長でも倒せそうな勢いである。
「高位歪虚の討伐に行くとかありませんよね」
「……それも、良いかもしれませんね」
ライラの心配にタチバナがポンと手を叩いて応えたのであった。
●雑魔
空を飛んでいる雑魔の姿を確認できたと思った矢先、雑魔が発する声が聞こえてきた。
まるで、歌っているかのようではあるが……。
「街道の平和は、物流において最重要なものです。必ず……討伐……し……て……」
意気込んでいる最中のライラが突然、うつらうつらと始める。
「雑魔なんぞ、ぶっ……つ……」
「頭を抑えれば……低く……飛ば……」
ミリアとジャックも同様だった。
「寝ちゃだめですよ~。寝ると死んじゃいますよ~」
「そりゃ……凍死の事……だぞ……」
飼主を必死に起こす姿の様だとタチバナはアルマの行動を眺めていた。
雑魔の能力だろう。厄介な力だ。
事前に対策を練っていた者も居たが、負のマテリアルが作用しているのだろう。聞こえるか聞こえないかは、あまり関係が無かったかもしれない。
「あれは、ハーピー? とりえあず、歌には歌で対抗だよ」
詩が意識を集中し、聖歌を唱えて仲間を雑魔の能力から解放させていく間に、アルトが前に出る。
ウィップで空を飛ぶ雑魔を引き落とそうと思った矢先だった。街道脇の川から手足の生えた魚の雑魔が飛び出してきたのだ。
「遅いよ!」
慌てる事なく冷静に反応するアルト。
あっという間に切り刻まれる雑魔。
「次は、サハギン?」
サルヴェイションを続けて行使しながら詩は、切り刻まれて崩れていく雑魔を見て呟いた。
東方というのに、いかにも西洋風の雑魔ばかりだ。
「アハハハハハ!」
奇声を発しながらアルマが機導術を放つ。
三筋の光が、空を飛ぶ雑魔へと突き刺さる。その威力だけで粉砕されていく。
結局、空を飛んでいた上半身人型で両腕に翼を持つ雑魔をアルマの機導術で、川から飛び出してきた魚人もどきの雑魔はアルトの刀によって、倒されたのであった。
「既に……終わっているのです!」
「ぶっと……ばしてない!!」
「大勢のお出迎えだったが、呆気なかったな……」
戦闘に参加できなかったライラ、ミリア、ジャックの声が重なり、
「なにもしないまま終わりましたね」
タチバナもただ雨に打たれているだけだった。
これは、本当に高位歪虚の討伐に行けたかもしれないと侍は心中で思ったのだった。
●歪虚
雑魔を退治し、撃ち漏らしが居ないか確認し終わった頃だった。
詩天の方角から街道をふらりふらりと人影が向かって来た。
「うそ、ゴルゴン!?」
詩が驚く。人型ではあるが、髪には無数の蛇が蠢いていたからだ。
西洋では魔物として認識されている。その者に見つめられたら、石になってしまうとか。
「目を合わせたら駄目!」
盾を構えて様子を見るが、石になる様子はない。
というか、蛇の髪はおぞましいが、それ以外は美人なお姉さんのようにも見えた。
「なんのようだ? 仕事中なんだが……」
街道脇の川の中を調べながらミリアが気にした様子も無く尋ねる。
同様に草むらを、物足りなさそうにザッザッと確認していたジャックも口を開いた。
「悪いが気が立ってんだ。要件は手短に頼むぜ」
そして、アルトは警戒している様子は最低限で、やはり、雑魔の生き残りが居ないか確認している。
仲間達の姿を見てライラが言った。
「皆様……慣れすぎです……」
一人、剣を構えて警戒しているのが、逆に恥ずかしくなる。
そっと、剣を下ろす。もちろん、警戒を解いた訳ではない。
歪虚が感心した様子で両手を広げた。
「容姿を見るに、西方の人達かな?」
「はい! そうなんですよー!」
アルマが飛びかかる勢いで返事をする。
「あんまり迷惑かけんなよ、アルマ。忙しいかも知れないだろ?」
「お喋りしたいだけみたいですしー」
元気な大型犬(アルマ)の返事に、ミリアはアルトに視線を向けた。
彼女は両肩を竦めるだけだった。
ライラが丁寧な口調で問い掛ける。
「あなたは一体何者なのですか? 只の歪虚という訳ではないのでしょう」
「僕は只の歪虚なんだけどね……ちょっと、話を聞きたくて、さ」
その言葉にジャックが間髪入れずに言い放つ。
「交渉事なら応じねぇぞ」
「大丈夫だよ。すこーし仲良くしたいだけだから。僕もニンゲンと話していたら同族から煙たがられるからさ」
ニコッと笑うと美人な上に可愛い歪虚だった。
「仲良くできるなら大丈夫です! お友達になれますー? お名前は?」
場の空気を感じているのかいないのかアルマがぐるぐると歪虚の周りを駆け回る。
カオスだ……とタチバナはこの状況を見て思ったが、特に声を出すことなく見守ろうと思い至る。
「僕の名は、虚博――コハク――。ご覧の通り、憤怒に属する歪虚さ」
髪の毛替わりの蛇が一斉に真っ赤な舌をチロチロと出す。
琥珀色の目の瞳は、人のそれではなく、虫の形をしている。
「貴方、さっきのハーピーやサハギン、先日のミノタウロスについて何か知ってるの?」
詩の質問に、虚博という名の歪虚の表情がパッとなる。
「皆どう見ても、この土地にそぐわない、西洋風のぞう……」
「でしょ! でしょ! 意外だったでしょ!」
「え……えぇ……」
思った以上の歪虚の反応に、思わずたじろぐ詩。
「ほら、歪虚も異文化交流で、新しい形をね!」
「「「異文化」」」
ハンター達の言葉が重なる。
これほど、人間にとって、はた迷惑な交流はない。
「新しく雑魔を作ったのは良かったのだけどさ、ほら、僕が作ったからか、見境ないのばかりでさ。すぐに居なくなっちゃったんだよー」
「それって、誰かに連れて行かれたって事?」
詩の質問に歪虚は頷いた。
「多分、ニンゲンを追いかけて行ったのかな。人里から離れた場所だと油断してたよー。君達が倒したの?」
「そうですよー。こう、ズバーズバーと!」
「アルマ!」
遠慮ない大型犬(アルマ)の言葉と態度に対し飼主(ミリア)が名前を呼んで諌める。
「街道まで現れたので、倒させてもらいました」
「そういう事だ」
ライラとジャックの台詞に、落胆するかと思いきや、歪虚は瞳を輝かせる。
「どうだった? 僕の作った雑魔、どうだった!?」
「あ……いや、その……だな……」
顔がくっつくほど近く迫った美人歪虚の両肩を、髪の蛇を警戒しながら押し返すジャック。
まさか、先ほどの戦闘で、自分はほとんど戦えていなかった事を言いづらく、アルトに救いの視線を向けた。
「……雑魚過ぎた」
「アルト!」
遠慮のない戦友の言葉に、思わず名を呼ぶミリア。
「そっかそっか。まだまだ改良の余地はありそうだね。感想を聞けて良かったよ。ありがとね」
クルッと踵を返す歪虚。
新しく雑魔が改良されて出て困るが、そんなハンター達の心の声など聞こえもせず、歪虚はステップを踏んで、雨の中へと消えて行った。
「……タチバナ様。雑魔って、簡単に捕らえたり、誘拐できませんよね?」
呆然と見送りながらライラが尋ねる。
「そう思いますね」
となると、誰かが雑魔を誘導してきたという事なのだろうか。
だが、誘導してきても雑魔を操る事ができなければ、意味はない。
「なんで、こんな事を……」
詩が詩天へと続く街道を見つめながら、そんな言葉を口にしたのであった。
●襲撃
雨が少し強くなった。雷も鳴り始めている。
虚博という名の憤怒に属する歪虚の存在について、アレコレ言いながら天ノ都へと戻る一行。
「キャァ!?」
突然、ライラが背を押され倒れかける。
直後、乾いた金属音が響く。
「ッ!?」
最後尾だったアルトは見た。
タチバナがライラの背を押し、かつ、抜刀して、飛翔物を弾いたのだ。
間髪入れずに街道脇に伏せて隠れていた忍者姿の者が数名同時に襲いかかってくる。
その間にも、雷鳴に混じって銃撃音が聞こえる。だが、尽く、タチバナはそれらを弾いていた。
「襲撃だ!」
警戒の声を上げながらアルトはタチバナを見て思った
ただの浪人じゃない。刀の腕が一流とか言うが、達人の域を遥かに越えている。雷雨の中、狙撃に気がつき、反応しているのだ。
明らかにタチバナが狙われているようだが、銃弾は彼にかすりもしない。
「オイオイ、タチバナの旦那は何やらかしたんだよ」
ジャックが忍者を迎え討ちながら言った台詞にタチバナが応える。
「私もサッパリです」
「気ぃつけろよ! 雑魔なんぞより、人間の方が厄介だぜ」
太刀と苦無の二刀流で忍者の四肢を切りつける。
狙撃がある以上、迫ってくる忍者は攪乱を目的としているのだろうと予測した。ならば、無力化すればいいだけだ。
「今日は雨と雑魔。時々歪虚、所により暗殺者ってか。物騒だな!」
「先程は守られましたが、タチバナ様は私が守ります」
ライラが竜尾刀で忍者の攻撃を受け止め、弾き返す。
そして、刀の機構を作動させた。
「これは、隠しておきたかったのですが、逃がしませんよ」
刃に仕込んである細い鎖が節ごとに独立し、鞭状となる。
巧みに操り、忍者の一人を絡め取った。
「動くと……切れますよ」
ニッコリと微笑むメイド。
「僕のお友達を狙うなんて、相応のご覚悟をお持ちだと見做します」
アルマが怒りの目をしながらニタリと笑っている。
本気で怒るとこういう人間ほど怖い者は居ない。
「アルマ、逃がすなよ? 最低でも一人は残せ。ああ、アルトがやるか……」
巨大刀を構えてミリアがタチバナの横に回った。
自身が壁になるつもりなのだ。
「く……駄目だ。狙撃箇所の把握が出来なかった」
忍者の一人を叩き伏せながら、アルトは周囲を見渡した。
奇襲~忍者の襲撃の間に続いていた銃撃は止まった。襲撃の失敗を悟ったのだろう。
「この忍者らは覚醒者じゃないみたいだけど、狙撃は猟撃士だったのかな?」
回復の魔法を準備していた詩がため息を付きながら言った。
「……まぁ、こいつらに聞いてみれば分かるだろう。きっと、どこかで監視しているかもしれないしな」
アルトが残忍な表情を浮かべる。
誰が、どうして、タチバナを狙ったのか、身体に訊いてみるつもりなのだろう。
忍者らは全員捕縛され、ライラによって猿轡されていた。
「タチバナさん、命を狙われる心当たりはあるのかい?」
「色々な仕事をしてきたから、全くないとは言い切れない……ですね」
真面目な顔してタチバナは答えた。
「周囲を警戒してくる」
ジャックが笠を直しながら言った。相手はこの雨の中でも正確な狙撃をしてくるのだ。また狙われるかもしれない。
「後は、アルトに任せ、僕らも周囲を警戒しに行くか」
「そうする……」
ぷるぷると小刻みに震えながらアルマは飼主(ミリア)の裾を引っ張る。
これから始まる尋問の事を想像すると……体の震えが止まらない。
「私も周囲をみてきます」
詩が盾を構えながらジャックの後を追いかけ、ライラは残った縄を両手で構える。
「それでは、アルト様。始めましょうか」
「タチバナさんは?」
「……最後まで見届けさせてもらおう」
忍者達の悲鳴が雷鳴の為に響かなかったのは、彼らにとって不幸だったかもしれない……。
ハンター達は街道に出没した雑魔を討伐し、その後、襲いかかてきた忍者らを捕らえた。
尋問した結果、忍者らはただの浪人で、雇われた身である事が分かった。
詳細な作戦や目的は聞かされておらず人相書きの侍を殺すように指示されただけとの事だった。
おしまい。
●???
越地家の屋敷でも雨が降り続いていた。
「申し訳ございませぬ。例の浪人、撃ち漏らしました」
長大な銃身を持つライフルを手に、その男は続けて報告した。
「供も、いずれも手練でありました」
「ふむ……我らの所業とは勘付かれていないだろうな?」
でっぷりとした腹をさすりながら商人は訊く。
「はい。なにも知らぬ浪人を捨て駒に使いました故」
「それは結構。ゴミはゴミらしく処分されれば、なお良しだな」
「全くです」
男の言葉に商人は甲高い笑い声を上げるのであった。
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依頼の相談用スレッド ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/07/02 14:10:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/26 20:23:12 |