ササノハ生誕祭

マスター:尾仲ヒエル

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/19 22:00
完成日
2016/07/26 21:51

みんなの思い出

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オープニング

「準備は順調なようですね」
 ゾンネンシュトラール帝国首都、バルトアンデルスの空き地。
 教団のローブを着た穏やかそうな老人が、横に立つササノハに声を掛ける。
 老人の名はシモン。
 過去にササノハに救われ、教団の立ち上げ当初から関わってきた人物だ。
「信者の方々や、孤児院の子供たちも招待しました。楽しんでもらえると良いのですが」
 2人の目の前にある立て札には、内容や日時と共に、ササノハが考えた文章が書かれている。

『誰でも参加できます
 お祝いには赤い花をお持ちください』

 貧しい者や子供が貢ぎ物に関して気を遣うことのないようにという配慮からの言葉だ。
 ちょうど季節なのだろう。
 ケシに似た赤い花は、立て札の周りにもたくさん咲いている。
 当日には、野原にテーブルが並べられ、丸焼きにした鶏や、焼きたてのパン、果物といったささやかな御馳走が所狭しと置かれる予定だった。
「皆、喜ぶでしょう。私は本部の留守を預からせていただきますが……」
 孫を水の事故で亡くして以来、シモンはあまり子供のいる場所には姿を現さない。
「頼りにしています」
「……あまり、無理をなさらないでください」
「はい……でも――」
 言葉を濁らせたササノハに、シモンが言葉を重ねる。
「イリフネさまが何か仰るようでしたら、私からきちんと申し上げますから」
 忙しい叔父に代わり、小さい頃から教育係として傍にいた老人の言葉に、ササノハはくすぐったそうな表情で頷いた。

●10日前
 その夜、ササノハの叔父であるイリフネが部屋を訪れていた。
 金糸の刺繍も鮮やかな、薄い紗の着物がササノハの前に広げられる。
 それを見たササノハは、ごくりと喉を鳴らすと、覚悟を決めた様子で切り出した。
「叔父さん。私は、この誕生日で14になります。もう、女物の着物を着るのは――」
「貴方は教主です」
 遮る声は冷え冷えとしていた。
「信者たちが貴方に求めるのは性を超えた存在であること。衣装はそれを示す物です。長い髪は力を高めます。貴方は自分の我儘で人々を不安にさせるおつもりなのですか」
「私……は……」
 ササノハが言葉に詰まって顔を伏せる。
「私の期待を裏切らないでください」
 ため息と共にイリフネは部屋を出て行った。

●7日前
 空き地で浄化と呼ばれる儀式を行うササノハの元に、やつれた様子の若い女性がやって来た。
「ササノハさま。私の夫が消えてしまったんです」
 ケイと名乗った女性は、結婚したばかりの夫がいなくなってしまったことを途切れ途切れに語った。
 手掛かりもなく、周囲には自分のせいではないかと責められ、夜も眠れないという。
「もう、どうしたら良いのか」
 混乱した様子の女性の額に触れながら、ササノハがそっと声を掛ける。
「それは辛かったでしょう。……何度もそう言われる内に、だんだん自分に悪い所があったのではないかと思い始めているのでは?」
 図星だったらしく、ケイの目が見開かれる。
「大丈夫ですよ。あなたのせいではありません。例えあなたに罪があるとしても、私が許します」
 その言葉を聞いたケイは座り込み、ぼろぼろと泣き始めた。
 運ばれていく女性を眺めながら、ササノハは整った顔を曇らせた。
「最近、こうした事件が増えているような……。何か、起こっているのでしょうか」

●依頼と似顔絵
 ハンターオフィスに一つの依頼が届いていた。
『ハンターの皆さまへ。朱花の教団の教主、ササノハと申します。
 このたび、僭越ながら私の生誕祭を開くことになりました。
 パーティーに出席していただき、最近頻発している失踪事件について調べていただけないでしょうか。
 色々と事情があり、私は表立って動けません。
 どうか私の代わりに、招待した関係者の方々に話を聞き、情報を集めてください。

 追伸
 探しやすいよう、関係者の方々の特徴と似顔絵を書きましたので、添えさせていただきます』

 その似顔絵を見たハンターたちが、一瞬言葉を失う。
「こ、これは……」
「虫?」
「……いや、この文面からすると似顔絵だろ?」
「でも足が多くない?」
「髪……いや、服じゃないか?」
 ササノハの達筆と、壊滅的な絵のセンスが判明した瞬間だった。

リプレイ本文

 テーブルには溢れんばかりの御馳走と飲み物。
 誰かが歌を歌い出し、陽気なダンスが始まる。
 ササノハが笑顔で人々に応対する傍では、イリフネが教団の人間に指示を出している。
「足止めは任せろ」
 咲月 春夜(ka6377)がイリフネに話し掛けた隙に、残りのハンターたちはササノハの元に向かった。
「おめでとう!」
 チャイナドレスを着たウーナ(ka1439)が祝いの言葉を掛けると、ササノハが振り返った。
「素敵なドレスですね」
 大胆にスリットの入ったチャイナドレスは、ウーナの瞳より少し濃い深みのある赤だ。
「ありがと。後ろの柄も可愛いんだよ」
 嬉しそうに言ったウーナが、その場でくるりと一回転する。
 その拍子にチャイナドレスの裾がひらりと翻った。
「わ! ウーナさん、ストップ! 見えちゃいます!」
 それまでどこか余所行きの表情だったササノハがぎゅっと目をつぶり、ついでに慌てたのか何故か耳まで塞ぐ。
「おっと。……あ、なんか、いい顔になったね」
 無邪気に笑ったウーナにつられ、ササノハもくすくすと笑い出す。
「誕生日にお友達に来ていただいたのは初めてです」
 ハンターたちに嬉しそうに笑顔を向けるササノハに、八原 篝(ka3104)が赤い花を差し出した。
「誕生日おめでとう。結構サマになってるじゃない、教主さま」
「ありがとうございます」
 冗談交じりに言われた言葉に、少し照れたようにササノハが笑う。
 篝は足止めされているイリフネをちらりと確認すると、ササノハの耳元で尋ねた。
「ねえ、教主として人を助ける事は好き? このまま続けて行きたい?」
 驚いたように目を見開いたササノハは、そのままふわりと笑む。
「心配してくださったのですね。はい。教主の仕事は好きです。いつまでこの力が続くのかは分からないですけど、皆さんに喜んでいただけますから」
「……誰からも特別扱いされるのは、寂しくない?」
 いつでも特別扱いされるということは、普通の少年としての振舞いを許されないということではないか。
「寂しくない、と言えば、きっと嘘になります。……でも、篝さんや、皆さんがいてくださるから。あと、今日は来てませんけど、ゴウやシモン――教団の人間です――も傍にいてくれますし……叔父さんも、僕の体を本当に心配してくれるんです」
 最後に付け足された言葉は、少しだけ弁解めいていたかもしれない。

 ササノハの視線の先では、春夜がイリフネに話し掛けていた。
「良い生誕祭だな。お祝い申し上げる」
 貴族風の出で立ちで優雅に挨拶をした春夜は、イリフネに微笑んで見せる。
「故あって素性は明かせないが、ササノハさまの奇跡に興味があってね」
 お忍びで参加した貴族という立場を匂わせながら、春夜がそつなく話題を振る。
 いぶかしげな表情を浮かべていたイリフネも、春夜の背後に影のように付き従う葵の姿を見て、一応の納得をした様子だ。
「では、どなたかお亡くなりに?」
「……ああ」
 春夜は咄嗟に頷き、話を合わせる。
「どなたにでも、という訳には参りませんが、教団では最愛の方に会うお手伝いをさせていただいております」
「ほう。誰でも恩恵を受けられるわけではない、と?」
「――教団は、寄付によって成り立っております」
 イリフネは感情の読めない微笑みを浮かべた。

 文挟 ニレ(ka5696)がササノハに差し出した花は、丸っこく、可愛らしい印象のある赤い蝦夷菊だ。
「ありがとうございます。可愛い花ですね」
「赤い蝦夷菊の花言葉は『変化を好む』さ」
「変化……僕も……何か変われたら良いのですが」
 蝦夷菊を手にしたササノハの声には、憧れと、微かな諦めのようなものが滲んでいる。
「変わってるさ」
 ふっと笑んだニレは、ササノハの手から花を取ると、きょとんとする少年の耳の上に挿した。
「あっしから見れば、ボウズも最初に会った頃とは随分変わったよ。それに、これからも変わってくさ。先のことは誰にも分からねえ。……だろ?」
「そう、かもしれません。自分では分からないですけど、ニレさんや、皆さんと出会えて、その、楽しいです」
 頬を染めながらササノハが小さく頷く。
 黒髪に揺れる蝦夷菊に微笑みながら、金鹿(ka5959)がぬいぐるみを差し出した。
「お祝いだけ、というわけには参りませんのが少々口惜しいところではありますけれど。祝福の想いは心からのものですわ。お誕生日、おめでとうございます。出逢えたことに感謝と、ササノハさんのこれからに幸が多く在りますよう」
 ぬいぐるみの子狐は、赤い花ときらりと光る物を抱えている。
「ありがとうございます。綺麗ですね。これは……鱗?」
「腕輪型の護符ですわ。あなたを守る力になりますよう願いを込めて。……此度、私達を頼りにしてくれたこと嬉しく思います」
「金鹿さんたちに来て頂けて嬉しいです」
 ハンターたちと知り合う以前のササノハであれば、真っ先に叔父に頼っていただろう。
 ふわふわしたぬいぐるみを抱く外見は少女そのものだが、ササノハの心の中では、何かが少しずつ変わってきているのかもしれなかった。
「ササノハ様、お誕生日おめでとうございます。これくらいしか用意できなかったのですけど、喜んで頂けるかしら」
 祝いの言葉や贈り物を貰って嬉しそうなササノハに、デュシオン・ヴァニーユ(ka4696)が赤い花のブーケを差し出す。
「ありがとうございます。赤い花にも、こんなに種類があるんですね」
「赤い薔薇に、カーネーション、そしてスターチスです」
 デュシオンが花の名を挙げていくと、ブーケを手にしたササノハが、ふと首を傾げた。
「花というのは、取っておけるものでしょうか」
 友達からの初めての誕生日プレゼントを、どうにか枯らさずに取っておきたいらしい。
「押し花にしてもいいと思いますわ。本などに挟んで重しを載せておけば、枯れることはありません」
 花言葉や花に詳しいデュシオンの言葉に、ササノハの顔が輝く。
「それは素敵ですね」
 うきうきした様子でハンターたちから貰った物をまとめ出す少年と別れ、ハンターたちはそれぞれ聞き込みに向かった。

「さて、と」
 ウーナが話を聞こうとしているのは会場にいる人々だ。
「ねえねえ。どの料理がおいしいかな?」
 屈託なく人々に話しかけていき、話が弾んだところで本題を切り出す。
「あ。そういえばさ、さっきそこで話してるの聞いちゃったんだけど、最近、行方不明になる人が多いらしいって」
「そういえば、先月の夜、隣村で……」
「ああ。暗くてよく見えなかったが、その中に背の高い奴と低い奴……たぶん大男と小男がいたと思う」
 様々な反応を示す人々から、ウーナは事件の詳細を聞き出していく。
 ついでにササノハやイリフネの評判も聞いてみるが、祝いの席ということもあってか、こちらは当たり障りのない答えが多い。
「ササノハさまはまだお若いけど、イリフネさまがいるから安心だね」
「最近は見かけないけど、シモンさまもいらっしゃるしね。ああ、教団の幹部の方だよ」
 人々から聞く限り、ササノハを除けば、教団で力を持っているのはイリフネと、幹部のシモンという人物のようだった。
 そこから少し離れた場所では、金鹿が占いのカードを広げている。
「もし、突然失礼ではありますが、そこなお姉さま」
「ん? あたしかい?」
 声を掛けられたドワーフのおばさまが嬉しそうに振り返る。
「心騒がすようなご縁、端的にいってしまえば恋愛運気の上昇が見えますわ」
「恋愛? いやだよこんなオバさんをつかまえて」
 言葉とは裏腹に、近付いてくるおばさまの歩みは速い。
「ええ。けれど、それが何かに妨げられているような……これはご自身の失せ物ではなく周囲の出来事、でしょうか。最近周囲から何かが無くなるような出来事、心当たりはありまして?」
 考え込むおばさまに、助手役として金鹿の隣に立っていた篝がさりげなく言葉を掛ける。
「そういえば、最近失踪人が多いって聞いたわ」
「ああ! そういえばそうだね。隣町でも、その近くの村でも、いなくなった人がいるってさ」
「へえ、詳しいのね」
 すかさず篝が驚いてみせる。
 情報通としての自尊心をくすぐられたおばさまは、どっしりした胸を張った。
「そりゃあね。長く生きているからさ」
「さっきそこで話したけど、ケイって人も旦那さんがいなくなったって」
「そりゃあ気の毒にねえ。あたしの聞いた話じゃ、隣町は爺さん、村では若い娘さんがいなくなったって話でさ……」
 おばさまの話が一区切りつくと、篝もひとつ話を聞かせる。
「そういえば、リアルブルーから来た空飛ぶ赤い船が元の世界に帰る準備をしているらしいわ」
 すると篝の作戦通り、おばさまは張り合おうとするようにお喋りを加速させた。
 おばさまの話が脱線しそうになると、金鹿がさりげなく本題に引き戻す。
 止まらないおばさまのお喋りに、金鹿と篝はそっと笑みを交わした。

 一方、イリフネはまだ春夜につかまっていた。
 隙を見てその場を離れようとするイリフネを逃がすまいと、春夜はテーブルにあった杯を取る。
 そしてそれを高々と掲げると、会場にいる人々に向かって呼びかけた。
「この場はササノハ殿を祝う席! まずはササノハ殿へ祝いの言葉を捧げるのが筋ではないだろうか!」
 御馳走に舌鼓を打っていた人々の注目が集まる。
「乾杯、といきたいところだが、まずはササノハさまの叔父であり、この場を設けてくださったイリフネさまに一言いただこう!」
 わっと歓声が上がり、その声に応えざるをえなくなったイリフネが、渋々口を開く。
「本日は、お集まりいただき――」

「……その部屋で眠るとな、死んだはずの妻に会えたんじゃよ。話せはしなかったが、一目でも会えて幸せじゃった」
 タオの長話に忍耐強く付き合っていたデュシオンは、その言葉に大きく頷いて見せた。
「わたくしにも、愛する方がおりますの。故にそのお気持ち、よく分かりますわ」
 彼女がちらりと視線を向けた先には、会場の人々と歓談する聖職者らしい青年の姿がある。
「そういえば、ケイ様の旦那様の行方が分からぬようで……」
 話の流れに乗せて本題を切り出すと、タオは表情を曇らせた。
「ああ、あんたも話を聞いたのか。気の毒になあ」
「良ければ当時のこと、何かお教え頂けないかしら?」
「……あれは帰りが遅くなった日じゃった」
 タオの話によれば、その夜、村から出ていく数人の人影を見たのだという。
 人影の中で一番恰幅が良く背の高い――おそらくは大男であろう人影は、何か大きな物を抱えていたと続ける。
「後からスオウが消えたと聞いてな……」
 タオは責任を感じている様子でため息を吐く。
「スオウとケイとは新婚でな。本当に仲が良さそうじゃった」
 そのケイに、ニレは話を聞いていた。
「何か事情があるってんなら、話せる範囲で話してみるのはどうだい?
こう見えてもあっしはハンターだ。場合によっちゃあ、何か力になれるかもしれないよ」
「……ある日突然、夫が消えてしまったんです。結婚したばかりで、2人でこれからのことを色々計画していたところで……何も心当たりがないんです。喧嘩もしたことがなかったのに」
 ケイの瞳に、こらえきれなかった涙がじわりと滲み、ニレが痛ましそうな表情を浮かべる。
「……なるほどな。人探しと物探しは、よく引き受ける仕事だよ。あっしの方でも探してみるから、
旦那さんの服装やら特徴やらを教えてもらえるかい?」
「ありがとうございます。夫は大工なんです。赤い髪で、茶色の目をしていて、暑がりだからいつも袖をまくっていて……」
「で、格好良いんだろ?」
 声を詰まらせたケイの言葉の後を、ニレが優しく引き取る。
 ケイは涙をぬぐうと、ぎこちないながらも初めて笑顔を見せた。
「ええ。とっても!」

 聞き込みを終えたハンターたちは、会場の隅で落ち合っていた。
 地面に簡単に書かれた地図を囲み、集めてきた情報を全て共有していく。
「ケイの旦那の特徴は今言った通りだ。話を聞く限り、自分から消えたとは考えられねえ」
 ニレの言葉にデュシオンも頷く。
「タオさんの話によれば、時刻は夜。村から出ていく、大男を含む数人の人影を見たということでしたわ」
「おばさまの情報では、同じく夜、大男と小男らしき人影を見たという話が多かったです」
 金鹿が事件の起こった場所を地図に書き込む間、篝が事件の詳細を話す。
「お爺さんに、若い女の子。性別も年齢もばらばら。今のところ失踪した人達につながりはなさそうに思えるわ」
「こっちも性別や年齢はバラバラだった。半年前から時々事件が起きてるみたいだけど、これだけ色んな場所ってことは、相当デカい組織が動いてるってことかな」
 ウーナも聞き込んだ情報を地図に書き足していく。
 そうして出来上がった地図には、奇妙な共通点があった。
「ぽっかり帝都だけ穴が空いているみてえだ」
 眉をひそめたニレが呟く。
「……事件が起きてるのは小さい町や村ばかりみたいだ。何か理由でもあるんだろうか」
 春夜が指摘する通り、大男と小男が絡む失踪事件は帝都では起きておらず、周辺の小さな町や村にばらけて発生している。
 何者かの不気味な意図を感じて、ハンターたちの間に沈黙が訪れる。

 詳しい報告は後ですることにして、ハンターたちはササノハに情報を集め終えたことを報告した。
「ありがとうございました。宜しければ依頼の内だと思って、皆さんも何か召し上がっていってください」
「いやあ。なんだか悪いねえ」
 ササノハの勧めに、ニレが早速とくとくと酒をつぎ始めた横では、他の女性陣が、どのデザートを選ぶかで盛り上がっている。
「この和菓子が美味しそうですわ」
 金鹿がすすめる雅やかな和菓子に、篝が茶色の瞳を輝かせる。
「透き通って綺麗ね。川の底に魚が泳いでいるみたい」
「木苺のタルトも捨てがたいですわ」
 デュシオンがすすめるタルトも、瑞々しい木苺の赤が食欲をそそる。
「……こうなったら、どっちも食べちゃう?」
 ウーナの言葉に真剣に悩みはじめた女性陣の後ろでは、杯を空けたニレが笑いをこらえている。
 イリフネの足止めで挨拶ができていなかった春夜は、ササノハに赤い花の入ったブーケを差し出した。
「誕生日おめでとう、ササノハ。手紙は1人の時に開けろ。俺の国のやり方で清めた魔を払う物を入れてある」
 何か入っているらしく重みのある手紙を不思議そうに受け取ったササノハに、春夜は更に2匹のペットを渡した。
「祭りが終わるまで家族を預ける。子供たちからの受けは良いだろう」
 薄い蒼色の羽をはばたかせた妖精がササノハの頭にちょこんと腰掛け、腕をするりと登った銀色のフェレットがササノハの首に巻き付く。
「わあ。ふわふわですね」
 ハンターたちに囲まれた14歳の誕生日。
 ササノハは、今だけは全ての憂いを忘れたように笑顔を浮かべた。

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参加者一覧

  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 弓師
    八原 篝(ka3104
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • ライラックは美しく咲く
    デュシオン・ヴァニーユ(ka4696
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 豪放なる慈鬼
    文挟 ニレ(ka5696
    鬼|23才|女性|符術師
  • 舞い護る、金炎の蝶
    鬼塚 小毬(ka5959
    人間(紅)|20才|女性|符術師

  • 咲月 春夜(ka6377
    人間(蒼)|19才|男性|機導師

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
デュシオン・ヴァニーユ(ka4696
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/07/19 12:03:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/19 11:46:44