アークエルス的考古学者の考古学的な依頼?

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/13 12:00
完成日
2014/09/20 22:12

みんなの思い出

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オープニング

 古都アークエルス── それはグラズヘイム王国の中北東部に位置する、王国の学術都市である。
 法術、魔術、霊呪、機導術といった様々な魔法的な研究から、歴史学や考古学、民俗学といった学問的なものまで、様々な分野の学術研究を目的としている町で、王国の王立図書館、通称『グリフヴァルト』(文字の森)の所在もこの町の中にある。かつて王国暦229年、ネグノーシス戦争と呼ばれた800年近く前の古き戦いを終わらせたエルス条約が結ばれたこともある歴史のある都市でもあるが、今回の件とは関係ないので省く。
 とりあえず、今回の依頼において諸君にしっておいて欲しいことは…… 私が、この学術都市に属する歴史学者の一人であるということ。そして、諸君には、私がフィールドワークを行うに当たって、脅威となる障害を排除していただきたい……ということだ。

「というわけで、諸君! 私の名はサー・ロック・ド・サクソン。アークエルスの考古学者だ!」
「……誰に言っているんですか、教授? ここには教授と私の二人しかいませんが」

 王国某所。森の中を貫き、山へと続くとある小さな道の上で──
 学術員らしき服の上に旅の装束を纏った若い男が、己の三歩前を活き活きと歩く老人に向かって、なんかかわいそうなものを見る様な表情でツッコミを入れた。
 その老人──若者に教授と呼ばれた、サー・ロック・ド・サクソンを名乗った男はそのツッコミに言葉を止め…… 上から目線のドヤ顔で若者を振り返る。その表情に若者は軽くイラッとしたが、文句を言うとまた面倒臭くて不毛なことになるので我慢することにした。大きく深呼吸をする間、5秒ほどの沈黙の後、ドヤ顔でジッと待つ教授に向かって声を掛ける。
「……で、教授。先程の、誰かに向かって語りかけるような独り言は、その教授が手の中に持った『杖』が理由ですか?」
「おお、説明台詞をありがとう、我が助手、トマソン君。この短杖は、わしがリアルブルーのあいてむに着想を得て作り上げた魔法道具でな。声や物音を音声として記録できるのだ。依頼に際してはこの音声をハンターズソサエティに提出しようと思っての。だって、書面で提出するのは面倒だし」
「ああ、なるほど。確かに、リアルブルーから来た人たちの中には、そんな機能の機械を持つ人たちがいましたね」
「それだけではないぞ? この『言の葉の杖』にはの、リアルブルーの連中のれこーだーには及びも付かない機能を備えてある」
「へぇ、どんな?」
「なんと、吹き込む音声の全てにエコーを掛けてくれるのだ。……全自動で」
「……なんの役にも立たない、むしろ邪魔な機能ですね。ていうか、完全に不具合ですよね、それ」
 そもそも仮にも教授たる人が書面をめんどいとか言わないでくださいよ── トマソンと呼ばれた若者は、半眼で見返しながら呆れたように嘆息した。……ていうか、ハンターへの依頼だったらパルムに頼んで映像情報で出せばいいのに。せっかく発明した魔法道具(と書いてガラクタと読む)だから使いたくて仕方がないのだろうが……
 そんな助手の内心を知ってか知らずか、ロック・サクソン教授は再び『録音機』に依頼内容を再び吹き込みを始める。
「……ハンターでも知らぬ者も多いと思うが、この大陸には数多くの遺跡が存在する。この王国内に存在する遺跡の種類は大まかに分けて二つ。数百~千年前の古グラズヘイム王国の遺跡と、先史以前、古代魔法文明に関する遺跡だ。既に殆どの遺跡は先人の手により発掘・調査がなされているが、中には、未発掘のもの、新たな調査箇所が発見されるもの、危険すぎて調査が進んでいないものなどがある。特に古代魔法文明の遺跡は存在自体が稀少であり、調査にリスクが伴うものの得られるリターンもまた莫大なものとなる。王国北東部にある『古の塔』などはその代表例のような遺跡だが……」
 そこから学術的、専門的な話を意気揚々と語り始める教授。トマソンはそれを聞き流しながら、依頼を提出する際にはこの部分は編集しておこう、と記憶にメモをする。
「さて、話を本題に戻そう。昨日、我がアークエルスのサー・ポロット・ド・フランク教授がエレ遺跡において発見した遺構も、これらの例の一つとなる可能性を秘めている。エレ遺跡は既に発掘・調査を終えた遺跡であるが、件のポロットは偶然に立ち寄った遺跡近郊の山中において、新たな遺構を発見したのだ。これは領主の館か城跡と見られており……」
「ちょっと待った」
 教授の説明の中に聞き捨てならない単語を耳にし、助手は慌てて語りを止めた。
「え? なんです、教授? 『昨日』ですって? いくらなんでも情報が早過ぎやしませんか!?」
「うむ。こんなこともあろうかと、ポロットの助手のスティングをあらかじめ買収しておいたのだ。連中、遺跡に立ち入ったものの、生息していた雑魔に襲われ、這う這うの体で逃げ帰ったらしい。今は近場の村から町へと退き、ハンターを雇うつもりのようだ。……そこで我々はその間に件の遺構を占有し、調査権を独占してしまおうというのだよ、トマソン君。もし、遺構が古代魔法文明の遺跡であった場合、研究者としての実績において大きく水を開けられてしまうからね!」
「うわー、さすが教授、やることがえげつない。自分の出世と知識欲の為なら手段を選ばぬ下衆っぷりですね」(←棒読み)
「ふふふ、そう褒めるな、トマソン君」
 己の実績を上げる為には、ライバルたる同僚を出し抜くことも厭わない── だって、しょうがないじゃない。魔術系と違って学問系はさらに予算が厳しいんですものー。
「というわけで! ハンターの諸君には、私の出世と研究費……もとい、純然たる学術的探求の為、遺跡調査に邪魔な雑魔の討伐をお願いしたいのだ。私は実際に見ていないので詳細は不明だが、中には動物型の雑魔が複数、存在しているらしい。元兵士のスティングが相手にならない位の戦闘力があるようだが、覚醒者の諸君であれば雑作も無い仕事であると信じている。急ぎの仕事ゆえ、現地にて集合。我々は既に先発しているが、転移門で移動すればちょうど向こうで合流できるだろう。場所の詳細についてだが……」
 依頼を出すのに必要な情報を録音し終えて…… 教授はふぅ、と息を吐くと、『録音機』(?)のスイッチをOFFにした。
「さて。ちゃんと録音されているか、確認してみることにしようかの。唸れ、我が魔法道具よ!」
 別のスイッチをONにし、杖を掲げ持つ教授。助手もまた興味のある視線でそれを見上げ…… 直後、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ぅわたぁあぁしいぃぃのおぉなぁはあぁあぁあぁぁぁぁ…… さぁ、ろっくうぅうぅぅぅぅ、ドォ、さあぁくそおぉおぉおぉんんんぅぅぅ……」
「……確かに唸ってはいますけど。思ってた以上にエコーですね」
「……うむ。やっぱり依頼は書面で提出することとしよう」

リプレイ本文

「遺跡の地形を生かし、狙撃班と地上班に分かれて攻略。狙撃犯は遺跡を見渡せるように周りの樹上に陣取り待機し、地上班が遺跡に突入して雑魔たちを誘き出す── まぁ、依頼主は気に入らない部分もある爺さんだけど、仕事は仕事。……なんとなく、ごく一部においては気も合いそうだけど」
 作戦の最終確認を終え── 木陰へ退避した教授と助手を遠目に見やって、滝川雅華(ka0416)は苦笑めいたものを浮かべながら前方の遺跡を振り返った。
 遺構の広さは、リアルブルーの単位で言えば50×50m(25×25マス)ほど。建物としての体は残しておらず、胸ほどの高さの壁の跡や草生す石畳などを残すのみだ。
 それらを見渡し、フワ ハヤテ(ka0004)はふぅん、と一言、呟いた。……遺跡の調査、ねぇ。それはそれは、是非色々と調べてみたいものだ。掘り出し物もあるかもしれない。障害はさっさと追い払うに限る。
「遺跡で戦闘とは。それは貴重な体験なのです……」
「雑魔もうろついているようなら盗賊団が跋扈しているようなこともないでしょう。ともあれ、雑魔の退治ならこちらが得手です」
 早速、気合(?)を見せるみけ(ka1433)とアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)に、教授が「なるべく遺跡は壊さないでね!」と慌てた声を掛ける。
 承知してます、とむーたれながら、魔導銃を首からぶら提げたまま後ろで髪を束ねるみけ。一方のアデリシアは、教授の横にいる助手が赤面しながら目を逸らすのを見て、きょとんとその小首を傾げた。動き易いように改造した=布の面積を減らした僧服がひじょーにけしからんのが理由なのだが、本人が気づいていない(or気にしていない)のがまた非常にけしからん。
「『可能な限り』、遺跡には傷をつけないよう配慮はする。ただし、自分や仲間に危険が及びそうになった場合は保証はできない」
 元傭兵のキャメリア(ka2992)は教授にぴしゃりと告げた。……やれやれ。傭兵時代は、依頼の内容が敵の殲滅であれば他のことはどうでもよかったが…… ハンターとなったからには、未知のものに対しても可能な限り敬意を払うべきなのかもしれない……

 ジュード・エアハート(ka0410)は遺跡の東側に回ると遺跡の中が見渡せる高い木を見定め、小銃『メルヴイルM38』を背中に回し、身に纏った『スカートの裾をたくし上げて』木を上り始めた。
(なぜ女装……?)
 と疑問に思いながら、雅華もまた南側の木に登る。フワはジュードの反対側、西側の木に登った。三方からの視界を確保する為だ。
「なるほど。あれが話しに聞いた雑魔かな……? 複数いるという話だけど、一匹しか見えないねえ」
 早速、熊っぽい何かを見つけたフワは、口笛と手信号とで味方にその位置を報せた。同時に、他の雑魔を視認していないか、枝上の仲間たちに確認する。
 返事は、いずれも『確認できず』というものだった。フワは、ふむ、と呟いた。3方から見て見つからないとは。もしや、今、他の雑魔は遺跡の中にはいない……?
 フワが思考を進める間に、地上班の5人は遺跡の敷地へ足を踏み入れた。と、侵入者の存在に気づいた『熊』の耳がピクリと動き…… やおら立ち上がるとその鋭い鉤爪を持つ手と両腕を広げながら、侵入者たちに威嚇の咆哮を浴びせかける。
 瞬間、銃声が鳴り響き── ジュードの放った小銃弾が『熊』の腹を貫いた。同時に、反対側の木の枝上から、フワが放った風の刃が唸りと共に背を切り裂く。雅華は『熊』の位置が射程に届かぬことを確認すると、木を下りて地上班へ同行することにした。ここからだと遺跡内の味方に対して十分な援護が出来ないと判断した為だ。目的地は遺跡内の中庭跡と思しき地面に生えた一本の木──そこからなら十分な援護が行える。
「君のハートを狙い撃ち、ってね」
 枝上で射撃姿勢を取り、照準を覗くジュードの視界の先で、『熊』は壁の向こう側へと倒れ込んだ。ジュードは向かいのフワに『熊』が見えるか確認したが、壁の間に入り込んだのかフワの方からも確認できない。
 地上班に連絡を取ろうとした彼等は、だが、直後、足元の地面を高速で駆け抜ける何かにハッとした。周囲の森に潜んでいたのか──『猪』型の雑魔が6体、『熊』の叫びに呼応して、四方から地上班に突っ込んでいったのだ。
 警告の叫びを聞き、元はエントランスだったと思しき場所で、地上班の皆は警戒態勢を取った。「本命はこっちか……!?」と得物を構えながら腰を落とすアデリシア。開けた場所だが、周囲に点在する壁の残骸で視界は思いのほか悪い。
「森のくまさんと森の猪さんが相手か。ふ、森の埴輪さんはそんなものにはまけないんだぞ、と」
 アルト・ハーニー(ka0113)は懐から埴輪を取り出すと、両手で恭しく壁上へと安置した。以前、戦闘中に割れてしまったことがある為、安全地帯へと『退避』させたのだ。
 何気なくそれを視界に捉えたジョン・フラム(ka0786)は思わず二度見した。
(あれは先史時代のテラコッタ!? リアルブルーの遺物がなぜここにっ!?)
 その衝撃にぴしゃんしゃあー、と背景に雷を落としたジョンは、そのまま5秒ほど固まって…… 「あ、違うか」と我に返った。よくよく見ればご先祖様が残した資料とは形状が異なるし、壁の上に乗っけてたのもそういえばアルトだったし。
「来た!」
 そんなことをしている内に、まるでコーナーを走る陸上選手の如き勢いで、猪が瓦礫を回り込んで来た。タイミングは4方ほぼ同時。それぞれに目標を定めた敵が、突撃の最終加速に入る。
「うわ、なにこいつら!」
 地上班に合流すべく、エントランスに入った雅華の足元を『猪』が駆け抜け、驚いた雅華が慌てて壁上へと避難する。
 そんな雅華に向かって、まるで誘導弾の如く跳躍する猪を、間髪、その間に割り込んだキャメリアがその一撃を受け凌ぐ。クリティカルなその一撃は、キャメリアの胴部を捉えた。激しい擦過音と共に牙が甲殻の鎧を滑り、受け凌ぐ。
 シュタタタタッと地を駆けながらアルトに狙いを定めた1体は、微妙に進路を揺らしながらアルトへ一気に跳躍し。身体を横へとずらしたアルトの腕を、猪の牙が掠め飛ぶ。
 アデリシアは胸部のロザリオを握ると、自身に向かって突進して来る『猪』の、その前方の地面に向けて『シャドウブリット』を投射した。地面に炸裂する影の弾丸── 敵は構わずそれを飛び越える。
「文字通り、猪突猛進といったところか」
 アデリシアは呟くと、直前で突進をかわして背後の壁に激突させようとした。だが、胴部に直撃を受け、その背を壁に強かに打ちつけた。衝撃に咳き込みながら逆に身体を押し出し、零れ落ちた『猪』に対して反撃の槌を振るう。背を殴られ、地に落ちた『猪』が素早く地を掻き駆けてアデリシアから距離を取る。
「さすがですね、アデリシアさん」
「え?」
「己の身を挺して遺跡を守られるとは。私もこういった荒事は好みではありませんが…… 下手に避けて貴重な考古学的資料に傷がつくのも困りますしね」
 そう笑顔で告げながら、己の胴部に突進して来た『猪』を、前面に構えたシールド『カエトラ』で受け弾くジョン。比較的軽装な彼ではあるが、盾だけは硬かった。正面から受けられさえすれば、どうにか『猪』の突進も受け切れそうだ。
「熊の相手はとりあえず狙撃手に任せるかね。っていうか、こっちは猪で手一杯だ」
 再度、突進して来た猪を横に跳び避けながら、アルトは地上班の皆に言った。一匹避けても右から左から突進して来る『猪』たち。反撃しようとした瞬間、別のに背中を突かれる等、厄介なことこの上ない。
 アルトの言葉にみけは無言で頷くと、マントを背へ払い流しながら魔導銃を両手で構えた。遠く、横腹を見せ旋回中の1匹に狙いを定め、その胴に一撃を叩き込み。直後、横から突っ込んで来る『猪』へ銃口を振り── 構わず突っ込んで来るその『猪』の跳躍を仰け反りかわしつつ、懐から引き抜いた自動拳銃でもって駆け抜けた『猪』の背へ追撃の弾を送る……

 まずは熊からね、と中庭に向けひょいひょいと壁上を跳び歩いていた雅華は、飛び越えた通路の陰にわだかまる大きな影に気がついた。直後、両手を広げて立ち上がる『熊』に「うひゃあ!?」と素っ頓狂な叫びを上げて。物凄い勢いで壁上を走って距離を取り、デリンジャーを振り構えて『機導砲』を叩き込む。
 直後、再び『熊』が姿を現すのをじっと待っていたジュードが発砲。気づいた熊がその銃弾を鉤爪で叩き落とし。一方、『熊』が射程外に移動していた事に気づいたフワは、一瞬の逡巡の後、木から飛び降り、遺跡へ走る。
 再び瓦礫の陰へ姿を隠す『熊』。その間に雅華はどうにか中庭の木の上に辿り着いた。気がつけば、脚に鈍い痛み。最初に遭遇した時だろうか。鉤爪で斬りつけられていた。

「さて、熊さんはどこに出ますかねー、っと」
 ジュードは、その雅華を『熊』が狙うだろうと踏んで、いつでも射撃ができるよう、その『中庭』の周囲に気を配った。雅華は良い場所に逃げ込んだ。あそこなら敵は近づく前に必ず姿を晒さなければならない。
 だが、いつまで待っても『熊』は姿を現さず…… ジュードはハッと嫌な予感に捉われた。射撃姿勢を解き、枝の上へと立ち上がる。
 次の瞬間、遺跡の陰から飛び出してきた『熊』がジュードの立つ枝へと飛びかかってきた。粉砕される枝。慌てて隣りの枝へと飛び移ってぶら下がったジュードへ、昏く『目』を『光らせた』熊型の歪虚が近づき……
 直後に振るわれた鉤爪を、だが、その眼前に飛び込んできたキャメリアが身体を張って食い止めた。
「……ッ! やはり一撃が重いな。人間とは比較にならない」
 呟き、振るわれた鉤爪を、身体ごと押し返して払い除けるキャメリア。彼女は猪と戦いながらも、常に熊が狙撃手を狙う可能性を危惧していたのだ。
「しばらくあたしの相手をしてもらおうか。なに、退屈はさせやしないよ!」
 キャメリアは盾を掲げて『守りの構え』を取ると、その小盾の陰から突き出すように細剣を繰り出した。足を止めず、攻撃してきた腕を突き返すようにしながら、円を描く様に位置を変える。
 埒が明かないと思ったのか。『熊』はその巨体を活かして、体当たりで盾ごとキャメリアを押し潰そうと試みた。
 だが、直後、背後から放たれた水球が膝の裏に叩きつけられ、『熊』はがくりと膝をつく。見上げれば、壁の上に立つフワの姿。その手の平には『ウォーターシュート』──魔力で集めた高圧縮の水の球が浮いている。
「おおっと、動かないでくれるかい? ……間に合ったようで何よりだ」
 立ち上がろうとする熊の軸足へ放たれる二発目の水の球。味方が来るまでひたすら耐えてきたキャメリアが反撃に転じた。それまでとは打って変わって大胆に敵の間合いに踏み込むと、マテリアルの力を込めた一撃を突き入れる。
 反撃を試みようとした敵は、だが、態勢を整え直したジュードの狙撃でその頭部を撃ち抜かれた。
 遂に地に倒れ伏す『熊』の死骸。遺跡最大の脅威は最初に盤上から退場した。

 ジョンは数度の攻撃を凌ぎながら『地を駆けるもの』、『野生の瞳』をその身に降ろすと、一人、班から離れて『猪』を遺跡の外へ誘導しようと試みた。
 着いてきたのは1体。ジョンは山林に入ったところで足を止めると、追いかけてくる『猪』を振り返った。目標を定め、加速する敵── 内心、汗を滲ませながらその突進を見極めたジョンは、タイミングを見計らって仕掛けていたロープを引っ張った。
 ピンッ、と木々の間に張られるロープ。跳躍した『猪』の顔面にそれが喰いこみ──もんどりうって地に倒れる。
 ジョンはすかさず走り込むと、至近距離から頭部にスピアガンを撃ち放った。立て続けに銛を射込まれ、ピクピクと震えて沈黙する『猪』。ジョンはホッと息を吐いた。

「3匹の連携だと!? これはジェッ○ストリー○アタックと言わざるを得ない。そして、そんなものを見せられたら、飛んでかわして踏み台にしたくなるじゃないか!」
 2匹のうりぼう──小型の『猪』を引き連れて突進して来る『大猪』に向かって正対するアルト。突進して来る先頭の猪へこちらから接近して背へ飛び乗り。2体目のウリ坊にハンマーを振り落として叩き潰している間に…… 3体目に顔面に直撃され、クルリと一回転して地に倒れる。
 なぜか嬉しそうなアルトを横目に、突撃の再興にかかる親猪へ牽制の影を放つアデリシア。倒れたアルトに向けて別の2体が別方向から突撃を敢行し…… その内の1体を、横合い、斜め上方から放たれたエネルギーの束が背から腹へと貫通した。もんどりうって転がり、壁に激突して動かなくなる『猪』。木の上の雅華が放った支援攻撃の戦果である。突撃を継続するもう1匹に対しては、みけが横合いから銃把で殴った。バランスを崩して転がる敵へありったけの小銃弾を、そして、拳銃弾を全弾、叩き込む。
 周囲の敵が全て沈黙したことを確認して、アデリシアは正面の敵へと向き直り、集中した。突進して来る『親猪』と『うりぼう』── 飛び起きたアルトと共に戦槌を横に寝かせ……敵が突進して来るタイミングで横へとかわし、その顔面へカウンター気味に槌頭を叩きつける。
 頭蓋骨を粉砕された1体と1匹は、殴られた拍子にクルリと一回転をして。地に落ち、そのまま二度と動かなかった。


「僕も遺跡調査、お手伝いしたーい!」
 全ての雑魔を駆逐し終えた後── 駆けつけた教授に向かって、ジュードはそう甘えて見せた。
 その隣りで無言でコクコク頷くみけ。それを遠目で見やりながら、(だから女装だったんだ)と雅華が納得する。
 返事を渋る教授に、フワが教授の魔法道具に興味を示し。食いついた教授を見て雅華とジョンが持ち上げたりおだてたりして調査に同行する許可を得る。顔を見合わせるキャメリアとアデリシア。遺跡に興味はないが、瓦礫や発掘品の運搬くらいは手伝うか。
「ちょっと待ったーっ!」
 と、そこへ現れたのは、教授と同じ臭いのする紳士然とした男だった。同じく助手っぽい男とハンターたちを引き連れている。
「きっ、貴様はポロット! 早すぎる、なぜここにっ!?」
「ふっ、こんな事もあろうかと、貴様の助手のトマソン君を買収していたのだよ。貴様に遺跡は独占させん。さあ、先生方、やっちゃってください!」

 ……そんなこんなで色々あって(例えば、壁の上の埴輪を見た教授たちが異界の神と勘違いしたとかしないとか)。結局、遺跡は古代魔法文明のものではなく、古王国時代のものと発表された。
「雑魔が湧くなら何かしらの実験とか儀式利用された可能性もあると思うんだけど……」
 後日、顛末を報せる新聞を見て、ジュードは小さく呟いた。

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参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • ヌリエのセンセ―
    アルト・ハーニー(ka0113
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 哀しみのまな板
    滝川雅華(ka0416
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士

  • ジョン・フラム(ka0786
    人間(紅)|28才|男性|霊闘士

  • みけ(ka1433
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 静かに燃える誓い
    キャメリア(ka2992
    エルフ|20才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 考古学的依頼のハンター的な解決
ジョン・フラム(ka0786
人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/09/12 00:08:47
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/10 00:47:48