ゲスト
(ka0000)
【蒼乱】熱砂の憲兵と来訪者たち
マスター:稲田和夫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/05 15:00
- 完成日
- 2016/09/18 12:14
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
南方、竜の巣。その海岸付近に設置された転移門と人類の仮設拠点の一つ。
ゾンネンシュトラール帝国第一師団憲兵大隊の兵長オレーシャは上機嫌でCAMの整備に当たっていた。
「魔導エンジンの配線も大分理解出来てきたな。これなら、戦闘後の点検も何とか手伝える」
何故、本来は首都の治安維持を行う筈の彼女がここに出向させられているのかについては若干の説明が必要であろう。
アーマーやCAMの稼働体制がクリムゾンウェストで確立されたということは、その運用に必要な整備要員も今まで以上の数が要求されるということである。
当然帝国も、この事態は予測しており錬魔院に命じて短期の技術者養成実習などを開催していたがまだまだ数が足りないのが現状だ。
一方のオレーシャはドワーフということもあり、元々これらの技術に強く、独学で様々な知識を学んでいたことも手伝って、錬魔院で実習を受けたあとは十分に現場の整備員としても通用するレベルであった。
まして、ここ南方への拠点設置は一人でも多くの覚醒者が必要ということもあり、歴戦の兵士でもある彼女がこうして出向してきたという訳だ。
「兵長、そろそろ夜明けです」
彼女の指揮下にある整備員や憲兵隊の兵士が心配そうに声をかける。
「ああ、すまないな。転移門があるとはいえ、ここは敵地だ。出来るだけのことはやっておきたいと……」
オレーシャが突然厳しい顔になってCAMから飛び降りた。
「兵長?」
「……声を立てるな。整備班はこのままここで待機。CAMを守れ。お前は私について来い。侵入者だ」
オレーシャそう命令すると、兵士を伴って医薬品や食料、水などが備蓄してある倉庫の方へと走り出した。
●
「――動くな。ゆっくりとこっちを向け」
ドスの効いたオレーシャの声色に、その人影はビクッと全身を震わせると恐る恐る命令に従った。
人間より小柄な体躯、犬に酷似した頭部。そして、頭部には装飾の施された濃い緑色の布が巻かれている。
「……コボルドか。先遣隊が幾つかの地点で遭遇したとは聞いていたが」
帝国領内でも普通に見られるコボルドは、一般的には敵対的な亜人種として知られており、現にオレーシャもつい最近交戦した経験があった。
だが、このコボルドは様子が違っていた。
こちらを振り向いたコボルドは、オレーシャには理解できない言語で何かを言っていたが、やがて地面に跪くと、まるで哀願するかのように必死に頭を地面に擦り付け始めた。
相手の意図が理解できないオレーシャは苛立つばかりだ。
「謝罪のつもりか? なら、まず貴様が奪った物資を返却するのが先決だろう」
だが、コボルドはそれを聞くと粗末な布にくるんだ医薬品を必死に抱きすくめ、なおも哀願と身振り手振りを繰り返す。
「なるほど、どうあっても返す気はないようだな」
オレーシャが一歩踏み出す。
コボルドその殺気に怯えながらも、片手で相手を押し留める。そして、もう片方の手で必死に懐をまさぐり始めた。
「貴様!」
だが、オレーシャは相手の行動を、武器を取り出そうとしている、と解釈して咄嗟にモンキーレンチを投げつけた。
レンチは咄嗟に身をかがめたコボルドの頭上を通過、地面に命中して岩盤を砕いた。
コボルドは子犬がきゃん、という声にも似た哀れな悲鳴を出して飛び上がったが、それでも何とか懐から何かを取り出して地面に置くと、必死に走り出した。
●
数分後、オレーシャは部下の帝国兵たちとともに、仮設陣地の背後にある岩山を包囲していた。
「兵長、やはり入り口はここだけのようです」
周囲を回ってきた部下が報告する。
「袋の鼠という訳か。他愛も無い。私もドワーフの端くれ……穴潜りなら望む所だ。私が捕縛してくる」
意気揚々と上着を脱ぐオレーシャ。
そこに、さっき倉庫でオレーシャと一緒だった兵士が、コボルドの残していった品を持って現れた。
「兵長。この品物は貴金属や宝石が使われています。売ればそれなりの金額になるでしょう。奴は、なんでこんな物を……」
「光物を集める習性でもあるのだろう。さっきは薬瓶にでも惹きつけられたのだな。けしからん話だ」
「さっきの様子だと、奴はこれを我々に渡そうとしていたように見えたのですが……」
オレーシャと一緒にコボルドを見ていた兵士は納得できない様子で言い募る。
しかし、その時見張りの櫓から警告が発せられ、この会話は中断された。
「敵襲! 一体だけですが、相当な大きさです! 恐らく、強欲の眷属と思われます!」
オレーシャは暫く思案する様子を見せていたが、やがてハンターたちの方を振り返ってこう命令した。
「迎撃はハンターたちに任せる。CAMの使用も許可しよう。存分に暴れてやれ」
●
「フン、矮小な人間ども叩き潰しても詰まらんと思っていたが、中々壊し甲斐のありそうな獲物ではないか……」
その歪虚が歩く度に大地は揺れ、砂埃が巻き上がる。
「CAMと言ったか? この俺様が纏めて叩き壊して、我ら強欲の力を思い知らせてやるわ、グハハハハハ!」
巨大な鎧竜(アンキロサウルス)が直立二足歩行したようなドラゴンの哄笑が、夜明けと共に再び熱に包まれつつある砂漠に響き渡った。
ゾンネンシュトラール帝国第一師団憲兵大隊の兵長オレーシャは上機嫌でCAMの整備に当たっていた。
「魔導エンジンの配線も大分理解出来てきたな。これなら、戦闘後の点検も何とか手伝える」
何故、本来は首都の治安維持を行う筈の彼女がここに出向させられているのかについては若干の説明が必要であろう。
アーマーやCAMの稼働体制がクリムゾンウェストで確立されたということは、その運用に必要な整備要員も今まで以上の数が要求されるということである。
当然帝国も、この事態は予測しており錬魔院に命じて短期の技術者養成実習などを開催していたがまだまだ数が足りないのが現状だ。
一方のオレーシャはドワーフということもあり、元々これらの技術に強く、独学で様々な知識を学んでいたことも手伝って、錬魔院で実習を受けたあとは十分に現場の整備員としても通用するレベルであった。
まして、ここ南方への拠点設置は一人でも多くの覚醒者が必要ということもあり、歴戦の兵士でもある彼女がこうして出向してきたという訳だ。
「兵長、そろそろ夜明けです」
彼女の指揮下にある整備員や憲兵隊の兵士が心配そうに声をかける。
「ああ、すまないな。転移門があるとはいえ、ここは敵地だ。出来るだけのことはやっておきたいと……」
オレーシャが突然厳しい顔になってCAMから飛び降りた。
「兵長?」
「……声を立てるな。整備班はこのままここで待機。CAMを守れ。お前は私について来い。侵入者だ」
オレーシャそう命令すると、兵士を伴って医薬品や食料、水などが備蓄してある倉庫の方へと走り出した。
●
「――動くな。ゆっくりとこっちを向け」
ドスの効いたオレーシャの声色に、その人影はビクッと全身を震わせると恐る恐る命令に従った。
人間より小柄な体躯、犬に酷似した頭部。そして、頭部には装飾の施された濃い緑色の布が巻かれている。
「……コボルドか。先遣隊が幾つかの地点で遭遇したとは聞いていたが」
帝国領内でも普通に見られるコボルドは、一般的には敵対的な亜人種として知られており、現にオレーシャもつい最近交戦した経験があった。
だが、このコボルドは様子が違っていた。
こちらを振り向いたコボルドは、オレーシャには理解できない言語で何かを言っていたが、やがて地面に跪くと、まるで哀願するかのように必死に頭を地面に擦り付け始めた。
相手の意図が理解できないオレーシャは苛立つばかりだ。
「謝罪のつもりか? なら、まず貴様が奪った物資を返却するのが先決だろう」
だが、コボルドはそれを聞くと粗末な布にくるんだ医薬品を必死に抱きすくめ、なおも哀願と身振り手振りを繰り返す。
「なるほど、どうあっても返す気はないようだな」
オレーシャが一歩踏み出す。
コボルドその殺気に怯えながらも、片手で相手を押し留める。そして、もう片方の手で必死に懐をまさぐり始めた。
「貴様!」
だが、オレーシャは相手の行動を、武器を取り出そうとしている、と解釈して咄嗟にモンキーレンチを投げつけた。
レンチは咄嗟に身をかがめたコボルドの頭上を通過、地面に命中して岩盤を砕いた。
コボルドは子犬がきゃん、という声にも似た哀れな悲鳴を出して飛び上がったが、それでも何とか懐から何かを取り出して地面に置くと、必死に走り出した。
●
数分後、オレーシャは部下の帝国兵たちとともに、仮設陣地の背後にある岩山を包囲していた。
「兵長、やはり入り口はここだけのようです」
周囲を回ってきた部下が報告する。
「袋の鼠という訳か。他愛も無い。私もドワーフの端くれ……穴潜りなら望む所だ。私が捕縛してくる」
意気揚々と上着を脱ぐオレーシャ。
そこに、さっき倉庫でオレーシャと一緒だった兵士が、コボルドの残していった品を持って現れた。
「兵長。この品物は貴金属や宝石が使われています。売ればそれなりの金額になるでしょう。奴は、なんでこんな物を……」
「光物を集める習性でもあるのだろう。さっきは薬瓶にでも惹きつけられたのだな。けしからん話だ」
「さっきの様子だと、奴はこれを我々に渡そうとしていたように見えたのですが……」
オレーシャと一緒にコボルドを見ていた兵士は納得できない様子で言い募る。
しかし、その時見張りの櫓から警告が発せられ、この会話は中断された。
「敵襲! 一体だけですが、相当な大きさです! 恐らく、強欲の眷属と思われます!」
オレーシャは暫く思案する様子を見せていたが、やがてハンターたちの方を振り返ってこう命令した。
「迎撃はハンターたちに任せる。CAMの使用も許可しよう。存分に暴れてやれ」
●
「フン、矮小な人間ども叩き潰しても詰まらんと思っていたが、中々壊し甲斐のありそうな獲物ではないか……」
その歪虚が歩く度に大地は揺れ、砂埃が巻き上がる。
「CAMと言ったか? この俺様が纏めて叩き壊して、我ら強欲の力を思い知らせてやるわ、グハハハハハ!」
巨大な鎧竜(アンキロサウルス)が直立二足歩行したようなドラゴンの哄笑が、夜明けと共に再び熱に包まれつつある砂漠に響き渡った。
リプレイ本文
岩山へと向かう鎧竜の耳に聞くに耐えない罵詈雑言の類がいきなり飛び込んで来た。
『Hey dickhead! クソの役にも立たない独活の大木が、一人でノコノコ何しにやって来たんだい?』
「ぬぅ? 意味は解らぬが、侮辱していると判断するぞ!」
フォークス(ka0570)がソニックフォンブラスターを用いて行った挑発に激怒した鎧竜は手に持っていたフレイルをいきなりがっきりと咥えた。
「何のつもりでしょうか……?」
陣営地の側の岩陰に、自身の搭乗する魔導方デュミナス『ヨイチ』を伏せさせ、ライフルのスコープ越しに相手の様子を観察していた四十八願 星音(ka6128)は訝しんでいたが、次の瞬間驚愕に目を見開いた。
「四足歩行……!」
鎧竜はフレイルを口に咥え、凄まじい速度で走り出す。
「……姿勢が低くなったのは厄介ですね」
白とダークグレーに塗装した自身のデュミナスで、対空砲を構えていたクラーク・バレンスタイン(ka0111)の表情も僅かに曇る。
「とはいえ、これ以上近づけさせる訳にも行きません」
クラークの指が流れるようにコックピットのコンソールを操作する。
そして、操縦者の命令を受けたCAMのボディから射撃補助脚が展開、CAMの巨体を砂と岩の大地にしっかりと固定する。
「所々に固い岩盤があって助かりましたね」
重心が安定したのを確かめたクラークが微かに笑う。
「シャスール・ド・リス小隊長クラーク・バレンスタイン、これより支援砲撃を開始します!」
本来は戦艦に搭載されるべき、対空砲の長大な砲身が吼えた。同時にその反動で、機体が地面を滑り、振動が砂を舞い上げる。
岩というよりは金属にぶつかったような甲高い着弾の音と共に、鎧竜の頭部が僅かに仰け反る。そして、爆炎が敵を包み込んだ。
しかし、数秒後にはその爆炎の中からほぼ無傷の鎧竜が爆炎の向こうから姿を現した。
「想像以上に固いですね……」
クラークが心外そうに呟いた。
「第二射、撃ちます!」
間髪入れずに、伏射姿勢のヨイチの指がライフルの引き金を引き、クルーアルが咳き込んだ。
弾丸は狙い違わず、鎧竜の頭部に命中するが、やはり火花だけを散らして堅牢な装甲に弾かれる。
「仕方ありません、一旦前衛に任せましょう!」
思考を切り替えるようにクラークが叫んだ。
●
「ぐぬぅ!?」
砲撃や弾丸をものともせず疾走を続けていた鎧竜の足を止めたのは、その足元に向かって放たれたアサルトライフルの銃弾だった。
「考えようによっては、コボルド一匹確保するためにわざわざCAMを動かしたようなもんか……割に合わない気もするけどな……」
たった今アサルトライフルを放ったのは、シン・コウガ(ka0344)の搭乗する魔導型デュミナス『ウルフイェーガー』だった。その純白の装甲の肩には、クラークの期待と同じ百合の紋章が輝く。
「遠くから豆鉄砲を撃つしか能が無いと思っていたが、ようやく気迫のある奴が出て来たか!」
「言ってろ……!」
イェーガーのアサルトライフルが猛然と浴びせられる。しかし、鎧竜はそれを装甲で弾きながら平然と立ち上がり、再度二足歩行形態になると、咥えていたフレイルを再度構え直した。
「では、貴様から鉄クズになるがいい!」
弾丸を浴びながら、じりじりと距離を詰めた鎧竜が遂にフレイルを振り上げた。
『Smile, asshole! さっきから見てりゃまるで、犬だね! もっとマシな芸は出来ないのかい?』
「さっきの無礼者か!」
再び、浴びせかけられるソニックフォンブラスターによる罵声。しかし、怒りに満ちた視線でそちらを振り向いた鎧竜が見たのは、視界の端に映る帆布の端だけであった。
「うぬぅ!?」
「鉄くずになるのはあんだよ……最も、鉄じゃなく肉煎餅だけどね!」
相手がシンのイェーガー惹き付けられている内に接近していたフォークスのデュミナスが巨大な戦槌を振り上げ、鎧竜に叩きつけた。
凄まじい衝撃音が響き、鎧竜の両足がずぶりと砂にめり込んだ。
相手の動きが止まった事を確認し、ハンマーを持ち上げようとするフォークス。
「!?」
しかし、デュミナスの腕が持ち上がらない。いや、モーターはなんとか腕を上げようとするのだが、鎧竜の手がしっかりとハンマーの柄を抑えているのだ。
「グ、フ、フ……」
ハンマーの打突部の下で、鎧竜が不気味な含み笑いを漏らす。そして、鎧竜の尾が凄まじい勢いでしなり、その先端の堅牢な瘤がデュミナスの顔を真下から打ち据えた。
「……!」
その衝撃で、コックピットの内壁に激しく叩きつけられたフォークスが悶絶する。デュミナスも全身の部品を軋ませ後、大地へと仰向けに倒れてしまう。
「今のはなかなか効いたぞ!」
鎧竜の攻撃は終わらない。巨大なフレイルが振り上げられた。
「ハロー、同胞、景気はどうよ!?」
その動きを止めたのは、横から割り込んで来た真紅の魔導アーマー「ヘイムダル」――通称『ザウルスくん』を駆るエリス・ブーリャ(ka3419)だった。
「俺様を侮辱するか!」
気分を害したのか、鎧竜のフレイルが振り下ろされたのはエリスのザウルスくんの方であった。
「見たまんまのバカとはいえ、外見が似てるだけで騙される訳が無いか……! でも、ザウルス君は肉食だしこっちの武器も凶悪だかんね!」
しかし、エリスはフォークスが後退する時間を稼ぐため、フレイルを受け止める覚悟を決めていた。
「舐めなんなよっ!」
ザウルスくんが真上に持ち上げた盾がフレイルの鉄球を受け止めた。更にエリスはスタビライザーを用いて素早くバランスを立て直すと、そのまま鎧竜の足元に迫り、ドリルを回転させる。
「ぐおおおお!」
ドリルは堅牢な装甲にぶつかり火花を散らした。だが、回転するドリルは装甲を削り、遂に僅かにではあるが鎧竜の肉を抉って見せた。
「痒いわあ!」
しかし、攻撃を終え離脱しようとするザウルスくんを追って、鎧竜の腕が伸びる。
「おっと! それ以上味方は追わせねーぜ!」
その時、側面から飛び込んで来た鹿島 雲雀(ka3706)の魔導型デュミナスが相手の脇腹に向けて手に握ったハルバードを突き出した。
「ぬぐぅ!」
ハルバードの刃は。鎧竜の装甲を破ることこそ出来なかったものの、その衝撃で一時的にバランスを崩させることに成功した。
「へ、怪獣VS巨大ロボってか! 今度はロケットパンチでもつけてみるか!?」
エリス、それにフォークスの機体が一時的に退避したのを確認した鹿島が、不敵に笑った。
「次から次へと虫ケラ共があ! こうなったら纏めて叩き潰してくれるわあ!!」
鎧竜は、怒りに任せて再度尻尾を振り上げた。
「へ、馬鹿はやることが単純なんだよ!」
だが、鹿島はこの動きをこそ待っていた。
「避けるのは難しいだろうさ……けどな!」
ハルバードを、間合いギリギリから叩き込んでいたエリスは、攻撃した後の退避は困難であると判断していた。
それ故、彼女は素早いを操作で、デュミナスのスラスターを全開にすると、機体の姿勢を低くして、鎧竜の懐に向けて一気に加速させた。
「なんだと!?」
鎧竜の眼が驚愕に見開かれる。
「これで尻尾は使えねえだろうがあ!」
鹿島の狙いは、尻尾の旋回する軌道の内側に入る事であった。
確かに、尻尾の一撃を必殺たらしめているのは、その先端のハンマー上の瘤だ。まして、鹿島は柄で尻尾を跳ね上げることまでしており、尻尾の一撃を避ける算段は完璧であった。
「ぐっ……!?」
にもかかわらず、呻いたのは鹿島の方であった。
「く……そ……!?」
先ほどのフォークス同様、衝撃で激しく振動したコックピットの内側に叩き付けられた鹿島は頭を振って必死に意識を保とうとする。
コックピットの表示によると、どうやら胴体に直撃を受けて数mほど吹っ飛ばされたらしい。
「畜生……鉄球か……よ!」
気付いた鹿島が歯噛みする。そう、鎧竜は尻尾が躱されたと判断した瞬間、フレイルで鹿島のデュミナスを打ち据えたのである。
「グハハハハハ、所詮は人間の浅知恵よ!」
鉄球を振り回しながらこれ見よがしに鎧竜が勝ち誇る。
「なるほど……」
シンが慎重に自機を前に出しながら呟く。
「竜の分際で武器を使うなんて卑怯臭いとは思っていたが……まずはあれを何とかするのが先決みたいだな」
●
「ほほう、中途半端な距離からおっかなびっくり伺っていた奴が、どういう風の吹き回しだ?」
シンは鎧竜の挑発など一切無視して、イェーガーにひたすらブレードを振るわせていた。
フレイルを破壊するために、彼はまずフレイルを武器で受け止めようとしていたのだ。
「くっ、尻尾か!」
だが、なかなかシンの目論見通りにはいかない。
フレイルは力任せに振るわれるだけであり、防御に集中すればそれを受け止めて、鎖をブレードで絡め取ること自体は可能である。
だが、鎧竜にはもう一つの武器である尻尾がある。たしかにフレイルとブレードが打ちあえる距離なら、先ほどの鹿島のように瘤の内側になるので殴打自体は心配しなくて良い。だが、尻尾の使い道は殴打に限らない。
「グフフフフ! 足元が留守ではないか!」
そう、強靭な尻尾は打ち合いに集中するCAMの脚部に命中すれば容易に期待を転倒させるだけの威力は十分に持っているのだ。
「この……!」
危うい所で、CAMの足を狙う尻尾の動きに気付いたシン。彼は折角受け止めた鉄球を振り払わなければならないのかと歯噛みする。
「このままだと……!」
シンは焦ったように背後を振り返った。
鎧竜とシンたちが攻防を繰り返している内に、彼らは何時の間にか岩山と麓の陣地まで近づいてしまっていたのだ。
「これ以上好き放題やらせるかよー!」
だが、絶妙なタイミングで、エリスが再びザウルスくんを鎧竜に肉薄させる。
「ええい、紛い物が! 飛んで火にいる夏の虫よ!」
背後から近づくエリスに対し、これ幸いと振り上げた尻尾をそちらに向ける鎧竜。
「ぐっ……」
直撃こそ免れたものの、かすっただけで衝撃を受け転倒するザウルスくん。コックピットの中でエリスが呻く。
「さあ、今度は貴様だ!」
鎧竜はこれ幸いと、巻き付いた鎖を凄まじい力で引き寄せようとした。イェーガーがバランスを崩しそうになる。
焦るシン。しかし、その時鎧竜が呻いた。
「ぐあ!?」
「流石にここまで近づかれると、砲撃ばかりしている訳にも行きませんからね……!」
マシンガンを構えたCdlカラーのデュミナスのコックピットでクラークが笑う。
「流石に堅牢な背中ですね。おかげでシンさんへの貫通弾を心配せず撃てます」
「貴様、よくも!」
だが、怒り狂った鎧竜がそちらに注意を向けた瞬間、シンのイェーガーの手甲に内蔵されていたプラズマカッターが高熱を発して見事にフレイルの鎖を焼き切った。
空しく砂の上に落下した鉄球を見た鎧竜の咆哮が大気を震わせる。
「よし、武器は破壊した! このまま一気に……!」
シンが、イェーガーのスラスターを吹かして鎧竜から距離を取った瞬間、鎧竜が再度四足歩行を始めた。
「まさか……!」
シンがはっとした表情になった。鎧竜が尻尾や武器の他にその巨体を生かした攻撃をしてくるのではないかと予め予測していたこと、そして最初に士足歩行で高速移動する鎧竜を見ていたことが彼にその可能性を示唆したのだ。
「纏めて轢き殺してくれる!」
鎧竜が咆哮した瞬間、シンもまた叫んでいた。
「体当りする気だ! 皆避けろ!」
直後、鎧竜が凄まじい速度でハンターたちの方向に突進を始めた。
●
シン自身は何とか直撃を避ける事が出来た。それでも掠っただけでイェーガーは弾き飛ばされ、地面に落下した衝撃でコックピットに叩きつけられたシンは思わず呻き声を上げる。
「ぐっ……くそっ……」
一方、このままだと鎧竜が陣営地に突っ込むという事に気付いたクラークは再度マシンガンを構え直し、何とか突進を止めようとする。
「止まりなさい……!」
だが、一旦突撃態勢に入った鎧竜は次々と装甲に弾かれる銃弾など意に介さず陣営地へと近づく。
「クソッタレが!」
何とか復帰した鹿島は鎧竜の斜め前方にデュミナスを立たせると、装備していたカノン砲を向けた。
「食らいやがれ……!」
砲弾が爆発し、砂と土が巻き上げられる。だが、鎧竜の進路は変わらない。
「くそお……こっちを向けってんだよ!」
鎧竜は頭に血が上って最早何も見えていない状態らしい。最初はフレイルを破壊したシンのイェーガーを狙っていたのだろうが、それを弾き飛ばした今は目につく物に手当たり次第向かっているようだ。
「回避を……くっ!?」
そして、なおも突進を続ける鎧竜はまず鹿島の機体の真横を通過し、更に危険を感じて遂に回避行動を取ろうとしたクラークの機体をも掠めて跳ね飛ばし、岩山へと接近して行った。
●
「おい、ハンターたちが皆やられちまったぞ!」
一方、陣営地はパニックになりかけていた。
「退避だ! とにかく岩山から離れろ!」
「待て、兵長はどうするんだ!」
「くそ、ハンターたちは何をやっているんだ!?」
ハンターたちの作戦は今回の依頼に参加したものに軍人や傭兵が多かったこともあり、そつなく纏まっていたと言える。現に、シンなどは巨体を生かした攻撃の危険性も考慮してさえいた。
惜しむらくは、このように敵が岩山に近づいた場合、何がなんでもそれを止めるというスタンスで動いていたハンターが一人しかいなかった、という事だろうか。
「待て……まだ一機残っているぞ……!」
兵士の一人が叫ぶと同時に、ヨイチがモーターの駆動音と共に立ち上がる。
「こんなに、大きいなんて……」
迫り来る鎧竜の巨体と勢いに、星音は恐怖を感じた。
「でも、私がやるしかないんですよね……!」
鎧竜が陣営地に侵入した瞬間、ヨイチの手首からワイヤーのついたエクステンドが射出され、その刃はうまく鎧竜の尻尾に引っかかる。
「きゃああああ!」
しかし、やはり鎧竜の力は圧倒的だった。
リールを巻き取ろうとした瞬間、激しく拘引されたヨイチは踏ん張ることすら出来ず、宙に舞い上げられ大地へと叩き付けられる。
同時に、鎧竜は頭から岩山へと突っ込み、陣営地は振動と激突の衝撃で飛び散った落石に襲われ、そこかしこで兵士たちの悲鳴が上がる。
「岩山が何故こんなところにある!」
一方、ようやく停止した鎧竜は、岩山から頭を引き抜いた後も、まだ怒りが収まらないのか、怒りに満ちた表情で尻尾を振り上げ、岩山に瘤を叩き付けようとする。
「や、やらせません……!」
だが、星音は諦めていなかった。コックピット内に叩きつけられた衝撃で、額から血を流しながらも必死に操縦桿を握り、転倒したままのヨイチでリールを巻き取り、尻尾の動きを封じようとする。
「邪魔をするな!」
怒りに任せて、力任せに尻尾を振る鎧竜。
「きゃああああああーっ!」
ヨイチは再度宙を舞い、星音も悲鳴を上げながら再度コックピット内に叩き付けられる。
「小賢しい……息の根止めてくれるわ!」
止めを刺そうと、鎧竜は再び直立歩行形態に戻る。そして、機能を停止し、バチバチと火花を上げるヨイチに近づいていく。
「犬じゃあるまいし、見飽きたんだよ……!」
その瞬間、一旦後退していたフォークスのデュミナスがアクティブスラスターを全開にして突っ込んで来た。
応戦しようとする鎧竜だが、尻尾には今だヨイチのリールが絡みついたままだ。そして、この時彼は先ほど自分に痛打を浴びせたデュミナスの戦槌にばかり注目しておりその帆布の下に隠された片腕にはまるで警戒していなかった。
「食らいな……!」
デュミナスの帆布が捲れ上がり、その下に隠された高圧電流を纏った爪が鎧竜の頭部に叩き込まれる。
その爪のほとんどは頭部の外殻に阻まれ、折れたりひしゃげたりしたが、その内の一本が見事、鎧竜の右目を貫いた。
「ぐ、ぐわああああ!?」
「ざまあみやがれ!」
激痛にのたうち回る鎧竜に向かって中指を立てて見せるフォークス。
しかし、鎧竜はようやく尻尾をアンカーから振り解くと、再度フォークスを打ち据え弾き飛ばす。
「馬鹿な……この俺様が……このようなあああ!」
しかし、ここまでの戦闘でほぼ無傷であっただけに、この一撃が効いたのか、鎧竜は戦意を失っていた。
彼は再度四足歩行になると、最早ハンターたちには注意を払わず、やって来た方向へ向けて猛スピードで退却して行った。
●
「なるほど、状況は分かった……諸君らの健闘に、感謝する」
報告を聞き終えたオレーシャはテントの中に居並ぶハンターたちに淡々とした口調で礼を述べる。
オレーシャは鎧竜が退却した後、何事も無かったかのように無事岩山から戻って来ていた。
「兵長、その傷……」
いや、無傷というのは正しくない。今エリスが心配したように、オレーシャの制服はボロボロになっており、所々汚れている。
「問題ない」
「兵長も何だけど、そっちのコボルドもさ……」
確かに、エリスの言う通りオレーシャに連行されて来たコボルドの方は全身に血のにじんだ包帯が巻かれ、痛々しい。
「ま、あんたも大変だったね」
エリスがコボルドに安心させるように語り掛ける。
「まあ、手当てもしてもらったことだし、私たちが追いはぎなんかじゃないのは解ったよね? 取りあえず、これでも食べてよ」
オレーシャがマカロンと水を差し出すと、コボルドはそれこそ仔犬のように目を輝かせて尻尾を振った。そして水はその場で飲み干したが、マカロンの方は箱を開けて匂いを嗅ぐと、それを大切そうにしまう。
「……?」
それを訝しむエリスだったが、気持ちは通じたのかと、ほっとした様子を見せる。
「それで兵長、コボルドの処遇については如何するつもりですか? ただ、珍しいから医薬品を盗んだというわけではなさそうですがね。どうしても必要だったと考えた方がよさそうな気がします」
クラークがそう言うと、鹿島も賛同した。
「兵長も、さっきの兵隊から聞いたんだろ? 金品は置いていき、医薬品は必死に抱える……まるで、その金品で薬を買おうとしているようだが、こいつ、医薬品がどうしても欲しい事情でもあるんじゃねーか?」
すると、それまで壁に寄り掛かって話を聞いていたフォークスが突然口を開いた。
「くだらないね……あたいはそいつの射殺を進言するよ。兵長殿」
「フォ、フォクシー!?」
驚いてそっちを見るエリスをオレーシャは手で制した。
「理由を聞こう」
「理由……? そいつらが敵愾心を隠すのに長けた歪虚ではなっていないっていう保証がどこにある? 何より、幾ら死人が出なかったとはいえ、この有様を何とも思わないのか? こいつが襲撃前の攪乱になったのは紛れもない事実だ。代償は払ってもらわないとね」
「代償、か」
フォークスは訝しんだ。なぜかオレーシャが場違いな、悪戯っぽい表情を見せたからだ。
「最もな理屈だ。ならば、この代償についてはどうする? ついて来てもらおうか」
そう言ってオレーシャは立ち上がってテントの外に出る。
舌打ちしつつも立ち上がって後を追ったフォークスと、二人の後を追ったハンターたちは絶句した。
「こいつらは……!」
フォークスが叫ぶ。
いつの間にか、陣営地内にはコボルドの群れが現れていた。
群れと言っても、10匹にも満たない数だが、そいつらが帝国兵に混じってちょこまかと走り回り、鎧竜の攻撃で出来た瓦礫を片付けたり、崩れた小屋の下敷きになった兵士を助け出そうとしている。
そして、その全員が最初に医薬品を盗もうとしたコボルドと同じように緑色の古い布で頭部を覆っていた。
「最初の奴も落盤の下敷きになった私を助け出そうとして怪我をした。ああ、君たちが気に病む事は無い。落盤と言っても覚醒者なら抜け出せる程度だったからな。だが、フォークスの言う通り、奴らの腹の内を探る機会だったので、敢えて抜け出せない振りをして見せた」
「あんた……っ」
何か言おうとするフォークスを遮り、オレーシャは続ける。
「彼らは人語を話せないが、古代語ならこちらの話は理解できるようだ」
そして、オレーシャが岩山の中で彼らに質問して解ったのは以下のようなことであった。
彼らが医薬品を必要としていたのは、やはり仲間のためだった。ここからかなり離れた地点の地下にある彼らの住居に、重い怪我をした仲間がいるらしい。
それを直す手段を探してここまで来た際に、人間たちが怪我人に薬を使うのを見て、どうしても必要だと思い、遺跡で見つけた装飾品と交換しようとしたようだ。
「だから、なんだってんだい? あたいは、そんなお涙頂戴話に興味は無いんだよ……!」
苛立ちを顕にするフォークス。
「心外だな。私もそうだ。だからここから先はビジネスの話をしたい」
「……?」
フォークスのみならず、全てのハンターたちが一斉にオレーシャを見た。
「何、彼らにも死者は出なかったものの、彼らの住処に繋がる地下道がさっきの歪虚の激突の衝撃で発生した落盤で完全に埋まってしまってな」
コボルドたちに質問して確認したところ、他にも地下道はあるらしいのだが、それは遠回りな上にコボルドたちも長い間使用しておらず、雑魔の巣になっている可能性もあるという。
「今回の件を鑑みて、帝国軍はこのコボルドたちを住処まで護衛することを決定した。ついてはハンターの協力を引き続き求める。これはさっきの大型歪虚の撃退とは完全に別の依頼だ。報酬は別途支払われる。また、今回の戦闘に協力してくれた者の参加を強制する訳でもない」
帝国軍としても準備する時間は必要だからゆっくり考えてくれ、と付け加えたオレーシャは唖然としているハンターたちに片目をつむって見せ、颯爽と去って行く。
シンもその様子を見守っていたが、ふとある光景を目にして複雑な表情になった。
「あんまり亜人に良い印象はもっていないんだがな……でも……」
シンの視線の先では、作業が一段落したので休憩しながらエリスから貰った少量のマカロンを手にしたナイフで切り分けて一口ずつ食べて、感動して騒いでいるコボルドたちがいた。
『Hey dickhead! クソの役にも立たない独活の大木が、一人でノコノコ何しにやって来たんだい?』
「ぬぅ? 意味は解らぬが、侮辱していると判断するぞ!」
フォークス(ka0570)がソニックフォンブラスターを用いて行った挑発に激怒した鎧竜は手に持っていたフレイルをいきなりがっきりと咥えた。
「何のつもりでしょうか……?」
陣営地の側の岩陰に、自身の搭乗する魔導方デュミナス『ヨイチ』を伏せさせ、ライフルのスコープ越しに相手の様子を観察していた四十八願 星音(ka6128)は訝しんでいたが、次の瞬間驚愕に目を見開いた。
「四足歩行……!」
鎧竜はフレイルを口に咥え、凄まじい速度で走り出す。
「……姿勢が低くなったのは厄介ですね」
白とダークグレーに塗装した自身のデュミナスで、対空砲を構えていたクラーク・バレンスタイン(ka0111)の表情も僅かに曇る。
「とはいえ、これ以上近づけさせる訳にも行きません」
クラークの指が流れるようにコックピットのコンソールを操作する。
そして、操縦者の命令を受けたCAMのボディから射撃補助脚が展開、CAMの巨体を砂と岩の大地にしっかりと固定する。
「所々に固い岩盤があって助かりましたね」
重心が安定したのを確かめたクラークが微かに笑う。
「シャスール・ド・リス小隊長クラーク・バレンスタイン、これより支援砲撃を開始します!」
本来は戦艦に搭載されるべき、対空砲の長大な砲身が吼えた。同時にその反動で、機体が地面を滑り、振動が砂を舞い上げる。
岩というよりは金属にぶつかったような甲高い着弾の音と共に、鎧竜の頭部が僅かに仰け反る。そして、爆炎が敵を包み込んだ。
しかし、数秒後にはその爆炎の中からほぼ無傷の鎧竜が爆炎の向こうから姿を現した。
「想像以上に固いですね……」
クラークが心外そうに呟いた。
「第二射、撃ちます!」
間髪入れずに、伏射姿勢のヨイチの指がライフルの引き金を引き、クルーアルが咳き込んだ。
弾丸は狙い違わず、鎧竜の頭部に命中するが、やはり火花だけを散らして堅牢な装甲に弾かれる。
「仕方ありません、一旦前衛に任せましょう!」
思考を切り替えるようにクラークが叫んだ。
●
「ぐぬぅ!?」
砲撃や弾丸をものともせず疾走を続けていた鎧竜の足を止めたのは、その足元に向かって放たれたアサルトライフルの銃弾だった。
「考えようによっては、コボルド一匹確保するためにわざわざCAMを動かしたようなもんか……割に合わない気もするけどな……」
たった今アサルトライフルを放ったのは、シン・コウガ(ka0344)の搭乗する魔導型デュミナス『ウルフイェーガー』だった。その純白の装甲の肩には、クラークの期待と同じ百合の紋章が輝く。
「遠くから豆鉄砲を撃つしか能が無いと思っていたが、ようやく気迫のある奴が出て来たか!」
「言ってろ……!」
イェーガーのアサルトライフルが猛然と浴びせられる。しかし、鎧竜はそれを装甲で弾きながら平然と立ち上がり、再度二足歩行形態になると、咥えていたフレイルを再度構え直した。
「では、貴様から鉄クズになるがいい!」
弾丸を浴びながら、じりじりと距離を詰めた鎧竜が遂にフレイルを振り上げた。
『Smile, asshole! さっきから見てりゃまるで、犬だね! もっとマシな芸は出来ないのかい?』
「さっきの無礼者か!」
再び、浴びせかけられるソニックフォンブラスターによる罵声。しかし、怒りに満ちた視線でそちらを振り向いた鎧竜が見たのは、視界の端に映る帆布の端だけであった。
「うぬぅ!?」
「鉄くずになるのはあんだよ……最も、鉄じゃなく肉煎餅だけどね!」
相手がシンのイェーガー惹き付けられている内に接近していたフォークスのデュミナスが巨大な戦槌を振り上げ、鎧竜に叩きつけた。
凄まじい衝撃音が響き、鎧竜の両足がずぶりと砂にめり込んだ。
相手の動きが止まった事を確認し、ハンマーを持ち上げようとするフォークス。
「!?」
しかし、デュミナスの腕が持ち上がらない。いや、モーターはなんとか腕を上げようとするのだが、鎧竜の手がしっかりとハンマーの柄を抑えているのだ。
「グ、フ、フ……」
ハンマーの打突部の下で、鎧竜が不気味な含み笑いを漏らす。そして、鎧竜の尾が凄まじい勢いでしなり、その先端の堅牢な瘤がデュミナスの顔を真下から打ち据えた。
「……!」
その衝撃で、コックピットの内壁に激しく叩きつけられたフォークスが悶絶する。デュミナスも全身の部品を軋ませ後、大地へと仰向けに倒れてしまう。
「今のはなかなか効いたぞ!」
鎧竜の攻撃は終わらない。巨大なフレイルが振り上げられた。
「ハロー、同胞、景気はどうよ!?」
その動きを止めたのは、横から割り込んで来た真紅の魔導アーマー「ヘイムダル」――通称『ザウルスくん』を駆るエリス・ブーリャ(ka3419)だった。
「俺様を侮辱するか!」
気分を害したのか、鎧竜のフレイルが振り下ろされたのはエリスのザウルスくんの方であった。
「見たまんまのバカとはいえ、外見が似てるだけで騙される訳が無いか……! でも、ザウルス君は肉食だしこっちの武器も凶悪だかんね!」
しかし、エリスはフォークスが後退する時間を稼ぐため、フレイルを受け止める覚悟を決めていた。
「舐めなんなよっ!」
ザウルスくんが真上に持ち上げた盾がフレイルの鉄球を受け止めた。更にエリスはスタビライザーを用いて素早くバランスを立て直すと、そのまま鎧竜の足元に迫り、ドリルを回転させる。
「ぐおおおお!」
ドリルは堅牢な装甲にぶつかり火花を散らした。だが、回転するドリルは装甲を削り、遂に僅かにではあるが鎧竜の肉を抉って見せた。
「痒いわあ!」
しかし、攻撃を終え離脱しようとするザウルスくんを追って、鎧竜の腕が伸びる。
「おっと! それ以上味方は追わせねーぜ!」
その時、側面から飛び込んで来た鹿島 雲雀(ka3706)の魔導型デュミナスが相手の脇腹に向けて手に握ったハルバードを突き出した。
「ぬぐぅ!」
ハルバードの刃は。鎧竜の装甲を破ることこそ出来なかったものの、その衝撃で一時的にバランスを崩させることに成功した。
「へ、怪獣VS巨大ロボってか! 今度はロケットパンチでもつけてみるか!?」
エリス、それにフォークスの機体が一時的に退避したのを確認した鹿島が、不敵に笑った。
「次から次へと虫ケラ共があ! こうなったら纏めて叩き潰してくれるわあ!!」
鎧竜は、怒りに任せて再度尻尾を振り上げた。
「へ、馬鹿はやることが単純なんだよ!」
だが、鹿島はこの動きをこそ待っていた。
「避けるのは難しいだろうさ……けどな!」
ハルバードを、間合いギリギリから叩き込んでいたエリスは、攻撃した後の退避は困難であると判断していた。
それ故、彼女は素早いを操作で、デュミナスのスラスターを全開にすると、機体の姿勢を低くして、鎧竜の懐に向けて一気に加速させた。
「なんだと!?」
鎧竜の眼が驚愕に見開かれる。
「これで尻尾は使えねえだろうがあ!」
鹿島の狙いは、尻尾の旋回する軌道の内側に入る事であった。
確かに、尻尾の一撃を必殺たらしめているのは、その先端のハンマー上の瘤だ。まして、鹿島は柄で尻尾を跳ね上げることまでしており、尻尾の一撃を避ける算段は完璧であった。
「ぐっ……!?」
にもかかわらず、呻いたのは鹿島の方であった。
「く……そ……!?」
先ほどのフォークス同様、衝撃で激しく振動したコックピットの内側に叩き付けられた鹿島は頭を振って必死に意識を保とうとする。
コックピットの表示によると、どうやら胴体に直撃を受けて数mほど吹っ飛ばされたらしい。
「畜生……鉄球か……よ!」
気付いた鹿島が歯噛みする。そう、鎧竜は尻尾が躱されたと判断した瞬間、フレイルで鹿島のデュミナスを打ち据えたのである。
「グハハハハハ、所詮は人間の浅知恵よ!」
鉄球を振り回しながらこれ見よがしに鎧竜が勝ち誇る。
「なるほど……」
シンが慎重に自機を前に出しながら呟く。
「竜の分際で武器を使うなんて卑怯臭いとは思っていたが……まずはあれを何とかするのが先決みたいだな」
●
「ほほう、中途半端な距離からおっかなびっくり伺っていた奴が、どういう風の吹き回しだ?」
シンは鎧竜の挑発など一切無視して、イェーガーにひたすらブレードを振るわせていた。
フレイルを破壊するために、彼はまずフレイルを武器で受け止めようとしていたのだ。
「くっ、尻尾か!」
だが、なかなかシンの目論見通りにはいかない。
フレイルは力任せに振るわれるだけであり、防御に集中すればそれを受け止めて、鎖をブレードで絡め取ること自体は可能である。
だが、鎧竜にはもう一つの武器である尻尾がある。たしかにフレイルとブレードが打ちあえる距離なら、先ほどの鹿島のように瘤の内側になるので殴打自体は心配しなくて良い。だが、尻尾の使い道は殴打に限らない。
「グフフフフ! 足元が留守ではないか!」
そう、強靭な尻尾は打ち合いに集中するCAMの脚部に命中すれば容易に期待を転倒させるだけの威力は十分に持っているのだ。
「この……!」
危うい所で、CAMの足を狙う尻尾の動きに気付いたシン。彼は折角受け止めた鉄球を振り払わなければならないのかと歯噛みする。
「このままだと……!」
シンは焦ったように背後を振り返った。
鎧竜とシンたちが攻防を繰り返している内に、彼らは何時の間にか岩山と麓の陣地まで近づいてしまっていたのだ。
「これ以上好き放題やらせるかよー!」
だが、絶妙なタイミングで、エリスが再びザウルスくんを鎧竜に肉薄させる。
「ええい、紛い物が! 飛んで火にいる夏の虫よ!」
背後から近づくエリスに対し、これ幸いと振り上げた尻尾をそちらに向ける鎧竜。
「ぐっ……」
直撃こそ免れたものの、かすっただけで衝撃を受け転倒するザウルスくん。コックピットの中でエリスが呻く。
「さあ、今度は貴様だ!」
鎧竜はこれ幸いと、巻き付いた鎖を凄まじい力で引き寄せようとした。イェーガーがバランスを崩しそうになる。
焦るシン。しかし、その時鎧竜が呻いた。
「ぐあ!?」
「流石にここまで近づかれると、砲撃ばかりしている訳にも行きませんからね……!」
マシンガンを構えたCdlカラーのデュミナスのコックピットでクラークが笑う。
「流石に堅牢な背中ですね。おかげでシンさんへの貫通弾を心配せず撃てます」
「貴様、よくも!」
だが、怒り狂った鎧竜がそちらに注意を向けた瞬間、シンのイェーガーの手甲に内蔵されていたプラズマカッターが高熱を発して見事にフレイルの鎖を焼き切った。
空しく砂の上に落下した鉄球を見た鎧竜の咆哮が大気を震わせる。
「よし、武器は破壊した! このまま一気に……!」
シンが、イェーガーのスラスターを吹かして鎧竜から距離を取った瞬間、鎧竜が再度四足歩行を始めた。
「まさか……!」
シンがはっとした表情になった。鎧竜が尻尾や武器の他にその巨体を生かした攻撃をしてくるのではないかと予め予測していたこと、そして最初に士足歩行で高速移動する鎧竜を見ていたことが彼にその可能性を示唆したのだ。
「纏めて轢き殺してくれる!」
鎧竜が咆哮した瞬間、シンもまた叫んでいた。
「体当りする気だ! 皆避けろ!」
直後、鎧竜が凄まじい速度でハンターたちの方向に突進を始めた。
●
シン自身は何とか直撃を避ける事が出来た。それでも掠っただけでイェーガーは弾き飛ばされ、地面に落下した衝撃でコックピットに叩きつけられたシンは思わず呻き声を上げる。
「ぐっ……くそっ……」
一方、このままだと鎧竜が陣営地に突っ込むという事に気付いたクラークは再度マシンガンを構え直し、何とか突進を止めようとする。
「止まりなさい……!」
だが、一旦突撃態勢に入った鎧竜は次々と装甲に弾かれる銃弾など意に介さず陣営地へと近づく。
「クソッタレが!」
何とか復帰した鹿島は鎧竜の斜め前方にデュミナスを立たせると、装備していたカノン砲を向けた。
「食らいやがれ……!」
砲弾が爆発し、砂と土が巻き上げられる。だが、鎧竜の進路は変わらない。
「くそお……こっちを向けってんだよ!」
鎧竜は頭に血が上って最早何も見えていない状態らしい。最初はフレイルを破壊したシンのイェーガーを狙っていたのだろうが、それを弾き飛ばした今は目につく物に手当たり次第向かっているようだ。
「回避を……くっ!?」
そして、なおも突進を続ける鎧竜はまず鹿島の機体の真横を通過し、更に危険を感じて遂に回避行動を取ろうとしたクラークの機体をも掠めて跳ね飛ばし、岩山へと接近して行った。
●
「おい、ハンターたちが皆やられちまったぞ!」
一方、陣営地はパニックになりかけていた。
「退避だ! とにかく岩山から離れろ!」
「待て、兵長はどうするんだ!」
「くそ、ハンターたちは何をやっているんだ!?」
ハンターたちの作戦は今回の依頼に参加したものに軍人や傭兵が多かったこともあり、そつなく纏まっていたと言える。現に、シンなどは巨体を生かした攻撃の危険性も考慮してさえいた。
惜しむらくは、このように敵が岩山に近づいた場合、何がなんでもそれを止めるというスタンスで動いていたハンターが一人しかいなかった、という事だろうか。
「待て……まだ一機残っているぞ……!」
兵士の一人が叫ぶと同時に、ヨイチがモーターの駆動音と共に立ち上がる。
「こんなに、大きいなんて……」
迫り来る鎧竜の巨体と勢いに、星音は恐怖を感じた。
「でも、私がやるしかないんですよね……!」
鎧竜が陣営地に侵入した瞬間、ヨイチの手首からワイヤーのついたエクステンドが射出され、その刃はうまく鎧竜の尻尾に引っかかる。
「きゃああああ!」
しかし、やはり鎧竜の力は圧倒的だった。
リールを巻き取ろうとした瞬間、激しく拘引されたヨイチは踏ん張ることすら出来ず、宙に舞い上げられ大地へと叩き付けられる。
同時に、鎧竜は頭から岩山へと突っ込み、陣営地は振動と激突の衝撃で飛び散った落石に襲われ、そこかしこで兵士たちの悲鳴が上がる。
「岩山が何故こんなところにある!」
一方、ようやく停止した鎧竜は、岩山から頭を引き抜いた後も、まだ怒りが収まらないのか、怒りに満ちた表情で尻尾を振り上げ、岩山に瘤を叩き付けようとする。
「や、やらせません……!」
だが、星音は諦めていなかった。コックピット内に叩きつけられた衝撃で、額から血を流しながらも必死に操縦桿を握り、転倒したままのヨイチでリールを巻き取り、尻尾の動きを封じようとする。
「邪魔をするな!」
怒りに任せて、力任せに尻尾を振る鎧竜。
「きゃああああああーっ!」
ヨイチは再度宙を舞い、星音も悲鳴を上げながら再度コックピット内に叩き付けられる。
「小賢しい……息の根止めてくれるわ!」
止めを刺そうと、鎧竜は再び直立歩行形態に戻る。そして、機能を停止し、バチバチと火花を上げるヨイチに近づいていく。
「犬じゃあるまいし、見飽きたんだよ……!」
その瞬間、一旦後退していたフォークスのデュミナスがアクティブスラスターを全開にして突っ込んで来た。
応戦しようとする鎧竜だが、尻尾には今だヨイチのリールが絡みついたままだ。そして、この時彼は先ほど自分に痛打を浴びせたデュミナスの戦槌にばかり注目しておりその帆布の下に隠された片腕にはまるで警戒していなかった。
「食らいな……!」
デュミナスの帆布が捲れ上がり、その下に隠された高圧電流を纏った爪が鎧竜の頭部に叩き込まれる。
その爪のほとんどは頭部の外殻に阻まれ、折れたりひしゃげたりしたが、その内の一本が見事、鎧竜の右目を貫いた。
「ぐ、ぐわああああ!?」
「ざまあみやがれ!」
激痛にのたうち回る鎧竜に向かって中指を立てて見せるフォークス。
しかし、鎧竜はようやく尻尾をアンカーから振り解くと、再度フォークスを打ち据え弾き飛ばす。
「馬鹿な……この俺様が……このようなあああ!」
しかし、ここまでの戦闘でほぼ無傷であっただけに、この一撃が効いたのか、鎧竜は戦意を失っていた。
彼は再度四足歩行になると、最早ハンターたちには注意を払わず、やって来た方向へ向けて猛スピードで退却して行った。
●
「なるほど、状況は分かった……諸君らの健闘に、感謝する」
報告を聞き終えたオレーシャはテントの中に居並ぶハンターたちに淡々とした口調で礼を述べる。
オレーシャは鎧竜が退却した後、何事も無かったかのように無事岩山から戻って来ていた。
「兵長、その傷……」
いや、無傷というのは正しくない。今エリスが心配したように、オレーシャの制服はボロボロになっており、所々汚れている。
「問題ない」
「兵長も何だけど、そっちのコボルドもさ……」
確かに、エリスの言う通りオレーシャに連行されて来たコボルドの方は全身に血のにじんだ包帯が巻かれ、痛々しい。
「ま、あんたも大変だったね」
エリスがコボルドに安心させるように語り掛ける。
「まあ、手当てもしてもらったことだし、私たちが追いはぎなんかじゃないのは解ったよね? 取りあえず、これでも食べてよ」
オレーシャがマカロンと水を差し出すと、コボルドはそれこそ仔犬のように目を輝かせて尻尾を振った。そして水はその場で飲み干したが、マカロンの方は箱を開けて匂いを嗅ぐと、それを大切そうにしまう。
「……?」
それを訝しむエリスだったが、気持ちは通じたのかと、ほっとした様子を見せる。
「それで兵長、コボルドの処遇については如何するつもりですか? ただ、珍しいから医薬品を盗んだというわけではなさそうですがね。どうしても必要だったと考えた方がよさそうな気がします」
クラークがそう言うと、鹿島も賛同した。
「兵長も、さっきの兵隊から聞いたんだろ? 金品は置いていき、医薬品は必死に抱える……まるで、その金品で薬を買おうとしているようだが、こいつ、医薬品がどうしても欲しい事情でもあるんじゃねーか?」
すると、それまで壁に寄り掛かって話を聞いていたフォークスが突然口を開いた。
「くだらないね……あたいはそいつの射殺を進言するよ。兵長殿」
「フォ、フォクシー!?」
驚いてそっちを見るエリスをオレーシャは手で制した。
「理由を聞こう」
「理由……? そいつらが敵愾心を隠すのに長けた歪虚ではなっていないっていう保証がどこにある? 何より、幾ら死人が出なかったとはいえ、この有様を何とも思わないのか? こいつが襲撃前の攪乱になったのは紛れもない事実だ。代償は払ってもらわないとね」
「代償、か」
フォークスは訝しんだ。なぜかオレーシャが場違いな、悪戯っぽい表情を見せたからだ。
「最もな理屈だ。ならば、この代償についてはどうする? ついて来てもらおうか」
そう言ってオレーシャは立ち上がってテントの外に出る。
舌打ちしつつも立ち上がって後を追ったフォークスと、二人の後を追ったハンターたちは絶句した。
「こいつらは……!」
フォークスが叫ぶ。
いつの間にか、陣営地内にはコボルドの群れが現れていた。
群れと言っても、10匹にも満たない数だが、そいつらが帝国兵に混じってちょこまかと走り回り、鎧竜の攻撃で出来た瓦礫を片付けたり、崩れた小屋の下敷きになった兵士を助け出そうとしている。
そして、その全員が最初に医薬品を盗もうとしたコボルドと同じように緑色の古い布で頭部を覆っていた。
「最初の奴も落盤の下敷きになった私を助け出そうとして怪我をした。ああ、君たちが気に病む事は無い。落盤と言っても覚醒者なら抜け出せる程度だったからな。だが、フォークスの言う通り、奴らの腹の内を探る機会だったので、敢えて抜け出せない振りをして見せた」
「あんた……っ」
何か言おうとするフォークスを遮り、オレーシャは続ける。
「彼らは人語を話せないが、古代語ならこちらの話は理解できるようだ」
そして、オレーシャが岩山の中で彼らに質問して解ったのは以下のようなことであった。
彼らが医薬品を必要としていたのは、やはり仲間のためだった。ここからかなり離れた地点の地下にある彼らの住居に、重い怪我をした仲間がいるらしい。
それを直す手段を探してここまで来た際に、人間たちが怪我人に薬を使うのを見て、どうしても必要だと思い、遺跡で見つけた装飾品と交換しようとしたようだ。
「だから、なんだってんだい? あたいは、そんなお涙頂戴話に興味は無いんだよ……!」
苛立ちを顕にするフォークス。
「心外だな。私もそうだ。だからここから先はビジネスの話をしたい」
「……?」
フォークスのみならず、全てのハンターたちが一斉にオレーシャを見た。
「何、彼らにも死者は出なかったものの、彼らの住処に繋がる地下道がさっきの歪虚の激突の衝撃で発生した落盤で完全に埋まってしまってな」
コボルドたちに質問して確認したところ、他にも地下道はあるらしいのだが、それは遠回りな上にコボルドたちも長い間使用しておらず、雑魔の巣になっている可能性もあるという。
「今回の件を鑑みて、帝国軍はこのコボルドたちを住処まで護衛することを決定した。ついてはハンターの協力を引き続き求める。これはさっきの大型歪虚の撃退とは完全に別の依頼だ。報酬は別途支払われる。また、今回の戦闘に協力してくれた者の参加を強制する訳でもない」
帝国軍としても準備する時間は必要だからゆっくり考えてくれ、と付け加えたオレーシャは唖然としているハンターたちに片目をつむって見せ、颯爽と去って行く。
シンもその様子を見守っていたが、ふとある光景を目にして複雑な表情になった。
「あんまり亜人に良い印象はもっていないんだがな……でも……」
シンの視線の先では、作業が一段落したので休憩しながらエリスから貰った少量のマカロンを手にしたナイフで切り分けて一口ずつ食べて、感動して騒いでいるコボルドたちがいた。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】Mail break フォークス(ka0570) 人間(リアルブルー)|25才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/09/04 21:04:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/31 23:56:35 |