ただいま待機中

マスター:からた狐

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2016/08/02 19:00
完成日
2016/09/05 19:20

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ゾンネンシュトラール帝国北方、とある平原。
 巨大歪虚が出現したという情報を受け、ハンターオフィスはただちにハンターたちを召集。歪虚討伐に当たるべく、陣を作り、多くの者が戦意をみなぎらせていたが……。

「……誤報?」
「かもしれない、ということです」
 オフィスの係員が、防衛に当たるハンターたちを呼び集め、すまなそうに口を開いた。
「情報伝達の過程でミスがあったようでして。現在、もう一度受け取った情報を精査すると共に、一部の方に偵察と状況把握を頼んでおります」
「つまり、巨大歪虚の襲撃は無いってことか?」
 勇んで来たのに空振り。こんなバカな話はあるかと、ハンターの口調も荒くなる。
 対する係員は小さくなりながらも、すまなそうに首を横に振った。
「分かりません。とにかく情報が怪しいというだけで。もしかしたらいるのかもしれませんし、いないのかもしれない。いたとしても雑魔や魔法生物、あるいは単なる獣の見間違いかもしれませんし……」
 尻すぼみになる係員の言葉に、聞いている方ももう呆れるしかない。
「帰っていいか?」
 ハンターたちがそう言い出したのも当然だ。が、これにも申し訳なさそうに、係員は頭を下げる。
「依頼は任意。ですので、こちらにハンター様たちを拘束する権利などはございません。ただ、情報がどこまで正しいか分からず、本当に大型歪虚がいる可能性も否定できずにいます」
 今、姿が見えないのも、ハンターたちが集まって来たのを察して身を潜ませただけかもしれない。ハンターたちが帰還した途端に姿を現し、襲撃してくるかもしれない。徒党を組んでいる可能性まで考えると、とてもこの地にいる戦力では抗しがたく、再びハンターたちを召集してこの地に集う時には、近隣の街にもかなりの被害が出ると予想できる。
「どうしろって言うんだ、それじゃ」
「申し訳ありません。本当にご迷惑をかけますが、情報がはっきりするまでこの地に留まっていただけるとこちらとしてはありがたいのです」
 さらに深く深く頭を下げられるが、ハンターたちは困惑するしかない。
「留まると言ってもなぁ……」
「別に構わないと言えば、構わないのですが……」
 北方だからか気候は涼しい。湿度も低く、ここにいるのはいい避暑とは思える。テントは張ったので、休む場所もある。
 しかし。
 とにかく何もない。敵の接近を見越して戦闘になってもいいようなだだっ広い地形を選んだのだ。見渡す限り平地。近くの街までも馬で走ってもけっこうかかる。水源として川があり、流れは緩やかで飲料にも適する。ただ、足が浸かる程度で泳げる深さは無い。
 運んできた大量の物資は、陣地を作る木材石材を始めに食料品や衣料品などなど。当分の生活も戦闘も困らない。ただこれらは必要無いのであれば、次の戦いに向けてオフィスなどに備蓄しておくべき物だ。使い込んでいい物ではない。
 敵が来る可能性を考えると、遠く離れるのもよくないだろう。
 つまりは、身一つ。持って来た荷物ぐらいで、この付近に留まれと。
「……暇、だな」
 誰かがぽつりと吐いた言葉に、声を出さなくても雰囲気が同意している。
「あー、その何だ。その――どのくらい待てば、情報が正しいかどうか分かるんだ?」
「そうですね。全くの誤情報であっても、半日ぐらいあればこの地の状況がどうなのか判断を下せると思います」
「半日……」
 自信をもって答える係員だが、それにハンターはがっくりと肩を落とす。

 見渡す限り何もない。つまりは襲撃の気配も無い。……今のところは。
 情報を信じて待ってみるか、やってられるかと早急に帰るか。
 どうするのかはハンター次第。

リプレイ本文

 夏にしては涼しいのは、北の地だからか。
 湿度も低くて過ごしやすく、避暑に向くとは思う。が、そもそも遊びに来た訳ではない。
「もし本当に大物がいるなら黙っていられねーな」
 巨大な歪虚が出たと聞き、興味本位で来た神薙玲那(ka6173)。やる気満々、例え力及ばずとも一発でもぶちかましてやればと気負ってきた。
 だというのに。強い想いを阻んだのはソサエティの不手際。いや、巨大歪虚出現という緊急性事態に迅速に対応しようとすれば、こういう齟齬も仕方ないのか。
 ともかく。一撃入れたかった相手がいるかいないか分からないと聞き、集ったハンター全員が拍子抜けである。
「で? 現場待機として、報酬はどうなるんだ」
「もちろん警備防衛としての料金はお出しします。ですが……巨大歪虚がいないなら、やはり戦闘での危険手当や功績実績はお出しする訳にも……」
 しどろもどろで説明するギルドの係員相手に、ラジェンドラ(ka6353)は思わず天を仰ぐ。要するに、期待できるほどのモノではなさそうだ。
 いっそいてくれた方がいいのか、それとも……。
「情報の真偽はともかく、警戒しておくに越したことはありませんね」
 肩を落としつつ、シャルロット・ウォーカー(ka6139)は気合を入れ直す。
 見間違いなら何と見間違えたか。
 巨大……とまではいかなくても、歪虚がうろついているようなら、安心はできない。


 何もない場所なので、やれることはどうしても決まって来る。
 大きく分けると、その場に留まるか、周辺を巡回するか。
「バイクで偵察するかぁ。お前も付き合うかい、シェリル」
「勝ったら、アイス……? のった……」
 バイクで偵察がてら、勝負を持ち出すヒース・R・ウォーカー(ka0145)。誘われたシェリル・マイヤーズ(ka0509)も提示された賞品に魅力を感じてあっさりと承諾する。
 他にも出ていく者多数。
 偵察に出かけたハンターたちを見送りつつ、残ったハンターたちも、では何をするか、と改めて迷ってしまう。
「何もないならそれに越したことはない。ゆっくりさせて貰おう」
 咲月 春夜(ka6377)は見知った顔を見つけて挨拶をし、ついでに友人についても売り込む。
 一通りの挨拶回りが終わる頃には、他のハンターたちもやる事を見つけている。
 丑(ka4498)は、しばらく周辺を探索したものの、今の所やっぱり異変は見つからない。
「おや、そこの美しい方。俺と少しお喋りでもしませんか?」
 今は出来ることはさして無いと判断すると、人を見つけてはふらっと近寄り、あちらこちらでお喋りをしている。口説き口調だが、強引に迫ったりもしない。嫌がられるようなら、またふらっと話し相手を探して回る。相手のペースも尊重しながら、何だか穏やかに時間を過ごしていた。
「素振りですか。気合い入ってますね」
 鞍馬 真(ka5819)に近寄ると、丑は軽く笑う。
 素振りをしながら周囲を警戒していた真も、休憩がてらにしばし手を止めた。
「誤報だとしても、安全の確認がとれるまでは警戒くらいはしておく方がいいだろう。その程度のアフターフォロー――というのか?――ぐらいは、やって当然だ」
 淡々とした口調で答えながらも、言葉は丁寧。やや緊張して態度を解いて、気楽に応じる。
 とはいえ、視線は時折外部に向かう。
 どこから何が来るか。来ないか。気を抜きすぎる訳にもいかない。
「何があるか分からない状況での待機は、意外と疲れるものなのかも知れないな」
 武器の手入れを始める真だが、手入れする必要も無くきれいなまま。結局は、仲間たちの雑談の輪に入り、暇を潰す時間も増える。
 春夜も邪魔にならないような場所を見つけ、ギターを穏やかに奏で旋律を口ずさむ。風にのって広がる音は日常そのもの。そばではペットたちがのんびりと過ごし、とても警戒が必要な状況には見えない。
 いつでも覚醒できるよう、仮面と騎士風のヘルシャフトと名乗る姿でいる。実際に覚醒状態になるのは敵を見つけてからだが、気は抜かずに待機している。
 しかし、敵がいないなら……暇になる。どうしても。

 空を見上げればまだ陽は高く。一体、この状態からいつになったら解放されるのか。


 北とはいえ、着込んでいると暑い。しかし、敵が来るかもしれない以上、装備も脱げない。体力も温存した方がいい。まして、スキルの無駄撃ちなど出来ない。
「暇……です。ものすっごく暇です。暇すぎます。ザレムさん、何か作って~」
 依頼中だと頑張って待機していたアシェ-ル(ka2983)だが、内心不満満載。遊びたくてうずうずともしていた。
 そこに通りかかったのが――あるいは探してくれたのか、ザレム・アズール(ka0878)。幸いとばかりに、アシェールは甘えた声を出す。
「それなら向こうで、何か作ってたようだ。一緒に行くか」
 連れていたパルムたちはすっかり遊びに没頭している。彼らが目に見える範囲にいるのを確認しながら、ザレムたちは食料庫へと向かう。
 途中で、北谷王子 朝騎(ka5818)がドリルで大穴を掘っているのを見かける。が、その時は真面目に防衛策を考えているか程度にしか考えなかった。
 声をかける間もなく、朝騎の方も穴掘りに飽きたか、水着に着替えて川に飛び出している。川遊びに興じていても、咎める気は誰もない。
 食料庫周辺は、すでに賑やかになっていた。
 食料も使っていいのか悪いのか。何とも微妙な状況だが、時間と共に腹も減る。空腹のままでは動きようもない。
 そう考えた者もいたようで、料理のいい匂いが漂っている。
 中には、ラジェンドラの簡単な料理も並んでいる。
「腹が減っては戦はできねぇし。……本当にこんなところに来るなんてな。少し前まで宇宙船に乗ってたのが嘘みたいだ」
 ラジェンドラが愚痴にも似た感想を告げながら、ブーメランを投げてみる。すると、荷物の影からネズミが数匹飛び出していく。
 今の所、ここまで入りこんでくる敵と言えばそれぐらい。ラジェンドラはブーメランを投げて遊びながら少しずつ調整を加える。ついでにネズミも退治する。
「さすがにここでアイスは無理か。でも街に戻ってもチョコミントはあるかなぁ。無くても誰かが作ってそうだけど。――何かおかしいかい? シェリル」
 レースの決着をつけて一旦戻り、食料を探っていたヒース。髪を結び直すその顔を、何故かまじまじとシェリルは見つめていた。
 首を傾げるもシェリルが何も言わないので、また目を外す。
「好きなアイス……チョコミント……。リボンの結び方も……おかーさんと……」
彼の背中を見つめながら、シェリルはそっと呟く。
「お……兄ちゃん?」
 小さな声は風の音に紛れて消える。
 言った本人も分かってはいない。雑念を呑み込むように口を閉ざすと、ヒースとレースの報酬について話し合った。


 周囲を巡回していたシャルロット・ウォーカーは、戦馬に乗っていたエルバッハ・リオン(ka2434)を見かけて声をかける。
「何かありましたか?」
「今のところは何も……敵が来るかどうか分からない状況というのは嫌なものですね」
「情報の真偽はともかく、警戒しておくに越したことはありませんね」
 言った矢先。近くの草むらが不自然に揺れた。
 シャルロットが魔導拳銃「マーキナ」 を向ける。警告の後に、発砲。飛び出してきたのはスライム一体。
 誰かを呼ぶ必要も無いと、エルバッハも馬上から仕掛ける。あっという間に、スライムの姿はかき消えた。
「どうした、何があったのか!」
 騒動を聞きつけ、玲那が駆けつけてきたが、その頃にはすでに終わっている。
 しばらく警戒したが、出てきたのはそれぐらい。どうやら紛れ込んだ雑魚らしい。
「小物に用はねーんだよ。ったく、……菓子でも食うか」
 気を張っても、大物が出る気配はない。不貞腐れて、玲那が平原に寝転がると、酒と菓子を用意する。
「別に戦闘したいという訳でも無いですから、誤報で終わるのなら良いのですが」
 自分も一休み、とエルバッハも腰を下ろす。
 ただ時間が過ぎていった。


 夕暮れを見て、月を見て。
 火を灯して連絡を待つも、それでも何の変化も無し。
 春夜のギターも子守唄を奏で、聞いていた家族たちもすっかり休んでしまっている。
 連絡が来たのは夜も更けきった頃。
 ハンターオフィスの係員が駆けつけると、息も整えない内に頭を下げる。
「えぇ! 誤報ですか!?」
 声をあげるアシェールに、他の者もやっぱりとか何でだ、など落胆や憤りを告げている。
「すみません。どうやら大型の獣を見たとの情報に尾ひれがつき、そのままオフィスにまで伝わっていたようです」
 それもそれで事件だが、大勢のハンターが出るほどでもない。
「もうこうなったら――やけくそに魔法撃っていいですか?」
「いえ、あの……それは……」
 係員に詰め寄るアシェールが怖い。目がマジだ。どう返すべきか、係員も悩んでいる。
 歪虚が居ないのは結構だが、暴れに来たハンターにとってはどこか残念でもある。
「ったく、結局誤報かよ。大袈裟もいいところだぜ。象かキリンの間違いじゃねーの?」
 悪態つく玲那。それはそれで見たい気もする。
 今後はこのような事態にはならないよう、万全に体制を整え、ハンターたちを援護すると、係員はとにかく頭を下げ続ける。
「今回は空振りでしたが、無駄足だったとは思いません。いつどこに現れるかわからないのが歪虚ですから」
 油断はできない、とシャルロットは誤報と聞いてなお気を引き締める。歪虚による惨劇は、いつ起こるか分からない。繰り返してはならないのだ。
「休暇と考えればマシな方かな」
 苦笑しながらそう判断すると、春夜はヘルシャフトから普段の姿に戻る。
「とはいえ、ここは撤退ですね。留まる理由も無いです」
 誤報ならば、大量の物資も不要。運び込まれた資材を早急に片付けるべく、エルバッハは機敏に動き出す。
 元よりさほど荷ほどきもしていない。
「まあ、こういう依頼もあるよな」
 徒労だったと真がぼやく間にも、撤退準備は整っていく。
 ただ。
 すぐにでも去ろうとするハンターたちに、けれども係員はさらに困ったように声をかけてきた。
「ところで……皆様の中に、街の方に協力を頼んだ方はおられますか? その排泄物を集めて撒くようにと……」
「は?」
 ハンターたちの動きが微妙に止まる。概ね、表情としては何を言っているのだと呆れているやら、眉を顰めるやら。
 その中で、するっとどこかに身を引きかけていた朝騎を、ザレムが目ざとく見つけ捕まえる。
 逃げられそうにない、と、朝騎は開き直って力説する。
「ちゅまり。帝国北から来る巨大歪虚と言えば、歪虚王ビッグマーの可能性が高いでちゅ。伸縮自在な相手で見失うのも頷けるでちゅ。だから、敵は綺麗好きだから街の周囲にウン○を撒いておけば避けられて安全だと思ったんでちゅ!」
「いえその……。それで勝っても後の衛生面で不都合が出るかと……。夏ですし……」
 厄介な事態発生。係員が頭を抱える。
 その間に、雰囲気察したハンターたちは早急な撤退を理由に、次々と姿を消していた。
 結局、朝騎を中心に協力を申し出たハンターたちが街の清掃に回され、落とし穴も埋められた。集められた排泄物も肥料用に回されたとの事。

 多少バタバタしたが、何もないのは良かった。
「あぁ姫。今日も世界は平和ですよ」
 丑は静かになった大地に横たわると空を仰ぐ。月が綺麗に世界を照らしていた。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 真実を斬り拓く牙
    丑(ka4498
    人間(紅)|30才|男性|闘狩人
  • 丘精霊の配偶者
    北谷王子 朝騎(ka5818
    人間(蒼)|16才|女性|符術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

  • シャルロット・ウォーカー(ka6139
    人間(紅)|25才|女性|機導師
  • 頼れるお姉さん
    神薙玲那(ka6173
    人間(蒼)|20才|女性|聖導士
  • 孤独なる蹴撃手
    骸香(ka6223
    鬼|21才|女性|疾影士
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラ(ka6353
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

  • 咲月 春夜(ka6377
    人間(蒼)|19才|男性|機導師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/08/02 16:47:00