ゲスト
(ka0000)
狼雑魔討伐作戦2:谷間の挟撃戦
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/03 15:00
- 完成日
- 2016/09/09 05:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●拠点の1つを潰せ!
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、雑魔と成り果ててどす黒く、大きく体躯を膨らませたオオカミから襲われる事件が起こっている。
ここしばらく、ハンターによってオオカミの討伐が行われているが、なかなか状況が改善しない。
そこで、聖堂教会がようやく重い腰を上げた。巡礼者を再び呼び戻すべく、狼討伐に当たり始めたのだ。
先日、ハンターメインでの作戦を行い、続けて聖堂戦士団の小隊が視察の際、狼を群れ1つを潰すに至っているが。それでも、作戦開始からの撃破数は20体前後といったところか。まだまだ回数を重ねて討伐しておきたいところだ。
「失礼する」
とある日、ロジェ・ラフォンと名乗る聖堂戦士団所属の聖導士がハンターズソサエティに姿を現した。
日程に余裕があるなら、狼雑魔討伐に協力してほしいとロジェは話を持ちかけてくる。了承したハンター達の目の前で、彼は早速、地図を広げてみせた。
「この間、ファリーナが持ち帰った地図によって、いくつか雑魔達が巣くっている場所に当たりをつけた」
敵の出現場所は、イルダーナの東から自由都市同盟との境界くらいまでとかなり広範囲に渡る。大体は街道へと現れて襲撃するのがパターンではあるのだが、敵は街道の上に住み着いているわけではない。どこかを根城としているはずなのだ。
「それで、先の作戦でファリーナがハンターより託された地図を使い、いくつか敵の根城となりそうな場所を絞り込んだのだ」
その上で、聖堂戦士団の小隊がそのうちの数ヶ所の視察を行った。その際に群れ1つの殲滅に成功した上で、比較的常駐する狼が少ない場所を1つ、探り当てたのである。
そこは、ちょっとした渓谷のような場所。岩場に挟まれた長い窪地状の場所で、長さは300メートル、幅は6~7メートルほど。岩場の高さは4~5メートル。窪地の中央に、大小15体前後の狼雑魔がいると見られている。
「いつも攻められるだけではな。……ここらで、逆に攻め入ろうと思っている」
ついに、逆襲のタイミングなのかとハンター達も目を光らせる。
ただ、こちらが本腰を入れたことを、狼達に悟らせることになるだろう。下手をすれば、狼の警戒心を無駄に強めてしまうだけ。だからこそ、必ず成功させたいとロジェは意気込む。
「俺の率いる小隊も及ばずながら力になる。……今回はよろしく頼む」
ロジェはそうして、ハンター達へと丁寧に頭を下げたのだった。
王都イルダーナ。
聖堂教会の総本山があるこの地は多数の巡礼者が訪れているのだが、その巡礼者が旅路において、雑魔と成り果ててどす黒く、大きく体躯を膨らませたオオカミから襲われる事件が起こっている。
ここしばらく、ハンターによってオオカミの討伐が行われているが、なかなか状況が改善しない。
そこで、聖堂教会がようやく重い腰を上げた。巡礼者を再び呼び戻すべく、狼討伐に当たり始めたのだ。
先日、ハンターメインでの作戦を行い、続けて聖堂戦士団の小隊が視察の際、狼を群れ1つを潰すに至っているが。それでも、作戦開始からの撃破数は20体前後といったところか。まだまだ回数を重ねて討伐しておきたいところだ。
「失礼する」
とある日、ロジェ・ラフォンと名乗る聖堂戦士団所属の聖導士がハンターズソサエティに姿を現した。
日程に余裕があるなら、狼雑魔討伐に協力してほしいとロジェは話を持ちかけてくる。了承したハンター達の目の前で、彼は早速、地図を広げてみせた。
「この間、ファリーナが持ち帰った地図によって、いくつか雑魔達が巣くっている場所に当たりをつけた」
敵の出現場所は、イルダーナの東から自由都市同盟との境界くらいまでとかなり広範囲に渡る。大体は街道へと現れて襲撃するのがパターンではあるのだが、敵は街道の上に住み着いているわけではない。どこかを根城としているはずなのだ。
「それで、先の作戦でファリーナがハンターより託された地図を使い、いくつか敵の根城となりそうな場所を絞り込んだのだ」
その上で、聖堂戦士団の小隊がそのうちの数ヶ所の視察を行った。その際に群れ1つの殲滅に成功した上で、比較的常駐する狼が少ない場所を1つ、探り当てたのである。
そこは、ちょっとした渓谷のような場所。岩場に挟まれた長い窪地状の場所で、長さは300メートル、幅は6~7メートルほど。岩場の高さは4~5メートル。窪地の中央に、大小15体前後の狼雑魔がいると見られている。
「いつも攻められるだけではな。……ここらで、逆に攻め入ろうと思っている」
ついに、逆襲のタイミングなのかとハンター達も目を光らせる。
ただ、こちらが本腰を入れたことを、狼達に悟らせることになるだろう。下手をすれば、狼の警戒心を無駄に強めてしまうだけ。だからこそ、必ず成功させたいとロジェは意気込む。
「俺の率いる小隊も及ばずながら力になる。……今回はよろしく頼む」
ロジェはそうして、ハンター達へと丁寧に頭を下げたのだった。
リプレイ本文
●訪れた好機
現場へと向かうハンター達。その士気は高い。
「孫娘に頼まれて来たが、狼か」
バリトン(ka5112)は、孫娘アルトの代わりに参戦していた。
彼は50年を共にした傭兵団の旗と、辺境の地にて雌雄を決した強敵を思い出していた。バリトンにとって狼とは特別で、強さの象徴でもあるのだ。
「いよいよ、狼雑魔へ反撃ですね! 魔術師として頑張ります!」
双眼鏡を手にし、アシェ-ル(ka2983)は気合を入れる。今回こそ、狼に対して先手をつくことができると。
「今度は……こっちから攻勢に出る番……ですね……」
自身がまだまだ微力だと実感するミュアリス・クリスティア(ka6335)もまた、精一杯仲間のアシストをと考えている。
「今まで後手後手だったからねー。鬱憤、晴らさせてもらうわよ。いやぶっちゃけ、私は別にそれほど溜めてないけど……」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は同行する聖堂戦士団の小隊へ視線を向ける。むしろ彼らの方が鬱憤を溜めているはずだ。
「今回はあの子じゃないみたいだけど、どうしたのかな?」
ローエン・アイザック(ka5946)が話すのは、この場にいない聖堂戦士団団員ファリーナのこと。彼女は狼の巣の特定に全力を挙げているという。
今回はロジェ小隊が作戦に当たっているが、この手の事件は1人の責任者がやるのが筋ではないかと彼は疑問を抱く。
多少納得いかない様子ではあったが、ローエンはこれも仕事だからと割り切ることにしていたようだ。
そのローエンに対し、デュシオン・ヴァニーユ(ka4696)は後悔の念を抱いている。前回は自身が不甲斐ないばかりに、愛する方を傷つけてしまった、と。
(それでも、あの方は共にと望んでくれた。わたくしの望みを叶えて下さった)
ならば、叶えられた望みの恩を返す為に尽力するのみ。デュシオンはそう考えるのだった。
●挟撃どころか四方から
現場は、岩場に挟まれた長い窪地だ。
「挟撃ねえ、こっちが有利といえば有利だが、数が数な上に、相手は獣だ。油断は出来ねえな」
対人相手なら、引けを取る気などないリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)だが。狼相手だと、そうも言ってはいられない。
「俺の体術はすばしっこい四つ脚なんざ想定してないからな。後の先で行かせてもらうか」
リカルドは準備を進めつつ、狼相手の戦略を練る。
「4班に分かれての包囲挟撃じゃな」
バリトンがその作戦を細かく詰める。A~Dに班を分け、A、Bは窪地での挟撃。そして、C、D班は岩場の上からの攻撃、援護という作戦だ。
ロジェ隊7人もまた4班に振り分ける。岩場班はこの地形を知るロジェ隊に多くを任せる状況だ。
C班はデュシオンに、隊長ロジェと槌持ちの女性が同行する。
「どうか、お力添え願います」
「こちらこそ」
デュシオンの頼みに、ロジェは首肯していた。
逆方向からは、ローエンがロジェ隊3名を引き連れ、岩場を登る。
「慎重に行こう」
岩場にはそれぞれ登れる道があったが、回り道な上、敵に気づかれぬようできるだけ静かに登っていた為、しばし時間を要する。その間、メンバー間はトランシーバーで状況を確認し合う。
手前からは、B班。アルスレーテが他班の状況と、敵が気づいていないか確認しつつ状況の推移を待つ。その側には、リカルド、そして、咲月 春夜(ka6377)……もとい、貴族の騎士風の衣装に仮面を被ったヘルシャフトと刀持ちの男性隊員がいた。
「我々は獣ではない。理を持って敵を屠る。この意味がわかるか?」
隊員は首を横に振ると、ヘルシャフトが続ける。
「冷静に目的を持って、計画的に殺すという事だ」
目的の為、殺し死ぬ。その覚悟をヘルシャフトが問うと、隊員は躊躇いがちに頷いた。
奥からはA班。ミュアリス、アシェール、そしてバリトンと刀持ちの女性隊員だ。
「バリトンさんの背中は大きくて頼もしいのです」
その背に隠れながら、アシェールもできる限り音を立てぬよう接近する。
そして……、準備完了の言葉が各班から飛び交い、一度に攻め込む。
狼達は思いもしないハンターの襲撃に戸惑いを見せる。群れを仕切るモノは不在らしく、狼達は挙動不審になっているように見えた。
「要するに、狼の殲滅って事でいいのよね? 攻め込んでやっつける。シンプルイズベスト!」
アルスレーテの言葉に合わせ、各班メンバーが動き出す。
ローエンは足元を杖で突く。その音が渓谷にいる幾体かの狼の体を縛り付け、出鼻をくじいた。
「旅する神父はちょっとお休みでね。神罰の代行者として、久しぶりに戦わせてもらうとするよ」
渓谷の奥、馬を下がらせたバリトンも斬龍刀「天墜」を携えて駆け出す。
「……せめて、わしを楽しませろ。駄犬でないことを祈るぞ?」
飛びかかってくる敵に、彼は不敵に微笑んで見せた。
●この場で確実に……!
交錯し始めるハンターと狼。
アシェールは落ち着いた様子で、敵と対する。
メンバーの目の前には、大型狼が奥に向けて並ぶ。仲間と同じ敵を狙っていることを確認し、彼女は正面2体の狼を見据えた。
「早速撃ちますよ!」
魔導拳銃を構えるアシェールは桃色の小さな魔方陣を発しながら、同じ色のマテリアル銃弾を射出する。敵陣に炸裂した弾丸は、冷気と氷の爆発となり、狼達に皮膚を裂くような痛みを与え、体を凍りつかせていた。
「私……この位しか、まだ威力ないけど、それでも!」
だが、強引に動いてくる敵が振るう爪を、前に立つバリトンが受け止めてくれた。
その後に、体に「流れ行く水流」のような文様を浮かび上がらせたミュアリスが布陣する。彼女は改めて、敵の姿をしっかりと確認していた。
同行する聖導士を護る為、こちらを突破しようとする狼に狙いを定めてミュアリスは素早く踏み込み、日本刀「骨喰」で斬りかかる。現状回り込むのは難しいと判断し、大きく息を吸い込んだミュアリスは水平に刀を構えて敵を貫き斬った。
「一体も逃がしません……。全部……倒します……」
彼女は鋭い視線で、敵を睨む。
その間にバリトンが一の太刀で体勢を整え直し、斬龍刀「天墜」で同じく疾風のごとく敵を切り払う。
「シンプルにぶった切ることしかできんのでな」
フェイントして飛びすさった後、彼は太刀の長さを活かして、敵を斬り伏せたのである。
手前、B班。
アルスレーテは前方の小型狼達を蒼い瞳で見据えて考える。
(この狭い幅では、大型狼は狭くて動き辛いはず)
アルスレーテはちょこまかと動き回る面倒そうな小型へと迫り、鉄扇を叩きつけた。
白い髪、そして右目を赤く変色させたリカルドは、深呼吸してから脱力する。
「力の流れは単純で流しやすいが、動きが早くて目標が小さいから、どうにもやりにくいなあ」
それでも、体軸がぶれぬようにゆっくり狼へと近づくリカルドは、敵が飛びかかってきたタイミングで横へと逸れ、魔導拳銃「ペンタグラム」の弾丸を叩き込む。敵が大きく開いた口を開いた隙に武器を2本の刀へと持ち替え、狼の体を両断した。
「取り逃がしたのは、周りに任せるか」
他の仲間も戦っている。彼は数を減らすことに力を注ぐ。
春夜……ヘルシャフトは同行するロジェ隊の隊員を注視する。どうやら、戦闘経験が浅く、うまく立ち回れていない。
「迂闊に前に出るな」
盾で護りつつ男性隊員に厳しい言葉をかけるヘルシャフトは、デルタレイを発動させて光線によって狼を貫いていく。隊員も彼の言葉に従いつつ、回復や援護に回っていた。
岩場に挟まれた場所、その窪地の両側からハンターが挟撃を仕掛けている。
狼が逃れるとすれば、岩場の上。事実、中央にいる大型狼は左右に跳躍してこの場からの離脱を図る。
「そんなの、崖上の班に任せるわ」
事もなげに告げるアルスレーテ。その時、岩場へと登ろうとした敵の前に土壁が立ちはだかる。
「さぁ……、冥途の道はこちらではなくてよ?」
岩場に登ってきた狼へ言い放ったのは、紫のメッシュの入った白い髪、そして淡い紫の瞳へと変貌していたデュシオンだ。もっとも、その狼は窪地へ落下していたが。
「皆様、倒しきる必要はございません」
「了解した」
ロジェと隊員は、登ってくる敵を突破させぬことを最優先で動く。
逆側では、胸元に下げたロザリオを淡く輝かせたローエンがいる。彼は率先して光の杭を狼へと打ち込み、その動きを阻害していた。こちらは隊員の人数も活かし、岩場を突破させじとする。
挟撃どころか、四方を囲む形での布陣。ハンター達は突破されぬように、狼達へと攻め入るのであった。
渓谷は長く、狼達は縦に長く布陣している。
岩場へ這い上がろうとする狼を岩場の2班が抑えつつ、ハンター達は両側から1体、また1体と狼達を倒していく。
奥、A班はバリトンが中央に立ち、狼の進軍をさせぬという布陣。
だが、時に大型はそのサイドギリギリの合間から後方へと抜けてくる。その後にいたミュアリスがそいつを抑える形となった。
できる限り、敵の逃げ道を防ぎ、敵を刀で貫いていたミュアリス。
序盤はうまく立ち回り、1体、また1体と大型狼を倒すことができていた。
直接的に攻め入ることも多い狼。ミュアリスが相手の攻撃を受け流そうとして失敗した隙をつき、敵は麻痺噛み付きで彼女の動きを縛り付けた。
動かぬ体で毒の爪と体当たりを食らってしまい、ミュアリスはがっくりと崩れ落ちてしまった。
これにより、A班の負担が大きくなってしまう。
アシェールは炎の弾を敵陣に叩き込んでいたが、前のバリトンに被害が及ぶことを懸念し、別のスキルを発動する。
「行きます! 極弩重雷撃砲!」
アシェールは前方へと一直線に雷撃を飛ばす。雷に焼かれる狼だが、それだけで倒れるほどやわでもない。
「孫達から聞く分には、素早いようじゃが……」
そこで、バリトンがその狼の牙を受けながらも、狼の体を寸断する。
「当てられないなら、当てられる状況にすればいい」
「やっぱり当たりにくいな、動物相手じゃ運ゲーか」
リカルドは、牽制射撃を行いつつ、数歩下がる。手前のB班は、小型狼をメインに戦いを繰り広げていた。
だが、リカルドは傷つきながらも確実に敵を仕留め、敵の数を減らす。
小型相手には通常の殴打に牽制を織り交ぜていたアルスレーテだったが、大型相手となればそうもいかず、敵の間合いへと飛び込んでから狼へと触れ、一気にマテリアルを送り込んで打撃を与え、その狼を撃破していた。
ヘルシャフトはポーションを飲みつつ、戦いに臨む。符を操り、光の三角形から光線を放つ彼は、前衛を突破してくる敵を貫き、その体を内部から霧散させていく。
「退け、噛まれるぞ」
ヘルシャフトはその間もずっと、同行の隊員に厳しい言葉をかけ続ける。
だが、隊員もできる限り足を引っ張らないようにと、春夜らにヒールをかけてくれていたようだ。
その間も、岩場へ登ろうと試みる大型狼。
「わたくしの役目はあくまで壁、冥途への道へ突き落すこと……一匹たりとも逃しません」
その度に、デュシオンはロジェや隊員と共に狼の行く手を遮る。
土壁を作る際、落ちやすいようにと意識して構築するが、さすがにそこまでうまく制御するのは難しい。
「……絶対に、逃しませんから」
デュシオンは火や氷の矢を飛ばし、その衝撃で幾度も攻撃を繰り返し、谷間で戦うメンバーをアシストする。
ローエンは狼の爪や牙に苛まれる仲間の不浄を取り払っていた。彼は狼の阻害と、仲間の傷に気を回す。
ただ、そばで戦う隊員達が若干無茶をしていたのに気づかなかったようだ。気づいたタイミングには、隊員が倒れてしまっていて。ローエンはなんとか光の杭で大型の狼を抑えるが、それでも2人目の隊員が倒れてしまっていた。
だが、狼は成すすべなく数を減らしていく。
かなり傷ついてはいたが、やや息を荒くしていたリカルド。刀で敵の攻撃を弾きつつも、二刀流で敵の足を狙っていた。
敵が減ってきたことで、奥で戦うA班のメンバーの姿がB班にも確認できるようになってきて。
大きな刀を使って歪虚と戦うバリトンの姿に、リカルドはしばし見とれてしまう。
(馬鹿でかい刀使っている割には、技の精度が良すぎんだろ。刀の質で切り口はそうでもねえが)
だが、こちらも交戦中、ぼやぼやしている暇はない。リカルドは食らいついてくる敵の牙を円の動きで躱す。
そして2本の刀を操り、まず敵の足を切断して離脱する。なおも襲い掛かってくる狼へ、刀の腹でその大きな体躯を受け止めつつも投げ飛ばし、地面へと叩きつけられたタイミングで2本の刀を突き出し、止めを刺した。
苦戦を余儀なくされていたA班。だが、狼の数が減ってきたことで、事態が好転し始めていた。
アシェールは幾本目かのポーションを口にし、魔法スキルを撃ち続ける。どうやら、この近辺に狼は潜んでいなかったのか、新手が現れることもないようだ。
「最後まで諦めませんよ!」
だからこそ、スキルを撃ち尽くした後も、アシェールは魔導拳銃を手にし、敵の体を撃ち貫いていく。
そして、バリトンが一太刀で、狼の肉を、骨を、断ち切ってしまう。身体を真っ二つにした狼は宙で爆ぜ飛ぶ。
それを見ることすらなく、バリトンは鼻を鳴らして剣を納めたのだった。
●この渓谷は……
狼を殲滅することはできたものの、重傷者も出していたハンター達は、しばしその場で休息をとる。
「やっぱりダメか、暫く四つ足向けの型を作って練習しておくか」
討伐はできたものの。命の危険すら感じていたリカルド。次の戦いまでに、狼用の戦法を組み立てたいと考えていたようだ。
傷つき、へたり込む同班の男性隊員に、ヘルシャフトが近づく。
「よくやった」
小声だったが、それが嬉しかったのか、男性隊員は表情を綻ばせた。
デュシオンはというと、ローエンへと駆け寄っていた。
「わたくしの望みを叶えて下さり、有難うございます」
渓谷の左右で対になって戦った2人。デュシオンはローエンへと感謝の言葉を伝えていた。
アシェール、バリトンは、戦場となった渓谷を注意深く探索する。
「何も……ない?」
アシェールは地図と周辺の位置を照らし合わせる。
「うーん。私の頭だと、分からないのです」
……彼女はどうやら、地図の見方を間違っていたらしい。
バリトンはこの立地から考えて、地下施設が存在する可能性も疑っていた。不自然な岩や、何かの痕跡がないかと徹底的に調べる。
「……何かあると思ったのじゃが」
寝床にはしていても、本拠地ではないということか。
とはいえ、改めて、聖堂戦士団でこの場を調べるとロジェも約束してくれた。傷が深いメンバーもいた為、ハンター達は応急手当のみ行い、その場を後にしていったのだった。
現場へと向かうハンター達。その士気は高い。
「孫娘に頼まれて来たが、狼か」
バリトン(ka5112)は、孫娘アルトの代わりに参戦していた。
彼は50年を共にした傭兵団の旗と、辺境の地にて雌雄を決した強敵を思い出していた。バリトンにとって狼とは特別で、強さの象徴でもあるのだ。
「いよいよ、狼雑魔へ反撃ですね! 魔術師として頑張ります!」
双眼鏡を手にし、アシェ-ル(ka2983)は気合を入れる。今回こそ、狼に対して先手をつくことができると。
「今度は……こっちから攻勢に出る番……ですね……」
自身がまだまだ微力だと実感するミュアリス・クリスティア(ka6335)もまた、精一杯仲間のアシストをと考えている。
「今まで後手後手だったからねー。鬱憤、晴らさせてもらうわよ。いやぶっちゃけ、私は別にそれほど溜めてないけど……」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は同行する聖堂戦士団の小隊へ視線を向ける。むしろ彼らの方が鬱憤を溜めているはずだ。
「今回はあの子じゃないみたいだけど、どうしたのかな?」
ローエン・アイザック(ka5946)が話すのは、この場にいない聖堂戦士団団員ファリーナのこと。彼女は狼の巣の特定に全力を挙げているという。
今回はロジェ小隊が作戦に当たっているが、この手の事件は1人の責任者がやるのが筋ではないかと彼は疑問を抱く。
多少納得いかない様子ではあったが、ローエンはこれも仕事だからと割り切ることにしていたようだ。
そのローエンに対し、デュシオン・ヴァニーユ(ka4696)は後悔の念を抱いている。前回は自身が不甲斐ないばかりに、愛する方を傷つけてしまった、と。
(それでも、あの方は共にと望んでくれた。わたくしの望みを叶えて下さった)
ならば、叶えられた望みの恩を返す為に尽力するのみ。デュシオンはそう考えるのだった。
●挟撃どころか四方から
現場は、岩場に挟まれた長い窪地だ。
「挟撃ねえ、こっちが有利といえば有利だが、数が数な上に、相手は獣だ。油断は出来ねえな」
対人相手なら、引けを取る気などないリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)だが。狼相手だと、そうも言ってはいられない。
「俺の体術はすばしっこい四つ脚なんざ想定してないからな。後の先で行かせてもらうか」
リカルドは準備を進めつつ、狼相手の戦略を練る。
「4班に分かれての包囲挟撃じゃな」
バリトンがその作戦を細かく詰める。A~Dに班を分け、A、Bは窪地での挟撃。そして、C、D班は岩場の上からの攻撃、援護という作戦だ。
ロジェ隊7人もまた4班に振り分ける。岩場班はこの地形を知るロジェ隊に多くを任せる状況だ。
C班はデュシオンに、隊長ロジェと槌持ちの女性が同行する。
「どうか、お力添え願います」
「こちらこそ」
デュシオンの頼みに、ロジェは首肯していた。
逆方向からは、ローエンがロジェ隊3名を引き連れ、岩場を登る。
「慎重に行こう」
岩場にはそれぞれ登れる道があったが、回り道な上、敵に気づかれぬようできるだけ静かに登っていた為、しばし時間を要する。その間、メンバー間はトランシーバーで状況を確認し合う。
手前からは、B班。アルスレーテが他班の状況と、敵が気づいていないか確認しつつ状況の推移を待つ。その側には、リカルド、そして、咲月 春夜(ka6377)……もとい、貴族の騎士風の衣装に仮面を被ったヘルシャフトと刀持ちの男性隊員がいた。
「我々は獣ではない。理を持って敵を屠る。この意味がわかるか?」
隊員は首を横に振ると、ヘルシャフトが続ける。
「冷静に目的を持って、計画的に殺すという事だ」
目的の為、殺し死ぬ。その覚悟をヘルシャフトが問うと、隊員は躊躇いがちに頷いた。
奥からはA班。ミュアリス、アシェール、そしてバリトンと刀持ちの女性隊員だ。
「バリトンさんの背中は大きくて頼もしいのです」
その背に隠れながら、アシェールもできる限り音を立てぬよう接近する。
そして……、準備完了の言葉が各班から飛び交い、一度に攻め込む。
狼達は思いもしないハンターの襲撃に戸惑いを見せる。群れを仕切るモノは不在らしく、狼達は挙動不審になっているように見えた。
「要するに、狼の殲滅って事でいいのよね? 攻め込んでやっつける。シンプルイズベスト!」
アルスレーテの言葉に合わせ、各班メンバーが動き出す。
ローエンは足元を杖で突く。その音が渓谷にいる幾体かの狼の体を縛り付け、出鼻をくじいた。
「旅する神父はちょっとお休みでね。神罰の代行者として、久しぶりに戦わせてもらうとするよ」
渓谷の奥、馬を下がらせたバリトンも斬龍刀「天墜」を携えて駆け出す。
「……せめて、わしを楽しませろ。駄犬でないことを祈るぞ?」
飛びかかってくる敵に、彼は不敵に微笑んで見せた。
●この場で確実に……!
交錯し始めるハンターと狼。
アシェールは落ち着いた様子で、敵と対する。
メンバーの目の前には、大型狼が奥に向けて並ぶ。仲間と同じ敵を狙っていることを確認し、彼女は正面2体の狼を見据えた。
「早速撃ちますよ!」
魔導拳銃を構えるアシェールは桃色の小さな魔方陣を発しながら、同じ色のマテリアル銃弾を射出する。敵陣に炸裂した弾丸は、冷気と氷の爆発となり、狼達に皮膚を裂くような痛みを与え、体を凍りつかせていた。
「私……この位しか、まだ威力ないけど、それでも!」
だが、強引に動いてくる敵が振るう爪を、前に立つバリトンが受け止めてくれた。
その後に、体に「流れ行く水流」のような文様を浮かび上がらせたミュアリスが布陣する。彼女は改めて、敵の姿をしっかりと確認していた。
同行する聖導士を護る為、こちらを突破しようとする狼に狙いを定めてミュアリスは素早く踏み込み、日本刀「骨喰」で斬りかかる。現状回り込むのは難しいと判断し、大きく息を吸い込んだミュアリスは水平に刀を構えて敵を貫き斬った。
「一体も逃がしません……。全部……倒します……」
彼女は鋭い視線で、敵を睨む。
その間にバリトンが一の太刀で体勢を整え直し、斬龍刀「天墜」で同じく疾風のごとく敵を切り払う。
「シンプルにぶった切ることしかできんのでな」
フェイントして飛びすさった後、彼は太刀の長さを活かして、敵を斬り伏せたのである。
手前、B班。
アルスレーテは前方の小型狼達を蒼い瞳で見据えて考える。
(この狭い幅では、大型狼は狭くて動き辛いはず)
アルスレーテはちょこまかと動き回る面倒そうな小型へと迫り、鉄扇を叩きつけた。
白い髪、そして右目を赤く変色させたリカルドは、深呼吸してから脱力する。
「力の流れは単純で流しやすいが、動きが早くて目標が小さいから、どうにもやりにくいなあ」
それでも、体軸がぶれぬようにゆっくり狼へと近づくリカルドは、敵が飛びかかってきたタイミングで横へと逸れ、魔導拳銃「ペンタグラム」の弾丸を叩き込む。敵が大きく開いた口を開いた隙に武器を2本の刀へと持ち替え、狼の体を両断した。
「取り逃がしたのは、周りに任せるか」
他の仲間も戦っている。彼は数を減らすことに力を注ぐ。
春夜……ヘルシャフトは同行するロジェ隊の隊員を注視する。どうやら、戦闘経験が浅く、うまく立ち回れていない。
「迂闊に前に出るな」
盾で護りつつ男性隊員に厳しい言葉をかけるヘルシャフトは、デルタレイを発動させて光線によって狼を貫いていく。隊員も彼の言葉に従いつつ、回復や援護に回っていた。
岩場に挟まれた場所、その窪地の両側からハンターが挟撃を仕掛けている。
狼が逃れるとすれば、岩場の上。事実、中央にいる大型狼は左右に跳躍してこの場からの離脱を図る。
「そんなの、崖上の班に任せるわ」
事もなげに告げるアルスレーテ。その時、岩場へと登ろうとした敵の前に土壁が立ちはだかる。
「さぁ……、冥途の道はこちらではなくてよ?」
岩場に登ってきた狼へ言い放ったのは、紫のメッシュの入った白い髪、そして淡い紫の瞳へと変貌していたデュシオンだ。もっとも、その狼は窪地へ落下していたが。
「皆様、倒しきる必要はございません」
「了解した」
ロジェと隊員は、登ってくる敵を突破させぬことを最優先で動く。
逆側では、胸元に下げたロザリオを淡く輝かせたローエンがいる。彼は率先して光の杭を狼へと打ち込み、その動きを阻害していた。こちらは隊員の人数も活かし、岩場を突破させじとする。
挟撃どころか、四方を囲む形での布陣。ハンター達は突破されぬように、狼達へと攻め入るのであった。
渓谷は長く、狼達は縦に長く布陣している。
岩場へ這い上がろうとする狼を岩場の2班が抑えつつ、ハンター達は両側から1体、また1体と狼達を倒していく。
奥、A班はバリトンが中央に立ち、狼の進軍をさせぬという布陣。
だが、時に大型はそのサイドギリギリの合間から後方へと抜けてくる。その後にいたミュアリスがそいつを抑える形となった。
できる限り、敵の逃げ道を防ぎ、敵を刀で貫いていたミュアリス。
序盤はうまく立ち回り、1体、また1体と大型狼を倒すことができていた。
直接的に攻め入ることも多い狼。ミュアリスが相手の攻撃を受け流そうとして失敗した隙をつき、敵は麻痺噛み付きで彼女の動きを縛り付けた。
動かぬ体で毒の爪と体当たりを食らってしまい、ミュアリスはがっくりと崩れ落ちてしまった。
これにより、A班の負担が大きくなってしまう。
アシェールは炎の弾を敵陣に叩き込んでいたが、前のバリトンに被害が及ぶことを懸念し、別のスキルを発動する。
「行きます! 極弩重雷撃砲!」
アシェールは前方へと一直線に雷撃を飛ばす。雷に焼かれる狼だが、それだけで倒れるほどやわでもない。
「孫達から聞く分には、素早いようじゃが……」
そこで、バリトンがその狼の牙を受けながらも、狼の体を寸断する。
「当てられないなら、当てられる状況にすればいい」
「やっぱり当たりにくいな、動物相手じゃ運ゲーか」
リカルドは、牽制射撃を行いつつ、数歩下がる。手前のB班は、小型狼をメインに戦いを繰り広げていた。
だが、リカルドは傷つきながらも確実に敵を仕留め、敵の数を減らす。
小型相手には通常の殴打に牽制を織り交ぜていたアルスレーテだったが、大型相手となればそうもいかず、敵の間合いへと飛び込んでから狼へと触れ、一気にマテリアルを送り込んで打撃を与え、その狼を撃破していた。
ヘルシャフトはポーションを飲みつつ、戦いに臨む。符を操り、光の三角形から光線を放つ彼は、前衛を突破してくる敵を貫き、その体を内部から霧散させていく。
「退け、噛まれるぞ」
ヘルシャフトはその間もずっと、同行の隊員に厳しい言葉をかけ続ける。
だが、隊員もできる限り足を引っ張らないようにと、春夜らにヒールをかけてくれていたようだ。
その間も、岩場へ登ろうと試みる大型狼。
「わたくしの役目はあくまで壁、冥途への道へ突き落すこと……一匹たりとも逃しません」
その度に、デュシオンはロジェや隊員と共に狼の行く手を遮る。
土壁を作る際、落ちやすいようにと意識して構築するが、さすがにそこまでうまく制御するのは難しい。
「……絶対に、逃しませんから」
デュシオンは火や氷の矢を飛ばし、その衝撃で幾度も攻撃を繰り返し、谷間で戦うメンバーをアシストする。
ローエンは狼の爪や牙に苛まれる仲間の不浄を取り払っていた。彼は狼の阻害と、仲間の傷に気を回す。
ただ、そばで戦う隊員達が若干無茶をしていたのに気づかなかったようだ。気づいたタイミングには、隊員が倒れてしまっていて。ローエンはなんとか光の杭で大型の狼を抑えるが、それでも2人目の隊員が倒れてしまっていた。
だが、狼は成すすべなく数を減らしていく。
かなり傷ついてはいたが、やや息を荒くしていたリカルド。刀で敵の攻撃を弾きつつも、二刀流で敵の足を狙っていた。
敵が減ってきたことで、奥で戦うA班のメンバーの姿がB班にも確認できるようになってきて。
大きな刀を使って歪虚と戦うバリトンの姿に、リカルドはしばし見とれてしまう。
(馬鹿でかい刀使っている割には、技の精度が良すぎんだろ。刀の質で切り口はそうでもねえが)
だが、こちらも交戦中、ぼやぼやしている暇はない。リカルドは食らいついてくる敵の牙を円の動きで躱す。
そして2本の刀を操り、まず敵の足を切断して離脱する。なおも襲い掛かってくる狼へ、刀の腹でその大きな体躯を受け止めつつも投げ飛ばし、地面へと叩きつけられたタイミングで2本の刀を突き出し、止めを刺した。
苦戦を余儀なくされていたA班。だが、狼の数が減ってきたことで、事態が好転し始めていた。
アシェールは幾本目かのポーションを口にし、魔法スキルを撃ち続ける。どうやら、この近辺に狼は潜んでいなかったのか、新手が現れることもないようだ。
「最後まで諦めませんよ!」
だからこそ、スキルを撃ち尽くした後も、アシェールは魔導拳銃を手にし、敵の体を撃ち貫いていく。
そして、バリトンが一太刀で、狼の肉を、骨を、断ち切ってしまう。身体を真っ二つにした狼は宙で爆ぜ飛ぶ。
それを見ることすらなく、バリトンは鼻を鳴らして剣を納めたのだった。
●この渓谷は……
狼を殲滅することはできたものの、重傷者も出していたハンター達は、しばしその場で休息をとる。
「やっぱりダメか、暫く四つ足向けの型を作って練習しておくか」
討伐はできたものの。命の危険すら感じていたリカルド。次の戦いまでに、狼用の戦法を組み立てたいと考えていたようだ。
傷つき、へたり込む同班の男性隊員に、ヘルシャフトが近づく。
「よくやった」
小声だったが、それが嬉しかったのか、男性隊員は表情を綻ばせた。
デュシオンはというと、ローエンへと駆け寄っていた。
「わたくしの望みを叶えて下さり、有難うございます」
渓谷の左右で対になって戦った2人。デュシオンはローエンへと感謝の言葉を伝えていた。
アシェール、バリトンは、戦場となった渓谷を注意深く探索する。
「何も……ない?」
アシェールは地図と周辺の位置を照らし合わせる。
「うーん。私の頭だと、分からないのです」
……彼女はどうやら、地図の見方を間違っていたらしい。
バリトンはこの立地から考えて、地下施設が存在する可能性も疑っていた。不自然な岩や、何かの痕跡がないかと徹底的に調べる。
「……何かあると思ったのじゃが」
寝床にはしていても、本拠地ではないということか。
とはいえ、改めて、聖堂戦士団でこの場を調べるとロジェも約束してくれた。傷が深いメンバーもいた為、ハンター達は応急手当のみ行い、その場を後にしていったのだった。
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【相談卓】 アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/09/03 14:25:27 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/28 22:23:12 |