ゲスト
(ka0000)
【選挙】パレード・オブ・選挙に行こう!
マスター:旅硝子

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/13 19:00
- 完成日
- 2014/09/20 19:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ハンター達によって新たなレッスン方法や、心の持ちようを教えてもらったグリューエリン・ヴァルファー(kz0050) は、充実した練習を行っていた。
新たなレッスンを初めてまだ数日だが、慣れない筋肉を動かしたことによる筋肉痛も、徐々に減ってきている。このままいけば、筋肉痛の時は避けるようにと言われていたハードな練習も、挑戦することができるかもしれない。
他の時間も、懸命にイメージトレーニングや発声練習、そして新しく鏡を使って見え方をチェックする練習を取り入れたりと精力的に活動し、笑顔も戻ってきたグリューエリンに、彼女を温かく見守る歌舞音曲部隊の執務室の雰囲気も明るい。
――グリューエリンに出演依頼が飛び込んできたのは、そんなある日の午後の事だった。
それも、当の『依頼人』の登場によって。
「やぁ、グリューエリン。頑張っているようだね」
「ありがとう存じま……え、へい、か?」
風を通すために開いていたドアからずかずか入ってきて、グリューエリンに親しげに声をかけるのは皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル (kz0021) 。
「あ、あの陛下……選挙の準備で、忙しいのではございませんか?」
慌てて居住まいを正して尋ねるグリューエリン。立ったままニコニコしているヴィルヘルミナにどう対応したものかとおろおろする部隊員の中で、とっととお茶を入れて高めのテーブルに、さりげなく芋菓子と一緒にカップを置いたのは部隊長クレーネウスであった。
「ああ、ありがとうクレーネウス。菓子もあるとは気が利くなぁ」
そして立ったまま芋菓子を頬張り、カップを傾けるヴィルヘルミナ。
忙しさの欠片も感じさせない姿だった。皇帝としての威厳も多分ちょっと危うい。
「うん、それでな。選挙の話なんだ。グリューエリン、私を応援する気はないか?」
「はい、私はやはり、皇帝に相応しいのは陛下と思っておりますわ」
「ああ、そうだろうそうだろう。だから、私の応援者として、選挙に協力してもらいたいんだ」
そう言ってもう1つ芋菓子をぱくつくヴィルヘルミナ。ぱちぱちと瞬きを繰り返し、その意味を把握しようとするグリューエリン。
「歌や踊りも結構できるぞ。鍛えてるからな」
「ステージに立つのですか!?」
「せっかくアイドルと一緒に選挙活動するんだから、ステージもやってみたいじゃないか。あ、引き受けてくれるかな?」
芋菓子を食べきってにっこり笑うヴィルヘルミナに、覚悟を決めた様子でグリューエリンは頷く。
「……わかりましたわ。陛下のご期待に応えられるよう、全力で協力させていただきます」
笑みを深めて、ヴィルヘルミナは手を差し出す。恐縮です、と言いながらも視線を合わせて、グリューエリンはその手を取る。
「ああ、クレーネウスもそれでいいね?」
いきなり話題を振られたクレーネウスは、あっさりとそれに頷く。
「グリューエリンが大丈夫なら了解です。応援活動のプランはこちらで作った方がいいですね?」
「うん、お願いしようかな。では、私は仕事に戻ろう。これ以上執務机を離れていると、オズワルドがうるさいからね。それではグリューエリン、共演を楽しみにしているよ」
入って来た時と同じように唐突に去っていく皇帝の背をじっと見つめるグリューエリンに、クレーネウスが確かめるように声をかける。
「軍属のアイドルだから当然と言えば当然だけど、引き受けたってことは政治の世界に関わるってことだ」
「ええ、存じておりますわ」
翠の瞳は――これまでにない、光を湛えていた。
「どういう風の吹き回しだァ、皇帝陛下?」
「おや、私は最初からグリューエリンには注目していたよ」
皇帝陛下、を強調して尋ねたオズワルドに、あっさりとヴィルヘルミナは応える。機嫌がいいのかそこそこ精力的に書類仕事を片付ける姿を、疑わしげに見つめるオズワルド。
「アイドルとやら、政治に巻き込むってことだろ?」
「彼女はそれを望んでいるさ。そうでなければ、『ヴァルファー』の娘が第一師団になんか入らないよ」
「まぁ、な……面接した時に、俺もそう聞いている」
さらりと言い放ったヴィルヘルミナに対し、オズワルドは眉を寄せながらも頷く。
「グリューエリンの父……フリーセンは、まだマスケンヴァルにいるんだろうね?」
「非戦闘員らしいからなァ。まだしばらくは刑期が終わらんだろ」
そうだろうね、と頷いたヴィルヘルミナは、ふふ、と何かを思い出したように笑う。
「グリューエリンは、父親に良く似ているね」
「そうかぁ?」
「うん、何か決めた時のあの目はそっくりだ」
そうヴィルヘルミナが断言したところで、執務室の扉がノックされる。
対応に出たオズワルドは、封筒に入れた書類を手に戻ってきた。
「グリューエリンとの応援プランが出来たってよ。ほれ」
「お、早いな。ありがたい、楽しみにしていたんだ」
いそいそと封筒を開き、書類に目を通したヴィルヘルミナは――噴き出し、そのまま笑い出す。
「ははははは……これは楽しそうだ」
「……楽しそうで何よりだが、見たならちゃんと仕事しろよ……」
「やっぱりグリューエリンは私が見込んだ逸材だな、うん」
「聞いてんのか?」
ヴィルヘルミナが机の上に置いた書類には、グリューエリンが主になって考えたというプランが書かれていた。
「帝都での陛下の人気は、既にかなり高いものと思われます。
足りないのは人気よりも、『選挙』というものに対する帝国民の認識ではないでしょうか。
事実、ちゃんと教わるまで私も、国民によって政治のことを決める制度、という程度しか知りませんでした。
ですから、今回は『皇帝陛下の手によって国民に選挙というものが何なのか知らしめること』をテーマとしたいと思います。
それによって陛下が、国家の隅々に至るまでこの選挙に参加してほしいと思っていることを知らしめ、陛下の印象をさらに上げることもできれば良いのではないでしょうか。
そこで、私はこのように提案したいと思います。
帝都中を、『選挙とは何なのかわかりやすく説明する歌』を歌いながら、パレードを行うのはいかがでしょうか」
――書類は、皇帝の『受理』のサインと共に、グリューエリンの元に戻って来た。
帝国ユニオンAPVを通じて、ハンターズソサエティに歌舞音曲部隊からの依頼が貼り出される。依頼人の欄には、グリューエリンと共に、皇帝ヴィルヘルミナの名前が書かれていた。
新たなレッスンを初めてまだ数日だが、慣れない筋肉を動かしたことによる筋肉痛も、徐々に減ってきている。このままいけば、筋肉痛の時は避けるようにと言われていたハードな練習も、挑戦することができるかもしれない。
他の時間も、懸命にイメージトレーニングや発声練習、そして新しく鏡を使って見え方をチェックする練習を取り入れたりと精力的に活動し、笑顔も戻ってきたグリューエリンに、彼女を温かく見守る歌舞音曲部隊の執務室の雰囲気も明るい。
――グリューエリンに出演依頼が飛び込んできたのは、そんなある日の午後の事だった。
それも、当の『依頼人』の登場によって。
「やぁ、グリューエリン。頑張っているようだね」
「ありがとう存じま……え、へい、か?」
風を通すために開いていたドアからずかずか入ってきて、グリューエリンに親しげに声をかけるのは皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル (kz0021) 。
「あ、あの陛下……選挙の準備で、忙しいのではございませんか?」
慌てて居住まいを正して尋ねるグリューエリン。立ったままニコニコしているヴィルヘルミナにどう対応したものかとおろおろする部隊員の中で、とっととお茶を入れて高めのテーブルに、さりげなく芋菓子と一緒にカップを置いたのは部隊長クレーネウスであった。
「ああ、ありがとうクレーネウス。菓子もあるとは気が利くなぁ」
そして立ったまま芋菓子を頬張り、カップを傾けるヴィルヘルミナ。
忙しさの欠片も感じさせない姿だった。皇帝としての威厳も多分ちょっと危うい。
「うん、それでな。選挙の話なんだ。グリューエリン、私を応援する気はないか?」
「はい、私はやはり、皇帝に相応しいのは陛下と思っておりますわ」
「ああ、そうだろうそうだろう。だから、私の応援者として、選挙に協力してもらいたいんだ」
そう言ってもう1つ芋菓子をぱくつくヴィルヘルミナ。ぱちぱちと瞬きを繰り返し、その意味を把握しようとするグリューエリン。
「歌や踊りも結構できるぞ。鍛えてるからな」
「ステージに立つのですか!?」
「せっかくアイドルと一緒に選挙活動するんだから、ステージもやってみたいじゃないか。あ、引き受けてくれるかな?」
芋菓子を食べきってにっこり笑うヴィルヘルミナに、覚悟を決めた様子でグリューエリンは頷く。
「……わかりましたわ。陛下のご期待に応えられるよう、全力で協力させていただきます」
笑みを深めて、ヴィルヘルミナは手を差し出す。恐縮です、と言いながらも視線を合わせて、グリューエリンはその手を取る。
「ああ、クレーネウスもそれでいいね?」
いきなり話題を振られたクレーネウスは、あっさりとそれに頷く。
「グリューエリンが大丈夫なら了解です。応援活動のプランはこちらで作った方がいいですね?」
「うん、お願いしようかな。では、私は仕事に戻ろう。これ以上執務机を離れていると、オズワルドがうるさいからね。それではグリューエリン、共演を楽しみにしているよ」
入って来た時と同じように唐突に去っていく皇帝の背をじっと見つめるグリューエリンに、クレーネウスが確かめるように声をかける。
「軍属のアイドルだから当然と言えば当然だけど、引き受けたってことは政治の世界に関わるってことだ」
「ええ、存じておりますわ」
翠の瞳は――これまでにない、光を湛えていた。
「どういう風の吹き回しだァ、皇帝陛下?」
「おや、私は最初からグリューエリンには注目していたよ」
皇帝陛下、を強調して尋ねたオズワルドに、あっさりとヴィルヘルミナは応える。機嫌がいいのかそこそこ精力的に書類仕事を片付ける姿を、疑わしげに見つめるオズワルド。
「アイドルとやら、政治に巻き込むってことだろ?」
「彼女はそれを望んでいるさ。そうでなければ、『ヴァルファー』の娘が第一師団になんか入らないよ」
「まぁ、な……面接した時に、俺もそう聞いている」
さらりと言い放ったヴィルヘルミナに対し、オズワルドは眉を寄せながらも頷く。
「グリューエリンの父……フリーセンは、まだマスケンヴァルにいるんだろうね?」
「非戦闘員らしいからなァ。まだしばらくは刑期が終わらんだろ」
そうだろうね、と頷いたヴィルヘルミナは、ふふ、と何かを思い出したように笑う。
「グリューエリンは、父親に良く似ているね」
「そうかぁ?」
「うん、何か決めた時のあの目はそっくりだ」
そうヴィルヘルミナが断言したところで、執務室の扉がノックされる。
対応に出たオズワルドは、封筒に入れた書類を手に戻ってきた。
「グリューエリンとの応援プランが出来たってよ。ほれ」
「お、早いな。ありがたい、楽しみにしていたんだ」
いそいそと封筒を開き、書類に目を通したヴィルヘルミナは――噴き出し、そのまま笑い出す。
「ははははは……これは楽しそうだ」
「……楽しそうで何よりだが、見たならちゃんと仕事しろよ……」
「やっぱりグリューエリンは私が見込んだ逸材だな、うん」
「聞いてんのか?」
ヴィルヘルミナが机の上に置いた書類には、グリューエリンが主になって考えたというプランが書かれていた。
「帝都での陛下の人気は、既にかなり高いものと思われます。
足りないのは人気よりも、『選挙』というものに対する帝国民の認識ではないでしょうか。
事実、ちゃんと教わるまで私も、国民によって政治のことを決める制度、という程度しか知りませんでした。
ですから、今回は『皇帝陛下の手によって国民に選挙というものが何なのか知らしめること』をテーマとしたいと思います。
それによって陛下が、国家の隅々に至るまでこの選挙に参加してほしいと思っていることを知らしめ、陛下の印象をさらに上げることもできれば良いのではないでしょうか。
そこで、私はこのように提案したいと思います。
帝都中を、『選挙とは何なのかわかりやすく説明する歌』を歌いながら、パレードを行うのはいかがでしょうか」
――書類は、皇帝の『受理』のサインと共に、グリューエリンの元に戻って来た。
帝国ユニオンAPVを通じて、ハンターズソサエティに歌舞音曲部隊からの依頼が貼り出される。依頼人の欄には、グリューエリンと共に、皇帝ヴィルヘルミナの名前が書かれていた。
リプレイ本文
既に準備段階から、多数のハンターが集まっていた。
「まずは選挙の何が分からないのかハッキリさせた方がいいでしょうね」
『選挙何それ美味しいの』
エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が示した文字に、そっとこめかみを押さえる八劒 颯(ka1804)。
というわけで。
「先生、選挙ってなんなんですか?」
「なんなんですか、なの!」
マリエル(ka0116)とファリス(ka2853)が、グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)やエヴァ達と並んで尋ねるのに、榊 兵庫(ka0010)が答える。
「選挙の本質とは、自らの意志で己にとって相応しいと思う人を選ぶことにある」
一番の理念から始めて、具体的な内容にも触れながら授業を繰り広げる兵庫。
「ふむ、民衆が自分自身で法令等を決めるための制度か。なるほど、リアルブルーではこういう政治形態が主流なのだな」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)も加わって、なるほどと頷く。
「大王たるボクが統治していないのであれば、やはりこういったシステムの方が国は安定するのだろうな」
その様子を少し離れて眺めながら、ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)は小さく肩をすくめて。
「正直申しまして、相応の教養もない民が選挙という権利と義務を負い続けられるともそれが望ましいとも思ってはおりません。が」
あくまで己は部外者であり、依頼を受けたハンターだと。
「皇帝陛下とやらとグリューエリンさん、そしてこの国の民のお手並みを拝見しましょう。無論ハンターとして求められたことは果たさせてもらいますわ」
「……正直、劇薬だと思うが、国民にとっては良いきっかけなのかもな」
説明を終えた兵庫も、そうこっそりと一人ごちるのであった。
「いっそ2パート作って、質問する方と答える方に分けてみたら良いかも知れませんね」
マリエルがそう提案する。どうして、と問うパートならば、観衆の皆とも心情を共有できるから。
「兵庫殿とベアトリス殿が答える側、呼びかける側に使える案を出して下さっていますから……」
グリューエリンが頷きながら、作詞の心得がある者達の助けを借りて、ノートに歌詞を綴っていく。
そこにバタンと扉が開き――ナナート=アドラー(ka1668)が笑顔で手を振って入ってくる。
「エリン、お久し振り! 絶好調じゃない♪」
「まぁ、ナナート殿! このたびも助けに来て下さったのですか?」
「エリンのためなら当然よぉ」
はしゃいだ笑い声と弾むガールズトーク。随分と落ち着いてきた様子に、ナナートは目を細める。
けれど同時に、一直線に走り続けるグリューエリンが、心配にもなるのだ。
「――でも、あまり無理しちゃ駄目よん? 御家族も心配されるわ」
家族、という言葉に、僅かにグリューエリンの表情が曇る。けれど、少女は真摯な表情で、頷いた。
「ありがとう存じます、ナナート殿。……大丈夫です。無理をして志を半ばで途切れさせるわけにはいきませんから」
「そうそう。でもまだ肩に力が入ってるわよぉ」
後ろに回って肩をほぐしながら、そっと心配そうな視線を彼女に向けるナナートであった。
「――陛下、が。アイドル、と、歌を?」
依頼の話を小耳に挟み、がたりと立ち上がる佐々加瀬 穹(ka2929)。
「これ、は……ムジカ・ホリックとして、黙って、は、いられない。ね」
早速、所謂アイドル商法を行うべく皇帝と部隊長に直談判を持ちかける穹。
録音機材があれば肝心のCDも作れるのだが……とりあえずはパレードの内容を印象付けたり思い出の品としてグッズの展開。
皇帝とアイドル双方の好感度知名度上昇、及び商業的収入も見込め、リアルブルーでも広く行われている信頼性のある手法であることなどをアピールしてのプレゼンテーションに、ヴィルヘルミナは楽しげに、部隊長クレーネウスは真剣な顔で頷いた。
「今後のアイドル活動の展開としてこういうものも想定はしているよ。クレーネウスから説明は受けたし」
「しかし、ここまで具体的な案ではなかったからな……ふむ」
クレーネウスが真剣な顔で、穹から渡された資料に目を通す。
「もっとも、クリムゾンウェストでは前例のない事だから、時間も手間もかかるだろうがね」
「このパレードですぐに展開することは難しいが、将来的にはぜひ協力してもらえると嬉しいな」
そう言った部隊長と、穹がグッズ展開の話で盛り上がるのを、皇帝い陛下はにこにこと眺めていた。
「選挙へ行こうパレードか。日本でもこんなのやれば投票率が上がるかも、なんてね」
出来あがった歌詞を見て、天竜寺 舞(ka0377)がにこりと笑う。小さい頃から手に馴染んだ三味線を弾きながら、メロディをつけていくのは彼女の担当だ。
「やっぱり選挙って良い物だと思ってもらうには楽しく明るい雰囲気の曲がいいのかな?」
いくつか考えた候補を、ファリスにお手伝いの休憩を兼ねて聞いてもらう。
「えっとね、ファリスはこれが一番キラキラしてて、素敵だと思うの!」
ファリスが選んだのは、やはり一番明るくて楽しげで、そして覚えやすいメロディ。さらに己の踊りの経験も生かし、踊りやすい曲調。
まだ大勢の前でパレードに参加する勇気はないファリスも、何もしないではいたくないと思う。だから、舞に意見を求められ、それが良い曲を作る役に立つと知ればとても嬉しい。
出来上がっていくメロディに、ファリスは瞳を輝かせた。
「選挙のチラシをパレードで配るのは良い案だと思うわ」
縫い針を一生懸命動かしながら、ナナートが顔を上げてにっこり笑った。『何者にも染まっていない=色を決めるのは有権者』という意味を込めた純白の衣装が魔法のように出来上がっていく。
「ビラに投票所の場所も描いておけば、現地で係員が説明するかと」
そう提案して、静架(ka0387)が地図を描いていく。
「パレードする地区に合わせて、地図を変えてもいいかもね☆」
コースはこんな感じだよ~、とユノ(ka0806)が帝都の地図を差し出す。他にも開始終了時間や工程、衣装や小物の作成、パフォーマンスの内容、練習の日程、ご飯とおやつの時間……などなどを確認して回って、状況把握に一役買っているユノである。
衣装の各所を飾るのは、白い薔薇。これは、エヴァの発案だ。
『リアルブルーでは「明るく誠実な選挙」を示すものとして、白い薔薇が用いられるらしいから』
そう案を出したエヴァは、今はチラシの製作中である。
颯が丁寧に説明をつけて書いた歌詞のチラシには、控えめに周囲に白い薔薇を散らす。選挙の仕組みの説明チラシは――エヴァの腕の見せ所だ。
リアルブルーの漫画の技法を参考に。登場人物のモデルは、他でもない帝国の皇帝とアイドル。
事前に2人にモデルとなってくれるよう申し出たところ、アイドルは照れつつ、皇帝は楽しげに、頷いたものである。
「全く構わないよ。むしろこちらの方からお願いしたいくらいだ。但し、悪用はしないでくれよ」
その言葉にきょとんとしたエヴァとグリューエリンに、ヴィルヘルミナはにこりと笑って。
「されたら……大変な事になるな、フフフ」
凄むでもなく普段と同じ調子で言ったヴィルヘルミナに、エヴァは笑顔でサムズアップしてみせた。
というわけで――わかりやすく、見やすく、読みやすく。
気迫を込めて描き続けるエヴァを横目に、完成した歌詞の方の原稿を受け取って、静架はふと後ろを振り返る。
いた。
「やぁ、頑張っているね」
ヴィルヘルミナがいた。
これ幸いと静架は、コピー機のようなものがないかとヴィルヘルミナに尋ねてみる。
「魔導印刷機か。印刷技術に関しては、要は自動的にハンコを押すだけの装置のようなものだから、作る事自体は難しくないだろうし、錬魔院では使われているかもしれないね。……自動的にハンコか。作らせるか」
考え込むヴィルヘルミナに、静架はツッコミを入れないでおいた。
錬魔院に問い合わせたところ、1台あるが稼働時間が短くあまり大量には刷れないとのことなので、手作業で写すのが大変そうな漫画形式のチラシの方を、魔導印刷機に頼むことにする。
もう1種類のチラシを量産するために、静架が取り出したのはサツマイモであった。
興味深げなヴィルヘルミナの前で、芋を2つに割ってそれぞれの切り口を長方形に整形。それを4つ並べれば、ちょうどチラシと同程度の大きさだ。
そこに文字と模様を転写し、ひたすら丁寧に彫る。
「……陛下もやってみますか?」
じぃっと手元を見ているヴィルヘルミナに静架が問うと、嬉しそうに頷いて。
「うむ、芋でハンコを作ると言うのは実に愉快だな。自慢ではないが手先は結構器用でね、こういう物を作るのも得意だと思うよ」
その言葉通り、彫刻刀で楽しげに芋を彫るヴィルヘルミナ。文字を浮き彫りにする難しめの技術も、淀みなくこなしていく。
ちょうど芋版が全て彫り終わったところで、皇帝陛下は仕事サボりに気付いたオズワルドに首根っこを掴まれて。
「では、パレード当日を楽しみにしているよ。ああ、練習も来るから……来れたら……来たいなぁ……」
そう手を振って去っていくのだった。
パレードを何日か後に控えた、夜のことである。
「皆、今度行われるイベントの事を知っているかしら?」
帝都のやや大きめの酒場で、クレア グリフィス(ka2636)が共に飲んでいた人々に声をかける。
「ん、選挙のことかい?」
「それもだけど、選挙のことを皆に知らせるのに、アイドルのグリューエリンと皇帝陛下がパレードをするんですって」
「何っ!? あのアイドルと陛下が!?」
盛り上がる人々と酒を汲み交わし、パレードの話から選挙のことにも話を広げ、意見を交わし合う。
『あの子が頑張るなら協力するわ♪』
こうしてクレアが日々宣伝に繰り出すのは、グリューエリンの名を依頼人の欄に見たから。
クレアの地道な活動。支度に携わるハンター達の懸命な作業。皆が集まって、段取りを確認し踊りを、歌を合わせる練習。
準備の日々は飛ぶように流れ、ついに――パレード当日、である。
エヴァがようやくペンを置いたのは、その朝になってからだった。
魔導印刷機で刷れた量が予定より若干少なかったため、手作業で追加したのだ。
ついでにレア要素として、ちょっとしたバージョン違いを出してみたりして。
――修羅場であった。
歪虚との戦いに勝るとも劣らない修羅場であった。
だが、彼女は勝利したのだ。
「え、エヴァ殿! 大丈夫ですか?」
ぐっ。
部屋に入って来たグリューエリンに向かって、サムズアップしたまま崩れ落ちるエヴァ。
「エヴァ殿ー!? きゅ、救護の者を!!」
勝利の余韻に浸りつつ夢の国に旅立ったエヴァは、部隊員の兵士達に担がれて医務室へと運ばれるのだった。
『パレード』という案を出したのがグリューエリン自身であることを、こなゆきは嬉しく思う。
おそらく、以前の彼女だったら出てこなかった案だろうから。
「その変化を、私はとても好ましく感じたのです」
そう微笑んだこなゆきに、グリューエリンは嬉しそうにはにかんだ。
「政治にはまったく興味はありませんけれど、グリューエリンさんの案が成功するよう、僅かばかりのお力添えをできれば……」
「僅かではありませんわ。こなゆき殿の演奏、私もとても楽しみです」
グリューエリンの言葉に笑んだこなゆきが持つのは、バスクラリネット。リアルブルーでは和楽器と一緒に演奏されることもあるし、タンバリンとも相性がいいはずだ。――両者をつなぐ楽器をこなゆきが懸命に探した結果である。
「選挙はよくわかりませんけれど、皆さんが参加して賑やかになってくれると良いですね♪」
立花 沙希(ka0168)が隣で頷きながら、くるくると大旗を回す。旗に描かれたのは投票する人の様子をデフォルメしたもの。
「選挙がどんなものか判らないが、それを知る為にも今回のパレードを盛大に成功させないとな」
ヴァイス(ka0364)が大剣を担いでにかっと笑ってから、ペット達の頭を撫でる。
「キノ。ワンコ。頼むな」
そう優しく声を掛けたヴァイスに、パルムのキノは小さな手を上げ、柴犬のワンコはぱたぱた尻尾を振った。彼らとのアピールも、大剣で剣舞を行う許可も取ってある。
――刃を持って舞う。優雅に踊るだけよりも、帝国に相応しいと思うんだけど、どうかなぁ?
そう尋ねたヒース・R・ウォーカー(ka0145)に、皇帝が快諾を与えたのだ。
「『センキョ』って何なのかなぁ? よくわかんないけど『パレード』みたいだから、みんなが楽しめるようにすればOKよね」
まるごとうさぎ姿の天川 麗美(ka1355)が、やはりきょとんと首を傾げる。
「参加するにはわたしも楽しまなきゃソンよね」
「ああ、もちろんその通りだよ」
ぴょん、と麗美が振り向くと、そこにはヴィルヘルミナが立っていた。
「私も楽しみに来たのだからね。練習には参加したが、本番となればやはり壮観だなぁ」
準備の様を眺めて嬉しそうな皇帝の前に、飛び出したのは白い雪だるまである。
違った。
白いもこもこ毛皮を全身に纏って雪だるまに扮した、ミリアム・ラング(ka1805)である。
「私は選挙雪だるまんです、ひーほー!」
「はっはっは。楽しそうだな。はっはっは。はっはっはっは」
ミリアムのアピールに、愉快そうに笑うヴィルヘルミナ。
「もふっても、いいのよ」
「じゃあもふろう」
ふかふか雪だるまをもふって、皇帝陛下はご満悦。
ちなみにグリューエリンにも見せたら、笑いで過呼吸になりかけた。
「だがどうせなら私も着る方で参加したかったなあ」
「ふむ、皇帝は着ぐるみが好きなのか」
振り向けば、そこには体が投票箱になった黒猫が立っていた。
割とでかい。でも可愛い。つぶらなおめめと『投票箱』の文字がチャーミング。
「これは……うん、君のオリジナルかな?」
「その通り。新しいものを理解してもらうにゃ、まず興味を持ってもらわなくちゃいけねぇ。なワケで……」
黒猫が投票箱の腰の辺りに手を当て、胸を張る。
「選挙ゆるキャラの『選にゃん』だ!」
「おお。素晴らしいな」
ほれぼれした様子で選にゃんを眺めるヴィルヘルミナ。
選にゃん――の中の人デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)は、ニヤリと着ぐるみの中でイイ笑顔を浮かべた。老若男女に興味を持ってもらうために、構想から作り上げた自慢のゆるキャラだ。
「パレードに着ぐるみは定番やもんな! ほら、なんや……ますこっと……? いうんか?」
「えへへ、テンちゃんと一緒にお仕事できるなんて嬉しいなぁ!」
そこにお揃いのうさぎ着ぐるみで加わったのは、テェンイー(ka0637)と柊 万花(ka0647)である。
「ちびっ子には大人気やな! ウチはちびっ子じゃないけどな! ……な!!!」
家族連れにもアピールして広い世代に興味を持ってもらうためだと力説するテェンイー。
「子ども達の将来への道も選挙で示せるんですよ、なんて感じかな? ボクもテンちゃんに負けないように頑張らないとね」
「なかなかいい宣伝文句だね。ハンターの皆が頑張ってくれて、本当にありがたいなぁ」
耳を入れても自分より小さい可愛いウサギさん達に、皇帝陛下は楽しげである。
2人が担当するのは、伴奏とチラシ配り。そして護衛。テェンイーが手にするのは三味線。万花のは横笛だ。
「それとな、こーんな大勢の前で危険なことなんて無いやろうけど、万一に備えてナイフも忍ばせてあるで」
「あ、テンちゃんも護衛の準備ばっちりだね。ボクもちゃんとロープ持って来てるから安心してね……危ない人はボクがぐるぐるにしちゃんだから♪」
「……万花? なんやちょい笑顔が怖いで……」
「……え? なんで引いてるの~ッ!?」
小さな着ぐるみっ子達、そこにファリスが皆の担当分のチラシを渡しに来たりして、和みに和む雰囲気。
その様子を、じっと見ていたのはロクス・カーディナー(ka0162)である。
「アレが皇帝の娘、で、もう一人が帝国所属のアイドル様か。護衛も兼ねてるつゥ事で受けはしたが……」
浮かれているのか、と侮蔑に表情を歪めたロクスは、その皇帝自身が振り返って己の方に歩いてきたことに眉を寄せる。
「勿論私は浮かれているぞ。何事もまずは楽しむ事が大切だからな」
にこにこ笑顔で話すヴィルヘルミナの瞳を、ロクスは値踏みするように見つめる。
「まあ、浮かれていても中々伝わらない事が多いのだが……。そんなに目が気になるかい?」
確かに目が笑ってないとか良く言われるな。心外だなあ。そう肩をすくめたヴィルヘルミナは、微笑みを浮かべたままの唇を開く。
「なんにせよこれらは全て私が選択し、招いた現実だ。その一部始終をきちんと見届け、心に刻み付けなければと思うよ」
強い眼光を宿した目を笑みの形に細めてから、ヴィルヘルミナは衣装を翻し去っていく。
「…………」
黙ったまま。けれどロクスの顔から、侮蔑の表情は消えていた。
「へーかは国の事、一杯想ってる……私は……陛下は、へーかが……いい……だから、手伝う」
じっとその力ある瞳を見てそう伝えたシェリル・マイヤーズ(ka0509)に、ヴィルヘルミナは微笑みと共に頷いた。
「そう思ってくれるシェリルが、それを皆に伝えてくれるなら、きっと私を応援してくれる人も増えるだろうね」
貧困地域では、ヴィルヘルミナの評判は悪い。それを、シェリルは自らの目で見たことがある。
帝都は暮らしやすい地域ではあるが、貧困は存在するのだ。
「今日は、よろしく頼むよ」
そう親しげに言った皇帝に、シェリルは決意を込めて大きく頷いてみせた。
「ま、グリりんの晴れの舞台だ。きっちり見守んねーとな」
そう言って、選にゃん……の中のデスドクロが視線を移す。
「グリューエリン、今日は共に二つの紅き連なり星に!」
「ざくろ殿、共に参りましょう!」
にっこり笑って手を差し出した時音 ざくろ(ka1250)に、やや緊張した顔でグリューエリンは掌を重ねる。
「選挙という文化を帝国に知らしめ、新たなる一歩を」
「陛下をセンターにする、大事な選挙だもん!」
「!?」
ざくろさん誤解してる。
ヴィルヘルミナと他の候補者達を描いたイラストも、明らかに他の候補者がモブレベルの描き分けである。
「エリンお姉さん♪ 緊張してるのかな~?」
「ひゃっ!? く、くくすぐったいですわふふふふ」
ユノに脇をくすぐられ、じたばたするグリューエリン。
「大舞台だからこそ、一緒に楽しんで行きましょうね♪」
崩れ落ちそうになった体を、クレアが支えてにっこり。
「はいっ。ありがとう存じます、クレアさん」
一度体の力が抜けたことと、クレアの言葉でふっとグリューエリンの表情が柔らかくなる。
「では、始めようか。せっかくの機会だ、共に楽しもう」
「はい、陛下!」
すっと隣に並んだヴィルヘルミナに頷いて、グリューエリンは深呼吸をする。
ここは、レッスンで教えてもらったことの最初の実践の場でもある。そして。
彼女が初めて『自分のために』アイドルの力を使うことを、意識した瞬間でもあったのだ。
「ということでパレードを盛り上げていくぞ!」
そう言って指揮杖を手に先頭に躍り出たディアドラ――の前に、『一緒に歌おう♪』と書いたプラカードを持ったユノ。
小さな2人の、しかし熾烈な火花散る先頭争いは、指揮杖の威力でディオドラに軍配が上がる。
振り上げられる指揮棒に合わせて、伴奏が音を重ね出す――こなゆきのバスクラリネットが深い低音でベースを支える。万花の横笛が可憐に副旋律を奏で、テェンイーと舞が三味線のハーモニーを重ねる。
楽しげな音楽に誘われて、可愛らしい着ぐるみの数々に心を惹かれ、そしてクレアやAPVが行った事前の宣伝や噂を聞きつけて来た人々で、沿道はいっぱいだった。
(やはり大王たるもの誰よりも率先して前に出て行動せねばな。それに大王たるボクが先頭に立つことで、後ろに続く皆の士気を高めることもできるであろう!)
そう考えてにっこり笑ったディアドラが指揮杖をくるくると回し、ダンスを繰り広げる。その後ろではプラカードを持ったユノが、まるごとうさぎの耳をぴょこぴょこ揺らしながらプラカードを振る。
それに続いて歩くのは、ヴァイスの飼犬ワンコ。お利口に咥えた籠の中から、パルムのキノがチラシを取っては観客に渡していく試みは、特に子ども達の目を引いた。
そのすぐ後ろと、パレードの最後尾を飾るのは、着ぐるみのハンター達。選にゃんが可愛い笑顔と投票箱をアピールしながらタンバリンを叩く様子は沿道の観客にも大ウケだ。
舞は人々に笑顔を向けて、三味線を弾きながらダンスのステップを踏んでみる。リアルブルーにいる実家の人に見られたら怒られるかなとくすり笑うけれど、楽しい雰囲気で選挙に興味を持ってもらいたいから。
ナナートはグリューエリンとヴィルヘルミナのすぐそばで踊り、グリューエリンのすぐ隣はこなゆきが守る。
(いけませんね、どうにも心配してしまいます)
帝都は皇帝の支持率が高くて危険は少ないし、ハンター達の中にも護衛を担当する人が多いとわかってはいても。
(……もしかして、過保護な性分なのでしょうか?)
思わず苦笑するこなゆき。けれど、今のグリューエリンには、そうして心配してくれる人も必要なのかもしれない。
穹や颯も、愛想よく人々にチラシを配っていく。もらい損ねたと残念そうな人の前に、宙返りで降り立つのは長い黒髪をなびかせてドレスに身を包んだ静架だ。
――女性の服の方が隠すところが多くて重宝する、とは『彼』の弁。事実、しっかりと銃を隠し持ち、ヴィルヘルミナの近辺に注意を向けてもいる。
伴奏が盛り上がったところで、さぁいよいよ歌が始まる。最初のパートを歌うのは、クレア、ベアトリス、それにヴィルヘルミナ。
「さあ、今共に選びゆこう♪」
それに、問いかけるように2つ目のパートが歌いだす。担当するのはマリエルやグリューエリン、ざくろにユノ。
「どうして、私達が選ぶの? 今のままじゃだめなのかな?」
それに応えるように、また第1のパートが歌うのだ。
「自分達の国を、生活を、未来を、任せられる人を選ぶためだから♪」
「難しいことはわからない、そういうときはどうしよう?」
「あなただけじゃわからなくても 信じるあの人とならきっとゆける♪」
「自分の信じたい人が 他の誰とも違っていたら?」
「それが千の一つでも それがみなとは違っていても あなたの選んだ答えなら 必ずあの人へと届けつなげていこう♪」
問いと答えを重ねていく歌に、観客達は興味深げに聴き入り、そして明るい曲調に子ども達などは声を合わせて。
そしてここからは、声を合わせて想いを伝える合唱パート。
「あなたの想いが、明日の国を作る 一人一人は弱いけれど、みんなの気持ちが一つになれば、きっと何かを成し遂げられる♪」
マリエルの明るい声が、良く通り響き渡る。
「より良い明日の為に、今を変えよう 黙っていては何も変わらないのだから、小さくても声を上げよう♪」
クレアの深く楽しげな声、ベアトリスの高く澄んだ声が和音を奏でる。
「その声はきっと大きなうねりになって、何かを変えていくはずだから♪」
ユノがウサギの耳を揺らして、楽しそうに歌う。ヴィルヘルミナの低めの声が、染み入るように響く。
「けして諦めないで」
グリューエリンが、真剣な瞳で観客の一人一人を見つめるように歌う。
「溢れる想いをこの札に込めて、今キミ一番の人を……♪」
ざくろがにっこり笑って、投票箱に票を入れる仕草をアピールする。
「私に 皆に そして未来に――さあみなで選びゆこう」
大きく響いた歌が終わると同時に、沿道から一斉に起こる盛大な拍手。
チラシ配りを手伝いながら、穹は歌が聴けて非常に満足であった。
「センキョうさぎさんですよぉ、よろしくぴょん♪」
演奏が終わったところで、麗美がタンバリンを腰に下げ、楽しげにチラシを配る。
「センキョって何かなーって思った人は、このチラシを見てほしいぴょん」
その隣では、雪だるまミリアムがチラシを渡しながらぎゅっと観客の手を握る。
「選挙出来ない私達の分までッ……貴方達は投票して……頼みましたよ……」
「あ……ああ! 必ず、清き一票を!」
観客の琴線になんか触れた!
観客も盛り上がってきたところで――飛び出したのは曲者!
ではなく、ヒースとロクス。
前方にいたヴァイスと、まずは軽い剣舞と殺陣を演じてみせる。それぞれの武器が交差する剣舞は華やかで、殺陣は真剣勝負ではないかと観客に息をのませる。
ヴァイスの突きをさっと左右に避けて、水平にした大剣に飛び乗った2人は、次の瞬間ヴァイスの腕力と己の跳躍力を利用してグリューエリンとヴィルヘルミナの前に躍り出る。
見栄えを重視した剣舞にわぁっと一同が沸いた後は――真っ向からぶつかり合うような殺陣。
ロクスは全体を映えさえるように動き、挑みかかるのはヒースだ。
「真っ直ぐな剣だね、お前は。その刃で得られるモノ、その舞で与えられるモノ……見届けたくなるような、ねぇ」
グリューエリンの剣を、ヒースはそう評する。剣を振るうことに精一杯で口を開けぬ少女は、けれど強い光を瞳に込めて大きく頷いた。
「皇帝に相応しい力だねぇ……その力で何を奪い、何を護るんだろうねぇ」
ヴィルヘルミナの剣を、ヒースはそう評する。皇帝は余裕に笑んだまま、つと目を細めて見せた。
「このくらいで実力を把握したと思われては心外だなあ。私についてくれば、私の実力もこの先私が何を成して行くのかも見届ける事が出来るよ」
ついてくればいいんじゃないかな?
その誘いに、ヒースは答えを返さなかった。あいまいに、目を細めたのみ。
見事な剣舞と殺陣に起こる拍手の中、再びロクスとヒースは観客の中に消える。
やがて、帝都の中でも貧しい区域に差し掛かる。豊かな地域に比べて、観客の視線はどこか冷ややかだけど。
「へーかも良くしたいって思ってる……皆で考えて、皆で新しい帝国、作りたいって……」
まずは仕組みを知って参加して欲しいと、シェリルは懸命に訴える。
「これからは……未来を自分達の手で……選ぶの……。 そう出来る環境を……へーかは、作ろうとしてるんだよ……」
「へぇ……まぁ、お嬢ちゃんがそんなに熱心なら、まぁ受け取っとくよ」
小さな手から荒れた手に、渡されるのは――選挙への、第一歩。
「シェリルには以前護衛を依頼した時、少し凄惨なものを見せてしまったからね。本来は子供に戦わせたくはないのだが、致し方ないか……」
そう呟いたヴィルヘルミナは、ふっと笑みを消してその様子を見つめた。
その表情は、すぐに沿道の市民からの声に、笑顔へと戻ったけれど――。
行列の後ろでは、沙希がくるくると大旗を回し、さっと広げて選挙をアピール。歌にも声を合わせ、楽しそうに顔を綻ばせる。
ロクスとヒースが襲い掛かる如き剣舞と殺陣が再び繰り広げられ、それが終わればまた踊りと歌――パレードは終わり、帝都に構えるレストランの好意の差し入れを囲んで、疲れた身体を休めながら昼食である。
お疲れさん、とロクスが、身分の上下を気にせず適当な労いの言葉をかけていく。その輪から外れて、ヒースはぽつりつ呟いた。
「立ち塞がるなら、斬る……その場面を楽しみにしているボクは、なんなんだろうねぇ」
唇に浮かぶのは、皮肉げな笑み。視線が、またふっと和やかな風景に溶けていく。
「所でグリューエリンさんやヴィルヘルミナさんは恋などされているのでしょうか……気になります」
きらきら目を輝かせて尋ねた沙希に、まだそのような方はと真っ赤になるグリューエリンの隣で、ヴィルヘルミナは余裕の笑みを浮かべる。
「今の所相手は見当もつかないが、強いて希望を上げるのならば自分よりも強い男がいいな」
いるのかそれ。
「仕事が恋人とは口が裂けても言えないが、叶えるべき理想が最重要であり、余所事に気を取られている余裕がないのだ」
つまりお忍びは余所事ではない。大事なことである。
「そも、王というのは人間らしい感情を理解はしてもそれに流されてはならぬものだ。人間らしさを捨てている以上、恋をするつもりはない……とは言わないでおこう」
「言わないんですね!」
「もしお相手が出来た時は、応援しますね♪」
「ああ、頼むよ」
そう嬉しそうな沙希に言って皇帝陛下は、差し入れの芋料理を手に取る。
「ミナお姉さんと一緒にお芋食べるのー☆」
ついに2文字まで愛称を削ったユノである。呼び方程度で存在の価値が揺らぐほど自分はヤワではないと、笑顔で受け入れるヴィルヘルミナ。
「怖いのは選挙でも表に出てこない人達だよねー★」
そう芋料理を食べながらにっこり言ったユノに、ヴィルヘルミナは真面目に答える。
「今は怖い人達でも、いつかは怖くなくなるよう、分かり合えるようにこの選挙がある。子供が心配する事なく選挙が実施できるようにしていかねばならないね」
傍らでそれを聞いていたシェリルが、ぽつり、と口を開いた。
「……帝国は……これから、変わっていく……それはきっと……良い方向だと……思う……」
ヴィルヘルミナは芋を食べる手を止め、軽く目を細めて真摯な言葉を受け止める。
「皆が良くしようって想うなら……きっと……良い風が……吹くよ……」
「私はその風こそ君達なのだと思う。どうかこれからも力を貸してほしい」
剣を握り国を握る大きな手に、戦いを始めたばかりの小さな手がおずおずと重なる。
2つの手は、力強く握り合わされた。
「まずは選挙の何が分からないのかハッキリさせた方がいいでしょうね」
『選挙何それ美味しいの』
エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が示した文字に、そっとこめかみを押さえる八劒 颯(ka1804)。
というわけで。
「先生、選挙ってなんなんですか?」
「なんなんですか、なの!」
マリエル(ka0116)とファリス(ka2853)が、グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)やエヴァ達と並んで尋ねるのに、榊 兵庫(ka0010)が答える。
「選挙の本質とは、自らの意志で己にとって相応しいと思う人を選ぶことにある」
一番の理念から始めて、具体的な内容にも触れながら授業を繰り広げる兵庫。
「ふむ、民衆が自分自身で法令等を決めるための制度か。なるほど、リアルブルーではこういう政治形態が主流なのだな」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)も加わって、なるほどと頷く。
「大王たるボクが統治していないのであれば、やはりこういったシステムの方が国は安定するのだろうな」
その様子を少し離れて眺めながら、ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)は小さく肩をすくめて。
「正直申しまして、相応の教養もない民が選挙という権利と義務を負い続けられるともそれが望ましいとも思ってはおりません。が」
あくまで己は部外者であり、依頼を受けたハンターだと。
「皇帝陛下とやらとグリューエリンさん、そしてこの国の民のお手並みを拝見しましょう。無論ハンターとして求められたことは果たさせてもらいますわ」
「……正直、劇薬だと思うが、国民にとっては良いきっかけなのかもな」
説明を終えた兵庫も、そうこっそりと一人ごちるのであった。
「いっそ2パート作って、質問する方と答える方に分けてみたら良いかも知れませんね」
マリエルがそう提案する。どうして、と問うパートならば、観衆の皆とも心情を共有できるから。
「兵庫殿とベアトリス殿が答える側、呼びかける側に使える案を出して下さっていますから……」
グリューエリンが頷きながら、作詞の心得がある者達の助けを借りて、ノートに歌詞を綴っていく。
そこにバタンと扉が開き――ナナート=アドラー(ka1668)が笑顔で手を振って入ってくる。
「エリン、お久し振り! 絶好調じゃない♪」
「まぁ、ナナート殿! このたびも助けに来て下さったのですか?」
「エリンのためなら当然よぉ」
はしゃいだ笑い声と弾むガールズトーク。随分と落ち着いてきた様子に、ナナートは目を細める。
けれど同時に、一直線に走り続けるグリューエリンが、心配にもなるのだ。
「――でも、あまり無理しちゃ駄目よん? 御家族も心配されるわ」
家族、という言葉に、僅かにグリューエリンの表情が曇る。けれど、少女は真摯な表情で、頷いた。
「ありがとう存じます、ナナート殿。……大丈夫です。無理をして志を半ばで途切れさせるわけにはいきませんから」
「そうそう。でもまだ肩に力が入ってるわよぉ」
後ろに回って肩をほぐしながら、そっと心配そうな視線を彼女に向けるナナートであった。
「――陛下、が。アイドル、と、歌を?」
依頼の話を小耳に挟み、がたりと立ち上がる佐々加瀬 穹(ka2929)。
「これ、は……ムジカ・ホリックとして、黙って、は、いられない。ね」
早速、所謂アイドル商法を行うべく皇帝と部隊長に直談判を持ちかける穹。
録音機材があれば肝心のCDも作れるのだが……とりあえずはパレードの内容を印象付けたり思い出の品としてグッズの展開。
皇帝とアイドル双方の好感度知名度上昇、及び商業的収入も見込め、リアルブルーでも広く行われている信頼性のある手法であることなどをアピールしてのプレゼンテーションに、ヴィルヘルミナは楽しげに、部隊長クレーネウスは真剣な顔で頷いた。
「今後のアイドル活動の展開としてこういうものも想定はしているよ。クレーネウスから説明は受けたし」
「しかし、ここまで具体的な案ではなかったからな……ふむ」
クレーネウスが真剣な顔で、穹から渡された資料に目を通す。
「もっとも、クリムゾンウェストでは前例のない事だから、時間も手間もかかるだろうがね」
「このパレードですぐに展開することは難しいが、将来的にはぜひ協力してもらえると嬉しいな」
そう言った部隊長と、穹がグッズ展開の話で盛り上がるのを、皇帝い陛下はにこにこと眺めていた。
「選挙へ行こうパレードか。日本でもこんなのやれば投票率が上がるかも、なんてね」
出来あがった歌詞を見て、天竜寺 舞(ka0377)がにこりと笑う。小さい頃から手に馴染んだ三味線を弾きながら、メロディをつけていくのは彼女の担当だ。
「やっぱり選挙って良い物だと思ってもらうには楽しく明るい雰囲気の曲がいいのかな?」
いくつか考えた候補を、ファリスにお手伝いの休憩を兼ねて聞いてもらう。
「えっとね、ファリスはこれが一番キラキラしてて、素敵だと思うの!」
ファリスが選んだのは、やはり一番明るくて楽しげで、そして覚えやすいメロディ。さらに己の踊りの経験も生かし、踊りやすい曲調。
まだ大勢の前でパレードに参加する勇気はないファリスも、何もしないではいたくないと思う。だから、舞に意見を求められ、それが良い曲を作る役に立つと知ればとても嬉しい。
出来上がっていくメロディに、ファリスは瞳を輝かせた。
「選挙のチラシをパレードで配るのは良い案だと思うわ」
縫い針を一生懸命動かしながら、ナナートが顔を上げてにっこり笑った。『何者にも染まっていない=色を決めるのは有権者』という意味を込めた純白の衣装が魔法のように出来上がっていく。
「ビラに投票所の場所も描いておけば、現地で係員が説明するかと」
そう提案して、静架(ka0387)が地図を描いていく。
「パレードする地区に合わせて、地図を変えてもいいかもね☆」
コースはこんな感じだよ~、とユノ(ka0806)が帝都の地図を差し出す。他にも開始終了時間や工程、衣装や小物の作成、パフォーマンスの内容、練習の日程、ご飯とおやつの時間……などなどを確認して回って、状況把握に一役買っているユノである。
衣装の各所を飾るのは、白い薔薇。これは、エヴァの発案だ。
『リアルブルーでは「明るく誠実な選挙」を示すものとして、白い薔薇が用いられるらしいから』
そう案を出したエヴァは、今はチラシの製作中である。
颯が丁寧に説明をつけて書いた歌詞のチラシには、控えめに周囲に白い薔薇を散らす。選挙の仕組みの説明チラシは――エヴァの腕の見せ所だ。
リアルブルーの漫画の技法を参考に。登場人物のモデルは、他でもない帝国の皇帝とアイドル。
事前に2人にモデルとなってくれるよう申し出たところ、アイドルは照れつつ、皇帝は楽しげに、頷いたものである。
「全く構わないよ。むしろこちらの方からお願いしたいくらいだ。但し、悪用はしないでくれよ」
その言葉にきょとんとしたエヴァとグリューエリンに、ヴィルヘルミナはにこりと笑って。
「されたら……大変な事になるな、フフフ」
凄むでもなく普段と同じ調子で言ったヴィルヘルミナに、エヴァは笑顔でサムズアップしてみせた。
というわけで――わかりやすく、見やすく、読みやすく。
気迫を込めて描き続けるエヴァを横目に、完成した歌詞の方の原稿を受け取って、静架はふと後ろを振り返る。
いた。
「やぁ、頑張っているね」
ヴィルヘルミナがいた。
これ幸いと静架は、コピー機のようなものがないかとヴィルヘルミナに尋ねてみる。
「魔導印刷機か。印刷技術に関しては、要は自動的にハンコを押すだけの装置のようなものだから、作る事自体は難しくないだろうし、錬魔院では使われているかもしれないね。……自動的にハンコか。作らせるか」
考え込むヴィルヘルミナに、静架はツッコミを入れないでおいた。
錬魔院に問い合わせたところ、1台あるが稼働時間が短くあまり大量には刷れないとのことなので、手作業で写すのが大変そうな漫画形式のチラシの方を、魔導印刷機に頼むことにする。
もう1種類のチラシを量産するために、静架が取り出したのはサツマイモであった。
興味深げなヴィルヘルミナの前で、芋を2つに割ってそれぞれの切り口を長方形に整形。それを4つ並べれば、ちょうどチラシと同程度の大きさだ。
そこに文字と模様を転写し、ひたすら丁寧に彫る。
「……陛下もやってみますか?」
じぃっと手元を見ているヴィルヘルミナに静架が問うと、嬉しそうに頷いて。
「うむ、芋でハンコを作ると言うのは実に愉快だな。自慢ではないが手先は結構器用でね、こういう物を作るのも得意だと思うよ」
その言葉通り、彫刻刀で楽しげに芋を彫るヴィルヘルミナ。文字を浮き彫りにする難しめの技術も、淀みなくこなしていく。
ちょうど芋版が全て彫り終わったところで、皇帝陛下は仕事サボりに気付いたオズワルドに首根っこを掴まれて。
「では、パレード当日を楽しみにしているよ。ああ、練習も来るから……来れたら……来たいなぁ……」
そう手を振って去っていくのだった。
パレードを何日か後に控えた、夜のことである。
「皆、今度行われるイベントの事を知っているかしら?」
帝都のやや大きめの酒場で、クレア グリフィス(ka2636)が共に飲んでいた人々に声をかける。
「ん、選挙のことかい?」
「それもだけど、選挙のことを皆に知らせるのに、アイドルのグリューエリンと皇帝陛下がパレードをするんですって」
「何っ!? あのアイドルと陛下が!?」
盛り上がる人々と酒を汲み交わし、パレードの話から選挙のことにも話を広げ、意見を交わし合う。
『あの子が頑張るなら協力するわ♪』
こうしてクレアが日々宣伝に繰り出すのは、グリューエリンの名を依頼人の欄に見たから。
クレアの地道な活動。支度に携わるハンター達の懸命な作業。皆が集まって、段取りを確認し踊りを、歌を合わせる練習。
準備の日々は飛ぶように流れ、ついに――パレード当日、である。
エヴァがようやくペンを置いたのは、その朝になってからだった。
魔導印刷機で刷れた量が予定より若干少なかったため、手作業で追加したのだ。
ついでにレア要素として、ちょっとしたバージョン違いを出してみたりして。
――修羅場であった。
歪虚との戦いに勝るとも劣らない修羅場であった。
だが、彼女は勝利したのだ。
「え、エヴァ殿! 大丈夫ですか?」
ぐっ。
部屋に入って来たグリューエリンに向かって、サムズアップしたまま崩れ落ちるエヴァ。
「エヴァ殿ー!? きゅ、救護の者を!!」
勝利の余韻に浸りつつ夢の国に旅立ったエヴァは、部隊員の兵士達に担がれて医務室へと運ばれるのだった。
『パレード』という案を出したのがグリューエリン自身であることを、こなゆきは嬉しく思う。
おそらく、以前の彼女だったら出てこなかった案だろうから。
「その変化を、私はとても好ましく感じたのです」
そう微笑んだこなゆきに、グリューエリンは嬉しそうにはにかんだ。
「政治にはまったく興味はありませんけれど、グリューエリンさんの案が成功するよう、僅かばかりのお力添えをできれば……」
「僅かではありませんわ。こなゆき殿の演奏、私もとても楽しみです」
グリューエリンの言葉に笑んだこなゆきが持つのは、バスクラリネット。リアルブルーでは和楽器と一緒に演奏されることもあるし、タンバリンとも相性がいいはずだ。――両者をつなぐ楽器をこなゆきが懸命に探した結果である。
「選挙はよくわかりませんけれど、皆さんが参加して賑やかになってくれると良いですね♪」
立花 沙希(ka0168)が隣で頷きながら、くるくると大旗を回す。旗に描かれたのは投票する人の様子をデフォルメしたもの。
「選挙がどんなものか判らないが、それを知る為にも今回のパレードを盛大に成功させないとな」
ヴァイス(ka0364)が大剣を担いでにかっと笑ってから、ペット達の頭を撫でる。
「キノ。ワンコ。頼むな」
そう優しく声を掛けたヴァイスに、パルムのキノは小さな手を上げ、柴犬のワンコはぱたぱた尻尾を振った。彼らとのアピールも、大剣で剣舞を行う許可も取ってある。
――刃を持って舞う。優雅に踊るだけよりも、帝国に相応しいと思うんだけど、どうかなぁ?
そう尋ねたヒース・R・ウォーカー(ka0145)に、皇帝が快諾を与えたのだ。
「『センキョ』って何なのかなぁ? よくわかんないけど『パレード』みたいだから、みんなが楽しめるようにすればOKよね」
まるごとうさぎ姿の天川 麗美(ka1355)が、やはりきょとんと首を傾げる。
「参加するにはわたしも楽しまなきゃソンよね」
「ああ、もちろんその通りだよ」
ぴょん、と麗美が振り向くと、そこにはヴィルヘルミナが立っていた。
「私も楽しみに来たのだからね。練習には参加したが、本番となればやはり壮観だなぁ」
準備の様を眺めて嬉しそうな皇帝の前に、飛び出したのは白い雪だるまである。
違った。
白いもこもこ毛皮を全身に纏って雪だるまに扮した、ミリアム・ラング(ka1805)である。
「私は選挙雪だるまんです、ひーほー!」
「はっはっは。楽しそうだな。はっはっは。はっはっはっは」
ミリアムのアピールに、愉快そうに笑うヴィルヘルミナ。
「もふっても、いいのよ」
「じゃあもふろう」
ふかふか雪だるまをもふって、皇帝陛下はご満悦。
ちなみにグリューエリンにも見せたら、笑いで過呼吸になりかけた。
「だがどうせなら私も着る方で参加したかったなあ」
「ふむ、皇帝は着ぐるみが好きなのか」
振り向けば、そこには体が投票箱になった黒猫が立っていた。
割とでかい。でも可愛い。つぶらなおめめと『投票箱』の文字がチャーミング。
「これは……うん、君のオリジナルかな?」
「その通り。新しいものを理解してもらうにゃ、まず興味を持ってもらわなくちゃいけねぇ。なワケで……」
黒猫が投票箱の腰の辺りに手を当て、胸を張る。
「選挙ゆるキャラの『選にゃん』だ!」
「おお。素晴らしいな」
ほれぼれした様子で選にゃんを眺めるヴィルヘルミナ。
選にゃん――の中の人デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)は、ニヤリと着ぐるみの中でイイ笑顔を浮かべた。老若男女に興味を持ってもらうために、構想から作り上げた自慢のゆるキャラだ。
「パレードに着ぐるみは定番やもんな! ほら、なんや……ますこっと……? いうんか?」
「えへへ、テンちゃんと一緒にお仕事できるなんて嬉しいなぁ!」
そこにお揃いのうさぎ着ぐるみで加わったのは、テェンイー(ka0637)と柊 万花(ka0647)である。
「ちびっ子には大人気やな! ウチはちびっ子じゃないけどな! ……な!!!」
家族連れにもアピールして広い世代に興味を持ってもらうためだと力説するテェンイー。
「子ども達の将来への道も選挙で示せるんですよ、なんて感じかな? ボクもテンちゃんに負けないように頑張らないとね」
「なかなかいい宣伝文句だね。ハンターの皆が頑張ってくれて、本当にありがたいなぁ」
耳を入れても自分より小さい可愛いウサギさん達に、皇帝陛下は楽しげである。
2人が担当するのは、伴奏とチラシ配り。そして護衛。テェンイーが手にするのは三味線。万花のは横笛だ。
「それとな、こーんな大勢の前で危険なことなんて無いやろうけど、万一に備えてナイフも忍ばせてあるで」
「あ、テンちゃんも護衛の準備ばっちりだね。ボクもちゃんとロープ持って来てるから安心してね……危ない人はボクがぐるぐるにしちゃんだから♪」
「……万花? なんやちょい笑顔が怖いで……」
「……え? なんで引いてるの~ッ!?」
小さな着ぐるみっ子達、そこにファリスが皆の担当分のチラシを渡しに来たりして、和みに和む雰囲気。
その様子を、じっと見ていたのはロクス・カーディナー(ka0162)である。
「アレが皇帝の娘、で、もう一人が帝国所属のアイドル様か。護衛も兼ねてるつゥ事で受けはしたが……」
浮かれているのか、と侮蔑に表情を歪めたロクスは、その皇帝自身が振り返って己の方に歩いてきたことに眉を寄せる。
「勿論私は浮かれているぞ。何事もまずは楽しむ事が大切だからな」
にこにこ笑顔で話すヴィルヘルミナの瞳を、ロクスは値踏みするように見つめる。
「まあ、浮かれていても中々伝わらない事が多いのだが……。そんなに目が気になるかい?」
確かに目が笑ってないとか良く言われるな。心外だなあ。そう肩をすくめたヴィルヘルミナは、微笑みを浮かべたままの唇を開く。
「なんにせよこれらは全て私が選択し、招いた現実だ。その一部始終をきちんと見届け、心に刻み付けなければと思うよ」
強い眼光を宿した目を笑みの形に細めてから、ヴィルヘルミナは衣装を翻し去っていく。
「…………」
黙ったまま。けれどロクスの顔から、侮蔑の表情は消えていた。
「へーかは国の事、一杯想ってる……私は……陛下は、へーかが……いい……だから、手伝う」
じっとその力ある瞳を見てそう伝えたシェリル・マイヤーズ(ka0509)に、ヴィルヘルミナは微笑みと共に頷いた。
「そう思ってくれるシェリルが、それを皆に伝えてくれるなら、きっと私を応援してくれる人も増えるだろうね」
貧困地域では、ヴィルヘルミナの評判は悪い。それを、シェリルは自らの目で見たことがある。
帝都は暮らしやすい地域ではあるが、貧困は存在するのだ。
「今日は、よろしく頼むよ」
そう親しげに言った皇帝に、シェリルは決意を込めて大きく頷いてみせた。
「ま、グリりんの晴れの舞台だ。きっちり見守んねーとな」
そう言って、選にゃん……の中のデスドクロが視線を移す。
「グリューエリン、今日は共に二つの紅き連なり星に!」
「ざくろ殿、共に参りましょう!」
にっこり笑って手を差し出した時音 ざくろ(ka1250)に、やや緊張した顔でグリューエリンは掌を重ねる。
「選挙という文化を帝国に知らしめ、新たなる一歩を」
「陛下をセンターにする、大事な選挙だもん!」
「!?」
ざくろさん誤解してる。
ヴィルヘルミナと他の候補者達を描いたイラストも、明らかに他の候補者がモブレベルの描き分けである。
「エリンお姉さん♪ 緊張してるのかな~?」
「ひゃっ!? く、くくすぐったいですわふふふふ」
ユノに脇をくすぐられ、じたばたするグリューエリン。
「大舞台だからこそ、一緒に楽しんで行きましょうね♪」
崩れ落ちそうになった体を、クレアが支えてにっこり。
「はいっ。ありがとう存じます、クレアさん」
一度体の力が抜けたことと、クレアの言葉でふっとグリューエリンの表情が柔らかくなる。
「では、始めようか。せっかくの機会だ、共に楽しもう」
「はい、陛下!」
すっと隣に並んだヴィルヘルミナに頷いて、グリューエリンは深呼吸をする。
ここは、レッスンで教えてもらったことの最初の実践の場でもある。そして。
彼女が初めて『自分のために』アイドルの力を使うことを、意識した瞬間でもあったのだ。
「ということでパレードを盛り上げていくぞ!」
そう言って指揮杖を手に先頭に躍り出たディアドラ――の前に、『一緒に歌おう♪』と書いたプラカードを持ったユノ。
小さな2人の、しかし熾烈な火花散る先頭争いは、指揮杖の威力でディオドラに軍配が上がる。
振り上げられる指揮棒に合わせて、伴奏が音を重ね出す――こなゆきのバスクラリネットが深い低音でベースを支える。万花の横笛が可憐に副旋律を奏で、テェンイーと舞が三味線のハーモニーを重ねる。
楽しげな音楽に誘われて、可愛らしい着ぐるみの数々に心を惹かれ、そしてクレアやAPVが行った事前の宣伝や噂を聞きつけて来た人々で、沿道はいっぱいだった。
(やはり大王たるもの誰よりも率先して前に出て行動せねばな。それに大王たるボクが先頭に立つことで、後ろに続く皆の士気を高めることもできるであろう!)
そう考えてにっこり笑ったディアドラが指揮杖をくるくると回し、ダンスを繰り広げる。その後ろではプラカードを持ったユノが、まるごとうさぎの耳をぴょこぴょこ揺らしながらプラカードを振る。
それに続いて歩くのは、ヴァイスの飼犬ワンコ。お利口に咥えた籠の中から、パルムのキノがチラシを取っては観客に渡していく試みは、特に子ども達の目を引いた。
そのすぐ後ろと、パレードの最後尾を飾るのは、着ぐるみのハンター達。選にゃんが可愛い笑顔と投票箱をアピールしながらタンバリンを叩く様子は沿道の観客にも大ウケだ。
舞は人々に笑顔を向けて、三味線を弾きながらダンスのステップを踏んでみる。リアルブルーにいる実家の人に見られたら怒られるかなとくすり笑うけれど、楽しい雰囲気で選挙に興味を持ってもらいたいから。
ナナートはグリューエリンとヴィルヘルミナのすぐそばで踊り、グリューエリンのすぐ隣はこなゆきが守る。
(いけませんね、どうにも心配してしまいます)
帝都は皇帝の支持率が高くて危険は少ないし、ハンター達の中にも護衛を担当する人が多いとわかってはいても。
(……もしかして、過保護な性分なのでしょうか?)
思わず苦笑するこなゆき。けれど、今のグリューエリンには、そうして心配してくれる人も必要なのかもしれない。
穹や颯も、愛想よく人々にチラシを配っていく。もらい損ねたと残念そうな人の前に、宙返りで降り立つのは長い黒髪をなびかせてドレスに身を包んだ静架だ。
――女性の服の方が隠すところが多くて重宝する、とは『彼』の弁。事実、しっかりと銃を隠し持ち、ヴィルヘルミナの近辺に注意を向けてもいる。
伴奏が盛り上がったところで、さぁいよいよ歌が始まる。最初のパートを歌うのは、クレア、ベアトリス、それにヴィルヘルミナ。
「さあ、今共に選びゆこう♪」
それに、問いかけるように2つ目のパートが歌いだす。担当するのはマリエルやグリューエリン、ざくろにユノ。
「どうして、私達が選ぶの? 今のままじゃだめなのかな?」
それに応えるように、また第1のパートが歌うのだ。
「自分達の国を、生活を、未来を、任せられる人を選ぶためだから♪」
「難しいことはわからない、そういうときはどうしよう?」
「あなただけじゃわからなくても 信じるあの人とならきっとゆける♪」
「自分の信じたい人が 他の誰とも違っていたら?」
「それが千の一つでも それがみなとは違っていても あなたの選んだ答えなら 必ずあの人へと届けつなげていこう♪」
問いと答えを重ねていく歌に、観客達は興味深げに聴き入り、そして明るい曲調に子ども達などは声を合わせて。
そしてここからは、声を合わせて想いを伝える合唱パート。
「あなたの想いが、明日の国を作る 一人一人は弱いけれど、みんなの気持ちが一つになれば、きっと何かを成し遂げられる♪」
マリエルの明るい声が、良く通り響き渡る。
「より良い明日の為に、今を変えよう 黙っていては何も変わらないのだから、小さくても声を上げよう♪」
クレアの深く楽しげな声、ベアトリスの高く澄んだ声が和音を奏でる。
「その声はきっと大きなうねりになって、何かを変えていくはずだから♪」
ユノがウサギの耳を揺らして、楽しそうに歌う。ヴィルヘルミナの低めの声が、染み入るように響く。
「けして諦めないで」
グリューエリンが、真剣な瞳で観客の一人一人を見つめるように歌う。
「溢れる想いをこの札に込めて、今キミ一番の人を……♪」
ざくろがにっこり笑って、投票箱に票を入れる仕草をアピールする。
「私に 皆に そして未来に――さあみなで選びゆこう」
大きく響いた歌が終わると同時に、沿道から一斉に起こる盛大な拍手。
チラシ配りを手伝いながら、穹は歌が聴けて非常に満足であった。
「センキョうさぎさんですよぉ、よろしくぴょん♪」
演奏が終わったところで、麗美がタンバリンを腰に下げ、楽しげにチラシを配る。
「センキョって何かなーって思った人は、このチラシを見てほしいぴょん」
その隣では、雪だるまミリアムがチラシを渡しながらぎゅっと観客の手を握る。
「選挙出来ない私達の分までッ……貴方達は投票して……頼みましたよ……」
「あ……ああ! 必ず、清き一票を!」
観客の琴線になんか触れた!
観客も盛り上がってきたところで――飛び出したのは曲者!
ではなく、ヒースとロクス。
前方にいたヴァイスと、まずは軽い剣舞と殺陣を演じてみせる。それぞれの武器が交差する剣舞は華やかで、殺陣は真剣勝負ではないかと観客に息をのませる。
ヴァイスの突きをさっと左右に避けて、水平にした大剣に飛び乗った2人は、次の瞬間ヴァイスの腕力と己の跳躍力を利用してグリューエリンとヴィルヘルミナの前に躍り出る。
見栄えを重視した剣舞にわぁっと一同が沸いた後は――真っ向からぶつかり合うような殺陣。
ロクスは全体を映えさえるように動き、挑みかかるのはヒースだ。
「真っ直ぐな剣だね、お前は。その刃で得られるモノ、その舞で与えられるモノ……見届けたくなるような、ねぇ」
グリューエリンの剣を、ヒースはそう評する。剣を振るうことに精一杯で口を開けぬ少女は、けれど強い光を瞳に込めて大きく頷いた。
「皇帝に相応しい力だねぇ……その力で何を奪い、何を護るんだろうねぇ」
ヴィルヘルミナの剣を、ヒースはそう評する。皇帝は余裕に笑んだまま、つと目を細めて見せた。
「このくらいで実力を把握したと思われては心外だなあ。私についてくれば、私の実力もこの先私が何を成して行くのかも見届ける事が出来るよ」
ついてくればいいんじゃないかな?
その誘いに、ヒースは答えを返さなかった。あいまいに、目を細めたのみ。
見事な剣舞と殺陣に起こる拍手の中、再びロクスとヒースは観客の中に消える。
やがて、帝都の中でも貧しい区域に差し掛かる。豊かな地域に比べて、観客の視線はどこか冷ややかだけど。
「へーかも良くしたいって思ってる……皆で考えて、皆で新しい帝国、作りたいって……」
まずは仕組みを知って参加して欲しいと、シェリルは懸命に訴える。
「これからは……未来を自分達の手で……選ぶの……。 そう出来る環境を……へーかは、作ろうとしてるんだよ……」
「へぇ……まぁ、お嬢ちゃんがそんなに熱心なら、まぁ受け取っとくよ」
小さな手から荒れた手に、渡されるのは――選挙への、第一歩。
「シェリルには以前護衛を依頼した時、少し凄惨なものを見せてしまったからね。本来は子供に戦わせたくはないのだが、致し方ないか……」
そう呟いたヴィルヘルミナは、ふっと笑みを消してその様子を見つめた。
その表情は、すぐに沿道の市民からの声に、笑顔へと戻ったけれど――。
行列の後ろでは、沙希がくるくると大旗を回し、さっと広げて選挙をアピール。歌にも声を合わせ、楽しそうに顔を綻ばせる。
ロクスとヒースが襲い掛かる如き剣舞と殺陣が再び繰り広げられ、それが終わればまた踊りと歌――パレードは終わり、帝都に構えるレストランの好意の差し入れを囲んで、疲れた身体を休めながら昼食である。
お疲れさん、とロクスが、身分の上下を気にせず適当な労いの言葉をかけていく。その輪から外れて、ヒースはぽつりつ呟いた。
「立ち塞がるなら、斬る……その場面を楽しみにしているボクは、なんなんだろうねぇ」
唇に浮かぶのは、皮肉げな笑み。視線が、またふっと和やかな風景に溶けていく。
「所でグリューエリンさんやヴィルヘルミナさんは恋などされているのでしょうか……気になります」
きらきら目を輝かせて尋ねた沙希に、まだそのような方はと真っ赤になるグリューエリンの隣で、ヴィルヘルミナは余裕の笑みを浮かべる。
「今の所相手は見当もつかないが、強いて希望を上げるのならば自分よりも強い男がいいな」
いるのかそれ。
「仕事が恋人とは口が裂けても言えないが、叶えるべき理想が最重要であり、余所事に気を取られている余裕がないのだ」
つまりお忍びは余所事ではない。大事なことである。
「そも、王というのは人間らしい感情を理解はしてもそれに流されてはならぬものだ。人間らしさを捨てている以上、恋をするつもりはない……とは言わないでおこう」
「言わないんですね!」
「もしお相手が出来た時は、応援しますね♪」
「ああ、頼むよ」
そう嬉しそうな沙希に言って皇帝陛下は、差し入れの芋料理を手に取る。
「ミナお姉さんと一緒にお芋食べるのー☆」
ついに2文字まで愛称を削ったユノである。呼び方程度で存在の価値が揺らぐほど自分はヤワではないと、笑顔で受け入れるヴィルヘルミナ。
「怖いのは選挙でも表に出てこない人達だよねー★」
そう芋料理を食べながらにっこり言ったユノに、ヴィルヘルミナは真面目に答える。
「今は怖い人達でも、いつかは怖くなくなるよう、分かり合えるようにこの選挙がある。子供が心配する事なく選挙が実施できるようにしていかねばならないね」
傍らでそれを聞いていたシェリルが、ぽつり、と口を開いた。
「……帝国は……これから、変わっていく……それはきっと……良い方向だと……思う……」
ヴィルヘルミナは芋を食べる手を止め、軽く目を細めて真摯な言葉を受け止める。
「皆が良くしようって想うなら……きっと……良い風が……吹くよ……」
「私はその風こそ君達なのだと思う。どうかこれからも力を貸してほしい」
剣を握り国を握る大きな手に、戦いを始めたばかりの小さな手がおずおずと重なる。
2つの手は、力強く握り合わされた。
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相談卓 榊 兵庫(ka0010) 人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/09/13 18:20:31 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/13 16:52:16 |