ゲスト
(ka0000)
馬雑魔討伐依頼
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/09 09:00
- 完成日
- 2016/07/13 07:03
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●余生
王国東部。
同盟領にも程近く、歪虚の襲撃に脅かされている王国西部や、記憶に新しい茨小鬼による動乱に巻き込まれた王国北部に比べると、穏やかな雰囲気である。
その一帯のある所に、なだらかな丘陵があった。高原……と言うほど高い場所にあるわけではないが、草原が広がり、太陽の暖かい日差しが降り注ぐ。
「気持ちがいいのう。今日もどこかで戦いが行われているというのが嘘のようだ」
初老の男性が、馬の胴体を優しく撫でながら声を掛ける。
ここの丘陵を含め、小さな村を僅かばかりの数、治める、領主だ。
「もう、戦場には行かなくて良い。お前は、ここでゆっくりと、世界の行く末を見守ってくれ」
馬が返事の変わりに身を震わせた。
その馬は、北伐の際に、戦場に赴き……負傷した。
なんとか命は繋ぎ留めたが、もう全力で走る事は、叶わない。
「さぁ、家に帰ろうか。仲間が待っているぞ」
手網を持ち、初老の男性は馬と並んで歩く。
この領主は戦場で傷つき、走れなくなった軍馬を療養していた。
かなりの頭数がいて、この領主の財政を圧迫していたが、初老の男性は決して馬達を『処分』しなかった。
こいつらは、戦友なのだ――それが、初老の男性の口癖だった。
●転機
それは、初老男性の急死から始まった。
原因は病死だ。もともと持病を抱えていた初老男性。しかし、その死は余りにも唐突過ぎた。
跡取りは長い間、王都に詰めており、領地経営には参加していなかった。それが、父の死という事で慌てて帰って来たのだ。
「なんだこれは!?」
新しく領主となった男は領地経営の財政収支を見て驚く。
それは、あまりにもずさんというか、ムダが多かったのだ。
「なんというムダ使いを!」
男は直ぐに領地改革に乗り出す。
時代は今、戦に次ぐ戦である。同時に、大きな活躍があれば得られる報いも大きい。
「余剰な兵らは直ぐに前線に。税の徴収も増やせ」
「し、しかし、それでは、領民達は」
長年勤めていた執事が声を上げた。
だが、新しい領主となった男は厳しい表情で執事に怒鳴る。
「俺に意見するんじゃない! 貴様のような老いぼれはもはや不要だ! 去れ!」
「…………お世話になりました」
執事はそれだけ言うと頭を下げた。
新しい領主の男にではない。今は亡き、前領主の肖像画に向かってだった。
●処分
新領主の領地改革はあらゆる方面へと徹底された。
若い男は兵士として駆り出され、幼い子供や老人にまで仕事を命じる。
倹約が叫ばれ、娯楽となるようなものは排除されていった。
「戦で怪我して使えない馬を療養しているだと?」
改革の手は、軍馬の療養施設まで伸びた。
「そんなものは必要ない。戦えない軍馬など、もはや、必要ない。処分しろ」
「し、しかし、この馬達は、前領主から……」
「うるさい! 我々は節約に節約を重ねている。馬なぞに構っている余裕はない!」
こうして、療養施設の廃止が決まった。
多くの領民や前領主からの配下が止めに入ったが、領主は聞く耳を持たなかった。
そして、馬達は――『処分』された――。
●雑魔
雷鳴響く中、馬達が『処分』された場所に何者かが立っていた。
「身勝手ナ、ニンゲン共メ」
その者は怒りの表情だった。
人と犬を足して割った感じの外見の歪虚だ。
胴体や四肢は人のそれに近いが、腰周りや二の腕から先、脛から先は犬のそれである。ふわふわの黄土色の頭髪から、ピョンとした耳が飛び出ている。
お尻のあたりからも、ふかふかの尻尾がぶんぶんとしていた。
「ヲ前達ノ怨ミ、晴ラスナラ、力ヲアゲル」
『処分』された馬達が無残にも打ち捨てられた穴場に、歪虚は負のマテリアルを増大させながら降り立った。
――後日、この領地を通る街道に、首のない馬の雑魔が出現した。
その雑魔らは、戦の物資を送る領主達の馬車を粉砕すると、次の獲物を探し求めるように街道を走り続けるのであった。
王国東部。
同盟領にも程近く、歪虚の襲撃に脅かされている王国西部や、記憶に新しい茨小鬼による動乱に巻き込まれた王国北部に比べると、穏やかな雰囲気である。
その一帯のある所に、なだらかな丘陵があった。高原……と言うほど高い場所にあるわけではないが、草原が広がり、太陽の暖かい日差しが降り注ぐ。
「気持ちがいいのう。今日もどこかで戦いが行われているというのが嘘のようだ」
初老の男性が、馬の胴体を優しく撫でながら声を掛ける。
ここの丘陵を含め、小さな村を僅かばかりの数、治める、領主だ。
「もう、戦場には行かなくて良い。お前は、ここでゆっくりと、世界の行く末を見守ってくれ」
馬が返事の変わりに身を震わせた。
その馬は、北伐の際に、戦場に赴き……負傷した。
なんとか命は繋ぎ留めたが、もう全力で走る事は、叶わない。
「さぁ、家に帰ろうか。仲間が待っているぞ」
手網を持ち、初老の男性は馬と並んで歩く。
この領主は戦場で傷つき、走れなくなった軍馬を療養していた。
かなりの頭数がいて、この領主の財政を圧迫していたが、初老の男性は決して馬達を『処分』しなかった。
こいつらは、戦友なのだ――それが、初老の男性の口癖だった。
●転機
それは、初老男性の急死から始まった。
原因は病死だ。もともと持病を抱えていた初老男性。しかし、その死は余りにも唐突過ぎた。
跡取りは長い間、王都に詰めており、領地経営には参加していなかった。それが、父の死という事で慌てて帰って来たのだ。
「なんだこれは!?」
新しく領主となった男は領地経営の財政収支を見て驚く。
それは、あまりにもずさんというか、ムダが多かったのだ。
「なんというムダ使いを!」
男は直ぐに領地改革に乗り出す。
時代は今、戦に次ぐ戦である。同時に、大きな活躍があれば得られる報いも大きい。
「余剰な兵らは直ぐに前線に。税の徴収も増やせ」
「し、しかし、それでは、領民達は」
長年勤めていた執事が声を上げた。
だが、新しい領主となった男は厳しい表情で執事に怒鳴る。
「俺に意見するんじゃない! 貴様のような老いぼれはもはや不要だ! 去れ!」
「…………お世話になりました」
執事はそれだけ言うと頭を下げた。
新しい領主の男にではない。今は亡き、前領主の肖像画に向かってだった。
●処分
新領主の領地改革はあらゆる方面へと徹底された。
若い男は兵士として駆り出され、幼い子供や老人にまで仕事を命じる。
倹約が叫ばれ、娯楽となるようなものは排除されていった。
「戦で怪我して使えない馬を療養しているだと?」
改革の手は、軍馬の療養施設まで伸びた。
「そんなものは必要ない。戦えない軍馬など、もはや、必要ない。処分しろ」
「し、しかし、この馬達は、前領主から……」
「うるさい! 我々は節約に節約を重ねている。馬なぞに構っている余裕はない!」
こうして、療養施設の廃止が決まった。
多くの領民や前領主からの配下が止めに入ったが、領主は聞く耳を持たなかった。
そして、馬達は――『処分』された――。
●雑魔
雷鳴響く中、馬達が『処分』された場所に何者かが立っていた。
「身勝手ナ、ニンゲン共メ」
その者は怒りの表情だった。
人と犬を足して割った感じの外見の歪虚だ。
胴体や四肢は人のそれに近いが、腰周りや二の腕から先、脛から先は犬のそれである。ふわふわの黄土色の頭髪から、ピョンとした耳が飛び出ている。
お尻のあたりからも、ふかふかの尻尾がぶんぶんとしていた。
「ヲ前達ノ怨ミ、晴ラスナラ、力ヲアゲル」
『処分』された馬達が無残にも打ち捨てられた穴場に、歪虚は負のマテリアルを増大させながら降り立った。
――後日、この領地を通る街道に、首のない馬の雑魔が出現した。
その雑魔らは、戦の物資を送る領主達の馬車を粉砕すると、次の獲物を探し求めるように街道を走り続けるのであった。
リプレイ本文
●街道にて
首の無い馬雑魔が疾走するという街道に到着したハンター達。
その中で、ライラ = リューンベリ(ka5507)は真剣な眼差しで街道の先を見つめていた。
「馬であろうと、お屋敷に所属する以上は、お屋敷の為の備品である事に変わりはありません」
メイド服のスカートを揺らして一歩一歩、確かに地を踏んでいく。
「お屋敷に、仇を成すなんて事は、以ての外ですわ」
彼女の中では人であれ馬であれ、仕え人としての熱い血が流れている様子である。
そんなライラの呟きに、ラジェンドラ(ka6353)が、なにか考える表情を浮かべながら応えた。
「首のない馬か、何か無念があるのだろうが……人に、仇を成した以上は、退治させてもらう」
死んだと思っていた首のない馬が雑魔となり街道を走り抜ける――怪談話でもあるまいし、なにか恨みや無念を感じずにはいられない。
「恨んでいるだろうけど、だからといって、堕ちて良い訳じゃあない」
そう言ったのは、手に持ったたかし丸的な何かではなく、メオ・C・ウィスタリア(ka3988)だった。
人間の身勝手で殺処分されてしまったという話だ。いかにも、化けてでてくる話だろうし、そもそも、殺処分する他にも、他にやり方はあったはずだ。
「メオさんの手で、もう一度眠らせよう」
「ふむ、あまり強そうな敵ではなさそうだがのう……まあ、これも仕事だな」
ぐっと斧を握り締めたメオと同じように、大斧を担いで、筋肉の塊――ではなく、バルバロス(ka2119)も、そう呟いた。
雑魔といえども、一般人には脅威である事には変わりない。退治は大事な仕事だ。
「一度でも、人と共に戦ってくれた軍馬には、単なる殺処分ではなく、第二の活躍の場を作ってあげても良かったかもな……」
グラズヘイム王国アークスタッド牧場産のゴースロン種の愛馬――テトラ――に跨りながら、テノール(ka5676)は遠くに見える町を見つめていた。
雑魔に襲撃され死んだ領主の領地経営そのものに関しては問題はなかったかもしれない。治めるという事は、綺麗事だけではなく、時には非情な決断も迫られるからだ。
もっとも、その内容が適切だったかという事になると……今の状況に繋がる訳ではあるが。
仲間達の真摯な思いを耳にし、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は思わず、空を見上げた。
「首無し馬の雑魔ねー……。私も、お仕事の途中に、馬を殺しちゃった事があるけど……」
それは、今年の春の事。グラズヘイム王国の東に広がるリンダールの森に現れた熊の雑魔を退治する際の事だった。
アルスレーテは、雑魔を誘き出す為に、乗っていた馬(桜 肉彦)を、その場で肉塊へと変えたのだ。
「……あの子も、そのうち、化けて出てくるのかしら……」
名前に負けていない美しい桜肉を思い出しながら、そんな言葉を呟いた。
●雑魔討伐
「馬の調教は、得意では無いのですけど」
ライラが竜尾刀を鞭形態へと変化させて口を開いた。
眼前には迫ってくる馬の雑魔が3体。迎え討つ為に、ハンター達も三つに分かれた。
「ワシは、真正面から小細工なしで、粉砕するのみだ!」
筋肉の塊――ではなく、バルバロスが戦馬の上で巨大な斧を振り回し、構える。
周囲は遮る物はない。彼に出来る事は、相手に斧を叩き込む位だ。
「首が無いのでしたら、どうやって周りを見ているのでしょうね」
いよいよ迫った雑魔。その進行方向上へ龍鉱石を投げてみるライラ。
即座に投げた反対側へと自身を飛び出させた。
「まずは、足を頂きます」
絡ませようと操った竜尾刀。
馬雑魔は足を取られるが、倒れる訳でもなく突進の勢いが弱まる留まった。
「ふんっ!」
バルバロスは、雑魔とすれ違いながら、騎乗していた馬への直撃を足で捌いて、雑魔をいなすと、走り抜けながら素早く方向転換。
再突進の勢いと自身のマテリアルを最大限まで高め、最上段に構えた斧を雑魔へと振り下ろした。
「どりゃぁぁぁ!」
手応えを感じた直後、全身の筋肉が膨れ上がり、降ろした斧を持ち上げながら、V字に斬りつける。
ライラはその瞬間、竜尾刀を巧みに引き、雑魔の動きを遮る。
「逃しませんよ」
「ヌオォォォォ!!」
二人のハンターの声が響くと同時に、雑魔はそれだけで塵となっていった。
「……意外と、呆気なかったですね」
「一撃で終わってしまうとは、情けない!」
筋肉の塊――ではなく、バルバロスの一撃は文字通り、雑魔を粉砕してしまったのだった。
轟音を響かせながら走ってくる馬雑魔を見定めながらテノールは拳を握る。
「走りたいだけ走らせて、それに付き合ってやりた処では、あるんだがな」
ここは街道だ。雑魔は見境なく人を襲っている。
早急な退治以外の方法はない。
「……人の身勝手で、活かしたり殺したり……本当に、すまないな」
そう告げながら、彼は全身のマテリアルを練り上げて放出する格闘士の技を放つ。
一直線に雑魔を貫く。それでも、雑魔の突進は止まない。
盾を構えて突進に備えるが、その脇をメオが進む。
すれ違い様に、一撃を入れ、そのまま通り抜けて、然る後、反転。雑魔を挟み撃ちにするつもりなのだ。
「ホットドッグとおんなじ種類っぽいなー。……大丈夫、メオさんは、ホットドッグを殺したりなんかしないよ」
愛馬――ホットドッグ――の首を、(たかし丸で)撫でながら言うと、斧を構えた。
足で合図し、駆け出す愛馬。
対して、正面から向かって来る雑魔は明らかに突撃してきたが、メオは斧で咄嗟に防御しつつ返す動きで叩きつけた。
「あれ……」
テノールが既にダメージを与えていたというのもあるだろう。
反撃で繰り出した斧の攻撃を受け、雑魔はボロボロと崩れていく。
まだ、走り足らなかったのだろうか、それとも、疾走する勢いが衰える前だったのだろうか、走りながら雑魔は塵屑となっていった。
「一度に3匹……と思ったら、もう1体しか居ないが、当てて見せる」
機導術を操りながらラジェンドラが迫ってくる雑魔に狙いを定める。
繰り出される光が、雑魔の胴体へと吸い込まれるように直撃した。
「走り回られるのは、厄介なんでな」
機動力はありそうな馬だ。
逃がしたりしたら追いかけるのも骨が折れるだろう。
「……狙ってる余裕あるかしら?」
アルスレーテは呟きながら、マテリアルを集中させた。
雑魔の足を狙えればと思った。機動力を削げば、後は殴るだけだからだ。
「縮地瞬動――」
大地を蹴り、一気に距離を詰めるアルスレーテ。
体内のマテリアルを脚から腕へ、腕から手に持つ鉄扇へと流し込む。
濁流となったマテリアルを雑魔へと叩き込んだ衝撃は、確かな手応えを感じた。
「くるくるー、ってね」
直後、身体を反転。
東方の舞のように、円を描くイメージでクルっと回ってみせたが、雑魔の反撃を避けきれなかった。
「フュラーの嬢ちゃん!」
ラジェンドラの声と共に、アルスレーテの前に機導術の障壁が現れる。
雑魔が突き出した足は障壁を叩き割ったが、鉄扇で受け流されてしまった。
「次で終わらせるわよ」
カチっと音を立てて、広げた鉄扇を閉じると、再びマテリアルを雑魔へと叩きつける。
首が無い割には、どこから声を出したのだろうか、馬の鳴き声を発しながら、雑魔は消え去った。
●打ち捨てられた療養所にて
バルバロスが、口からフシューと音を立てて馬の療養所跡地内を探索していた。
「他には、おらんのか」
斧を構えてキョロキョロと雑魔や歪虚の気配を探す。
そんな筋肉の塊のような仲間の背中を眺めながらラジェンドラは、冷静に施設内を観察していた。
打ち捨てられて、そんなに時は経っていないだろう。だが、この荒れ具合は酷いものだった。
「フュラーの嬢ちゃん、これを見てくれ」
「どうしたのかしら?」
ラジェンドラは傷んだノートを取り出して、仲間を呼んだ。
首をかしげながらアルスレーテはそのノートを受け取る。横に来たライラがそれを見て呟く。
「日記……でしょうか?」
「そうみたいだね」
パラパラとめくると、そこには施設の管理者であろう者が記した事が書いてあった。
その大部分が馬の世話に関する事だった。事細かく、食事の状況や排泄、毛並みの状態まで記されている。
「農家への手伝いや荷馬車への応援も行っていたみたいですね」
ライラが該当記述を見つけて言った。
療養所として地元にも開かれていたのだろう。
「殺処分するだけでは、勿体無いですのに。新しい領主様に療養所のメリットをちゃんと伝えられていれば、こんな事にはならなかったでしょうに……」
「そうだな。必要ないから、殺す……他に、何か道はなかったのか」
二人の会話を、アルスレーテは聞いているだけしかなかった。
果たして、肉彦の最後は、その死に方に相応しいものだったのか……。
「それにしても、男の人って、なんで、戦の事ばかり考えているのでしょうね」
呆れるように言ったライラの言葉にラジェンドラは困ったような顔を浮かべた。
「領主も色々と考える事があるという事だろう。新しい領主には、ここでの事を伝えられるといいかもな」
「それは、確かにそうですね。戦の事ばかり考えては、逆に村は困窮しますから」
その時だった。仲間の声が外から響く。
「雑魔が居たかぁぁぁ!」
建物のどこかからか、バルバロスの叫び声が響いた。
外に居たのは、メオとテノールの二人だった。
仲間達が療養所の中を探索している間、二人は外を調査していたのだ。
「これは酷い状態だな」
腐臭に顔をしかめるテノール。
療養所からさほど遠くない場所に、二人が探していたものはあった。
「お疲れ様……もう、ゆっくり眠っていいんだよ」
メオは目を閉じて黙祷した。
そこは、馬が殺処分されたと思わしき場所だった。
雑に掘られた穴の中に、馬の遺体が無造作にいくつも転がっている。
「……ここの領主さんだったおじいさんと、天国で幸せに過ごしてね」
「しっかりと、弔ってやらないとな」
このままだと衛生上もよくないはずだ。
荼毘した上で、土を被せておかないといけないだろう。
そこへ、療養所を探索していた仲間達が合流した。
「敵……では、ないのか……」
斧を構えたままのバルバロスが残念そうに言った。
そして、周囲に歪虚の痕跡がないのか探し出す。
「……そうだな。第三者的な存在が居なかったのか、念の為、探しておいた方がいいかもな」
さすがに手が込んだ陰謀はないだろうが、二度も三度も同じように雑魔を出現させる訳にはいかない。
テノールの言葉に、ライラは頷くと彼女も辺りを詳しく見始めた。
一方、アルスレーテは馬達が処分された穴に向かって祈りを捧げていた。
肉塊と化したそれは、確かに雑魔が出現しても可笑しくない。そんな雰囲気を発している。
「人の都合で、振り回された命か……まあ、自分の命だって、自分の思うようにはいかないものか」
慰めるつもりで言った訳ではないだろうが、ラジェンドラが隣で静かに言った。
ここで、穴の中に折り重なっているのは馬だが、人でない保障はどこにもない。
そういう意味では、人も馬も一緒なのかもしれない。
「だとしたら……」
深刻そうに口を開いたアルスレーテの肩をテノールは叩いた。
「少なくとも、無駄死ではなかったはずだ」
熊の雑魔を誘き出す為の餌だったかもしれない。だが、その餌がなかったら、熊雑魔は姿を現さなかったかもしれない。
その結果、より多くの人々の脅威になっていた可能性もある。
「飼い馬を屠った身としては、ね……」
「なら、弔ってやればいい」
必要だった。意味はあった。そして、憶う事があるのであれば、それは、単なる殺処分とは異なるはずだ。
もしかして、気の持ちようかもしれない。だけど、それが在るか無いかは、雲泥の差だ。少なくとも、殺処分した領主と、アルスレーテは違う。
「そうね」
空を仰ぎ見たアルスレーテ。
良い機会かもしれない。きっと、肉彦は天国から見守ってくれているはずだ。
なにか痕跡がないか探していたメオが茶色何かを拾った。
微かに、負のマテリアルを感じなくもない。
「たかしの糸……ではないし、動物の毛? でも、これ、馬のじゃないよね?」
掲げてみせた毛のようなものをバルバロスは怪訝な表情で凝視する。
次に、匂いを嗅いでみたが――特になにか感じるものはない。
「犬っぽい感じがするのぉ」
とりあえず、強敵の匂いが――した気はする。願望かもしれないが。
だが、なぜ、こんな所に、そんなものがあるのだろうか。
その答えが見つからないまま、次はライラの声が響いた。
「皆様、これをご覧下さい」
そこには、馬の足跡と共に、明らかに馬ではない足跡があった。
「何の足跡だこれ……人じゃないが、二足歩行をしている……のか……」
膝をついて詳しく足跡を観察しながらラジェンドラが言う。
犬のような足跡にも見えるが、二足歩行する犬など、聞いた事はない。
「考えられるのは歪虚か」
周囲を警戒しながらテノールは呟く。
もし、そうであれば、この雑魔発生の謎も、一応の説明がつく。
怨念や恨みだけで、生物が死んだ後に雑魔や歪虚になったりするケースは、頻繁にある訳ではない。
むしろ、原因となるのは負のマテリアルであり、歪虚が居たとすれば、雑魔の出現の理由としてもっともなものになる。
「……メオさんの推測によるとだねぇ、多分歪虚はアレだよ、うーんと……何かしら、人間に恨みを持っている?」
多分……と自信なさげに続けるメオ。
その推測も理由付けには意味はあるだろう。
歪虚は雑魔を生み出せる場合もあるが、馬の死体を雑魔とする必要性もない。
わざわざ、惨殺された馬を使ったという事は、人間に恨みをもっているとも考えられる。
「だとしたら、また、あるかもしれないな」
テノールの言葉が予言めいて流れていった。
ハンター達は街道に出没した馬の雑魔を討伐。療養所も探索し、安全の確保を確認した。
殺処分された馬達はハンター達の提案で丁重に弔われる事になり、また、療養所の存在や活用の意義を、新しく領主になる者へ伝える事もできた。
新しく領主となった若者は、軍馬や農耕馬などの療養所の再建を認めたのであった。
おしまい。
●惨劇の影に
「良イ、ニンゲンモ、イル。ケド、悪イ、ニンゲンモ、イル」
牧草地をゆっくりと歩く馬を、遠くから眺めながら、何者かは呟いた。
自分も、あの様なハンター達と出逢っていたら、違った生き方があったのだろうか。
「……ナラ、悪イ、ニンゲンヲ、全部、殺シテシマエバイイ。ソレダケダ」
お尻のあたりから姿を見せている、ふかふかの尻尾を振りながら、その歪虚は踵を返した。
犬と人を足して割ったような姿の歪虚は歩き出す。
その歪虚の名は、ネオピア。
次に現れるのは王国の西か東か……それは、誰にも分からない。
首の無い馬雑魔が疾走するという街道に到着したハンター達。
その中で、ライラ = リューンベリ(ka5507)は真剣な眼差しで街道の先を見つめていた。
「馬であろうと、お屋敷に所属する以上は、お屋敷の為の備品である事に変わりはありません」
メイド服のスカートを揺らして一歩一歩、確かに地を踏んでいく。
「お屋敷に、仇を成すなんて事は、以ての外ですわ」
彼女の中では人であれ馬であれ、仕え人としての熱い血が流れている様子である。
そんなライラの呟きに、ラジェンドラ(ka6353)が、なにか考える表情を浮かべながら応えた。
「首のない馬か、何か無念があるのだろうが……人に、仇を成した以上は、退治させてもらう」
死んだと思っていた首のない馬が雑魔となり街道を走り抜ける――怪談話でもあるまいし、なにか恨みや無念を感じずにはいられない。
「恨んでいるだろうけど、だからといって、堕ちて良い訳じゃあない」
そう言ったのは、手に持ったたかし丸的な何かではなく、メオ・C・ウィスタリア(ka3988)だった。
人間の身勝手で殺処分されてしまったという話だ。いかにも、化けてでてくる話だろうし、そもそも、殺処分する他にも、他にやり方はあったはずだ。
「メオさんの手で、もう一度眠らせよう」
「ふむ、あまり強そうな敵ではなさそうだがのう……まあ、これも仕事だな」
ぐっと斧を握り締めたメオと同じように、大斧を担いで、筋肉の塊――ではなく、バルバロス(ka2119)も、そう呟いた。
雑魔といえども、一般人には脅威である事には変わりない。退治は大事な仕事だ。
「一度でも、人と共に戦ってくれた軍馬には、単なる殺処分ではなく、第二の活躍の場を作ってあげても良かったかもな……」
グラズヘイム王国アークスタッド牧場産のゴースロン種の愛馬――テトラ――に跨りながら、テノール(ka5676)は遠くに見える町を見つめていた。
雑魔に襲撃され死んだ領主の領地経営そのものに関しては問題はなかったかもしれない。治めるという事は、綺麗事だけではなく、時には非情な決断も迫られるからだ。
もっとも、その内容が適切だったかという事になると……今の状況に繋がる訳ではあるが。
仲間達の真摯な思いを耳にし、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は思わず、空を見上げた。
「首無し馬の雑魔ねー……。私も、お仕事の途中に、馬を殺しちゃった事があるけど……」
それは、今年の春の事。グラズヘイム王国の東に広がるリンダールの森に現れた熊の雑魔を退治する際の事だった。
アルスレーテは、雑魔を誘き出す為に、乗っていた馬(桜 肉彦)を、その場で肉塊へと変えたのだ。
「……あの子も、そのうち、化けて出てくるのかしら……」
名前に負けていない美しい桜肉を思い出しながら、そんな言葉を呟いた。
●雑魔討伐
「馬の調教は、得意では無いのですけど」
ライラが竜尾刀を鞭形態へと変化させて口を開いた。
眼前には迫ってくる馬の雑魔が3体。迎え討つ為に、ハンター達も三つに分かれた。
「ワシは、真正面から小細工なしで、粉砕するのみだ!」
筋肉の塊――ではなく、バルバロスが戦馬の上で巨大な斧を振り回し、構える。
周囲は遮る物はない。彼に出来る事は、相手に斧を叩き込む位だ。
「首が無いのでしたら、どうやって周りを見ているのでしょうね」
いよいよ迫った雑魔。その進行方向上へ龍鉱石を投げてみるライラ。
即座に投げた反対側へと自身を飛び出させた。
「まずは、足を頂きます」
絡ませようと操った竜尾刀。
馬雑魔は足を取られるが、倒れる訳でもなく突進の勢いが弱まる留まった。
「ふんっ!」
バルバロスは、雑魔とすれ違いながら、騎乗していた馬への直撃を足で捌いて、雑魔をいなすと、走り抜けながら素早く方向転換。
再突進の勢いと自身のマテリアルを最大限まで高め、最上段に構えた斧を雑魔へと振り下ろした。
「どりゃぁぁぁ!」
手応えを感じた直後、全身の筋肉が膨れ上がり、降ろした斧を持ち上げながら、V字に斬りつける。
ライラはその瞬間、竜尾刀を巧みに引き、雑魔の動きを遮る。
「逃しませんよ」
「ヌオォォォォ!!」
二人のハンターの声が響くと同時に、雑魔はそれだけで塵となっていった。
「……意外と、呆気なかったですね」
「一撃で終わってしまうとは、情けない!」
筋肉の塊――ではなく、バルバロスの一撃は文字通り、雑魔を粉砕してしまったのだった。
轟音を響かせながら走ってくる馬雑魔を見定めながらテノールは拳を握る。
「走りたいだけ走らせて、それに付き合ってやりた処では、あるんだがな」
ここは街道だ。雑魔は見境なく人を襲っている。
早急な退治以外の方法はない。
「……人の身勝手で、活かしたり殺したり……本当に、すまないな」
そう告げながら、彼は全身のマテリアルを練り上げて放出する格闘士の技を放つ。
一直線に雑魔を貫く。それでも、雑魔の突進は止まない。
盾を構えて突進に備えるが、その脇をメオが進む。
すれ違い様に、一撃を入れ、そのまま通り抜けて、然る後、反転。雑魔を挟み撃ちにするつもりなのだ。
「ホットドッグとおんなじ種類っぽいなー。……大丈夫、メオさんは、ホットドッグを殺したりなんかしないよ」
愛馬――ホットドッグ――の首を、(たかし丸で)撫でながら言うと、斧を構えた。
足で合図し、駆け出す愛馬。
対して、正面から向かって来る雑魔は明らかに突撃してきたが、メオは斧で咄嗟に防御しつつ返す動きで叩きつけた。
「あれ……」
テノールが既にダメージを与えていたというのもあるだろう。
反撃で繰り出した斧の攻撃を受け、雑魔はボロボロと崩れていく。
まだ、走り足らなかったのだろうか、それとも、疾走する勢いが衰える前だったのだろうか、走りながら雑魔は塵屑となっていった。
「一度に3匹……と思ったら、もう1体しか居ないが、当てて見せる」
機導術を操りながらラジェンドラが迫ってくる雑魔に狙いを定める。
繰り出される光が、雑魔の胴体へと吸い込まれるように直撃した。
「走り回られるのは、厄介なんでな」
機動力はありそうな馬だ。
逃がしたりしたら追いかけるのも骨が折れるだろう。
「……狙ってる余裕あるかしら?」
アルスレーテは呟きながら、マテリアルを集中させた。
雑魔の足を狙えればと思った。機動力を削げば、後は殴るだけだからだ。
「縮地瞬動――」
大地を蹴り、一気に距離を詰めるアルスレーテ。
体内のマテリアルを脚から腕へ、腕から手に持つ鉄扇へと流し込む。
濁流となったマテリアルを雑魔へと叩き込んだ衝撃は、確かな手応えを感じた。
「くるくるー、ってね」
直後、身体を反転。
東方の舞のように、円を描くイメージでクルっと回ってみせたが、雑魔の反撃を避けきれなかった。
「フュラーの嬢ちゃん!」
ラジェンドラの声と共に、アルスレーテの前に機導術の障壁が現れる。
雑魔が突き出した足は障壁を叩き割ったが、鉄扇で受け流されてしまった。
「次で終わらせるわよ」
カチっと音を立てて、広げた鉄扇を閉じると、再びマテリアルを雑魔へと叩きつける。
首が無い割には、どこから声を出したのだろうか、馬の鳴き声を発しながら、雑魔は消え去った。
●打ち捨てられた療養所にて
バルバロスが、口からフシューと音を立てて馬の療養所跡地内を探索していた。
「他には、おらんのか」
斧を構えてキョロキョロと雑魔や歪虚の気配を探す。
そんな筋肉の塊のような仲間の背中を眺めながらラジェンドラは、冷静に施設内を観察していた。
打ち捨てられて、そんなに時は経っていないだろう。だが、この荒れ具合は酷いものだった。
「フュラーの嬢ちゃん、これを見てくれ」
「どうしたのかしら?」
ラジェンドラは傷んだノートを取り出して、仲間を呼んだ。
首をかしげながらアルスレーテはそのノートを受け取る。横に来たライラがそれを見て呟く。
「日記……でしょうか?」
「そうみたいだね」
パラパラとめくると、そこには施設の管理者であろう者が記した事が書いてあった。
その大部分が馬の世話に関する事だった。事細かく、食事の状況や排泄、毛並みの状態まで記されている。
「農家への手伝いや荷馬車への応援も行っていたみたいですね」
ライラが該当記述を見つけて言った。
療養所として地元にも開かれていたのだろう。
「殺処分するだけでは、勿体無いですのに。新しい領主様に療養所のメリットをちゃんと伝えられていれば、こんな事にはならなかったでしょうに……」
「そうだな。必要ないから、殺す……他に、何か道はなかったのか」
二人の会話を、アルスレーテは聞いているだけしかなかった。
果たして、肉彦の最後は、その死に方に相応しいものだったのか……。
「それにしても、男の人って、なんで、戦の事ばかり考えているのでしょうね」
呆れるように言ったライラの言葉にラジェンドラは困ったような顔を浮かべた。
「領主も色々と考える事があるという事だろう。新しい領主には、ここでの事を伝えられるといいかもな」
「それは、確かにそうですね。戦の事ばかり考えては、逆に村は困窮しますから」
その時だった。仲間の声が外から響く。
「雑魔が居たかぁぁぁ!」
建物のどこかからか、バルバロスの叫び声が響いた。
外に居たのは、メオとテノールの二人だった。
仲間達が療養所の中を探索している間、二人は外を調査していたのだ。
「これは酷い状態だな」
腐臭に顔をしかめるテノール。
療養所からさほど遠くない場所に、二人が探していたものはあった。
「お疲れ様……もう、ゆっくり眠っていいんだよ」
メオは目を閉じて黙祷した。
そこは、馬が殺処分されたと思わしき場所だった。
雑に掘られた穴の中に、馬の遺体が無造作にいくつも転がっている。
「……ここの領主さんだったおじいさんと、天国で幸せに過ごしてね」
「しっかりと、弔ってやらないとな」
このままだと衛生上もよくないはずだ。
荼毘した上で、土を被せておかないといけないだろう。
そこへ、療養所を探索していた仲間達が合流した。
「敵……では、ないのか……」
斧を構えたままのバルバロスが残念そうに言った。
そして、周囲に歪虚の痕跡がないのか探し出す。
「……そうだな。第三者的な存在が居なかったのか、念の為、探しておいた方がいいかもな」
さすがに手が込んだ陰謀はないだろうが、二度も三度も同じように雑魔を出現させる訳にはいかない。
テノールの言葉に、ライラは頷くと彼女も辺りを詳しく見始めた。
一方、アルスレーテは馬達が処分された穴に向かって祈りを捧げていた。
肉塊と化したそれは、確かに雑魔が出現しても可笑しくない。そんな雰囲気を発している。
「人の都合で、振り回された命か……まあ、自分の命だって、自分の思うようにはいかないものか」
慰めるつもりで言った訳ではないだろうが、ラジェンドラが隣で静かに言った。
ここで、穴の中に折り重なっているのは馬だが、人でない保障はどこにもない。
そういう意味では、人も馬も一緒なのかもしれない。
「だとしたら……」
深刻そうに口を開いたアルスレーテの肩をテノールは叩いた。
「少なくとも、無駄死ではなかったはずだ」
熊の雑魔を誘き出す為の餌だったかもしれない。だが、その餌がなかったら、熊雑魔は姿を現さなかったかもしれない。
その結果、より多くの人々の脅威になっていた可能性もある。
「飼い馬を屠った身としては、ね……」
「なら、弔ってやればいい」
必要だった。意味はあった。そして、憶う事があるのであれば、それは、単なる殺処分とは異なるはずだ。
もしかして、気の持ちようかもしれない。だけど、それが在るか無いかは、雲泥の差だ。少なくとも、殺処分した領主と、アルスレーテは違う。
「そうね」
空を仰ぎ見たアルスレーテ。
良い機会かもしれない。きっと、肉彦は天国から見守ってくれているはずだ。
なにか痕跡がないか探していたメオが茶色何かを拾った。
微かに、負のマテリアルを感じなくもない。
「たかしの糸……ではないし、動物の毛? でも、これ、馬のじゃないよね?」
掲げてみせた毛のようなものをバルバロスは怪訝な表情で凝視する。
次に、匂いを嗅いでみたが――特になにか感じるものはない。
「犬っぽい感じがするのぉ」
とりあえず、強敵の匂いが――した気はする。願望かもしれないが。
だが、なぜ、こんな所に、そんなものがあるのだろうか。
その答えが見つからないまま、次はライラの声が響いた。
「皆様、これをご覧下さい」
そこには、馬の足跡と共に、明らかに馬ではない足跡があった。
「何の足跡だこれ……人じゃないが、二足歩行をしている……のか……」
膝をついて詳しく足跡を観察しながらラジェンドラが言う。
犬のような足跡にも見えるが、二足歩行する犬など、聞いた事はない。
「考えられるのは歪虚か」
周囲を警戒しながらテノールは呟く。
もし、そうであれば、この雑魔発生の謎も、一応の説明がつく。
怨念や恨みだけで、生物が死んだ後に雑魔や歪虚になったりするケースは、頻繁にある訳ではない。
むしろ、原因となるのは負のマテリアルであり、歪虚が居たとすれば、雑魔の出現の理由としてもっともなものになる。
「……メオさんの推測によるとだねぇ、多分歪虚はアレだよ、うーんと……何かしら、人間に恨みを持っている?」
多分……と自信なさげに続けるメオ。
その推測も理由付けには意味はあるだろう。
歪虚は雑魔を生み出せる場合もあるが、馬の死体を雑魔とする必要性もない。
わざわざ、惨殺された馬を使ったという事は、人間に恨みをもっているとも考えられる。
「だとしたら、また、あるかもしれないな」
テノールの言葉が予言めいて流れていった。
ハンター達は街道に出没した馬の雑魔を討伐。療養所も探索し、安全の確保を確認した。
殺処分された馬達はハンター達の提案で丁重に弔われる事になり、また、療養所の存在や活用の意義を、新しく領主になる者へ伝える事もできた。
新しく領主となった若者は、軍馬や農耕馬などの療養所の再建を認めたのであった。
おしまい。
●惨劇の影に
「良イ、ニンゲンモ、イル。ケド、悪イ、ニンゲンモ、イル」
牧草地をゆっくりと歩く馬を、遠くから眺めながら、何者かは呟いた。
自分も、あの様なハンター達と出逢っていたら、違った生き方があったのだろうか。
「……ナラ、悪イ、ニンゲンヲ、全部、殺シテシマエバイイ。ソレダケダ」
お尻のあたりから姿を見せている、ふかふかの尻尾を振りながら、その歪虚は踵を返した。
犬と人を足して割ったような姿の歪虚は歩き出す。
その歪虚の名は、ネオピア。
次に現れるのは王国の西か東か……それは、誰にも分からない。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/04 10:00:57 |
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相談場所よー アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/07/08 00:04:20 |