ゲスト
(ka0000)
冒涜されしは死者の群れ
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/14 12:00
- 完成日
- 2014/09/22 09:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
――狂ったような、犬の鳴き声が響き渡る。
農夫の男は、それを夢の中で遠くに聞いていた。意に反し、意識は急速に浮上していく。
うるさい、今日くらいはゆっくり寝かせてくれ。儚く消えそうになる夢の片隅で、男は抗議するように呟いた。
眉根を寄せて、寝返りを打つ。
普段ならば朝日の昇るこの時間には、すでに起きているはずだった。朝早くから起きだして、やらなければいけないことがいくらでもあるからだ。しかし、今日だけは、もう少しだけ寝ていてもバチは当たらないだろう。
なにせ、昨晩は思わぬことで夜更かしをせざるを得なかったのだから。
真夜中、村の家畜が急に暴れだし、囲いを破って逃げ出そうとしたのだ。村人総出で起き出しそれらを落ち着かせたものの、男が家に帰ることができたのはもう空が白んできた頃だった。
男がいくら無言の抗議を頭の中で繰り返そうと、犬の鳴き声は止まない。繋いだリードが軋みを上げる音が、ここまで聞こえてくるようだ。
そして、男は気づく。
妙な臭いがする。鼻を突くような、刺激臭だ。それが腐臭だと、男は直感的に確信した。
家に備蓄した食材が、腐っているのだろうか。そんなことを思いながら、男はゆっくりと体を起こす。起きてみればその臭いは家に充満していて、よくここまで寝ていられたものだと、男は少し感心した。
早速と、地下の備蓄庫の蓋を持ち上げる。
だが、覚悟していた腐敗臭は、漂ってこなかった。むしろ、今の家の空気よりも、庫内の空気の方が新鮮に感じられたほどだ。
では、この臭いは一体……。
疑問に思ったその時、家の外から、絹を裂くような叫び声が聞こえてきた。
男は、咄嗟に外へ飛び出していた。
扉を開いた瞬間、鼻を突く臭いが増す。
辺りを見れば、同じく叩き起こされた住民が困惑顔で路地に頭を覗かせている。すでに数人は、叫び声の方へと向かっているようだ。男は、それに倣い走りだした。
走っている途中、臭いが一方向から風に乗って流れてきているのではないか、ということに気づく。
この時期、ちょうど村の裏手の山から吹き降ろす強い風が吹いてくるのだ。村はその風によって秋の到来を知り、季節の変わりを実感する。
――しかし今日この日だけは、そんな風流を感じる暇はなさそうだ。
駆け寄った先に、近所に住む女性が腰を抜かしてへたり込んでいた。山の方を見つめて口を開き、がたがたと震えて服が汚れるのも気にしない様子でずりずりと後ずさっている。
そして、男はその視線の先を見た。
山の木々の合間から、何かがこちらへと向かってきている。それは人型で、鈍色と赤褐色をまばらに散りばめたような奇妙な出で立ちをしている。その人型の背後では、緑に覆われていたはずの山の斜面が、鬱蒼と茂っていた木々の葉が――無残にも、赤茶けた腐葉土のような色へと変貌していた。それは人型の背後から山の上へと一直線に伸びていて、人型が通った道をそのまま示しているようだ。そしてその道の末端、山の中腹からは、何かモヤのようなものが立ち上っているように見えた。
男の心臓が跳ね上がる。木々を枯らし、負の力を撒き散らす。そんな存在を、聞いたことがあるからだ。
倒れている女性に手を貸す余裕もない。脂汗で額を濡らし、視線を向けるべきではないと警鐘を鳴らす本能にも背を向けて、何とか眼球を動かした。
そして、ゆったりとこちらに近づいてくる人型を、確認した。
農夫の男は、それを夢の中で遠くに聞いていた。意に反し、意識は急速に浮上していく。
うるさい、今日くらいはゆっくり寝かせてくれ。儚く消えそうになる夢の片隅で、男は抗議するように呟いた。
眉根を寄せて、寝返りを打つ。
普段ならば朝日の昇るこの時間には、すでに起きているはずだった。朝早くから起きだして、やらなければいけないことがいくらでもあるからだ。しかし、今日だけは、もう少しだけ寝ていてもバチは当たらないだろう。
なにせ、昨晩は思わぬことで夜更かしをせざるを得なかったのだから。
真夜中、村の家畜が急に暴れだし、囲いを破って逃げ出そうとしたのだ。村人総出で起き出しそれらを落ち着かせたものの、男が家に帰ることができたのはもう空が白んできた頃だった。
男がいくら無言の抗議を頭の中で繰り返そうと、犬の鳴き声は止まない。繋いだリードが軋みを上げる音が、ここまで聞こえてくるようだ。
そして、男は気づく。
妙な臭いがする。鼻を突くような、刺激臭だ。それが腐臭だと、男は直感的に確信した。
家に備蓄した食材が、腐っているのだろうか。そんなことを思いながら、男はゆっくりと体を起こす。起きてみればその臭いは家に充満していて、よくここまで寝ていられたものだと、男は少し感心した。
早速と、地下の備蓄庫の蓋を持ち上げる。
だが、覚悟していた腐敗臭は、漂ってこなかった。むしろ、今の家の空気よりも、庫内の空気の方が新鮮に感じられたほどだ。
では、この臭いは一体……。
疑問に思ったその時、家の外から、絹を裂くような叫び声が聞こえてきた。
男は、咄嗟に外へ飛び出していた。
扉を開いた瞬間、鼻を突く臭いが増す。
辺りを見れば、同じく叩き起こされた住民が困惑顔で路地に頭を覗かせている。すでに数人は、叫び声の方へと向かっているようだ。男は、それに倣い走りだした。
走っている途中、臭いが一方向から風に乗って流れてきているのではないか、ということに気づく。
この時期、ちょうど村の裏手の山から吹き降ろす強い風が吹いてくるのだ。村はその風によって秋の到来を知り、季節の変わりを実感する。
――しかし今日この日だけは、そんな風流を感じる暇はなさそうだ。
駆け寄った先に、近所に住む女性が腰を抜かしてへたり込んでいた。山の方を見つめて口を開き、がたがたと震えて服が汚れるのも気にしない様子でずりずりと後ずさっている。
そして、男はその視線の先を見た。
山の木々の合間から、何かがこちらへと向かってきている。それは人型で、鈍色と赤褐色をまばらに散りばめたような奇妙な出で立ちをしている。その人型の背後では、緑に覆われていたはずの山の斜面が、鬱蒼と茂っていた木々の葉が――無残にも、赤茶けた腐葉土のような色へと変貌していた。それは人型の背後から山の上へと一直線に伸びていて、人型が通った道をそのまま示しているようだ。そしてその道の末端、山の中腹からは、何かモヤのようなものが立ち上っているように見えた。
男の心臓が跳ね上がる。木々を枯らし、負の力を撒き散らす。そんな存在を、聞いたことがあるからだ。
倒れている女性に手を貸す余裕もない。脂汗で額を濡らし、視線を向けるべきではないと警鐘を鳴らす本能にも背を向けて、何とか眼球を動かした。
そして、ゆったりとこちらに近づいてくる人型を、確認した。
リプレイ本文
異常事態の連絡を受けたハンター達は、早速と件の村へ向かった。
小さな木造の家が散見する、のどかな田園風景。しかし、今やそこは異様な雰囲気に包まれていた。
まず感じるのは、異様な臭気。それから低く、腹の底をかき回されるような不快感を催す唸り声だ。それらは村を包み込み、怖気の走る空間を作り出している。大気が透明で、まともに先が見通せることが不思議に思えるほどだ。
「うぇっ……やっぱ臭えなぁ……」
長大な弓に矢を番え、ゾンビの姿を探しながらルリ・エンフィールド(ka1680)は思わず口走った。
「本当に酷い匂いだ……この臭いを発しているのが人間だった物かと考えるとゾッとするね、全く」
即座に同意するクラウス・エンディミオン(ka0680)は、改めて顔の下半分を覆うマスクをグイと引き上げる。
一行は、ゾンビの臭気への対策として、リアルブルー製のマスクを入手していた。近頃頻発するゾンビ被害を商機と見た商人が、かの船から仕入れたものだ。ロクス・カーディナー(ka0162)がそれを見つけ、全員が倣うことで悪臭による行動の阻害を防いでいた。
「ちっ、マスクしてもこの臭いかよ」
それでも臭いを完全に防ぐことができるわけではなく、ロクスは眉根を寄せる。
村との距離がまだ幾ばくかあるにも関わらず、これだけの臭いが立ち込めている。単に物が腐ったというだけでは、ここまでのことにはならないだろう。今こうして山から吹き下ろされる強い風に乗ったとしてもだ。
近づくに連れ、徐々に、村の状況が明らかになってくる。
村の土台となる大地は褐色で、枯れたような色褪せた下草が転々と生えているだけの、肥沃とは程遠い土地だった。しかし、その褐色に、明らかに違う色が混じっていた。
……酸化し、変色した血液だ。それが、地面の色を濃く変えていた。一箇所や二箇所ではない。至る所に、何かの血液が染み込んでいる。
木造の家屋の壁には、鋭利なもので斬り裂かれた痕さえ見える。
敵は随分と、派手に暴れたらしい。ハンター達は改めて身構える。
「ん、何かいるな」
神凪 宗(ka0499)が指をさす。宗の鋭敏な視覚は、とみに異様を捉えた。建物の影に隠れるように、何かが揺らめいている。
「あれが、ゾンビでしょうか」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)がロッドを握りしめる。
ハンター達は歩みを止め、それぞれに手近な建物に身を隠した。
そんな中、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は、村の高所に目を向けていた。もしかしたら、この件には黒幕が存在するのかもしれない。ならば、この騒動を観察するに易い場所を陣取っている可能性がある。
そう思って一通り見渡すが、結局、それらしきものは見当たらなかった。
「……非才な私には無理な話、ですね」
苦笑と共に呟き、レイは視線を落とした。
村に近づけば、その異常は明らかだった。村の中を、ゾンビが闊歩している。ゆらゆらと体を揺らし、尾を引く唸り声を垂れ流し、何かを探すようにズルズルと足を引きずりながら。
「……人型は、十体くれェか。情報通り、板くっつけた輩も居やがるな」
「まだ気づかれてねえみたいだし、不意打ちは簡単そうだな」
弓を装備したロクスとルリが、気付かれないように狙いを定める。狙うのは、改造されたゾンビだ。
「僕も行きます」
同時にユキヤも、ロッドを構えマテリアルを集中する。
「これは酷いな……精霊もさぞかし嘆いていることだろう」
「俺は奴らの背後に回る」
「では、私はせいぜい彼らの気を引くとしましょう」
近接を担う三人も、それぞれに武器を構えた。
「行くぞ!」
号令とともに、弓を持った二人とユキヤが建物の影から身を躍らせる。瞬時に弓を引き、番えた矢の羽から箆、鏃へと視線を移し、その直線上にゾンビの頭を据える。そうして手を離せば、腐った空気を切り裂いて矢が走った。
トン、と小さな音がして、ほぼ同時に二本の矢が改造されたゾンビの頭に突き立つ。
「ホーリーライト!」
追って、光の球が軌跡を描いてゾンビへと叩きつけられた。途端に光球は膨張し、爆風を伴って炸裂する。
衝撃を受け、ゾンビの体がぐらりと大きく揺れる。……だが、倒れない。貼り付けられた鋼板を歪ませながら、傾いだ首を不自然に回し、ぐるりと濁った瞳がこちらを向いた。
――唸り声が、こだまする。
改造ゾンビの咆哮を皮切りに、辺りのゾンビが一斉にこちらを向いた。生に飢えるゾンビが、活力に満ちた魂を見つける。
だが、ゾンビ達が殺到するよりも早く、宗は刀を構え駆け出していた。その脚にマテリアルを込め、跳ねるように地面を蹴り飛ばして一息に改造ゾンビの側面へと回りこむ。
次いで、レイが改造ゾンビの正面へと飛び出す。精霊への祈りを込め、内に眠る闘争心に火を付けて、勢いのままに剣を振り下ろす。刃はゾンビの首筋へと吸い込まれ――ガツンと、鎖骨に食い込んだところで強烈な手応えと共に止まった。
「これは……!」
レイは咄嗟に剣を引いた。しかし、ゾンビの動きは想像以上に早い。既にゾンビは腕を振り上げ、手首から先に埋め込まれた長剣でレイを捉えようとしていた。
「させるか!」
ゾンビが腕を振り下ろす寸前、背後にまで回っていた宗が刀を抜いた。白刃が煌めく。狙いすまされた一撃は過たず、横一文字にゾンビの首を襲った。
柔らかい物に刃が食い込んでいく感触。しかしそれは、一瞬で同じく強烈な手応えに取って代わる。手首に衝撃を受が走り、刀が止まる。
「こいつ、骨が……!」
明らかに、カルシウムの塊程度の硬度ではない。縫い付けられた鋼板然り、手首の剣然り、骨格すら強化されているのかもしれない。
だが、それに気づいたところでゾンビの動きは止まらない。頸動脈を斬られてなお、死者は死なない。
レイは必死に、盾を、振り下ろされる剣に合わせる。
「ぐぅっ……!」
肩口に刃が入った所で、盾が長剣を弾き飛ばした。血飛沫が頬に斑を作る。
「やってくれる!」
リボルビングソーに火を入れたクラウスが、間に体を滑り込ませ、ゾンビの腹部へと攻撃を叩き込む。マテリアルを吸い、音を立てて回転する丸鋸は、鋼板の隙間を縫って腐肉を掻き分け深々と突き刺さり、そのまま大きくゾンビの腹を抉り取った。
グズグズに腐れた肉片が飛び散る。
大きく体積を減らしたゾンビは、ゆらゆらと千鳥足にクラウスへと向かうと長剣をゆっくりと振り上げ――その重さに耐えられなくなったように、音を立てて後ろへと倒れた。
「レイさん、大丈夫ですかっ?」
ユキヤが、肩から血を流すレイへと駆け寄り、ヒールをかける。
「しっかし、しぶてェやつだったな」
「全員で攻撃してこれですからね……」
憎らしげに倒れたゾンビを睨みつけ、ロクスは吐き捨てる。レイはユキヤに礼を言い、傷の塞がった肩を撫でながらため息を付いた。
「だが、ネタは割れた。骨も鋼板もない場所を狙って叩けばいい」
「全く醜いな……だが、私と化け物同士、お似合いだ」
「こうなりゃ、ドワーフの腕力を見せつけてやるしかねえな! ……くっせえから、近づきたくないけど」
当然ながら、これで終わりというわけではない。気づけば、ハンター達の周りにゾンビが集まりつつあった。人型のゾンビに、牛と鶏のゾンビの連合軍だ。
「では、続きと行きましょうか。――さあ、あなた達の相手は私です!」
一歩前に出て、レイが盾と剣を打ち合わせる。大きな音が鳴り響き、知能のない有象無象のゾンビ達は、まんまとレイへ視線を向けた。
●
持ち込んでいた魔導短伝話は、辺りに満ちた負のマテリアルの影響か、まともに機能してくれなかった。そのため一行は、ある程度固まって村の中を探索することにした。
適宜レイは敵の目を集めるように音を鳴らし、ゾンビの気が逸れた瞬間を見計らって、まずはロクスとルリが矢を撃ち込み、ユキヤの魔法も合わせて着実に敵を減らしていく。それで倒れなかったゾンビは、宗とクラウス、レイの近接攻撃によって確実に仕留めていった。
ただのゾンビは、それほど脅威ではない。
痛覚がないのか恐怖しないのか、それとも本能という物が存在しないのか、ゾンビはあまり回避行動を取ろうとしなかった。
こちらが弓を構えている姿が視界に入ろうが、剣を振り上げようが、それに対して何かのアクションを起こすことは少ない。撃破は容易だった。
ただし、普通のゾンビは、という前提が入る。
「ぬあー!」
ゾンビを探して村の中を探索中、ルリは背後からの奇襲を受けた。
改造ゾンビは、鋼板によって筋肉の動きや関節の可動域が制限されている。だが、それに関わらず動きは素早い。奇妙な体勢で無理に体を動かして、思わぬところから奇襲を仕掛ける。
幸いにも、ルリは音によってその奇襲を寸での所で察知した。体を捻り、弓で攻撃を受け止める。同時に弓を捨て、衝撃を逃がしながら長剣を引き抜いた。
「いってえ……なっ!」
返す刀で、ルリは渾身の一撃を大上段から振り下ろす。狙いは適当。当たればいいやの精神で繰り出された袈裟斬りは、ゾンビの肩に突き刺さる。
「おらあっ!」
気合一閃。阻む金属諸共引き千切る。
ゾンビが不快な叫びを上げ、
「ふっ……!」
駆け付けた宗の刀の切っ先が狙い澄まして喉を割り、声はひゅうと、ただの腐臭を伴う風に変わる。
ただし、例え首の骨一本で頭が繋がっていても、このゾンビを完全に殺すことはできない。
「ほらよ!」
ロクスの放った矢が、落ち窪んだゾンビの眼窩に突き刺さる。
衝撃を受け、支えを失い、ゾンビの頭は切創を広げながら後ろへゆっくりと倒れ――
「とどめだ」
そこに上から、クラウスが思い切りリボルビングソーを振り下ろす。
祖霊の力を込めた一撃は過たず首の骨を捉え、ゾンビの体ごと地面に叩きつけた。
火花を散らして金属同士が高速でぶつかり合い、甲高く耳朶を蝕むような音が響き渡る。
数瞬の後――ガチンと一際大きな音を残して、ゾンビの首は丸鋸に弾き飛ばされて虚しく転がった。ビクリと震え、体も大人しくなる。そして、黒い靄のようにその輪郭は崩れ、改造に使われた金属片を残し風に流れて消えていった。
●
最後の改造ゾンビが、空気に溶けて消えていく。一行は肩で息をしながら、それを見送った。ガランと、ゾンビを構成していた金属が転がる。
倒し方さえ分かれば、あとは流れ作業に近かった。遠近とバランスの取れた編成も、功を奏したかもしれない。全員が疲弊していたが、被害は軽微と言えるだろう。
「やっと終わったか。ったく、胸クソ悪ィ仕事だぜ」
ロクスはしゃがみ込み、金属片を手に取ると苦々しく呟いた。ついでにいくつかの鋼板、骨格代わりの鉄パイプ、長剣と、改造ゾンビの存在していた証を回収する。
「皆さん、ヒールをかけますね」
ユキヤは全員に、ヒールを掛けて回る。淡い光に包まれて、各人が同じようにほっと胸をなでおろした。
「うげー、服に臭いが染み付いちまったぜ……」
「この空気の中に、これだけ長くいたからな……」
服の袖を渋い顔でくんくんと嗅ぐルリの横で、宗も同じく顔をしかめている。
「だが、だいぶ臭いも落ち着いた気がするな……鼻がおかしくなっただけかもしれないが」
クラウスは、不安げに鼻を押さえた。
「あとは、山の調査ですか」
服についた汚れを払いながら、レイは視線を件の山へと向ける。そこにあるのは、報告の通りの情景だ。山の麓から一直線に、中腹まで伸びる赤茶けた木々の象る道。
六人は、念の為に村に待機する三人と、山の探索を行う三人に分かれることにした。
●
生き残り、村に留まった家畜は殆どいなかった。ほぼ全ての牧舎は破壊され、例え生き残っていたとしても、すでに逃げ出してしまっているだろう。
村に残った宗、クラウス、レイは、一通り村を回って確認したが、見つけることができた無事な家畜は二羽の鶏と、一頭の子牛だけだった。
しかし、その確認の途中、一つ気づいたことがあった。
ゾンビに襲われ倒れた村人や家畜の死骸。その体に、複数の、鋭利な牙による噛み傷が付いていることが分かったのだ。
しかし、そんなことをするゾンビをここまで見ていない。
もし、そうした牙を持つゾンビが村を襲っていたとしたら、牧舎から逃げた家畜を、彼らはどうするのだろうか。
――唸り声が聞こえた。
三人は、咄嗟に身構える。声の先には、目の濁った犬が数匹、こちらへと向かってきていた。
「逃げた家畜を追っていたのが、戻ってきたのか」
宗が再び、刀を抜き放つ。
「……本当に、難儀でいらっしゃいますね。黒幕がいるとしたら、なんと罪深きことか」
憂いを秘めた表情で、レイも剣と盾を構える。
「……ふん、丁度いい。暇を持て余していたところだ」
クラウスは、犬達の目を引くべく、リボルビングソーのエンジンの出力を上げていく。回転する刃が一層速度を増し、腕に伝わる振動が如実に強くなっていく。同時に、ギャリギャリと金属の擦れる音もまた強くなる。
犬達の変色し毛の抜け落ちた耳が、その騒音にピクリと揺れる。耳の良い犬にしてみれば、相当に、耳障りなことだろう。
●
慎重に、辺りの様子を伺いながらロクス、ユキヤ、ルリの三人は山を登る。
「……こりゃひっでェな」
ロクスが近くの木に手を当てれば、触れた場所からボロボロと崩れ落ちていく。山の一部が、まるごと腐り初めているようだった。
「なんか、やな音も聞こえねえ?」
「鳴き声、ですかね?」
山に踏み入った時から、妙な音も聞こえていた。死にかけの動物が鳴いているような、細くか弱く、心を不安定にさせる音。
三人は最大限の警戒を払い、一歩を踏み出していく。
目的地へは、さほど時間はかからない。
「おい、なんだこりゃ」
木々をへし折り、地面を割り、無理やりそこに押し込んだように、山の中腹でその鈍色は輝いていた。
「箱……?」
扉のついた、巨大な立方体。
むせ返るような悪臭は、箱の中にこびり付いた、よく分からない赤い何かから発せられているようだった。
「何か、いますよ……?」
ユキヤが、箱の中を指さした。こびり付いた赤色の中心に、何かがいる。ずっと聞こえていた声も、それが発信源らしい。
――それは、ドロドロに溶けた、小動物のようだった。
●
待機組が犬を討伐し終わった頃、山へ向かった三人が戻ってきた。ロクスは手に、汚染のサンプルを収めた瓶を抱えている。これがあれば、調査もより進むことだろう。
残った死骸はその場で、これ以上腐る事のないように火葬を行うことにした。もちろん、無事だった村人の許可を得てだ。
そして暗くなるまで、穴を掘り、遺灰を埋める。
――例え死が冒涜されようとも、せめてその先は、安らかでありますようにと願いを込めて。
小さな木造の家が散見する、のどかな田園風景。しかし、今やそこは異様な雰囲気に包まれていた。
まず感じるのは、異様な臭気。それから低く、腹の底をかき回されるような不快感を催す唸り声だ。それらは村を包み込み、怖気の走る空間を作り出している。大気が透明で、まともに先が見通せることが不思議に思えるほどだ。
「うぇっ……やっぱ臭えなぁ……」
長大な弓に矢を番え、ゾンビの姿を探しながらルリ・エンフィールド(ka1680)は思わず口走った。
「本当に酷い匂いだ……この臭いを発しているのが人間だった物かと考えるとゾッとするね、全く」
即座に同意するクラウス・エンディミオン(ka0680)は、改めて顔の下半分を覆うマスクをグイと引き上げる。
一行は、ゾンビの臭気への対策として、リアルブルー製のマスクを入手していた。近頃頻発するゾンビ被害を商機と見た商人が、かの船から仕入れたものだ。ロクス・カーディナー(ka0162)がそれを見つけ、全員が倣うことで悪臭による行動の阻害を防いでいた。
「ちっ、マスクしてもこの臭いかよ」
それでも臭いを完全に防ぐことができるわけではなく、ロクスは眉根を寄せる。
村との距離がまだ幾ばくかあるにも関わらず、これだけの臭いが立ち込めている。単に物が腐ったというだけでは、ここまでのことにはならないだろう。今こうして山から吹き下ろされる強い風に乗ったとしてもだ。
近づくに連れ、徐々に、村の状況が明らかになってくる。
村の土台となる大地は褐色で、枯れたような色褪せた下草が転々と生えているだけの、肥沃とは程遠い土地だった。しかし、その褐色に、明らかに違う色が混じっていた。
……酸化し、変色した血液だ。それが、地面の色を濃く変えていた。一箇所や二箇所ではない。至る所に、何かの血液が染み込んでいる。
木造の家屋の壁には、鋭利なもので斬り裂かれた痕さえ見える。
敵は随分と、派手に暴れたらしい。ハンター達は改めて身構える。
「ん、何かいるな」
神凪 宗(ka0499)が指をさす。宗の鋭敏な視覚は、とみに異様を捉えた。建物の影に隠れるように、何かが揺らめいている。
「あれが、ゾンビでしょうか」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)がロッドを握りしめる。
ハンター達は歩みを止め、それぞれに手近な建物に身を隠した。
そんな中、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は、村の高所に目を向けていた。もしかしたら、この件には黒幕が存在するのかもしれない。ならば、この騒動を観察するに易い場所を陣取っている可能性がある。
そう思って一通り見渡すが、結局、それらしきものは見当たらなかった。
「……非才な私には無理な話、ですね」
苦笑と共に呟き、レイは視線を落とした。
村に近づけば、その異常は明らかだった。村の中を、ゾンビが闊歩している。ゆらゆらと体を揺らし、尾を引く唸り声を垂れ流し、何かを探すようにズルズルと足を引きずりながら。
「……人型は、十体くれェか。情報通り、板くっつけた輩も居やがるな」
「まだ気づかれてねえみたいだし、不意打ちは簡単そうだな」
弓を装備したロクスとルリが、気付かれないように狙いを定める。狙うのは、改造されたゾンビだ。
「僕も行きます」
同時にユキヤも、ロッドを構えマテリアルを集中する。
「これは酷いな……精霊もさぞかし嘆いていることだろう」
「俺は奴らの背後に回る」
「では、私はせいぜい彼らの気を引くとしましょう」
近接を担う三人も、それぞれに武器を構えた。
「行くぞ!」
号令とともに、弓を持った二人とユキヤが建物の影から身を躍らせる。瞬時に弓を引き、番えた矢の羽から箆、鏃へと視線を移し、その直線上にゾンビの頭を据える。そうして手を離せば、腐った空気を切り裂いて矢が走った。
トン、と小さな音がして、ほぼ同時に二本の矢が改造されたゾンビの頭に突き立つ。
「ホーリーライト!」
追って、光の球が軌跡を描いてゾンビへと叩きつけられた。途端に光球は膨張し、爆風を伴って炸裂する。
衝撃を受け、ゾンビの体がぐらりと大きく揺れる。……だが、倒れない。貼り付けられた鋼板を歪ませながら、傾いだ首を不自然に回し、ぐるりと濁った瞳がこちらを向いた。
――唸り声が、こだまする。
改造ゾンビの咆哮を皮切りに、辺りのゾンビが一斉にこちらを向いた。生に飢えるゾンビが、活力に満ちた魂を見つける。
だが、ゾンビ達が殺到するよりも早く、宗は刀を構え駆け出していた。その脚にマテリアルを込め、跳ねるように地面を蹴り飛ばして一息に改造ゾンビの側面へと回りこむ。
次いで、レイが改造ゾンビの正面へと飛び出す。精霊への祈りを込め、内に眠る闘争心に火を付けて、勢いのままに剣を振り下ろす。刃はゾンビの首筋へと吸い込まれ――ガツンと、鎖骨に食い込んだところで強烈な手応えと共に止まった。
「これは……!」
レイは咄嗟に剣を引いた。しかし、ゾンビの動きは想像以上に早い。既にゾンビは腕を振り上げ、手首から先に埋め込まれた長剣でレイを捉えようとしていた。
「させるか!」
ゾンビが腕を振り下ろす寸前、背後にまで回っていた宗が刀を抜いた。白刃が煌めく。狙いすまされた一撃は過たず、横一文字にゾンビの首を襲った。
柔らかい物に刃が食い込んでいく感触。しかしそれは、一瞬で同じく強烈な手応えに取って代わる。手首に衝撃を受が走り、刀が止まる。
「こいつ、骨が……!」
明らかに、カルシウムの塊程度の硬度ではない。縫い付けられた鋼板然り、手首の剣然り、骨格すら強化されているのかもしれない。
だが、それに気づいたところでゾンビの動きは止まらない。頸動脈を斬られてなお、死者は死なない。
レイは必死に、盾を、振り下ろされる剣に合わせる。
「ぐぅっ……!」
肩口に刃が入った所で、盾が長剣を弾き飛ばした。血飛沫が頬に斑を作る。
「やってくれる!」
リボルビングソーに火を入れたクラウスが、間に体を滑り込ませ、ゾンビの腹部へと攻撃を叩き込む。マテリアルを吸い、音を立てて回転する丸鋸は、鋼板の隙間を縫って腐肉を掻き分け深々と突き刺さり、そのまま大きくゾンビの腹を抉り取った。
グズグズに腐れた肉片が飛び散る。
大きく体積を減らしたゾンビは、ゆらゆらと千鳥足にクラウスへと向かうと長剣をゆっくりと振り上げ――その重さに耐えられなくなったように、音を立てて後ろへと倒れた。
「レイさん、大丈夫ですかっ?」
ユキヤが、肩から血を流すレイへと駆け寄り、ヒールをかける。
「しっかし、しぶてェやつだったな」
「全員で攻撃してこれですからね……」
憎らしげに倒れたゾンビを睨みつけ、ロクスは吐き捨てる。レイはユキヤに礼を言い、傷の塞がった肩を撫でながらため息を付いた。
「だが、ネタは割れた。骨も鋼板もない場所を狙って叩けばいい」
「全く醜いな……だが、私と化け物同士、お似合いだ」
「こうなりゃ、ドワーフの腕力を見せつけてやるしかねえな! ……くっせえから、近づきたくないけど」
当然ながら、これで終わりというわけではない。気づけば、ハンター達の周りにゾンビが集まりつつあった。人型のゾンビに、牛と鶏のゾンビの連合軍だ。
「では、続きと行きましょうか。――さあ、あなた達の相手は私です!」
一歩前に出て、レイが盾と剣を打ち合わせる。大きな音が鳴り響き、知能のない有象無象のゾンビ達は、まんまとレイへ視線を向けた。
●
持ち込んでいた魔導短伝話は、辺りに満ちた負のマテリアルの影響か、まともに機能してくれなかった。そのため一行は、ある程度固まって村の中を探索することにした。
適宜レイは敵の目を集めるように音を鳴らし、ゾンビの気が逸れた瞬間を見計らって、まずはロクスとルリが矢を撃ち込み、ユキヤの魔法も合わせて着実に敵を減らしていく。それで倒れなかったゾンビは、宗とクラウス、レイの近接攻撃によって確実に仕留めていった。
ただのゾンビは、それほど脅威ではない。
痛覚がないのか恐怖しないのか、それとも本能という物が存在しないのか、ゾンビはあまり回避行動を取ろうとしなかった。
こちらが弓を構えている姿が視界に入ろうが、剣を振り上げようが、それに対して何かのアクションを起こすことは少ない。撃破は容易だった。
ただし、普通のゾンビは、という前提が入る。
「ぬあー!」
ゾンビを探して村の中を探索中、ルリは背後からの奇襲を受けた。
改造ゾンビは、鋼板によって筋肉の動きや関節の可動域が制限されている。だが、それに関わらず動きは素早い。奇妙な体勢で無理に体を動かして、思わぬところから奇襲を仕掛ける。
幸いにも、ルリは音によってその奇襲を寸での所で察知した。体を捻り、弓で攻撃を受け止める。同時に弓を捨て、衝撃を逃がしながら長剣を引き抜いた。
「いってえ……なっ!」
返す刀で、ルリは渾身の一撃を大上段から振り下ろす。狙いは適当。当たればいいやの精神で繰り出された袈裟斬りは、ゾンビの肩に突き刺さる。
「おらあっ!」
気合一閃。阻む金属諸共引き千切る。
ゾンビが不快な叫びを上げ、
「ふっ……!」
駆け付けた宗の刀の切っ先が狙い澄まして喉を割り、声はひゅうと、ただの腐臭を伴う風に変わる。
ただし、例え首の骨一本で頭が繋がっていても、このゾンビを完全に殺すことはできない。
「ほらよ!」
ロクスの放った矢が、落ち窪んだゾンビの眼窩に突き刺さる。
衝撃を受け、支えを失い、ゾンビの頭は切創を広げながら後ろへゆっくりと倒れ――
「とどめだ」
そこに上から、クラウスが思い切りリボルビングソーを振り下ろす。
祖霊の力を込めた一撃は過たず首の骨を捉え、ゾンビの体ごと地面に叩きつけた。
火花を散らして金属同士が高速でぶつかり合い、甲高く耳朶を蝕むような音が響き渡る。
数瞬の後――ガチンと一際大きな音を残して、ゾンビの首は丸鋸に弾き飛ばされて虚しく転がった。ビクリと震え、体も大人しくなる。そして、黒い靄のようにその輪郭は崩れ、改造に使われた金属片を残し風に流れて消えていった。
●
最後の改造ゾンビが、空気に溶けて消えていく。一行は肩で息をしながら、それを見送った。ガランと、ゾンビを構成していた金属が転がる。
倒し方さえ分かれば、あとは流れ作業に近かった。遠近とバランスの取れた編成も、功を奏したかもしれない。全員が疲弊していたが、被害は軽微と言えるだろう。
「やっと終わったか。ったく、胸クソ悪ィ仕事だぜ」
ロクスはしゃがみ込み、金属片を手に取ると苦々しく呟いた。ついでにいくつかの鋼板、骨格代わりの鉄パイプ、長剣と、改造ゾンビの存在していた証を回収する。
「皆さん、ヒールをかけますね」
ユキヤは全員に、ヒールを掛けて回る。淡い光に包まれて、各人が同じようにほっと胸をなでおろした。
「うげー、服に臭いが染み付いちまったぜ……」
「この空気の中に、これだけ長くいたからな……」
服の袖を渋い顔でくんくんと嗅ぐルリの横で、宗も同じく顔をしかめている。
「だが、だいぶ臭いも落ち着いた気がするな……鼻がおかしくなっただけかもしれないが」
クラウスは、不安げに鼻を押さえた。
「あとは、山の調査ですか」
服についた汚れを払いながら、レイは視線を件の山へと向ける。そこにあるのは、報告の通りの情景だ。山の麓から一直線に、中腹まで伸びる赤茶けた木々の象る道。
六人は、念の為に村に待機する三人と、山の探索を行う三人に分かれることにした。
●
生き残り、村に留まった家畜は殆どいなかった。ほぼ全ての牧舎は破壊され、例え生き残っていたとしても、すでに逃げ出してしまっているだろう。
村に残った宗、クラウス、レイは、一通り村を回って確認したが、見つけることができた無事な家畜は二羽の鶏と、一頭の子牛だけだった。
しかし、その確認の途中、一つ気づいたことがあった。
ゾンビに襲われ倒れた村人や家畜の死骸。その体に、複数の、鋭利な牙による噛み傷が付いていることが分かったのだ。
しかし、そんなことをするゾンビをここまで見ていない。
もし、そうした牙を持つゾンビが村を襲っていたとしたら、牧舎から逃げた家畜を、彼らはどうするのだろうか。
――唸り声が聞こえた。
三人は、咄嗟に身構える。声の先には、目の濁った犬が数匹、こちらへと向かってきていた。
「逃げた家畜を追っていたのが、戻ってきたのか」
宗が再び、刀を抜き放つ。
「……本当に、難儀でいらっしゃいますね。黒幕がいるとしたら、なんと罪深きことか」
憂いを秘めた表情で、レイも剣と盾を構える。
「……ふん、丁度いい。暇を持て余していたところだ」
クラウスは、犬達の目を引くべく、リボルビングソーのエンジンの出力を上げていく。回転する刃が一層速度を増し、腕に伝わる振動が如実に強くなっていく。同時に、ギャリギャリと金属の擦れる音もまた強くなる。
犬達の変色し毛の抜け落ちた耳が、その騒音にピクリと揺れる。耳の良い犬にしてみれば、相当に、耳障りなことだろう。
●
慎重に、辺りの様子を伺いながらロクス、ユキヤ、ルリの三人は山を登る。
「……こりゃひっでェな」
ロクスが近くの木に手を当てれば、触れた場所からボロボロと崩れ落ちていく。山の一部が、まるごと腐り初めているようだった。
「なんか、やな音も聞こえねえ?」
「鳴き声、ですかね?」
山に踏み入った時から、妙な音も聞こえていた。死にかけの動物が鳴いているような、細くか弱く、心を不安定にさせる音。
三人は最大限の警戒を払い、一歩を踏み出していく。
目的地へは、さほど時間はかからない。
「おい、なんだこりゃ」
木々をへし折り、地面を割り、無理やりそこに押し込んだように、山の中腹でその鈍色は輝いていた。
「箱……?」
扉のついた、巨大な立方体。
むせ返るような悪臭は、箱の中にこびり付いた、よく分からない赤い何かから発せられているようだった。
「何か、いますよ……?」
ユキヤが、箱の中を指さした。こびり付いた赤色の中心に、何かがいる。ずっと聞こえていた声も、それが発信源らしい。
――それは、ドロドロに溶けた、小動物のようだった。
●
待機組が犬を討伐し終わった頃、山へ向かった三人が戻ってきた。ロクスは手に、汚染のサンプルを収めた瓶を抱えている。これがあれば、調査もより進むことだろう。
残った死骸はその場で、これ以上腐る事のないように火葬を行うことにした。もちろん、無事だった村人の許可を得てだ。
そして暗くなるまで、穴を掘り、遺灰を埋める。
――例え死が冒涜されようとも、せめてその先は、安らかでありますようにと願いを込めて。
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仮プレイング張り付け処 ロクス・カーディナー(ka0162) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/09/14 09:40:05 |
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依頼相談スレッド ロクス・カーディナー(ka0162) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/09/14 10:53:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/09 22:39:34 |