霧中、無音の狙撃手

マスター:えーてる

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~12人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/11 12:00
完成日
2014/09/19 22:05

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 観光地の大きな湖に雑魔が発生したらしい。
「今年の海辺は危険でしたから、貴重な水場のレジャー施設ということで人気だったようですが、雑魔が発生して危険な状態になっています」
 巨大なアメンボに似た、水上を移動する雑魔らしい。陸上も走行出来るようだ。
 顎による噛み付きと、尻の細長い針を飛ばして麻痺毒のある射撃攻撃を行う。非常に射程が長く、なんと百二十メートルを記録している。針には総数は不明だが時間辺りの弾数限界があるようで、使いきれば接近してくる。
 水上の船には体当たりを繰り出し転覆させにくる。水中の敵には回避の難しい針による突き刺し攻撃を行ってくる。当然麻痺毒付きだ。
 数は五体。群れるわけでも散らばるわけでもなく、各々自由に水上を移動している。
「通常は湖を巡回し、陸地に人がいれば通りがかりざまに針による射撃を行っています。周回ルートは岸辺から百メートル地点が目安です。積極的に陸地へ上がることはないようですが、針を切らしたり、近くの逃げる相手を追う時は別のようです」
 とはいえ、普通に舟でのこのこ接近すれば針山にされるだけだ。
「その射程故に通常であれば非常に危険ですが、現在は湖一帯に霧が立ち込めています。その時々の霧の濃さにも寄りますが、視界は十メートルから四十メートル。舟で水上に出ての戦闘は十分可能と思われます」
 ただし敵は水上を殆ど無音で移動する。前後不覚に陥ることもままある霧中で、どこから来るか不明な敵を発見、倒さなければならない。
 霧も時間ごとに濃くなったり薄くなったりと変動する。
 ちなみに湖は半径三百メートルほどだ。相手の周回ルートに乗ればまず陸地は霧に阻まれて目視できなくなっているだろう。
「人を見境なく襲っているようですので、迅速な排除をお願い致します。依頼内容は以上です」

リプレイ本文


 霧深い湖畔に、十二人のハンターたちが集結していた。
 目標は、霧の向こうを徘徊する雑魔の討伐である。

 舟を出せば、すぐに周囲は霧に覆われた。
「無音の狙撃者か……まァ姿が見えない狙撃者よりかはやりようがあるぜェ」
 シガレット=ウナギパイ(ka2884)はにやりと笑って後ろを見た。牽引する無人の舟には、囮のカカシが乗せられている。日曜大工に知識のある者達が集まって、突貫工事で作りあげた。
 厄介な麻痺毒付きの針を少しでも消耗させようという考えだ。可能な限りで補強はしたが、どれくらい耐えるかは不明である。
「水の生物と水上で戦うのだから、対策は必須だよ」
 ザレム・アズール(ka0878)もぽんと舟の縁を叩いた。
「あめんぼ、あかいな、あいうえお――」
 佐々加瀬 穹(ka2929)は口ずさみ、表情を曇らせた。
「……雑魔とも、なれば。懐かしい虫、も、とんだ、化け物に。なっちゃう、ね?」
「全くだな」
 ザレム、シガレット、穹の三人で一つの舟に乗っていた。今回は十二人を四班に分けている。南北でニ班ずつだ。
 彼らC班は概ね岸から百メートルほどの地点を想定して、牽引してきた囮を切り離した。
「そっちはどうだ」
「あぁ、こちらも準備完了だ」
 霧の向こうから返答があった。
 囮のカカシ入り舟を配置し終えた、霧江 一石(ka0584)である。
「舟に乗りながら戦闘とか、嫌な予感しかしねぇぜ……」
 経験上船には嫌な思い出しか無い一石である。
「水没王子と同じ舟かー」
「しねぇからな、今回は」
 メル・アイザックス(ka0520)はけらけら笑って、拾ってきた小石を投げ込んだ。
「さって、と。……鬼が出るか蛇が出るか。いや、出てくるのはアメンボかねぇ」
 坂斎 しずる(ka2868)は、布の裏に身を伏せながら呟いた。
「湖上のスナイパー、といったところかしら。なかなか厄介そうね。私の腕でどこまで通用するかしら」
 彼女が呟いた先で、霧の向こうからゆらりと何かが現れた。

 一方の北側ニ班。
「よいしょー!」
 夢路 まよい(ka1328)の掛け声と共に、カカシを乗せた舟は霧の向こうに消えていった。
「ここらへんかな?」
 まよいが呟く横で、グライブ・エルケイル(ka1080)も囮の舟を牽引してきたロープを切り離した。
「……今回はお前にも動いてもらうからな」
 隣の柴犬の頭を撫でた。
「グライブさん」
「どうした」
 リリティア・オルベール(ka3054)は呟いた。
「流石にうなぎの蒲焼の匂い辿らせるのは無理がありませんか?」
「そうか……?」
 グライブは首を傾げた。
 彼らから霧を隔てて少し離れた地点で、メリエ・フリョーシカ(ka1991)も囮のロープを切り離した。
「これでこっちのがよく目立つんじゃないですかね」
 霧の向こうのカカシにはランタンを括りつけてある。霧中でもぼんやりと光を感じることは出来た。
「しかし、厄介な相手ですね……湖畔に潜む霧中のスナイパー……」
 Charlotte・V・K(ka0468)も頷く。
「長距離射撃というものは、地の利があると手が付けられない。即死系の攻撃ではないにせよ、気を引き締めてかからねばな……」
 音桐 奏(ka2951)は左腕の傷痕にそっと触れて、微笑んだ。
「それにしても姿の見えない敵と戦う状況と言うのは、懐かしいですね」
 近くでちゃぽんと音がした。リリティアが小石を投げ込み始めたらしい。
「敵が狙撃のハンターなら、こっちだってハンターです。喰い合いといきましょう!」
 メリエは強気にそう口にした。


 数分後、北班が戦闘を開始したと報告を受けた。
「向こうは網にかかったとよ」
 急激に濃くなった霧は次第に晴れつつあったが、依然として視界は二十メートルもなかった。
「……怖い、ところ。連れてきて、ごめん。ね」
 穹は連れてきた鴉に呟いた。彼女だけではなく、グライブや一石も犬を連れてきている。
「アメンボは甘い匂い出すから『アメンボ』って名前らしいしな、ヴォイドだろうが可能性はあるだろ」
 一石は呟いた。犬の嗅覚なら辿れるのでは、という考えだが、報告ではアメンボに似たと表現されていただけだ。ないよりはまし、ということである。
 ……だがまぁ、そもそもアメンボはカメムシに似た生物で、平時はほぼ無臭だ。どちらかと言えば、視線の数が増えたことに意味があった。
 ただ、的になる可能性も当然ある。
 空すら見えない霧の中で、飛び上がる鴉を見上げて、穹は自己嫌悪に眉をひそめた。
 翻って、小石を投げ込むのは有効であった。常に水上にいるのだから、少なくとも脚部に波が伝わるのは確実だ。メルとしずるがそれなりの数石を投げ込んだことには意味があった。
 だが、一つハンターたち全員が見落としていた。自分たちの配置についてを。
 カァ、と鴉が鳴いた。
「来たか」
「どこ?」
「囮の方には……いねぇぞ」
 次いで、空中から鴉が落ちてきた。
「あ……!」
 死んでいるわけではなく、針が羽を掠めただけのようだが、麻痺毒で身動きが取れなくなったらしい。穹は痙攣する鴉を抱きかかえた。
「どこだ……どこから来る」
「囮の近くには見えないわね……どうなってるの?」
 一石としずるも周囲に視線を巡らせた。その隣で、メルはじっと考えこんだ。
 さて――自分たちは今何処にいる? 敵の巡回ルートの上じゃないか? その上で、波紋によって敵をおびき寄せるということは……?
「まっずい……やらかした! 霧江くん、前に!」
「シガレット、舟を動かせ!」
 ザレムが叫び、シガレットは急激に舟を動かした。
 霧の向こうから、いっそ砲台のようにも見える異様のまま、雑魔が滑り出てきた。
 その場所は。
「ざっけんな……真後ろじゃねぇか!」
 音もなく撃ちだされた針が水面を突き刺し、僅かな波紋を残して水底へと消えていく。
 メルの声で一石が舟を漕ぎだした時、横合いから雑魔が出現した。慌てて進路を切り替える一石。しずるも距離を取るべく舟を漕いだ。
「メル先生、どうなってる!」
「場所が悪すぎた……おびき寄せるなら相手の巡回ルートから外れてなきゃいけなかったんだ」
 叫ぶ彼女の顔のすぐ横を、針が突き抜けていった。メルの背後に、ぬらりと影が現れた。
 穹がぽつりと呟いた。
「周りの、敵、みんな、来ちゃっ、た?」
 さっと、霧が晴れた。
 四十メートルほど確保出来た視界の中で、南側の六人はそれぞれ視認した。
 狙撃手が三体、三方から取り囲む形で、弩弓の如くに構えを取っているのを。

 囮を配置するにしろ、おびき寄せるにしろ、自分たちの配置について誰も考えていなかった。
 石を投げ込んだのは遠因だが、原因ではない。あのまま待機していたとしても、囮ではなく彼ら自身が後方から針を撃たれていただろう。迂闊だったと誰もが感じた。
 ガスッ! と凶悪な音を立てて、板に針が突き刺さった。ザレムが事前に用意しておいたものである。
「身を低くして板で攻撃を防げ!」
 皆姿勢は低くしていた。少しでも狙撃対象から外れるためだ。
 二匹目の雑魔は、囮のカカシ目掛けて針を放った。ガスンと音を立てて胸部に針が突き立つ。あの威力では、下手な位置に当たればへし折れるだろう。
「くっ、近すぎるわ!」
 雑魔は舟に近づくなり、その体を舟に叩きつけた。
 一石は縁に捕まり身を低く沈めて、横転しかけた舟をどうにか持ち直させた。
「今日は水没王子らしい所なんて見せられねぇんだよ。味方巻き込んじまうからな!」
 メルは攻性強化を一石に掛けて、舟を動かす。
 返す刀で撃ち込むマテリアル込みの銃弾が、雑魔の胴部を直撃する。
 揺れる舟の上で、しずるは銃器を構えた。伏射姿勢で、じっと狙いを定める。
「やりにくいけれども……必ず撃ち落とす!」
 狙い違わず弾丸は雑魔に炸裂した。
 シガレットはそれを見て、神楽鈴を向けた。
「よし、まずはアイツを落とす!」
 光弾が直撃し雑魔をよろめかせた。
「配置を変えよう。包囲から抜けるべきだ」
「そう、だね」
 ザレムは強化術を己に掛けた。穹は攻撃のためにも舟を動かす。
 続く針の斉射をしずるとザレムが受けたが、幸い麻痺に陥ることはなかった。残る一本は囮に向かい、運悪く基部に直撃し破砕していった。
「とりあえずは、持ち直したかな……?」
「体当たりは食らってもなんとかなる、近づいて仕留めんぞ!」
 運悪く先手を取られたが、対策のお陰で転覆は免れた。戦線が崩れなければやりようはある――改めて、戦闘開始だ。


 一方の北班。
「アメンボって飴みたいな匂いがするって聞いたことあるけど本当かな? ……あ、私ね、飴ちゃんはコリコリって噛み砕いちゃうのも好きなの」
 まよいはぺらぺらと喋りながら、魔術を構築していく。
「ほら、何かが砕け散る感じって……それだけで楽しいじゃない♪」
 風の刃が雑魔の顔面を直撃する。反撃に放たれた針を、グライブは上手く盾で受け流した。
「その程度では、効かんぞ!」
 リリティアが返す刀でナイフを投げ放った。
「笑顔になれる場所を奪うなんて、私は絶対に許しませんよ!」
 メリエ、シャルロッテ、奏の三人が一斉に射撃を行い、ついに雑魔は倒された。
 体当たりと麻痺とで危険な相手だったが(現にグライブが一度麻痺に陥った)、これが単体であればいくらでもリカバーは効いた。
「よし……」
「ワンダウン、ですね」
 銃口を下げたシャルロッテは、魔導短伝話を起動した。
「こちらシャルロッテ。一匹撃破だ」
『シガレットだ。わりぃ、手こずってる。三匹同時に囲まれちまった』
「援護はいるか?」
『多分追加で一匹来られるほうがやべぇ。残る一匹を先に頼むぜ』
「了解」
 魔導短伝話を切る。
「あまり時間を掛けてもいられないようですね」
「らしい」
 奏が呟き、シャルロッテが頷いた。
「しかし、ほんとに濃い霧ですね……敵は、どうやって獲物見つけてるんだろ」
 その横で、メリエは周囲を見回した。今は比較的霧がクリアだ、索敵するチャンスである。
「波紋を感じ取っているのかもしれんが……案外、決められたルートを巡回しているだけかもしれんな」
 なるほど、とシャルロッテの言葉に頷くメリエ。その時、視界に何かの影が映った。
 まよいとメリエが同時に声を上げた。
「あ、あれ見て!」
「あれ、囮のカカシですよね」
 指差されたのは、針山のようになったカカシだった。
「みたいだな。先に進ませておいたものか……」
 グライブが呟く先で、新たな針がカカシに刺さり、ついにカカシが崩れ落ちた。
 まよいたちが先に進ませた囮の舟が偶然雑魔の鼻先にかち合い、上手く時間を稼いでいたのだろう。
「うーん、もしかしてちょっと危なかった?」
 首を傾げるまよい。二体同時に相手をすれば、麻痺の危険性も上がる。
 ぬうっと、霧の向こうからやってくる影を見つめて、全員武器を構えた。
「そもそも舟が波を放つんだから、遅かれ早かれ寄ってきたとは思うが」
「とにかく、まずはあれを撃破しましょう!」
 グライブが舟を動かした。リリティアがいつでも投擲出来るようにナイフを構えた。
 雑魔はハンターたちを視認するなり、針を放った。針は舟をかすめて水面に突き立った。
「遠くにあっては針を射ち。近くにあっては体当たり。……厄介です、が」
 ――雑魔の尻に、針がないことをハンターたちは確認した。
「弾切れとは、全くお粗末な狙撃手ですね……!」
 奏がサイトを覗き込み、弾丸にマテリアルを載せて強引に射程を引き伸ばす。
「先程よりも小さい……一気に突破するぞ! 南に加勢に入る!」
「まよい、全力でぶちかませ!」
 シャルロッテとグライブが強化の術を掛け、まよいは楽しげに魔術を練り上げる。
「ぶっ壊れちゃえ!」
 強烈な風の刃が雑魔にぶち当たった。
 だが雑魔は移動を止めず、躊躇なくメリエたちの乗る舟へと突進を仕掛けた。
「っく……だが!」
 シャルロッテが先程舟に乗る仲間に掛けた防性強化もあって、舟は転覆せずに済んだ。装備を整えてきたのも大きい。
「こ、のぉ!」
 突進を受けた衝撃を上手く使って、メリエは舟を漕いで距離をとった。そのまま、アサルトライフルを近距離から放つ。
 火線が幾重にも集中し、雑魔の体へ見る間に傷を刻んでいく。


 メルたちにつきまとっていた一体が、一石のデリンジャーを受けて撃沈した。
「よっし、まずは一匹!」
 敵から距離を取るために殆ど舟を漕ぎっぱなしだったメルが、ようやくかと快哉を叫ぶ。
 霧は先程よりも濃くなり、視界はかなり悪くなった。六人は舟をなるべく近づけ、視界内部に収めながら戦っている。
 ――状況は良くない。それもこれも数が原因である。
 体当たりからの退避、麻痺やダメージのケア、敵が多い以上そういった部分に手を回さざるを得ず、結果ダメージ量が減る。単体の脅威度こそ低いものの、間断なき状態異常攻撃の嵐に、ハンターは消耗していた。
 敵は近い対象を攻撃するのだとメルとザレムが早い段階に看破したおかげで、攻撃を囮へ誘導できていたが。
「これで少しは楽になるな……」
 残る二匹のうちの一匹が、囮へと針を放つ。最後のカカシがメキメキと半ばからへし折れた。
 その横では、殆ど激突するように舟を隣接させ、穹が鋭くニードルウィップを振りぬいた。
 反撃に繰り出された雑魔の体当たりを受けても、三人はうまく衝撃を逃がせている。まず転覆することはないだろう。突進に抵抗できるメンバーならば、むしろ近接している方が安全である。針の射撃よりずっとマシだ。
 抜群のバランス感覚で、突進を受けて揺れる舟の上でもザレムは危なげなく立っていられた。
「ふん、この程度か!」
 至近距離の敵の脚部へと機導剣が突き刺さる。
「とっとと沈んどけ、オラァ!」
 シガレットのホーリーライトが追撃を仕掛ける。ぐらりと傾いだ雑魔へと、身を乗り出したしずるの銃弾が殺到した。が、これは回避される。
「地味、に、しぶとい、ね……!」
 穹が呻いた。長引けば長引くほど、針で麻痺する確率は上がっていく。敵一体を倒せたとは言え、それなりに消耗しているし、回復している余裕はあまりない。
「くっ……だが!」
 ザレムが牙を避けきれずに腕を噛まれ、反射的に魔導銃を向けた。
 もう一匹の雑魔はしずる目掛けて針を放った。しずるの肩に針が突き立つ。
「う、く……!?」
 途端、しずるの体が硬直した。麻痺毒である。
 ふらついた彼女の体を、メルがすんでのところで捕まえた。
「悪いが、『水没王子』が許されるのは霧江君だけだからねぇ!」
「うるせぇ!」
 一石は吠え、水中銃を放った。
 穹の鞭が鋭く音を立てて雑魔の頭を打ち据えた。生物なら脳震盪でも起こしただろうが、雑魔にそういった機能はないらしい。
 シガレットがヒールをかけると、しずるは苦しげに声を上げた。
「ごめんなさい、ちょっと、待ってて」
「回復までの時間は稼ぐ。その火力、頼りにしているぞ」
 ザレムが声をかけるとほぼ同時に、雑魔が突進を仕掛けた。これを乗り切ったメルたちは、更に攻撃を加えようと武器を構えて、ふと霧の向こうに影を見た。
 同時に、シガレットの魔導短伝話が震えた。
『こちらシャルロッテ。今、そちらから見てニ時の方向だ。援護射撃を開始する』
「この私が来たからには、もう大丈夫! ってね!」
 まよいの風の刃が、最後の針を撃とうとした雑魔の横っ腹を打ち据えた。
「終わりにしましょう!」
 リリティアのナイフが雑魔の胴体に突き刺さった。
「視界を塞ぐ霧、長い射程、舟……さんざん手こずらせてくれました。……ですがっ!」
 メリエのアサルトライフルが唸りを上げる。
「反撃のターンです! 没してもらいます! この湖に! お前達が!」
 その隣で、奏もカービンを手に膝射姿勢を取った。
「敵の能力に皆さんの対応、見届けました。実に有意義な時間でした」
 ぴたりと雑魔の目を照準した銃口が、マテリアルに包まれる。
「では撃ち抜きましょうか。それが私の役目ですので」
「さて……狩りの時間だ! 撃てぇ!」
 シャルロッテと奏の銃器が火を吹き、轟音と共に銃弾が雪崩を打ち、遠くしずるたちを照準する雑魔が衝撃に傾いでいく。
 反撃に放たれた最後の一本の針を、グライブの盾が瞬間的に跳ねて叩き落とした。
「一度たりとも通さん!」
 その光景に奮起し、しずるは全身に力を込めて立ち上がった。
「ふふ、負けてられないわね……」
 跳ね上がった銃口が傾ぐ雑魔の頭部をしっかりと捉えた。
「受け取りなさい、お返しよ!」
 その弾丸で、遠くの雑魔はついに水中へと没していった。
「おし! メル先生、サポート頼むぜ!」
「りょーかい! やっちゃって、霧江くん!」
 メルの攻性強化を受け、一石の水中銃が火を吹いた。未だシガレットたちに隣接する雑魔の足へと着弾する。
「ザレム!」
「任せろ!」
 機導剣が閃き、目と思しき部位を貫いた。更にホーリーライトがもう片方の目を潰す。
 身を捩る虫の雑魔に、穹が飛びかかった。ヒュン、と鞭が真円を描き。
「――あめんぼの血は、何色?」
 強烈な一撃でもって、最後の雑魔を叩き割った。


 その後、この湖はまた観光地として賑わうようになった。
 ハンターたちの活躍によって、人々の憩いの地は守られたのである。

依頼結果

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MVP一覧

  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイka2884

重体一覧

参加者一覧

  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • しっとの心を忘れずに
    霧江 一石(ka0584
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • イージスの光
    グライブ・エルケイル(ka1080
    人間(紅)|28才|男性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • シャープシューター
    坂斎 しずる(ka2868
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • 虹色に輝く拳
    佐々加瀬 穹(ka2929
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 志の黒
    音桐 奏(ka2951
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • The Fragarach
    リリティア・オルベール(ka3054
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
霧江 一石(ka0584
人間(リアルブルー)|25才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/09/11 02:26:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/07 22:46:57
アイコン 南組(C班、D班)
シガレット=ウナギパイ(ka2884
人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/09/11 10:06:36
アイコン 北組(A班、B班)
シガレット=ウナギパイ(ka2884
人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/09/11 01:15:36