• 猫譚

【猫譚】少年、捕獲作戦実行する

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/09 19:00
完成日
2016/09/14 17:52

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●イスルダ島
 負のマテリアルが満ちる暗いイスルダ島をプエル(kz0127)は歩く。時間もあるようでなく、距離も不明。
 イスルダ島に渡ったのは初めてのことで、プエルは心細くなる。
 視線を感じるのは仕方がない。
 侵入者が何であり、どのような力を持つか、知りたがっている視線。プエルがちらりと見ると、傲慢に属する歪虚たちがあちこちにいるのが見えた。
 単一の属性が多く存在するという風景はプエルには珍しい物。レチタティーヴォの下には彼の属性以外の者も多くいた。レチタティーヴォ直下と言える位置にいた歪虚はプエル以外は暴食に属する2人だった。
「めえめえひつじ! 余は歌を知っているぞ! うん……王国には羊がたくさんいるんだもの!」
 ぎゅっと羊のぬいぐるみの下の手を握りしめる。ふと、歪虚と目があった。暗い表情の青年で、低い位置にいるのにプエルを見下すような雰囲気を持っている。
「……んー? なんか腹立つけど、気にしてはいけない」
 自分に言い聞かせながらプエルはとことこと前に進んだ。
 広い場所に出た。
「島に入り込んだ人形が何用だ? 誰かの使いか?」
 降ってきた声に身を震わせプエルは見上げる。
 大きな羊であり、大きな人である。どちらかというと羊かもしれない。
(べリアル……だ……)
 プエルはごくりと生唾を飲み込み、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。ここでしっかりしないといけないとプエルは己を奮い立たせる。
「使いじゃありません。その……僕……憂悦孤唱プエル、レチタティーヴォ様の下でさえずる者……です! レチタティーヴォ様がいなくなってしまって! そのあと、僕の部下もペットたちもみんな、ハンターに討たれちゃって……ふえっ。僕、すごく困ってたとき、べリアル様がいらっしゃるって思い出して! 直接お伺いするのも悪いと思って、ネル・ベルさんに尋ねたら、べリアル様はここにいらっしゃるというので参りました。ぜひ、こちらにおいてください!」
 とりあえず必死に訴える。
「ブシ、下僕になりたいと?」
「ふえええ、僕、何ができるかわからないけれど! で、でも、毛並み整えるのはうまいです。羊はしたことないですが……」
 「下僕」という響きにプエルは抵抗を示す。カバンからブラシを取り出し、自己PRをする。
「ブシシ……毛並みか……」
 何を考えているかプエルにはわからない。ここで変に疑われたりしたら困る。
 王国を無に帰したい思いは一緒だよ、と真剣に見上げる。
「……ふむ。お前、王国で発生した光のことを知っているか?」
 不意の問いかけにプエルは首を傾げた後、口を開いた。
「何が起こるかわからないから、危ないからおうちから出ちゃいけないって言われましたから出ていません」
 きっぱりと使えない回答をする。話は聞いていた、テスカ教云々も含めて。レチタティーヴォもいなければその周りの大人もいなくなっているためおとなしくプエルはしていた。巡礼路で何かがあったらしいが、人間であった時の記憶からもその手の情報はない。
「……ふん。ならばこの毛皮を取ってこい」
 べリアルはどこからか取り出した毛皮を見せた。プエルは首をかしげる。
「なんの生き物ですか? ……んー……ユグディラ?」
 大きさと羊歪虚の行動から考えるとそれだろう。プエルとしては動きているそれを触りたいのだが、この羊は違うらしいとプエルは冷めた目を一瞬した。
「わかりました。あ、あの、僕、人手がないので手伝ってくれるヒト借りてもいいですか?」
「良かろう」
「ご期待に沿えるよう頑張りますね!」
 プエルは丁寧にお辞儀をして後にした。

●猫集め
「どうしてこんな人形に……」
 あの時、目が合った青年のような歪虚は目の前でせわしなく動き回るプエルに苛立ち覚える。
 スパーンとハリセンが青年の肩に当たる、悪口が聞こえたプエルの反撃。痛くはないが腹立つ。
「ガキ……」
 今度は回し蹴りが来た。青年はよけきれなかった。
「さてと、どうやってユグディラを捕まえるかだよね。僕は罠を仕掛けることにするから、手伝いよろしくね」
「まあ、仕方がないから手伝おう」
「そうだよ。ユグディラは可愛い、みんなで撫でよう」
「いや、捕まえるのが仕事であって、お前がどうにかする話ではないだろう?」

「しっかり者だね、君。いいじゃない、撫でたって!」
 プエルは不満な声をもらした後、じっと青年を見る。
「なんだ」
 青年は不機嫌な声で思わず問う。
「……あ、そうだ、しゃがんで」
 プエルの指示に従わない。プエルは腕をぐいぐいしたに引っ張り、彼をしゃがませ頭の角に触った。
「うーん? 別に面白くないや」
「……!?」
「猫はどうやって集めるかが問題だ」
「切り替わり早っ」
 プエルはすでに地図を見て集める道具を指示している。
「効率よくどーんと……やっぱり追い込まないと駄目かな?」
 このあたりに何匹かいるのは分かっている。見かけたからだ。
「ふふっ!」
 嬉しそうなプエルは立ち上がると指示を出す。
 用意するのは生きのいい魚と捕獲用の網など。
「で、君の名前、聞いてないんだ」
「好きに呼べばいい」
「じゃ……うーん、マエロルっていうのはどう?」
「……それでいい」
「じゃ、張り切っていこう!」
 プエルは羊のぬいぐるみを放り投げた。5体は後ろ足で着地すると、可愛らしく活動を始めた。

●依頼
 依頼を見てハンターは首をかしげた。
 グラズヘイム王国の南西で羊歪虚が見受けられるための調査及び排除。目的があるのだろうということはわかるが、今何をしたがっているのかと謎だった。
 そこに「ユグディラの目撃」情報が加わると状況が変わる。
 最近、羊歪虚がユグディラを追いかけたり、捕まえているのが目撃されているのだから。
「ユグディラ捕獲を試みる歪虚は排除を、ユグディラには……注意情報ですかね」
 ソサエティの職員は首をひねる。ユグディラをこちらが捕獲する理由はないため、話して理解してもらうしかないのかと。
「歪虚はいなくていいというのははっきりわかりますので、千里の道も一歩からとリアルブルーではいうそうですから、頑張りましょう」
 職員は鼓舞する。
「ところで『千里』って何ですか」
 真顔で疑問を呈した。

リプレイ本文

●違和感の現場
「千里は約3927kmなんですよー。噂によるとこれより3倍ばかり歩いた男の子もいるらしいですー」
 小宮・千秋(ka6272)は出かけ際にソサエティの職員の疑問に丁寧に答える。職員は目を丸くしてから微笑んだ。
「そうなんですか! そんなにいっぱい歩くと大変ですよね」
「ですよー。あ、行ってきます」
 仲間が手招きをしている。
 移動中、ミオレスカ(ka3496)は不安そうにつぶやく。
「羊歪虚……べリアルの眷属ですよね。長い間、噂は聞きませんでしたが厄介な敵が動き出しました」
 同行者はうなずく。
「先日も追いかけていたからなぁ、ユグディラを」
 ザレム・アズール(ka0878)は先月にあった事件を思い出す。その時、羊歪虚を倒し、ユグディラと戯れたのだった。今回もユグディラに会う準備として背嚢に肉や魚、菓子まで詰めていた。
「べリアルが膝の上に載せてボスらしさを演出するのか?」
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)がうんざりぎみに言う。そんなことを許すつもりは毛頭もなく、今回もユグディラを助けて羊歪虚を倒すことを考える。
「映画でもドラマでもそんなものほとんどないだろう? 歪虚が狙う猫ということはただの猫ではないということだな」
 コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)がレイオスの例えに苦笑する。
「ユグディラは可愛いだけで、毒にも薬にもならない気がします」
 ミオレスカも調べたことを脳内に流してうなずく。
 先日、ユグディラを見た男三人が止まった。
「ミオはユグディラを見たことないんだっけ?」
「猫も可愛いですけど、ユグディラにはユグディラのよさがありますよー」
 ザレムと千秋が宣伝した。
「……可愛い以外売りが見えていないが」
 コーネリアが何とも言えない表情となる。
「確かに……幻術が使えることくらいか……?」
 レイオスは付け足すがどの程度かさっぱりわからない。
「前回……プエルも追いかけていたな」
 ザレムが思い出したところでレイオスがため息を漏らした。
 会話は止まる。一行は羊歪虚が見受けられた地域にやってきたからだ。街道から入ったところで、魚の匂いがする。
「罠ですけど……」
 ミオレスカの語尾は消える。
 罠がおかれているところが目立つところであり、使われている罠は小動物捕獲用ばね式のもので餌を取ると扉が閉まるタイプ。
「知恵はあるのですね、幼稚な感じはしますが」
「ユグディラの知能によっては引っかかるのか? 気を付けないとな」
 ミオレスカはコーネリアにうなずいた。
 罠の状況を調べ、捕まっているものがいれば助け、様子をうかがっている物がいるなら逃げるように促し、羊歪虚は倒すとハンターは決めた。

●様子を見る羊たち
 ザレムは隠密の技能を用い、静かに先行する。罠と敵の状況を確認する。範囲がわからない上に、もし捕まっているユグディラがいるなら早く助けたい。
 罠は適度に距離を置き、街道側から山側に向かいぽつりぽつり置いてある。
 ふと繁みに白い物体が動くのが見えた。羊のぬいぐるみのように思えたので、見間違いかとも思ったが仲間に連絡を入れる。
 ユグディラがいるのかいないのかわからないが、何かがいる気配はあった。仲間に「姿は見えていないけどいる」と注意を促し、少し待った。

 手前にある罠をコーネリアは解除する。解除するといっても魚を取り出して閉めてしまえばいい。
「捕まえてどうするつもりなのか」
「わかりませんね……それにしても、罠はいくつあるんでしょうか」
 銃を構えて周囲を見渡すミオレスカは何かが動くのを見た。敵とは限らないため引き金は絞らない。
「隠れているのはユグディラですか? 魚には手を出してはいけませんよ。もし、よろしければ、終わったらツナ缶を差し上げますので、ゆっくりお話ししませんか?」
 ミオレスカは届くだろう声の大きさで呼びかける。返答は特にないが、ユグディラで理解してくれればそれでいいのだ。

 レイオスは先行するザレムと後ろから来る猟撃士の間くらいで罠を眺め、触ってみた。
 周囲へは気を張り巡らし、何か動きがあれば対応できるようにしてある。
 罠に触れたが、特に何も反応はない。羊歪虚でも飛び出してくるかと思ったのだ。
 カサカサという音はする。ぬいぐるみが隠れていたため、武器を抜くと攻撃をした。
 刀に切られたそれは、綿をまき散らし倒れたのだった。
「本当にぬいぐるみ?」
 怪訝な顔をして、再び周囲に意識を張り巡らせた。

 千秋はペットの黒猫をそっと草の上に置いた。
「猫のために用意しましたー、というのがよくわかります。わたくしが全力で助けますので、近寄っていただいてよいでしょうか」
 黒猫はしぶしぶ近づく。
「にゃーん」
「うなーん」
 黒猫の前に2匹の猫がやってきた。それらはまるで止めているようだ。千秋が反応するよりも前に、別の物体が登場する。
「めええー」
 羊歪虚が2匹突然出てきた。
「ああ!」
 千秋は対応すべく、繁みから飛び出しペット含め猫3匹をかばう。ぼこぼこと殴られるが防具で大したことはなかった。
「千秋さん!」
 ミオレスカとコーネリアからの援護射撃があるが、羊歪虚たちは必死にそれを避ける。
「行きますよー」
 千秋の一撃もよけられる。当たりそうで当たらない。羊歪虚の攻撃も同様。
 ミオレスカとコーネリアの攻撃もあり、羊歪虚は倒れた。

 レイオスは助けに動くか判断を迫られる。他にも歪虚がいる可能性があるし、若干距離があるため、そこに待機することにした。
 ふと視線を感じた。目を向けると繁みに隠れる青年がいる。
(人間……じゃねぇ、歪虚、傲慢の)
 不意打ちをかけた。踏み込むと同時に試作振動刀を振るう。手ごたえは非常に大きかった。
「ぐっ」
 青年は不意の攻撃に動きが遅かったが、逃げ始める。
「待て! 話が通じそうな奴、この状況を説明しろよ」
 青年は山側に逃げた。追おうとしたレイオスの足元に羊のぬいぐるみがとびかかる。それを引き離し綿にしている間に、羊歪虚が目の前に来る。それを倒し、追いかける。

 街道側で何かが起こっている。
 ザレムも戻るかとどまるかの判断が必要だ。この瞬間、ほんの少しだけ気がそれた。
「とうっ!」
「うわあああ」
 ザレムは背中に衝撃を受け、倒れた。背嚢がゴリゴリと頭をつぶすため痛みが続く。立つに立てない。
「助けに行かせない」
「プエル?」
「そうだよ。お前見覚えがあるし、人質だ!」
「え?」
「マエロルを助けるためにね」
 地面と仲良くなりかかっているザレムは足音に気づいた。

●人質
 ザレムが押し倒されてしばらく後にレイオスたちは集まる。武器は抜いたままであり、ミオレスカはプエルに、コーネリアはマエロルに照準を合わせる。
「プエルさんお久しぶりですー。お兄さん、初めまして。羊さんみたいでかっこいです」
 千秋が丁寧にあいさつをする。
「……あ、うん。マエロル、照れてる?」
 プエルは千秋の後ろにいる猫に目をやった。後ろ足で立っていないがユグディラのような気がする。
「いつまで、ザレムに乗っている?」
 レイオスにプエルは「話が終わるまで」という。
「羊歪虚……傲慢と一緒ということはべリアルとつながったのか?」
「レチタティーヴォ様がいればこんなことはしないよ」
「そう来るのか……。で、そいつはべリアルからつけられたのか」
 マエロルをレイオスはちらりと見たが、敵でありながらもどこか哀れな気がする。
「ユグディラをどうして狙うんだい」
 ザレムが荷物の下から問う。
「……僕はね、ペットにしたいと思っているんだよ。でもね、べリアルがね……様がね、捕まえて毛皮にするっていうんだ! 毛皮だよ!」
 プエルはしゃべりながら、手元にあるザレムの頭をたたいた。
「痛い痛い」
「あはは、あ……別に面白くないよ」
「攻撃しないからどいてくれないかな」
「君はしないといってもそっちのお姉さんはこっちを殺す気満々だよ。どかないよ」
 プエルはコーネリアを頬を膨らませて見つめた。
「プエル……ハンターに何をべらべらと」
「マエロル、隠す情報もないし、羊がユグディラ追いかけているの目立っているんだよ? 僕は君と一緒に助かりたいし、だからしゃべった、それだけ」
 プエルはさも当然という顔だ。
「……やけに素直だな」
 レイオスの言葉にプエルは目を細めて、微笑む。
「魚に毒は入っているのでしょうか」
「入れないよ! そんなことしない」
 プエルは答えながら、ザレムの髪をぐるぐるし始める。
「……なぜ、髪の毛を」
「なんとなく楽しい」
「……はげそう」
「わーーーーーーーー」
「あああああああああ」
 プエルがわざとぐりぐりしてきた。
「黒猫さんとマルチーズさんにやってみましょうか」
 そわそわと千秋がちらりとみると、2匹は陰に隠れた。
「歪虚が何考えているんだ」
 コーネリアがあきれる。
「これだけ喋ったからいいよね? 僕はこれで撤退だよ。ハンターと利害一致していると思うんだよ!」
「……は?」
 レイオスの中で一致する部分を見いだせなかった。仲間を見渡すが誰も首を横に振る。
「あ、ねえ! 僕も前から気になっていたのだけど、5月頃の光って何だったの?」
 プエルは不意に問いかける。
「光?」
「あ、知らない? べリアル……様がね、気にしていたから」
 ハンターはどういうか考えるが答えはない。法術陣のことだろうと想像つくが、話していいのかわからない。
 その表情を見てプエルは何か感じ取ったのかうなずいた。
「大体の場所は分かっているし、父上にでも聞いてみよう」
「……光ったのと場所は知っているのですか?」
「光ったのは見ていたし、もしもがあるといけないからその近辺いちゃ駄目って」
「教えてくれた人はどなたですか?」
「秘密」
 ミオレスカにプエルは微笑む。
「うーん、僕は父上と妹……ひいては王女様のためになることをやるつもり、ならハンターと一緒」
「歪虚なのに……ひょっとしたら、心が戻るとか?」
 ザレムの期待にプエルは「えー、僕は僕のままだよ」と答えが返ってくる。
「じゃ、僕たちは行こう。マエロル、怪我はどう?」
 プエルはザレムの上からどいた。
「め、命令は!」
 怯えが浮かぶ目でマエロルの方はプエルに言う。
「ここで引導を渡してやるから、命令も何もない」
 コーネリアの言葉にマエロルがにらみつけるがどうも落ち着きは見られない。
「ひどいなぁ、僕はちゃんと情報を話してあげたのに。だいたいさ、突然やってきた見ず知らずの者にいろいろ話すと思う? べリアル……様だってそう思うんじゃない?」
 プエルはザレムの背中についた埃をはたきながらしゃべる。
「そろそろかな。さあ、みんなやっちゃえ!」
 プエルはマテリアルを一気に組み上げる。コーネリアに向かって矢をつがえるしぐさをして魔法を放った。
「こんなもの予想済みだ」
 コーネリアは避けるが、地面に当たった矢がはじけて周りにいたミオレスカと千秋に破片が当たる。2人もよけようとしたが失敗してしまった。
「囲まれているけどな……まあ、油断さえしなければ」
 ザレムは冷静に周囲を見る。
「プエルさん、お元気でー」
「君もねー。あ、今度、ペット触ってもいい?」
「考えさせてくださいー」
 千秋とプエルがのどかな会話をして別れた。

●もやもや
 プエルとマエロルが逃げる時間を稼ぐためか、ザレムとレイオスの足に羊のぬいぐるみがタックルしてくる。攻撃しにくいと考える間に、プエルを追って逃げ始める。
「可愛いですねー」
 千秋は感想を述べつつ、近くに来た羊歪虚に【鎧徹し】で攻撃をする。
「可愛かろうが何だろうが歪虚だ」
 逃げる羊のぬいぐるみを少しでも減らそうとコーネリアが狙った。撃たれた羊のぬいぐるみは綿をまき散らしながら倒れた。
「ユグディラは無事だといいんだが【デルタレイ】」
 ザレムは羊歪虚に向かって放つ。
 そこを回避した羊歪虚にレイオスが容赦なく薙ぎ払った。
「ユグディラはここにいたっけ?」
「レイオスさん、ユグディラならさっきからいます」
 ミオレスカが弾を叩き込みながら告げる。
 会話は途切れ、敵を倒すことに集中した。
 周りにいなくなったため、周囲に置かれている罠の発見にいそしんだ。
 千秋の黒猫のそばにユグディラが2匹、プエルが隠れていた木の上から1匹が現れた。
「羊歪虚もいないようだな。それより、お前たちはこの辺りの頭数は分かっているのか?」
 コーネリアは話しかけるとユグディラたちはうなずく。
「にゃ」
「にゃー」
 何か言っているが伝わらない。
「山に落ちている魚に誰も近づかなかったようで安心だ」
 ザレムはユグディラを触ろうとしゃがみ、何か上げようかと背嚢を下す。
「わたくしのところの黒猫を止めてくださったので、きっと罠だってわかっていたんですー」
 千秋が告げるとユグディラたちはうなずいた。
「先ほど、ツナ缶を差し上げるとお約束したのですが」
 ツナ缶を見る目は複数。ツナ缶は1つ。手を伸ばそうとしたユグディラに別のユグディラがタックルをした。どこからかも1匹、2匹とやってくる。
 賢い冷静なユグディラは首を横に振りつつ、罠から取り出された魚を指さす。ミオレスカにはお礼を言っている雰囲気だ。
 プエルの言葉を信じれば魚に毒は入っていない。
「プエルが素直すぎるのが怖いが……」
「隠していた部分もあるよな」
 レイオスとザレムは眉を寄せる。ただし、ザレムはすぐにユグディラのため眉は開く。
「どちらにせよ、お前たちも注意だな。妙な罠にかかって殺されて、歪虚を喜ばせることもない」
 コーネリアの言葉に、新鮮な魚を食べていたユグディラたちはうなずいた。聞いているかいないかわからない。
「後は罠を持って帰って廃棄してもらえばいいですね」
 千秋が罠の山を見る。
 最後の仕事を見てうなずいた。

●道
「僕の羊のぬいぐるみが……補充しないと」
 プエルはため息交じりに、怒っている様子のマエロルを見上げる。
「策はあるんだよな?」
 プエルはマエロルの頭を撫でようと伸びる。
「地図見て。君にはこっちに行ってきてもらいたいんだ。まだ羊さんいるよね? 巡礼路はなるべく避けてね、用心はしていたほうがいいから。僕はうちに一旦帰る」
「うち?」
「僕の生前のうち」
「……お前……もともと」
「人間だよ。君と同じだよ。君のこともっと知りたいな」
 プエルはマエロルから興味と信頼のかけらを感じたのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
レイオス・アクアウォーカー(ka1990
人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/09/09 11:39:59
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/09 02:19:03