• 蒼乱

【蒼乱】ドラグーン・ブルース

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/04 15:00
完成日
2016/09/11 19:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ――南方、竜の巣。
 そこは、砂と岩ばかりの大地。あらゆる生命の存続を拒む、終わった世界……。
「……つまりクソ暑いぃいいい!!」
 連合宙軍の兵士達は、気候管理の徹底されたコロニーや、宇宙船内での活動を基本としている。
 つまり彼らはいくら優秀でも、局地戦には適応していないのだ。
 タンクトップの男たちが汗だくで死にそうな顔をする中、ラヴィアン・リュー(kz0200)も脱げるだけ上着を脱ぎ、キャンプの木陰で険しい表情を浮かべている。
 南方にもゲートが存在する可能性があるとして連合軍の調査が開始され、南方大陸沿岸に幾つかの拠点が作成された。
 その後、浄化エリアの作成と共に転移門が作られると、ラヴィアンらもこの地での戦いに協力する為に現地入りした……のだが。
「CAMを転移門で運べるようになったのはいいけど……コクピットが蒸し風呂状態ね」
 CAMも本来は宇宙空間や都市戦を想定した機体。当然だが局地戦向きではない。
「こんな所で稼働させてたら電装部品がすぐオシャカですよ! 中尉、出番が来るまでリゼリオに居ましょうって!」
「何を甘ったれてるの! 彼らを少しは見習いなさい!」
 ビシリと指差す先には、複数の青のリザードマンたちがせっせと物資を運んでいた。
 ここ南方は竜の巣と呼ばれるだけあり、元々は赤龍が守護する赤の眷属の守護領域。
 その奪還作戦には青の眷属も前向きで、こうして転移門で北方からせっせと兵員を送ってくれるのだ。
「あいつらついさっきまで雪国にいたのになんで平気なんだ……」
「人間じゃないやつと一緒にされても困るよな……」
「ちょっと、差別発言は慎みなさい」
「いや龍にはだいぶお世話になったんで感謝しまくってますが、生物的な構造の違いは客観的事実でありますよ中尉!?」
 そこへ通りがかったのは篠原 神薙(kz0001)。パラソルを片手に歩み寄る。
「中尉もこっちに来てたんですね」
「あら少年……あなたどこにでもいるわね」
「まあわりと。皆さん暑さにまいってますね。せっかく海岸に作った拠点なんだし、海水浴とかどうです?」
「汚染されてる海はちょっとね……そうでなければ飛び込んでるわ」
 イニシャライザーの守護があるとは言え、ここは闇の領域のド真ん中。
 敵の襲撃は勿論、体調の管理も気を使わねばならない。
「しかしこの様子じゃ人類は生き残ってなさそうですね」
「そうね。でも、確か報告によれば別ルートで大陸に乗り付けたチームがコボルド族と遭遇したそうよ」
「ああ~。負のマテリアルに強い種族なら生き残れるのかも……なるほどなあ」
 そう言って二人は同時にパラソル越しの太陽を睨みつける。
 転移実験、そして崑崙防衛戦からこっち、理不尽に感じられるような苦難の連続だった。
 だからこそ、何か行動を起こさねば落ち着かないのだ。
「ここにもヴォイドゲートがあるんでしょうか」
「ある……と信じたいわね。尤も、こんな環境じゃ覚醒者じゃないとやっていけないわね……」
「探すにも広すぎますしね~。見渡す先全部砂漠だし……」
 二人同時に溜息をこぼしたその時だ。一体の青のワイバーンが飛来し、何かを伝える。
 にわかにざわめきだしたリザードマン隊。言葉は通じないが、身振り手振りで危機の接近を察知する。
「敵でしょうか?」
「たぶんね……総員出撃準備! CAMに搭乗!」
「中尉、脱水症状で死んでしまいます!」
「これギャグとかじゃなくて本当に死にます!」
 がくりと肩を落とし、ラヴィアンは一人でドミニオンに乗り込む。
「少年、現場まで連れて行くわ! 捕まりなさい!」
 コクピットハッチを開いたままで身を乗り出しそう叫ぶラヴィアン。ドミニオンが差し出した左手に飛び乗ると、神薙は兵員輸送用の取っ手に捕まった。
「この輸送用のグリップって、無重力空間用なんじゃ……」
 次の瞬間、ドミニオンが動き出す。巨大二足歩行兵器の揺れに放り出されそうになる神薙の悲鳴を無視し、ラヴィアンは戦場へと向かった。

「ニンゲン……? この付近では既に絶滅した筈。つまりは侵略者、だね……」
 砂漠を突き進む強欲竜の軍勢。巨大なドラゴンの背に立ち、人類軍のキャンプを見つめる人型の竜がいた。
 海辺につけられた大型船舶と、構築された拠点。どうやら海をわたって着たと見て間違いないだろう。
「青龍の眷属まで……どうしてニンゲンと龍が共闘しているんだ? まさか、北に向かった王の身に何か……」
 竜はそこで頭を振り、光の翼を広げる。
「いいや。僕の任務はこの聖地を守ること。我が王の守護にはザッハークがついている。僕は僕の使命を果たすんだ」
 マテリアルで創りだした長大な槍を手に、竜は飛翔する。
「聖地の土を踏む者は生かして帰すな! 行くぞ!」

「結構な数でお出ましね……! 既にリザードマン隊が交戦中よ!」
「前方から何か来ます……早い!?」
 神薙は覚醒し、防御障壁を発動する。上空を通過した影は、光弾を降り注がせる。
「機動力の高い相手にCAMは不利です! 中尉は大型個体の対処をお願いします!」
「あいつはどうするの!?」
「他のハンターと合流してなんとかします!」
 ドミニオンの肩から飛び降りると、神薙は機導砲を放つ。しかし、敵は光の翼を翻し見事に回避した。
「高機動力……光の翼に光弾攻撃? まさか、ザッハークと同じタイプの歪虚……?」
 そこへやや遅れてハンターの部隊が迫ってくる。
 ラヴィアンのドミニオンを目印に、ハンター達は砂漠を駆けていく……。

リプレイ本文

 高速で飛行し、空中から光弾で爆撃を行う人型竜。その対処に苦慮していた神薙だが、そこへハンターらの部隊が駆けつける。
 レホス・エテルノ・リベルター(ka0498)の搭乗するドミニオンMk.IV改のマシンガンを躱し、攻撃を中断した人型竜は戦況に困惑する。
「また巨人の兵士……!? ニンゲンの戦力はどうなってるんだ?」
「避けられた……速い! 相性はあんまり良くないかな……!」
 歯噛みし、頭上を通過する敵へ銃撃を継続するレホス。その巨人の足元でフィルメリア・クリスティア(ka3380)は馬を停止させる。
「神薙君! 敵は……人型、それにあの感じはザッハークと同格の高位存在……?」
「多分そうです! 戦闘力も同じだとすると、強敵ですよ!」
「だったら尚更こっから先へ行かすわけには行かねぇ! 行くぜ、ウォルドーフ!」
 岩井崎 旭(ka0234)の掛け声にイェジドが応じるように吼え、砂を蹴る。
 続々と集結するハンターらが倒すべき相手はおよそ四種。それぞれに同時並行で対応が必要だ。
 近衛 惣助(ka0510)はドミニオンの真改で前進しつつ、アサルトライフルを構える。
「こちら近衛、アサルトライフルで突撃を支援する!」
 狙いはサラマンダーの集団。既にリザードマンと戦闘状態にある故に最前線には打ち込めないが、敵陣後方の牽制は可能だ。
 その銃撃に続くように戦馬で走る銀 真白(ka4128)は神薙へと腕を伸ばし。
「神薙殿も、こちらの助力を!」
「わかった! フィルメリアさん、あいつは任せます!」
 神薙を背後に乗せた真白は、CAMの射撃で怯んだ敵陣へ突撃。馬上より和弓を放つ。
 続けて神薙がデルタレイで蹴散らすと、真白は小さな笛を咥える。
「リザードマンには言葉による伝達が困難故、指示に笛を用いる。神薙殿も合わせて欲しい」
「了解! 一緒に頑張ろう、銀さん!」
 戦場の様子はキャンプからも眺められる。汗だくで立つタンクトップ一枚の軍人たちへ、水城もなか(ka3532)が駆け寄る。
「目の前で戦闘が行われて上官と元民間人の少年が戦っているのに高みの見物ですか? 戦う力があってもこれでは宝の持ち腐れですね」
 辛辣な言葉に兵士らは顔を見合わせる。正直なところ、自信がなさそうだ。
「俺たちのCAMは改修も終わってないしなあ……」
「それは失礼いたしました。では、自分は急ぎますのでこれで」
「待ってくれ」
 一人の男がそう言って呼び止めると、狙撃銃を手に歩み寄る。
「非覚醒者の俺達では足手まといかもしれないが、援護くらいは出来るかもしれん。何人かはキャンプ防衛に残すが、俺も同行しよう」

「クソッ、CAMのコクピットって何でこんなに狭いんだ……おまけに暑すぎる!」
 そう愚痴りながら惣助は大地を揺らしながら前進する岩竜に狙いを定める。
「岩竜の足止めは俺達が。中尉は火竜を頼みます!」
「わかったわ。あなた達も気をつけて!」
 ラヴィアンのドミニオンがジャンプで離れると、惣介はアサルトライフルで攻撃を開始。
 岩竜の頑丈さはかなりのもので、銃撃に怯まず、むしろ猛りながら突進してくる。
「強欲の竜達と闘うのは悲しいけれど……迷いは無いから。彼らが平和に暮らせる世界を作るんだ……グラニ!」
 アルファス(ka3312)の声に応じ、ぐんと加速するイェジドのグラニ。
 惣介に突き進む岩竜の側面に回りこみながら、魔法のチャージを重ねていく。
「彼らが使命に生きるのなら、平和を持ってその使命を終わらせる!」
 高々と掲げた陰陽符「降魔結界」の周囲に浮かび上がった八卦図が回転をはじめ、高圧のマテリアルが収束する。
「三鈷剣よ……堕ちし竜達の不浄を、その輝きを持って清め給え!」
 陣に出現した3つの魔法の剣は、螺旋を描くように混じり、長大な槍となって岩竜の足に食い込んだ。
 マテリアルが爆ぜると、あまりの威力の巨体が傾き、そのまま横倒しになる。岩竜の前足は一つ、ちぎれ吹き飛んでいた。
「うおっ、なんて威力だ……!?」
 横倒しになった岩竜をスルーし、もう一体の岩竜に向かう。
 突進をスラスターのクイックターンで回避すると、腕部よりドリルを取り出しこれで前足を攻撃する。
「その巨体で皆を潰されちゃ困るんでな……止めさせてもらうぞ!」
 一方、空中では青のワイバーンと火竜との戦いが続いていた。
 火竜の戦闘力は青のワイバーンを大幅に上回っている。逃げまわる青の飛竜。そこへ、アニス・テスタロッサ(ka0141)の銃弾が命中する。
「へぇ。105mmの弾丸食らって堕ちねぇとは、大したもんだ」
 紅く塗装されたアニス・テスタロッサ(ka0141)のデュミナスが額のガンカメラが回転させる。
「つかクソ暑ぃ…さっさと終わらせて帰ろうぜ。風呂入って酒飲みてぇ」
 第二射を翼を畳み、回転するように躱した火竜が迫ると、アニスはスラスターで射撃体勢のまま後退。
 入れ替わりに前に出たのはアウレール・V・ブラオラント(ka2531)のデュミナス、ザントメンヒェンだ。
「王なき後も戦い続ける忠義は見事! だがこの星を継ぐ者は我々人類だ!」
 火竜が貯めこんだ負のマテリアルを火球として放つ。アウレールは跳躍し、ランスでその一撃を吹き飛ばした。
「証明してみせる! ブラオラントの技術の結晶、このザントメンヒェンで!」
「上出来だぜ、お坊ちゃん」
 アニスはアウレールが落下すると同時、更なる銃撃を繰り出す。この一撃が火竜の翼を貫いた。
「……ま、実際に翼使って飛んでるかは知らねーが。どー見たって薄いだろ? そこはよ」
 もう一体の火竜も加勢に動き出すが、それを七夜・真夕(ka3977)がイェジドの紅印で追走する。
「好きにやらせてなるものですか! いくわよ、紅印!」
 目的は敵の注意を散漫にし、隙を生み出す事。機動力さえ下げてしまえばこっちのものだ。
「氷雪よ、吹き荒れなさい!!」
 ブリザードは特に回避が困難で、大型の敵にも有効だ。そして火竜は、特に水属性攻撃が効いている。
 見るからに動きが鈍ると、そこへラヴィアンがアサルトライフルで攻撃を加える。
「ほらほら、こっちよ! 紅印を捕まえられるものならば捕まえてみなさい!」
 火竜はブレスで反撃するが、凍傷もあって明後日の方向へ着弾する。が、爆発の規模はかなりのものだ。
「うわ……流石にあたったら拙いかも。頑張って、紅印!」

 高速で飛行する人型竜が投下する光弾の爆撃を掻い潜り、旭を乗せてウォルドーフは疾走する。
「野郎、なんてスピードだ!」
 後方から短弓で攻撃するが、決定打には程遠い。
 レホスは砂丘にシールドを突き立て、膝をついて狙撃姿勢を取ると、飛行する敵へ弾をばらまく。
「この暑さはダメだね……早くリゼリオに戻りたい……」
 そこでふと、思い当たる。
「あの子は北での戦いを知らないのかな……?」
 たった一人、飛び続ける的に哀しい思いが浮かぶのは、彼にもまた帰る場所がないからだろう。
「ちいっ……あの巨人、想像以上に鬱陶しい……!」
 光弾による攻撃も盾に防がれれば大打撃にはならない。
 そこへフィルメリアは駆け寄り、機導砲を放つ。竜は光の槍で受けるが、その刃に亀裂が走った。
「私達の話を聞いて、王竜の眷属よ! 私は王竜の器、肉体をこの手で星に還した者!」
「メイルストロム様を……我が王を倒しただと……!?」
 竜は瞳を輝かせ、巨大化させた槍を手にフィルメリアを襲う。
「貴様ああああ!! 戯れ言でも許されんぞ!!」
 その一撃を盾で受け吹き飛ばされるフィルメリアだが、同時に攻性防壁で竜ものけぞらせることに成功。
 そこへ旭が砂を蹴って跳び、ハルバードを叩きつける。
「嘘じゃねぇ、本当だ! 俺は岩井崎 旭。ザッハークを倒し、ザッハークと共に戦い、『明日』を護ると約束したニンゲンの一人だ!」
「何!?」
 鍔迫り合いから互いに距離を置く。戸惑う竜へ、旭とフィルメリアは自分の知る範囲の言葉で、龍奏作戦での出来事を語った。
「まだ王の心……本体にあたる部分は北のゲートと共に封じられたままだけれど、いつかは会って話したい。私は貴方達や強欲王となる前の赤龍に何があったのか知りたくて此処にいる。だから、聞かせて欲しい」
「赤龍に何があったのか、その答えがヴォイドゲートにあるんだろ!? それを知ってどうにかするのが、俺の約束なんだ!」
 竜は俯き、頭を振る。
「僕には、君たちが嘘を言っているようには思えない。その眼差しは本物だ」
「だったら……!」
「それでも僕は、この地を任された戦士だから。僕には僕の、約束がある!」
 竜は全身に光の鎧を纏い、雄叫びを上げた。

 サラマンダーとの戦いは、一進一退の攻防の最中にあった。
 物量では敵が圧倒的に上だが、ハンターとリザードマンもよく耐えている。
 真白はソウルトーチで敵を集中させ、時に馬で移動し敵を撹乱。火炎攻撃などを味方に当てないように誘導していた。
 神薙は防御障壁や攻性防壁でそれをフォローし、デルタレイでダメージを重ねていく。
「二人共、お待たせしました!」
 そこへ駆けつけたもなかがダガーでサラマンダーを斬りつける。
 水の属性を持つ一撃は、見た目以上の威力で蜥蜴を黙らせた。
「神薙さん……相変わらず一番前に居ますね」
「い、いや……なんかスイマセン」
「まあ良いでしょう。予想外に味方も増えましたし」
 後方の砂丘には狙撃銃を構えた地球兵が四人。マークスマンの指示に従い、蜥蜴を銃撃している。
「戦力も増えた。そろそろ一気に勝負を決めるとしよう」
「銀さんの体力は平気?」
「まだまだ自己回復できる。心配は無用だ」
「では、突っ込みますよ!」
 走りだしたもなかに続き、神薙とリザードマン部隊がサラマンダーへ一気に攻めこむ。
 もなかが機動力で敵を翻弄しつつ攻撃で数を減らし、神薙は防御障壁でもなかを支援しつつ、デルタレイで攻撃。
 二人の突撃に続いてリザードマンが雪崩れ込み、真白が弓で弱らせた敵を撃破していく。
 元々半分近くに減っていた蜥蜴は、みるみる数を減らしていった。

 アルファスは魔法で岩竜の頭を吹き飛ばし撃破すると、もう一体の岩竜と闘う惣介に目を向ける。
「グラニ、先に行って彼を支援するんだ!」
 アルファスが飛び降りると、グラニはぐんと加速し岩竜へ向かう。そしてアルファス自身は八卦図をチャージしつつその後を追う。
 スラスターで接近しパイルバンカーを打ち込む惣介。頑丈な敵には有効な攻撃だが、なかなか撃破には至らない。
 そこへグラニが駆けつけると、大型の身体によじ登るようにして牙を立てる。当然、岩竜は振り払おうともがいた。
「アルファスさんのイェジドか! よし!」
 そちらへ気が向いている間に岩のような身体に魔導鈎を固定。回りこむようにして、スラスターを全開にする。
「これで、どうだぁ!」
 既に足を負傷していた岩竜は、身体のバランスを失いどんどん傾いていく。
 どさりと横倒しになった岩竜が悶える。そこから素早く飛び降りたグラニを確認し、アルファスはチャージを終えた魔法を解き放つ。
「三鈷剣……貫け!」
 3つの魔法の剣は竜の腹を次々と食い破る。
 悲鳴を上げる岩竜の頭部へ取り付いた惣助は、そこへパイルバンカーを押し当てた。
 射出された杭が竜の頭を貫通し、悲鳴が停止する。巨大な身体は塵に変わり、砂と共に消えていった。

 火竜が発射する火炎弾の爆発を突き破り、アウレールはマシンガンを放つ。
 CAMの纏ったマントは耐火能力を持ち、これが火炎からアウレールを守っていた。
 銃撃を交わそうと飛行する所へ、アニスの狙撃銃が着弾する。二人は互いの行動をフォローし、敵に攻撃を命中させていく。
「はん。結局デカくて頑丈なだけのトカゲじゃねぇか。こっちは暑くてムシャクシャしてんだ。もっと踊って見せやがれ!」
 銃弾が翼を食い破り、いよいよ火竜が落下する。
 空中で体勢を立てなおそうと慌てる所へアウレールは跳躍。空中でランスを繰り出す。
 首を貫通した槍に悲鳴を上げる竜。そのまま落下時に胴体までまとめて貫通させた。
「CAM……この力! やれるじゃあないか、私にも……!」
 片足を敵の胴体に乗せランスを引き抜くと、竜は塵となり消滅した。
 そこへ真夕を乗せた紅印が走ってくる。
「ごめんなさーい! ブリザードが切れちゃって!」
 身体が凍りついた竜は、それでも機動力が目に見えて低下している。
 アニスは冷静に狙いを定め、一者。これが竜の腹を食い破ると、真夕は急制動をかけ、頭上を通過する竜へライトニングボルトを放つ。
「雷鳴よ! あれ! タケミカヅチ!!」
 下方から放たれた雷の槍が火竜の身体を貫通する。その衝撃に堪えきれず墜落すると、待ち構えていたアウレールのランスが頭に突き刺さる。
「悪いが容赦はせんぞ。これは世界を巡る生存競争なのだからな」
 ピクピクと震える竜へ、引き抜いたランスをもう一度突き刺し、アウレールは呟いた。

 光の鎧を纏った人型竜の強さは、ザッハークと同格。強烈な力を前に、ハンターは苦戦を強いられていた。
「へっ、やっぱつえーな……当然か。あいつらも強かったもんなぁ……」
 口元の血を拭いながら笑う旭。特にこの敵は高機動飛行能力による一撃離脱が厄介だ。
 たった三人では行動を制限できず、一方的な突撃を凌ぐのが精一杯だった。
「その程度の力で我が王を倒したなど……笑わせるな!」
 そこへ、三体の龍を模した魔法が飛来する。アルファスの黄龍だ。
「何……!? 他の部隊は……まさか、全滅したのか!?」
「フィル、大丈夫かい?」
 アルファスはフィルメリアにポーションを手渡す。同時にイェジドを旭に向かわせ、そちらにもポーションを渡していた。
 同時に駆けつけた惣介もアサルトライフルで支援に入る。
「あの機動力相手では接近しても危険なだけだ。俺は援護に徹するぞ」
 直撃は困難でも、弾幕を張れば敵の行動を制限できる。それが惣介の狙いだった。
「フィルメリアさ~ん、大丈夫ですか!」
 神薙が手を振りながら駆け寄る。
 もなかも回り込みながら射撃で支援、そして真白は青のワイバーンの背に乗り、空中から弓で攻撃を仕掛ける。
 どちらの攻撃も大ダメージとは行かないが、小回りの効く攻撃はCAMの射撃と合わさり相手に大きなプレッシャーを与える。
「アルも神薙君もありがとう。私は大丈夫よ。それより……」
「うん……。赤龍の眷属、なんだね」
 アルファスの言葉に頷く。それだけで、敵の正体は明らかだった。
「チッ、なんてスピードだ。チマチマ狙撃なんぞしてられっか!」
 マウントしていたマシンガンに持ち替えたアニスと共にアウレールが射撃を開始。
「彼の龍王は忠臣に恵まれ、さぞ幸運であったことであろう。その最期としてはあまりに惜しい……。だが、私も父と主上に誓った使命を果たす。JaかNeinか。それ以外不要だ、名も知らぬ赤竜よ!」
 流石にこうも多角的な射撃を受けて全て避けられるはずもなく、CAMの大口径の弾丸が命中すれば、動きにも乱れが生まれる。
 それでも竜は飛び続ける。その様にレホスは感心していた。どこか、憧れに近い感情すら湧き上がった。
「どうしてキミは、それでも戦えるの……?」
 リアルブルーに帰るために戦い続けてきた。
 だというのに、その故郷に拒絶され、異世界に取り残された。
 戦う意味も目的も見失いかけたレホスにとって、この敵には信じがたいものがあった。
 寄る辺なくとも約束を守り続けることの難しさは、身に沁みている。
「ううん……弱気になってちゃダメだ!」
 迷いがないわけではない。
「行くんだ! それでも……!」
「私も行かなきゃ……でも……」
 高速機動戦についていけない。歯噛みするフィルメリア、そこへアルファスのイェジド、グラニが駆けつける。
「グラニなら追いつける筈だよ。フィルは僕らがエスコートする」
「アル……ごめんなさい、ありがとう!」
 多数のCAMの弾幕にたまらず次々に被弾し失速する人型竜。そこへ紅印で回りこんだ真夕が雷に槍を放つ。
「ぐうっ!?」
 この直撃を槍で減衰するが、すかさず旭がハルバードを叩きつける。
「ははっ! これ受けんのかよ、あんたすげーな!」
「何を、この程度!」
「名前何て言うんだ、あんた!? ザッハークみたいにあるんだろ、名前!」
 背後へ跳ぶ人型竜だが、回りこんだウォルドーフが跳びかかり飛翔を妨害。
「いいぞっ、ヴォルドーフ!」
 人型竜はこれを投げ飛ばして退けるが、縦に回転するように旭が追撃を振り下ろす。
「ぐっ、光の鎧を砕くなんて……君たち本当にニンゲンか!?」
 そこへ影が差す。接近してきたレホスのドミニオンMk.IV改が剣を振り下ろしたのだ。
「ぬおおおおおっ!?」
 両手に構えた槍でこれを受け止めるが、人型竜の足が砂にめり込む。
 グラニに跨がり加速したフィルメリアは魔導符剣に炎を纏わせ、その隙に斬撃を叩き込んだ。
「どれだけ恨まれようと、憎まれようと、私は私の想いの為に貴方達と戦う。過去の罪も全て知りたい、その上で貴方達に報いる為に!」
 炎の斬撃にその姿が消え、しかし焼かれながらも上空へと逃れる。
 それを妨害するように、飛龍に乗った真白と地上を走るもなかが射撃で牽制。それ以上空に上がればCAMの飽和攻撃が待っている。
 上空で戦いが続くのを見上げ、旭はハルバードを砂漠に突き刺し、胸の前に拳を固める。
「霊呪よ、俺に力を……! 現界しやがれ、翼持つ者ッ!」
 拳に紋章が浮かび上がり、光が旭の身体を包み込む。それが晴れた時、そこには祖霊を体現した旭の姿があった。
『飛ぶぜ、ウォルドーフ!』
「フィル!」
 アルファスは黄龍で三方向から上空の人型竜に攻撃。そこから逃れようとする場所へ、フィルメリアは機導砲をねじ込んだ。
 跳躍したイェジドから更に跳躍し、旭は吼える。
 身体を横に回転させながら連続で繰り出すハルバードの乱打が人型竜の鎧を砕き、大地へと叩き落とした。
「ぐ……は……っ」
 ダメージを受けすぎた身体は自由に動かず、震えながらなんとか立ち上がろうと試みるが、膝を着いてしまう。
「まだだ……まだ、倒れるわけには……ッ!」
「もう飛び回る元気も残ってないってか?」
 ふっと笑い、スナイパーライフルを構えるアニス。しかし、人の姿に戻った旭は竜を庇うように立つ。
「みんな、ちょっと待ってくれ! 今回はこいつを見逃してやってほしい!」
「其奴は明らかに高位種だ。理由によっては聞けぬ相談になるが?」
「俺に考えがあるんだよ。ひょっとしたら余計な戦いを避けられるかも」
 その言葉にアウレールは銃を構えたまま、しかし引き金にかけた指を止めた。
「あんたの仲間に、北の戦いの事を伝えてくれ! 赤龍やザッハークの死と、その最期を仲間に説明するんだ!」
 ほう、とアルファスは思案する。
 確かに、ザッハークのように人間側に着く竜もいないとは限らない。
 この南方での戦いは、本来は終わってしまった戦争の続きなのだから。
「戦いを避けるために、僕を見逃すというのか」
 竜はゆっくりと立ち上がり、頷く。
「……わかった。その後どうなるか保証はできないが、伝えよう」
「ほんとか!?」
「ああ。僕も……」
 “出来ることなら戦いたくない”。言葉はなかったが、表情はそう物語っていた。
 戦いになれば、必ず仲間を失うことになる。彼にとってそれは、何よりも辛い事だった。
「君たちは強いね。それに優しく、勇敢だ。ニンゲンが皆そうだったなら、良かったのにな……」
 そう言って竜は翼を広げた。
「エジュダハ……それが僕の名前だ。借りは必ず帰す!」
 猛スピードで遠ざかっていく竜。その姿は見る見る小さくなり、やがて見えなくなった。

「~ップハァ! あ~生き返……らない……」
 げんなりした様子で缶ビールを睨む惣介。
 熱砂の戦闘ですっかり温まりきってホットなビールは、非常に残念になっていた。
「ラヴィアン中尉……中尉!? しっかりしてください!」
 目を向けてみると、ぐったりしたラヴィアンをもなかが抱きかかえている。
「あ~、熱中症だろ。所詮非覚醒者だからな。日陰に運んで水飲ませとけ。服は緩ませろよ」
「すいません、他の兵士の皆さんも熱中症です」
「テメェらバカなのか?」
 神薙が引きずってくる兵士達にアニスは溜息を零す。
「根性ねーなテメェ等。変温動物と同じにやれたぁ言わねぇが、軍人ならもちっとシャキっとしろや」
「うう……我々もCAMで出ようと思ったのですが、調整中でして……」
「砂漠でどノーマルのCAM動かしたらあっという間に関節のモーター死ぬわな」
「……私も少し言い過ぎたようです。皆さんもちゃんと頑張ったんですね。そうだ、私丁度ミネラルウォーターを持ってます! これをどうぞ!」
「ありがt……あぁあっちぃ!?」
 もなかが飲ませたミネラルウォーターは熱湯になっていた。
「私の国も南側は砂漠地帯だったけど、CAMに乗ったせいでスーツの中がビショビショだよ……」
「CAMチームは全員着衣泳状態だな」
「リゼリオから水がどんどん届いているではないか。簡易シャワー室もあるそうだぞ」
 アウレールが指差す先にある更衣室に死にそうな顔だったレホスと惣介の表情に光が戻った。
「私はともかく、紅印にはお水を飲ませてあげなきゃね」
 真夕はイェジド顎を撫でながら補給を受けに向かう。
「どれ、私も水浴びをさせてもらうとしよう」
「うあああ!? 銀さん、人前で脱いじゃだめだよ!?」
「いや。私は水着を着ているので」
「水着」
「戦闘中も着ていたのだ」
「戦闘中も……。だとしても、あっちで着替えようね」
 神薙に背中を押され去っていく真白。惣介はアナライズデバイスを手に。
「そういえば、先ほど交戦したエジュダハという竜、画像記録したのだが、中尉に渡せる状況じゃないな」
「ちょっと見せてくれる?」
 フィルメリアとアルファスはその画像を覗きこむ。
「彼は、竜との戦いを終わらせてくれるだろうか?」
「どうかしらね……」
「あいつはイイヤツだ、約束は守るさ。俺たちはヴォイドゲートを目指そうぜ。多分、そこに答えがあるんだ」
 旭の言葉に二人も頷く。
 この砂漠のどこかにあるヴォイドゲート。
 闇の源泉に待つ真実を求め、ハンターらの行軍は続くのであった。

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MVP一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭ka0234
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファスka3312

重体一覧

参加者一覧

  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    レラージュ(ka0141unit001
    ユニット|CAM
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ウォルドーフ
    ウォルドーフ(ka0234unit001
    ユニット|幻獣
  • 理由のその先へ
    レホス・エテルノ・リベルター(ka0498
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ランチャードミニオン
    射撃支援型ドミニオンMk.IV(ka0498unit001
    ユニット|CAM
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    シンカイ
    真改(ka0510unit002
    ユニット|CAM
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    パンツァーインファンテリー
    PzI-2M ザントメンヒェン(ka2531unit001
    ユニット|CAM
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    グラニ
    グラニ(ka3312unit002
    ユニット|幻獣
  • 世界より大事なモノ
    フィルメリア・クリスティア(ka3380
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    クイン
    紅印(ka3977unit001
    ユニット|幻獣
  • 正秋隊(雪侍)
    銀 真白(ka4128
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人

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アイコン ラヴィアン&神薙への質問
フィルメリア・クリスティア(ka3380
人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/09/02 20:24:25
アイコン 拠点防衛・強欲竜迎撃(相談卓
フィルメリア・クリスティア(ka3380
人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/09/04 00:17:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/01 13:45:47