ゲスト
(ka0000)
ランサック・ゴーストピット
マスター:えーてる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/09 15:00
- 完成日
- 2014/09/14 22:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
最後に、これを記そうと思う。
もう食料も尽きた。水だけで随分保ったように思う。
その水ももうない。取りに行く気力もだ。
落盤で水場への道が塞がれてからは、危険な地域を遠回りして水を得ていた。吸血蝙蝠の餌になった仲間や、壁が崩れて水に飲み込まれた者もいるようだ。
自分が生きていたのは幸運でしかない。
それももう終わりだろう。
語るべきことはもうない。ただ、死にたくない。
ペンを握るのも億劫だ。インクも乾いてきた。
どうして、俺がこんな――。
●
村の誰もが、そこについて言及しなくなった。
それは間違いだったと誰もが気付き、修正のために必要なのは忘却だった。
あの輝かしき黄金時代を忘れること。或いは、その礎となったものを踏みにじること。
そんな生易しいものではないと、誰もが皆知っている。
人柱。炉に入れられた生きた子供。生贄。不都合な真実を海に沈めるため、無理矢理に括りつけた重石。見捨てられた夫。ここは寂れているからと打ち捨てられたゴミの山。
後は時に全てを任せてしまえば、元通りになる――。
不都合なものに目を瞑った結果、必要なものさえ見えなくなった。
当たり前だけれど、過去は消えてはなくならない。
追いかけてくる。
自分が今いるその場所の、ぴたりと後ろにつけている。
そして、遥か遠くに走って逃げた自分たちの背中を、ずっとずっと、見つめている。
●
「今回の依頼は雑魔の討伐なのですが」
受付嬢の少し歯切れの悪い物言いに、ハンターは首を傾げた。
「総数が不明なのです。雑魔自体はさほど強敵ではないようですが、全体像が見えないため危険性が高いと判断しました」
状況は以下。
廃坑の内部から雑魔が出現し、麓の村に危害を出している。この村はかつて鉱山街として賑わっていたが、廃坑と同時に廃れたようだ。
雑魔は全て村の自警団が倒したが、それが数回続いた段階でハンターに調査を依頼。結果、内部に多数の雑魔がいることが判明した。一般人が数人で囲めば大した被害もなく倒せる程度だが、総数が多い。また、四種類ほどの数が確認されている。
一つは巨大な蝙蝠型で、胴体だけで両腕で抱えるようなサイズをしているが、高く飛べないらしい。
一つは岩の塊とそれを接着する肉腫のような雑魔で、硬い岩で身を守っている。
一つはぶよぶよと膨れ上がった人に似た白い肉塊だ。内部に汚水を溜め込んでいる。
一つは浮遊して移動する歪な黒い球体とそれを取り囲む黒い棒きれの群れで出来た、変わった雑魔だ。地上から一定距離を浮遊する。
「強力なヴォイドはいないようですが、数が多く一般人での対処が難しいと思われます。ですがハンターの皆様であれば容易な相手でしょう。詳細な情報は資料をご参照ください」
硬いだけだったり、飛行していたり、やや攻撃しづらい程度である。スキルによる定期的な回復を行えば安全かつ確実に攻略できるだろうと予想される。
「問題はむしろ廃坑の状態です」
受付嬢は見取り図の写しを差し出した。
灯りの有無、規模の不透明さ、地下水による水没区域、落盤による通路の封鎖など、様々な障害が想定される。分かっている部分は地図に記載されているが、結構な数だ。
「廃坑にはまだ地図にも未記載の区画があったり、落盤などで塞がったり新たな通路ができている場合もあるようなので、探索次第では何か発見があるかもしれませんが……」
ソサエティが現地で可能な限り情報を集めたが、どうにも不透明な点が多い。村人の態度も何処か不自然だ。これ以上の追加情報は、廃坑の中にしかないだろう。
ただ、探索に時間を割きすぎたり障害への対処に手間取ると、もしかすると覚醒時間制限を超えるような事態があるかもしれない。計画的に行くべきだ。敵が強くないからといって、あまり舐めてかかるのは推奨されない。準備は念入りに行うべきだろう。
もしものことがあるため、単独行動も慎むべきだ。
「依頼人は早急な掃滅を望んでいます。廃坑の雑魔が通過可能と思われる区域を探索し、雑魔の全滅を確認した段階で依頼は完了となります。説明は以上です」
最後に、これを記そうと思う。
もう食料も尽きた。水だけで随分保ったように思う。
その水ももうない。取りに行く気力もだ。
落盤で水場への道が塞がれてからは、危険な地域を遠回りして水を得ていた。吸血蝙蝠の餌になった仲間や、壁が崩れて水に飲み込まれた者もいるようだ。
自分が生きていたのは幸運でしかない。
それももう終わりだろう。
語るべきことはもうない。ただ、死にたくない。
ペンを握るのも億劫だ。インクも乾いてきた。
どうして、俺がこんな――。
●
村の誰もが、そこについて言及しなくなった。
それは間違いだったと誰もが気付き、修正のために必要なのは忘却だった。
あの輝かしき黄金時代を忘れること。或いは、その礎となったものを踏みにじること。
そんな生易しいものではないと、誰もが皆知っている。
人柱。炉に入れられた生きた子供。生贄。不都合な真実を海に沈めるため、無理矢理に括りつけた重石。見捨てられた夫。ここは寂れているからと打ち捨てられたゴミの山。
後は時に全てを任せてしまえば、元通りになる――。
不都合なものに目を瞑った結果、必要なものさえ見えなくなった。
当たり前だけれど、過去は消えてはなくならない。
追いかけてくる。
自分が今いるその場所の、ぴたりと後ろにつけている。
そして、遥か遠くに走って逃げた自分たちの背中を、ずっとずっと、見つめている。
●
「今回の依頼は雑魔の討伐なのですが」
受付嬢の少し歯切れの悪い物言いに、ハンターは首を傾げた。
「総数が不明なのです。雑魔自体はさほど強敵ではないようですが、全体像が見えないため危険性が高いと判断しました」
状況は以下。
廃坑の内部から雑魔が出現し、麓の村に危害を出している。この村はかつて鉱山街として賑わっていたが、廃坑と同時に廃れたようだ。
雑魔は全て村の自警団が倒したが、それが数回続いた段階でハンターに調査を依頼。結果、内部に多数の雑魔がいることが判明した。一般人が数人で囲めば大した被害もなく倒せる程度だが、総数が多い。また、四種類ほどの数が確認されている。
一つは巨大な蝙蝠型で、胴体だけで両腕で抱えるようなサイズをしているが、高く飛べないらしい。
一つは岩の塊とそれを接着する肉腫のような雑魔で、硬い岩で身を守っている。
一つはぶよぶよと膨れ上がった人に似た白い肉塊だ。内部に汚水を溜め込んでいる。
一つは浮遊して移動する歪な黒い球体とそれを取り囲む黒い棒きれの群れで出来た、変わった雑魔だ。地上から一定距離を浮遊する。
「強力なヴォイドはいないようですが、数が多く一般人での対処が難しいと思われます。ですがハンターの皆様であれば容易な相手でしょう。詳細な情報は資料をご参照ください」
硬いだけだったり、飛行していたり、やや攻撃しづらい程度である。スキルによる定期的な回復を行えば安全かつ確実に攻略できるだろうと予想される。
「問題はむしろ廃坑の状態です」
受付嬢は見取り図の写しを差し出した。
灯りの有無、規模の不透明さ、地下水による水没区域、落盤による通路の封鎖など、様々な障害が想定される。分かっている部分は地図に記載されているが、結構な数だ。
「廃坑にはまだ地図にも未記載の区画があったり、落盤などで塞がったり新たな通路ができている場合もあるようなので、探索次第では何か発見があるかもしれませんが……」
ソサエティが現地で可能な限り情報を集めたが、どうにも不透明な点が多い。村人の態度も何処か不自然だ。これ以上の追加情報は、廃坑の中にしかないだろう。
ただ、探索に時間を割きすぎたり障害への対処に手間取ると、もしかすると覚醒時間制限を超えるような事態があるかもしれない。計画的に行くべきだ。敵が強くないからといって、あまり舐めてかかるのは推奨されない。準備は念入りに行うべきだろう。
もしものことがあるため、単独行動も慎むべきだ。
「依頼人は早急な掃滅を望んでいます。廃坑の雑魔が通過可能と思われる区域を探索し、雑魔の全滅を確認した段階で依頼は完了となります。説明は以上です」
リプレイ本文
●
廃坑に潜む雑魔の殲滅。ただし多数の危険があり、総数は不明。
中々難事であるが、泣き言を言うわけにもいかない。
班を二つに分け、ハンターたちは廃坑探索に挑んだ。
A班は龍崎・カズマ(ka0178)、レイフェン=ランパード(ka0536)、エヴァンス・カルヴィ(ka0639)、ミニー・ミニス(ka2799)の四人だ。
「みんなよろしくね!」
「あぁ、マッピングは頼むぜ」
元気よく片腕を突き上げるミニーに、カズマは返答する。
「しかし、村人は皆何か隠してる風だったな」
エヴァンスはぼやいた。落盤事故。経緯の不透明な閉鎖。どう見ても何かある。
「さっき、村の墓地に行ってきたんだが、妙だったよ」
カズマは難しい顔で唸った。
「鉱山での採掘業なんて、少なくない死人が出るもんだが……慰霊碑に刻まれてる名前が、妙に少ねぇ」
「隠してるってこと?」
「ないとは言わんが……都合の悪いものを隠したいならもうちょっとやりようがあるだろ。だから妙なんだ」
ミニーの言葉にカズマは言葉を濁し、三人は暫く首を傾げる。
レイフェンは頭を振った。
「僕は真相探しに興味はないよ。大事なのは、今殺すべき敵と、生きようとする人だ」
「まぁ、そりゃそうだ。雑魔退治が本分だからな」
カズマもそこには同意する。
「別に暴き立てて村人を責める気もない。村人が何をしていたとしてもね」
「だが、俺は知りたい」
エヴァンスは吠えた。
「ただの殲滅で終わらせる気はねぇ。村人連中のきな臭い何か、探り当てて見せるぜ……?」
カズマのナイフが閃き、ぶくぶくに太った蝙蝠の翼が切断される。そこをレイフェンのモーニングスターが叩き潰した。その横ではミニーの魔法の矢が岩の塊の隙間に滑り込み、中の肉塊を弾き飛ばした。
出会い頭の戦闘は呆気無く終了した。
「敵は本当に手応えねぇな」
例えスキルを切らしても全く問題なく戦えるだろう。時間も然程かかっていない。かなり弱い雑魔だ。
先に進もうとした時、レイフェンが横に手を突き出した。
「待った」
次いで、天井を指差す。
「岩盤がひび割れてやがるな」
ライトを向けてみれば、所々に岩が点在している。落盤で埋まっている通路もあったが、そこは地図上では行き止まりになっていた。
「少し崩してみようか?」
「ダメダメ、少しじゃ済まなそうだよ」
慎重にいくしかない。レイフェンはロープで最低限の補強をしたが、どこまで効果があるかは不明だ。
と、エヴァンスが埋まった通路の岩の隙間から、何かを見つけた。慎重に岩をずらすと、腕ぐらいなら届きそうな隙間が開いた。
取り出したのは、半分にちぎれた日記帳だった。
「日記か」
「詳しい検分は後回しにしよう。覚醒時間が切れるまでに探索を進めるべきじゃないかな」
一同は探索を再開した。
「や、来ないでよ、もうっ」
ミニーは群がる吸血蝙蝠を払いのけた。エヴァンスのライトに当てられると蜘蛛の子を散らすように彼らは飛び去っていった。
カズマが彼らの飛び立った方へ視線を向けると、そこには白骨死体が転がっていた。
「蝙蝠に吸い殺されたのかもな」
「エグい死に方だな」
その隣で、レイフェンが別の死体を見つけた。
「この人は蝙蝠に食われたってわけじゃなさそうだけど」
カズマは鼻を鳴らして吠える柴犬の頭を撫でた。
「……臭うらしいぞ」
「え、毒ガス? この辺りはもう地図に乗ってないよ」
ミニーは地図に書き込む手を止めて、口元を手で覆った。
「あれか。走れば抜けられそうだな」
エヴァンスは通路の向こう側に溜まるガスを見た。レイフェンは死体に語りかけ、幾つかの遺品を手にとった。
「……僕らに危険を伝えてくれてありがとう……なんて、慰めにならないだろうけど」
「行ってみる?」
「立ち止まってるよりはよさそうだな」
四人は息を止めて走りだした。カズマとエヴァンスの柴犬も、苦しそうに呻きながらついてくる。
ようやく抜けた先で息を整え、改めて周囲を見回す。
丁字路であり、左の道は塞がっている。右からは微かに風が吹き込んでいた。
「あん……?」
ちょうどそこは地下渓谷だった。断層の下には地下水脈が流れている。亀裂のような渓谷の丁度左端に出たようだ。
「ははぁ、水没区画ってのはつまり、あそこと繋いちまったせいで出来たわけか」
「おい、これ渡れそうだぞ」
カズマが一人納得していると、エヴァンスが崖に掛けられた橋を指差した。ボロボロで老朽化しているが、ロープはかなり丈夫だ。これを伝えばいけるだろう。
「えぇーこれ渡るの!?」
ミニーが思わず声を上げたが、結局進むことになった。命綱は付けたが、覚醒者の運動能力ならばさしたる問題もなく渡ることが出来た。
半泣きのミニーをよそにB班と連絡を取り、彼らはそのまま奥へと進んだ。
その先は殆ど一本道だった。天井は低く幅は狭い。その上不気味なくらいに静かだ。長い通路はどうやら作業員用だったらしい。
「……死臭がする」
レイフェンが呟いてから少し経った頃に、ようやく広い場所に出た。
「おい、なんだこりゃ……」
あまりの光景に、カズマは思わず呻いた。
大きな落盤があったのはこの辺りなのだろう。あちこちに不自然な巨岩が鎮座し、それは時に足元に敷かれたレールを、そこを走っていたのであろうトロッコごと踏み潰している。勿論、トロッコの中身もだ。
岩は赤黒く汚れていた。
「これ、骨だよね。半分、粉々だけど……」
ミニーが指差したのは、岩の下敷きになった誰かの白骨だった。
「……しかも男の骨じゃねぇぞ。女の、それも老人の骨格だ。ドワーフでもない」
「え?」
「なんでこんな所に老婆がいやがったんだ……?」
カズマは嫌な予感に身を震わせた。ただの事故ではない。何かもっと、悪意ある何かがあったのだ。
「トロッコの数がおかしくねぇか。渋滞起こすもんかよ、普通」
何かがつかえて、通路にぎっしりとトロッコが並んでいた。それらが落盤で一斉に押し潰されたらしい。
エヴァンスはトロッコの隙間を仔細に検分し、何かを見つけた。
「ちょっと手伝ってくれ。レイフェンも頼む。ミニー、そこの紙を引っ張りだしてくれ」
「お、おっけー」
「仕方ないな。遺品は回収してあげたいしね」
「いくぞ。せー、のっ!」
男三人が岩をどうにか浮かせて、ミニーは隙間から紙を引っ張りだした。
「なんだろ、これ」
それは、何かのチラシのようだった。
「えっと――『坑道見学キャンペーン』……?」
●
B班は弥勒 明影(ka0189)、イェルバート(ka1772)、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)、藤林みほ(ka2804)の四人だ。
「ガスだネ、これハ」
アルヴィンは鼻をひくつかせ、口元を手で覆った。角を曲がってみれば、その辺りの空気は確かに濁っていた。
「件の爆発性ガスか」
地図を差して明影が呟くのとほぼ同時に、ガスの向こうから敵がやってきた。
「火気厳禁で行こう」
「了解しました」
イェルバートの言葉にみほが頷き、一同はそのまま戦闘を開始する。
腐敗臭を漏らす白い肉塊と、浮遊する黒い棒きれと球体、それぞれ数体。肉塊には飛び道具で、浮遊型は剣士が対処。
――苦労なく討伐に成功した。
「早く抜けましょう」
みほの催促にアルヴィンも頷く。
「そうだネ、不慮の事故で吹き飛ばされたら目も当てられナイ」
一同は足早にその場を抜ける。その途中、進行方向とは別の曲がり角の先の行き止まりに、イェルバートの視線が向いた。
「待って、何かある」
そこには、バラバラになった骨があった。骨の殆どは焼け焦げて黒く炭化している。
「……爆発で体ごと粉砕されたのだろう」
明影が呟く脇で、イェルバートは顔をしかめた。
「どうかしタ?」
「……いや、思い過ごしだと思う」
「では、先に進むとしよう」
そこから暫く走ると、彼らは大通りに出た。
「大きいネ。主要な通路だったのカナ。次はドッチだい」
アルヴィンの言葉に明影が地図を見やる。村の方面へは岩で塞がっており、奥に進むか脇道に入るしか道はない。
みほは足場や壁を見て首を傾げた。トロッコのレールや坑道の柱があるはずなのに、ここにはその痕跡しかない。爆発に寄るものではない。
「俺はあまり、事の真相に興味はないが」
ふと、明影が口にした。
「この地図はおかしい。俺たちは迂回してここに辿り着いたが、主要通路がこれならば、入り口から直にここに出なければならぬ」
明影の地図では、この通路は明らかに狭く書かれていた。
「改竄してあるのかナ」
「でも、何のためでしょうか……?」
「……みんな、ちょっと来て」
探索をしていたイェルバートが通路の奥から声をかけた。彼は打ち捨てられたトロッコを覗きこんでいた。
「手帳の切れ端だよ。それに、鉱石」
「ワオ、数があるネ」
持って帰るノニ苦労しそうダ、とアルヴィンが呟く。その隣でみほが眉をひそめた。
「ここまではレールがあるんですね」
「剥がされたようだな。鉄資源を回収したのか」
明影が興味の薄い声で呟く。
「……乗ってた人は、どうなったんだろう」
イェルバートは手帳を開いた。
「落盤事故が起こった時、この人は中にいたみたい。多分逃げてきたんじゃないかな」
「ウン? それッテおかしくナイ?」
レールが剥がされた後に落盤事故が起こったのなら、それは資源回収では有り得ない。レールだけでも結構な量と数だ、一人ですぐに出来ることではない。
イェルバートが呟いた。
「意図的に、集団で先に剥がしたんだ」
「じゃあ、入り口もわざと遠くに作ったんじゃなくて」
みほは驚愕して呟いた。
「後から塞いだんだネ。多分、レールの撤去のスグ後に」
アルヴィンは楽しそうに笑った。
「――まるデ鉱夫を殺スためみたいダ」
●
――雑魔退治は滞り無く終了した。
二班は坑道前で合流して、最終確認を行っていた。
「地図にある場所は全部チェックしたみたい」
「水没区画ハみほ嬢がチェックしたヨ。流石ニンジャだネ」
ミニーとアルヴィンが地図を見合わせた。
「それほどでも……。浮き輪は壊れてしまいましたし」
みほは水没区画を、買ってきた浮き輪(ゴムボートは高すぎた)の中の空気を使って渡りきった。武器を手放すとシャインの効果は消えるため、アルヴィンがいる区画の入り口からしか照らせなかったが、どうにか探索を終えることが出来た。水中の敵は誘き出して処理した。
レイフェンは可能な限りで収集してきた遺品を並べていた。明影はそれを眺めている。
「そっちも手帳拾ったんだったか」
「うん……真ん中の数ページだけど。そっちは?」
「終わりの方だな。読んでみるか」
イェルバートとエヴァンスが手帳を合わせて読み始めた。カズマも身を乗り出してそれを覗きこむ。
『最近の無茶な拡張が続いて地盤が緩みだしてるらしい』
「これ、日付がかなり前だな。そんな頃から危うかったのかよ」
エヴァンスが顔をしかめた。数ページは汚れで読めない。エヴァンスは少し飛ばした。
『拡張は正解だった。デカい鉱脈にぶち当たって村は大儲け。鉱石がボロボロ出る。人入りが増えて村もどんどん潤った。俺も銀を掘り当てた。一攫千金とは言わないが三十金くらいはある。これがまだまだ眠っているらしい。楽しみだ』
また暫く汚れている。ページを送る。意味のない記載は読み飛ばした。
『最近雲行きが怪しい。昔ほどの利潤はもう鉱山にはない。村は人口が増えたが稼ぎづらくなってきた。坑道の維持費も馬鹿にならない。だというのにまだ拡張するらしい』
『村全体で食い扶持が増えて、鉱石は出なくなる。拡張しても無駄だ。稼げねーのは当たり前だってのに女房は俺にキレやがる。ぶん殴っちまった』
「……バブルみたいなもんか」
カズマが呟いた。突然の好景気の後に、鉱石の採掘量減から振り戻すようにして不景気に陥ったのだろう。
地図のメモ交換やルート決定を終えたらしく、ミニーやアルヴィンもやってきた。
人が増えたが、金も食事もない――嫌な予感とともに、イェルバートはページを幾らか捲った。
『村が真っ二つに割れちまってる。坑道拡張派と廃坑派だ。分かりやすい対立だ、クソめ。いずれにせよ困るのは俺ら鉱夫だ』
『坑道見学キャンペーンなんてもんが始まった。トロッコで奥まで往復らしい。別の形で客を集めるにしたって雑だ。下見ってことで拡張派の夢見がちな奴らが大量に乗り込んでくる。俺が案内役とはな』
そこから先は汚れてしまっている。血で張り付いたページを剥がすが、読み取れる箇所は少ない。少ないが、結果は予想できた。
「……つまりこうか。拡張派が暴走して、無理な採掘で村は貧困」
「だから全部なかったことにした。落盤事故に見せかけて、入り口と例の地点を崩して……」
エヴァンスは拳を握りしめた。
村の修正のために必要なのは忘却だから――。
時に全てを任せてしまえば元通りになるから――。
暴走した者達全員を、いなかったことにしたから――。
――村の誰もが、そこについて言及しなくなった。
「ふざけやがって……!」
「待てよ。とりあえず落ち着け。これだけじゃ証拠にはならねぇだろ」
カズマの言葉に、エヴァンスは冷静になった。
「死人ニ口ナシ。状況証拠だけなら突っ撥ねるノモ容易だネ」
「くそっ……」
その隣で、イェルバートは呟いた。
「……今回の雑魔は妙な形状をしてたよね」
その言葉を明影が引き継いだ。
「恰も食い過ぎたとばかりに丸々と太った蝙蝠。岩に潰されたかのように密着する肉塊。腐敗した水を溜め込んで膨れた白い肉塊。焼け焦げたような黒い棒と球体……」
「それハまた、何処カデ見たようナ気がするネ。動ク奴と動かナイ奴をサ」
アルヴィンは朗らかに言った。
「水中にも死体が有りました。ふやけてぶよぶよに膨れた、不気味に白い水死体……」
みほが唇を噛んで頭を振った。
「そんな……じゃあ、ミニーたちが倒してきたのって」
ミニーが愕然と口元を覆った。
「でも彼らは蘇らない。死んだ人は可哀想だけど、結果は出てしまったんだから」
レイファンは遺品を並べ終えて、そう口にした。
「うん……もし雑魔なんかになってたんなら、それこそ可哀想だよ」
イェルバートは呟いた。
「下らん結末だ。だが……躊躇なく何十人も殺しながら何食わぬ顔で生きているのだから、中々どうして」
明影はくつくつと笑った。
イェルバートは血で張り付くページをゆっくりと剥がして、一つ一つを確かめた。読める所は殆ど無い。――最後のページ以外は。
それは赤い文字で書かれている。血であることはすぐに分かった。
『最後に、これを記そうと思う――』
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/04 20:17:52 |
|
![]() |
相談卓 アルヴィン = オールドリッチ(ka2378) エルフ|26才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/09/09 12:40:50 |