対触手性能モニター募集中

マスター:韮瀬隈則

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/18 15:00
完成日
2016/07/26 10:09

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「聞いて! 工房の製造ラインが1つ、1つだけ空いたのよ! 企画を通すチャンスが巡ってきたわ!!」

 ドアを開けるなり叫んだ女性の言葉に、彼女をいれてたった3名の小さな事務所は歓喜に沸き立つ。
 辺境東部、比較的安定した地域の海岸沿い。細い河が海へと注ぐ河口にある小さな港町。小規模なりに、辺境と同盟の流通を繋ぐGG(ゴルドゲイル)が流域向けの倉庫群を置くその片隅に、リアルブルー人零細商社『レイサイン』の事務所があった。一応立派に独立採算を営む、独立企業である、が、しかし。僅かな独自ルートのスポット品以外、扱う仕事の大部分はGG支社から請け負う調達下請けだ。

「やっと。やっと俺達の本職。オリジナルブランドがこの地でも立ち上がるのか!」
 感極まった男性の視線の先には、誌面に彼ら3人とブランドが載るリアルブルーのマイナーファッション誌。ロッソ転移の折り、LH44から持ち出した営業資料でもある。
 この記事を片手にリゼリオを駆け回った転移後。縁あって辺境に事務所を構え、さて自社ブランド展開再開をと意気込むが話はそう上手くない。拾われた先のGG支社のえらい人は、記事の自社ブランドを買ったわけではない。ブランド起業前の職、バイヤーの腕を評価していたのだから。
「素晴らしい調達っぷり、手腕も目利きも流石ですな。はぁ? 自社ブランド? いまはどこの工房の親方も多忙でっしゃろ。ウチとしてもライン空けてまで新規物で冒険はねぇ」
 と、試作すら不如意だったわけだが、彼らはメゲなかった。つまり工房ラインが空けば自社ブランドをねじ込める。
「俺はプランナーで!」
「私はデザイナーなのよぉ!」
 彼ら渾身の叫びである。



 ともあれ。
「空きは革工房、か。これで兼ねてよりの自信作、男ならオールシーズンケツポケ財布。細身レザーでありながらゴツいバイカースをポケットにフィット『レザースキニーパンツ』制作にかかれるな!」
「ええ、革工房。革製水着でビーチを釘付け。ビキニのセクシーな胸元から覗くルージュの秘密は隠しポケット。特殊裁断と縫製で寄せ上げセクシー『ホルターレザービキニ』が爆誕よ!」
 プランナー氏とデザイナー女史が吠たえ、そしてにらみ合った。
 しつこいようだが、空いたラインは1つである。
「君にはケツ財布のロマンが判らないのか? 男らしさの象徴、すべてのライダーへ送るパンツこそブランド再開にふさわしい」
「はっ? 季節感ってもの考えなさいよ。夏にケツ財布? だっさ! やっぱビキニでしょ? 強調される胸元、膨らみに隠された秘密、強力ホールドでセクシーこそが正義!」
「ケッ! 要は上げ底じゃねぇか」
「そっちこそスリのカモじゃない」

 不毛な罵り合いが続く中、残る事務職の女性がぼそりと提案した。
「ハンター向け商品ですから、数点ずつ作った試作品をレポートしてもらいましょう」



 ──数日後。
 同町オフィス出張所に、水棲モンスター強盗団出没の報がはいった。

「事件は漁港側の磯周辺で起きました」
 受付嬢の説明。
 河口を挟んだ商港と漁港の、警戒の薄い漁港の片隅。加工場に釣果を納めて帰る漁師の懐をねらったものか、被害者数名に岩場の陰からイソギンチャクと海藻が編まれた投網がかぶせられ、自由と貴重品を奪われたところにやって来たのが小型サハギン数匹だという。

「サハギン達だけでは、複数名相手にかなわない。そこで投網で一網打尽に締め付けとスリ盗りをやらせ、自らは貴重品の回収と口封じに専念。このような手口と推測します」
 今回、警邏が通りかかってサハギンは殺戮半ばで逃げたのだ、と受付嬢は言う。漁師は全員重傷。診療所のベッドは満員だ。意志を持つように締め付ける海藻と、得体の知れない粘液を分泌しながら服の内側に潜り込みまさぐるイソギンチャクの触手。逃げる暇もなく脱力して、後に襲撃したサハギンの槍を避けるどころではなかった、らしい。
「少人数ごとに投げられる網ですが、クセ者なのはこの催眠粘液らしいです。ヌメった触手で塗りこむがごとく、だと……」
 襲撃再発は間違いない。事件は昨日の話だが、今朝も磯には様子を伺う気配があった、とは、集団行動で自衛警戒した漁師仲間の情報である。

 報酬が少なくて申し訳ない。
 そう受付嬢が詫びる中、オフィスのドアが音を立てて開く。
「お待ちください。当方の提示する条件成立次第ですが、追加報酬をお支払いします」
 立っていたのは『レイサイン』の事務職女史。その手には数着のパンツと水着。
 条件とはなんだと訊くハンターに答える。
「どちらかの着用レポートの提出。パンツまたはビキニを装着し、強盗団の触手スリに抵抗し防犯効果を比較実証していただきたいのです」

 想定では泥棒ゴブリン相手だったのが粘液触手と強盗モンスターになっちゃったのは予定外ですが、抵抗性能も一応あるのでたぶん大丈夫です。
 と、小さく付け加えたのは聞かなかったことにするべきか?

リプレイ本文


「視線と笑顔、お願いしまっす! そう、その睨んだ感じ。皆、エロ可愛……ごほんセクシーキューツでビーチの視線釘付け確実っすよ」
 漁港に隣接した水産加工所の一室で、神楽(ka2032)がゲーム機を構えて女性陣の生着替えを激写しまくっては衝立からつまみ出されていた。
 もちろん業務上必要な記録である。神楽一人が主張しているだけだが。
「や、ヤらしい写真じゃないっす。構造上の利点問題点を着用時点から記録し、感想だけではない客観的なビジュアルからのより高精度なレポートをですね?」
 頑なにゲーム機を離そうとしない神楽の主張であるが、アングルの特殊性がそれだけではないと語っていた。

「ぅふふっ……これなら谷間がより深くなるわね」
 柏部 狭綾(ka2697)は早速着用した『ホルターレザービキニ』の秘密のポケットに貴重品を詰め込む。続いてデリンジャーを押し込もうとするが、当然のように入らない。
「あぁん、はみでちゃう。これじゃサハギンから銃を隠せない」
「ポケット小さいですからね。超小型のハンドガンなら寄せ上げた谷間に埋めるように挟むか、諦めてボトムにセットしてオプションのミニパレオで隠すかですね。元がDカップ以上ですと物を隠せるだけの谷間ができるんですけれど……」
 レイサインの事務女史が、ちなみにサイズはおいくつで? と振るように説明する。
「ざ、残念。Cだからちょっと、ちょっとだけ足りないわ」
 をほほほと目を泳がせ、「挟むの手伝いまっす」と挙手した神楽を衝立ごしに睨み、狭綾はパレオの下に銃を隠す。ちなみに申告はちょっと盛っている。重ね着オプションなら、微妙すぎるパレオよりブラをレイヤードにしてほしかった。
「サハギン退治のつもりで参じたから頭がリゾートモードじゃないんだが……ちょっと派手じゃないか? 挑戦的すぎるというか、大胆というか、戦闘中にズレは困るのだが」
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)はサイズバリエーションの中から一番大きいカップを選び、本当にこれ表示サイズか? とデザイナー女史へ首を傾げる。
「特殊縫製だから一見細身、実はシェイプアップ機能により肉体を掴むようにホールドするわ」
「っん、締め付けキツイな……これ以上奥にはちょっと……動くのは辛い」
「圧を谷間に逃がすんだけど……キャパオーバーかしら」
 大きく息をついてエメラルドは縫製が一流すぎるのも問題だと顔をしかめて、他の皆に同意を求める。
「皆、圧力キツいだろう? 戦闘に支障がでない縫製の希望を早めに伝えておこう」

 エメラルドの悪意なき暴力を無邪気に場外ホームランで打ち返す強者がいた。御酒部 千鳥(ka6405)である。
「水着……のう。この手のは初めてじゃが、少々窮屈なものじゃな」
 ほら、今まで着ていたサラシだとサイズの苦労が無いじゃろう? と、やはり最大カップを胸にあてがい、どう着たものかと思案している。
「お手伝いしましょうか?」
 ごそごそと得物を釣り道具に偽装していた十色 乃梛(ka5902)がひょこっと千鳥へ振り向く。
「いや大丈夫。なんとか収まった」
 小さく「たぶん」と続くが聞こえた者はいない。
 じゃあ、ビキニ組の準備は完了ですね。と乃梛が、あとはパンツ組の支度と偽装の最終チェックだよね? と指を折る。
「え? 乃梛さんまだワンピ姿じゃないっすか? 俺に構わず着替えてくださいよ」
 神楽、オマエ見張ってたンか?
「え? もう着替えましたよ?」
 乃梛……いつのまに?
「シークレット着替えはRB女子必須の特殊技能ですもの? ワンピって便利だよね」
 うふふ。フリフリと裾を翻す。裾広袖無しワンピを駆使するRBの秘術。彼女がその使い手だったとは! シークレットついでにブラのポケットが過積載だったりするが、乙女の見栄なので暴こうとしてはいけない。


「やあ! 待たせたね!」
 無駄にアッパーな笑顔を輝かせ、プランナー氏が偽装用クーラーボックスを肩に一室に入ってくる。
 文句を言いかけるデザイナー女史が、彼が連れてきた小柄な少女に目を留める。
「ズボン履く人募集っていうから、履いてみたのだー」
 面白そうだったし困ってたし。
 もぐもぐとアイスを食べながら、ネフィリア・レインフォード(ka0444)がにぱりと笑って挨拶する。
 ──餌で釣りやがったな?
「下だけでいいんだよね?」
 ──いくない!
 その場の全員がツッコむ前にプランナー氏が神楽を捕まえる。
「なんだ未だ着替えてないのか。スキニーを着こなすにはコツが要るからな。うん、手伝うぞ」
「あ、いや独りで出来……」
「男前な長財布だよ」
「そ、そんな大きくてゴツゴツしたの、入らなっ……」
「さぁゆっくり力を抜いて」
「押し込……なって」

 ……なんだか大変そうだな、と無駄に気を利かせた女性陣は、加工所横で出発を待つ。
 流石にネフィの無邪気なトップレスは、女史がアイスのお代わりを餌にビキニのトップスを付けさせる。が、ネフィは一飯の恩だとパンツも履いたままだったりするのだが、果たして大丈夫だろうか?



 ──当然のように大丈夫ではなかった。
 数十分後の磯辺にて、正確には、ネフィに加えて他の5人もそれぞれ別のベクトルで大ピンチである。

「気が進まぬ勘が、ここまで当たるとは……のう」
 ……まぁそうなるな。達観した顔で千鳥が呟く。
「半魚人が金品盗る意味って……手段が目的ってだけじゃない!」
 乃梛が呆れたように、岩陰に潜むサハギンへ毒づく。万一を想定して損した気分なのがムカツキ度UPだ。
「やっぱり……投網に全員かからないとでてこないって……厭な予感的中なんて嬉しくない……わね」
 率先して投網を被ってみればこれ、だ。狭綾はそれでも、狙撃に必要な射線確保と陽動を兼ねた抵抗の両立に苦心する。

 加工所帰り、午後漁の下見をする漁師を装って磯を歩いた。
 6人、では駄目だった。単独は戦術的に問題外。それ以前に敵の投網数の問題もあるのだろう。矢面に立つハンターを残りが投網の追撃上等で支援救出し、包囲網を逆転させる。という安全策は消えた。
 ──余力を保った戦力というのは正解、なのだ。
 猟師襲撃実績の3:3でセルを組み、セル内でもセル間でも互いに囮役と温存すた支援役を作る。全員が一斉に網にかかるのは仕方ない。突破手段を確保し、サハギンを存分に惹き付ける。商品モニターも兼ねているのだ。反転攻勢データを取るに好都合ではあるまいか。

 というのが、報告書記述上の作戦遂行表記である。


 数分前──
「わたしがあえて飛び込む形で矢面に立つから、ふたりは余力を残して機を窺ってね?」
 狭綾が自分の宣言通り、投網の照準を一気に惹き付ける。さり気なく同セルのエメラルドと乃梛を庇うように投網を受け、全身に纏うが如くにその海藻とイソギンチャクを絡みつかせる。3人とも網にはかかったけれど、投網はふたりの半身を覆いきれてはいない。
「大丈夫!?」
 案じるふたりに狭綾は気丈に笑う。
「慣れているもの、こんなの平気!」
「……そそそ、そう。慣れてるんだね!?」
「慣れてるなら安心だな! 触手エキスパート、頼りにしているぞ!」
 触手エキスパート狭綾! 過去、幾度と無くスライムと触手の責めに耐えてきた、その栄光の戦歴。ならば──

 ──勿論、平気ではなかった。
「ひゃぃっ! 水着の中に直行って速すぎ……」
 触手耐性というものが鍛えられるか否か。その議論は尽きないがはっきりしていることがある。耐性の真逆。過敏性の進行事例、である。狭綾の肌を舐ってきた幾多の触手と粘液は、彼女の受容体チャネルを最大限に活性化せしめていたのである。
「ゃだ……ヌメって……ぁんッ」
 平易な語彙だと「開発済み」な狭綾の膝が笑う。かろうじて立つ彼女と触手の間に、乃梛が割り入った。まだ後続セルが敵を釣り上げていない。勿論、様子を窺うサハギンは距離を保ったままだ。
「ワンピース着てるから、時間稼ぎできる……よ」
 武装スリに弱々しく抵抗を続ける演出に最適な筈、だ。乃梛は一瞬で投網を断つエメラルドに一斉反転の希望を託す。
 蠢くイソギンチャクが乃梛を捕らえた。
「きゃぁ! いきなりスらないで! スわないで!」
 スるとは聞いていたが、掏摸の他に擦ったり吸ったりされるとは思わなかった。滅茶苦茶に蠢くイソギンチャクに、乃梛の脳内はスの付く単語バリエーションに怯えるばかりである。乃梛──掏摸には強いが摩擦と吸引には服の上からでも弱い。半ばパニックの乃梛とワンピースをスルーしてスルスルと、裾から中へ投網が這い上がっていく。

「ダメっ。胸……そんな触り方すると、って……ち、違ぁう」
 上半身を巻き取られた狭綾の水着の隙間に粘液が入り込み、触手の侵入を助長する。しかし、奥まった秘密のポケットに届かない触手は、こじ開ける仕組みを探そうと水着の中で試行錯誤しはじめた。
「押しボタン式じゃないからっ! 引き戸でもなくってっ! ダイヤルと違うから回さないでぇぇ!」
 正解はトグルスイッチだったらしい。粘液と刺激で力の抜けた狭綾をまさぐり、しかし貴重品を奪えなかった触手が今度は下半身へ伸びてゆく。
「こっちも? ソレ違うのっ……ゃだ、穴に入れないで」
 狭綾の反応に連動したのか、乃梛の着衣の裾からも這い上がる触手!
 先を固く凝らせて侵入し大きくくねる。
「お臍つついてもディンプルキーで開くわけないじゃないっ!」
 無駄に複雑な動きでピッキングを働くのが腹立たしい。が、蹴り離そうとした隙が仇になった。


 先行セルの救助。
 最初は自らも投網にかかるための偽装。次が攻勢反転。それが後続セルの役割である。
「にゃっ! 助けに行くのだっ!」
「水着に粘液! そして触手! ヒャッハー! いざ果敢にズームイン……って、ちょ、女の子が先頭って打合せと違っ……ぶはっ」
 先行セルに投網がかかる。慌てて駆け寄るフリをして、しかし位置取りで構築するのはキルゾーン、が作戦。
「いや助かる。演技に失敗するより良い」
 ほら。引っかかった。
 慌ててネフィを追う神楽と千鳥を投網が襲う。勢いでたたらを踏むと見せかけて、セル間距離を調整する。──問題は、サハギンの誘き出しだ。

「ふやぁ……想像以上にヌルぽぃ」
 ガッ! っと思わず払いのけたネフィにその衝撃か、分泌された粘液が降り注ぐ。
「すっごく滑るよぉ……それに変な気分」
 褐藻綱コンブ科が豊富に含む多糖類と刺胞動物門イソギンチャク目の分泌する多糖類、そのヌメりは並みの界面活性剤を凌ぐ。
 瞬く間にネフィの水着の隙間に触手が入り込む。ポケットはパンパンだが寄せて上げる隙もない大平原。触手の進撃を止める障害物は皆無!
「やだぁ! だめ……なのだぁっ!」
 抗議するネフィの肌をミルクの色が伝う。

「お、おおおお前ェら何すンだ!」
 蔵倫的に差し止め不可避の絵面に、神楽のシャッターを切る手が止まる。
 魚類以下の無脊椎動物が、哺乳類様にむかっていい度胸じゃねぇっすか!?
 逆上してネフィを庇う神楽に、新しい獲物が飛び込んできたとイソギンチャクが吸い付き這い回る。
「大丈夫、っす。リジェネでダメージは食い止めるっす」
 千鳥さん、ネフィを頼む。が、託す言葉は脱力感に阻まれ、応えは耳に届かない。
「うわぁぁん! ポケットに仕舞っていたアイス、引きずり出されて盗られたのだぁ」
「くっ! 我が身に喩えれば懐に忍ばせた酒徳利を割られるに等しき暴挙、許すわけにはいかぬのう!」
 胸にしがみつくネフィを千鳥が抱きしめる。ネフィが握り締めた着衣で洟を拭ったが、気にする千鳥ではない。
「後で一杯奢るのじゃ。だから泣き止め?」
 なお、頷くネフィに微笑む千鳥というハートフルな場面の傍らで、神楽と触手のワケノシンノス(要検索)対決が絶賛展開中である。

「誰得の触手責めに負けるわけにはいかねっす……揉みしだいても解き解しても、咥え込んだ財布は抜け……ちょ! ダメっす! そこはもっとダメっす!」
 神楽を楔の如く穿つ財布。その牙城を崩し新たな貴重品を狙うべく侵攻する触手の行き先に気付き、神楽の悲鳴が本気度を増した。
「パルム……助け……」
『……?』
 密かに男の二つの財宝を守護していたパルムが、もきゅ? っと社会の窓から顔を出す。
 男の見栄に役立っても荒事はカラキシなのがパルムである。神楽があえなく花を散らせる、その寸前。


「捉えた」
 サハギンに囲まれた先行セル。押し殺したエメラルドの声──
「逃がさない。怒りという字は女の又の心、努力の努の字は女の又の力であると思い知れ!」
 何が逆鱗と蔵倫に触れたかは、字面で想像してほしい。



 ブチ切れた女性の底力を舐めてはいけない。

「倍どころか半分も返せなかったのだ……」
 ネフィがこっちはちゃんと返すね、と無意識に毟って洟をかんだ水着を千鳥に差し出す。
「どうりで動き易いと思えば、水着はそなたが持っておったか」
 返すならあの女史にじゃぞと示す先は、現場に到着したデザイナー女史。

「槍相手ならば最適解は斧、だよ。刺突前に薙ぎ潰す。制圧の圧、面または体積で圧倒するのが勝利の秘訣」
 女史に熱弁する乃梛の横で、エメラルドが大きく頷いている。
 圧? エメラルドの得物は剣のはずではなかったか?
「女史。アクセ仕様なのは合格、軽くて良くフィットし機能的でありながら挑戦的な艶やかさを持つ。悪くない。悪くはないんだが……」
 うーん。海産物の残骸のなかでエメラルドは唸る。
「やはりちょっとキツ過ぎる。いや動きやすさは問題ない、が、柔軟に締め付ける縫製が仇になって戦闘中苦しくて堪らない」
「しかも密着してムレるの、この季節だと辛いと思うわー」
 革製品の丈夫さが裏目に出てるよね、と乃梛も付け足す。
「密度と圧力で構築された胸部装甲。発想はイイが打撃機能付与までは盛りすぎだぞ?」
 ──打撃?
 そんな仕様つけてない。エメラルドの悪意無き暴力が今度はデザイナー女史を襲った。


 憔悴した体でプランナー氏が神楽のレポートに頷いている。
「おやつ沢山入らないの、ダメなのだ」
 ネフィのレポートで気が一気に抜けたらしい。
「僅かな防御力の期待より機動性が重視されると思うっす。俺が回避職ゆえっすけど、派手な動きに耐える柔軟さはそのまま、より軽量にっすね。スリっすか? ハンターから掏るヤツは特殊事例じゃないですかね」
 神楽の詳細なレポートが右から左へ抜けていくが、しかし、当の報告者の目がさらに憔悴で虚ろなのはどうしたことか?
「写真コピー、ありがとうございます」
 事務職女史が一礼して、神楽に自分のPDAフォルダの確認を促す。

 中身は、絡み合う腔腸動物・褐藻植物・魚類、そしてホモサピエンス雄。
 それ以外は布製品単体すらピンボケであった。──合掌。

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MVP一覧

  • 大悪党
    神楽ka2032

重体一覧

参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 対触手モニター『谷』
    柏部 狭綾(ka2697
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 疾風の癒し手
    十色 乃梛(ka5902
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 喧嘩と酒とモフモフと
    御酒部 千鳥(ka6405
    人間(紅)|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/16 13:27:37
アイコン サハギン退治&モニタリング
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/07/16 13:36:29