ゲスト
(ka0000)
百年旅~お菓子の家
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2016/08/31 07:30
- 完成日
- 2016/09/12 22:53
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「闇の密売人」と呼ばれるベンド商会のベンドは、なまり言葉をしゃべるじいさんである。
「ほい、まいどおおきに。極彩色の街ヴァリオスの精錬されたアクセサリーに蒸気工業都市フマーレの精密な秤もあるで」
ここ、農業振興地ジェオルジの田舎村に立ち寄り各地から集めた品を売りさばいている。
「いよう、ベンドさん。儲かって仕方ないねぇ」
「さすが闇の密売人。その儲けがいつもどこに消えてるのやら」
中にはそう揶揄する者もいる。
「ええい、人助けで大損したばかりや。ごたごた言わず素直に儲けさせんかい!」
どうやら軽口を言い合えるほど信頼はあるようで。
「それより今年は豊作になりそうじゃ。役人は何とか丸め込む。いつもより多く買い取ってほしい」
こっそりそんなことを耳打ちする者もいる。税金のがれの密造酒のことである。「丸め込む」の言葉からある程度密約が交わされ見逃されているのだと判断される。
「人助けはするもんでな、今年は酒がぎょうさんいると思うとったとこや」
この言葉にがしりと握手を交わす。関係はすこぶる良好なようだ。
「それより、久しぶりにエルフの隠れ里にも足を伸ばそうと思うんやが、森の方は変わりないんか?」
「止しといた方がええ。ラパーチェ・ラーロが出ておる」
ベンド、耳を疑った。
「ああん、伝説の盗賊やん。いつの時代の話や?」
「最近、頭が歪虚になって復活して、隠者の連れてきたちびっ子やハンターたちが撃退したトコじゃ」
「ああ、ジルか……」
フラ・キャンディ(kz0121)の後見人であるジル・コバルトは現在、ベンド商会に多額の出資をしている。先ほどベンドの言った「人助け」たる、セル鉱山の開発とCAM用光学レンズの原料となる蛍石の産出に大きく貢献していたりするのだが、これは余談。
「しかし、いま困っとる風には見えんの」
ベンド、村の呑気な様子からそう判断する。
「ここでも暴れたあと、どこかに行った。……街に出るとか言いおったらしいが、別の村で新たにお菓子の家の噂が立ったりしてるからなぁ」
「お菓子の家?」
ベンド、首をひねる。
「酒好きが森で発見して、『もしかして新手の仮グモかもしれん』と逃げ帰ったそうな」
もしもワインとチーズの家だったらふらふら近寄って蜘蛛にやられたに違いないなど笑い話も。
「で、その村はどうしたんや?」
確認するベンド。
どうやらこの村を通じてハンターを頼んだらしい。
「仮グモ?」
場所は変わって、どこかの町の喫茶店。
「何それ。蜘蛛みたいな生き物?」
フラ・キャンディがテーブルの向かいに座るジル・コバルトに聞き返した。
「吐き出した糸を動物やら人のような形にして周囲に霧を発生させて迷い込ませ、作った人なんかに近寄ると襲ってくる蜘蛛じゃ」
「ええと、歪虚?」
「いや、普通の生き物じゃの」
どうやらそんな生態の蜘蛛がいるらしい。
「霧には弱い幻覚作用があるから霧の中に浮かぶ人影や動物の影にだまされて、仲間と思ったり餌だと思って近寄った人や動物を襲うんじゃ」
つまり、霧が普通の蜘蛛の巣に当たるの、と説明する。正体は蜘蛛なのだが、遭遇した時は人や動物に間違われるので「仮グモ」と呼ばれるようで。
「あれ?」
ここでフラ、首を傾げた。
「その、お菓子の家を見た人って、幻覚作用にも掛かってたんでしょ? どうして好物のワインとかチーズの家とかに見えなかったんだろう?」
「ワインで家はつくれまい。大方チーズとクラッカーの酒のつまみだけ見えたんじゃないかの?」
「でも……」
「ちょうど奥さんに禁酒を言い渡されチーズやらクラッカーばかり食らっておったらしいよ。もういらない、とむしろ一目散に逃げ帰ったんだと」
「……かわいそうだね。って、あれ?」
フラ、汗たら~するがそれで命が助かったのだし、と複雑な感じに。
「とにかく、家をつくってしまうくらいだからたくさんいるはずじゃ。放っておけんから退治してほしいと依頼があった。大きさは四人掛けのテーブル程度で、かなり跳躍力があるようじゃ」
「うん、分かったよ」
そんなこんなで退治に行くことになる。
「ほい、まいどおおきに。極彩色の街ヴァリオスの精錬されたアクセサリーに蒸気工業都市フマーレの精密な秤もあるで」
ここ、農業振興地ジェオルジの田舎村に立ち寄り各地から集めた品を売りさばいている。
「いよう、ベンドさん。儲かって仕方ないねぇ」
「さすが闇の密売人。その儲けがいつもどこに消えてるのやら」
中にはそう揶揄する者もいる。
「ええい、人助けで大損したばかりや。ごたごた言わず素直に儲けさせんかい!」
どうやら軽口を言い合えるほど信頼はあるようで。
「それより今年は豊作になりそうじゃ。役人は何とか丸め込む。いつもより多く買い取ってほしい」
こっそりそんなことを耳打ちする者もいる。税金のがれの密造酒のことである。「丸め込む」の言葉からある程度密約が交わされ見逃されているのだと判断される。
「人助けはするもんでな、今年は酒がぎょうさんいると思うとったとこや」
この言葉にがしりと握手を交わす。関係はすこぶる良好なようだ。
「それより、久しぶりにエルフの隠れ里にも足を伸ばそうと思うんやが、森の方は変わりないんか?」
「止しといた方がええ。ラパーチェ・ラーロが出ておる」
ベンド、耳を疑った。
「ああん、伝説の盗賊やん。いつの時代の話や?」
「最近、頭が歪虚になって復活して、隠者の連れてきたちびっ子やハンターたちが撃退したトコじゃ」
「ああ、ジルか……」
フラ・キャンディ(kz0121)の後見人であるジル・コバルトは現在、ベンド商会に多額の出資をしている。先ほどベンドの言った「人助け」たる、セル鉱山の開発とCAM用光学レンズの原料となる蛍石の産出に大きく貢献していたりするのだが、これは余談。
「しかし、いま困っとる風には見えんの」
ベンド、村の呑気な様子からそう判断する。
「ここでも暴れたあと、どこかに行った。……街に出るとか言いおったらしいが、別の村で新たにお菓子の家の噂が立ったりしてるからなぁ」
「お菓子の家?」
ベンド、首をひねる。
「酒好きが森で発見して、『もしかして新手の仮グモかもしれん』と逃げ帰ったそうな」
もしもワインとチーズの家だったらふらふら近寄って蜘蛛にやられたに違いないなど笑い話も。
「で、その村はどうしたんや?」
確認するベンド。
どうやらこの村を通じてハンターを頼んだらしい。
「仮グモ?」
場所は変わって、どこかの町の喫茶店。
「何それ。蜘蛛みたいな生き物?」
フラ・キャンディがテーブルの向かいに座るジル・コバルトに聞き返した。
「吐き出した糸を動物やら人のような形にして周囲に霧を発生させて迷い込ませ、作った人なんかに近寄ると襲ってくる蜘蛛じゃ」
「ええと、歪虚?」
「いや、普通の生き物じゃの」
どうやらそんな生態の蜘蛛がいるらしい。
「霧には弱い幻覚作用があるから霧の中に浮かぶ人影や動物の影にだまされて、仲間と思ったり餌だと思って近寄った人や動物を襲うんじゃ」
つまり、霧が普通の蜘蛛の巣に当たるの、と説明する。正体は蜘蛛なのだが、遭遇した時は人や動物に間違われるので「仮グモ」と呼ばれるようで。
「あれ?」
ここでフラ、首を傾げた。
「その、お菓子の家を見た人って、幻覚作用にも掛かってたんでしょ? どうして好物のワインとかチーズの家とかに見えなかったんだろう?」
「ワインで家はつくれまい。大方チーズとクラッカーの酒のつまみだけ見えたんじゃないかの?」
「でも……」
「ちょうど奥さんに禁酒を言い渡されチーズやらクラッカーばかり食らっておったらしいよ。もういらない、とむしろ一目散に逃げ帰ったんだと」
「……かわいそうだね。って、あれ?」
フラ、汗たら~するがそれで命が助かったのだし、と複雑な感じに。
「とにかく、家をつくってしまうくらいだからたくさんいるはずじゃ。放っておけんから退治してほしいと依頼があった。大きさは四人掛けのテーブル程度で、かなり跳躍力があるようじゃ」
「うん、分かったよ」
そんなこんなで退治に行くことになる。
リプレイ本文
●
「私の土蜘蛛の術の方が、強いんだからっ!」
森の中でルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がふんすと胸を張った。
「土蜘蛛って?」
隣にいるのはフラ・キャンディ(kz0121)。素朴な疑問。
「地面に穴を掘る蜘蛛ですよぅ」
横から弓月・小太(ka4679)が説明する。
一行はすでに森の中。
目撃情報のあった場所へと近付いている。
「しかし、お菓子の家とはねぇ」
ヴァイス(ka0364)が行く手を邪魔する枝を払いつつ。
「菓子グモ……いや。白い蜘蛛は地域によっては幸運の象徴らしいな」
ぽそっ、と何かをごにょごにょこぼしてから鞍馬 真(ka5819)が続く。
「はー……残念」
そんな傍では玉兎 小夜(ka6009)が肩を落としてとぼとぼ。
「小夜さん、どうしたの?」
「……蜘蛛なー」
フラが気にして顔を覗き込んで来たので小夜は顔を上げてため息交じり。眉は少し困ったように。
「朝に見た蜘蛛は神様の使い。夜に見る蜘蛛は親の仇の如くぶっころせっていうけど……」
「今回はお菓子の家の主、だね」
小夜の呟きに霧雨 悠月(ka4130)がくすくす笑っている。
「村で聞いた話じゃ、こっちに来る予定の行商人もないし村の猟師なんかもこっちにゃ立ち寄ってないって言ってたぜ?」
「なるほど。もしも誰かがいても幻覚と判断していいわけだな」
「そういうこった」
ヴァイスの話に頷く真。ヴァイス、にやり。いきなり手柄である。
「じゃ、ぶっころ」
小夜が無表情なのは、「クモかー。このヴォーパルバニーにとって、やつらは刈る首がわからんぞ……」などと取らぬ狸の首算よ……皮算用をしていたから。
「はー、器用な蜘蛛がいたものねー」
おっと。
キーリ(ka4642)は溜息ついて何か大人しいぞ。
「どうしちゃったんですか、キーリさん?」
「真さんが言うには白いクモは幸運の象徴らしいですよ」
ルンルンが心配そうに声を掛け、悠月がキーリの白い服を軽く摘まんでからかってみた。
「私のどこが白グモよ!」
白髪でもあるキーリが元気に突っ込んだところで改めてどうしたのか聞くと……。
「ん? お菓子の家とかメルヘンチックで良いわね。私はヘンゼルでもグレーテルでもなくて赤ずきんだけど」
「そうだね。絵本でよく見たお菓子の家、ちょっと見てみたいよね」
どうやらセンチメンタルな感じだったらしい。ぽそりと話すキーリに明るく頷く悠月。
「赤ずきんは襲われちゃいます」
「囮に活用できるかもですぅ」
横ではルンルンと小太がキーリの言葉尻からごにゃごにゃ言ってるが。
「んー、囮用とはいえ、家が作れちゃう訳じゃない? 私もそういう能力欲しいわ。快適野宿生活」
「家付き庭付きの野宿かぁ。快適そうではあるね」
聞こえてないのかキーリは続ける。悠月は真面目に付き合っているが……。
「白グモ願望あるじゃねぇかよ」
「まあ、幸運の象徴だ」
ヴァイスも突っ込んだ! 真はフォローに徹する!
「なんかこう、周りが蜘蛛の糸のように絡んでくるわね」
「……いた」
周りで好き放題言われるキーリが眉をぴくりとやった時、皆の代わりに前方警戒をしていた小夜がぴたりと止まった。
「霧が……立ち込めてるね」
「幻覚の範囲の外からなら、きっと惑わされないんだからっ……ジュゲームリリカルクルクルマジカル、ルンルン忍法分身の術!」
フラの言葉に、早速ルンルンが式術で人型の紙を操り霧の中に偵察にやる。
白い霧は、結構な範囲に広がっている。
●
「居ます居ます。白い人形に白い家はもうちょっと左が玄関……クモの糸かぁ。お菓子の家、期待してたのに」
念を解いたルンルン。プンプンしながら立ち上がる。
「仮グモはいたか?」
「中はどうだ?」
真とヴァイスが追加の情報を求めた。
「あ……えへへ」
ルンルン、ほかは注意がお留守のようで。
「大方中にいるんでしょ。スリープクラウドでいい夢見てもらうわ」
「中の狼さんに、ですかぁ」
立ち上がったキーリにぽそりと赤ずきんネタを振る小太。キーリ、「こだわるわね」。
「戸締りはしっかりしてるんじゃないかな?」
今度は悠月が催眠ガスの脆弱性を指摘する。
「分かったわよ。壁をぶち抜けばいいのよね」
めんどくさいわねー、とキーリ。
そんなやり取りを尻目に小夜がまず踏み込む。
「待って、小夜さん」
「フラさん、大丈夫ですかぁ。霧には幻覚効果がありますよぉ」
気付いたフラも続き、小太が慌てて追った。
さて、小夜。
「あれは……」
足を止めた。
薄い霧の中の人影に気付いた。
目を凝らす。
瞬間、敵意をむき出しにした。雪のように白いロップイヤーの耳が現れて垂れ、丸い毛玉のような尻尾がスカートのお尻の部分にぴょこんと出現した。覚醒だ。
「なんで、お前が」
小夜の見た人物は、小夜自身だった。ただし、兎の耳はなく赤い服を着ていた。
めらり、と兎小夜の赤い瞳が揺れた。
「もうお前には身体は返さない。…………コロス」
斬魔刀「祢々切丸」の黒い刀身が翻る。疾風剣で自分の分身、赤服の小夜をどすっと貫いた。
霧の中、重なる二つの影。同時に仮グモの影がその二つの影に音もなく飛びかかるのだった。
続いたフラ。
「お母さん?」
霧の中、母の面影を見た。
それが何者かに貫かれた。思わず駆け寄ろうとする。
そこに、何かが覆いかぶさる。
次の瞬間、目の前が白くなった。
「ふぇ? ここは家……」
小太は家の方に魅了されていた。
懐かしさがこみ上げる。
ただ、魔導銃「魔弾」にだけは両手を掛けている。
「あ。お、お兄ちゃんとお姉ちゃん達が何でここにぃ!?」
窓から見える懐かしい面影。実家は神社で、家族は神職として仕えている。
その時、小太の呟きが聞こえたように兄と姉がぐるりとこちらを向いたッ!
その表情は!
「ぼ、僕は何も悪いことはしてないですよぉ!?」
びくぅっ、と怯えた。思わず魔導銃を取り落す。
●
ルンルンたちは玄関側へと回り込もうとしていた。
「はっ! テーブル……」
そのルンルン。霧の中、庭に出されたテーブルに目を奪われた。誰かが向かい合って座っているようだ。
「次のターン、ドロー……低レベルを生贄に高レベルを召喚……」
見開かれたルンルンの瞳。幻の動きに合わせうわ言のような呟き。
「カードパックの家……こっちに来てから、カードが買えない相手が居ないで辛かったのです……あの家に行けば」
かつてのカードゲームのライバルたちのような仕草を見て自称チャンプの血がうずく。ふらふらとテーブルに吸い寄せられる。
こちら、裏に回ろうとしている真。
「ん?」
音もなく移動していたが、霧の中に人影を見て立ち止まった。
自分より少し年下の、黒髪の女性だ。
「……」
横を向いたまま見詰める真。女性、霧の中で見返すのみ。試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」の柄に手を掛けた。
「……ぁ」
もしかしたら見た面影かもしれないと思い直し何か声を掛けようとしたが、言葉が続かない。唇が動いただけだ。
(……誰だ?)
自問する。
友人か。
恋人か。
それとも妹か?
(分からない)
そんな思いを女性も読み取ったか、寂しい瞳をしたような気がした。自分もそんな目をしてるのだろうと自覚する真。
が、それだけ。
柄に掛けた手を放す。
はっきりしない追憶を断ち切るのにそんなものはいらないと、瞳を伏せ歩き出す。
そんな真のシルエットに、大きなクモのシルエットが飛びかかるのだった。
場面は戻って、正面組。
「懐かしいな」
ヴァイスは故郷の家を幻視していた。
一瞬憧憬に緩む瞳。
いや、すぐに険しくなったぞ。
「……続きを、見せるつもりか?」
ひねり出す、嫌悪の響きを帯びる言葉。
「歪虚に村が飲み込まれる悪夢を、また見なくちゃならないのか?」
誰にも聞かれないように呟き一呼吸置くと冷静さを取り戻した。スピア「ベーレイニガン」をくるんと回して構える。
悠月はその時、ルンルンの見ていたテーブルに向いていた。
「……お母様? それに皆……」
霧の中、テーブルに座る人物の影を見てそんな呟き。
髪の長い、銀髪の女性がちくちくと縫製をしているように見える。いつも妹たちはそんな母に構ってほしくて話し掛けてり傍に寄って袖を引っ張ったり……。
「そっか……これは、放っておけないね」
あるいは、実際にそんな立ち位置にいた時があったのかもしれない。
一歩引いた位置で、母の優しさや無邪気な姉妹たちの輪がよく見えた。
「迷い込んだ子供にとってはいいエサだよ……」
一歩引いた位置。
悠月の言葉は少しの寂しさを帯びていた。
日本刀「白狼」を抜いた。
寂しい音がした。
そして、キーリ。
「むぅ……」
けだるそうな声を出したのは、霧の中に誰か面影を見たから。
「嫌ね。姉を探すっていう、町に出てきた当初の目的を思い出しちゃったわ」
眉間に皺を寄せ絞り出す言葉。嫌悪の響きがある。
幻は、実の姉。
「全く、家業を私に押し付けて勝手に家を飛び出して……」
全身に金色のルーン文字のような紋様が浮かぶ。瞳は金色の炎を湛えたように赤金に揺らめく。
聖儀杖「カエルム」を掲げたところで一転、微笑した。
幻が消えたのだ。
「どこでどうしてるのかしら」
安心したような笑み。
そして。
「心配なんてしてないけど!」
迷いなく杖を振り上げ、ファイアボールをぶちかます!
●
――どぉん……。
仮グモの家の壁にファイアボールが炸裂。これでぼんやりしていた者もはっと我に返る。
もちろん仮グモも動き出す。家の煙突から一匹飛んで来た。
「皆、準備はいいか?!」
叫んだヴァイスは右手の藪に潜んでいた仮グモが突っ込んできているのに気付いていた。注意喚起をしながら向きを変えて白銀の穂先を構え突っ込む。ぐじゃり、とクモの腹を貫いた。
が、敵は少々体が壊れても動く。抱き着かれて牙を受けそうになるが間一髪槍とともに放り投げた。
「まさか徹刺から理を使わされるとはな」
離れればこちらのもの。
試作振動刀「オートMURAMASA」を抜き地面に斬りつけるように叩き潰した。
悠月は壊れた壁に向かっていた。
わさわさっ、と中にいたクモがこぞって出て来ている。
そこに横から刀ごと突っ込む。
――どすっ!
「……懐かしい幻をどうも」
両手で逆手持ちした刀を壁に突き刺す。乱れた銀色の髪の奥に赤い瞳が光っている。
もちろん、クモも一体串刺しだ。
が、しつこい。もそりと腹を動かした。糸が来る。
「用意周到な罠だね。吃驚するくらい」
悠月、バックステップ。糸は刀であえて受け、手裏剣を投げてとどめ。
間髪入れず横から別のクモが来るが刀で受けて弾き返す。
「……こっちも用意周到になるくらいにね」
刀は飛ばしてくる糸を絡めるのに使う。
その時、キーリは敵の大群と正対していた。
「駆除よ駆除。殺虫剤系魔法なんて無いものかしらね。あったら姉にぶっかけてやるのに」
スリープクラウドは使わず、ひたすらアイスボルト。確実に敵の動きを一瞬固めて遅滞戦闘に専念している。「冗談よ」とつぶやく。軽口も軽快だ。
「はっ!」
ルンルンも爆発音で我に返っている。
ぴょーん、と煙突から出たクモに気付いた。
「よくも夢見させてくれちゃいましたっ。怒りぷんぷんなんだからっ」
扇符「六花」をびらりと広げ、走る。
目指すはクモの着地点!
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! 罠にかかったのは貴方なんだからっ」
びたりと屈んで結界を張る。着地するクモの足元が泥となり絡む。
「もらった!」
一匹潰したヴァイスが殺到し、殲滅。
一方のルンルンは。
「ルンルン忍法五星花! 煌めいて、星の花弁☆」
綺羅っ☆
ルンルンの光とクモたちの糸が交錯する。
相討ちで動きが鈍る。
●
時は若干遡る。
「……キモチワルイ」
小夜、仮グモにのしかかられた瞬間、斬魔刀を引き抜く動きと共に放り投げるようにした。
仮グモは駆け寄っていたフラに糸を浴びせていた。小夜は無傷。フラは糸を食らって倒れていた。
それがさらに小夜の機嫌を傾けさせた。
「ムカつく」
呼吸を整え一気に踏み込み斬った。
「……尻を斬られて糸は出せないでしょう」
糸を封じてから地面もろともぶった切り、家に向かう。
そして小太。
「うー、変な幻覚を見せてくれたお礼をしないとぉ。纏めて射撃しますよぉ!」
取り落した銃の音で我に返っていた。しゃがんで取るとそのまま片膝で構える。
ちょうどキーリが壁を爆破したところだ。
「相手の動きを制限するのですぅっ。今のうちに皆さん、攻撃しちゃってくださぃー!」
冷気を纏った弾丸を一発。ダメージに加え氷で一瞬敵の動きを固めた。悠月が暴れている。ルンルンが地縛符で戦っている。もう一発は牽制射撃。悠月がこの隙に剣の糸を振り払う。
やがて、ルンルンが光の攻撃。仮グモも一斉に糸を吐く。
その間隙を縫って兎が跳ねた。
紅蓮のオーラを纏うヴァイスが斬り込む。
銀の狼も突っ込んだ。
「しかしあれね。白くて大きくて跳ね回る蜘蛛とか精神的にも害虫でしかないわね」
「これで終わりですぅ」
キーリと小太の追撃で玄関の攻防は終わった。
裏口でも銃声が響いていた。
「気持ち悪い……」
真である。
柄から手を放したところクモに飛びかかられたが、魔導拳銃剣「エルス」の銃撃から即座に直刀モードに切り替えばっさりとやったところだ。
「家は糸と……木の枝や岩で板を作って壁にして組み合わせているのか」
裏口から入り分析する。内装はない。
「そっちも片付いたか?」
正面に開いた穴からヴァイスたちも入って来た。全員集合である。
そして気付いた。
家の天井に最後の一匹が張り付いていることを。ぶしゅう、と毒を吐いてきた。
「待ち伏せか?」
「苛立たせた罪、くらっとけ!」
真と、毒を受けた小夜がいち早く反応。
最後の小さめの一匹をぶった切った。
その時だった!
――どどぉ……。
「まさか崩れるとはな」
ヴァイスがぼやく。
皆、糸が消えて崩落した枝や岩をしこたま食らった。
「仮グモならぬ仮組みだったな」
真もぽそり。
そしてフラがしょげていることに気付く。
「あ、あの、フラさん、大丈……あぅ」
小太も気付き声を掛けると抱き着いてきた。胸に顔を押し付け、肩を震わせて。
「……寂しくなんか、ない」
「ええと、その……僕はフラさんが呼んでくれればいつでも来ますからぁ。ずっと一緒にいますよぉ?」
小太の胸に、こくこくと頷く動きが伝わった。
「また、歌でも歌おう」
悠月が励ました。自らに言い聞かせるようでもある。
「そうだな」
真とヴァイスがフラの背中をぽむと優しく叩く。
「そう。寂しくなんかないのよ」
姉の幻影を見たか、キーリがシャドウボクシングをしつつ励ます。
「まずは戻って報告しちゃいます」
ルンルンも元気よく。
「そう……あの人の所に帰ろ」
立ち止まっていた小夜もきびすを返すのだった。
「私の土蜘蛛の術の方が、強いんだからっ!」
森の中でルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がふんすと胸を張った。
「土蜘蛛って?」
隣にいるのはフラ・キャンディ(kz0121)。素朴な疑問。
「地面に穴を掘る蜘蛛ですよぅ」
横から弓月・小太(ka4679)が説明する。
一行はすでに森の中。
目撃情報のあった場所へと近付いている。
「しかし、お菓子の家とはねぇ」
ヴァイス(ka0364)が行く手を邪魔する枝を払いつつ。
「菓子グモ……いや。白い蜘蛛は地域によっては幸運の象徴らしいな」
ぽそっ、と何かをごにょごにょこぼしてから鞍馬 真(ka5819)が続く。
「はー……残念」
そんな傍では玉兎 小夜(ka6009)が肩を落としてとぼとぼ。
「小夜さん、どうしたの?」
「……蜘蛛なー」
フラが気にして顔を覗き込んで来たので小夜は顔を上げてため息交じり。眉は少し困ったように。
「朝に見た蜘蛛は神様の使い。夜に見る蜘蛛は親の仇の如くぶっころせっていうけど……」
「今回はお菓子の家の主、だね」
小夜の呟きに霧雨 悠月(ka4130)がくすくす笑っている。
「村で聞いた話じゃ、こっちに来る予定の行商人もないし村の猟師なんかもこっちにゃ立ち寄ってないって言ってたぜ?」
「なるほど。もしも誰かがいても幻覚と判断していいわけだな」
「そういうこった」
ヴァイスの話に頷く真。ヴァイス、にやり。いきなり手柄である。
「じゃ、ぶっころ」
小夜が無表情なのは、「クモかー。このヴォーパルバニーにとって、やつらは刈る首がわからんぞ……」などと取らぬ狸の首算よ……皮算用をしていたから。
「はー、器用な蜘蛛がいたものねー」
おっと。
キーリ(ka4642)は溜息ついて何か大人しいぞ。
「どうしちゃったんですか、キーリさん?」
「真さんが言うには白いクモは幸運の象徴らしいですよ」
ルンルンが心配そうに声を掛け、悠月がキーリの白い服を軽く摘まんでからかってみた。
「私のどこが白グモよ!」
白髪でもあるキーリが元気に突っ込んだところで改めてどうしたのか聞くと……。
「ん? お菓子の家とかメルヘンチックで良いわね。私はヘンゼルでもグレーテルでもなくて赤ずきんだけど」
「そうだね。絵本でよく見たお菓子の家、ちょっと見てみたいよね」
どうやらセンチメンタルな感じだったらしい。ぽそりと話すキーリに明るく頷く悠月。
「赤ずきんは襲われちゃいます」
「囮に活用できるかもですぅ」
横ではルンルンと小太がキーリの言葉尻からごにゃごにゃ言ってるが。
「んー、囮用とはいえ、家が作れちゃう訳じゃない? 私もそういう能力欲しいわ。快適野宿生活」
「家付き庭付きの野宿かぁ。快適そうではあるね」
聞こえてないのかキーリは続ける。悠月は真面目に付き合っているが……。
「白グモ願望あるじゃねぇかよ」
「まあ、幸運の象徴だ」
ヴァイスも突っ込んだ! 真はフォローに徹する!
「なんかこう、周りが蜘蛛の糸のように絡んでくるわね」
「……いた」
周りで好き放題言われるキーリが眉をぴくりとやった時、皆の代わりに前方警戒をしていた小夜がぴたりと止まった。
「霧が……立ち込めてるね」
「幻覚の範囲の外からなら、きっと惑わされないんだからっ……ジュゲームリリカルクルクルマジカル、ルンルン忍法分身の術!」
フラの言葉に、早速ルンルンが式術で人型の紙を操り霧の中に偵察にやる。
白い霧は、結構な範囲に広がっている。
●
「居ます居ます。白い人形に白い家はもうちょっと左が玄関……クモの糸かぁ。お菓子の家、期待してたのに」
念を解いたルンルン。プンプンしながら立ち上がる。
「仮グモはいたか?」
「中はどうだ?」
真とヴァイスが追加の情報を求めた。
「あ……えへへ」
ルンルン、ほかは注意がお留守のようで。
「大方中にいるんでしょ。スリープクラウドでいい夢見てもらうわ」
「中の狼さんに、ですかぁ」
立ち上がったキーリにぽそりと赤ずきんネタを振る小太。キーリ、「こだわるわね」。
「戸締りはしっかりしてるんじゃないかな?」
今度は悠月が催眠ガスの脆弱性を指摘する。
「分かったわよ。壁をぶち抜けばいいのよね」
めんどくさいわねー、とキーリ。
そんなやり取りを尻目に小夜がまず踏み込む。
「待って、小夜さん」
「フラさん、大丈夫ですかぁ。霧には幻覚効果がありますよぉ」
気付いたフラも続き、小太が慌てて追った。
さて、小夜。
「あれは……」
足を止めた。
薄い霧の中の人影に気付いた。
目を凝らす。
瞬間、敵意をむき出しにした。雪のように白いロップイヤーの耳が現れて垂れ、丸い毛玉のような尻尾がスカートのお尻の部分にぴょこんと出現した。覚醒だ。
「なんで、お前が」
小夜の見た人物は、小夜自身だった。ただし、兎の耳はなく赤い服を着ていた。
めらり、と兎小夜の赤い瞳が揺れた。
「もうお前には身体は返さない。…………コロス」
斬魔刀「祢々切丸」の黒い刀身が翻る。疾風剣で自分の分身、赤服の小夜をどすっと貫いた。
霧の中、重なる二つの影。同時に仮グモの影がその二つの影に音もなく飛びかかるのだった。
続いたフラ。
「お母さん?」
霧の中、母の面影を見た。
それが何者かに貫かれた。思わず駆け寄ろうとする。
そこに、何かが覆いかぶさる。
次の瞬間、目の前が白くなった。
「ふぇ? ここは家……」
小太は家の方に魅了されていた。
懐かしさがこみ上げる。
ただ、魔導銃「魔弾」にだけは両手を掛けている。
「あ。お、お兄ちゃんとお姉ちゃん達が何でここにぃ!?」
窓から見える懐かしい面影。実家は神社で、家族は神職として仕えている。
その時、小太の呟きが聞こえたように兄と姉がぐるりとこちらを向いたッ!
その表情は!
「ぼ、僕は何も悪いことはしてないですよぉ!?」
びくぅっ、と怯えた。思わず魔導銃を取り落す。
●
ルンルンたちは玄関側へと回り込もうとしていた。
「はっ! テーブル……」
そのルンルン。霧の中、庭に出されたテーブルに目を奪われた。誰かが向かい合って座っているようだ。
「次のターン、ドロー……低レベルを生贄に高レベルを召喚……」
見開かれたルンルンの瞳。幻の動きに合わせうわ言のような呟き。
「カードパックの家……こっちに来てから、カードが買えない相手が居ないで辛かったのです……あの家に行けば」
かつてのカードゲームのライバルたちのような仕草を見て自称チャンプの血がうずく。ふらふらとテーブルに吸い寄せられる。
こちら、裏に回ろうとしている真。
「ん?」
音もなく移動していたが、霧の中に人影を見て立ち止まった。
自分より少し年下の、黒髪の女性だ。
「……」
横を向いたまま見詰める真。女性、霧の中で見返すのみ。試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」の柄に手を掛けた。
「……ぁ」
もしかしたら見た面影かもしれないと思い直し何か声を掛けようとしたが、言葉が続かない。唇が動いただけだ。
(……誰だ?)
自問する。
友人か。
恋人か。
それとも妹か?
(分からない)
そんな思いを女性も読み取ったか、寂しい瞳をしたような気がした。自分もそんな目をしてるのだろうと自覚する真。
が、それだけ。
柄に掛けた手を放す。
はっきりしない追憶を断ち切るのにそんなものはいらないと、瞳を伏せ歩き出す。
そんな真のシルエットに、大きなクモのシルエットが飛びかかるのだった。
場面は戻って、正面組。
「懐かしいな」
ヴァイスは故郷の家を幻視していた。
一瞬憧憬に緩む瞳。
いや、すぐに険しくなったぞ。
「……続きを、見せるつもりか?」
ひねり出す、嫌悪の響きを帯びる言葉。
「歪虚に村が飲み込まれる悪夢を、また見なくちゃならないのか?」
誰にも聞かれないように呟き一呼吸置くと冷静さを取り戻した。スピア「ベーレイニガン」をくるんと回して構える。
悠月はその時、ルンルンの見ていたテーブルに向いていた。
「……お母様? それに皆……」
霧の中、テーブルに座る人物の影を見てそんな呟き。
髪の長い、銀髪の女性がちくちくと縫製をしているように見える。いつも妹たちはそんな母に構ってほしくて話し掛けてり傍に寄って袖を引っ張ったり……。
「そっか……これは、放っておけないね」
あるいは、実際にそんな立ち位置にいた時があったのかもしれない。
一歩引いた位置で、母の優しさや無邪気な姉妹たちの輪がよく見えた。
「迷い込んだ子供にとってはいいエサだよ……」
一歩引いた位置。
悠月の言葉は少しの寂しさを帯びていた。
日本刀「白狼」を抜いた。
寂しい音がした。
そして、キーリ。
「むぅ……」
けだるそうな声を出したのは、霧の中に誰か面影を見たから。
「嫌ね。姉を探すっていう、町に出てきた当初の目的を思い出しちゃったわ」
眉間に皺を寄せ絞り出す言葉。嫌悪の響きがある。
幻は、実の姉。
「全く、家業を私に押し付けて勝手に家を飛び出して……」
全身に金色のルーン文字のような紋様が浮かぶ。瞳は金色の炎を湛えたように赤金に揺らめく。
聖儀杖「カエルム」を掲げたところで一転、微笑した。
幻が消えたのだ。
「どこでどうしてるのかしら」
安心したような笑み。
そして。
「心配なんてしてないけど!」
迷いなく杖を振り上げ、ファイアボールをぶちかます!
●
――どぉん……。
仮グモの家の壁にファイアボールが炸裂。これでぼんやりしていた者もはっと我に返る。
もちろん仮グモも動き出す。家の煙突から一匹飛んで来た。
「皆、準備はいいか?!」
叫んだヴァイスは右手の藪に潜んでいた仮グモが突っ込んできているのに気付いていた。注意喚起をしながら向きを変えて白銀の穂先を構え突っ込む。ぐじゃり、とクモの腹を貫いた。
が、敵は少々体が壊れても動く。抱き着かれて牙を受けそうになるが間一髪槍とともに放り投げた。
「まさか徹刺から理を使わされるとはな」
離れればこちらのもの。
試作振動刀「オートMURAMASA」を抜き地面に斬りつけるように叩き潰した。
悠月は壊れた壁に向かっていた。
わさわさっ、と中にいたクモがこぞって出て来ている。
そこに横から刀ごと突っ込む。
――どすっ!
「……懐かしい幻をどうも」
両手で逆手持ちした刀を壁に突き刺す。乱れた銀色の髪の奥に赤い瞳が光っている。
もちろん、クモも一体串刺しだ。
が、しつこい。もそりと腹を動かした。糸が来る。
「用意周到な罠だね。吃驚するくらい」
悠月、バックステップ。糸は刀であえて受け、手裏剣を投げてとどめ。
間髪入れず横から別のクモが来るが刀で受けて弾き返す。
「……こっちも用意周到になるくらいにね」
刀は飛ばしてくる糸を絡めるのに使う。
その時、キーリは敵の大群と正対していた。
「駆除よ駆除。殺虫剤系魔法なんて無いものかしらね。あったら姉にぶっかけてやるのに」
スリープクラウドは使わず、ひたすらアイスボルト。確実に敵の動きを一瞬固めて遅滞戦闘に専念している。「冗談よ」とつぶやく。軽口も軽快だ。
「はっ!」
ルンルンも爆発音で我に返っている。
ぴょーん、と煙突から出たクモに気付いた。
「よくも夢見させてくれちゃいましたっ。怒りぷんぷんなんだからっ」
扇符「六花」をびらりと広げ、走る。
目指すはクモの着地点!
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! 罠にかかったのは貴方なんだからっ」
びたりと屈んで結界を張る。着地するクモの足元が泥となり絡む。
「もらった!」
一匹潰したヴァイスが殺到し、殲滅。
一方のルンルンは。
「ルンルン忍法五星花! 煌めいて、星の花弁☆」
綺羅っ☆
ルンルンの光とクモたちの糸が交錯する。
相討ちで動きが鈍る。
●
時は若干遡る。
「……キモチワルイ」
小夜、仮グモにのしかかられた瞬間、斬魔刀を引き抜く動きと共に放り投げるようにした。
仮グモは駆け寄っていたフラに糸を浴びせていた。小夜は無傷。フラは糸を食らって倒れていた。
それがさらに小夜の機嫌を傾けさせた。
「ムカつく」
呼吸を整え一気に踏み込み斬った。
「……尻を斬られて糸は出せないでしょう」
糸を封じてから地面もろともぶった切り、家に向かう。
そして小太。
「うー、変な幻覚を見せてくれたお礼をしないとぉ。纏めて射撃しますよぉ!」
取り落した銃の音で我に返っていた。しゃがんで取るとそのまま片膝で構える。
ちょうどキーリが壁を爆破したところだ。
「相手の動きを制限するのですぅっ。今のうちに皆さん、攻撃しちゃってくださぃー!」
冷気を纏った弾丸を一発。ダメージに加え氷で一瞬敵の動きを固めた。悠月が暴れている。ルンルンが地縛符で戦っている。もう一発は牽制射撃。悠月がこの隙に剣の糸を振り払う。
やがて、ルンルンが光の攻撃。仮グモも一斉に糸を吐く。
その間隙を縫って兎が跳ねた。
紅蓮のオーラを纏うヴァイスが斬り込む。
銀の狼も突っ込んだ。
「しかしあれね。白くて大きくて跳ね回る蜘蛛とか精神的にも害虫でしかないわね」
「これで終わりですぅ」
キーリと小太の追撃で玄関の攻防は終わった。
裏口でも銃声が響いていた。
「気持ち悪い……」
真である。
柄から手を放したところクモに飛びかかられたが、魔導拳銃剣「エルス」の銃撃から即座に直刀モードに切り替えばっさりとやったところだ。
「家は糸と……木の枝や岩で板を作って壁にして組み合わせているのか」
裏口から入り分析する。内装はない。
「そっちも片付いたか?」
正面に開いた穴からヴァイスたちも入って来た。全員集合である。
そして気付いた。
家の天井に最後の一匹が張り付いていることを。ぶしゅう、と毒を吐いてきた。
「待ち伏せか?」
「苛立たせた罪、くらっとけ!」
真と、毒を受けた小夜がいち早く反応。
最後の小さめの一匹をぶった切った。
その時だった!
――どどぉ……。
「まさか崩れるとはな」
ヴァイスがぼやく。
皆、糸が消えて崩落した枝や岩をしこたま食らった。
「仮グモならぬ仮組みだったな」
真もぽそり。
そしてフラがしょげていることに気付く。
「あ、あの、フラさん、大丈……あぅ」
小太も気付き声を掛けると抱き着いてきた。胸に顔を押し付け、肩を震わせて。
「……寂しくなんか、ない」
「ええと、その……僕はフラさんが呼んでくれればいつでも来ますからぁ。ずっと一緒にいますよぉ?」
小太の胸に、こくこくと頷く動きが伝わった。
「また、歌でも歌おう」
悠月が励ました。自らに言い聞かせるようでもある。
「そうだな」
真とヴァイスがフラの背中をぽむと優しく叩く。
「そう。寂しくなんかないのよ」
姉の幻影を見たか、キーリがシャドウボクシングをしつつ励ます。
「まずは戻って報告しちゃいます」
ルンルンも元気よく。
「そう……あの人の所に帰ろ」
立ち止まっていた小夜もきびすを返すのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/30 15:30:35 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/08/30 14:14:20 |