キミの何かが魔法で光る!?

マスター:STANZA

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2014/09/09 15:00
完成日
2014/09/20 11:18

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出? もっと見る

オープニング


 その日、ヴァリオス魔術学院で世紀の大発見(?)があった。
 長い間その存在を噂されながらも、誰も実物を見た事がないと言われた幻の魔道書、その名も「マジカル☆マジェスティック」が、遂に白日の下にその姿を現したのだ。

 まあ、何の事はない。
 本棚の後ろの隙間に落ちたまま、忘れ去られていただけの事なのだけれど。
 別の本を同じ隙間に落としてしまった学生が手を伸ばし、たまたま触れたのがこの本だったのだ。
 お陰で新たに落とされた本は、その存在がすっかり忘れ去られてしまったけれど――

 しかし、それも無理はない。
 このマジカル☆マジェスティック略して「マジ」には、魔法使いなら一度は試してみたい究極にして禁断の魔法が、数限りなく収められているのだから。


「なんかスゲェの見付けた!」
「なにこれマジ!?」
「マジマジ、マジだけに!」
「寒っ!」
「っつか透明薬とかホントに出来んの!?」
 集まって来た学生達が、次々とページをめくりながら大騒ぎを始めた。
 そこに書かれているのは、透明薬の作り方に、風呂の湯気を一瞬にして消し去る方法、透視能力を授ける薬の作り方……などなど。
 ただし、その解説文はどれも肝心な部分が読めなくなっていた。

 例えば……

 その1:透明薬の作り方
 精製水1リットルに、蜘蛛の糸100グラムとマンドラゴラの根(一株分)、古釘一本、それに×××××を入れ、百分の一量になるまで、念を込めながらじっくり煮詰める。
 煮詰まった所にマムシの血を一滴、最後に愛を注入すれば出来上がり。
 一息に飲み干せば忽ち身体が透明になり、効果は1時間続く。

「……愛って何だ?」
「ためらわない事だろ」
「悔やまない事、じゃなかったっけ」
 ×××××の部分は文字が消えていて読めない。
 元が何文字あったのかもわからなかった。
 愛とは多分、思いとか気合いとか、そんなものの事だろう。
 或いはマテリアルかもしれないが、どうやって込めれば良いのだろう。
「何か魔法をぶちかましてみるとか?」
「魔法が使えなきゃ、武器で攻撃してみるとかな!」
 とにかく、試してみる価値はありそうだ。
「透明薬の作り方んとこで、マムシの血をドラゴンの血に変えれば透視薬が出来るらしいぜ!」
 他にも色々なレシピが載っている。
 以下にその一部を紹介しておこう。

 その2:湯気払い薬
 乙女の涙1リットルに、世界の中心で愛を叫びつつ書かれたラブレターの燃え滓を混ぜ、発泡性の入浴剤と共に煮詰めたものを布で漉し、最後に×××××を入れて、愛を込めながらよく混ぜる。
 スプレー容器に入れて噴霧すれば、忽ち周囲の湯気や霧が晴れる。

 その3:惚れ薬
 漢の汗500ミリリットルに、イモリの黒焼き(オス一匹分)とユニコーンの角(粉末)を大さじ一杯、×××××と共に一昼夜煮込む。
 底に沈んだ澱を固めて丸薬にし、飲む。
 相手には材料をイモリの黒焼き(メス一匹分)に変えたものを飲ませれば、忽ちにして互いの魂が引き合う事は間違いなし。

 その4:目を開けたまま寝る薬
 メグスリノキの樹液100ミリリットルに、ブルーベリー果汁10ミリリットルと鷹の爪(粉末)小さじ一杯、最後に×××××を加えて半量になるまで煮込む。
 布で漉したものを目にさせば、退屈な授業も楽勝。

「この鷹の爪って、唐辛子? それとも本物の鷹のツメ?」
「さあ?」
「唐辛子だったら目に痛そうだよなぁ」

 その5:体重減少薬
 フウセンカズラの種を倍量の水で煮込み、柔らかくなったらミキサーにかけ、レモン汁と×××××を少々、仕上げに×××××を加えて冷やし固める。
 体重測定の直前に食べれば、身体が雲の様に軽くなる。

 他にも食べ物の好き嫌いがなくなる薬や、三倍速で動けるようになる薬、夜でも目が見えるようになる薬、脱衣衝動を起こさせる薬……などなど、どう考えても実用性に乏しい——と言うか、小学生男子レベルの発想としか思えない下らない魔法が色々と。
 しかし、実際に作って試してみる価値はある。
 あると言ったらある。
 作り方は一部の文字が読めず、その部分は想像力で補うか、手当たり次第に試してみる他はないが……トライ&エラーはカガクのキホンだ。
 そこ、魔法は科学じゃないとか言わない。
 今こそ迸る妄想力と漲る知的好奇心を爆発させる時!
 成功確率は限りなくゼロに近いが、失敗を怖れてはならない。
 失敗は成功の母、今日の失敗が明日の成功に繋がるのだ。
 笑われたって良いじゃない。
 寧ろ如何に楽しく失敗し、皆を笑わせるか、その一点に賭けてみるのも良いだろう。


 求む挑戦者。
 我々は勇者の出現を、心から待ち望んでいる!

リプレイ本文

●えらんでワクワク

「ここが実習室か!」
 その部屋に足を踏み入れたレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)は、キラキラと目を輝かせた。
「こんなすごい設備、そうそう使えないぜ!」
 壁面の棚に並べられた数々の実験器具や薬品、その他諸々の何だかわからない物――
「オレは化学は専門外だけど、実地テストとか実験て心躍るよな!」
 部屋の中央に置かれた大きな実験台の上には、マジカル☆マジェスティックの魔法書が燦然と輝いている。
 まずはこれをじっくり読み込んで、仮説を立てて手順をメモし、ちゃんと結果をまとめる準備をしなければ。
「実験は楽しいけど、やって終わりじゃガキの遊びだぜ」
 後でちゃんとレポートも書く。書ける状態で生き残れたら!
「で、オレは何を試してみようかなーっと……」
 ページをパラパラと捲り、見付けたのが体重減少薬。
 これなら実用的で、材料を手に入れるのも難しくなさそうだ。
 レシピの欠けているところは、似たような材料や似た効果のレシピを突き合せて推測してみる。
「うん、きっとこれだ!」
 当たってると良いな!

「俺は日高・明。よろしく」
 魔法薬の実験と聞いて、何だか面白そうだと興味を持った日高・明(ka0476)は、軽い気持ちで実習室を覗き込んでみた。
 そう、この時の彼はまだ知らなかったのだ、行く手に待ち受ける、あんな事やこんな事を。
 しかし、気付くべきだった。そこに金刀比良 十六那(ka1841)の姿を見た時点で。
「……何だか色々凄そうな内容ね……本物なのかしら……?」
 内心ドキワク、興味津々なのは、魔術師として当然のこと。
 しかしそれを表に出さないのもまた、魔術師の嗜みというものだろう。
 そんな十六那と共に魔道書を覗き込むのは、友人のイレーヌ(ka1372)だ。
「こういう実験は面白そうなことが起こりそうだな」
 いや、寧ろ起こすのが礼儀ではないだろうか。
「ふむ、身体が透明になる薬というのは、成功すれば使い勝手が良さそうだから挑戦してみるか」
「私は、そうね。空が飛べる魔薬に挑戦してみようかな」
 十六那の憧れは、リアルブルーの漫画に出で来るという「空を飛べる魔法少女」なる存在。
 これまでも僅かずつではあるが進めて研究が、一気に飛躍するチャンス、かもしれない!

「通称マジ? 不思議な魔道書もあるものです」
 本を覗き込んだ摩耶(ka0362)は、書かれたレシピに対して多少の疑念を抱きながらも、好奇心には勝てなかった様だ。
「でも、なんだか楽しそうです……」
 選んだのは、イレーヌと同じ透明化薬。
 どちらがより楽しくぶっとんだ失敗をするか……いや、どちらがより成功に近付く事が出来るか、競ってみるのも楽しそうだ。

「成長薬をつくるんだよ。一足先にちょっと大人になった僕を見たいんだよ」
 弓月 幸子(ka1749)は大人の女性に憧れるお年頃なのだろうか。
 それを聞いたリック=ヴァレリー(ka0614)は、閃いた。
(魔法の薬か……今よりも頑丈な肉体にする薬とかもできるのかな……?)
 象が踏んでも壊れない、いや百匹乗っても余裕の鋼の肉体。
 そんな強い身体があれば、何があっても大事な恋人を守る事が出来そうだという典型的な脳筋思考に基づき、リックは夢中でマジのページを捲る。
「あった!」
 これならきっと、プロテインより確実に筋肉を増やせるに違いない。
 脳内に増える可能性も、なきにしもあらずだが。

「……身長が縮む薬のレシピですって?」
 ソニア(ka0350)の目が、とあるページに引き付けられる。
「できれば25センチくらい縮めて普通の身長になりたいわ」
 さて、そんな都合の良い薬が出来るものだろうか。
「えーと、なになに……」
 マントラゴラ一株をすり潰し、愛しさと切なさと心強さを籠めたものに、猫の足音3匹分を加え、○○○茸とともに煮込んだのち、新鮮な牛乳で五倍に希釈するべし。
「100cc飲むごとに身長が1cm縮むであろう?」
 これが本当なら、2.5リットルを飲み干せば理想の身長になれる筈だ。
 でも待って。
「○○○茸ってなに!?」

「薬の効能、材料、作り方……何から何まで黒魔術の実験のようだ。嫌いじゃ無いがね、ハハハ……」
 久延毘 大二郎(ka1771)は、微妙に乾いた笑いを浮かべた。
 この公開講座、これはまるで「飽くなき探求者」たる自分の為に用意された様なものではないか。
 ならば極めよう。そして作ってやろうではないか……酒に強くなる薬を。
(私の唯一無二のコンプレックス、それは下戸である事だ)
 彼はこのお蔭で、大学の同期達に気を使われ、飲み会等の催しに誘われる事が無かった。
(全く嘆かわしい)
 いや、決して同期の中で私が浮いた存在だったとか、そういう事では無い。
 ……そういう事では無い。
 二度言ったぞ? 大事な事だからな。

「あの、何かお手伝いしましょうか……? 役に、立ちたいので……」
 マルカ・アニチキン(ka2542)は、自分で薬を作る予定はなかった。
 ならば何故この実験に参加したのかと言えば、それは魔法による自身の人間的成長の為である。
 自分の知らない自分になりたいという変身願望は、誰にでもあるものだ。
 それが現実のものとなるならば、この機会を逃す手があろうか。
 未知なる自分と出会う為なら、パシリでも何でもしますよ!
 というわけで、マルカは学院の倉庫を目利きで漁り、怪しい店では交渉術で値切り倒し、仲間達が必要とする材料の全てを手に入れて来た。
 それは全て、魔法に対する執着心のなせる業――


●つくってドキドキ

 材料が揃ったところで、いよいよ薬の調合だ。
「アルコールランプの使い方とか、わかんねーヤツがいたら遠慮なく言ってくれな!」
 レオーネは専門外とはいえ、機導師として機器の取り扱いには慣れている。
 初めての仲間には手取り足取り使い方を教え、助手として手伝ったりもしながら、レオーネは自分の実験も進めていく。
 フウセンカズラの実に、レモン汁と……読めなかった部分には「ムラサキイモの絞り汁」と「膠」を当て嵌めてみた。
 何だかとってもヤバイ感じの色になってきたが、食べられない材料は使っていない筈だ……多分。

「と、とりあえず闇市場でそれらしい茸をゲットしてきたけど……」
 ソニアは緑色に白い斑点の付いた茸をじっと見つめる。
「猫は……そのへんの野良ネコの肉球てしてし音でいいのかしら……」
 とりあえず三匹、マタタビで拉致って来た。
 でも待って。
「愛しさとかどうやって籠めるの!?」
 とりあえずマンドラゴラを胸に挟んでみる。
 何か違う気がしたが、谷間で温めたそれをすり潰し、猫の肉球で鍋を叩きながら煮詰めて――

 幸子は万病の薬となり不老長寿の力を持つというユニコーンの角の粉末と、禁じられた果実であるリンゴ、そして命の水の源であるブドウのシロップを混ぜたものを、12枚のカードで描いた円の中心に置いた鍋に加えて煮込んでいた。
 後は煮詰まったものを遠心分離機にかければ、赤と青のシロップが出来上がる筈なのだが。
「遠心分離機、ないんだよ?」
 そうなると、手動か。
 人力で回すしかないのか。
「よし、そういう事なら俺に任せろ!」
 助っ人を買って出たリックは、まずその前に、出来たばかりの怪しい薬をぐいっと一息に飲み干した――その時、遠く離れた所で友人の下駄の鼻緒が切れた事も知らずに。
 己の直感を信じて買い込んだ各種の材料を、直感を信じて適当にブレンドし煮込んだそれは、筋肉モリモリのマッチョな肉体を授けてくれる筈だ。
「これで俺も、彼女に見合う見合う男になれる!」
 そして待つこと暫し。
「きた!! 力みなぎってきた!! これが魔法の薬の力!?」
 多分、それは気のせいだ。
 幸子の目にも、何ら変化があった様には見えなかった。
 だが思い込みこそ脳筋パワーの根源であり、脳筋の脳筋たる所以。
「ぬぅおぉぉぉっ!」
 両手で鍋をがしっと掴み、ジャイアントスイングによる人力遠心分離だ!
「すごいです、成功です……!」
 固唾を呑んで見守っていたマルカが、感動の声を上げる。
 これは他の薬も期待出来るかもしれない。
 自分の未来の可能性にも、明るい希望が見えて来た――!? ※多分気のせい

 大二郎は悩んでいた。
「砂糖水300mlにホップの毬花100gとマンドラゴラの足二本を微塵切りにして入れ、一日煮込む……一日?」
 この量を丸一日煮込めば、確実に鍋が焦げ付く。
「それを濾過するとあるな」
 という事は、出来上がったものは液体である筈だ。
「水を足しても良いのだろうか、それとも何か特殊な技が必要なのか」
 詳しい記載はない。
 そこは各自のセンスに任されるという事なのか。
 思えば眉唾物の素材調達も、自身の目利きが頼りだった。
 後は粉状にした×××××を溶かし込めば完成らしいが、恐らくこれが肝となる重要な物だ。
 蟒蛇や八大王、大酒飲み関連と当たりを付けて、それらしき物をすり潰し――

 精製水に蜘蛛の糸、古釘、マムシの血……マンドゴドラも手に入れた。
 ×××××は五文字の何かに違いない。
 透明化に使うものだから、きっとソレっぽい生き物だろうと、カメレオンの干物を用意してみた。
 けれど。
「あっ愛は……どうなのかしら?」
 摩耶は悩んだ。
 愛。
 愛。
 確か蒼界のとある国で、ラヴ注入とかいう秘儀を行っていた気がする。
 手でハートマークを作って、それからこう、踊りながら呪文を唱えて――
「らう゛ちゅうにゅうー!(////」
 どーん!

「え、えーと……ね、ねえイザヤ? それ、本当にあってるの? どう見ても人が口にいれるべきでないものまで入っちゃってる様な気がするんですがっ!!」
 魔法という言葉には不思議パワーという単語しか出てこないリアルブルー人の明は、手伝いはしても製作には口を出さない予定。だった。
 が、しかし。その予定は開始そうそう脆くも崩れ去る。
 十六那が台に並べたのは、マーケットで仕入れた物や、元魔術師から譲り受けた怪しい薬品類の数々。
「少し使ってみないとどういう効果があるか解らないけど……」
 それ危険な匂いしかしないんですけど!?
 って、わからないもので何を作ると!?
「ん? だから空を飛べる薬」
 いや、まて。
(繰り返すがボクは魔法はドシロウト。専門家の皆があれだけなんの疑いもなく入れてるんだから大丈夫なんだろう)
 はは、ははは……と乾いた笑い声を上げながら、明は十六那の作業を見守る。
 その隣ではイレーヌが角材を薄く削って鍋に入れていた。
「古釘が入るくらいだから、それに関係しているものだよな、きっと」
 しゃーこしゃーこ、まるで鰹節だ。
「最後に愛が必要らしいが、これも困りどころだな」
 愛情を注げということだろうから、薬が入った容器を胸に抱いて優しく撫でてみるか。
「美味しくなーれ、美味しくなーれ」
 これで出来上がりに変化が生じるとは思えないが、まー物は試しだ。
 そして十六那は余った材料で新薬の開発を始めた。
「うーん……もうちょっと何か作っておきましょう……」
 それを見た明の背を、滝の様な冷や汗が流れ落ちる。
「生きて帰れるのかな、僕」


●ためしてガッデム

 そしていよいよ、薬の効果を確かめる時が来た。
「ンンンッハアアアア↑アァン!!!!! アオーゥ、ウア゛……アアアへェーーー!!! も、もうコレアレなヤバいやないですかぁ……命がけでッヘッヘエエェエェエエイ!!!」 ※音声を出来るだけ忠実に再現しています
 潰れたオットセイの様な声を響かせたマルカは、一体何を飲んだのか。
 そして、その身体にはどんな変化が現れたのか。
 その結果は本人の記憶にも、実験記録にも残っていなかった。
 もう皆、それどころではなかったのだ。

「成功、ですか?」
 摩耶は見事、透明人間になっていた。
「服は消えないのですね?」
 せっかく透明になったのに、これでは意味がない。
 摩耶は着ている物を全て脱ぎ捨て、鏡の前に立った。
「見事です、全く姿が映りません」
 でも、後ろに移っている皆が顔を真っ赤にして大騒ぎしているのは何故?
 それは飲んだ者の気分をやたらと高揚させる薬だった。
 ハイになれば思い込みも激しくなる。
 本人が透明であると思えば、透明に見えてしまうのだ。
 だが実際は、見えていないのは本人だけで――薬が切れた時が楽しみですね!

 大二郎は確かに、酒に強くなった。
 一口で昏倒していた缶ビールを一本空けても何ともない。
 三本空けても大丈夫。
「成功だ、これで私も飲み会デビュー!」
 と、そう上手くは行かないのが世の常で。
 口直しに飲んだミネラルウォーターが、彼の世界をひっくり返した。
 そう、この薬は酒には滅法強くなるが、反動でそれ以外の全ての飲食物で酔っ払う体質になってしまうのだ。

 赤いシロップを飲んだ幸子は、ぐんぐん背が伸び始める。
「成功なんだよ。いつも視点が高いってこんな感じなんだね」
 見晴らしが良い――
「って服が元のままなんだよ!!」
 破ける! って言うか成長したのはタテ方向だけですか!?
「お姉ちゃんには敵わないんだよ……」
 すとんと潔く真っ平らな胸をぴたぴたと叩き、幸子はがっくりと肩を落とした。

「体重測定の直前に食べれば、身体が雲の様に軽くなる……だっけ」
 レオーネは出来上がった薬をまじまじと見る……マジだけに。
「たしかに軽くなる……ってか、なんか体にガスが溜まりそうなんだけど……えぇい、科学に犠牲はつきもの! 一発試してみようじゃねぇか!」
 ぐいーっ、ごっくん!
「おぉっ!?」
 膨らんでいる。胸と尻が、風船の様に……いや、胸と尻が風船になっていた。しかもヘリウムガス入りの。
「浮いてる、浮いてる!?」
 これ、空も飛べるかも!?

「それボクも欲しいんだよ!」
 レオーネの薬を受け取って飲んだ幸子は、忽ちばいんぼいんのないすばでーに!
 これならリックにゲームを仕掛けられる、かも?
 中身はただのガスだけど!

 そして逆に身長を縮めたいソニアは――
「2.5リットル一気飲みはさすがに苦しいけどこれで理想の身長に……んっ、体が熱く……」
 むくむく……ぼぉん!
「って嫌ぁ!? 縮むどころか体が太っ……と、止まらないー!」
 ぶくぶくぶくっ!
 ふくらし粉を入れすぎたパンの様に膨らむソニアの身体。
「ちょっとこれは洒落にっ!」
 ボォン!
「ならなっ!」
 ブクン!
「く、苦し……!」
 部屋いっぱいに、みっちり詰まって漸く止まる。が。
「え、ちょっとこれ、いつまで効果が続くの!? 普通にダイエットしろとかいわないわよね!?」
「これを飲むと良いんだよ!」
 風船おっぱいの力で浮き上がり、上空に逃れた幸子が青いシロップをソニアの口に放り込んだ。
 青のシロップは子供に戻るシロップ、きっと何かしら効果はある、筈!
 ぷっしゅうぅぅぅ!
 今度は見る間に縮んで……待ってそれ縮みすぎ、身長30cmって!

「あいきゃんふらーい!」
 十六那の薬を飲んだイレーヌは、鳥になった。
 両腕を広げ、ばっさばっさと羽ばたくと、ふわりと身体が浮き上がる――わけがない。
 飛んだのは意識だ。そりゃもう見事にぶっ飛んだ。
 一方、交換で透明薬を飲む事になった十六那には、周囲の者の衣服が消えた様に見えていた。
「これ、寧ろ成功じゃない?」
 目指したものと効果は違うが……って言うか、レオーネちゃん男の娘だったんだ!?(何を見た
 因みに、ここに愛情を注ぎ直すと、また違う効果が現れる様だ――ぱっと見変化が無いように見えるが、実は下着が消滅している、という。
 着ている服によっては、風の悪戯で大惨事になる、かも?

 明はほっと胸を撫で下ろしていた。
 二人が交換で実験をするなら、自分の出る幕は――うん、甘かったね。
 他にも色々作ってたもんね。
「こ、これか……」
 ごくりと生唾を飲み込む。
 決して旨そうだとか思った訳では……いや、ちょっとカクテルっぽいかも?
 いやいやいや……
「念のために聞いておくんだけど味見とかした?」
 はい、野暮な質問でしたね。
 良いんだよ、気にしなくて。明の半分は優しさで出来てるからね、嘘だけど。
 意を決し、鼻を摘んで一気に飲む!
 もさーっ!
 体中から大量の毛が生えてきた!
 もっふもふだ!

「どれだけ失敗しても……根拠がなくとも……例えキャラが崩壊しても……!」
 リックは力説した。
「何度でも、ひたすらチャレンジをしよう! そうすれば一度くらいは成功する筈だ! この俺の様に!」
 うん、まだ思い込んでるね。
 だったら全員の薬を全て混ぜ合わせてみようと考えた十六那が、早速それを実行に移した。
「みんなの想いが詰まってるから……もしかするとコレなら成功するかも……」
 勿論、実験台は明だ。
「こ、今度は大丈夫だよな? ね?」
 しかし出されたものは全て飲む。
 後悔はしても、前言は翻さない心意気で! 腰は引けてるけど!
 しかし、マルカがそれを脇から掻っ攫っていった!
「実験体なら私が! と言うか全ての魔法薬を飲むのが私の使命、せめて一口だけでmンンンッハアアアア↑アァン!!!!!」
 その声は、酷い二日酔い状態で部屋の隅に転がる大二郎を直撃――



 結論。
 マジ、マジヤバい。

 あ、薬の効果はいずれも一時間程度で切れる様です、よ!
 あと持ち出しは禁止ね!

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • マジ、マジヤバ。
    ソニア(ka0350
    エルフ|20才|女性|機導師
  • 光の水晶
    摩耶(ka0362
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士
  • 挺身者
    日高・明(ka0476
    人間(蒼)|17才|男性|闘狩人
  • 一日パパ
    リック=ヴァレリー(ka0614
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • 夢の迷い子
    イザヤ・K・フィルデント(ka1841
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談と言う名前のネタ合わせ?
イザヤ・K・フィルデント(ka1841
人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/09/09 01:26:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/04 23:44:48