ゲスト
(ka0000)
【アルカナ】 凶弾が狙う未来への筋道
マスター:桐咲鈴華

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/16 09:00
- 完成日
- 2016/07/24 08:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「…………」
エフィーリアは手記を読む。先の依頼でハンター達が獲得した、かつての英雄の記した記録。もう一つの手記によるならば、そこに書かれているのは英雄の記した、アルカナへの『打開策』と言われるもの。慎重に、一語一句読み進めていったエフィーリアは、とあるページに行き着く。
『アルカナ』達は、封印から漏れ出した断片。そのままでは討伐しても、力を付けて再び復活してくる。
彼らを完全に滅するには、『核』である存在を引きずり出すしかない。
ここに記すはその為の術。しかし、核を引きずり出すには、彼らに隙を作るしかない。その方法は、委ねる事にする。
彼らをどうか、解放して欲しい。
「…………『アテュ・コンシェンス』。封印より、アルカナの核を引き出す秘術……」
エフィーリアはその術を読み解く。構造自体は単純だが、使うためにはタロッキの英霊に近しくなければならないという前提のほか、複雑な条件が必要のようだ。
「……」
エフィーリアは逡巡する。自分ならば条件を満たしている。術を使える事が出来る。しかし、自分には戦闘力が殆どない。アルカナの矢面に立っても、なすすべもなく殺されてしまうだけではないか、と。
(……しかし)
同時に手記に記されているのは、『アルカナ』の核であるファンタズマ達の特徴、そして苦悩だった。
あくまで”英雄”の主観ではあるが、そこに記されているのは、個々の正義や思想に対する葛藤。様々な想いが綴られている。ファンタズマ達は皆が、思い思いに何かを抱えながら、それでも人々のために戦ったのだと書かれていた。
(例え、この身が危険に晒されても……ここに記された人々が、今もなお、負の想いに囚われているなら……)
エフィーリアは拳を握る。例え無謀と謗られても、これ以上悲しみを重ねさせる訳にはいかない。
アルカナの危機に晒される人々も、かつてのファンタズマの人々も救う為に、目の前の敵を倒さなければならないのだと。
「……そのために、早く習得しなければ。いつまた襲撃があるか解りませんから……」
エフィーリアは手記に記された秘術を読み進め、解読する。しかし、その構造、修練は一朝一夕で身につくようなものではなさそうだ。数時間読み進め、日の落ちきった空を眺めながらぐっと伸びをする。
「……時は一刻を争いますが、少し休憩をしましょうか……一日では終わりそうもありません……」
そう言ってエフィーリアが立つと、偶然椅子が倒れる。
「……と」
エフィーリアが椅子を起こそうと身を屈めると、突如として窓の逆側にある棚が破砕される。
「っ!?」
咄嗟に机の下に転がるエフィーリア。破壊された棚の方を見ると、銃弾が転がっていた。運良く頭を屈めたお陰で狙撃を免れたのだ。
(銃……撃……!?)
机の下からふと窓の方を覗く。夜の闇に浮かぶ、小さな反射光。狙撃だ、自分は今、奴に狙われている。
「Death……! まさかもう攻め込んで来るなんて……!」
エフィーリアは、空に浮かぶ不気味な鏡から、部屋の中で必死に身を隠す。その胸に手記を抱えながら。
●
「死死死死ッ、今回も外しちまったなァ、あーあ、これじゃ狙撃手の名折れって奴じゃねェの?」
夜に溶けこむような銃身を構え、ある場所にて『アルカナ』の一人……『死神』の名を冠する歪虚、『The Death』は呟く。
「ようタロッキ。遂に俺らを滅ぼす術を見つけたっつーわけだ。俺らの受けた”啓示”の未来を覆そうってなァ」
レバーを引き、ボルトアクションライフルをリロード、スコープ越しに部屋内を見つめる。差し込む月の光が、銃身を鈍く光らせる。
「免れたなら、また殺り合いしようぜ、タロッキ。未来を賭けた争奪戦と洒落込もうかい! 死死死死!」
「…………」
エフィーリアは手記を読む。先の依頼でハンター達が獲得した、かつての英雄の記した記録。もう一つの手記によるならば、そこに書かれているのは英雄の記した、アルカナへの『打開策』と言われるもの。慎重に、一語一句読み進めていったエフィーリアは、とあるページに行き着く。
『アルカナ』達は、封印から漏れ出した断片。そのままでは討伐しても、力を付けて再び復活してくる。
彼らを完全に滅するには、『核』である存在を引きずり出すしかない。
ここに記すはその為の術。しかし、核を引きずり出すには、彼らに隙を作るしかない。その方法は、委ねる事にする。
彼らをどうか、解放して欲しい。
「…………『アテュ・コンシェンス』。封印より、アルカナの核を引き出す秘術……」
エフィーリアはその術を読み解く。構造自体は単純だが、使うためにはタロッキの英霊に近しくなければならないという前提のほか、複雑な条件が必要のようだ。
「……」
エフィーリアは逡巡する。自分ならば条件を満たしている。術を使える事が出来る。しかし、自分には戦闘力が殆どない。アルカナの矢面に立っても、なすすべもなく殺されてしまうだけではないか、と。
(……しかし)
同時に手記に記されているのは、『アルカナ』の核であるファンタズマ達の特徴、そして苦悩だった。
あくまで”英雄”の主観ではあるが、そこに記されているのは、個々の正義や思想に対する葛藤。様々な想いが綴られている。ファンタズマ達は皆が、思い思いに何かを抱えながら、それでも人々のために戦ったのだと書かれていた。
(例え、この身が危険に晒されても……ここに記された人々が、今もなお、負の想いに囚われているなら……)
エフィーリアは拳を握る。例え無謀と謗られても、これ以上悲しみを重ねさせる訳にはいかない。
アルカナの危機に晒される人々も、かつてのファンタズマの人々も救う為に、目の前の敵を倒さなければならないのだと。
「……そのために、早く習得しなければ。いつまた襲撃があるか解りませんから……」
エフィーリアは手記に記された秘術を読み進め、解読する。しかし、その構造、修練は一朝一夕で身につくようなものではなさそうだ。数時間読み進め、日の落ちきった空を眺めながらぐっと伸びをする。
「……時は一刻を争いますが、少し休憩をしましょうか……一日では終わりそうもありません……」
そう言ってエフィーリアが立つと、偶然椅子が倒れる。
「……と」
エフィーリアが椅子を起こそうと身を屈めると、突如として窓の逆側にある棚が破砕される。
「っ!?」
咄嗟に机の下に転がるエフィーリア。破壊された棚の方を見ると、銃弾が転がっていた。運良く頭を屈めたお陰で狙撃を免れたのだ。
(銃……撃……!?)
机の下からふと窓の方を覗く。夜の闇に浮かぶ、小さな反射光。狙撃だ、自分は今、奴に狙われている。
「Death……! まさかもう攻め込んで来るなんて……!」
エフィーリアは、空に浮かぶ不気味な鏡から、部屋の中で必死に身を隠す。その胸に手記を抱えながら。
●
「死死死死ッ、今回も外しちまったなァ、あーあ、これじゃ狙撃手の名折れって奴じゃねェの?」
夜に溶けこむような銃身を構え、ある場所にて『アルカナ』の一人……『死神』の名を冠する歪虚、『The Death』は呟く。
「ようタロッキ。遂に俺らを滅ぼす術を見つけたっつーわけだ。俺らの受けた”啓示”の未来を覆そうってなァ」
レバーを引き、ボルトアクションライフルをリロード、スコープ越しに部屋内を見つめる。差し込む月の光が、銃身を鈍く光らせる。
「免れたなら、また殺り合いしようぜ、タロッキ。未来を賭けた争奪戦と洒落込もうかい! 死死死死!」
リプレイ本文
●希望を狙う一条の射線
静かな夜の集落に響く衝撃と破壊音。近くで待機していたハンター達が目覚めるのも道理だった。すぐさま扉を開け、周囲を確認する。音のした方は、エフィーリアの部屋からだ。
エフィーリアは自室で防御行動を取っている。とはいえ彼女に戦闘能力はなく、狙われないように物陰に身を潜める事しかできない。
(前回の戦いのように、鏡の射線に入らなければ……)
エフィーリアは以前、『死神』の狙撃で重傷を負った。故に細心の注意を払い、鏡の位置に注意し、なるべく窓の死角へ入るようにする。
「!」
視界の端で何かが光り、咄嗟に転がるエフィーリア。先ほどまで居た場所に銃弾が突き刺さる。鏡が、窓から中へと侵入してきたのだ。
(鏡の速度が、以前よりも速い……!? 部屋の中に入ってくるなんて……!)
窓からスルリと入ってきた鏡は、ゆっくりと旋回しながらエフィーリアに照準を合わせようとしてくる。
「させません!」
部屋へ声が割り込むと同時に、煙幕が展開される。そこから続けざまに飛来した矢の雨が、侵入してきた鏡を粉砕する。突然の事に驚くエフィーリアは、ぐいっとその腕を引っ張られて部屋の外へ連れ出される。
「助けに……来たよ……」
「大丈夫ですか、エフィーリアお姉さん」
煙幕を展開して鏡を遮り、部屋からエフィーリアを連れ出したのはシェリル・マイヤーズ(ka0509)だ。叢雲 伊織(ka5091)は放った矢を矢筒に補充している。すぐ傍にいたアメリア・フォーサイス(ka4111)がエフィーリアに声をかけた。
「エフィーリアさん、敵の狙いはあなたのようです。護衛は私が担当しますから、すぐに身を隠せるように移動しましょう」
「すみません……よろしくお願いします」
守られる事を歯がゆく思うエフィーリアだったが、現在は彼女らに頼るしかない。
「エフィーリアお姉さん。そのヴェールを貸してくれませんか?」
「これ……ですか? 勿論構いませんが、一体……」
エフィーリアはヴェールを取ると、それを伊織へと手渡す。伊織は自分の弓に布を巻くと、渡されたヴェールを被った。
「エフィーリアお姉さんも、自分の武器に布を巻いて下さい。それで『死神』の目を欺ける筈です」
そこまで準備されて、エフィーリアははっと気づく。
「伊織様、まさか……囮になるおつもりでは……」
「ええ、こうすれば『死神』の狙いは欺けますし……何より、可憐な女性を守るのは、男の役目ですから」
伊織にそう言われ、エフィーリアは歯を噛み締める。作戦としては確かに、狙いが分散することで『死神』の狙いを誤魔化すことができる。エフィーリアよりも戦闘力の高い伊織ならば、狙われても彼女ほど危険な訳でもない、合理的な作戦だ。それでもエフィーリアは、自身の不甲斐なさ故に彼に危険を負わせてしまうことに、簡単に納得は出来なかった。
「……わかりました。くれぐれもどうか、お気をつけて」
「ええ、任せてください」
作戦を受諾したエフィーリアは、できる限り伊織と同じ格好をする。そうして伊織がエフィーリアと似た格好になると、伊織にはシェリルが、エフィーリアにはアメリアが護衛につき、囮となる伊織達はエフィーリアの家を発つ。
「準備は済んだ? 心配しないで、あなたは私たちが守り切ってみせるから」
伊織達の出発した後で、物陰に潜めて警戒をしていた白金 綾瀬(ka0774)がエフィーリアとアメリアの背を追うように護衛につく。
「西に向かうわ。危険だけど此方から打って出ましょう」
「了解です……」
「ん、なんだ、ハンターの奴ら、奴さんの家に入ったと思ったら……」
とある岩陰にて、『死神(Death)』は家から出てきた二人組を見て片眉を上げる。
「死死死、なるほどなァ、どっちがターゲットでしょう! っつー訳かよ、なかなか考えてやがるじゃねぇか」
スコープ越しにその様子く覗く『死神』は、楽しそうに独りごちる。
「3手か、一組は囮、一組は護衛の、一組はここを索敵ってカンジかい。だがちィっと分け過ぎだぜ兄弟、もーちっとシェイプアップしねーと、効率は落ちるぜよ」
『死神』は傍らの弾丸箱に手を突っ込むと、いくつかの変わった形をした銃弾を取り出し、それらをライフルに装填してゆく。
「さて、ま、そんじゃあ……どっちが本物のタロッキかはわかんねーが」
『死神』はスコープから、こちら側へ向かってくる一組に狙いをつける。
「ひとまずこっちに来てる奴から潰して、あとでゆっくり別方面を狙うとすっかなァ、死死死死死!」
「狙撃か……戦い方としては正しいけど、やっぱり気に食わないのよね」
南方面への索敵に出ていたアイビス・グラス(ka2477)は上空から不気味にこちらを覗く鏡を訝しく見上げる。正面から正々堂々、己が武力で相手を上回ることを信条とする同じアルカナの『力』を好敵手とする彼女からすれば、『死神』の戦い方は受け入れる事はできなかった。
「!」
見上げていた鏡から銃弾が飛び出す。アイビスは携えた拳で頭狙いの銃弾を正面から弾き飛ばすが、迎え撃ったと同時に銃弾が起爆する。
「何よこのミサイルみたいな銃弾……!」
続けて放たれる銃弾も、次々と周囲に着弾してば爆発を引き起こす。アイビスは地を蹴り、周囲の木々を利用して跳躍。手裏剣を投擲して鏡を破壊する。他の鏡がアイビスを狙い角度を変えてゆくが、アイビスは振るったワイヤーウィップで鏡を攻撃する。
「近接戦闘しかできないけど、こういった手段だってあるのよ!」
アイビスが得意としているのは徒手空拳による近接格闘だ。本来銃撃戦を相手どれる戦闘方法ではない。しかしアイビスは周囲の地形を利用し、3次元空間を縦横無尽に跳び跳ねる事で狙いを絞らせず、更には上空へ浮かぶ鏡へと攻撃を可能にしていた。
やがて南方面の目ぼしい場所を探索し終えるアイビスだったが、周囲に『死神』の影はない。
「こちらアイビス、南方面にはいなかったわ。これから西方面に向かう!」
上空へ浮かぶ鏡は、未だアイビスを静かに狙っている。アイビスはそんな鏡に向かって鋭い視線を送りながら訴える。
「いつまでも狩る側だと思うなよ、『死神』……!」
「早く見つけないといけないね……」
ナタナエル(ka3884)は全員のカバーしてない別方面への探索を行っていた。シェリル達が東、アメリア達が西と、アイビスが南に向かっていた為、北方面への索敵を行う。
「……クリア」
上空に浮かぶ鏡から身を隠し、慎重に、かつ迅速に岩場から岩場へ移動を繰り返す。マテリアルにより自らの気配を消したナタナエルは闇に溶け込んで発見し辛いのか、鏡からも積極的な銃撃は飛来してこない。
(流石に夜暗で気配を消せば狙いづらいみたいだね)
『死神』は一度に7人をターゲットにし、それぞれに攻撃を加えている。それだけでもかなりの分担作業になる。故に確実に攻撃を加えられる者から優先して攻撃を行っており、最も狙いにくいナタナエルへの攻撃は層が薄くなっている。
しかしそれでも、全く攻撃が来ない訳ではなく、適切な対策を取ってくる。
「っ!」
飛来した弾丸の一つが炸裂し、激しい閃光が迸る。周囲が一時眩く照らされると、闇に溶け込んでいたナタナエルの姿が顕になった。
(閃光弾……! けど…!)
夜の闇を利用していたナタナエルは、閃光弾が来ることを予測していた。仮面の下では、布で片目をカバーしており、激しい光に眩むことのない目で周囲を素早く見回す。
「撃ってきたのは、あの鏡か……!」
しかし閃光による目眩ましが『死神』の狙いではなかった。発光によってナタナエルの位置を確認したのだ。鏡と鏡へ銃弾が中継され、不規則な起動を描いてナタナエルの隠れていたポイントを狙って銃弾が飛んでくる。
「ちっ!」
ナタナエルは銀の髪を揺らしながら移動し、上空の鏡を見上げる。飛んでくる銃弾は生えていた木に着弾すると燃え上がり、火の明るさが周囲の闇を奪う。
「焼夷弾も撃ってきたか……死神がどこにいるか、だね」
ナタナエルはここで、鏡に向かってLEDライトを照射する。それと同時に周囲を見回し、光っている場所がないか、鋭い視覚を持って確認した。
『死神』は鏡をワープゲートにして空間を連結している。銃弾が飛んできた瞬間にライトを照射すれば、その『向こう側』に光が到達すると思ったのだ。
しかし、ナタナエルの居る北側にはそれらしい光がなく、『死神』の気配はない。
「こっちは外れかな……」
ナタナエルは銃弾を回避しながら、魔導短伝話を用いて味方に戦況と銃弾の種類を伝えていった。
西側。アメリア、綾瀬、そしてエフィーリアが向かっていたポイントだ。こちらは木々が多く、上空の鏡から隠れるポイントは多い。護衛対象であるエフィーリアをカバーしつつ、2人は索敵をする。綾瀬はLEDライトを周囲に向けて『死神』を探していた。だが、やはり光源を持つ綾瀬は向こう側からも目につきやすいらしい。鏡から放たれる弾丸は、積極的に綾瀬を狙ってくる。
「悪いけど、やらせるわけにはいかないのよ」
綾瀬は放たれた弾丸を見切り、同じく携えた拳銃で迎撃する。LEDライトによる視界確保が十分にできている綾瀬は、こちらを狙う鏡の縁を狙って射撃することで鏡にダメージを与えつつ、狙いをずらす事を可能にしていた。
「回復手段の乏しい私達は、なるべく被弾を回避しなければなりません……となれば」
アメリアは両手に拳銃を構え、上空を浮かぶ鏡を見据える。索敵を綾瀬が担当しており、エフィーリアを狙う銃弾から彼女を守るのが、アメリアの役割だ。
「すべて撃ち落とすしかないというわけですね」
構えた拳銃を続けざまに発砲する。鏡越しに放たれ、飛来した銃弾が空中でアメリアの弾丸に撃ち抜かれて霧散する。弾丸は着弾時に効果を発揮するタイプのものが多く、アメリアが空中で撃墜する度に火炎や冷気を撒き散らしている。
(神経を研ぎ澄まして見れば……何かが判るはず……)
アメリアはエフィーリアに飛来する弾丸を見つつ、直感視を使って鏡を極限まで観察する。綾瀬も同じく直感視によって鏡を見て、空間が繋がる際の『向こう側』を注視した。
「今!」
綾瀬は空間が繋がり景色が変わるその瞬間、銃撃を試みる。飛来する弾丸を撃ち落とし、同時に鏡を破壊する事に成功した。
「やっぱり、弾丸が通過できるのは向こうの弾丸だけみたいね」
空間が繋がった瞬間ならば、こちらの弾丸も向こうと同じく転移できるのではと試みたが、思ったような効果は得られなかった。だが、その攻撃のお陰で鏡の破壊は成功した為、無駄に終わった訳ではない。
「……見えました。これは……」
そしてアメリアはその鏡の向こうの景色に、別のものを見る。鏡が映し出していた向こう側の景色を、恐るべき洞察力で一瞬だけ垣間見たのだ。
「……シェリルさん、『死神』はそちらです!」
アメリアは鏡の向こうの景色に、滝があることを確認したのだった。
「……通りで、こっちは銃撃が多いと、思った……」
「シェリルちゃん、大丈夫ですか?」
月明かりに照らされた川岸、浮かぶ鏡から飛来する銃弾を盾で打ち払うシェリル。エフィーリアの変装をしているせいか、伊織に飛来する弾丸が非常に多い。
「守らなきゃ……イオリを……っ!」
「……いえ、シェリルちゃん、ここは打って出ましょう」
伊織は弓撃による矢の雨で、上空の鏡の一つを破壊しつつシェリルに提案する。
「現状、『死神』に一番近いのは僕達です。皆さんは現状でも大分消耗していますし、到着を待っていては誰かが倒れてしまうかもしれません……」
「……でも、イオリもすごく危険で……」
現状でも伊織は囮役だ。ただでさえ狙いが集中しているのに、敵に近づけばその分迎撃が来るのは明白だ。
「僕も守りたいんです。シェリルちゃんや、皆を……僕だって、こう見えて男の子ですもん」
伊織の強い意思を感じ、シェリルは頷く。敵の位置は仲間が特定してくれた。あとは走り抜けるだけだ。二人は洞窟へ向かって、一直線に走っていく。
鏡が、より激しさを増して銃弾を放ってくる。シェリルは最大限伊織を守るように盾を振るいつつ、鏡の位置を確認、携えた手裏剣を身体を回転させながら投擲し、複数枚の鏡を一度に破砕する。
伊織はそんな鏡のひとつひとつを直感視で注視する。鏡の空間接続が切り替わる一瞬一瞬を見逃さずに注意を配り、敵の姿を探す。
「……見つけました、あの洞窟内ですっ!」
伊織はやがて、鏡の中で狙う『死神』の姿を見つける。月の位置と、滝の奥にある洞窟の中から、伏せてスコープを覗く人物の姿を確認した。
その瞬間、銃弾が別の鏡へと飛ぶ。注視していた伊織には、その鏡が別の場所……エフィーリアを映し出している事が分かった。
『死神』が、こちらに向かっている方は替え玉であると確信したのか、はたまた単なる攻撃かの真意は解らない。だが、鏡に映っているのはアメリア達の死角だ。このままでは回避は間に合わない。
「……っ!」
咄嗟に身を踊り出す伊織。幸か不幸か、その鏡はまるで反射が前提であるかのように高度を下げており、伊織は自らの身体を盾にしてその銃弾から、鏡越しのエフィーリアを守った。
「イオリっ!?」
「だい、じょうぶですっ……! シェリルちゃん、倒してきて、下さい……!」
まともに銃弾を食らった伊織は、傷口から広がる痛みと痺れで動けなくなる。敵は眼と鼻の先だ、ここで足を止めれば全員が撃たれてしまう。シェリルは足を急がせ、洞窟の中へと突入する。『死神』は以前と同じく地面に伏し、銃口をこちらに向けたまま鎮座していた。
「……みつけた……また、会ったね、『死神』」
「よぉ、いつかの嬢ちゃんじゃねえか」
スコープから目を離した『死神』はシェリルを見据え、そして口を開ける。
「……顔つきが変わったな。前みたく、目の前の敵は殺して終わるんじゃねえのかい」
「……終焉が救済。分かるよ、その考え」
アルカナ達は、人々の未来に絶望しかないと、未来がなくなる事こそが救済であると説く。シェリルもまた、人と歪虚の行き着く先は破滅であると予感し、迷いながら戦ってきた。
「……だけど、私は、大きな絶望より……小さな未来を選んだ……」
シェリルは、胸に手を当てて訴える。
「まだここに、ヒトは……いるよ。大丈夫。セカイも、ミライも、そんなに悪く無い……私はそう思う、よ」
「……そうかい。アンタはその答えに行き着いたか」
『死神』は再び銃を構える。
「……なら否定してみろ、俺達のミライをよ!」
「っ」
死神が引き金を引き絞る前に、シェリルの刀が『死神』を捉えた。
「……それでいいさ……人と歪虚の未来は、交わらねえんだからよ……」
『死神』の名を冠する歪虚はシェリルの太刀に斃れ、そして消えていった。
静かな夜の集落に響く衝撃と破壊音。近くで待機していたハンター達が目覚めるのも道理だった。すぐさま扉を開け、周囲を確認する。音のした方は、エフィーリアの部屋からだ。
エフィーリアは自室で防御行動を取っている。とはいえ彼女に戦闘能力はなく、狙われないように物陰に身を潜める事しかできない。
(前回の戦いのように、鏡の射線に入らなければ……)
エフィーリアは以前、『死神』の狙撃で重傷を負った。故に細心の注意を払い、鏡の位置に注意し、なるべく窓の死角へ入るようにする。
「!」
視界の端で何かが光り、咄嗟に転がるエフィーリア。先ほどまで居た場所に銃弾が突き刺さる。鏡が、窓から中へと侵入してきたのだ。
(鏡の速度が、以前よりも速い……!? 部屋の中に入ってくるなんて……!)
窓からスルリと入ってきた鏡は、ゆっくりと旋回しながらエフィーリアに照準を合わせようとしてくる。
「させません!」
部屋へ声が割り込むと同時に、煙幕が展開される。そこから続けざまに飛来した矢の雨が、侵入してきた鏡を粉砕する。突然の事に驚くエフィーリアは、ぐいっとその腕を引っ張られて部屋の外へ連れ出される。
「助けに……来たよ……」
「大丈夫ですか、エフィーリアお姉さん」
煙幕を展開して鏡を遮り、部屋からエフィーリアを連れ出したのはシェリル・マイヤーズ(ka0509)だ。叢雲 伊織(ka5091)は放った矢を矢筒に補充している。すぐ傍にいたアメリア・フォーサイス(ka4111)がエフィーリアに声をかけた。
「エフィーリアさん、敵の狙いはあなたのようです。護衛は私が担当しますから、すぐに身を隠せるように移動しましょう」
「すみません……よろしくお願いします」
守られる事を歯がゆく思うエフィーリアだったが、現在は彼女らに頼るしかない。
「エフィーリアお姉さん。そのヴェールを貸してくれませんか?」
「これ……ですか? 勿論構いませんが、一体……」
エフィーリアはヴェールを取ると、それを伊織へと手渡す。伊織は自分の弓に布を巻くと、渡されたヴェールを被った。
「エフィーリアお姉さんも、自分の武器に布を巻いて下さい。それで『死神』の目を欺ける筈です」
そこまで準備されて、エフィーリアははっと気づく。
「伊織様、まさか……囮になるおつもりでは……」
「ええ、こうすれば『死神』の狙いは欺けますし……何より、可憐な女性を守るのは、男の役目ですから」
伊織にそう言われ、エフィーリアは歯を噛み締める。作戦としては確かに、狙いが分散することで『死神』の狙いを誤魔化すことができる。エフィーリアよりも戦闘力の高い伊織ならば、狙われても彼女ほど危険な訳でもない、合理的な作戦だ。それでもエフィーリアは、自身の不甲斐なさ故に彼に危険を負わせてしまうことに、簡単に納得は出来なかった。
「……わかりました。くれぐれもどうか、お気をつけて」
「ええ、任せてください」
作戦を受諾したエフィーリアは、できる限り伊織と同じ格好をする。そうして伊織がエフィーリアと似た格好になると、伊織にはシェリルが、エフィーリアにはアメリアが護衛につき、囮となる伊織達はエフィーリアの家を発つ。
「準備は済んだ? 心配しないで、あなたは私たちが守り切ってみせるから」
伊織達の出発した後で、物陰に潜めて警戒をしていた白金 綾瀬(ka0774)がエフィーリアとアメリアの背を追うように護衛につく。
「西に向かうわ。危険だけど此方から打って出ましょう」
「了解です……」
「ん、なんだ、ハンターの奴ら、奴さんの家に入ったと思ったら……」
とある岩陰にて、『死神(Death)』は家から出てきた二人組を見て片眉を上げる。
「死死死、なるほどなァ、どっちがターゲットでしょう! っつー訳かよ、なかなか考えてやがるじゃねぇか」
スコープ越しにその様子く覗く『死神』は、楽しそうに独りごちる。
「3手か、一組は囮、一組は護衛の、一組はここを索敵ってカンジかい。だがちィっと分け過ぎだぜ兄弟、もーちっとシェイプアップしねーと、効率は落ちるぜよ」
『死神』は傍らの弾丸箱に手を突っ込むと、いくつかの変わった形をした銃弾を取り出し、それらをライフルに装填してゆく。
「さて、ま、そんじゃあ……どっちが本物のタロッキかはわかんねーが」
『死神』はスコープから、こちら側へ向かってくる一組に狙いをつける。
「ひとまずこっちに来てる奴から潰して、あとでゆっくり別方面を狙うとすっかなァ、死死死死死!」
「狙撃か……戦い方としては正しいけど、やっぱり気に食わないのよね」
南方面への索敵に出ていたアイビス・グラス(ka2477)は上空から不気味にこちらを覗く鏡を訝しく見上げる。正面から正々堂々、己が武力で相手を上回ることを信条とする同じアルカナの『力』を好敵手とする彼女からすれば、『死神』の戦い方は受け入れる事はできなかった。
「!」
見上げていた鏡から銃弾が飛び出す。アイビスは携えた拳で頭狙いの銃弾を正面から弾き飛ばすが、迎え撃ったと同時に銃弾が起爆する。
「何よこのミサイルみたいな銃弾……!」
続けて放たれる銃弾も、次々と周囲に着弾してば爆発を引き起こす。アイビスは地を蹴り、周囲の木々を利用して跳躍。手裏剣を投擲して鏡を破壊する。他の鏡がアイビスを狙い角度を変えてゆくが、アイビスは振るったワイヤーウィップで鏡を攻撃する。
「近接戦闘しかできないけど、こういった手段だってあるのよ!」
アイビスが得意としているのは徒手空拳による近接格闘だ。本来銃撃戦を相手どれる戦闘方法ではない。しかしアイビスは周囲の地形を利用し、3次元空間を縦横無尽に跳び跳ねる事で狙いを絞らせず、更には上空へ浮かぶ鏡へと攻撃を可能にしていた。
やがて南方面の目ぼしい場所を探索し終えるアイビスだったが、周囲に『死神』の影はない。
「こちらアイビス、南方面にはいなかったわ。これから西方面に向かう!」
上空へ浮かぶ鏡は、未だアイビスを静かに狙っている。アイビスはそんな鏡に向かって鋭い視線を送りながら訴える。
「いつまでも狩る側だと思うなよ、『死神』……!」
「早く見つけないといけないね……」
ナタナエル(ka3884)は全員のカバーしてない別方面への探索を行っていた。シェリル達が東、アメリア達が西と、アイビスが南に向かっていた為、北方面への索敵を行う。
「……クリア」
上空に浮かぶ鏡から身を隠し、慎重に、かつ迅速に岩場から岩場へ移動を繰り返す。マテリアルにより自らの気配を消したナタナエルは闇に溶け込んで発見し辛いのか、鏡からも積極的な銃撃は飛来してこない。
(流石に夜暗で気配を消せば狙いづらいみたいだね)
『死神』は一度に7人をターゲットにし、それぞれに攻撃を加えている。それだけでもかなりの分担作業になる。故に確実に攻撃を加えられる者から優先して攻撃を行っており、最も狙いにくいナタナエルへの攻撃は層が薄くなっている。
しかしそれでも、全く攻撃が来ない訳ではなく、適切な対策を取ってくる。
「っ!」
飛来した弾丸の一つが炸裂し、激しい閃光が迸る。周囲が一時眩く照らされると、闇に溶け込んでいたナタナエルの姿が顕になった。
(閃光弾……! けど…!)
夜の闇を利用していたナタナエルは、閃光弾が来ることを予測していた。仮面の下では、布で片目をカバーしており、激しい光に眩むことのない目で周囲を素早く見回す。
「撃ってきたのは、あの鏡か……!」
しかし閃光による目眩ましが『死神』の狙いではなかった。発光によってナタナエルの位置を確認したのだ。鏡と鏡へ銃弾が中継され、不規則な起動を描いてナタナエルの隠れていたポイントを狙って銃弾が飛んでくる。
「ちっ!」
ナタナエルは銀の髪を揺らしながら移動し、上空の鏡を見上げる。飛んでくる銃弾は生えていた木に着弾すると燃え上がり、火の明るさが周囲の闇を奪う。
「焼夷弾も撃ってきたか……死神がどこにいるか、だね」
ナタナエルはここで、鏡に向かってLEDライトを照射する。それと同時に周囲を見回し、光っている場所がないか、鋭い視覚を持って確認した。
『死神』は鏡をワープゲートにして空間を連結している。銃弾が飛んできた瞬間にライトを照射すれば、その『向こう側』に光が到達すると思ったのだ。
しかし、ナタナエルの居る北側にはそれらしい光がなく、『死神』の気配はない。
「こっちは外れかな……」
ナタナエルは銃弾を回避しながら、魔導短伝話を用いて味方に戦況と銃弾の種類を伝えていった。
西側。アメリア、綾瀬、そしてエフィーリアが向かっていたポイントだ。こちらは木々が多く、上空の鏡から隠れるポイントは多い。護衛対象であるエフィーリアをカバーしつつ、2人は索敵をする。綾瀬はLEDライトを周囲に向けて『死神』を探していた。だが、やはり光源を持つ綾瀬は向こう側からも目につきやすいらしい。鏡から放たれる弾丸は、積極的に綾瀬を狙ってくる。
「悪いけど、やらせるわけにはいかないのよ」
綾瀬は放たれた弾丸を見切り、同じく携えた拳銃で迎撃する。LEDライトによる視界確保が十分にできている綾瀬は、こちらを狙う鏡の縁を狙って射撃することで鏡にダメージを与えつつ、狙いをずらす事を可能にしていた。
「回復手段の乏しい私達は、なるべく被弾を回避しなければなりません……となれば」
アメリアは両手に拳銃を構え、上空を浮かぶ鏡を見据える。索敵を綾瀬が担当しており、エフィーリアを狙う銃弾から彼女を守るのが、アメリアの役割だ。
「すべて撃ち落とすしかないというわけですね」
構えた拳銃を続けざまに発砲する。鏡越しに放たれ、飛来した銃弾が空中でアメリアの弾丸に撃ち抜かれて霧散する。弾丸は着弾時に効果を発揮するタイプのものが多く、アメリアが空中で撃墜する度に火炎や冷気を撒き散らしている。
(神経を研ぎ澄まして見れば……何かが判るはず……)
アメリアはエフィーリアに飛来する弾丸を見つつ、直感視を使って鏡を極限まで観察する。綾瀬も同じく直感視によって鏡を見て、空間が繋がる際の『向こう側』を注視した。
「今!」
綾瀬は空間が繋がり景色が変わるその瞬間、銃撃を試みる。飛来する弾丸を撃ち落とし、同時に鏡を破壊する事に成功した。
「やっぱり、弾丸が通過できるのは向こうの弾丸だけみたいね」
空間が繋がった瞬間ならば、こちらの弾丸も向こうと同じく転移できるのではと試みたが、思ったような効果は得られなかった。だが、その攻撃のお陰で鏡の破壊は成功した為、無駄に終わった訳ではない。
「……見えました。これは……」
そしてアメリアはその鏡の向こうの景色に、別のものを見る。鏡が映し出していた向こう側の景色を、恐るべき洞察力で一瞬だけ垣間見たのだ。
「……シェリルさん、『死神』はそちらです!」
アメリアは鏡の向こうの景色に、滝があることを確認したのだった。
「……通りで、こっちは銃撃が多いと、思った……」
「シェリルちゃん、大丈夫ですか?」
月明かりに照らされた川岸、浮かぶ鏡から飛来する銃弾を盾で打ち払うシェリル。エフィーリアの変装をしているせいか、伊織に飛来する弾丸が非常に多い。
「守らなきゃ……イオリを……っ!」
「……いえ、シェリルちゃん、ここは打って出ましょう」
伊織は弓撃による矢の雨で、上空の鏡の一つを破壊しつつシェリルに提案する。
「現状、『死神』に一番近いのは僕達です。皆さんは現状でも大分消耗していますし、到着を待っていては誰かが倒れてしまうかもしれません……」
「……でも、イオリもすごく危険で……」
現状でも伊織は囮役だ。ただでさえ狙いが集中しているのに、敵に近づけばその分迎撃が来るのは明白だ。
「僕も守りたいんです。シェリルちゃんや、皆を……僕だって、こう見えて男の子ですもん」
伊織の強い意思を感じ、シェリルは頷く。敵の位置は仲間が特定してくれた。あとは走り抜けるだけだ。二人は洞窟へ向かって、一直線に走っていく。
鏡が、より激しさを増して銃弾を放ってくる。シェリルは最大限伊織を守るように盾を振るいつつ、鏡の位置を確認、携えた手裏剣を身体を回転させながら投擲し、複数枚の鏡を一度に破砕する。
伊織はそんな鏡のひとつひとつを直感視で注視する。鏡の空間接続が切り替わる一瞬一瞬を見逃さずに注意を配り、敵の姿を探す。
「……見つけました、あの洞窟内ですっ!」
伊織はやがて、鏡の中で狙う『死神』の姿を見つける。月の位置と、滝の奥にある洞窟の中から、伏せてスコープを覗く人物の姿を確認した。
その瞬間、銃弾が別の鏡へと飛ぶ。注視していた伊織には、その鏡が別の場所……エフィーリアを映し出している事が分かった。
『死神』が、こちらに向かっている方は替え玉であると確信したのか、はたまた単なる攻撃かの真意は解らない。だが、鏡に映っているのはアメリア達の死角だ。このままでは回避は間に合わない。
「……っ!」
咄嗟に身を踊り出す伊織。幸か不幸か、その鏡はまるで反射が前提であるかのように高度を下げており、伊織は自らの身体を盾にしてその銃弾から、鏡越しのエフィーリアを守った。
「イオリっ!?」
「だい、じょうぶですっ……! シェリルちゃん、倒してきて、下さい……!」
まともに銃弾を食らった伊織は、傷口から広がる痛みと痺れで動けなくなる。敵は眼と鼻の先だ、ここで足を止めれば全員が撃たれてしまう。シェリルは足を急がせ、洞窟の中へと突入する。『死神』は以前と同じく地面に伏し、銃口をこちらに向けたまま鎮座していた。
「……みつけた……また、会ったね、『死神』」
「よぉ、いつかの嬢ちゃんじゃねえか」
スコープから目を離した『死神』はシェリルを見据え、そして口を開ける。
「……顔つきが変わったな。前みたく、目の前の敵は殺して終わるんじゃねえのかい」
「……終焉が救済。分かるよ、その考え」
アルカナ達は、人々の未来に絶望しかないと、未来がなくなる事こそが救済であると説く。シェリルもまた、人と歪虚の行き着く先は破滅であると予感し、迷いながら戦ってきた。
「……だけど、私は、大きな絶望より……小さな未来を選んだ……」
シェリルは、胸に手を当てて訴える。
「まだここに、ヒトは……いるよ。大丈夫。セカイも、ミライも、そんなに悪く無い……私はそう思う、よ」
「……そうかい。アンタはその答えに行き着いたか」
『死神』は再び銃を構える。
「……なら否定してみろ、俺達のミライをよ!」
「っ」
死神が引き金を引き絞る前に、シェリルの刀が『死神』を捉えた。
「……それでいいさ……人と歪虚の未来は、交わらねえんだからよ……」
『死神』の名を冠する歪虚はシェリルの太刀に斃れ、そして消えていった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/15 20:05:54 |
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相談卓 シェリル・マイヤーズ(ka0509) 人間(リアルブルー)|14才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/07/16 06:49:49 |
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質問卓 シェリル・マイヤーズ(ka0509) 人間(リアルブルー)|14才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/07/12 20:47:21 |