ゲスト
(ka0000)
【詩天】西方からの使者
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/19 09:00
- 完成日
- 2016/07/25 03:00
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ハンターズソサエティ本部の控室へ、魔術師スコットと笹川 唯(ささがわ・ゆい)が訪れていた。
どうやら、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に相談事があったらしい。
「詩天?」
マクシミリアンの呟きに、唯が話を持ちかけてきた。
「噂くらいしか聞いたことがないけど、東方には『詩天』と呼ばれる場所があって、物資が足りない地域もあるらしいんだ。それに……そこに行けば、姉様たちのことが分かるかもしれない」
唯は東方出身の格闘士で、笹川家の三女だった。長女の藤乃、次女の響とはリグ・サンガマでの大戦で離れ離れになってしまったのだ。未だに姉たちの行方が分からなかった。
「人探しか? なら、俺よりラキの方が向いていると思うがな」
扉から様子を窺っているラキ(kz0002)に気付いて、マクシミリアンが言った。
「唯ちゃん、そういうことなら、あたしに任せてよ!」
ラキは数日前から唯の様子が気になり、心配していたのだが、ようやく理由が判明して明るい笑みを浮かべ、控室の中へと入ってきた。
「スコットさんも、唯ちゃんの頼みで来たのかな?」
ラキの問いに、スコットは少し照れながらも、軽く咳払いをして真剣な顔付きになった。
「それもあるんだが、東方に物資が足りない地域があるなら、魔術師協会広報室も支援することになってさ。自由都市同盟の農業地域で採れた日持ちする食材を保存食として届けるつもりなんだ。それと、詩天ではまだ憤怒の歪虚が出没するらしいから、物資輸送の護衛としてハンターを何人か募集したいんだ」
「……そういうことなら、依頼として張り出してみるか」
マクシミリアンは本部へと向かい、受付嬢に依頼を頼むことにした。
●
翌日。
ハンターたちは、詩天領内にある、小さな村へ向うことになった。
お家騒動で何やら暗躍しているという情報も聞き、魔導トラックで運ぶには不審に思われるかもという理由で、荷台の付いた馬車三台で物資を運ぶことになった。
物資の中身は保存食だけでなく、応急手当に必要な道具や薬も入っていた。
唯は姉達を探すため、スコットは魔術師協会広報室の一員として、マクシミリアンとラキは護衛として輸送馬車の周囲を取り囲むように歩いていた。
ラキは東方へ行くことも目標としていたが、実際に依頼に参加してみると複雑な気持ちになっていた。
(物資は必ず届けなきゃ……もう、誰かが傷つく姿は見たくない)
重い現実が圧し掛かるが、ラキはそれでも前向きに生きていこうと決めたのだ。
街道を進み、順調に目的地の村まで辿り着く……と思った矢先、前方を塞ぐように歪虚の残党たちが現れた。
「これが……東方の歪虚なの?」
異国の歪虚に、ラキは緊張を隠せなかった。
唯は東方出身ということもあり、歪虚の姿を見て、すぐに分かった。
「悪天狗、おさき狐……憤怒の歪虚に間違いないよ」
「狐の姿をした歪虚は西方にもいるけど、こっちの歪虚は変わった外見をしているな」
スコットは杖を持ち、敵の動向を窺っていた。
「……妙だな」
マクシミリアンは悪天狗の動きが気になっていた。
特定のハンターを狙っているというより、輸送馬車に襲撃を仕掛けるように思えたのだ。
「みんな、気を付けろ。奴らの狙いは、ハンターではなく、輸送馬車だ。物資を狙って破壊した方が心理的にダメージが大きいとでも考えているのだろう。……知能はあるようだな」
マクシミリアンの呼びかけに、ハンターたちが集結した。
先頭の馬車を守ることになったのは、ハンターたち。
中衛の馬車は、マクシミリアンとラキ。後衛には、唯とスコットが守りを固めていた。
目的地の村まで、物資を届けなければ、食糧難に苦しむ人々が増える一方だ。
これを見逃せば、物資輸送のルートも断たれることになる。
「そんなこと、絶対にさせない!」
ハンターの一人が、勇ましく叫んだ。
どうやら、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に相談事があったらしい。
「詩天?」
マクシミリアンの呟きに、唯が話を持ちかけてきた。
「噂くらいしか聞いたことがないけど、東方には『詩天』と呼ばれる場所があって、物資が足りない地域もあるらしいんだ。それに……そこに行けば、姉様たちのことが分かるかもしれない」
唯は東方出身の格闘士で、笹川家の三女だった。長女の藤乃、次女の響とはリグ・サンガマでの大戦で離れ離れになってしまったのだ。未だに姉たちの行方が分からなかった。
「人探しか? なら、俺よりラキの方が向いていると思うがな」
扉から様子を窺っているラキ(kz0002)に気付いて、マクシミリアンが言った。
「唯ちゃん、そういうことなら、あたしに任せてよ!」
ラキは数日前から唯の様子が気になり、心配していたのだが、ようやく理由が判明して明るい笑みを浮かべ、控室の中へと入ってきた。
「スコットさんも、唯ちゃんの頼みで来たのかな?」
ラキの問いに、スコットは少し照れながらも、軽く咳払いをして真剣な顔付きになった。
「それもあるんだが、東方に物資が足りない地域があるなら、魔術師協会広報室も支援することになってさ。自由都市同盟の農業地域で採れた日持ちする食材を保存食として届けるつもりなんだ。それと、詩天ではまだ憤怒の歪虚が出没するらしいから、物資輸送の護衛としてハンターを何人か募集したいんだ」
「……そういうことなら、依頼として張り出してみるか」
マクシミリアンは本部へと向かい、受付嬢に依頼を頼むことにした。
●
翌日。
ハンターたちは、詩天領内にある、小さな村へ向うことになった。
お家騒動で何やら暗躍しているという情報も聞き、魔導トラックで運ぶには不審に思われるかもという理由で、荷台の付いた馬車三台で物資を運ぶことになった。
物資の中身は保存食だけでなく、応急手当に必要な道具や薬も入っていた。
唯は姉達を探すため、スコットは魔術師協会広報室の一員として、マクシミリアンとラキは護衛として輸送馬車の周囲を取り囲むように歩いていた。
ラキは東方へ行くことも目標としていたが、実際に依頼に参加してみると複雑な気持ちになっていた。
(物資は必ず届けなきゃ……もう、誰かが傷つく姿は見たくない)
重い現実が圧し掛かるが、ラキはそれでも前向きに生きていこうと決めたのだ。
街道を進み、順調に目的地の村まで辿り着く……と思った矢先、前方を塞ぐように歪虚の残党たちが現れた。
「これが……東方の歪虚なの?」
異国の歪虚に、ラキは緊張を隠せなかった。
唯は東方出身ということもあり、歪虚の姿を見て、すぐに分かった。
「悪天狗、おさき狐……憤怒の歪虚に間違いないよ」
「狐の姿をした歪虚は西方にもいるけど、こっちの歪虚は変わった外見をしているな」
スコットは杖を持ち、敵の動向を窺っていた。
「……妙だな」
マクシミリアンは悪天狗の動きが気になっていた。
特定のハンターを狙っているというより、輸送馬車に襲撃を仕掛けるように思えたのだ。
「みんな、気を付けろ。奴らの狙いは、ハンターではなく、輸送馬車だ。物資を狙って破壊した方が心理的にダメージが大きいとでも考えているのだろう。……知能はあるようだな」
マクシミリアンの呼びかけに、ハンターたちが集結した。
先頭の馬車を守ることになったのは、ハンターたち。
中衛の馬車は、マクシミリアンとラキ。後衛には、唯とスコットが守りを固めていた。
目的地の村まで、物資を届けなければ、食糧難に苦しむ人々が増える一方だ。
これを見逃せば、物資輸送のルートも断たれることになる。
「そんなこと、絶対にさせない!」
ハンターの一人が、勇ましく叫んだ。
リプレイ本文
幸運はハンターたちに味方した。
マリィア・バルデス(ka5848)は『直感視』を発動させると、魔導バイクを走らせ、神罰銃「パニッシュメント」を構えて、おさき狐一体を狙い撃つ。命中してダメージを与えることができたが、敵はハンターの動向にはさほど気にも留めていなかった。
「前方、巨大狐が四体! その背後に、天狗のような歪虚が四体! さらに後衛には巨大狐が四体! 物資破壊を優先している模様。左右から攻撃をされる可能性があるから、気を付けて」
マリィアが仲間たちに促す。
先頭の馬車に乗っている御者は、スコットの弟分メガスだ。
「まさか出番があるなんて」
メガスは少し慌てていたが、戦闘はハンターたちに任せることにした。
先頭の馬車を護衛していたエルバッハ・リオン(ka2434)は、自分や仲間、騎乗している戦馬を巻き込まないようにするため、おさき狐に狙いを定めて『アイスボルト』を放った。
氷の矢が突き刺さり、おさき狐一体は身動きが取れなくなった。
エルバッハは物資輸送の重要性を理解していた。
憤怒の眷属たちは、物資を破壊することで、人々のハンターへの信頼を失わせようとしていたのだ。
「どんな理由であれ、歪虚たちの好き勝手にはさせません」
「ヤツらの狙いが物資なら、指示しているモノがいるはずだ」
リュー・グランフェスト(ka2419)は前衛にいながら、敵の後衛にいる巨大狐たちの動向に注意を払っていた。
氷の矢で行動不能になったおさき狐一体を、リューが試作振動刀「オートMURAMASA」で切り払うと、敵は砂のように崩れ去り、消滅した。
「物資を奪う気なら、僕たちのことも忘れちゃダメだよ!」
超級まりお(ka0824)は『ビーダッシュ』で素早く敵に接近すると、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」でおさき狐を斬り付けた。見計らったかのように、鞍馬 真(ka5819)が『踏込』からの『薙ぎ払い』でハルバード「ディフェーザ」を振り回し、攻撃を喰らったおさき狐二体が消滅。
「やはり馬車が狙いか。回避したら、確実に物資を破壊されるな」
真は回避より、武器で敵の攻撃を受けた方が良いのではと考えていた。
星野 ハナ(ka5852)は中衛の馬車に御者として乗っていた。
「真ん中にいれば、前にも後ろにも符が届きますぅ」
「そうしてもらえると助かる。要は先頭の馬車を守るのを優先すれば良いだけのことだからな」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、ハナの作戦に感心していた。
ハナは陰陽鎧「六合」から『加護符』を投げつけると、先頭の馬車に積んでいる荷物に張り付けた。荷物の中は、もちろん物資だ。
咲月 春夜(ka6377)は覚醒すると、ヘルシャフト=アーカイブスへと変貌する。
「ラキ……肩の力を抜け。俺たちのやるべきことを思い出せ」
春夜の言葉に、ラキ(kz0002)は落ち着きを取り戻した。
「あたしは中衛の馬車を守るね」
「俺は先頭に行く」
春夜はヘルシャフトと名乗り、特殊強化鋼製ワイヤーウィップを構えて敵を牽制していた。
先頭の馬車が止まると、春夜は前方に防衛ラインを描くように脚で地面に直線を引いた。
「この線を基準にできれば……」
中衛の馬車も止まり、後衛の馬車は車間を取って止まった。
「来やがったな。後ろの狐が動き出したぜ」
リューは皆に声をかけながらシールド「フンケルン」で、おさき狐の攻撃を受け止めた。
悪天狗たちは先頭の馬車に接近すると、荷台に剣を叩きつけようとした。
「壊されてたまるか」
真はハルバード「ディフェーザ」で剣を受け払い、まりおが試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で、悪天狗の攻撃を受けた途端、剣がギリギリと軋む。
「ゴリッしゃなくて、ギリッだね」
春夜はカラミティサイズを構えた。悪天狗の剣を受け、物資を守ることができたが、春夜の身体は敵の攻撃により、切り裂かれていた。
「……俺の役目は、まだあるんだ」
春夜も、自分でもよく分からなかったが、何かに守られていたかのように急所は外れていた。
もしかしたら、誰かの祈りだったのだろうか。春夜は、懸命に立ちあがった。
悪天狗が擦れ違い、荷台に剣を叩き込んだ。だが、『加護符』に守られた物資は破壊されることはなく、符の効果が切れた。
後衛の巨大狐たちは先頭の馬車を目掛けて走り寄り、怪光線をしかけてきたが、紙一重で攻撃は当たらなかった。
「射程の外から威嚇攻撃してきましたよぉ。守りを固めて、敵に囲まれないようにしないといけませんねぇ」
ハナは気付いていた。左右からの攻撃に備えて、身構えていた。
「次はこちらの番です」
エルバッハは確実に敵を消しさるため、間合いを取り、後衛のおさき狐一体を『ブリザード』に巻き込む。頭部と胴体に命中し、体長4メートルの巨大狐はかなりのダメージを受けて、その場から動かなくなった。
マリィアは『クローズコンバット』を発動させ、魔導バイクを横付けに走らせてから敵の前衛付近で止まると、すかさず至近距離から神罰銃「パニッシュメント」で、おさき狐一体を狙い撃つ。その衝撃で、敵が消え去っていった。
「これで巨大狐は四体、倒せたわ。だけど、油断は禁物よ」
マリィアの言う通り、悪天狗たちは物資破壊を諦めてはいない。
リューには考えがあった。『ソウルトーチ』によって炎のようなオーラを纏うと、技に反応しない悪天狗が一体だけいた。反応しないというより、技の効果に抵抗できたのだろう。他の歪虚たちはソウルトーチには反応していたものの、持ち場からは離れることはなかった。
「……まずは様子見だな」
リューは敵に対して射程がないと思わせるため、攻撃はせず、ゴースロンのテンペストに騎乗したまま、少しだけ後退した。
「今なら、狙い処だな」
真は『踏込』で後衛にいた巨大狐たちに接近すると、ハルバード「ディフェーザ」による『薙ぎ払い』で敵を全て切り裂いていく。おさき狐たちは防御していたこもあり、その場から消えることはなかったが、かなりのダメージを受けているのは確かだ。
ハナは戦況を見て、再度、先頭の馬車に『加護符』を施した。
「大事な物資は、渡さないですよぉ」
荷台に符が張りつき、しばらくは加護の効果が続く。
「そんじゃ、クルクルの見せ場だね」
まりおは『立体攻撃』で巨大狐の身体に飛び乗ると、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵の胴部は切り裂いた。おさき狐は回避することができず、攻撃を受けた瞬間、飛び散るように消滅した。
「回復する前に、一体でも減らしておくか」
春夜は『機導砲』を放ち、おさき狐に命中……敵は崩れ去るように消えていった。
「撤退する気がないなら、最後まで付き合うまでだ」
真は悪天狗の剣をハルバード「ディフェーザ」で軽々と受け止める。
「目安はついたぜ」
リューはソウルトーチに反応しなかった悪天狗の攻撃を、シールド「フンケルン」で払い除けた。
「ひょひょーいと、なっ」
まりおが『マルチステップ』で悪天狗の剣を回避……敵はまりおの動きに翻弄されて、攻撃は命中しなかった。
残りの悪天狗は物資を狙って剣で斬り裂くが、『加護符』の防御により、物資が破壊されることはなかった。加護符の効果が切れ、おさき狐が牙を剥き出しにするが、春夜はとっさに鎌で受け止める。
「くっ……」
春夜の腕に、おさき狐の爪が食い込む。斬り裂かれた箇所から、血が流れ出した。
だが、春夜のおかげで物資を守り切ることができた。
「待たせたな。目星は付いているぜ」
リューは、指揮を取っていた悪天狗に狙いを定めて『竜貫』を繰り出した。直線状にいた悪天狗二体が刀によって貫かれた。凄まじいダメージを受け、悪天狗も再生が間に合わない。
「さてっと、ここまで来たら全て倒すわよ」
マリィアは魔導バイクを銃架代わりにマシンガン「プレートスNH3」の砲身を簡易的に固定すると、『高加速射撃』で左隅にいる悪天狗を狙い撃った。命中すると、悪天狗は奇声を発した。
「キャッハー、歪虚は全員ブッコロだぁ、ヒャッハー!」
妙にテンションが高いハナ……『五色光符陣』を右側に居た悪天狗に投げつけ、符によって作られた結界の中で、敵は光に焼かれて目がくらみ、さらに身動きも取れなくなっていた。
「やったですぅ。この世に歪虚が蔓延るなら、全て消毒しますぅ」
可愛い顔をして、ハナは歪虚に対して容赦がなかった。
「付加効果のある魔法の方が効果的のようですね」
エルバッハはワンド「アブルリー」を掲げ、『ブリザード』を放った。範囲内にいたおさき狐は冷気の嵐から逃れることができず、その場で凍りつくと、粉々に砕け散り、消滅していった。
「ずらりと並んでいるな」
真は『踏込』による『薙ぎ払い』で、前面にいる悪天狗たちに攻撃を放った。三体が消滅したが、残りの一体は逃げる様子はない。
春夜が『機導剣』で悪天狗を切り裂く……命中したが、敵の狙いはハンターではなく、物資だ。
悪天狗は、物資を狙って鉄扇で『乱刃』を繰り出した。
エルバッハはシールド「リパルション」で受けを試みたが、肩を切り裂かれた。物資を覆っていた布が飛び散り、真がとっさにハルバード「ディフェーザ」で悪天狗の攻撃を受け止めた。
「見上げた根性だな。目的のためなら、逃げる気もないということか」
「だからこそ、俺たちも負けられないってことだ」
リューの『竜貫』が悪天狗を貫く。大量のマテリアルと共に刀を前方に突き出す技により、悪天狗は迸るように消滅していった。
「これで最後かなー」
まりおは『立体攻撃』で、おさき狐の頭部に飛び乗り、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵の胴体を斬りつけた。巨大な身体が消えると、まりおはスッと着地した。
「これにて、一件落着。ベベン、ベン」
●
春夜は覚醒時、ヘルシャフトになっていたが、戦闘が終わると、いつの間にか姿を消していた。
ハンターたちは馬車三台を守りきり、目的地の村まで辿り着いた。
先頭の馬車は、歪虚の攻撃により少し痛んでいた箇所もあったが、物資は全て無事であった。
「良かった。物資を運ぶの、手伝うよ」
春夜は元の姿に戻り、傷もいくらか回復していた。村に入る前にマテリアルヒーリングを使ったようだ。
「ありがとう、春夜」
スコットが村の倉庫へと案内する。
「ヘルシャフトから話は聞いている。俺ともよろしく頼む」
春夜の言葉に、スコットは首を傾げた。
「えーっと、戦闘で助けてくれたのがヘルシャフトで、今は春夜ってことかな? あの時、春夜は着替えていたような?」
「それは気のせいだ。俺は咲月 春夜。改めて、よろしくな」
そんな遣り取りをしながら、春夜とスコットたちは荷物を倉庫へと運んでいた。
一方、真とマクシミリアンは荷台を引いていた馬たちを馬小屋に連れていき、休ませることにした。
「また詩天に来られるとはな。物資が届いて、村人たちも喜んでいたようだ」
真は安堵していた。
「……そうか」
マクシミリアンは口数が少なかったが、どこか温和な眼差しをしていた。
村の子供たちが、真とマクシミリアンの元へと駆け寄り、はしゃいでいた。
「ハンターさんたち、ありがとう」
子供たちがうれしそうに纏わりついてきた。
「キャー、カッコいいですぅ。素敵ですぅ」
気が付けば、子供達に混ざって、ハナが声援を送っていた。
美形ハンターと依頼で同行することができて、ハナの気持ちは高まっていた。
●
「唯、この簪、見覚えあるか?」
リューは唯とラキと協力して、村で聞き込みをしていた。
小さな酒屋の前で水撒きをしていた女性に声をかけ、事情を話すと、手紙と一緒に簪を渡された。
「……この簪、藤乃ねぇ様のだ」
唯は手紙を読むと、涙を浮かべていた。
「どうしたの、唯ちゃん?」
ラキが言うと、唯は顔をあげた。
「響ねぇ様の行方は分からないけど、藤乃ねぇ様は実家で待ってるって書いてある」
「そっか。良かったじゃんか。まずは藤乃と再会して、それから響を探せば良いさ」
リューが元気付けるように言った。
「そうするね。リュー、ラキ、ありがとう」
リューたちの助力で、唯は藤乃の行方を知ることができた。
その頃、まりおは村の中を探索していた。細い道が多いこともあり、本能が目覚めたのだろう。
マリィアは馬小屋の近くで武器の手入れをしていた。
エルバッハと言えば、興味深そうに何かを見ていた。その視線の先には、着物姿の町娘と青年がいた。
こうして、ハンターたちの活躍により、物資は無事に目的地まで運ぶことができた。
自由都市同盟の食材と応急手当の道具と薬が届き、村にも活気が戻り始めていた。
到着したのは、晴れた午後の時であった。
マリィア・バルデス(ka5848)は『直感視』を発動させると、魔導バイクを走らせ、神罰銃「パニッシュメント」を構えて、おさき狐一体を狙い撃つ。命中してダメージを与えることができたが、敵はハンターの動向にはさほど気にも留めていなかった。
「前方、巨大狐が四体! その背後に、天狗のような歪虚が四体! さらに後衛には巨大狐が四体! 物資破壊を優先している模様。左右から攻撃をされる可能性があるから、気を付けて」
マリィアが仲間たちに促す。
先頭の馬車に乗っている御者は、スコットの弟分メガスだ。
「まさか出番があるなんて」
メガスは少し慌てていたが、戦闘はハンターたちに任せることにした。
先頭の馬車を護衛していたエルバッハ・リオン(ka2434)は、自分や仲間、騎乗している戦馬を巻き込まないようにするため、おさき狐に狙いを定めて『アイスボルト』を放った。
氷の矢が突き刺さり、おさき狐一体は身動きが取れなくなった。
エルバッハは物資輸送の重要性を理解していた。
憤怒の眷属たちは、物資を破壊することで、人々のハンターへの信頼を失わせようとしていたのだ。
「どんな理由であれ、歪虚たちの好き勝手にはさせません」
「ヤツらの狙いが物資なら、指示しているモノがいるはずだ」
リュー・グランフェスト(ka2419)は前衛にいながら、敵の後衛にいる巨大狐たちの動向に注意を払っていた。
氷の矢で行動不能になったおさき狐一体を、リューが試作振動刀「オートMURAMASA」で切り払うと、敵は砂のように崩れ去り、消滅した。
「物資を奪う気なら、僕たちのことも忘れちゃダメだよ!」
超級まりお(ka0824)は『ビーダッシュ』で素早く敵に接近すると、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」でおさき狐を斬り付けた。見計らったかのように、鞍馬 真(ka5819)が『踏込』からの『薙ぎ払い』でハルバード「ディフェーザ」を振り回し、攻撃を喰らったおさき狐二体が消滅。
「やはり馬車が狙いか。回避したら、確実に物資を破壊されるな」
真は回避より、武器で敵の攻撃を受けた方が良いのではと考えていた。
星野 ハナ(ka5852)は中衛の馬車に御者として乗っていた。
「真ん中にいれば、前にも後ろにも符が届きますぅ」
「そうしてもらえると助かる。要は先頭の馬車を守るのを優先すれば良いだけのことだからな」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、ハナの作戦に感心していた。
ハナは陰陽鎧「六合」から『加護符』を投げつけると、先頭の馬車に積んでいる荷物に張り付けた。荷物の中は、もちろん物資だ。
咲月 春夜(ka6377)は覚醒すると、ヘルシャフト=アーカイブスへと変貌する。
「ラキ……肩の力を抜け。俺たちのやるべきことを思い出せ」
春夜の言葉に、ラキ(kz0002)は落ち着きを取り戻した。
「あたしは中衛の馬車を守るね」
「俺は先頭に行く」
春夜はヘルシャフトと名乗り、特殊強化鋼製ワイヤーウィップを構えて敵を牽制していた。
先頭の馬車が止まると、春夜は前方に防衛ラインを描くように脚で地面に直線を引いた。
「この線を基準にできれば……」
中衛の馬車も止まり、後衛の馬車は車間を取って止まった。
「来やがったな。後ろの狐が動き出したぜ」
リューは皆に声をかけながらシールド「フンケルン」で、おさき狐の攻撃を受け止めた。
悪天狗たちは先頭の馬車に接近すると、荷台に剣を叩きつけようとした。
「壊されてたまるか」
真はハルバード「ディフェーザ」で剣を受け払い、まりおが試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で、悪天狗の攻撃を受けた途端、剣がギリギリと軋む。
「ゴリッしゃなくて、ギリッだね」
春夜はカラミティサイズを構えた。悪天狗の剣を受け、物資を守ることができたが、春夜の身体は敵の攻撃により、切り裂かれていた。
「……俺の役目は、まだあるんだ」
春夜も、自分でもよく分からなかったが、何かに守られていたかのように急所は外れていた。
もしかしたら、誰かの祈りだったのだろうか。春夜は、懸命に立ちあがった。
悪天狗が擦れ違い、荷台に剣を叩き込んだ。だが、『加護符』に守られた物資は破壊されることはなく、符の効果が切れた。
後衛の巨大狐たちは先頭の馬車を目掛けて走り寄り、怪光線をしかけてきたが、紙一重で攻撃は当たらなかった。
「射程の外から威嚇攻撃してきましたよぉ。守りを固めて、敵に囲まれないようにしないといけませんねぇ」
ハナは気付いていた。左右からの攻撃に備えて、身構えていた。
「次はこちらの番です」
エルバッハは確実に敵を消しさるため、間合いを取り、後衛のおさき狐一体を『ブリザード』に巻き込む。頭部と胴体に命中し、体長4メートルの巨大狐はかなりのダメージを受けて、その場から動かなくなった。
マリィアは『クローズコンバット』を発動させ、魔導バイクを横付けに走らせてから敵の前衛付近で止まると、すかさず至近距離から神罰銃「パニッシュメント」で、おさき狐一体を狙い撃つ。その衝撃で、敵が消え去っていった。
「これで巨大狐は四体、倒せたわ。だけど、油断は禁物よ」
マリィアの言う通り、悪天狗たちは物資破壊を諦めてはいない。
リューには考えがあった。『ソウルトーチ』によって炎のようなオーラを纏うと、技に反応しない悪天狗が一体だけいた。反応しないというより、技の効果に抵抗できたのだろう。他の歪虚たちはソウルトーチには反応していたものの、持ち場からは離れることはなかった。
「……まずは様子見だな」
リューは敵に対して射程がないと思わせるため、攻撃はせず、ゴースロンのテンペストに騎乗したまま、少しだけ後退した。
「今なら、狙い処だな」
真は『踏込』で後衛にいた巨大狐たちに接近すると、ハルバード「ディフェーザ」による『薙ぎ払い』で敵を全て切り裂いていく。おさき狐たちは防御していたこもあり、その場から消えることはなかったが、かなりのダメージを受けているのは確かだ。
ハナは戦況を見て、再度、先頭の馬車に『加護符』を施した。
「大事な物資は、渡さないですよぉ」
荷台に符が張りつき、しばらくは加護の効果が続く。
「そんじゃ、クルクルの見せ場だね」
まりおは『立体攻撃』で巨大狐の身体に飛び乗ると、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵の胴部は切り裂いた。おさき狐は回避することができず、攻撃を受けた瞬間、飛び散るように消滅した。
「回復する前に、一体でも減らしておくか」
春夜は『機導砲』を放ち、おさき狐に命中……敵は崩れ去るように消えていった。
「撤退する気がないなら、最後まで付き合うまでだ」
真は悪天狗の剣をハルバード「ディフェーザ」で軽々と受け止める。
「目安はついたぜ」
リューはソウルトーチに反応しなかった悪天狗の攻撃を、シールド「フンケルン」で払い除けた。
「ひょひょーいと、なっ」
まりおが『マルチステップ』で悪天狗の剣を回避……敵はまりおの動きに翻弄されて、攻撃は命中しなかった。
残りの悪天狗は物資を狙って剣で斬り裂くが、『加護符』の防御により、物資が破壊されることはなかった。加護符の効果が切れ、おさき狐が牙を剥き出しにするが、春夜はとっさに鎌で受け止める。
「くっ……」
春夜の腕に、おさき狐の爪が食い込む。斬り裂かれた箇所から、血が流れ出した。
だが、春夜のおかげで物資を守り切ることができた。
「待たせたな。目星は付いているぜ」
リューは、指揮を取っていた悪天狗に狙いを定めて『竜貫』を繰り出した。直線状にいた悪天狗二体が刀によって貫かれた。凄まじいダメージを受け、悪天狗も再生が間に合わない。
「さてっと、ここまで来たら全て倒すわよ」
マリィアは魔導バイクを銃架代わりにマシンガン「プレートスNH3」の砲身を簡易的に固定すると、『高加速射撃』で左隅にいる悪天狗を狙い撃った。命中すると、悪天狗は奇声を発した。
「キャッハー、歪虚は全員ブッコロだぁ、ヒャッハー!」
妙にテンションが高いハナ……『五色光符陣』を右側に居た悪天狗に投げつけ、符によって作られた結界の中で、敵は光に焼かれて目がくらみ、さらに身動きも取れなくなっていた。
「やったですぅ。この世に歪虚が蔓延るなら、全て消毒しますぅ」
可愛い顔をして、ハナは歪虚に対して容赦がなかった。
「付加効果のある魔法の方が効果的のようですね」
エルバッハはワンド「アブルリー」を掲げ、『ブリザード』を放った。範囲内にいたおさき狐は冷気の嵐から逃れることができず、その場で凍りつくと、粉々に砕け散り、消滅していった。
「ずらりと並んでいるな」
真は『踏込』による『薙ぎ払い』で、前面にいる悪天狗たちに攻撃を放った。三体が消滅したが、残りの一体は逃げる様子はない。
春夜が『機導剣』で悪天狗を切り裂く……命中したが、敵の狙いはハンターではなく、物資だ。
悪天狗は、物資を狙って鉄扇で『乱刃』を繰り出した。
エルバッハはシールド「リパルション」で受けを試みたが、肩を切り裂かれた。物資を覆っていた布が飛び散り、真がとっさにハルバード「ディフェーザ」で悪天狗の攻撃を受け止めた。
「見上げた根性だな。目的のためなら、逃げる気もないということか」
「だからこそ、俺たちも負けられないってことだ」
リューの『竜貫』が悪天狗を貫く。大量のマテリアルと共に刀を前方に突き出す技により、悪天狗は迸るように消滅していった。
「これで最後かなー」
まりおは『立体攻撃』で、おさき狐の頭部に飛び乗り、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵の胴体を斬りつけた。巨大な身体が消えると、まりおはスッと着地した。
「これにて、一件落着。ベベン、ベン」
●
春夜は覚醒時、ヘルシャフトになっていたが、戦闘が終わると、いつの間にか姿を消していた。
ハンターたちは馬車三台を守りきり、目的地の村まで辿り着いた。
先頭の馬車は、歪虚の攻撃により少し痛んでいた箇所もあったが、物資は全て無事であった。
「良かった。物資を運ぶの、手伝うよ」
春夜は元の姿に戻り、傷もいくらか回復していた。村に入る前にマテリアルヒーリングを使ったようだ。
「ありがとう、春夜」
スコットが村の倉庫へと案内する。
「ヘルシャフトから話は聞いている。俺ともよろしく頼む」
春夜の言葉に、スコットは首を傾げた。
「えーっと、戦闘で助けてくれたのがヘルシャフトで、今は春夜ってことかな? あの時、春夜は着替えていたような?」
「それは気のせいだ。俺は咲月 春夜。改めて、よろしくな」
そんな遣り取りをしながら、春夜とスコットたちは荷物を倉庫へと運んでいた。
一方、真とマクシミリアンは荷台を引いていた馬たちを馬小屋に連れていき、休ませることにした。
「また詩天に来られるとはな。物資が届いて、村人たちも喜んでいたようだ」
真は安堵していた。
「……そうか」
マクシミリアンは口数が少なかったが、どこか温和な眼差しをしていた。
村の子供たちが、真とマクシミリアンの元へと駆け寄り、はしゃいでいた。
「ハンターさんたち、ありがとう」
子供たちがうれしそうに纏わりついてきた。
「キャー、カッコいいですぅ。素敵ですぅ」
気が付けば、子供達に混ざって、ハナが声援を送っていた。
美形ハンターと依頼で同行することができて、ハナの気持ちは高まっていた。
●
「唯、この簪、見覚えあるか?」
リューは唯とラキと協力して、村で聞き込みをしていた。
小さな酒屋の前で水撒きをしていた女性に声をかけ、事情を話すと、手紙と一緒に簪を渡された。
「……この簪、藤乃ねぇ様のだ」
唯は手紙を読むと、涙を浮かべていた。
「どうしたの、唯ちゃん?」
ラキが言うと、唯は顔をあげた。
「響ねぇ様の行方は分からないけど、藤乃ねぇ様は実家で待ってるって書いてある」
「そっか。良かったじゃんか。まずは藤乃と再会して、それから響を探せば良いさ」
リューが元気付けるように言った。
「そうするね。リュー、ラキ、ありがとう」
リューたちの助力で、唯は藤乃の行方を知ることができた。
その頃、まりおは村の中を探索していた。細い道が多いこともあり、本能が目覚めたのだろう。
マリィアは馬小屋の近くで武器の手入れをしていた。
エルバッハと言えば、興味深そうに何かを見ていた。その視線の先には、着物姿の町娘と青年がいた。
こうして、ハンターたちの活躍により、物資は無事に目的地まで運ぶことができた。
自由都市同盟の食材と応急手当の道具と薬が届き、村にも活気が戻り始めていた。
到着したのは、晴れた午後の時であった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談 咲月 春夜(ka6377) 人間(リアルブルー)|19才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/07/19 05:25:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/18 19:34:53 |