ゲスト
(ka0000)
坊ちゃん剣士、魔術師の弟子と東方へ
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/05 07:30
- 完成日
- 2016/07/11 03:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ホームステイ先探し
グラズヘイム王国のとある町で領主であるシャールズ・べリンガーは息子の成長をしみじみ思った。
息子であるリシャール・べリンガーは小さいころ、季節の変わり目ごとに高熱を出していたし、剣の腕もなぜか伸びずやきもきした。そんなリシャールは今では風邪もひくことも減り、舞刀士としての技量も開花し、エトファリカ連邦国に行ってみたいといい始めた。
見聞を広めるために出かけさせることは構わないが、あちらに知り合いはいないため滞在先に苦慮した。ところが、貴族の知り合いがエトファリカの役人を知っているというのだった。そこを頼って連絡をつけ、本人と面会し、日程を詰めた。
出発が差し迫った日の午後、シャールズは息子と話をする。
「いいかい、リシャール。天ノ都に行ったらソサエティの支部で大江 紅葉(kz0163)殿の使者を待つんだよ?」
「はい、父上」
リシャールがワクワクしているのがよくわかる。
「あと、ルゥルちゃんをよろしくな」
「……はい、父上」
一気に緊張感が漂った。
シャールズがハンターだったころの仲間である魔術師が弟子を連れて行ってほしいと押し付けたのだった。
魔術師の弟子であるルゥルとはリシャールは面識があるし、ともにハンターに迷惑かけた仲である。年がちょっと離れた友達とも、妹分みたいな感じであった。
●初めての町
そんなこんなで、到着。
大江家の使者はまだ支部にはいないため、リシャールとルゥルは職員に話してちょっと外を見に出た。荷物の一部は預かってもらう。
「みぎゃあああああ」
ルゥルは感激の声をあげる。なお、まるごとゆぐでぃらというきぐるみを着ているし、頭の上や肩にはぐったりしたパルムとフェレットが乗っている。意外とルゥルは目立つ格好だった。
「ルゥルさん、気を付けてくださいね」
「はいですぅ」
二人は注意をしながら歩き、大きな通りに出た。
グラズヘイムでも田舎の町に住んでいる二人は、人の多さに驚いた。
アッと思った瞬間、人ごみに埋もれた。リシャールはルゥルを見失う。慌てて追おうとしたとき、体当たりをされた。
「どこ見て歩いてんだ」
「あ、す、すみません」
リシャールはくらくらする頭を押さえつつ、謝まる。すぐにルゥルを探そうとした。
リシャールにぶつかった男の体が宙に舞ったのはその直後。男は地面に叩きつけら、取り押さえられる。
「何すんだ!」
男はわめく。
「貴様こそ何をしている。少年、財布は無事か?」
「ないっ! 紐でつないでいたのに」
青年は男を取り押さえたまま、懐を探り、財布を取り出す。
「おい、この者を連れていけ」
青年はそばにいる男たちに声をかける。警邏らしく、すぐさま男は連れていかれた。
「ありがとうございます」
リシャールは青年の鮮やかな行動に感激していた。
「いや、たまたま捕まえられてよかった。それより、あなたは……グラズヘイムの使者か何かですか?」
リシャールはかいつまんで説明をした。
「なるほど、一人旅かな?」
「ルゥルさん! 私より小さい女の子が、人波にさらわれて……」
男は額を抑えた、二人とも慣れていないことをしすぎているのだろうと。
「ソサエティのところに戻ろう。私の名前は松永 光頼と言います。幕府に勤める一応武人です」
信頼できる人物に出会いリシャールは運が良かったと息を吐いたが、ルゥルが心配だった。
●さらわれた
ルゥルは人波にもまれつつ、町の外れまでやってきていた。つい、珍しいとあれこれ見ていたせいもあり、戻るに戻れない。
「どうすればいいですか?」
さすがのルゥルも半泣きだ。
ルゥルの頭の上を陣取っているパルムが胸をたたいて、指をさす。どうやら、このパルムは記憶していたらしい。
「ポルム、すごいです! さ、戻るです。リシャールさんが迷子になってしまいます」
ルゥルはとぼとぼと戻り始める。
「よう、お嬢ちゃん、何か困っているのかな?」
ルゥルは声をかけられた。ちらっと見た瞬間、かかわってはいけない相手だと理解した。
無視したが、相手はしつこく声をかけてきて、最終的に、ルゥルはズダ袋に入れられた。
ルゥルのペットのパルムとフェレットは落とされたために追いかけようとしたが、無理だった。
パルムは気づいた「このままでは拾われてしまう!」と。
パルムはフェレットを説得して、ソサエティに戻ることを選んだ。
「きゅー」
リシャールを見つけてパルムとフェレットは走り出す。
「え? ルゥルさんのペットの……ポルムさんとフレオさん?」
パルムのポルムとフェレットのフレオはうなずいた。
「……何があったんですか?」
この2匹だけがここに戻ってきているのはおかしいのだ。たぶん、パルムのポルムは説明をしているが言葉がわからない。
それから約10分、ポルムの身振り手振りと格闘し、ルゥルがさらわれたということが分かった。
光頼は眉間にしわを寄せる。
「人買いか、金目当てか知らないが、早く探さないとならないな」
「わ、私が目を離したばっかりに」
リシャールはうめいたが、光頼は肩に手を置き首を横に振った。光頼はソサエティに人で不足を補うこともかね、依頼を出した。ルゥルを早く見つけるために。
グラズヘイム王国のとある町で領主であるシャールズ・べリンガーは息子の成長をしみじみ思った。
息子であるリシャール・べリンガーは小さいころ、季節の変わり目ごとに高熱を出していたし、剣の腕もなぜか伸びずやきもきした。そんなリシャールは今では風邪もひくことも減り、舞刀士としての技量も開花し、エトファリカ連邦国に行ってみたいといい始めた。
見聞を広めるために出かけさせることは構わないが、あちらに知り合いはいないため滞在先に苦慮した。ところが、貴族の知り合いがエトファリカの役人を知っているというのだった。そこを頼って連絡をつけ、本人と面会し、日程を詰めた。
出発が差し迫った日の午後、シャールズは息子と話をする。
「いいかい、リシャール。天ノ都に行ったらソサエティの支部で大江 紅葉(kz0163)殿の使者を待つんだよ?」
「はい、父上」
リシャールがワクワクしているのがよくわかる。
「あと、ルゥルちゃんをよろしくな」
「……はい、父上」
一気に緊張感が漂った。
シャールズがハンターだったころの仲間である魔術師が弟子を連れて行ってほしいと押し付けたのだった。
魔術師の弟子であるルゥルとはリシャールは面識があるし、ともにハンターに迷惑かけた仲である。年がちょっと離れた友達とも、妹分みたいな感じであった。
●初めての町
そんなこんなで、到着。
大江家の使者はまだ支部にはいないため、リシャールとルゥルは職員に話してちょっと外を見に出た。荷物の一部は預かってもらう。
「みぎゃあああああ」
ルゥルは感激の声をあげる。なお、まるごとゆぐでぃらというきぐるみを着ているし、頭の上や肩にはぐったりしたパルムとフェレットが乗っている。意外とルゥルは目立つ格好だった。
「ルゥルさん、気を付けてくださいね」
「はいですぅ」
二人は注意をしながら歩き、大きな通りに出た。
グラズヘイムでも田舎の町に住んでいる二人は、人の多さに驚いた。
アッと思った瞬間、人ごみに埋もれた。リシャールはルゥルを見失う。慌てて追おうとしたとき、体当たりをされた。
「どこ見て歩いてんだ」
「あ、す、すみません」
リシャールはくらくらする頭を押さえつつ、謝まる。すぐにルゥルを探そうとした。
リシャールにぶつかった男の体が宙に舞ったのはその直後。男は地面に叩きつけら、取り押さえられる。
「何すんだ!」
男はわめく。
「貴様こそ何をしている。少年、財布は無事か?」
「ないっ! 紐でつないでいたのに」
青年は男を取り押さえたまま、懐を探り、財布を取り出す。
「おい、この者を連れていけ」
青年はそばにいる男たちに声をかける。警邏らしく、すぐさま男は連れていかれた。
「ありがとうございます」
リシャールは青年の鮮やかな行動に感激していた。
「いや、たまたま捕まえられてよかった。それより、あなたは……グラズヘイムの使者か何かですか?」
リシャールはかいつまんで説明をした。
「なるほど、一人旅かな?」
「ルゥルさん! 私より小さい女の子が、人波にさらわれて……」
男は額を抑えた、二人とも慣れていないことをしすぎているのだろうと。
「ソサエティのところに戻ろう。私の名前は松永 光頼と言います。幕府に勤める一応武人です」
信頼できる人物に出会いリシャールは運が良かったと息を吐いたが、ルゥルが心配だった。
●さらわれた
ルゥルは人波にもまれつつ、町の外れまでやってきていた。つい、珍しいとあれこれ見ていたせいもあり、戻るに戻れない。
「どうすればいいですか?」
さすがのルゥルも半泣きだ。
ルゥルの頭の上を陣取っているパルムが胸をたたいて、指をさす。どうやら、このパルムは記憶していたらしい。
「ポルム、すごいです! さ、戻るです。リシャールさんが迷子になってしまいます」
ルゥルはとぼとぼと戻り始める。
「よう、お嬢ちゃん、何か困っているのかな?」
ルゥルは声をかけられた。ちらっと見た瞬間、かかわってはいけない相手だと理解した。
無視したが、相手はしつこく声をかけてきて、最終的に、ルゥルはズダ袋に入れられた。
ルゥルのペットのパルムとフェレットは落とされたために追いかけようとしたが、無理だった。
パルムは気づいた「このままでは拾われてしまう!」と。
パルムはフェレットを説得して、ソサエティに戻ることを選んだ。
「きゅー」
リシャールを見つけてパルムとフェレットは走り出す。
「え? ルゥルさんのペットの……ポルムさんとフレオさん?」
パルムのポルムとフェレットのフレオはうなずいた。
「……何があったんですか?」
この2匹だけがここに戻ってきているのはおかしいのだ。たぶん、パルムのポルムは説明をしているが言葉がわからない。
それから約10分、ポルムの身振り手振りと格闘し、ルゥルがさらわれたということが分かった。
光頼は眉間にしわを寄せる。
「人買いか、金目当てか知らないが、早く探さないとならないな」
「わ、私が目を離したばっかりに」
リシャールはうめいたが、光頼は肩に手を置き首を横に振った。光頼はソサエティに人で不足を補うこともかね、依頼を出した。ルゥルを早く見つけるために。
リプレイ本文
●しおれる
依頼を受けたハンターがやってきたとき、リシャール・べリンガーは泣き出しそうな顔で隅っこに座っていた。
咲月 春夜(ka6377)は淡々と話しかける。
「俺の友人が依頼を受ける。少々見た目や言動が奇抜だけど気にしないでやってほしい。ところで、君はここでうなだれたままで何もしないのか? 友を助けることやそういう悪さをする者がどういう生活をして、どうしてそうしたか知る気はないのか? ……そろそろ俺は行く、友人が来ると思うから。松永さんは彼の護衛を頼みます。俺の友人も守ると思いますが」
困惑しつつもうなずく松永 光頼に見送られ春夜は急いで立ち去る。人気がない路地に入り、荷物から派手な衣装を取り出す。
何とも言えない表情になったリシャールをもやもやする気持ちで見つめ、ザレム・アズール(ka0878)が隣に座る。
「リシャール、お久しぶり。……リシャール、彼が言っていたけど君はどうする? 責任を感じているなら、来るか? ルゥルだって、君が助けにきたら喜ぶと思うぞ」
顔をあげたリシャールは首を縦にひいた。
「そうよね。ルゥルを助けに行くのは私たちハンター。そこに責任を感じてついてくるリシャールがいてもおかしくはないわ。ザレムから離れなければいいし」
マリィア・バルデス(ka5848)がさらりと告げる。マリィア自身は銃で援護する戦い方なので、前に出る可能性が高い者が見るのは必然だ。
依頼を聞き終えたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、ルゥルが幼いころの自分のようで他人事には思えなかった。
「……でも、町中で堂々少女誘拐とは、東方には剛毅な犯罪者いるもんだ」
「死角が多い場所だったようなので……とは言い訳にならないですね」
アルトのつぶやきに治安にかかわる光頼は頭を下げる。
「そういった輩はどこにでもいるものだ……。まあ、その結末も一緒になるがな」
落ち着いた様子でつぶやくロニ・カルディス(ka0551)だが、その目は怒りもにじむ。
「そんじゃま、スマートに行こうかねぇ。情報収集が先だな」
龍崎・カズマ(ka0178)は光頼に、その地域の情報を聞き出す。
各地から集まった人々が多い天ノ都。歪虚の侵攻が止まり、元の場所に戻るものや新しい土地に越す者、残る者いるが、理由はさまざまである。
「待たせたな! 咲月から聞いていると思うが、俺がこの依頼を受けたHerrschaft=Archivesだ! 気軽にヘルシャフトと呼んでいいぞ」
春夜は仮面をつけた騎士のような衣装を身に着け現れた。覚醒時の姿に模した衣装、これが彼の戦いのスタイルだった。
●捜索隊
現場に赴くため、ルゥルのペットたちに話を聞く。
フェレットのフレオはそわそわしつつ、春夜改めヘルシャフトの連れているスターリングシルバーなフェレット雨月に挨拶をしていた。
パルムのポルムは必死に身振り手振りとあれこれ言う。ハンターに同行しているパルムたちは理解したらしく会話している。そして、納得して、同行しているハンターに何か言う。
「パルム同士の会話が成立したのはいいけど、俺たちが置いてけぼりだ」
「おや? ハルが背中にポルムだっけ……を乗せた」
ザレムが途方に暮れている間、アルトのペットのイヌイット・ハスキーのハルにポルムが乗る。
「案内をしてくれるみたいね」
マリィアが確認を取るように言うとポルムはうなずいた。
リシャールがフレオを抱き上げ、歩き始める。ハルが歩き始めたから。
通りでは商人たちに話を聞く余裕もあり、きぐるみの姿は行ったが戻ってきていないとのこと。
「それにしても……ポルムはよく戻ってこられたな」
思わずロニが漏らすほど、人が多い道を通る。
「なんかファンタジーだな……キノコを乗せた犬が進み人間が続く図」
カズマは苦笑する。
リシャールは光頼の袖をつかんでおり何とかついてきていた。
「なるほど、その先は人の波が途切れる。そして、薄暗い道が口を開く」
ヘルシャフトは大仰に指をさした。
人波が途切れ薄暗く感じるのは建物が密集しているためだ。スラムというには整い住宅地区というには抵抗がある中途半端なところ。
ポルムの動作によると、ルゥルは細い路地に入り、捕まった。
まずはこのあたりで聞き込みを行う。
リシャールを連れたザレムは聞いて歩くが、商人たちのように話は出てこない。おしゃべりしている老人の集団に聞くと「モコモコしたのは見た」と言っていたが、いつかどこに行ったかなどは不明だった。
「意外とあいまいだな」
不審人物に関しては「特に見ていないが貧しい人達の住む地域に隠れているかもしれない」とは言っていた。
アルトはルゥルが連れ去られたあたりで聞き込みを行う。人通りが少ないため、通りにいる者は限られる。
「なかなか骨が折れる……」
ハルに尋ねれば「この辺りで何かあった」というように匂いを嗅いでそわそわしただけだった。
「袋でも入れられたのか」
アルトは仲間にトランシーバーで連絡をいれた。
「ならそっちに行ってみるべきだろうか」
ロニは話題に上がった地域に足を踏み入れる。光頼からそのあたりは「非常に危険ということはない」と教えられている。
視線は警戒と期待が入り乱れる。上から下まで、表や裏までチェックされている気分となった。
仲間には注意を促す連絡を入れておいた。
ヘルシャフトが怪しい地域に入るには微妙な服装だが、逆に堂々と目立つと子供が寄ってくる。
その中に、まるごとゆぐでぃらを着ている子がいた。
一瞬問いただしそうになるが、思考をめぐらす。
「おお、それを着るとは珍しいな。暑くないか」
「おじさんもあつくない? これね、かわっててねかわいいの。ねこさんみたいなんだ!」
女の子と思われる子が楽しそうに語った。
子供たちがわいわい騒ぐのを聞き、住まいなどを聞き取った。
マリィアは連絡を受け、該当の家を見つける。トランシーバーで仲間に話しかける。
「あったわよ。なんか、沈黙が下りていて嫌な感じね。どうする、飛び込むにしても情報が不確かだけど? ひとまず見張っていればいいかしら?」
そうしてほしいという要請により、バイクごと隠れられそうなところを見つけ、マリィアは潜んだ。
光頼はトランシーバーで情報を聞く。そばにいたカズマが提案する。
「その家の周り……向こう三軒くらいには巻き込まれたくなければおとなしくしてくれって伝えてくれないか? 根回しできるだろう?」
「……まあ、あの地域の人たちは穏やかな者が多いから……」
「俺は顔役? ボス? に話を通しておきたい。ああいったところは秩序や支配体制があるだろうし?」
カズマの言葉に光頼はうなずく。
「悪人の集まりではないので……それだけは言っておく。助け合って生きている人たちが中心だ、あそこは」
「意外と安全な地域なのか?」
「安全とも言い難いが『比較的』というとしっくりくる。おとなしいせいで悪事を働く者の隠れ蓑にされる」
今回のように。
「わかった、ということは協力してくれるってことだな」
カズマは怪しまれないような恰好を意識して、そこに向かった。着物をまとい、酔っ払いのように見えるように酒もたらし偽装する。
●逃がすな
該当の家の周りは協力的であるが、子らもいるのでスピーディーにとのことだった。噂はどこからか漏れるかわからない。
問題のあばら家が見えるところにハンターは隠れる。裏口も表口もたいして変わらない。道に面しているか隣家があるかといった程度。風通しはよさそうだ。
玄関近くにザレムとリシャールが隠れる。
カズマはふらりと遊撃として手薄そうなところを回る。
少し動きが見渡せるところでアルトは隠れる。
ヘルシャフトは賑やかな衣装が目立つため、隠れるより、堂々と離れたところにいる。
裏口でマシンガンを構えるマリィア。
ロニはタイミングを計る。
「そろそろおなかもすいてくるころあいだろう。早いところ助け出さねばな」
ロニはマリィアを見た。
「特殊な性癖でもない限り、子供をわざわざつるすことは考えにくい。目の届くところに縛って転がしておくのがよっぽど楽、移動にもね。つまり、大人の頭の高さ以上を狙えば基本的にルゥルに当たらない」
「……信じよう」
マリィアの予想に思わず祈りをささげる。
『一応、大丈夫だとは思うよ? 妖精も特に何も言っていないし』
アルトは見張る前に、同行している妖精アリスに頼んでいた。
「でしょ? まずは家に当たるわけだし。α、γ、あの家から逃げだした人間を足止めしろ! 行け」
マリィアの犬たちが放され、そして盛大に弾丸が吐き出された。
ロニはすぐに動けるように構えて待つ。ごろつきが推定非覚醒者だが油断はできない。
聞いているほうが怖くなる音が響く。
リシャールの顔色はザレムが心配するくらい青くなっている。
「弾丸は天井に向かってるから」
中にいる者が悲鳴とともに出てくる。
「ぎゃー」
若い男。
「中に入る、撃つの止めてくれ」
ザレムはトランシーバーで告げると、出てきた男たちをすり抜け中に入っていく。見ているとカズマたちが動き始めたため、ルゥルを探すほうに専念する。
リシャールはついてくるのがやっとのようだ。
「おい、てめーら、ガキ連れてけよ!」
中年の男の声がする。中に入ったザレムが真っ先出会った人物で、強面のいかにも悪人という男だった。
「畜生!」
男は何かにとびかかる。
ザレムは男の先に行くよう踏み出し、手にした剣で男をたたいた。
「うっ」
男はあっさりと倒れる。
リシャールはホッとしたが、まだルゥルが見つかっていない。
ムシロがもぞもぞ動いている。
「誰かいるのか? 無駄な抵抗はするな」
「むぐー、むぐー」
「リシャール、頼む、俺はこいつを縛っているから」
おっかなびっくりリシャールがムシロをめくるとそこにはルゥルがいる、窒息寸前の。
慌ててさるぐつわを外すとルゥルは肩で息をする。
「みぎゃああ、怖かったです」
リシャールがロープを切り、ルゥルのペットを手渡す。ルゥルは泣き顔でポルムとフレオを抱きしめた。
「どうだ!」
裏口を蹴破って入ってきたロニの前にいるのは、ルゥルとザレムとリシャールと縛られた推定悪人1人。
「……マリィア、そっちに敵は行っているか?」
『ええと来ていないわよ? 犬も特に反応していないわ』
「まだそこで待機してもらっていいか?」
『了解よ。それより、ルゥルは見つかった?』
「ああ、重要だったな。無事ここにいる」
『よかった。あとは捕まえるだけね』
他はマシンガンの音のしない表に逃げたのだ。ハンターが張っている。
カズマは近づいてきた男に声をかける。
「どーしたんだい?」
酔っ払いのように酒片手に。
「邪魔だ、どけよよそもん」
「……ま、そうだよね」
取り押さえた。彼の下で暴れる若者は特に力も強くなく、ただの人間のようだ。
「で、お前さんの仲間は何人いるのかって……聞く前にすでに散り散りに逃げまくってる!」
走っていく人数を見ると、ハンターより多かった。
「捕まえろ!」
「と言われなくてもちゃんとやるよ」
カズマが声をかけたときにはアルトは1人に近づき、取り押さえた。鮮やかな手際であり、若いごろつきは何があったかわからなかったに違いない。
「逃がさない!」
ワイヤーウィップを振いもう一人にひっかける。それは倒れてうめいた。
もう一人が逃げ切りそうだったが、機導剣を片手に近づいたヘルシャフトに叩きのめされる。非覚醒者だと気づいたため、捕まえて脅すことにした。
「縄につくか、まだ踊るか?」
クツクツと笑う仮面の男にごろつきは真っ青になって命乞いをした。
「あっけないな! もっと俺を楽しませてくれていいんだぞ?」
ごろつきは首を横に振った。
●尋問
縄で縛られた5人は敷地内にひとまず置かれる。しばらくすれば警邏担当者が連れて行く。
話によるとルゥルを連れて行った男は身ぐるみはぐだけのつもりだったらしい。ルゥルがお金を持っているように見えたから。
お金はたいして持っていなかった。きぐるみは親戚の子にあげてしまった、サイズもよかったから。
そこに最近この地域に来た強面が「人買いに売ればいい」と言った。そんなものがあるかもしれなくとも知らない若者たちは困惑したが、逃げられなかった。
その結果、つかまり、アルトとマリィアに冷たい視線で見下ろされ、ヘルシャフトに機導剣で脅された。
ムシロにくるまるルゥルを女性陣が慰め、男性陣はごろつきを見張る。この間にカズマは地域の顔役にあいさつに行った。
幸いなことにきぐるみは戻ってきた。女の子の母親がきっぱりと「拾ったものなら受け取りますが、盗んだものは受け取れない」と言ったそうだ。
●お騒がせしました
ハンターズソサエティの支部に戻ってきたころ、1人の男性が待っていた。
「リシャールさんとルゥルさんが事件に巻き込まれたと聞いて」
ちょっとぼろぼろのきぐるみのルゥルはぶわっと涙をため、安堵したリシャールはふらつく。
「良かった。紅葉さんのところの使者がいなかったら、ボクも一緒に待ってあげようと思っていたんだ」
アルトはルゥルの頭をくしゃりと撫でる。使者は大江家を取り仕切る家令であるから安心だ。
「ルゥル、リシャールとちゃんと手をつないで歩けないなら、今度は紐で結ぶわよ」
マリィアに叱られルゥルは「ごめんなさい」としおれる。
「リシャールもルゥルを迷子にしちゃだめよ」
「はい……人ごみというものがよくわかりました」
マリィアはリシャールの返答に苦笑する。
「あらゆるものが知識となり君たちの資質となる。見られたことを糧に立派なハンターになり給え!」
Herrschaft=Archivesを名乗った春夜は立ち去る。
「まあ、誘拐がなければよかったがな。2人とも夏休みということなら、大江の人のいうことを聞いて楽しく過ごせばいい」
ロニはしおれていた2人に優しく声をかけた。
「夏休み……君たちは当分ここにいるのか?」
ザレムが気分が変わるようにと尋ねる。
「そうなんです! 大江様のおうちに滞在していいといってくださったので」
「楽しみなんですぅ!」
リシャールとルゥルは楽しみが戻ってきたようだ。
「こうして無事にいられたんだ、思いっきり楽しめばいい」
「はいっ」
カズマに2人は元気な返事をした。
「それにしても、私が遅れとはいえ、5分ほどの間で何があったんですか」
困惑する大江家家令。
「遅れたの5分!?」
ハンターの声が異口同音に響いた、その何倍もの時間が解決までに過ぎ去ったのだから。
依頼を受けたハンターがやってきたとき、リシャール・べリンガーは泣き出しそうな顔で隅っこに座っていた。
咲月 春夜(ka6377)は淡々と話しかける。
「俺の友人が依頼を受ける。少々見た目や言動が奇抜だけど気にしないでやってほしい。ところで、君はここでうなだれたままで何もしないのか? 友を助けることやそういう悪さをする者がどういう生活をして、どうしてそうしたか知る気はないのか? ……そろそろ俺は行く、友人が来ると思うから。松永さんは彼の護衛を頼みます。俺の友人も守ると思いますが」
困惑しつつもうなずく松永 光頼に見送られ春夜は急いで立ち去る。人気がない路地に入り、荷物から派手な衣装を取り出す。
何とも言えない表情になったリシャールをもやもやする気持ちで見つめ、ザレム・アズール(ka0878)が隣に座る。
「リシャール、お久しぶり。……リシャール、彼が言っていたけど君はどうする? 責任を感じているなら、来るか? ルゥルだって、君が助けにきたら喜ぶと思うぞ」
顔をあげたリシャールは首を縦にひいた。
「そうよね。ルゥルを助けに行くのは私たちハンター。そこに責任を感じてついてくるリシャールがいてもおかしくはないわ。ザレムから離れなければいいし」
マリィア・バルデス(ka5848)がさらりと告げる。マリィア自身は銃で援護する戦い方なので、前に出る可能性が高い者が見るのは必然だ。
依頼を聞き終えたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、ルゥルが幼いころの自分のようで他人事には思えなかった。
「……でも、町中で堂々少女誘拐とは、東方には剛毅な犯罪者いるもんだ」
「死角が多い場所だったようなので……とは言い訳にならないですね」
アルトのつぶやきに治安にかかわる光頼は頭を下げる。
「そういった輩はどこにでもいるものだ……。まあ、その結末も一緒になるがな」
落ち着いた様子でつぶやくロニ・カルディス(ka0551)だが、その目は怒りもにじむ。
「そんじゃま、スマートに行こうかねぇ。情報収集が先だな」
龍崎・カズマ(ka0178)は光頼に、その地域の情報を聞き出す。
各地から集まった人々が多い天ノ都。歪虚の侵攻が止まり、元の場所に戻るものや新しい土地に越す者、残る者いるが、理由はさまざまである。
「待たせたな! 咲月から聞いていると思うが、俺がこの依頼を受けたHerrschaft=Archivesだ! 気軽にヘルシャフトと呼んでいいぞ」
春夜は仮面をつけた騎士のような衣装を身に着け現れた。覚醒時の姿に模した衣装、これが彼の戦いのスタイルだった。
●捜索隊
現場に赴くため、ルゥルのペットたちに話を聞く。
フェレットのフレオはそわそわしつつ、春夜改めヘルシャフトの連れているスターリングシルバーなフェレット雨月に挨拶をしていた。
パルムのポルムは必死に身振り手振りとあれこれ言う。ハンターに同行しているパルムたちは理解したらしく会話している。そして、納得して、同行しているハンターに何か言う。
「パルム同士の会話が成立したのはいいけど、俺たちが置いてけぼりだ」
「おや? ハルが背中にポルムだっけ……を乗せた」
ザレムが途方に暮れている間、アルトのペットのイヌイット・ハスキーのハルにポルムが乗る。
「案内をしてくれるみたいね」
マリィアが確認を取るように言うとポルムはうなずいた。
リシャールがフレオを抱き上げ、歩き始める。ハルが歩き始めたから。
通りでは商人たちに話を聞く余裕もあり、きぐるみの姿は行ったが戻ってきていないとのこと。
「それにしても……ポルムはよく戻ってこられたな」
思わずロニが漏らすほど、人が多い道を通る。
「なんかファンタジーだな……キノコを乗せた犬が進み人間が続く図」
カズマは苦笑する。
リシャールは光頼の袖をつかんでおり何とかついてきていた。
「なるほど、その先は人の波が途切れる。そして、薄暗い道が口を開く」
ヘルシャフトは大仰に指をさした。
人波が途切れ薄暗く感じるのは建物が密集しているためだ。スラムというには整い住宅地区というには抵抗がある中途半端なところ。
ポルムの動作によると、ルゥルは細い路地に入り、捕まった。
まずはこのあたりで聞き込みを行う。
リシャールを連れたザレムは聞いて歩くが、商人たちのように話は出てこない。おしゃべりしている老人の集団に聞くと「モコモコしたのは見た」と言っていたが、いつかどこに行ったかなどは不明だった。
「意外とあいまいだな」
不審人物に関しては「特に見ていないが貧しい人達の住む地域に隠れているかもしれない」とは言っていた。
アルトはルゥルが連れ去られたあたりで聞き込みを行う。人通りが少ないため、通りにいる者は限られる。
「なかなか骨が折れる……」
ハルに尋ねれば「この辺りで何かあった」というように匂いを嗅いでそわそわしただけだった。
「袋でも入れられたのか」
アルトは仲間にトランシーバーで連絡をいれた。
「ならそっちに行ってみるべきだろうか」
ロニは話題に上がった地域に足を踏み入れる。光頼からそのあたりは「非常に危険ということはない」と教えられている。
視線は警戒と期待が入り乱れる。上から下まで、表や裏までチェックされている気分となった。
仲間には注意を促す連絡を入れておいた。
ヘルシャフトが怪しい地域に入るには微妙な服装だが、逆に堂々と目立つと子供が寄ってくる。
その中に、まるごとゆぐでぃらを着ている子がいた。
一瞬問いただしそうになるが、思考をめぐらす。
「おお、それを着るとは珍しいな。暑くないか」
「おじさんもあつくない? これね、かわっててねかわいいの。ねこさんみたいなんだ!」
女の子と思われる子が楽しそうに語った。
子供たちがわいわい騒ぐのを聞き、住まいなどを聞き取った。
マリィアは連絡を受け、該当の家を見つける。トランシーバーで仲間に話しかける。
「あったわよ。なんか、沈黙が下りていて嫌な感じね。どうする、飛び込むにしても情報が不確かだけど? ひとまず見張っていればいいかしら?」
そうしてほしいという要請により、バイクごと隠れられそうなところを見つけ、マリィアは潜んだ。
光頼はトランシーバーで情報を聞く。そばにいたカズマが提案する。
「その家の周り……向こう三軒くらいには巻き込まれたくなければおとなしくしてくれって伝えてくれないか? 根回しできるだろう?」
「……まあ、あの地域の人たちは穏やかな者が多いから……」
「俺は顔役? ボス? に話を通しておきたい。ああいったところは秩序や支配体制があるだろうし?」
カズマの言葉に光頼はうなずく。
「悪人の集まりではないので……それだけは言っておく。助け合って生きている人たちが中心だ、あそこは」
「意外と安全な地域なのか?」
「安全とも言い難いが『比較的』というとしっくりくる。おとなしいせいで悪事を働く者の隠れ蓑にされる」
今回のように。
「わかった、ということは協力してくれるってことだな」
カズマは怪しまれないような恰好を意識して、そこに向かった。着物をまとい、酔っ払いのように見えるように酒もたらし偽装する。
●逃がすな
該当の家の周りは協力的であるが、子らもいるのでスピーディーにとのことだった。噂はどこからか漏れるかわからない。
問題のあばら家が見えるところにハンターは隠れる。裏口も表口もたいして変わらない。道に面しているか隣家があるかといった程度。風通しはよさそうだ。
玄関近くにザレムとリシャールが隠れる。
カズマはふらりと遊撃として手薄そうなところを回る。
少し動きが見渡せるところでアルトは隠れる。
ヘルシャフトは賑やかな衣装が目立つため、隠れるより、堂々と離れたところにいる。
裏口でマシンガンを構えるマリィア。
ロニはタイミングを計る。
「そろそろおなかもすいてくるころあいだろう。早いところ助け出さねばな」
ロニはマリィアを見た。
「特殊な性癖でもない限り、子供をわざわざつるすことは考えにくい。目の届くところに縛って転がしておくのがよっぽど楽、移動にもね。つまり、大人の頭の高さ以上を狙えば基本的にルゥルに当たらない」
「……信じよう」
マリィアの予想に思わず祈りをささげる。
『一応、大丈夫だとは思うよ? 妖精も特に何も言っていないし』
アルトは見張る前に、同行している妖精アリスに頼んでいた。
「でしょ? まずは家に当たるわけだし。α、γ、あの家から逃げだした人間を足止めしろ! 行け」
マリィアの犬たちが放され、そして盛大に弾丸が吐き出された。
ロニはすぐに動けるように構えて待つ。ごろつきが推定非覚醒者だが油断はできない。
聞いているほうが怖くなる音が響く。
リシャールの顔色はザレムが心配するくらい青くなっている。
「弾丸は天井に向かってるから」
中にいる者が悲鳴とともに出てくる。
「ぎゃー」
若い男。
「中に入る、撃つの止めてくれ」
ザレムはトランシーバーで告げると、出てきた男たちをすり抜け中に入っていく。見ているとカズマたちが動き始めたため、ルゥルを探すほうに専念する。
リシャールはついてくるのがやっとのようだ。
「おい、てめーら、ガキ連れてけよ!」
中年の男の声がする。中に入ったザレムが真っ先出会った人物で、強面のいかにも悪人という男だった。
「畜生!」
男は何かにとびかかる。
ザレムは男の先に行くよう踏み出し、手にした剣で男をたたいた。
「うっ」
男はあっさりと倒れる。
リシャールはホッとしたが、まだルゥルが見つかっていない。
ムシロがもぞもぞ動いている。
「誰かいるのか? 無駄な抵抗はするな」
「むぐー、むぐー」
「リシャール、頼む、俺はこいつを縛っているから」
おっかなびっくりリシャールがムシロをめくるとそこにはルゥルがいる、窒息寸前の。
慌ててさるぐつわを外すとルゥルは肩で息をする。
「みぎゃああ、怖かったです」
リシャールがロープを切り、ルゥルのペットを手渡す。ルゥルは泣き顔でポルムとフレオを抱きしめた。
「どうだ!」
裏口を蹴破って入ってきたロニの前にいるのは、ルゥルとザレムとリシャールと縛られた推定悪人1人。
「……マリィア、そっちに敵は行っているか?」
『ええと来ていないわよ? 犬も特に反応していないわ』
「まだそこで待機してもらっていいか?」
『了解よ。それより、ルゥルは見つかった?』
「ああ、重要だったな。無事ここにいる」
『よかった。あとは捕まえるだけね』
他はマシンガンの音のしない表に逃げたのだ。ハンターが張っている。
カズマは近づいてきた男に声をかける。
「どーしたんだい?」
酔っ払いのように酒片手に。
「邪魔だ、どけよよそもん」
「……ま、そうだよね」
取り押さえた。彼の下で暴れる若者は特に力も強くなく、ただの人間のようだ。
「で、お前さんの仲間は何人いるのかって……聞く前にすでに散り散りに逃げまくってる!」
走っていく人数を見ると、ハンターより多かった。
「捕まえろ!」
「と言われなくてもちゃんとやるよ」
カズマが声をかけたときにはアルトは1人に近づき、取り押さえた。鮮やかな手際であり、若いごろつきは何があったかわからなかったに違いない。
「逃がさない!」
ワイヤーウィップを振いもう一人にひっかける。それは倒れてうめいた。
もう一人が逃げ切りそうだったが、機導剣を片手に近づいたヘルシャフトに叩きのめされる。非覚醒者だと気づいたため、捕まえて脅すことにした。
「縄につくか、まだ踊るか?」
クツクツと笑う仮面の男にごろつきは真っ青になって命乞いをした。
「あっけないな! もっと俺を楽しませてくれていいんだぞ?」
ごろつきは首を横に振った。
●尋問
縄で縛られた5人は敷地内にひとまず置かれる。しばらくすれば警邏担当者が連れて行く。
話によるとルゥルを連れて行った男は身ぐるみはぐだけのつもりだったらしい。ルゥルがお金を持っているように見えたから。
お金はたいして持っていなかった。きぐるみは親戚の子にあげてしまった、サイズもよかったから。
そこに最近この地域に来た強面が「人買いに売ればいい」と言った。そんなものがあるかもしれなくとも知らない若者たちは困惑したが、逃げられなかった。
その結果、つかまり、アルトとマリィアに冷たい視線で見下ろされ、ヘルシャフトに機導剣で脅された。
ムシロにくるまるルゥルを女性陣が慰め、男性陣はごろつきを見張る。この間にカズマは地域の顔役にあいさつに行った。
幸いなことにきぐるみは戻ってきた。女の子の母親がきっぱりと「拾ったものなら受け取りますが、盗んだものは受け取れない」と言ったそうだ。
●お騒がせしました
ハンターズソサエティの支部に戻ってきたころ、1人の男性が待っていた。
「リシャールさんとルゥルさんが事件に巻き込まれたと聞いて」
ちょっとぼろぼろのきぐるみのルゥルはぶわっと涙をため、安堵したリシャールはふらつく。
「良かった。紅葉さんのところの使者がいなかったら、ボクも一緒に待ってあげようと思っていたんだ」
アルトはルゥルの頭をくしゃりと撫でる。使者は大江家を取り仕切る家令であるから安心だ。
「ルゥル、リシャールとちゃんと手をつないで歩けないなら、今度は紐で結ぶわよ」
マリィアに叱られルゥルは「ごめんなさい」としおれる。
「リシャールもルゥルを迷子にしちゃだめよ」
「はい……人ごみというものがよくわかりました」
マリィアはリシャールの返答に苦笑する。
「あらゆるものが知識となり君たちの資質となる。見られたことを糧に立派なハンターになり給え!」
Herrschaft=Archivesを名乗った春夜は立ち去る。
「まあ、誘拐がなければよかったがな。2人とも夏休みということなら、大江の人のいうことを聞いて楽しく過ごせばいい」
ロニはしおれていた2人に優しく声をかけた。
「夏休み……君たちは当分ここにいるのか?」
ザレムが気分が変わるようにと尋ねる。
「そうなんです! 大江様のおうちに滞在していいといってくださったので」
「楽しみなんですぅ!」
リシャールとルゥルは楽しみが戻ってきたようだ。
「こうして無事にいられたんだ、思いっきり楽しめばいい」
「はいっ」
カズマに2人は元気な返事をした。
「それにしても、私が遅れとはいえ、5分ほどの間で何があったんですか」
困惑する大江家家令。
「遅れたの5分!?」
ハンターの声が異口同音に響いた、その何倍もの時間が解決までに過ぎ去ったのだから。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/02 22:11:50 |
|
![]() |
慈悲はない【相談用】 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/07/05 03:21:29 |