ゲスト
(ka0000)
巡礼者一家と楽しい旅を
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/08/05 07:30
- 完成日
- 2016/08/09 22:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●意気込む父親も雑魔には……
王都イルダーナ東。
ここからリンダールの森にかけて、最近、黒いオオカミの目撃証言が増えている。
このオオカミ達は雑魔……歪虚に成り果てている。それによって、どうも注意深くなったらしく、戦う力のなさそうな巡礼者を好んで襲うのだという。
それもあり、ハンターへとオオカミ討伐の依頼もちらほらと出ている。あの手この手でオオカミを討伐し、数を減らしているというのが現状だ。
そんな中、とあるハンターズソサエティにおいて、新たな依頼があった。
リンダールの森を抜けた集落にて、王都イルダーナを目指す巡礼者一家の姿があった。父親が多少、猟撃士として戦いの心得があった為、家族を守ると意気込んで王都を目指している。
「オオカミ……? 多少群れていても、この俺の弓で……」
彼は弓を携えてそう強がって見せるが、その構えを見るに、さほど様になっていないことが熟練のハンターからは一目瞭然だった。
しかも、相手はただのオオカミではなく雑魔と成り果てており、体躯が1回りも2回りも大きくなっているという。これには、父親も身を震わせてしまった。
(俺1人じゃさすがにな……)
とはいえ、守ると家族に告げた手前、このまま引き返すわけにも行かず。
「ここからなら……王都まで2泊3日ってところか」
妻が巡礼に行きたいというのでこうしてやってきてはいるが、父親自身としては、商いの為に向かう目的が大きい。商品が売れればハンターを雇っても利益は出そうなので、何とかなりそうだが。雑魔さえいなければ出ることのなかった費用。父親としては非常に痛い。
「雑魔じゃ、倒しても肉さえ残らんからな……」
とはいえ、金銭的な利益と大切な家族とでは、天秤にかけるまでもない。
彼はそのまま、ハンターズソサエティのカウンターで、ハンターを雇う手続きを取ったのだった。
王都イルダーナ東。
ここからリンダールの森にかけて、最近、黒いオオカミの目撃証言が増えている。
このオオカミ達は雑魔……歪虚に成り果てている。それによって、どうも注意深くなったらしく、戦う力のなさそうな巡礼者を好んで襲うのだという。
それもあり、ハンターへとオオカミ討伐の依頼もちらほらと出ている。あの手この手でオオカミを討伐し、数を減らしているというのが現状だ。
そんな中、とあるハンターズソサエティにおいて、新たな依頼があった。
リンダールの森を抜けた集落にて、王都イルダーナを目指す巡礼者一家の姿があった。父親が多少、猟撃士として戦いの心得があった為、家族を守ると意気込んで王都を目指している。
「オオカミ……? 多少群れていても、この俺の弓で……」
彼は弓を携えてそう強がって見せるが、その構えを見るに、さほど様になっていないことが熟練のハンターからは一目瞭然だった。
しかも、相手はただのオオカミではなく雑魔と成り果てており、体躯が1回りも2回りも大きくなっているという。これには、父親も身を震わせてしまった。
(俺1人じゃさすがにな……)
とはいえ、守ると家族に告げた手前、このまま引き返すわけにも行かず。
「ここからなら……王都まで2泊3日ってところか」
妻が巡礼に行きたいというのでこうしてやってきてはいるが、父親自身としては、商いの為に向かう目的が大きい。商品が売れればハンターを雇っても利益は出そうなので、何とかなりそうだが。雑魔さえいなければ出ることのなかった費用。父親としては非常に痛い。
「雑魔じゃ、倒しても肉さえ残らんからな……」
とはいえ、金銭的な利益と大切な家族とでは、天秤にかけるまでもない。
彼はそのまま、ハンターズソサエティのカウンターで、ハンターを雇う手続きを取ったのだった。
リプレイ本文
●依頼者と挨拶
リンダールの森西の集落。
集まったハンター達は依頼者ニヴェール一家と合流し、王都イルダーナを目指す。
「巡礼の旅。良いですね!」
「王国巡礼の旅は、そう気軽にできるものではないからねぇ」
意気揚々と叫ぶ鳳城 錬介(ka6053)に、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)が同意する。
生まれた場所から出ない人も珍しくない、このクリムゾンウェストの世界。普段と違う景色や、人や物を見る事は得難い経験になると錬介は語る。
「ハンターになって初めての旅っす! 旅をするのは久しぶりなんで、楽しみっすね、いぬ!」
狛(ka2456)は嬉しそうにはしゃぎ、同行する柴犬のいぬに呼びかけると、いぬは「ワン!」と大きく吠えて応えた。
シェパード、パドを連れたJ・D(ka3351)はその狛から地図を見せてもらい、旅のプランを立てる。危険な道を可能な限り避け、道中立ち寄る川や湖を途中の野営地に利用できる進路を設定していくJに、狛は嬉しそうに寄り添った。
「そういえば、狩りが出来る子がいるって聞いたんすけど、仲良くなれるっすかねー?」
狛が言っているのは、7歳になる依頼者の息子、リュカのことだろう。
すでに、依頼者オラースの子供達とハンター達は交流を行っている。ディーナ・フェルミ(ka5843)は1歳の末っ子のリュシーのほっぺをぷにぷにと堪能していた。
「さあ、可愛い巡礼者さんたち。ボクたちが安心安全で快適な旅路を約束させてもらうよ!」
イルムは子供達、テレーズ、リュカへと胸を張り、その両親、オラース、オレリー夫妻に挨拶する。
「少々危険な事もありますが、そこは全力で守りますから」
「巡礼の旅が無事に成就するように、私にもぜひお力添えをさせてくださいね」
錬介はニヴェール一家、特に子供達にとって楽しい旅となるようにと祈る。レオナ(ka6158)も礼儀正しく挨拶してから告げた。
「祈りの心は優しい風となって、知らず民の心の追い風となるものですから」
「旅は道連れって云いますし、まったりいきましょう」
「家族みんなに楽しい巡礼旅を」
ルーネ・ルナ(ka6244)、ディーナの挨拶に、依頼者一家はそれぞれハンター達へと頭を下げ、改めて王都イルダーナまでの護衛を願うのだった。
●危険はあれどまったりと
集落を発つ前に、メンバー達は最後の準備を行う。
ハンター達用の食料として、ルーネは干し肉、チーズ、水を用意してはいる。手持ちに食料のなかったイルム、ラジェンドラ(ka6353)はここに来る途中で必要物資や飲料水などを買い足していたが、一行は基本的に、狩りなど現地で食料調達を考えていた。
イルムは購入したパン、野菜、調味料を乗用馬のシュテルンに乗せる。
(あまり積み過ぎると、彼も疲れてしまうから)
シュテルンを気遣うイルムは、飲料水を依頼者オラースの馬車に積むよう頼んでいた。
そうして、集落を出た一行。ここから目的地となる王都イルダーナまでは、2泊3日の旅路だ。
ただ、基本は馬で歩を進める旅路。馬を連れてきていたメンバーは、各自の馬に騎乗していた。
「旅か。こうやって街道を歩きながらってのも、いいものだな」
「のんびりとした旅も、いいものですね」
ラジェンドラの呟きに、ルーネが応える。2人とも馬に乗ってはいたが、ラジェンドラは時に立ち止まり、乾いた枝をいくつか拾って荷物に入れていたようだ。
「のんびりっていうのも、リアルブルーではなかなかできない贅沢だ」
「とはいえ、いつ、狼さんや、野盗が来るとも知れませんから」
ルーネは雑魔が現れる可能性を考え、気を抜かずにいる。
また、馬車の御者としてオラースが座っているが、ルーネは時に交替するなどして交流を図っていたようだ。
Jも自らの馬に跨っていた。彼は歪虚や亜人の接近に備え、鋭敏視覚とパドの嗅覚を駆使して付近の警戒を行う。
その上でJは方向感覚を使い、さらに日の傾きなどによって進行方向を割り出す。時に、方位磁針を持つ狛と話し、目的地への針路を定期的に確認していた。
一方、馬車の中では。
「リゼリオでお店を営んでいると聞いたのですけれど」
メンバー達が妻と子供達を退屈させぬようにと気遣う。錬介は妻オレリーに話を振り、弓が得意という主人の話など、家族の話題を中心に会話を行っていた。
また、イルムがオレリー夫人に休憩を促す。道中、なかなか足を止めるのも難しいからと、オレリーは馬車の中で眠る時間をもらっていたようだ。
その間、ディーナが赤ん坊リュシーをあやす。
「旅の間に、お子さん3人のことも気を配るのは大変なの。オレリーさんが普段よりちょっとでも多く、自分の時間が持てたらうれしいの」
ディーナが童謡を歌うと、リュシーはすやすや寝息を立てる。その赤ん坊の背中をディーナはぽんぽんと撫で、トーンを落として子守唄を歌う。
「テレーズちゃんやリュカくんはもう大きくなっちゃったから覚えてないだろうけど、あなたたちのママも、あなたたちに同じことをしたの」
それを見ていた2人の子供に、ディーナはにっこりと笑った。
その2人の子供、お年頃の女の子テレーズと、好奇心旺盛なリュカには、レオナとイルムが相手をしていた。
レオナは2人が好きそうな歌を手拍子しながら歌う。道中にいるというオオカミの雑魔など忘れてしまうようにと。
「さあ、お手をどうぞ。お嬢様」
イルムが傅いて手を差し出す。お姫さまごっこが始まると、テレーズが気を良くしていたようだ。
ただ、それはそれで、リュカは退屈してしまう。そこで、レオナがわくわくするような冒険譚を語り聞かせる。
2人は交互に相手をして子供達を飽きさせない。狩りで体験したリュカの武勇伝をイルムが聞き、レオナはテレーズへと占いをしてみせる。
「理想の人はいる?」
占いは必ず当たるものではなかったが、テレーズは嬉しそうな顔で興味を持ってくれていたようだ。
●野営の一夜
日も暮れ、メンバーは野営を行うこととなる。
その日は、河原にキャンプを張った。狩りに行ったメンバーが大物の猪を捕まえて見せたこともあり、食べ物も比較的苦労することなく手に入れることが出来たようだ。
食事を取り終えた一行。夜も更け、ハンター達は見張りを2人1組で立ててローテーションで当たる。
早朝組のイルム、ディーナは早々に寝ることにする。
「子守唄代わりに、文学の知識や体験談から物語を聞かせてあげるよ」
イルムは子供達と一緒に寝ることにしていた。昼間に寝ていたオレリーがリュシーを寝かしつけていたこともあり、ディーナはリュシーを気にしながら就寝していたようである。
最初の見張り当番は、レオナと、夜は弱いと言うルーネで行う。
火の番を行う2人。疲れで皆寝静まってしまったが、ルーネは星を時々眺めつつ、たわいない話を行う。レオナもそれに相槌を打ち楽しい時間を過ごしていた。
しかし、リュシーが夜泣きを始めると、レオナがすぐにあやし、おむつ交換などにてきぱきと当たっていた。目を覚ましたオレリーも、安心して眠っていたようである。
その次は、ラジェンドラ、狛の組。
2人は焚き火を囲んでのんびりと会話をして過ごすのだが。狛は夜目でいぬと一緒にきょろきょろ。木の棒を持って地面にがりがりと落書き。そんな忙しないパートナーに、ラジェンドラは退屈しなかったようである。
その2人から、Jと錬介が見張りのバトンを受け取る。
「……ふふ、こういうの、良いですね。何だか懐かしい気がします」
記憶喪失の錬介は、仲間と共に旅していたのだろうかとなくなった記憶に想いを馳せる。
Jは幼い頃、父母と共に森の湖へとピクニックへ行った事を思い出す。
もはや、自分にしか知る者がいなくなった記憶。嗅覚で敵を検知していたパドの背を撫でつつ、Jはそれを胸の中にそっとしまうのである。
早朝になれば、寝ていたイルム、ディーナが起きる子供達の相手をしながら、見張りの時間を過ごしていた。
何事もなく過ぎ行く一夜。奇襲の可能性がある為に緊張感はあったが、それでも、比較的まったりとした時間をハンター達は過ごしていた。
●雑魔の来襲
2日目の日中。そいつらは現れた。
黒いオオカミが3体。街道を行く馬車に近づいてくる。
「あっ! また来ましたね」
馬で行くルーネは以前、このオオカミらと対したことがあったのだ。
雑魔を発見した彼女はすぐさま、仲間に伝達する。早期発見もあり、イルムは先手必勝と先に攻撃を仕掛けていく。
「みんな近くに集まるの!」
ディーナはリュシーを抱えたまま、馬車と一家を守ろうと不可視の境界を作り上げ、絶対に雑魔を近づけまいとしていた。
馬車から飛び出すハンター達。ルーネが後方から光の弾を飛ばし、その衝撃でオオカミの体へと衝撃を与える。
近づいてくるオオカミに対しては、覚醒して獣人化した狛がいぬと一緒に吠えて威嚇する。
「そっちが黒い狼なら、こっちは白い狼っすよ!! ……あ! 今、白い犬って思った奴、誰っすか!?」
仲間の前へと出た狛はいぬとシンクロし、突撃していく。
同じく前に立つ錬介。こちらは盾として行動しつつ、鎮魂歌を歌って攻め入る仲間の援護を行う。
「あくまで護衛優先だ」
ラジェンドラも馬車の傍で応戦し、光線を飛ばして雑魔の体を貫く。
大きく口を開いて襲い来る大きなオオカミども。Jはリボルバー銃の銃弾にマテリアルを込め、冷気を纏った射撃を浴びせかけていく。霜に包まれたオオカミは体を所々凍らせ、動きを阻害されていたようだ。
そこを、レオナが狙う。彼女は少しでも先手が取れるようにと立ち回りながら、火の精霊力を付与した符を飛ばし、オオカミの体を焼き焦がす。全身を炎に包んだオオカミは黒焦げになる前に蒸発するようにして消え失せる。
「狼同士、仲間っすけど!! 雑魔の仲間は持った覚えはないっす!! だから、やっつけるっすよ!!」
1体を抑えていた狛も、再びいぬと一緒に連携攻撃を仕掛けていく。特攻し、爪で薙ぎ払い、食らいついていくと、オオカミは表情を固まらせて姿をかき消してしまう。
仲間を倒された残り1体のオオカミは、不利を察して逃げ出していった。
「深追いは禁物ですね……」
レオナが逃げ行く敵を見て呟く。メンバー達も状況を確認した上で、旅を再開するのだった。
●憩いの一時
2日目の夜。
この日も、Jが予め目をつけていた湖畔でキャンプを張ることにする。
キャンプ設営も手馴れたもの。子供達もその手伝いを行ってくれた。
ラジェンドラは道中で拾った枝を薪にし、着火の指輪を使って火を起こす。今日も簡易竈も活用し、料理を行うようだ。
「旅で、お水は大切です」
ルーネがそう主張する。湖があるので採水はすぐにできたが、問題は食料だ。レオナは商店で食料の買い足しを考えていたが、この近辺には集落はなさそうである。
「何も獲れないと、炙ったチーズを乗せたパンと干し肉を戻したスープになるから、頑張ってほしい」
「折角だし、保存食じゃなくて暖かいもんが食べたいな」
錬介が狩りを行うメンバーにそう告げる。だが、昨日はJと狛があっさりと猪を捕まえている。ラジェンドラもそのサポートを考えていた。
「狩りっす!! 楽しい狩り~♪」
狛はここぞ本領発揮と、いぬとはしゃぐ。
今日は自分もとリュカが意気込みを見せる。それもあり、Jはオラースに許可を得て、リュカに拳銃の使い方を教授していた。
「自分、森でずっと狩りしてたんで、こういうのは得意なんすよー。……でも、逃しちゃう時もあるから、あんまし笑わないで欲しいっすよ……?」
湖の周囲を歩く狩人達。狛がそうリュカに告げていたのだが、獲物を見つければすぐに視線を鋭くしていた。兎を発見した狛がいぬと挟み撃ちして一気に追い詰める。
そこで、リュカが借りた拳銃を打ち込んで傷を負わせ、狛が見事に1羽を仕留めた。オラースが絶賛するのに、狛がリュカと一緒になってはしゃいでいた。
そこから少し離れた場所では、ルーネ、レオナが木の実の採取を行っていた。
「あ、これ、食べれますよね?」
ルーネは木の実を拾って同行するレオナに見せる。食材に出来そうな野草を採取していたレオナも、それにはにっこりと微笑む。
また、ルーネもちょっとした落とし穴を仕掛けていたが、見事に小動物を捕らえていたようだ。
一方、キャンプでは。
狩り、採取に向かった仲間を待つメンバーとニヴェール一家の女性陣。
「リュシーちゃんのほっぺぷにぷになの! おててもぷっくりもみじでかわいいの!」
ディーナは一緒に手を繋いで歩き、肩車や抱っこ。泣きそうになったら変な顔をしてリュシーをあやしてみせた。
この2日、ディーナはずっとリュシーに付きっ切りである。それは、オレリーが子供と一緒にいたいと主張するタイミングも出てしまうほど。それでも、オレリーはディーナに感謝していたようだ。
「狩りにいった皆は大丈夫かな」
錬介はオカリナを奏でてテレーズの相手をしつつ、狩りに出た仲間の心配をする。
だが、そんな彼の杞憂を払拭するように、狩りメンバーは大量に獲物を仕留めてきていた。
ラジェンドラは獲物を解体し、肉の状態に捌く。
さすがというべきか、一番獲物を仕留めたJもまた獲物の血抜きと解体を自ら行い、調理係へと渡す。
「お手軽なのは、ホイル焼きだね」
イルムが買い込んできた野菜や調味料、そして現地調達した肉を包み、焚き火に入れる。ソテーにした食材をパンに挟んだ一品を作っていた。
「あ、手伝います」
家事をと考えるオレリーを、レオナがアシストする。せめて今は自分の時間を作って欲しいと、レオナは特に気遣っていたのだ。オレリーはそれに感謝をしつつも、短時間で家事を済ませる。
そうして、並べられた料理。火を通した肉料理がメインだ。
「うまいな、新鮮なものをその場で調理しているんだしな」
ラジェンドラは、料理をしてくれたイルムは女性陣に感謝の意を表していた。
●旅の終わり
次の日の夕方頃、一行はイルダーナに到着する。3日一緒にいた一家とも、別れの時が訪れた。
「巡礼もかねて旅をして貰えたのがうれしいの」
ディーナが家族1人1人の名を呼び、そして。
「……みなさんに神のご加護がありますように、なの」
メンバーはにこやかに手を振り、彼らの行く末を祈りながら別れる。
ただ、レオナだけはもう少しだけ一家に同行しようと考えていたようだ。
「一緒に売り込みを行いましょう」
レオナはもう少しだけ、オラースを手助けしようと考える。それに、別れを惜しむ子供達が喜んでいたのだった。
リンダールの森西の集落。
集まったハンター達は依頼者ニヴェール一家と合流し、王都イルダーナを目指す。
「巡礼の旅。良いですね!」
「王国巡礼の旅は、そう気軽にできるものではないからねぇ」
意気揚々と叫ぶ鳳城 錬介(ka6053)に、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)が同意する。
生まれた場所から出ない人も珍しくない、このクリムゾンウェストの世界。普段と違う景色や、人や物を見る事は得難い経験になると錬介は語る。
「ハンターになって初めての旅っす! 旅をするのは久しぶりなんで、楽しみっすね、いぬ!」
狛(ka2456)は嬉しそうにはしゃぎ、同行する柴犬のいぬに呼びかけると、いぬは「ワン!」と大きく吠えて応えた。
シェパード、パドを連れたJ・D(ka3351)はその狛から地図を見せてもらい、旅のプランを立てる。危険な道を可能な限り避け、道中立ち寄る川や湖を途中の野営地に利用できる進路を設定していくJに、狛は嬉しそうに寄り添った。
「そういえば、狩りが出来る子がいるって聞いたんすけど、仲良くなれるっすかねー?」
狛が言っているのは、7歳になる依頼者の息子、リュカのことだろう。
すでに、依頼者オラースの子供達とハンター達は交流を行っている。ディーナ・フェルミ(ka5843)は1歳の末っ子のリュシーのほっぺをぷにぷにと堪能していた。
「さあ、可愛い巡礼者さんたち。ボクたちが安心安全で快適な旅路を約束させてもらうよ!」
イルムは子供達、テレーズ、リュカへと胸を張り、その両親、オラース、オレリー夫妻に挨拶する。
「少々危険な事もありますが、そこは全力で守りますから」
「巡礼の旅が無事に成就するように、私にもぜひお力添えをさせてくださいね」
錬介はニヴェール一家、特に子供達にとって楽しい旅となるようにと祈る。レオナ(ka6158)も礼儀正しく挨拶してから告げた。
「祈りの心は優しい風となって、知らず民の心の追い風となるものですから」
「旅は道連れって云いますし、まったりいきましょう」
「家族みんなに楽しい巡礼旅を」
ルーネ・ルナ(ka6244)、ディーナの挨拶に、依頼者一家はそれぞれハンター達へと頭を下げ、改めて王都イルダーナまでの護衛を願うのだった。
●危険はあれどまったりと
集落を発つ前に、メンバー達は最後の準備を行う。
ハンター達用の食料として、ルーネは干し肉、チーズ、水を用意してはいる。手持ちに食料のなかったイルム、ラジェンドラ(ka6353)はここに来る途中で必要物資や飲料水などを買い足していたが、一行は基本的に、狩りなど現地で食料調達を考えていた。
イルムは購入したパン、野菜、調味料を乗用馬のシュテルンに乗せる。
(あまり積み過ぎると、彼も疲れてしまうから)
シュテルンを気遣うイルムは、飲料水を依頼者オラースの馬車に積むよう頼んでいた。
そうして、集落を出た一行。ここから目的地となる王都イルダーナまでは、2泊3日の旅路だ。
ただ、基本は馬で歩を進める旅路。馬を連れてきていたメンバーは、各自の馬に騎乗していた。
「旅か。こうやって街道を歩きながらってのも、いいものだな」
「のんびりとした旅も、いいものですね」
ラジェンドラの呟きに、ルーネが応える。2人とも馬に乗ってはいたが、ラジェンドラは時に立ち止まり、乾いた枝をいくつか拾って荷物に入れていたようだ。
「のんびりっていうのも、リアルブルーではなかなかできない贅沢だ」
「とはいえ、いつ、狼さんや、野盗が来るとも知れませんから」
ルーネは雑魔が現れる可能性を考え、気を抜かずにいる。
また、馬車の御者としてオラースが座っているが、ルーネは時に交替するなどして交流を図っていたようだ。
Jも自らの馬に跨っていた。彼は歪虚や亜人の接近に備え、鋭敏視覚とパドの嗅覚を駆使して付近の警戒を行う。
その上でJは方向感覚を使い、さらに日の傾きなどによって進行方向を割り出す。時に、方位磁針を持つ狛と話し、目的地への針路を定期的に確認していた。
一方、馬車の中では。
「リゼリオでお店を営んでいると聞いたのですけれど」
メンバー達が妻と子供達を退屈させぬようにと気遣う。錬介は妻オレリーに話を振り、弓が得意という主人の話など、家族の話題を中心に会話を行っていた。
また、イルムがオレリー夫人に休憩を促す。道中、なかなか足を止めるのも難しいからと、オレリーは馬車の中で眠る時間をもらっていたようだ。
その間、ディーナが赤ん坊リュシーをあやす。
「旅の間に、お子さん3人のことも気を配るのは大変なの。オレリーさんが普段よりちょっとでも多く、自分の時間が持てたらうれしいの」
ディーナが童謡を歌うと、リュシーはすやすや寝息を立てる。その赤ん坊の背中をディーナはぽんぽんと撫で、トーンを落として子守唄を歌う。
「テレーズちゃんやリュカくんはもう大きくなっちゃったから覚えてないだろうけど、あなたたちのママも、あなたたちに同じことをしたの」
それを見ていた2人の子供に、ディーナはにっこりと笑った。
その2人の子供、お年頃の女の子テレーズと、好奇心旺盛なリュカには、レオナとイルムが相手をしていた。
レオナは2人が好きそうな歌を手拍子しながら歌う。道中にいるというオオカミの雑魔など忘れてしまうようにと。
「さあ、お手をどうぞ。お嬢様」
イルムが傅いて手を差し出す。お姫さまごっこが始まると、テレーズが気を良くしていたようだ。
ただ、それはそれで、リュカは退屈してしまう。そこで、レオナがわくわくするような冒険譚を語り聞かせる。
2人は交互に相手をして子供達を飽きさせない。狩りで体験したリュカの武勇伝をイルムが聞き、レオナはテレーズへと占いをしてみせる。
「理想の人はいる?」
占いは必ず当たるものではなかったが、テレーズは嬉しそうな顔で興味を持ってくれていたようだ。
●野営の一夜
日も暮れ、メンバーは野営を行うこととなる。
その日は、河原にキャンプを張った。狩りに行ったメンバーが大物の猪を捕まえて見せたこともあり、食べ物も比較的苦労することなく手に入れることが出来たようだ。
食事を取り終えた一行。夜も更け、ハンター達は見張りを2人1組で立ててローテーションで当たる。
早朝組のイルム、ディーナは早々に寝ることにする。
「子守唄代わりに、文学の知識や体験談から物語を聞かせてあげるよ」
イルムは子供達と一緒に寝ることにしていた。昼間に寝ていたオレリーがリュシーを寝かしつけていたこともあり、ディーナはリュシーを気にしながら就寝していたようである。
最初の見張り当番は、レオナと、夜は弱いと言うルーネで行う。
火の番を行う2人。疲れで皆寝静まってしまったが、ルーネは星を時々眺めつつ、たわいない話を行う。レオナもそれに相槌を打ち楽しい時間を過ごしていた。
しかし、リュシーが夜泣きを始めると、レオナがすぐにあやし、おむつ交換などにてきぱきと当たっていた。目を覚ましたオレリーも、安心して眠っていたようである。
その次は、ラジェンドラ、狛の組。
2人は焚き火を囲んでのんびりと会話をして過ごすのだが。狛は夜目でいぬと一緒にきょろきょろ。木の棒を持って地面にがりがりと落書き。そんな忙しないパートナーに、ラジェンドラは退屈しなかったようである。
その2人から、Jと錬介が見張りのバトンを受け取る。
「……ふふ、こういうの、良いですね。何だか懐かしい気がします」
記憶喪失の錬介は、仲間と共に旅していたのだろうかとなくなった記憶に想いを馳せる。
Jは幼い頃、父母と共に森の湖へとピクニックへ行った事を思い出す。
もはや、自分にしか知る者がいなくなった記憶。嗅覚で敵を検知していたパドの背を撫でつつ、Jはそれを胸の中にそっとしまうのである。
早朝になれば、寝ていたイルム、ディーナが起きる子供達の相手をしながら、見張りの時間を過ごしていた。
何事もなく過ぎ行く一夜。奇襲の可能性がある為に緊張感はあったが、それでも、比較的まったりとした時間をハンター達は過ごしていた。
●雑魔の来襲
2日目の日中。そいつらは現れた。
黒いオオカミが3体。街道を行く馬車に近づいてくる。
「あっ! また来ましたね」
馬で行くルーネは以前、このオオカミらと対したことがあったのだ。
雑魔を発見した彼女はすぐさま、仲間に伝達する。早期発見もあり、イルムは先手必勝と先に攻撃を仕掛けていく。
「みんな近くに集まるの!」
ディーナはリュシーを抱えたまま、馬車と一家を守ろうと不可視の境界を作り上げ、絶対に雑魔を近づけまいとしていた。
馬車から飛び出すハンター達。ルーネが後方から光の弾を飛ばし、その衝撃でオオカミの体へと衝撃を与える。
近づいてくるオオカミに対しては、覚醒して獣人化した狛がいぬと一緒に吠えて威嚇する。
「そっちが黒い狼なら、こっちは白い狼っすよ!! ……あ! 今、白い犬って思った奴、誰っすか!?」
仲間の前へと出た狛はいぬとシンクロし、突撃していく。
同じく前に立つ錬介。こちらは盾として行動しつつ、鎮魂歌を歌って攻め入る仲間の援護を行う。
「あくまで護衛優先だ」
ラジェンドラも馬車の傍で応戦し、光線を飛ばして雑魔の体を貫く。
大きく口を開いて襲い来る大きなオオカミども。Jはリボルバー銃の銃弾にマテリアルを込め、冷気を纏った射撃を浴びせかけていく。霜に包まれたオオカミは体を所々凍らせ、動きを阻害されていたようだ。
そこを、レオナが狙う。彼女は少しでも先手が取れるようにと立ち回りながら、火の精霊力を付与した符を飛ばし、オオカミの体を焼き焦がす。全身を炎に包んだオオカミは黒焦げになる前に蒸発するようにして消え失せる。
「狼同士、仲間っすけど!! 雑魔の仲間は持った覚えはないっす!! だから、やっつけるっすよ!!」
1体を抑えていた狛も、再びいぬと一緒に連携攻撃を仕掛けていく。特攻し、爪で薙ぎ払い、食らいついていくと、オオカミは表情を固まらせて姿をかき消してしまう。
仲間を倒された残り1体のオオカミは、不利を察して逃げ出していった。
「深追いは禁物ですね……」
レオナが逃げ行く敵を見て呟く。メンバー達も状況を確認した上で、旅を再開するのだった。
●憩いの一時
2日目の夜。
この日も、Jが予め目をつけていた湖畔でキャンプを張ることにする。
キャンプ設営も手馴れたもの。子供達もその手伝いを行ってくれた。
ラジェンドラは道中で拾った枝を薪にし、着火の指輪を使って火を起こす。今日も簡易竈も活用し、料理を行うようだ。
「旅で、お水は大切です」
ルーネがそう主張する。湖があるので採水はすぐにできたが、問題は食料だ。レオナは商店で食料の買い足しを考えていたが、この近辺には集落はなさそうである。
「何も獲れないと、炙ったチーズを乗せたパンと干し肉を戻したスープになるから、頑張ってほしい」
「折角だし、保存食じゃなくて暖かいもんが食べたいな」
錬介が狩りを行うメンバーにそう告げる。だが、昨日はJと狛があっさりと猪を捕まえている。ラジェンドラもそのサポートを考えていた。
「狩りっす!! 楽しい狩り~♪」
狛はここぞ本領発揮と、いぬとはしゃぐ。
今日は自分もとリュカが意気込みを見せる。それもあり、Jはオラースに許可を得て、リュカに拳銃の使い方を教授していた。
「自分、森でずっと狩りしてたんで、こういうのは得意なんすよー。……でも、逃しちゃう時もあるから、あんまし笑わないで欲しいっすよ……?」
湖の周囲を歩く狩人達。狛がそうリュカに告げていたのだが、獲物を見つければすぐに視線を鋭くしていた。兎を発見した狛がいぬと挟み撃ちして一気に追い詰める。
そこで、リュカが借りた拳銃を打ち込んで傷を負わせ、狛が見事に1羽を仕留めた。オラースが絶賛するのに、狛がリュカと一緒になってはしゃいでいた。
そこから少し離れた場所では、ルーネ、レオナが木の実の採取を行っていた。
「あ、これ、食べれますよね?」
ルーネは木の実を拾って同行するレオナに見せる。食材に出来そうな野草を採取していたレオナも、それにはにっこりと微笑む。
また、ルーネもちょっとした落とし穴を仕掛けていたが、見事に小動物を捕らえていたようだ。
一方、キャンプでは。
狩り、採取に向かった仲間を待つメンバーとニヴェール一家の女性陣。
「リュシーちゃんのほっぺぷにぷになの! おててもぷっくりもみじでかわいいの!」
ディーナは一緒に手を繋いで歩き、肩車や抱っこ。泣きそうになったら変な顔をしてリュシーをあやしてみせた。
この2日、ディーナはずっとリュシーに付きっ切りである。それは、オレリーが子供と一緒にいたいと主張するタイミングも出てしまうほど。それでも、オレリーはディーナに感謝していたようだ。
「狩りにいった皆は大丈夫かな」
錬介はオカリナを奏でてテレーズの相手をしつつ、狩りに出た仲間の心配をする。
だが、そんな彼の杞憂を払拭するように、狩りメンバーは大量に獲物を仕留めてきていた。
ラジェンドラは獲物を解体し、肉の状態に捌く。
さすがというべきか、一番獲物を仕留めたJもまた獲物の血抜きと解体を自ら行い、調理係へと渡す。
「お手軽なのは、ホイル焼きだね」
イルムが買い込んできた野菜や調味料、そして現地調達した肉を包み、焚き火に入れる。ソテーにした食材をパンに挟んだ一品を作っていた。
「あ、手伝います」
家事をと考えるオレリーを、レオナがアシストする。せめて今は自分の時間を作って欲しいと、レオナは特に気遣っていたのだ。オレリーはそれに感謝をしつつも、短時間で家事を済ませる。
そうして、並べられた料理。火を通した肉料理がメインだ。
「うまいな、新鮮なものをその場で調理しているんだしな」
ラジェンドラは、料理をしてくれたイルムは女性陣に感謝の意を表していた。
●旅の終わり
次の日の夕方頃、一行はイルダーナに到着する。3日一緒にいた一家とも、別れの時が訪れた。
「巡礼もかねて旅をして貰えたのがうれしいの」
ディーナが家族1人1人の名を呼び、そして。
「……みなさんに神のご加護がありますように、なの」
メンバーはにこやかに手を振り、彼らの行く末を祈りながら別れる。
ただ、レオナだけはもう少しだけ一家に同行しようと考えていたようだ。
「一緒に売り込みを行いましょう」
レオナはもう少しだけ、オラースを手助けしようと考える。それに、別れを惜しむ子供達が喜んでいたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 J・D(ka3351) エルフ|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/08/04 21:57:37 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/02 22:43:29 |