ゲスト
(ka0000)
森の街道を塞ぐオオカミ達
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/20 19:00
- 完成日
- 2016/07/26 21:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●襲い来る黒いオオカミ
その一団は自由都市同盟から来た女性達だった。
人数は4人。ほとんどが10代後半から20代前半の若い女性だ。
彼女達は、グラズへイム王国を目指していた。国境を越え、王都イルダーナの聖堂教会へと巡礼を考えていたのだ。
しかしながら、このご時世、夜盗を始め、雑魔、場合によっては歪虚による襲撃の話もある。彼女達は同性のハンターを2人雇い、女性だけの一団で馬車を走らせて旅をしていた。
国をまたいでの旅など、ほとんどするものではない。ただ、敬虔なエクラ教教徒である彼女達は、身を固める前に一度、聖堂教会を訪れたいと考え、危険を承知で旅に出ていたのだ。
それは楽しい旅だった。雇われのハンター達とは初対面ではあったが、年齢も近いこともあり、すぐに打ち解けた。女性ばかりで過ごす楽しい夜はなんとも面白い。
しかし、数日が経った頃。
国境を越え、リンダールの森へと入った頃、状況が一変する。
「皆さん、ちょっと面倒なことになりました」
野営を行う一行。ハンターが雇い主の女性達へと話す。なんでも、この先の街道で黒いオオカミの集団が鎮座し、動く様子がないとのこと。
追い払いたいところだが、ハンター2人ではさすがに返り討ちに合いそうだ。
また、街道の迂回をするのなら、リンダールの森ごと迂回することとなる。さすがにそれは、女性巡礼者達のスケジュールが大幅に狂ってしまうので、それは避けたい。
「少し戻って、ハンターズソサエティに相談すべきと考えます」
楽しい旅路は一変。雑魔の影響で、彼女達は立ち往生せざるを得ない状況となってしまうのだった……。
ハンターズソサエティにこのオオカミの討伐依頼が出たのは、それからしばらくしてのこと。
最近、王都の聖堂教会を訪れようとする巡礼者を狙い、オオカミが姿を現すという話もある。
王都に詰めている聖堂戦士団の面々もその対応を行ってはいるのだが、現状、王都で事件を起こさぬよう、王都内の巡礼者の警護が手一杯。人不足も手伝い、王都外への団員派遣はままならぬ状況だ。それ以外はハンターに依頼を行って手数を埋めているという現状だ。
このままハンターの援軍がやってこないと、女性ハンターが無謀にも特攻して命を散らしてしまう危険もある。そうなると、同行していた女性信者達は、巡礼を諦めてしまう可能性もある。
長い目で見れば、王都に巡礼する人が減る一因ともなりかねない。聖堂教会としては憂慮する事態ではあるのだが……。
ともあれ、オオカミを討伐してしまえば済む話。どうかよろしくお願いしますと、女性ハンターからの言伝。そして、とある聖堂戦士団の女性団員からも、「よろしくお願いします!」と力強い字で走り書きがされてあったのだった。
その一団は自由都市同盟から来た女性達だった。
人数は4人。ほとんどが10代後半から20代前半の若い女性だ。
彼女達は、グラズへイム王国を目指していた。国境を越え、王都イルダーナの聖堂教会へと巡礼を考えていたのだ。
しかしながら、このご時世、夜盗を始め、雑魔、場合によっては歪虚による襲撃の話もある。彼女達は同性のハンターを2人雇い、女性だけの一団で馬車を走らせて旅をしていた。
国をまたいでの旅など、ほとんどするものではない。ただ、敬虔なエクラ教教徒である彼女達は、身を固める前に一度、聖堂教会を訪れたいと考え、危険を承知で旅に出ていたのだ。
それは楽しい旅だった。雇われのハンター達とは初対面ではあったが、年齢も近いこともあり、すぐに打ち解けた。女性ばかりで過ごす楽しい夜はなんとも面白い。
しかし、数日が経った頃。
国境を越え、リンダールの森へと入った頃、状況が一変する。
「皆さん、ちょっと面倒なことになりました」
野営を行う一行。ハンターが雇い主の女性達へと話す。なんでも、この先の街道で黒いオオカミの集団が鎮座し、動く様子がないとのこと。
追い払いたいところだが、ハンター2人ではさすがに返り討ちに合いそうだ。
また、街道の迂回をするのなら、リンダールの森ごと迂回することとなる。さすがにそれは、女性巡礼者達のスケジュールが大幅に狂ってしまうので、それは避けたい。
「少し戻って、ハンターズソサエティに相談すべきと考えます」
楽しい旅路は一変。雑魔の影響で、彼女達は立ち往生せざるを得ない状況となってしまうのだった……。
ハンターズソサエティにこのオオカミの討伐依頼が出たのは、それからしばらくしてのこと。
最近、王都の聖堂教会を訪れようとする巡礼者を狙い、オオカミが姿を現すという話もある。
王都に詰めている聖堂戦士団の面々もその対応を行ってはいるのだが、現状、王都で事件を起こさぬよう、王都内の巡礼者の警護が手一杯。人不足も手伝い、王都外への団員派遣はままならぬ状況だ。それ以外はハンターに依頼を行って手数を埋めているという現状だ。
このままハンターの援軍がやってこないと、女性ハンターが無謀にも特攻して命を散らしてしまう危険もある。そうなると、同行していた女性信者達は、巡礼を諦めてしまう可能性もある。
長い目で見れば、王都に巡礼する人が減る一因ともなりかねない。聖堂教会としては憂慮する事態ではあるのだが……。
ともあれ、オオカミを討伐してしまえば済む話。どうかよろしくお願いしますと、女性ハンターからの言伝。そして、とある聖堂戦士団の女性団員からも、「よろしくお願いします!」と力強い字で走り書きがされてあったのだった。
リプレイ本文
●オオカミとの遭遇
リンダールの森へと東から向かうハンター達。
別のハンター2人と合流し、メンバー達は馬車を引きつつ街道を歩いていく。今回の依頼者である巡礼者の女性達は、森手前の集落で待機し、討伐の成功を願っているはずだ。
(巡礼か。この手の行事はどこにでもあるものだな)
門垣 源一郎(ka6320)は思う。この道は今回の巡礼者だけでなく、往来する全ての者が使うはずだ。
「それなら、公共の仕事とも言えるか。手を尽くそう」
その討伐対象は、雑魔と成り果てた黒いオオカミだという。
「女性だけの一団で巡礼、か。男はオオカミだから気をつけろとは言うけど、文字通りオオカミな雑魔が出るなんて、ついてないわねぇ……」
巡礼路の安全を確保しようとアルスレーテ・フュラー(ka6148)も考えるのだが、文字通りの相手に彼女は嘆息する。
「噛まれりゃ痺れ、引っ掛かれりゃ毒……随分厄介な狼も居たもんだぜ」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は嘆息するどころか、燃え上がっている。将来有望な女性が、オオカミの毒牙に掛かるのを見過ごすなんざ、男が廃ると。
「この相棒テンペストと傭兵としての誇りにかけて、楽しい旅の再開を約束してやるよ!」
愛剣のグレートソードを見せ付けるエヴァンスに、同行の女性ハンター達も心強さを覚えていたようだ。
リューリ・ハルマ(ka0502)も女性ハンター達に挨拶しつつ、意気込む。
「折角来たのに、狼のせいで立ち往生じゃ大変だよね。みんなで協力してバーンと倒しちゃおうね!」
「狼さんを追いかけて。蒼ずきんルーネ、がんばります」
ルーネ・ルナ(ka6244)もその討伐の為、仲間と協力、連携して討伐をと気合を入れるのである。
作戦に先立ち、ルーネの希望もあって、できる限り作戦などを共有し、一行はこの依頼に臨む。
ただ、ルーネは連絡用にトランシーバーを用意していたが、他メンバーの用意がなく、それが使えない状況なのが手痛い部分だったようだ。
準備も整い、森へと踏み出すハンター達。
源一郎は女性疾影士と共に、斥候へと出る。源一郎は時に、壁歩きで木の上から周囲を見回すなどして、敵の早期発見に努める。2人はできるだけ敵の襲撃に備えて互いにカバーをしやすい距離を維持し、突然の襲撃に備えていたようだ。
発見までそれなりの時間を要すると考えていた源一郎だったが、その想定よりも早く、敵を発見することができた。
森の街道に入ってしばらく歩いた地点で、10体のオオカミが街道を塞ぐように座り込んでいたのだ。
2人は一度、後ろを歩くメンバーを呼びに戻り、ハンター達全員でそのオオカミの元へと向かう。
「ほーん、ゾロゾロとまあ、ご苦労なこったねぇ」
「これが妹曰くの駄犬か」
鵤(ka3319)、テノール(ka5676)は目視で敵を確認する。オオカミ達もこちらにすぐ気づいたようだ。
「またお前らか!」
それまで大人しくしていた玉兎 小夜(ka6009)だったが、以前対したオオカミと同じ姿の敵に荒ぶり始める。
「あと、前回取り残したでっかいの! ちょうどいいからその首寄越せ!」
小夜は刀をぶん回しながら、相手へと突っ込んでいく。
「ただの狼なら追い払って終わりだが、歪虚だし、しっかり殺らないとな」
「混戦上等、こちとらてめぇら全員狩り尽くす気でいるからよ」
エヴァンス、テノールが覚醒すると、オオカミ達も殺気を感じて身を起こしていた。
「敵は問答無用で、ぐーぱんち!」
リューリも敵へと飛び込んでいく。こうして、雑魔となったオオカミとの交戦が森の中で始まったのだった。
●群れるオオカミの殲滅を!
道を塞ぐ黒いオオカミは、3メートルほどもある大型のものと、小型のもの。小型とはいえ、通常のオオカミほどの大きさはあり、油断ならぬ相手だ。
「エヴァンスさん、よろしくお願いします」
ルーネはエヴァンスへと声をかける。できるだけ彼と協力し合い、小型オオカミの殲滅を試みようと考えていた。
エヴァンスも同じ。出来る限り小型の気を引きつつ、苦無「雷牙」を投げ飛ばす。相手は素早いオオカミ。無理に部位狙いをせず、相手に当てることに神経を払う。
そのエヴァンスの背になるよう、ルーネは立つ。
「ここで食い止めないと」
他の仲間が大型を狙いに集中できるよう、彼女はオオカミの牙や爪による麻痺、毒に備えて光で彼らを包み込んでいく。これで、仲間達の負担が減るのであればよいのだが……。
源一郎は自身の火力不足を省みて、仲間が各個撃破できるようにと小型の抑えとして立ち回り、太刀「鬼神大王」で直接小型へと切り込んでいた。
やや後方に位置していた鵤も小型……特に、大型狙いの仲間を襲うオオカミを狙う。女性ハンター2人も、小物の相手に専念していたようである。
鵤は自身の頭上に光の三角形を生成し、そこから光線を発射していく。それは見事に2体のオオカミの体を貫いた。片方は仲間が狙っていた事もあり、その一撃で地面に転がったようだ。
とはいえ、鵤はそれに気を良くした様子はない。彼は常に状況把握に努め、どの大型オオカミがリーダーかと見定めようとする。彼はそいつが遠吠えによって指示を出す可能性が高いと踏んだのだ。
そうして、小型を抑えるメンバーの傍らで、他のメンバーは全力で大型を叩く。
(少し闘牛士など思い出すな)
前線では、テノールが思いっきり暴れていた。相手が素早いのであれば、止めればいい。単純なことだ。
体力のある今のうちと、テノールは多少無茶な立ち回りをしつつも、飛び掛ってきたオオカミの爪をさらりと躱し、力の限りその大きな体躯を投げ飛ばす。
敵の動きを注視していたリューリ。相手は自身よりも圧倒的に身の丈が大きな敵だ。それが喰らい付いてくるのを槍で抑えつつも、リューリは同行させたダックスフントを通し、精霊の力を借りて自身の力を高めていた。
そんな中、リューリはテノールが投げ飛ばしたオオカミが視界に入り、直接鉄拳「紫微星」で幾度も殴りかかる。かなりの数の連撃を浴びたはずだが、黒いオオカミは地面に着地し、ハンター達を威嚇してきていた。
アルスレーテは身を投げ出すオオカミの体当たりを避け、くるくる舞い踊りながら反撃を仕掛ける。直接大型のオオカミに触れた彼女は、体内のマテリアルを一気に送り込む。それは強烈な打撃となり、オオカミの内臓までも痛めつけた。
「どうかしら?」
アルスレーテは蒼い瞳を向け、敵に問いかける。
口を動かそうとしたオオカミだが、小夜がそれを許さない。
「お前の首で、故郷にササニシキ飾ってやる!」
切り込む小夜は、水平に構えた斬魔刀「祢々切丸」の刃で敵の口を貫く。そして、抜いた刃でオオカミの首を切り落とした。
1体を始末した小夜だったが、何かが腑に落ちず首を傾げる。
「……あれ、錦だっけ。まぁいいや」
そもそも記憶を失っている彼女には、故郷がどこかも分からない。
ただ、そんなことよりと、小夜は腹の音を鳴らす。戦いの最中であることを思い出し、彼女は再びオオカミの首を落とすべく、敵に向き直るのだった。
敵の牙や爪、そして身を投げ出して繰り出す体当たりは、ハンター達を苛む。
対策はすれど、敵の攻撃全てを防ぎきることはできない。ルーネが時に解毒や解麻痺の為にと傷つく仲間を光で覆い、回復に当たっていたようだ。
ただ、基本的には攻めのチーム。攻撃の手を止めることなく、ハンター達はオオカミの殲滅を目指す。
テノールは出来るだけ同じ個体に、かつ多くの個体へと考えながら構え、そのタイミングを見計らう。
敵に喰らいつかれ体に痺れを覚えながらも、テノールはそいつを陰にしつつ、マテリアルを放出する。伸びる気功は、大型2体と小型1体を巻き込んでいた。
その小型を狙う鵤。彼は前衛を抜けてきた小型目がけ、炎の力を持ったマテリアルを扇状に吹き付ける。それを喰らった小型は、爆破霧散するように姿を消していく。
エヴァンスも続いて小型の注意を引き続ける。群れに接近し、マテリアルを溜めたグレートソードを振りぬき、衝撃波を発生させていたが。敵はそれを素早く避け、後ろのルーネ目がけて大きな口を開いてかぶりつこうとする。
「もぅ、邪魔しないでくださいっ」
回避しようと身構えるルーネだが、相手が少し早く、腕を食いつかれてしまう。メイスを叩きつけて応戦する彼女。そこで、エヴァンスが踏み込みながらグレートソードを突き出し、そいつを仕留めた。
「ありがとうございます……」
一息ついたルーネはエヴァンスに礼を述べ、周囲を見回す。
「皆さま、大丈夫でしょうか」
気づけば、オオカミの数は減ってきてはいたが、その分仲間の傷も深くなってきていた。ルーネは精霊に祈りを捧げ、マテリアルの力で仲間達を癒していく。その癒しは十分に仲間達を支えることが出来ていたようだ。
大型を相手にしていたアルスレーテ。一時、エヴァンス達が危機にさらされていたのを見て、助太刀にと考えていたようだったが、彼は難なく小型を処理していたようだ。
(もし、あなたに何かあると、妹が悲しむのよ)
ぶっちゃけ自身にはどうでもいいと切り捨てながらも、アルスレーテはエヴァンスをある程度は意識していたようだが。己を主張してくるように、大型のオオカミが鋭い爪で引き裂こうとしてくる。
それに皮膚を裂かれ、毒に侵されたことを実感しつつ、アルスレーテは鉄扇を叩きつけ、そこからマテリアルを送りこむ。そいつは内部破裂を起こすように消えていった。
そこで、危機を察した大型のオオカミ1体が大声を上げる。
「うっさいわ! 黙ってろ!」
小夜はそれに気づいたが、一足遅かったようだ。
「ちっ、あいつか……?」
鵤はあまり狙いをつけていなかったオオカミが声を上げたのに、驚く。この群れのリーダーはあいつなのかと。
そんな考えを待たずして、小型のオオカミが3体、この場へとやってくる。
そいつらにすぐ狙いを定め、鵤は炎のエネルギーを放射していく。
「狼のお前らは、群れるのが本脳だろう!」
小夜は大型と増援を合わせ、素早く動きながらも纏めて切り刻む。
そうして、体勢を崩したオオカミがいたのを、リューリは見逃さない。
「悪い狼は1匹も逃がさないからね!」
やや距離もあった為、彼女は大身槍「白鵠」で切り込み、連続突きを繰り出していく。全身からどす黒い血を流していたオオカミは力尽き、その場から消えてなくなっていった。
だが、そこで2体の大型が、小型を残してこの場からの離脱を図り始めた。
それでも、うち1体の傷はかなり深い。大地を強く踏みしめてそれを追ったテノール。素早く敵を後ろから全身のマテリアルを高め、一気に撃ち放つのと同時に殴りつけようとする。殴打を浴びせた上、放たれたマテリアルによって敵は体の半分が吹き飛び、つられるように残り半分も消え飛んでしまう。
逃げる大型のオオカミ。そいつを狙い、ルーネが追いかけ始め、鵤もデルタレイを飛ばして敵の脚部を狙う。
2人からは逃れたオオカミだったが、迫り来る源一郎が切り払う刃から逃れられなかった。このタイミングを最初から見計らっていた源一郎。大型の逃走を許さない。
「今度は逃がさないぞ。今日は全力で追っかけてやる!」
前回、悔しくも敵を逃した小夜は、今回は絶対にこの場で叩ききると、全力で追いかけていた。そして、間合いに入ったことを確認し、水平に構えた刀で敵を後ろから貫く。
吠える間すら与えることなく。オオカミは霧散して消え失せてしまったのだった。
●楽しく雑談しながら
その後、残った小型オオカミを殲滅したハンター達は、オオカミ討伐完了の報告の為にリンダールの森手前の集落まで戻る。報告を受けた女性巡礼者達は森を通ることが出来ると喜んでいた。
ただ、集落に戻った頃には日も暮れてきていた為、女性ハンター、巡礼者を含め、こちらのハンターチームも今夜はここで一夜を過ごすことにする。
「さって、お楽しみねぇ?」
鵤は周囲を見回していると、すでに、エヴァンスが巡礼者達と一緒に、酒を飲んでいた。
「依頼後の美女との一杯、俺にとっちゃそれだけでも十分な報酬さ」
問題なければ、この後一晩……という話をエヴァンスは巡礼者へと持ちかけていたのだが。女性ハンター2人が白い目を彼へと向ける。
(まさか、そんな心配要らないと思ってたけれど……)
そして、アルスレーテも下心を丸出しにするエヴァンスに目を光らせていた。
「あー、もう……。狼なんて倒したからぐねぐねしてる……」
そこで、小夜がきょろきょろ見回す。この場にいつも可愛がっている少女がいない為、女性ハンターに狙いを定めていた。
「むぅ。ちょい、ハンターさんもふらせてよー。もふもふ」
同姓の小夜は堂々と女性ハンターの体をもふり始める。ある程度満足した彼女はすぐに、すやぁと眠りに付く。
そんな様子に、エヴァンスが渋い顔を、鵤がにやにや笑っていたようだ。
巡礼者達とその後、リューリが楽しく語っていた。オオカミを倒しはしたものの、雑魔の出現に怯える巡礼者がいたようで。
「みんな強いし、狼には負けないよ! 大丈夫!」
リューリが巡礼者達を励ますと、その女性は表情をほころばせていたようだ。
「皆様、どのような体験をされたのでしょう」
ルーネがそこで、巡礼者達にこれまでの体験談を尋ねる。
人によっては貴族の家柄で、なかなか家から出ることができない。親の言いつけがしつこく、こうやって一度は何者にも拘束されない旅がしたかったと語る。彼女達にもハンターとは違った苦労があるのだろう。
そんな女性達の語る話は、転移してさほど経っていない源一郎としては、現地の人の話を聞くことができる貴重な機会と言えた。
源一郎は依頼人自身に興味があるわけではないのだが、彼女達の話は別だ。
巡礼について、自由都市同盟について、そして、王国について。基礎的な情報であっても、今の彼には興味深い話であったのだ。
そういえばと、テノールが女性達に問う。
「そういえば、歪虚による被害の噂はないかな」
全くないわけではなかったが、それはあくまで噂話の域を超えず。ハンターズソサエティで得られる情報に比べると信憑性の薄いモノでしかなかったようだ。
逆に、彼女達からは、ハンターとしての生活について問いが返ってくる。
「男でも女でも、災禍にあって無力なのは同じだ。自分で決めて自分で結末を引き受けられる」
それでも、楽しく旅を行うことも出来る。自由には、結果に対する責任も付いて回るのだ。
そんなハンターの生活に感嘆しつつも、私達には難しそうだと女性巡礼者達は苦笑いしていたようだ。
楽しい一時は過ぎていく。思う存分語り合った一行は、日付が変わる頃に会をお開きにし、就寝したのだった。
リンダールの森へと東から向かうハンター達。
別のハンター2人と合流し、メンバー達は馬車を引きつつ街道を歩いていく。今回の依頼者である巡礼者の女性達は、森手前の集落で待機し、討伐の成功を願っているはずだ。
(巡礼か。この手の行事はどこにでもあるものだな)
門垣 源一郎(ka6320)は思う。この道は今回の巡礼者だけでなく、往来する全ての者が使うはずだ。
「それなら、公共の仕事とも言えるか。手を尽くそう」
その討伐対象は、雑魔と成り果てた黒いオオカミだという。
「女性だけの一団で巡礼、か。男はオオカミだから気をつけろとは言うけど、文字通りオオカミな雑魔が出るなんて、ついてないわねぇ……」
巡礼路の安全を確保しようとアルスレーテ・フュラー(ka6148)も考えるのだが、文字通りの相手に彼女は嘆息する。
「噛まれりゃ痺れ、引っ掛かれりゃ毒……随分厄介な狼も居たもんだぜ」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は嘆息するどころか、燃え上がっている。将来有望な女性が、オオカミの毒牙に掛かるのを見過ごすなんざ、男が廃ると。
「この相棒テンペストと傭兵としての誇りにかけて、楽しい旅の再開を約束してやるよ!」
愛剣のグレートソードを見せ付けるエヴァンスに、同行の女性ハンター達も心強さを覚えていたようだ。
リューリ・ハルマ(ka0502)も女性ハンター達に挨拶しつつ、意気込む。
「折角来たのに、狼のせいで立ち往生じゃ大変だよね。みんなで協力してバーンと倒しちゃおうね!」
「狼さんを追いかけて。蒼ずきんルーネ、がんばります」
ルーネ・ルナ(ka6244)もその討伐の為、仲間と協力、連携して討伐をと気合を入れるのである。
作戦に先立ち、ルーネの希望もあって、できる限り作戦などを共有し、一行はこの依頼に臨む。
ただ、ルーネは連絡用にトランシーバーを用意していたが、他メンバーの用意がなく、それが使えない状況なのが手痛い部分だったようだ。
準備も整い、森へと踏み出すハンター達。
源一郎は女性疾影士と共に、斥候へと出る。源一郎は時に、壁歩きで木の上から周囲を見回すなどして、敵の早期発見に努める。2人はできるだけ敵の襲撃に備えて互いにカバーをしやすい距離を維持し、突然の襲撃に備えていたようだ。
発見までそれなりの時間を要すると考えていた源一郎だったが、その想定よりも早く、敵を発見することができた。
森の街道に入ってしばらく歩いた地点で、10体のオオカミが街道を塞ぐように座り込んでいたのだ。
2人は一度、後ろを歩くメンバーを呼びに戻り、ハンター達全員でそのオオカミの元へと向かう。
「ほーん、ゾロゾロとまあ、ご苦労なこったねぇ」
「これが妹曰くの駄犬か」
鵤(ka3319)、テノール(ka5676)は目視で敵を確認する。オオカミ達もこちらにすぐ気づいたようだ。
「またお前らか!」
それまで大人しくしていた玉兎 小夜(ka6009)だったが、以前対したオオカミと同じ姿の敵に荒ぶり始める。
「あと、前回取り残したでっかいの! ちょうどいいからその首寄越せ!」
小夜は刀をぶん回しながら、相手へと突っ込んでいく。
「ただの狼なら追い払って終わりだが、歪虚だし、しっかり殺らないとな」
「混戦上等、こちとらてめぇら全員狩り尽くす気でいるからよ」
エヴァンス、テノールが覚醒すると、オオカミ達も殺気を感じて身を起こしていた。
「敵は問答無用で、ぐーぱんち!」
リューリも敵へと飛び込んでいく。こうして、雑魔となったオオカミとの交戦が森の中で始まったのだった。
●群れるオオカミの殲滅を!
道を塞ぐ黒いオオカミは、3メートルほどもある大型のものと、小型のもの。小型とはいえ、通常のオオカミほどの大きさはあり、油断ならぬ相手だ。
「エヴァンスさん、よろしくお願いします」
ルーネはエヴァンスへと声をかける。できるだけ彼と協力し合い、小型オオカミの殲滅を試みようと考えていた。
エヴァンスも同じ。出来る限り小型の気を引きつつ、苦無「雷牙」を投げ飛ばす。相手は素早いオオカミ。無理に部位狙いをせず、相手に当てることに神経を払う。
そのエヴァンスの背になるよう、ルーネは立つ。
「ここで食い止めないと」
他の仲間が大型を狙いに集中できるよう、彼女はオオカミの牙や爪による麻痺、毒に備えて光で彼らを包み込んでいく。これで、仲間達の負担が減るのであればよいのだが……。
源一郎は自身の火力不足を省みて、仲間が各個撃破できるようにと小型の抑えとして立ち回り、太刀「鬼神大王」で直接小型へと切り込んでいた。
やや後方に位置していた鵤も小型……特に、大型狙いの仲間を襲うオオカミを狙う。女性ハンター2人も、小物の相手に専念していたようである。
鵤は自身の頭上に光の三角形を生成し、そこから光線を発射していく。それは見事に2体のオオカミの体を貫いた。片方は仲間が狙っていた事もあり、その一撃で地面に転がったようだ。
とはいえ、鵤はそれに気を良くした様子はない。彼は常に状況把握に努め、どの大型オオカミがリーダーかと見定めようとする。彼はそいつが遠吠えによって指示を出す可能性が高いと踏んだのだ。
そうして、小型を抑えるメンバーの傍らで、他のメンバーは全力で大型を叩く。
(少し闘牛士など思い出すな)
前線では、テノールが思いっきり暴れていた。相手が素早いのであれば、止めればいい。単純なことだ。
体力のある今のうちと、テノールは多少無茶な立ち回りをしつつも、飛び掛ってきたオオカミの爪をさらりと躱し、力の限りその大きな体躯を投げ飛ばす。
敵の動きを注視していたリューリ。相手は自身よりも圧倒的に身の丈が大きな敵だ。それが喰らい付いてくるのを槍で抑えつつも、リューリは同行させたダックスフントを通し、精霊の力を借りて自身の力を高めていた。
そんな中、リューリはテノールが投げ飛ばしたオオカミが視界に入り、直接鉄拳「紫微星」で幾度も殴りかかる。かなりの数の連撃を浴びたはずだが、黒いオオカミは地面に着地し、ハンター達を威嚇してきていた。
アルスレーテは身を投げ出すオオカミの体当たりを避け、くるくる舞い踊りながら反撃を仕掛ける。直接大型のオオカミに触れた彼女は、体内のマテリアルを一気に送り込む。それは強烈な打撃となり、オオカミの内臓までも痛めつけた。
「どうかしら?」
アルスレーテは蒼い瞳を向け、敵に問いかける。
口を動かそうとしたオオカミだが、小夜がそれを許さない。
「お前の首で、故郷にササニシキ飾ってやる!」
切り込む小夜は、水平に構えた斬魔刀「祢々切丸」の刃で敵の口を貫く。そして、抜いた刃でオオカミの首を切り落とした。
1体を始末した小夜だったが、何かが腑に落ちず首を傾げる。
「……あれ、錦だっけ。まぁいいや」
そもそも記憶を失っている彼女には、故郷がどこかも分からない。
ただ、そんなことよりと、小夜は腹の音を鳴らす。戦いの最中であることを思い出し、彼女は再びオオカミの首を落とすべく、敵に向き直るのだった。
敵の牙や爪、そして身を投げ出して繰り出す体当たりは、ハンター達を苛む。
対策はすれど、敵の攻撃全てを防ぎきることはできない。ルーネが時に解毒や解麻痺の為にと傷つく仲間を光で覆い、回復に当たっていたようだ。
ただ、基本的には攻めのチーム。攻撃の手を止めることなく、ハンター達はオオカミの殲滅を目指す。
テノールは出来るだけ同じ個体に、かつ多くの個体へと考えながら構え、そのタイミングを見計らう。
敵に喰らいつかれ体に痺れを覚えながらも、テノールはそいつを陰にしつつ、マテリアルを放出する。伸びる気功は、大型2体と小型1体を巻き込んでいた。
その小型を狙う鵤。彼は前衛を抜けてきた小型目がけ、炎の力を持ったマテリアルを扇状に吹き付ける。それを喰らった小型は、爆破霧散するように姿を消していく。
エヴァンスも続いて小型の注意を引き続ける。群れに接近し、マテリアルを溜めたグレートソードを振りぬき、衝撃波を発生させていたが。敵はそれを素早く避け、後ろのルーネ目がけて大きな口を開いてかぶりつこうとする。
「もぅ、邪魔しないでくださいっ」
回避しようと身構えるルーネだが、相手が少し早く、腕を食いつかれてしまう。メイスを叩きつけて応戦する彼女。そこで、エヴァンスが踏み込みながらグレートソードを突き出し、そいつを仕留めた。
「ありがとうございます……」
一息ついたルーネはエヴァンスに礼を述べ、周囲を見回す。
「皆さま、大丈夫でしょうか」
気づけば、オオカミの数は減ってきてはいたが、その分仲間の傷も深くなってきていた。ルーネは精霊に祈りを捧げ、マテリアルの力で仲間達を癒していく。その癒しは十分に仲間達を支えることが出来ていたようだ。
大型を相手にしていたアルスレーテ。一時、エヴァンス達が危機にさらされていたのを見て、助太刀にと考えていたようだったが、彼は難なく小型を処理していたようだ。
(もし、あなたに何かあると、妹が悲しむのよ)
ぶっちゃけ自身にはどうでもいいと切り捨てながらも、アルスレーテはエヴァンスをある程度は意識していたようだが。己を主張してくるように、大型のオオカミが鋭い爪で引き裂こうとしてくる。
それに皮膚を裂かれ、毒に侵されたことを実感しつつ、アルスレーテは鉄扇を叩きつけ、そこからマテリアルを送りこむ。そいつは内部破裂を起こすように消えていった。
そこで、危機を察した大型のオオカミ1体が大声を上げる。
「うっさいわ! 黙ってろ!」
小夜はそれに気づいたが、一足遅かったようだ。
「ちっ、あいつか……?」
鵤はあまり狙いをつけていなかったオオカミが声を上げたのに、驚く。この群れのリーダーはあいつなのかと。
そんな考えを待たずして、小型のオオカミが3体、この場へとやってくる。
そいつらにすぐ狙いを定め、鵤は炎のエネルギーを放射していく。
「狼のお前らは、群れるのが本脳だろう!」
小夜は大型と増援を合わせ、素早く動きながらも纏めて切り刻む。
そうして、体勢を崩したオオカミがいたのを、リューリは見逃さない。
「悪い狼は1匹も逃がさないからね!」
やや距離もあった為、彼女は大身槍「白鵠」で切り込み、連続突きを繰り出していく。全身からどす黒い血を流していたオオカミは力尽き、その場から消えてなくなっていった。
だが、そこで2体の大型が、小型を残してこの場からの離脱を図り始めた。
それでも、うち1体の傷はかなり深い。大地を強く踏みしめてそれを追ったテノール。素早く敵を後ろから全身のマテリアルを高め、一気に撃ち放つのと同時に殴りつけようとする。殴打を浴びせた上、放たれたマテリアルによって敵は体の半分が吹き飛び、つられるように残り半分も消え飛んでしまう。
逃げる大型のオオカミ。そいつを狙い、ルーネが追いかけ始め、鵤もデルタレイを飛ばして敵の脚部を狙う。
2人からは逃れたオオカミだったが、迫り来る源一郎が切り払う刃から逃れられなかった。このタイミングを最初から見計らっていた源一郎。大型の逃走を許さない。
「今度は逃がさないぞ。今日は全力で追っかけてやる!」
前回、悔しくも敵を逃した小夜は、今回は絶対にこの場で叩ききると、全力で追いかけていた。そして、間合いに入ったことを確認し、水平に構えた刀で敵を後ろから貫く。
吠える間すら与えることなく。オオカミは霧散して消え失せてしまったのだった。
●楽しく雑談しながら
その後、残った小型オオカミを殲滅したハンター達は、オオカミ討伐完了の報告の為にリンダールの森手前の集落まで戻る。報告を受けた女性巡礼者達は森を通ることが出来ると喜んでいた。
ただ、集落に戻った頃には日も暮れてきていた為、女性ハンター、巡礼者を含め、こちらのハンターチームも今夜はここで一夜を過ごすことにする。
「さって、お楽しみねぇ?」
鵤は周囲を見回していると、すでに、エヴァンスが巡礼者達と一緒に、酒を飲んでいた。
「依頼後の美女との一杯、俺にとっちゃそれだけでも十分な報酬さ」
問題なければ、この後一晩……という話をエヴァンスは巡礼者へと持ちかけていたのだが。女性ハンター2人が白い目を彼へと向ける。
(まさか、そんな心配要らないと思ってたけれど……)
そして、アルスレーテも下心を丸出しにするエヴァンスに目を光らせていた。
「あー、もう……。狼なんて倒したからぐねぐねしてる……」
そこで、小夜がきょろきょろ見回す。この場にいつも可愛がっている少女がいない為、女性ハンターに狙いを定めていた。
「むぅ。ちょい、ハンターさんもふらせてよー。もふもふ」
同姓の小夜は堂々と女性ハンターの体をもふり始める。ある程度満足した彼女はすぐに、すやぁと眠りに付く。
そんな様子に、エヴァンスが渋い顔を、鵤がにやにや笑っていたようだ。
巡礼者達とその後、リューリが楽しく語っていた。オオカミを倒しはしたものの、雑魔の出現に怯える巡礼者がいたようで。
「みんな強いし、狼には負けないよ! 大丈夫!」
リューリが巡礼者達を励ますと、その女性は表情をほころばせていたようだ。
「皆様、どのような体験をされたのでしょう」
ルーネがそこで、巡礼者達にこれまでの体験談を尋ねる。
人によっては貴族の家柄で、なかなか家から出ることができない。親の言いつけがしつこく、こうやって一度は何者にも拘束されない旅がしたかったと語る。彼女達にもハンターとは違った苦労があるのだろう。
そんな女性達の語る話は、転移してさほど経っていない源一郎としては、現地の人の話を聞くことができる貴重な機会と言えた。
源一郎は依頼人自身に興味があるわけではないのだが、彼女達の話は別だ。
巡礼について、自由都市同盟について、そして、王国について。基礎的な情報であっても、今の彼には興味深い話であったのだ。
そういえばと、テノールが女性達に問う。
「そういえば、歪虚による被害の噂はないかな」
全くないわけではなかったが、それはあくまで噂話の域を超えず。ハンターズソサエティで得られる情報に比べると信憑性の薄いモノでしかなかったようだ。
逆に、彼女達からは、ハンターとしての生活について問いが返ってくる。
「男でも女でも、災禍にあって無力なのは同じだ。自分で決めて自分で結末を引き受けられる」
それでも、楽しく旅を行うことも出来る。自由には、結果に対する責任も付いて回るのだ。
そんなハンターの生活に感嘆しつつも、私達には難しそうだと女性巡礼者達は苦笑いしていたようだ。
楽しい一時は過ぎていく。思う存分語り合った一行は、日付が変わる頃に会をお開きにし、就寝したのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/19 14:32:38 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/07/20 18:33:48 |