【MN】不思議の国のハンター

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2016/08/16 12:00
完成日
2016/08/21 19:15

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 夢への扉はそこにある。
 え、マジっすか!?
 ――賢者と愚者の対話

●たぶん現実
 大江 紅葉(kz0163)はグラズヘイム王国からの手紙を見て溜息を洩らした。
「あの子にとって記憶がつながったことは良いのか悪いのかわからないですね」
 妹若葉の死に絡み情報を積み重ね、怒りのこぶしも怒声も相手に届かないとわかった。事件の背景には糸を引く災厄の十三魔レチタティーヴォがいたと想像はついたが、本人が語ったわけでも手を下しているわけでもない。その配下のプエル(kz0127)とエクエスが紅葉の周囲にいたに過ぎない。
「……はあ」
 木陰は涼しい。
「洋服っていう物を試してみるべきでしょうか」
 生地が薄いとか生腕が出るとか試す勇気がない。
「……ん?」
 草むらを高さ50センチくらいの何かが歩いてくる。頭、胴、足と見事に3頭身の赤い髪の人間の男の人形。毛糸の髪、藍色のボタンの目、おしゃれなスーツにコートなど手の込んだ服装、帽子もついている。
「んーーー!」
 見覚えがある人形な上、それは軽快に歩いている。風呂敷包に棒をさし、肩に棒を乗せ。
 それは紅葉の前までやってきて手を敬礼のようにピッと上げて挨拶した。
『どうも、ごきげんよう』
 刺繍糸で描かれたらしい口は開かない。
「ど、どうも」
『ところで、私は謎の草を咥えたいと思うんだが、この辺で見なかったかね?』
「……な、謎の草?」
『そう、謎の草。無頼者がこう口に咥える、わらのようにまっすぐだが、先には双葉のついた草だ』
「……そんな草があるんですか?」
『あるはずなのだ! それを私は咥える! それでこそ、この旅のスタイルは完成するのだ!』
「……はあ」
『仕方がない……ここにはないのだな。また会おう、知追う者、アディオス!』
「……はあ……」
 その背中を見送り、しばらくして気づいた。
「私の2つ名知っているし! その上、普通に立ち去っているんですけど! いや、あれ、プエル君が持っていたレチタさん人形です!」
 紅葉は大急ぎで追いかける。
「それに、口開かないのにどうやって咥えるんですか!」
 思わず叫んだ。
『な、なんだってぇえええ。た、確かに私の口は開かない! う、ううう、その前に歪虚にならないとならないのかっ!』
 草むらから返答があった。
 紅葉から逃げるようにそれは走り出す。
「ちょ、動く人形って時点で歪虚じゃないんですか!」
 紅葉が思わず叫び返した。
 護衛で一緒にいたハンターは紅葉の異変に気づき追いかける。
 紅葉は人形を見つけた。それは、木の根にある穴に飛び込んだ。
『あああーーーーーー』
「待って、って、自分で飛び込んだのに悲鳴!?」
 近寄って紅葉は覗き込む。暗い穴は深そうだ。
 黒い手が伸びて紅葉を引きずり込む。ハンターは慌てて引っ張るが――。
「きゃああああああああああああああ」
 悲鳴が響き渡る結果となった。

●お茶会
 そこは変な世界だった。薄暗い世界の中、ポツリポツリと明かりがある。幻想的で美しいのだが、どこかまがまがしい。
 森の中のように緑が多いが、それは木ではなく草に見える。その草は自分より大きい。
 ひとまず進むことにした。

 ケシャシャシャシャ……。

 何か奇妙な笑い声が響いた。紅葉とハンターは身構える。声は遠くに行ったらしく静かになった。
 一行は再び歩みを進め、門の前に来た。
 紅葉がノックする。
「はいはい、どなたさまですか? おい、エクエス開けろよ!」
「なんですか! その最初の可愛らしい声と後の悪がきな声! いたっ」
「うるさーい」
 中の騒動が聞こえる。
 プエル? エクエス?
「先日、プエル君は逃げたですが、エクエスは倒しましたよね?」
 紅葉はハンターに確認する。うなずくハンターもいるが「そもそも、ここどこ」としごく当然な返答がついた。
 扉が開いた。
「お茶会にようこそ」
「……」
「わたくしの顔に何か?」
 倒したエクエスには違いないが、服装は貴族の物でも奇抜な部類に入る。頭にはなぜか紅茶のカップがひっくり返って乗っている。
 中は芝生がきれいな庭であり、真ん中には大きな長方形のテーブルがある。その上にはたくさんのお菓子や果物、ティーセットが並んでいる。
 正面には、シルクハットをかぶり、かわいらしくアレンジされた燕尾服のようなものを着たプエルがいた。手前の椅子には箱が乗り、レチタティーヴォ人形が座っている。
「み、見つけました!」
 紅葉は声をかける。
「何を見つけたの? あ、これはレチタティーヴォ様人形(普通版)だよ」
「なんですかその『普通版』って」
「あとね『粗悪品』もあるんだ」
「……え?」
「うーんと、特別仕様版は前壊れちゃったからもうないんだ。普通版は普通に人形なの。粗悪品は本当ひどくて、服も着かえさせられないし、腕がもげるんだ!」
 プエルはどこからか取り出したレチタティーヴォ人形の腕をもって振り回す……しばらくすると、左腕をプエルの手に残してそれ以外は芝生の上へ。
「テーブルのこれはずっとここにいるんですか?」
「いるよ? 僕たちと一緒のお茶をずっとしている」
 プエルは茶を淹れ始める。ふわっと心を温めるような香りが漂う。
「ね、ここで一緒にお茶をしようよ?」
「えと、元に戻りたいんですけど」
「……じゃ、シャチ猫を倒して聞けばいい」
「シャチネコ?」
「うん。この先にいる……この辺りを荒らす悪いやつなんだ。でも賢いんだよ」
「さ、お茶をしよう?」
 ハンターと紅葉はここでプエルたちとお茶をしてもいいし、シャチ猫を倒しに行ってもいい――。

●死闘
『うっ、わ、私は謎の草を咥えることはできないのか! あああああ』
 レチタティーヴォ人形はシャチ猫に振り回されて投げ飛ばされる。
「ケケケケケ」
『む、無念。これだったら、プエルの枕をひっくり返しておくべきだった』
 レチタティーヴォ人形は倒れた、走馬灯のようにこれまでの人形生が脳裏をかすめるが、とどめは来ない。
 シャチ猫はその荷物を拾い上げたのだった。

リプレイ本文

●ちょ
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は見知った歪虚の様子や場所から頭痛を覚えた。
「リアルブルーだとお盆の時期だから帰ってきたとか……」
 レイオスはこう考えてみた。護衛対象の大江 紅葉がお茶会にもシャチ猫にも興味を示している問題もあり、元に戻る道を捜しつつ冷静に対処しようと決意が固まる。
「お茶のいい香りがします。お茶会は素敵ですね」
 ミオレスカ(ka3496)は周囲を見渡す。プエルが振り回して、手がもげた人形を直してあげるべきかと考える。
「お茶会も心惹かれるけど、元の世界に戻るためには……ところでプエ……」
「話して動くレチタン人形を探しているんでぅ。スタイリッシュに木の枝をぶっ刺されたいとか言っていた人形、見かけたり噂を聞いたりとかしたことないですぅ?」
 ザレム・アズール(ka0878)が切り出そうとした話題を星野 ハナ(ka5852)が鋭い突きのように重ねた。
「星野さん! なんか怖いことになってます!」
 紅葉が首を横に振る。
「あれえ?」
 ハナは可愛らしく首を傾げたが、その視線の先にいるプエルは笑顔のまま凍っていた。
「エクエス、あのお姉さん怖い人?」
「愛するべきお嬢さんだと思いますが」
「でも、ぶっ刺すとか言ってるよ」
 ぼそぼそとプエルはエクエスが話す。
「私は紅葉さんの護衛ですし、ここに残るというなら残ります。ああ、ええ、お茶が好きとか、好奇心があってとかそういうわけではないですよ?」
 央崎 遥華(ka5644)はきりっとした表情で言いつつも、本音と建前が同時に出ている。他にも本音はあるのだが、それは無意識に隠した。
「戻れるようにしておくために俺はシャチ猫を探しに行ってきた方がいいですね。紅葉さんにつく方もいるみたいですし」
 鳳城 錬介(ka6053)は現実を考えると必要な部分を提案した。
「まず、ここにあのぶっ刺されたがっているレチタン人形がいないか確認ですぅ!」
 ハナの提案で確認後、別れての行動開始となる。
 なお、レチタティーヴォ人形(以下レチ人形と略す)はいるにはいたが、手足がもげている粗悪品か通常版だけのようだった。

●まず
 シャチ猫を捜しに出たのはザレム、ミオレスカ、ハナと錬介だった。
「谷はあれでしょうか」
 手になじんでいる武器を握りミオレスカは呟く。手の中のものは現実であると告げるが、不思議な景色は夢だと思える。
「まず様子をうかがって、できれば罠を張ったほうがいいかもしれないからな」
 ザレムが狩猟の手順をきちんと踏みつつ捜索やおびき出しを考える。餌としてプエルからいくつか食料をもらっている。
「シャチ猫がきちんと教えてくれれば良いのですけど」
「交渉次第でしょうか」
「……答えてくれない気はします……謎かけのように」
 錬介の答えを聞いてミオレスカはうなずいた。
「シャチと猫ぉ……フカヒレに可愛い猫の手足と耳ぃ! 何もかも許しがたさMAXですぅ! 倒してがっつりとフカヒレ料理にしてあげます」
 形状を教わってハナの怒りに触れたらしかった。
「フカヒレ?」
「簡単に作れない気がします」
「あ、そうですね」
 錬介とミオレスカが作り方をあれこれ言う。
「その前にフカヒレってサメのヒレだよな……」
「細かいことはいらないのですぅ! 立派なヒレがあれば作ることはできる、ということを試してみたいのです」
 ザレムの指摘はハナに一蹴されたが、チャレンジすることは素晴らしいことであると納得した。
 さて、そうこうするうちにたどり着く。
 シャチ猫は何かと格闘している。
「……じゃ、こっそりと……」
「行きますよぉ! 先制と怒りの【五色光符陣】ですぅ! これで倒れなくても、後13発行けますぅ」
 ザレムが進もうとした前をハナが放った符が乱れ散る。
「……えと、あっ、ザレムさん、あれ」
 ミオレスカは銃を構えるか悩んでいたとき、結界の隅っこで弾ける人形を発見したのだった。プエルが持っているレチ人形に形状は似ていた。
「だめですよ! 話をしないといけないんです!」
 錬介が自分に防御魔法をかけて割って入る。
「そこをどくのですぅ!」
「まずは話し合いを!」
 睨みあるハナと錬介。
 困惑するシャチ猫。
 この間に動き回る人形捜索隊。ボロボロに……なっていないが倒れているレチ人形を発見する。
「紅葉の前に現れたレチタ人形?」
「謎の草、見つかりましたか?」
 ザレムとミオレスカが声を掛ける。
『私のことを心配してくれるのか』
 むくりを起き上がり、ミオレスカを見る。ボタンの目であるが、うるんでいるのかもしれない。
『ここで終わりかと思ったのだ!』
 ミオレスカに引っ付こうとしたところ、ザレムが横からひょいと持ち上げた。
「……重さは人形だ」
「みなさん、一つ解決しましたよ」
 ミオレスカが見ると、ハナと錬介で対峙しているままだ。唯一変わったのはシャチ猫の大きさが縮んだことだろう、理由は不明だが。
「猫さん、私たちが戻る方法ってありますか?」
 ミオレスカが真っすぐ問いかける。
「ケシャ? ケケ」
「……笑っていないで答えてください」
「ケシャシャ……」
「……それがしゃべり声でもあるんですね」
 シャチ猫はうなずいた。
 その近くでレチ人形を逃がさないように抱えたザレムがやってきた。
『お、おおっ! 私の荷物があったぞ』
 ザレムの腕をポンポンたたきながら、レチ人形は拾うように指示を出す。バンダナのような布と棒、かじられたツナ缶。シャチ猫の視線がツナ缶に注がれている。
「ツナ缶……?」
『そうだ! プエルのところから餞別にもらったのだ。バンダナも。あとは謎の草だ!』
 ザレムはうなずきながら、周囲を見る。謎の草として想定しているのは枝の左右に偶数で生えるタイプの植物。しかし、それらは見つからず、地面からすっくと生える40センチくらいの棒、先には双葉がある草を発見した。
 ザレムの目は点となった。
『お、おおおおおおおお』
 感極まって震えるレチ人形が採るように指示を出す。喜んでいるならそれでいいと、謎の草をつむザレム。
「良かったですね。さ、プエルのところで紅葉さんも待っていますし、戻りましょう」
 ミオレスカはシャチ猫の対応はひとまず棚上げにした。
『だ、駄目だ、私は! プエルのところには行けない』
「なぜなのですぅ? そこに行けば枝をぶっ刺せるかもしれないですよ」
 ハナはフカヒレはあきらめ、レチ人形を見た。
『ど、どうしてもプエルがいると……動いてはいけない気がするのだ』
 ハンターは「問題なし」と片づけてひとまず戻ることとした。

●モフッ
 遥華は椅子に座って周囲を見渡す。隣の紅葉は皿を見たり、ひっくり返したりして状況を確認しているようだ。お菓子を手にして「おいしいです」と普通の反応。
 紅葉が食べるならとレイオスはあれこれ食べてみている。普通だし、美味しいし。
 テーブルにある菓子や軽食は、減ったように見えない。誰が作っているのか、運ぶのか疑問だ。気づけば減った分増えているのだ。
 茶に関してはプエルやエクエスが淹れている。湯や茶葉はどこから出てくるのかわからない。
「これは本格的です」
 遥華がティーカップを手に至福の表情を浮かべる。プエルが胸を張っているのが平和だ。
「で、何時からお茶しているんだ? マット・ティーパーティーだよな……この中にモフリとかいたりし……」
 プエルが一時期連れていたペットの妖怪の名前をあげつつ、レイオスは近くの大き目のティーポットの蓋を持ち上げ、すぐに閉めた。
「きゅ」
 白い毛玉がそこでくつろいでおり、振り返って鳴いたのだった。
「いつから? さあ? こちらにもお湯淹れますね」
「あああっ!」
 エクエスがお湯を注いだのをレイオスが止めようとしたが手遅れだった。悲鳴は聞こえないが、中を見るのは恐ろしい。それでも時間が来たら茶こしをカップにつけて茶を注ぐ。
 液体ではなく白いモフモフしたのが落ちてくる。
「増えてる!」
「なんですかそれは……綿毛ですか?」
 遥華が覗き込む。白い綿毛のようなものが動き回っている。
「いや……妖怪だと思うんだが……ティーポットの中に1匹いて、お湯を注いで出すとこうなった」
 レイオスは蓋を開けてみたが、中は空だ。
「……あ、ちょっと大きくなりましたね」
 遥華が指摘した。
「きゅーー」
「もふりー」
 それらは鳴き声がいくつかあるようだ。甲高い声で鳴きながら、おやつを食べたり、カップに頭を突っ込んだりしている。
「わあああ、可愛い」
 プエルは手のひらサイズのモコモコ生き物をつまんで頭に載せたり遊んでいる。
「お湯で増えるのですか……カップ麺……深夜12時以降に水をやってはいけない生き物ありましたね!」
「あー、ホラー映画だよな。でもこれも妖怪だし」
「ホラー映画って何ですか?」
 紅葉が芋を甘辛く煮たものを手に尋ねてきたのだった。

●クテリ
「きっと喜んでくれますよ」
 ミオレスカに言われたレチ人形であるが、扉をくぐった瞬間、動きが止まった。
「え? ……ただの人形に?」
 驚いて持っていたザレムが思わずレチ人形を振る。
 ザレムと目があったプエルは「お茶を用意するね」と言う。
「まさかっ! ここに入ると動く人形が動かない人形になってしまうのでしょうか?」
「錬介さん、落ち着いてください。普通、人形は動かないですから。動くほうが変わっているんです」
 ミオレスカが慌てる錬介に声を掛ける。
「フカヒレにされなかったシャチ猫、賢いならなぜかわかるのですぅう?」
 ハナに話を振られたシャチ猫が首を横に振った。
「せっかく、謎の草も見つかったのに」
「え、あったんですか?」
 紅葉がすごい勢いでザレムの前にやってきた。
「なら、つけてあげれば元気が出るかもしれませんよ? プエル君ごはんとかある?」
 遥華もわくわくして尋ねる。
「おにぎりならあるよ?」
 プエルがテーブルの上を指さした。
 ザレムの手の中にいる人形はぐったりしている。試しに、プエルに見えるように掲げてみた。
「わ、レチ様人形だ! こ、これは」
 素早く近寄ったプエルは受け取って、人形の服を引っ張ったり帽子をひっぱたり調査を開始した。
『脱がさないで』
「……しゃ、しゃべった!?」
 プエルが目を丸くした。
「これは何版でしょうか」
 ご飯粒を手に遥華は人形を見る。
『よくぞ聞いてくれた! 私はプロトタイプである!』
「わーい、動いている動いている」
『ちょ、人の話は最後まで聞きたまえ』
 プエルは放り投げて受け止め遊び始めた。
「嬉しそうですし、ちゃんと話ができています」
 ミオレスカがしみじみ言う。
「あ、これが謎の草。絵にかいたような草ですね」
 紅葉は意外と丈夫な草に驚く。
「さ、お人形さん! 試してみませんか、つくかどうか」
 遥華が笑顔で人形をプエルが投げた空中からとった。
『おおう!』
「まず、ご飯粒を口につけます、そして……」
『もしゃ、ごくん』
「……え?」
 口は開いた感じはしないが、口についたご飯粒を人形は食べた。
「まどろっこしいことはしないでいいのですぅ! こうすればいいんですよぉ……うりゃっ」
『うぎゃああああああ』
 ハナが人形と草を手にし、人形の口に突き刺した。布の間隙を縫った一撃は、口を突き破り、綿をかき分け、かすかに毛糸の髪の隙間から見える。
 断末魔を放った後、人形はぐったりした。
 ……。
 沈黙。
「うわあああああああああん」
 プエルは泣いて人形をゆすぶる。
「い、急いで修復しましょう」
「いや、このまま、この隙間を利用して、口を作ればいいんだ」
 ミオレスカとザレムが裁縫道具を手にどうにかしようとする。人形自体は1つなので、作業をするのは1人である。
「プエル君、ハンターの方に任せておけば、きっと大丈夫だから」
「う、うん」
 紅葉はプエルをなだめた。
「ヒールで人形は直せませんよね」
「ケシャシャ」
 錬介はシャチネコが前足をかけて止める。
「……突然なんで……そういえば、ここに来る前に黒い手がって、おい、お前は大笑いなのかっ!」
 レイオスは近くにいるエクエスに問いかけたが、隅っこで笑い転げているのを発見してしまった。
「手? 知りませんよぉ、寂しいから呼ぶんです? それよりこの喜劇面白いですよ! うがっ」
 チビモフリたちがエクエスによじ登り始めた。
「はあ」
 レイオスは溜息を洩らし、変なことが起こらないか見守ることとした。
「で、できました」
「ミオさん、これで……あれ?」
 ミオレスカとザレムは布がないために口はあきらめ、草を挟み込み縫い合わせたのだった。それが手っ取り早く、痛みがあるなら痛みを長引かせない方法だ。
「……草が飛び出してきていますし、じわじわとふさがってませんか穴」
 遥華が実況した。口から草が転げ、傷はふさがった。
「レチ様?」
『なんだね、プエル』
「ふえええ」
『やめて、帽子、帽子は食べないでぇえ』
 プエルがレチ人形を抱きしめたはいいが、帽子が口に入っている。
『以前から思ったのだが、どうして私の帽子をかじるのかね』
「たまたまそこに帽子があるから」
「げっ歯類ですか」
 紅葉が思わず突っ込む。
「ところで、なんでれちたんがここにいるんですか? どうです、お茶でもしながらゆっくり話しましょう」
 ミオレスカが問いかける。それが食べるか飲むかわからないが、ご飯粒は消滅しているため飲食は可能なのだろう。
『むしろ、それがいなくなったから私は自由になったのだ!』
「レチタティーヴォ様ぁあああ」
『は、放し給え! 頬ずりを高速でしないでぇええ』
 プエルはおとなしく頬ずりはやめた。
『はあはあ……そうだ、プエル、私にツナ缶をくれないか』
「はい、どうぞ」
 どんとツナ缶を10個置いた。
『こ、これで荷物が作れる』
 レチ人形はいそいそと布に包んだ。
「シャチ猫が食べたいそうです、もらってもいいでしょうか」
 錬介がおずおずと尋ねる。
「え? こいつの話していることがわかるの?」
「わかるというか、たぶんそうだろうってわかりますよ」
 錬介にツナ缶を開けてもらって中をシャチ猫は食べる。
「あー、フカヒレ食べたかったですぅ!」
 ハナの視線を感じて、シャチ猫が牙をむく。
『お嬢さん、お茶をありがとう』
 ミオレスカが淹れた紅茶を普通に受け取り、普通に飲み始める。
『お礼に身の上をお話ししよう……それは まだ何に将来なるかわからない布とボタンと糸と綿だったころだったころだ』
「待ってくれ、そこにさかのぼるのか? どこに記憶があって、お前は綿なのか布なのか」
 ザレムが食いついてしまった。
「話が長い前触れれのような気がしたが……」
 レイオスは恐る恐る他の者を見ると新しくお茶を淹れ始めたり、皿におやつを載せたり話を聞く気がないのがわかってしまった。

 目を覚ました時、ハンターたちは謎の疲労に悩まされるのだった。

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  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカーka1990
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナka5852

重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/08/13 13:47:17
アイコン 不思議の国の相談卓
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/08/16 12:40:28