ゲスト
(ka0000)
サマーゾンビーチ
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/08/13 19:00
- 完成日
- 2016/08/19 01:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
皆さんおはようございます、カチャです。
私、休みをとって海に来ています。
後見人のアレックスさんが、ジュアンさんと旅行に行くけどついでに一緒に来るかと誘ってくれたんです。いい折なので、ありがたく便乗させていただくことにしました。最近依頼において色々あったので、猛烈に癒しが欲しかったんです。
もちろん泊まる部屋は別ですよ。私もそこまで野暮ではないですからね。
この付近にはたくさんイルカが生息しています。餌付けしているお陰でしょうか、どの子もすごく人なつこいです。私、思う存分戯れてきました。
宿泊先はホテルです。最近出来たとかで、すごくきれいです。四階建てで、部屋数は50。前は砂浜、後ろは山。絵に描いたようなオーシャンビュー……まあ私は山側の部屋に泊まりましたけど。そっちのほうが安かったので。
ついでに言うとこのあたりはウニの産地です。しこたまウニどんぶりを食べました。心身ともにすごく満たされました。
しかしその翌日、つまり今現在。潮騒が聞こえてくるさわやかな朝、ホテルの外にはゾンビゾンビまたゾンビ。従業員さん達が廊下を駆け回っています。
「お客様の中にハンターの方はいらっしゃいませんか! いらっしゃいましたら至急ロビーまでお集まりくださーい!」
こんな場合行かなきゃいけないんでしょうね、やっぱり。
このまま平穏にお土産買って帰るつもりだったのに。なんで今日この時に出てくるのゾンビの馬鹿。せめて出現を一日先送りしてくれればよかったのに等考えながら竹刀を引きずってロビーに行ってみますと、知り合いがいました。
「あら、カチャちゃん。奇遇ね」
「あれっ! 杏子さんもここに泊まってたんですか?」
「ええ。この近くで、ちょっとした依頼を受けてね。あなたもそう?」
「あ、いえ。私は純粋に観光です。アレックスさんたちと一緒に来たんです」
――そういえば、アレックスさんの姿が見えません。
まだ寝てるのかと思ったらその通りだったらしく、随分遅れて大あくびしながら、着流しの浴衣姿で現れました。
「いよー、なんか朝から面倒なことになってるみたいだな」
頭を掻いて、まだ眠そうです。夜更かしでもしてたんでしょうか。
「ジュアンさんはどうしました?」
「寝てる」
「寝てる? こんなに騒がしいのに?」
「そ。あいつ寝付きがすごくいいんだ。その代わり寝起きがすごく悪いけどな。しっかしまあ、よくもこれだけゾンビが湧きに湧いたな。どっから来たんだか……」
そこは私も気になります。ガラス張りの入り口にも窓にも腐れた歪虚が、ああああうううう呻きながら群がっています。目にするだけで非常に暑苦しいですが、さてどこからやってきたのか。
そんなことを考えていると、従業員たちのひそひそ話が耳に入ってきました。
「見ろ、だから言わんこっちゃない。大体な、オーナーがここにホテルを立てるって言い出したときから、俺はやばいんじゃないかと思ってたんだよ。もともと墓場だろ。そこ無理やり整地して埋め立ててさあ」
「でも、ちゃんと供養したから大丈夫だって言ってましたよ」
「あのケチでがめついオーナーがそんなことするわきゃないよ。全館に火災報知機付けるのさえ、渋りに渋ったんだぞ」
なるほど原因はよく分かりました。そんないい加減なことをするなんて、一体どんな人なのでしょう。
と思ったら、本人が現れました。
「やあやあ、お集まりいただきありがとうございます!」
背広と下駄の丸禿げおじさんです。扇子を翻し金歯を光らせ、すっごく成り金ぽいです。
「いやいや私常々、ハンターに敬意を払っておるのですよ。日夜世のため人のため戦場に赴きにっくき歪虚を退治して下さる……己の利を省みないその崇高な使命感、感服致します! 尽きましては是非とも高潔なるボランティア精神にのっとり、当ホテルとお客様を救っていただきたい、かと!」
……なるほど確かにケチな人です。この事態を無償で解決させようという気持ちが、ありありと伝わってくる台詞です。
リプレイ本文
朝の6:30。
眠りのただ中にいたアメリア・フォーサイス(ka4111)を叩き起こしたのは、ホテル従業員が大勢で、どたばた廊下を走り回る音。以下の声。
「お客様の中にハンターの方はいらっしゃいませんか! いらっしゃいましたら至急ロビーまでお集まりくださーい!」
「ふぁ?……朝から何ですか?? 私オフなんですけど??」
「もう、こんな時間から騒いでるの誰~」
不服そうにベッドから出てきた天竜寺 詩(ka0396)は、そのまま何の気無しに窓の方を見、思わず吹いた。
朝一番窓一杯にゾンビが顔をくっつけて、『おうううう』『わああああ』と暑苦しく鳴いている……。
「何でB級ホラーみたいな状況になってるの!?」
白いカーテンから柔らかく差し込む朝に照らされて、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が目を覚ます。
「ううん……」
瞼をこすってまだ残っている眠気を追い払い、身を起こし、さっとカーテンを開く。
「おはよっ、私のゴージャスな夏のバカンスデイ――」
窓の外には陽気に輝く青い海。アバンチュールを約束する白い砂浜。それをぶちこわす有象無象の生ける屍、稼働式腐爛死体の群れ。
「……ぞぞぞ、ゾンビ! きしょい、許せないんだからっ!」
「はるばる異世界から帰ってきての休暇でこの騒動かよ」
げんなりしつつ階段を駆け降りるジャック・エルギン(ka1522)は、背後からの声に振り返った。
「いよぉー、ジャックちゃん。奇遇だな。おたくもここに泊まってたんか」
誰かと思えばライラック(ka4616)。棒飴を不機嫌そうに齧っている。
「あーあ。取引の為に来たダケなのにヨォ。なーンで戦わネェといけネェのよ。つか、なんでいきなりあんな生ゴミどもが湧いてんだぁ?」
窓から首を出し外の様子を確かめたステラ・レッドキャップ(ka5434)は、頭をかいてぼやいた。
「参ったな……休養目的だったし、護身用の銃しか用意してねぇぞ」
あの程度の歪虚相手に負ける気はしないが、数が数。ちょいと面倒かもしれない――思いつつロビーへ向かっていく所、マリィア・バルデス(ka5848)とかち合う。
もと軍人としての意識が強い彼女はこの突発事態について、さしたるぼやきを発しなかった。心中はどうあれ。
「ざっと見たところ数は多いが、レベルは相当に低そうだからな。十分マシンガンでなぎ倒せる」
「頼もしいですね。それじゃ、前衛頼んでもいいですか? 私、装備上弾を無駄遣い出来ないんでー」
ロビーに着いてみれば、ハンターたちが集まっていた。詩、アメリア、ジャック、ライラック、アレックス、杏子……。
「カチャちゃん発見!……うわーんゾンビ怖いよう♪」
「ふぎゃあああ! 胸揉むのやめーっ!」
それからリナリス・リーカノア(ka5126)、カチャ。
「ちょっと、折角の綺麗な景色が台無しじゃないですか! 責任者出てこい!」
最後にルンルン。総勢11名。
そこにオーナーがやってきた。
●
『ただ働きしてくれ』という趣旨の発言を受け、真っ先に反応したのはライラック。
「……あ゛? 金払う気ネェとかマジふざけてンのか? ドタマぶち抜くぞクソハゲェ」
続いてアメリア。
「ん?、報酬出ないなら不参加で。慈善事業でハンターやってるわけじゃないですし。他の宿泊客の方はオーナーさんが責任を持って逃がしてあげてくださいねぇ?」
ルンルンもジャックもマリィアも、報酬なしなど論外という立場。
「だって私、今日はお客さんだもの……仕事するなら報酬に休日手当上乗せは当然なんだからっ」
「依頼じゃねえなら人命優先、ホテルは放っといてズラかるさ。つーか従業員の話を聞く限り、完全にあんたが原因だろコレ」
「武力、財力って言うでしょう? お金持ちってことは私達と同じで力があるってことよ。力を持ちながら出し惜しんで使わない相手に、私達が力を貸すなんて有り得ない。貴方は私達が守るべき相手じゃない」
これだけの反対意見を前にしてなお、オーナーが折れることはなかった。
「こらこらこらそんなやる気のないことでどうする! 若い時の苦労は買ってでもしろと言うではないか!」
見当違いな説教に、詩が白い目を向ける。
(何言ってるのこのハゲ親父は)
と思いつつも感情極力押さえつつ、説得に努力してみる。
「オーナーさん、此処までの身代を築くのにさぞ頑張って働いたんでしょ? でもそれはオーナーさんの頑張りに対して皆が正当な対価を支払ってくれたからお金貯められたんだよね?」
「もちろんそうじゃ。しかしそれもこれも下積み時代があってのこと。わしが若い時はなあ、仕事を覚えるため食うものも食わず睡眠も削って、雨の日も雪の日もひたすらただ働きを……」
どうやらこのオーナー、自分が苦労してきた分他人にも苦労させたがるタイプの人間らしい。
そうと知ったリナリスは、別路線からの切り崩しにかかる。
「まあまあ聞いて。これはオーナーさんが一方的に損する話じゃないんだよ。規定の依頼料払ってくれたら儲けさせて――」
ルンルンはこれ見よがしに水晶玉を覗きこみ、顔に陰を作る。
「このままだと折角のホテルが大変な事になっちゃいますよ、それに……私、見えちゃいました! ここには良くない気が……それに、うっ、お墓!……何とかしないと毎日ゾンビが盆踊り!」
ステラは説得をほかのメンバーに任せ、自分は自分でさっさと行動することにした。
ひとまずホテル従業員を隅に集め、ひそひそ要請。
「用心のため一階の出入り口封鎖しますから、場所教えてくださいませんか? 後、人手も少々借りたいんですが」
マリィアも一旦オーナーを放置。
「カチャ、杏子、ちょっと……」
手招きして呼んだ2人に、小声で提案。
「ホテルの従業員たちと一緒に、2階より高い階の部屋に、お客を全員集めて欲しいの。彼らを守るよう私達が居て、何の罪もない人を怪我させるわけにはいかないでしょう?」
あの欲ボケオーナーはどうなってもいいが、非戦闘員の安全には、しっかり配慮しなければ。
●
ハンター総動員の説得により、強制ボランティアは回避された。金額はまた後で相談の上決するという形で。
というわけで、戦闘開始。
●
1F、正面玄関。
「商談がまとまったんなら、ぼちぼち仕事すっか!」
ジャックはホールにあった大型ソファを横倒しにし、外へ押し出した。
一階の窓には中から戸板が打ち付けられた。扉はありったけの大型家具で、これまた塞がれ中。
入れそうな所はここしかないので、うごうごゾンビが寄ってくる。
「連中、頭は悪そうだからな。単純な障害でも役に立つだろ」
アレックスも剣という武器の都合上、ジャックと同じく前衛担当。
「そうだな。動きを見ている限り連中、なんか虫っぽいからなあ」
ソファの後ろに控えているライラックは、後衛、援護担当。
「蜂の巣にすっカラよろしくピース☆」
ジャックとアレックスがゾンビの群れに切り込んでいく。
ゾンビは動きがのろい。攻撃を回避出来ず、腐れた体が次から次へずんばらりん。しかしまだ動く。
「やっべェキッモ。マジ殺すわ。つか、殺さねェと取引進まねェンだよ」
そこに目がけてぶっ放されるマシンガン。
腐肉が細切れになって飛び散る様に、ライラック大爆笑。
「ぶははは、きったねー水風船だなオイ! ゴミ袋弾けまくりだよ!」
「おいライラック、射線気をつけろ! 汁がこっちに飛び散ったぞ!」
「わりーわりージャックちゃん、ぎゃはははは!」
外で派手な戦闘が行われている最中、1F内部では、ステラとルンルンが巡回中。
ステラは窓に打ち付けた戸板の隙間から、ゾンビたちを随時狙い撃ち。本日は所持弾薬が少なめなので無駄弾を出さぬよう、射撃の正確さに重きを置く。
「万一でも入って来られると、面倒だからなー」
一方ルンルンは数匹まとめて一気に、五色符の光でお焼き上げ。
「ゾンビ退治もニンジャにお任せ!」
●
詩は2Fの窓を開け放ち、外壁にべったりくっついているゾンビたちに向かって、レクイエムを歌う。
「静かに眠れ~♪」
不快な音が聞こえてきたのでゾンビたちは、くっついていた場所からうごうご離れて行く。
屋上にいるリナリスは、自身に施した(着衣の上からの)亀甲縛りを確認。腰に結んだロープの端を持つカチャに言う。
「じゃあ、これより作戦開始!」
「……本当にやるんですか?」
「もちろんだよ♪」
今一つ納得してない様子のカチャをおいて彼女は、空中へ勢いよく飛び出した。
ロープがびん!と張る。
「ふんぬ!」
落下防止柵の外側でリナリスの重みを支え、踏ん張るカチャ。下から「嫌ああっ……死にたくないようっ……助けてぇっ」という嘘泣きが聞こえてくるが、それに耳を傾ける余裕はない。
あからさまな釣りに反応しのろのろ集まってくるゾンビたち。
それをアメリアが、3Fの自室ベランダから狙撃する。
「……あー、眠くて目がよく開かない……」
4Fにいるマリィアも、廊下の窓から順調に弾いていく。
「やはり数が多いな……」
彼女の背後にあるひと部屋には、ホテル中のお客と従業員が集められている。扉の前には杏子が陣取り、万一ゾンビが入り込んできた際の備えをしていた。
と言っても、心配はあまり無さそうだ。ゾンビには壁を上ってくるだけの身体能力がないのだ。倒れた仲間の体にさえ躓き、簡単に転倒している始末。
ゾンビは餌を撒かれた池の鯉よろしく、吊り下げられたままホテルの外周を回るリナリスを追う。
ゾンビの上にゾンビが乗って、そのまた上にまたゾンビ。特に発酵が進んだ個体が仲間の重みに負け、次々潰れていく――潰れたところで別に死にもしないが。
それを見たライラック、すっかりツボに入ってしまう。
「おいおいお前ら頭にクソでも詰まってんの? めちゃくちゃ笑える絵面なんだけど? リボルバーお袖から出すのたーいへーんなんだカラァ……寄ってくンじゃねェゾ☆アッヒャッヒャッヒャ!!」
だが彼は、急に笑うのをやめた。オーナーが、バリケードを越え出てきたのだ。ヘルメットを被り地下足袋をはき、ツルハシを手にして。
「ハ?」
ジャックとアレックスも思わず固まる。
「「え?」」
ハンターたち全員の視線が集中する中オーナーは、鼻息荒く、手近なゾンビに突きかかって行った。
「賠償請求なぞさせん、させんぞー!!」
どんなに弱い歪虚でも常人にとっては、猛獣以上の危険な存在。よたよた迫り来る死体はツルハシで頭を殴られても全くめげることなく前進、頭をがぶり。
後から後から迫り来るゾンビにたかられ、たちまち姿が見えなくなるオーナー。
リナリスは吊られたまま、ブリザードを発動した。
「オーナーさん、危ない!」
ルンルンも五色符を炸裂させる。
「オーナーさん、逃げてー!」
強烈な冷気と光が歪虚と被害者をまとめて襲う。
ジャックとアレックスは最優先で、オーナーの救出に向かった。
「無茶すんなお前ら!」
「おっさん生きてるかー!」
援護組もこぞって、周辺ゾンビの排除に専念する。
何しろ彼が死んだら、報酬を払うものがいなくなるのだからして。
●
「ゾンビ一体でも倒せたら賠償請求なしでいいって――マリィアさんそんなこと言ったんですか」
「ええ……でもまさか本気でやるとは……」
汗をかきつつステラに答えたマリィアは、担架に乗って運ばれて行くオーナーを見やった。
詩が治癒をかけたので命に別条はないが、それでも大事を取ってということで、病院へ運ばれて行くところ。本人不本意らしく、包帯でミイラ状態になりつつも、ふがふが暴れている。
「わしは病院なぞ行かんぞ! 入院なぞしたら一体いくら金がかかると思うんじゃい!」
「いいから乗ってください!」
杏子がそれを押さえつつ、馬車に無理やり積み込んだ。
ライラックがその側で、ケタケタ笑っている。
「つーかボクちゃん達ハンターがたまたまいたカラいいケドよォ? いなかったらどうしたワケェ? 今頃ゾンビーズに食われて全滅だったぜェ? わかってンのか?? なァ?」
アメリアはまだしょぼついた目を擦り、気掛かりそうに呟く。
「オーナーの安否は割とどうでもいいんですけど……結局報酬はどうなるんでしょうかね?」
それに対してアレックスが、心配するなと肩を叩く。
「問題なしにもらえるさ。さっきジュアンが正式に依頼書作成して、オフィスに提出したからな」
ルンルンは、悪そうな顔で断言する。
「踏み倒しは絶対やれませんよ。正式依頼を反故にしたらあのオーナー、私たちに支払う以上の額をハンターギルドに払わなければならなくなっちゃいますからね」
安心したアメリアは、二度寝をし直すためホテルの部屋へ引き上げる。
ジャックとアレックスも、同じくめいめいの部屋へ戻って行く。
「……とりあえず朝飯より先に風呂だな」
「同感だ」
夏の太陽がさんさんと降り注ぐ海辺は、まだゾンビの残骸だらけ。
ステラはそれらが無に還り切ってしまわないうち、写真に撮っておくとした。後でオーナーがごね始めたとき、脅しに使おうと思って。
「ま、ホテルが守られて一件落着ってとこか」
詩は残留怨念処理のためウクレレを抱え、鎮魂歌を歌う。これは、依頼料抜きのサービスだ。
「は あへお かうあ~~♪」
リナリスは、モーニングの前にひと泳ぎするとした。気分転換の上体も清められて、一石二鳥。
「ね、カチャちゃんも一緒に泳ごっ。プライベートビーチ状態だしさっ。こんなの滅多にないよ♪」
「え? うーん、そうですね、せっかくだからそうしましょうか。ところでリナリスさん、さっきホテルの人に写真撮ってもらってましたが、あれ、どうするつもりなんですか?」
「ああ、あれ? 宣伝に使ってもらえたらなあって思って」
「宣伝……なります?」
「なるよ。まずは、ハンターがゾンビ軍団を撃破って内容の本を作って、売りまくるの♪ お色気×グロは業界じゃ鉄板の組み合わせだよ、受けないワケがないよねぇ?」
「……へ、へえー。そうなんですか」
「で、その舞台となったホテルって事で宣伝し、パネルを置いとけばお客倍増♪ あたしの写真は自由に使ってもらっていいからって、言ってあるんだ♪ もっちろん二次使用も解禁だよ♪ あ、そうだ。ついでだからカチャちゃんもこの企画に参加しよーよ」
「いや、私はちょっと」
「いいじゃない、ほらこの通り、年の割におっきい胸なんだしー」
がばっと下から服を持ち上げられ、金切り声を上げるカチャ。
会話を小耳に挟んだマリィアは、この先当地で妙なイベントが開催されねばいいがとの懸念を抱かずにはいられなかった。
詩はまだ歌っている。
「あろは~おえ~あろは~♪」
なおホテル側の好意により、ハンターたちのディナーと宿泊費は無料になった。そしてお土産もついた。
依頼料?
もちろん後日、しっかり全員受け取りましたとも。
眠りのただ中にいたアメリア・フォーサイス(ka4111)を叩き起こしたのは、ホテル従業員が大勢で、どたばた廊下を走り回る音。以下の声。
「お客様の中にハンターの方はいらっしゃいませんか! いらっしゃいましたら至急ロビーまでお集まりくださーい!」
「ふぁ?……朝から何ですか?? 私オフなんですけど??」
「もう、こんな時間から騒いでるの誰~」
不服そうにベッドから出てきた天竜寺 詩(ka0396)は、そのまま何の気無しに窓の方を見、思わず吹いた。
朝一番窓一杯にゾンビが顔をくっつけて、『おうううう』『わああああ』と暑苦しく鳴いている……。
「何でB級ホラーみたいな状況になってるの!?」
白いカーテンから柔らかく差し込む朝に照らされて、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が目を覚ます。
「ううん……」
瞼をこすってまだ残っている眠気を追い払い、身を起こし、さっとカーテンを開く。
「おはよっ、私のゴージャスな夏のバカンスデイ――」
窓の外には陽気に輝く青い海。アバンチュールを約束する白い砂浜。それをぶちこわす有象無象の生ける屍、稼働式腐爛死体の群れ。
「……ぞぞぞ、ゾンビ! きしょい、許せないんだからっ!」
「はるばる異世界から帰ってきての休暇でこの騒動かよ」
げんなりしつつ階段を駆け降りるジャック・エルギン(ka1522)は、背後からの声に振り返った。
「いよぉー、ジャックちゃん。奇遇だな。おたくもここに泊まってたんか」
誰かと思えばライラック(ka4616)。棒飴を不機嫌そうに齧っている。
「あーあ。取引の為に来たダケなのにヨォ。なーンで戦わネェといけネェのよ。つか、なんでいきなりあんな生ゴミどもが湧いてんだぁ?」
窓から首を出し外の様子を確かめたステラ・レッドキャップ(ka5434)は、頭をかいてぼやいた。
「参ったな……休養目的だったし、護身用の銃しか用意してねぇぞ」
あの程度の歪虚相手に負ける気はしないが、数が数。ちょいと面倒かもしれない――思いつつロビーへ向かっていく所、マリィア・バルデス(ka5848)とかち合う。
もと軍人としての意識が強い彼女はこの突発事態について、さしたるぼやきを発しなかった。心中はどうあれ。
「ざっと見たところ数は多いが、レベルは相当に低そうだからな。十分マシンガンでなぎ倒せる」
「頼もしいですね。それじゃ、前衛頼んでもいいですか? 私、装備上弾を無駄遣い出来ないんでー」
ロビーに着いてみれば、ハンターたちが集まっていた。詩、アメリア、ジャック、ライラック、アレックス、杏子……。
「カチャちゃん発見!……うわーんゾンビ怖いよう♪」
「ふぎゃあああ! 胸揉むのやめーっ!」
それからリナリス・リーカノア(ka5126)、カチャ。
「ちょっと、折角の綺麗な景色が台無しじゃないですか! 責任者出てこい!」
最後にルンルン。総勢11名。
そこにオーナーがやってきた。
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『ただ働きしてくれ』という趣旨の発言を受け、真っ先に反応したのはライラック。
「……あ゛? 金払う気ネェとかマジふざけてンのか? ドタマぶち抜くぞクソハゲェ」
続いてアメリア。
「ん?、報酬出ないなら不参加で。慈善事業でハンターやってるわけじゃないですし。他の宿泊客の方はオーナーさんが責任を持って逃がしてあげてくださいねぇ?」
ルンルンもジャックもマリィアも、報酬なしなど論外という立場。
「だって私、今日はお客さんだもの……仕事するなら報酬に休日手当上乗せは当然なんだからっ」
「依頼じゃねえなら人命優先、ホテルは放っといてズラかるさ。つーか従業員の話を聞く限り、完全にあんたが原因だろコレ」
「武力、財力って言うでしょう? お金持ちってことは私達と同じで力があるってことよ。力を持ちながら出し惜しんで使わない相手に、私達が力を貸すなんて有り得ない。貴方は私達が守るべき相手じゃない」
これだけの反対意見を前にしてなお、オーナーが折れることはなかった。
「こらこらこらそんなやる気のないことでどうする! 若い時の苦労は買ってでもしろと言うではないか!」
見当違いな説教に、詩が白い目を向ける。
(何言ってるのこのハゲ親父は)
と思いつつも感情極力押さえつつ、説得に努力してみる。
「オーナーさん、此処までの身代を築くのにさぞ頑張って働いたんでしょ? でもそれはオーナーさんの頑張りに対して皆が正当な対価を支払ってくれたからお金貯められたんだよね?」
「もちろんそうじゃ。しかしそれもこれも下積み時代があってのこと。わしが若い時はなあ、仕事を覚えるため食うものも食わず睡眠も削って、雨の日も雪の日もひたすらただ働きを……」
どうやらこのオーナー、自分が苦労してきた分他人にも苦労させたがるタイプの人間らしい。
そうと知ったリナリスは、別路線からの切り崩しにかかる。
「まあまあ聞いて。これはオーナーさんが一方的に損する話じゃないんだよ。規定の依頼料払ってくれたら儲けさせて――」
ルンルンはこれ見よがしに水晶玉を覗きこみ、顔に陰を作る。
「このままだと折角のホテルが大変な事になっちゃいますよ、それに……私、見えちゃいました! ここには良くない気が……それに、うっ、お墓!……何とかしないと毎日ゾンビが盆踊り!」
ステラは説得をほかのメンバーに任せ、自分は自分でさっさと行動することにした。
ひとまずホテル従業員を隅に集め、ひそひそ要請。
「用心のため一階の出入り口封鎖しますから、場所教えてくださいませんか? 後、人手も少々借りたいんですが」
マリィアも一旦オーナーを放置。
「カチャ、杏子、ちょっと……」
手招きして呼んだ2人に、小声で提案。
「ホテルの従業員たちと一緒に、2階より高い階の部屋に、お客を全員集めて欲しいの。彼らを守るよう私達が居て、何の罪もない人を怪我させるわけにはいかないでしょう?」
あの欲ボケオーナーはどうなってもいいが、非戦闘員の安全には、しっかり配慮しなければ。
●
ハンター総動員の説得により、強制ボランティアは回避された。金額はまた後で相談の上決するという形で。
というわけで、戦闘開始。
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1F、正面玄関。
「商談がまとまったんなら、ぼちぼち仕事すっか!」
ジャックはホールにあった大型ソファを横倒しにし、外へ押し出した。
一階の窓には中から戸板が打ち付けられた。扉はありったけの大型家具で、これまた塞がれ中。
入れそうな所はここしかないので、うごうごゾンビが寄ってくる。
「連中、頭は悪そうだからな。単純な障害でも役に立つだろ」
アレックスも剣という武器の都合上、ジャックと同じく前衛担当。
「そうだな。動きを見ている限り連中、なんか虫っぽいからなあ」
ソファの後ろに控えているライラックは、後衛、援護担当。
「蜂の巣にすっカラよろしくピース☆」
ジャックとアレックスがゾンビの群れに切り込んでいく。
ゾンビは動きがのろい。攻撃を回避出来ず、腐れた体が次から次へずんばらりん。しかしまだ動く。
「やっべェキッモ。マジ殺すわ。つか、殺さねェと取引進まねェンだよ」
そこに目がけてぶっ放されるマシンガン。
腐肉が細切れになって飛び散る様に、ライラック大爆笑。
「ぶははは、きったねー水風船だなオイ! ゴミ袋弾けまくりだよ!」
「おいライラック、射線気をつけろ! 汁がこっちに飛び散ったぞ!」
「わりーわりージャックちゃん、ぎゃはははは!」
外で派手な戦闘が行われている最中、1F内部では、ステラとルンルンが巡回中。
ステラは窓に打ち付けた戸板の隙間から、ゾンビたちを随時狙い撃ち。本日は所持弾薬が少なめなので無駄弾を出さぬよう、射撃の正確さに重きを置く。
「万一でも入って来られると、面倒だからなー」
一方ルンルンは数匹まとめて一気に、五色符の光でお焼き上げ。
「ゾンビ退治もニンジャにお任せ!」
●
詩は2Fの窓を開け放ち、外壁にべったりくっついているゾンビたちに向かって、レクイエムを歌う。
「静かに眠れ~♪」
不快な音が聞こえてきたのでゾンビたちは、くっついていた場所からうごうご離れて行く。
屋上にいるリナリスは、自身に施した(着衣の上からの)亀甲縛りを確認。腰に結んだロープの端を持つカチャに言う。
「じゃあ、これより作戦開始!」
「……本当にやるんですか?」
「もちろんだよ♪」
今一つ納得してない様子のカチャをおいて彼女は、空中へ勢いよく飛び出した。
ロープがびん!と張る。
「ふんぬ!」
落下防止柵の外側でリナリスの重みを支え、踏ん張るカチャ。下から「嫌ああっ……死にたくないようっ……助けてぇっ」という嘘泣きが聞こえてくるが、それに耳を傾ける余裕はない。
あからさまな釣りに反応しのろのろ集まってくるゾンビたち。
それをアメリアが、3Fの自室ベランダから狙撃する。
「……あー、眠くて目がよく開かない……」
4Fにいるマリィアも、廊下の窓から順調に弾いていく。
「やはり数が多いな……」
彼女の背後にあるひと部屋には、ホテル中のお客と従業員が集められている。扉の前には杏子が陣取り、万一ゾンビが入り込んできた際の備えをしていた。
と言っても、心配はあまり無さそうだ。ゾンビには壁を上ってくるだけの身体能力がないのだ。倒れた仲間の体にさえ躓き、簡単に転倒している始末。
ゾンビは餌を撒かれた池の鯉よろしく、吊り下げられたままホテルの外周を回るリナリスを追う。
ゾンビの上にゾンビが乗って、そのまた上にまたゾンビ。特に発酵が進んだ個体が仲間の重みに負け、次々潰れていく――潰れたところで別に死にもしないが。
それを見たライラック、すっかりツボに入ってしまう。
「おいおいお前ら頭にクソでも詰まってんの? めちゃくちゃ笑える絵面なんだけど? リボルバーお袖から出すのたーいへーんなんだカラァ……寄ってくンじゃねェゾ☆アッヒャッヒャッヒャ!!」
だが彼は、急に笑うのをやめた。オーナーが、バリケードを越え出てきたのだ。ヘルメットを被り地下足袋をはき、ツルハシを手にして。
「ハ?」
ジャックとアレックスも思わず固まる。
「「え?」」
ハンターたち全員の視線が集中する中オーナーは、鼻息荒く、手近なゾンビに突きかかって行った。
「賠償請求なぞさせん、させんぞー!!」
どんなに弱い歪虚でも常人にとっては、猛獣以上の危険な存在。よたよた迫り来る死体はツルハシで頭を殴られても全くめげることなく前進、頭をがぶり。
後から後から迫り来るゾンビにたかられ、たちまち姿が見えなくなるオーナー。
リナリスは吊られたまま、ブリザードを発動した。
「オーナーさん、危ない!」
ルンルンも五色符を炸裂させる。
「オーナーさん、逃げてー!」
強烈な冷気と光が歪虚と被害者をまとめて襲う。
ジャックとアレックスは最優先で、オーナーの救出に向かった。
「無茶すんなお前ら!」
「おっさん生きてるかー!」
援護組もこぞって、周辺ゾンビの排除に専念する。
何しろ彼が死んだら、報酬を払うものがいなくなるのだからして。
●
「ゾンビ一体でも倒せたら賠償請求なしでいいって――マリィアさんそんなこと言ったんですか」
「ええ……でもまさか本気でやるとは……」
汗をかきつつステラに答えたマリィアは、担架に乗って運ばれて行くオーナーを見やった。
詩が治癒をかけたので命に別条はないが、それでも大事を取ってということで、病院へ運ばれて行くところ。本人不本意らしく、包帯でミイラ状態になりつつも、ふがふが暴れている。
「わしは病院なぞ行かんぞ! 入院なぞしたら一体いくら金がかかると思うんじゃい!」
「いいから乗ってください!」
杏子がそれを押さえつつ、馬車に無理やり積み込んだ。
ライラックがその側で、ケタケタ笑っている。
「つーかボクちゃん達ハンターがたまたまいたカラいいケドよォ? いなかったらどうしたワケェ? 今頃ゾンビーズに食われて全滅だったぜェ? わかってンのか?? なァ?」
アメリアはまだしょぼついた目を擦り、気掛かりそうに呟く。
「オーナーの安否は割とどうでもいいんですけど……結局報酬はどうなるんでしょうかね?」
それに対してアレックスが、心配するなと肩を叩く。
「問題なしにもらえるさ。さっきジュアンが正式に依頼書作成して、オフィスに提出したからな」
ルンルンは、悪そうな顔で断言する。
「踏み倒しは絶対やれませんよ。正式依頼を反故にしたらあのオーナー、私たちに支払う以上の額をハンターギルドに払わなければならなくなっちゃいますからね」
安心したアメリアは、二度寝をし直すためホテルの部屋へ引き上げる。
ジャックとアレックスも、同じくめいめいの部屋へ戻って行く。
「……とりあえず朝飯より先に風呂だな」
「同感だ」
夏の太陽がさんさんと降り注ぐ海辺は、まだゾンビの残骸だらけ。
ステラはそれらが無に還り切ってしまわないうち、写真に撮っておくとした。後でオーナーがごね始めたとき、脅しに使おうと思って。
「ま、ホテルが守られて一件落着ってとこか」
詩は残留怨念処理のためウクレレを抱え、鎮魂歌を歌う。これは、依頼料抜きのサービスだ。
「は あへお かうあ~~♪」
リナリスは、モーニングの前にひと泳ぎするとした。気分転換の上体も清められて、一石二鳥。
「ね、カチャちゃんも一緒に泳ごっ。プライベートビーチ状態だしさっ。こんなの滅多にないよ♪」
「え? うーん、そうですね、せっかくだからそうしましょうか。ところでリナリスさん、さっきホテルの人に写真撮ってもらってましたが、あれ、どうするつもりなんですか?」
「ああ、あれ? 宣伝に使ってもらえたらなあって思って」
「宣伝……なります?」
「なるよ。まずは、ハンターがゾンビ軍団を撃破って内容の本を作って、売りまくるの♪ お色気×グロは業界じゃ鉄板の組み合わせだよ、受けないワケがないよねぇ?」
「……へ、へえー。そうなんですか」
「で、その舞台となったホテルって事で宣伝し、パネルを置いとけばお客倍増♪ あたしの写真は自由に使ってもらっていいからって、言ってあるんだ♪ もっちろん二次使用も解禁だよ♪ あ、そうだ。ついでだからカチャちゃんもこの企画に参加しよーよ」
「いや、私はちょっと」
「いいじゃない、ほらこの通り、年の割におっきい胸なんだしー」
がばっと下から服を持ち上げられ、金切り声を上げるカチャ。
会話を小耳に挟んだマリィアは、この先当地で妙なイベントが開催されねばいいがとの懸念を抱かずにはいられなかった。
詩はまだ歌っている。
「あろは~おえ~あろは~♪」
なおホテル側の好意により、ハンターたちのディナーと宿泊費は無料になった。そしてお土産もついた。
依頼料?
もちろん後日、しっかり全員受け取りましたとも。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/10 00:44:51 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/08/13 13:09:18 |