深緑に彷徨う亡者

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/09/14 09:00
完成日
2014/09/21 21:31

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 帝国ズューデアイセル州の中央に、帝国軍第五師団が駐留する都市が存在する。
 都市の名は、グライシュタット。グリフォンが周辺に多数生息してることから名前を付けられたこの都市は王国、あるいは自由都市との交易における中継地点、一種の宿場町として栄えた都市である。ピースホライゾンの完成により王国からの訪問者は減ったものの、現在でも主流な交易ルートの一つとしてそれなりのにぎわいを見せている。
「投票箱の手配、選挙ポスター掲示板の設置は順調……立会人の確保は少し難航しそうだな……」
 このグライシュタットでも他の帝国都市の例にもれず、第五師団主導の元来る皇帝選挙に向けた準備が行われていた。
「……あ、グリース。そこの名簿取ってくれ」
 団長のロルフがそう言うと、側に控えていたグリフォンが嘴で資料を挟み、ロルフの手元へと持ってくる。
「ん、ありがとう……」
 ロルフの表情には、目に見えて疲れが出ていた。
 第五師団はグリフォンライダーのみで構成された部隊である。その為、配属から3か月以内にグリフォンを乗りこなせるようになることが義務付けられており、できなければ他の師団へ転属する、それとも除隊するかを迫られることになる。そういった事情のお陰で第五師団は基本的に人手不足であり、戦闘で人員が減少した場合もすぐには補充できないという問題を抱えていた。
 人手が少ない分は個々の働きで何とかするしかない。そう言うわけで、ロルフもこの数日睡眠時間を削りながら事務作業を行っていた。
「しかし、こういうのをなんていうのかな……猫の手も借りたい、とでもいえばいいのか……」
「団長の場合はグリフォンの嘴ですかな……」
 書類に落としていた目線を上げると、そこには口ひげを生やした壮年の男性が立っていた。
「ブラウヒッチ兵長……ハハハ、まぁそんなところでしょうか」
「なんにせよ、あまり根を詰めんことです……して、今日伺ったのはかねてから調査していた件についてで……」
 そう言うと、ウェルナー・ブラウヒッチ兵長は持参した資料をロルフに手渡した。
 第五師団では選挙準備以外にも、現在調査している事案があった。それは、最近多発してきていたゾンビについてだ。無論ただのゾンビではない。強い……だけではなく、明らかに人の手が加えられたと思しき個体も存在していた。
「結論から言うと、どこからか沸いて出てる……というものではなさそうです」
「というと?」
「まず発見場所ですが、毎回決まっておらず法則は無いように思われます」
「ふむ……」
 確かにゾンビは定番の墓場だけでなく、川沿いにだだっ広い平野など、色々な場所で発見されている。
「では、どこからか移動してきているのかというと、そう言った形跡も確認できないのが現状です」
「発見報告の数を考えれば、それらの向かう先からやってきた元の位置が特定できそうな気もするけど、それに関しては?」
「無論そう言ったことも調べれば分かるかもしれませんが、私としてはもっと単純に……歪虚自体を運んでいるのではないかと思うのですが」
「……なるほど」
 人の手が入ったと思われるゾンビだ。そのゾンビを運んでいる人がいてもおかしくはないのかもしれない。
「まぁ、人と言えるかは分からない、か……確か、ハンターに一つ依頼を出していたね」
「現状、我々だけでは対応しきれませんからな」
「その時、何かそういった痕跡を見つけてきてくれると助かるんだけどね……内容に追加しておくか……」
「了解しました。それについては私の方で手配しておきます。それでは……」
 そう言って、ウェルナーは部屋を出て行った。

リプレイ本文


「改造ゾンビとか、おもしれー事考えるヤツが、居る、です」
 森に入る前、ハンターたちが簡単に行動方針を定めたところで、八城雪(ka0146)がそう言った
「勝手にゾンビから銃が生えてくるとか、ふつーねー、です。誰か作ってるヤツが居るに、ちげーねー、です」
「ホントね。銃を埋め込まれてるとか、どこのマッドサイエンティストの仕業よ。いや、ゾンビだから科学者じゃなくて魔術師かもしれないけど」
 その考えにJyu=Bee(ka1681)が同意する。
 ハンターたちに依頼されたのは森の中で目撃された……話に上がっているように腕に銃のようなものを内蔵した、いわゆる改造ゾンビ。それらの撃破である。
「ゾンビ……しかも野良じゃなく、飼いゾンビ疑惑、か。こりゃ調査のし甲斐もあるってモンだぜ」
 デルフィーノ(ka1548)の言う通り、今回はそれに加え、それらのゾンビがどうやって発見された現場にやってきたのか。その手段を探る必要があった。
 メトロノーム・ソングライト(ka1267)は移動の道すがら考える。歪虚に近付くだけでなく、さらに手を加える。どう考えてもまともな人間のする事ではない。ジュウベエはマッドサイエンティスト、あるいは魔術師であると考えたが……
「まさか……契約者?」
 そう頭の中に思い浮かんだ考えを、メトロノームはすぐに振り払う。今この様な憶測をしても仕方が無い。まずは今するべき事を、きちんとしなくてはならない。
「それじゃ、ここからは分かれて行きましょう」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)がそう言った。辺りには木々が増えてきており、荒地が多い帝国領としては珍しいまともな森らしくなってきている。ゾンビの目撃情報があったのはここからさらに奥。ここからハンターたちは手筈通りA、Bの二班に分かれることにした。
「それでは、連絡は適宜忘れずにな」
「了解です」
 ヴァージル・チェンバレン(ka1989)は魔導短伝話を手に、同じく短伝話を持つソフィア、雪と軽く打ち合わせを行った。
 こうしてハンターたちは、ゾンビの殲滅とそのゾンビがどうやってきたのかをつきとめるために、森の中にその歩みを進めた。


 A班に属しているのはメトロノーム、ジュウベエ、ヴァージル。そしてラグナ・エレッソス(ka2484)の4人だ。四人はゾンビを探しながら森の中をさ迷い歩く。森の中という性質上視界があまり良くない。4人は緊張した面持ちで周囲に目を光らせる。無論、それは敵を見つけるという目的の為だけではない。敵がここまでやってきた、その経路を探るためである。
 メトロノームは魔法による転移の可能性を指摘していた。とはいえ、そういうものがあればすでに帝国軍が見つけていてもおかしくは無い。可能性は低いように思えた。
「ただ、可能性が低くても、確認して消していけば正解へとたどり着く手助けになるはず、です」
「そうね。他には川から船を使って……っていうのも考えたけど、これも可能性はなさそうよね」
 ジュウベエの言う通りこの森の近くには、少なくともそれらしき川は近くにはなかった。
「複数体を運ぶなら船の方が楽そうではあるが……」
 ヴァージルも可能性の一つとしては検討していたが、やはり水路が問題だ。この可能性も低そうだ……
「……グリフォンがたくさんいる場所、だそうですし……やはり怪しいのは空路でしょうか」
 怪しいものが飛行していないか、空を観察しながら言ったのはラグナだ。
「それこそグリフォンゾンビ、なんてものが輸送している等ということも考えられます」
「なるほど……確かに可能性は高そうです」
 空を移動すれば目立つ……という先入観が先に立っていたメトロノームだったが、この地域はグリフォンが多数生息している。大型の飛行物体がかえって目立たない可能性は、低くは無い。
(あるいは、ゾンビが騎乗したグリフォンということもありえるか)
 ラグナとメトロノームの意見を聞きながら、ヴァージルは思考を進める。どうやって運んだのか、も確かに重要だが……
(何故その場所に運んだのか、という理由も気になるところではあるな)
 潰したい施設や村があるのか、人の目を引き付けるための陽動なのか。
 雪が道中言っていたように、性能試験ということも考えられるか。それとも、意味は特にないのか。
「ま、考えても埒はあかないか。とにかく調べて……なんだ?」
 気を取り直し、周囲を探索するヴァージル。その耳に、不意に銃声が聞こえてきた。
「B班の方に敵が来たの?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
 ヴァージルはすぐにB班に確認を取る。
「そうか、了解した……今のは敵をおびき出すためにパメラが発砲したらしい。まだ敵は見つかっていないそうだ」
「……そうでもなさそうですよ」
 声を潜め指差すラグナ。その先には、音の方向に移動していくゾンビの姿が確認できた。石橋 パメラ(ka1296)の策が功を奏したと言ったところか。
「こちらには気づいていないみたいですね。移動速度もそこまで速いというわけではなさそうです」
 メトロノームがそう言いつつ、ジュウベエにファイアエンチャントを使用する。魔法は上手く発動したようで、ジュウベエの刀に赤い光が取り巻く。
 そのジュウベエはすでに動き出していた。防御を重視した構えを取り、木々の陰に身を隠しながら接近していく。後を追うようにラグナもゾンビへ向かう。
 ここにきてようやくゾンビもこちらの存在に気付いたのだろうか、腕の銃を向けてくる。
「となると、俺が援護に回るべきか」
 ヴァージルは発砲。こちらをゾンビが向いたのを確認してから木に身を隠す。ゾンビが発砲してきたのはほぼ同時のタイミングだった。背にした木が、ゾンビの一射ごとに削られていくのが衝撃で分かる。そう長い時間遮蔽物として使うことは出来ないだろう。
「だが、すぐに終わるだろうさ」
 ヴァージルが敵の目を引き付けたお陰で、3人がフリーの状態になっている。
「他のゾンビと合流させるわけには行きません。すぐに滅します!」
 迂回して懐まで入り込んだラグナ。ゾンビが振り向く隙も与えず、ストライクブロウを腹部に叩き込む。手に持つ鞭にはメトロノームによる二度目のファイアエンチャントが付加されていた。その威力は多少強化された程度のゾンビでは耐えきれず、体がくの字に折れ曲がる。
「悪の手先に改造されて、意思無く彷徨う者達よ……」
 ゾンビには顔を上げる暇さえ与えられなかい。ラグナとは反対方向から近づいていたジュウベエは守りの構えを解き、刀を上段に構え直す。
「このジュウベエちゃんが、きちんと成仏させてあげるわ!」
 渾身の力を込めて振り下ろされた刀は、頭からゾンビを両断した。
「……これなら、さすがに蘇生もできないだろうが、一応な」
 ヴァージルはそう言うと、念のため頭に銃弾を数発撃ち込む。数瞬の間をおいて、ゾンビは内蔵された銃ごと風化していった。
「よし、B班の援護に向かおう」
 動き出さないことを確認した4人は、急ぎB班を援護するために移動を始めた。


 一方、雪、デルフィーノ、ソフィア、パメラの4人で構成されたB班。
「……さ、私たちはここですよ。早く来てほしいなぁ」
 敵を誘引するために銃を撃ったパメラは、そう言いつつリロード。来るべき戦闘に備える。
「お、見つけたぜ」
 敵が接近してきているのを樹上から察知したデルフィーノ。木の上からだとやや視界が悪く断定はできないが……
「距離はバラバラだが……3体来てるぞ! ……おっと!」
 下の3人に告げるとすぐさまデルフィーノは別の木に飛び移る。と同時に、枝葉の隙間を縫うような銃撃が。隠密裏に動くつもりではあったが、そうもいかないようだ。こちらも発見されたようだ。
「3体か……」
「それなら、A班が合流するまで、時間稼ぐ、です」
「そうだね。頑張ろう!」
 数的には有利……とはいえ、敵は強化個体だ。その戦闘力も明確ではない以上無理な戦闘は禁物。ソフィアは短伝話でA班に情報を伝えながら、魔導銃を構える。
 雪、パメラはともに木を盾にしてじりじりと距離を詰め始める。時間稼ぎが主とはいえ、ある程度は近づかなければ攻撃もままならない。幸い、敵も木が邪魔になっているおかげで射線も取りづらいようで、接近をそうそう妨げられはしない。
「ふつーのゾンビより、どの程度つえーか、試してやる、です」
 雪が木の陰から飛び出し、先頭のゾンビに突っ込む。ゾンビは銃を向け迎撃しようとするが……
「そうはさせませんよ?」
 接近してきていたパメラが牽制の銃撃。運よく敵の銃に辺り、射線が大きく逸れる。そこにパメラが踏み込んで斧を頭上へと振り下ろす。
「……浅い、ですか。ふつーのゾンビならよゆーで倒せんのに。こいつら、つえー、です」
 ゾンビは上体を逸らして致命傷を避ける。同時に、ゾンビの口から酸が吐き出される。これを雪は態勢を崩しながら躱す。
「やらせない!」
 雪をカバーするためにソフィアが魔導銃を発射する。狙いは胴体か足元。行動阻害が目的だ。その間に雪、パメラとも木々の陰に身を隠す。
 狙い所がなくなったのか、ゾンビはソフィアを狙い銃撃。
「もう! ゾンビの癖に銃とか生意気っ!」
 ソフィアもすぐさま木を盾にして身を隠す。射線が通りにくいこともあり、双方致命打を与えられない。
 とはいえ、ダメージが皆無というわけではない。
「このまま押していくぜ!」
 木の上から、今度はデルフィーノが機導砲を使用して攻撃。アルケミックパワーで強化された一射だ。ゾンビに大きなダメージを与える。
 攻撃をしたらすぐに別の木へと移動。こうして敵の狙いを一部でも上に向けていることは下で戦う3人への攻撃頻度を減らすことにも一役買っていた。
 デルフィーノの攻撃でかなりのダメージを受けていたゾンビ。これを好機とみた雪が再度突撃。ソフィア、パメラはそれを見ると他のゾンビに牽制射を放つ。
「これで、とどめ、です」
 さすがに放置はしておけないと、雪を狙いゾンビが銃撃するが、慌てたのか狙いが甘い。かすり傷程度のダメージで至近まで近づき、今度こそ全力の一撃を直撃させた。
「ちっ、止めを取られちまったか……お、来たな」
 木の上から、デルフィーノは接近する味方の姿を見た。A班だ。
 この時点で敵が2体、味方は8人。数的有利は揺るぎようがない。さらに、A班とB班の位置は、敵を前後から挟み撃ちするような形になっていた。
 勝負はすぐについた。ハンターたちが敵を圧倒するという形で。


 ゾンビを倒してからは、再度2班に分かれて探索を再開した。輸送経路の前に、雪などは今回のゾンビが性能試験を行っていると仮定してか、周囲に観察している人や生物がいないか探していた。だが、それらしいものは見当たらない。
「データ送ってる端末みたいなのも、付いてねーですし……」
「証拠は、とっておかないと……と思ったんですけどね」
 パメラも銃器部分を外して持ち帰ろうと考えていたが、機械の類は全てゾンビと一緒に塵となって消えてしまった。
 であれば、せめて輸送経路などがわかればいいのだが……
「……分からねぇな」
 そう言いながら、デルフィーノは木から降りてきた。なんらかの痕跡が木の上から見えないかと考えたのだが、飛びぬけて高い木なども無いためあまり成果は上がらなかった。
「やっぱり地上から探してみないと分からないのかもしれないね」
 ソフィアもそう言いながら地面に輸送の痕跡などが無いか探しているが、一向に成果はない。
「ただ、自然は正直でいい子です。きっと何かしらあるはず……」
「……そうですね。とにかく探しましょう」
 パメラに同意するソフィア。
 短伝話に連絡が入ったのは、そんな時だった。B班の面々はすぐに『それ』を見つけたA班と合流する。
「これは……」
 そこにあったのは、巨大なコンテナだった。と言っても、木よりも高いということは無いが。デルフィーノが木の上から探した際は枝葉の陰になって見つからなかったのだろう。
 周囲には運んできたような……たとえば車輪の跡などは存在しない。また、魔法による転移などの痕跡も見当たらない。
 ただ……コンテナがある場所の地面は衝撃で窪んでおり、また周辺の枝は下に向かい折れているように見える。
「状況的に、敵は空路を使っているということは間違いなさそうだな」
 ヴァージルはそう結論付けた。ただ、そうなると……
「どうやってこれを運んだのか……」
「ん~、少なくともグリフォンではなさそう?」
 皆が持った疑問をラグナが口にする。その疑問にソフィアがそう答える。確かに、周辺にはグリフォンの羽などは落ちていないようだった。
 だが、それならどうやって……
「とにかく、分かる範囲のことを報告するしかないわね」
 ジュウベエの言葉に皆が同意し、ハンターたちは帰路についた。
 その後、このコンテナが剣機リンドブルムによって輸送されたことが他の報告などと合わせて判明する。
 こうして、ゾンビの殲滅は無事完了した。また、ゾンビの輸送手段に関しても判明した。依頼は大成功に終わったと言っていいだろう。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • バトル・トライブ
    八城雪(ka0146
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 穏かなる銃使い
    石橋 パメラ(ka1296
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 誘惑者
    デルフィーノ(ka1548
    エルフ|27才|男性|機導師
  • Beeの一族
    Jyu=Bee(ka1681
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 俯瞰視の狩人
    ヴァージル・チェンバレン(ka1989
    人間(紅)|45才|男性|闘狩人
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • システィーナのごはん
    ラグナ・エレッソス(ka2484
    ドワーフ|20才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン ゾンビ倒して調査だよっ
ソフィア =リリィホルム(ka2383
ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/09/14 01:56:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/09 20:18:05