• 月機

【月機】敵ミサイル基地索敵網を看破せよ!

マスター:韮瀬隈則

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/06 19:00
完成日
2016/09/13 15:17

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 大幻獣ツキウサギと共におばけクルミの里を訪れたバタルトゥ・オイマト(kz0023)。
 里へ到着したまでは良いが、隙を突いた歪虚コーリアスが里を完全包囲。バタルトゥは思わぬ形で危機的状況となった。
 さらにコーリアスはハンターとルールを取り決め、三週間後の総攻撃を宣言する。

 刻一刻と流れていく時間。
 だが、双方とも三週間を黙って過ごす訳はない。
 決戦を前にすべき事は――山積していた。



「チョーさん、物理的に寝かしつけてきました。応急処置は済んでいるので、あとは自己回復次第ですが……あのダメージ量、やっぱり『わざと』生かして返す意図ですよね?」
 つまりは『恫喝』である。
 ──ユキウサギの里はずれ。
 急遽、組まれた対策チームのひとつが、そこに迷彩テントを設置して事態に臨んでいた。

 セリフの彼女はプリケッタ。回復職。覚醒した聖導士としてのスキルだけではなく、転移前の職も民間軍事会社の看護チーム所属である。チョーさん、とは彼女の腐れ縁の元軍人で、現在は二人とも極貧ハンターを営んでいる。
 コトは数時間前、未明に仕掛けた歪虚による包囲網の一角への破壊工作とその失敗、だ。
 先遣として魔導バイクを駆ったチョーさんことシモンは、同行するプリケッタと数名のハンターの目の前で敵の砲撃を受けて負傷。その攻撃の異様さに、破壊作戦は一時中断と計画見直しを余儀なくされたのである。

「それにしてもチョーさん、あの装備どこから持ってきたんでしょうね?」
 プリケッタが呆れたように、テント片隅に積まれた残骸を指差す。
 リアルブルー時代からの個人所有品と払下げの改造品だろうか。モノはスピード違反対策の車載用レーダー探知機と、電波吸収体を塗布された軍用機スクラップから削りだしたと思われる手持ち用シールド。細かく断裁された空き缶はチャフのつもりだろう。
 思いっきり役にたちませんでしたね、と眉をしかめるが、問題はアホの持ち物ではなくこれらが敵に通用する気配すらなかったことだ。
「敵のミサイルは正確にチョーさん直上まで飛来、回避機動をとるも追尾し自爆。威力は強化型ファイアーボールとほぼ同等ですが……えーと、多目的誘導ミサイルみたいなのって、あんな感じでしたっけ?」
 ……かくり?
 プリケッタがリアルブルーの軍出身者は居ないかと見回し、所感を求めて首をかしげる。彼女の現代兵器知識は数年前の民間公開レベルで止まっている。飛来した姿は座学で覚えた小型誘導弾にそっくりだ。だが挙動は?

 旧世代の漂着物改修品と思われた敵の武器だが、作戦見直しは根本的レベルで必要かもしれない。



 事の起こりは、コーリアスの包囲宣言、である。
 偵察するまでもなく、森が霧に包まれたのちにその一角の濃霧が薄れた。
 ──ユキウサギの里を見下ろす丘の頂上。
 そこに異様な建造物と兵器群が、里を威圧するように設置されていた。

 外見は数階建て相当の円錐型ビルと、先端に取り付けられ回転する巨大なパラボラアンテナ。その足元に居並ぶ多数のミサイルポッド。それらをつなぐコードと配管。パトリオットミサイルみたいなのを旧世代風かつ固定型にした感じ、とは、プリケッタの身も蓋もない表現である。
 護衛だろうか。巨人数体が斧を持ちポッドとアンテナ周囲に蠢いているのが、双眼鏡越しにここからも見える。アンテナ基部のビルと一部の配管から白煙が上がっているのは何だろう?

 恫喝なのだ。すくなくとも今のうちは。
 それが証拠に、基部のビルにアンテナ以外の円形が填め込まれている。
 期限までの時間を刻む時計──
 カウントダウンが終了すれば予測総数200に近いミサイルの一斉射。バカでも察する仕掛けだ。
 当然、破壊作戦が策定実行される。
 その結果が、かのアンテナによる索敵とミサイル追尾による迎撃。
 発射数が1回だったのも、あえて生存者による報告を促す威圧だろう。


 威力偵察による敵ミサイル基地破壊作戦の前段を、改めて行う。
 それが未明の結果を経ての、ハンターへの指示となった。
 索敵が全周に行われているとわかった以上、進入経路は多くない。実質、こちらの機動への阻害が少ない1方面。多少、進入角にバリエーションを持たせても、低木と岩がそこここに点在する斜面を抜けることとなる。

「別に破壊してしまっても構わんのだろう?」
 と誰が言ったものか。
「気持ちはわかりますヨ。あのアンテナが人を小馬鹿にした顔面っぽいですもんね。ただ、それでチョーさんヤられちゃったので……」
 シミュラクラ現象でしたっけ? 顔にみえるの。
 プリケッタがそれフラグっぽいです、と釘を刺す。更に、チョーさんで思い出した、と付け加える。
「チョーさん、破壊探査用に超聴覚持っていったんですけど、敵のミサイル発射前に耳に違和感があったんですって」
 声にならない声みたいな、キィィって音……



 仄暗い一室。
 中央に置かれた簡易デスクの上に、リアルブルーの写真と書籍、殴り書きされた図面が載っていた。
 添えられた便箋は何者かからコーリアスに宛てられたものだろう。

『錬金術制限により完成はなりませんでしたが支障ありません。設計概念は構築されております。また、あの外観は、こちらの世界の者には未知への威圧感を、むこうの世界の者へは固定観を植えつけることでしょう。簡単に制圧できるものではありません』

リプレイ本文


 急遽作成された地図に走り書きし、門垣 源一郎(ka6320)は注意喚起を皆に促す。
「そろそろ前回の襲撃範囲だ。外見通りの本物ならば無意味な策定だが、現に今まで撃ってこないとなれば、いくらかの構成要素はこちらの世界の物だろう。……全く安心できる材料ではないが、な」
 助かった、と源一郎は地図を作成者の黒耀 (ka5677)に返す。こちらこそと黒耀が被った薄布を目深に直す。敵の索敵手段が不確定の今、気休めでも源一郎の迷彩布は有り難い。
「なるほど、本来、都市単位の防衛機構ですか。ああ大丈夫、参りましょう。正面から撃ち合うだけがデュエルではない。テンションが違うのはそのモードというだけです」
 一撃のみですが多少の役にはたちましょう。黒耀は加護符付与のため、陽動を買ってでた命知らず達を手招いた。

 策定経路の距離を詰めながら、迷彩布の下で艶消の双眼鏡が回転するアンテナを捉えている。
「1分1回転。指向性能約60度ですか」
 死角となるタイミングを重点に距離を詰めてきたが、更に事前情報収集を欲張っておくべきだったか? エルバッハ・リオン(ka2434)は暗算と観測をつきあわせ、しかしこのメンバーなら関係ないだろうと、同じく双眼鏡を構えるセリス・アルマーズ(ka1079)を振り返る。
「顔が回ると思うとムカつくわねー。って、あれ? 瞬いた?」
 変に苛つく気分に更に馬鹿にされている感じ、その顔が何かに気づいたように表情が変化した、気がする。
 ──数秒後、未明に先遣を襲ったと同様の白煙があがる。
「来る! 皆健闘を祈る!」
 誰かの警報。散開、のち状況開始。


 少し前のミーティング、僅かな時間的余裕の中で焦点はやはりかのミサイル基地一連の由来と意図、であった。
「一度でも戦えばわかる。あの錬金術師サマ謹製だ。からくり仕込みはかなり悪質とみていい」
 まず、かの近代兵器の概要を聞こう。J・D(ka3351)が源一郎とプリケッタに促す。敵の新戦力入手で、厄介なのはその威力性能か、それとも概念か。
「未知のものこそ恐ろしい。流石に直接追われた経験はないが……」
 公示性能はどうだったか? シモンのPDAから資料を呼び出して提示するプリケッタを源一郎が補足する。
「ミサイルとか知らないけど、歪虚の手にかかった物は歪虚。そう考えていいと思いますけどね」
 漂着物の改修だったとしても歪虚の意図による運用でしょう? セリスは単純明快に言う。転用が難しい武器を使う歪虚という矛盾。簡単に転じてみれば、つまりあれは歪虚、だ。
「引っかかった経験がある者として、あれはいっそ分かりやすい。ゲートの存在が明らかとなった今、『飛行能力を持ち自爆する歪虚』をリアルブルー製と欺瞞に利用しない手はない、と思いますが?」
 己の恥を晒すようですがね、とはエルバッハ。
 だがその数、二百……!
「歪虚は全部破壊する気ではいるけどね……って、万歳丸君、それ見てわかるの?」
 PDAを覗き見て大きく頷いた万歳丸(ka5665)にセリスが問えば、能天気だが正鵠を射た答えが返ってきた。
「飛ンできた時点で一つの敵、それが二百。無限じゃねぇ。大元壊せりゃ一番だが、無駄撃ちさせてもこっちの勝ちだ。ミサ……? ミハイルって強い子風フかせた名前も結構ってぇもンだ!」
 これ借りてくゼ。万歳丸が半身を起こしたシモンを寝かしつけ、PDAと無線を懐に入れる。

 贅沢をいえば──
 近代兵器概念への危機感と、代替可能とした意味、そこまで事前に至り連携していれば……消耗は防げただろうか。



「怪力! 無双ッ! 万歳丸推参仕るッ!」
 呵々! 薄布をかなぐり捨てた万歳丸が、俺はここだと誇示して駆ける。
(その通り。気付かれてこそ前線を一気に押上げるのは最善手です)
 見栄えが悪いが構わない。続くエルバッハの肩に連写モードのPDA。
「初弾はちょっと派手に迎撃しちゃうから、その隙逃さないでねっ」
 数、稼いだ方がいいわよね? セイクリッドフラッシュの装填数を思案し、追撃に複数発射を誘えればエコだわと、偵察班にウインクするとセリスは万歳丸の背後を追う。
 派手にミサイル迎撃する脅威が距離を詰めてこそ、敵のリソースは減り索敵の精度は下がる。無視できぬ特異点。それが彼ら陽動班の買って出た役割であった。


「速い……なんだこの飛来速度は?」
 リアルブルー製の艦載兵装がこうだったか? あれを再現できるものか?
 エルバッハの目に映る小型ミサイル後部の推進装置でここまで?
「基地に昇った白煙の数1。ケチくさいなぁ、派手な割りにねぇ」
 迎え撃つセリスに、エルバッハが一旦避けてと叫ぶ。
「お? 任せろィ」
 万歳丸がセリスを抱えてより前に飛ぶ。背中は護ってくれるンだろ、と遠慮なく。
 彼らの直上に達したミサイルは、一瞬戸惑うように旋回し万歳丸を追い──セリスの波動に震え自爆した。
「……ヨユーで避けられるじゃねェか!?」
「あーなるほど、ね。基地の白煙って、アレのお尻から出たわけじゃないのね」
 余裕の回避は万歳丸の瞬天足の性能あってこそと嗜めて、次発に備え汚れた盾と陣形を整えながら、セリスがエルバッハの所見を問う。
「『飛来』には速すぎる。対して、先遣の際にはバイクを追い回して自爆した速度。矛盾するのです、あれが歪虚でも。ならば結論は、撃ち出し装置の力を借り、自らは追尾に特化した存在ではないかと」
 詳細は更なるデータ収集後、付きあわせてみなければなるまいが。
 解析が後手に回ったことを惜しんでも仕方ない。

「次、来る気配がするわよ? かっきり1回転したあのバカ面、またムカついたもの」
 こちらを向くたび不快になって睨み返せば瞬く、そして発射、だ。
 再現性確認する? セリスは貴方達も観測できると思うと、万歳丸の持つ送信専用設定の無線で偵察班に伝える。細かい検証は偵察班がやるだろう。
「里の迎撃網策定の戦術検証も兼ねるつもりで、私は準備してきてるからねー。数発喰らう覚悟上等だわよ?」
 はンッ!
 鼻を鳴らすセリスへエルバッハがそういうことなら、と課題を盛った。
「では、標的策定の法則性検証。私ではなくお二方をまず狙った。次に回避後の追跡性能と行動限界の観測。何十秒持つか根競べ致しましょう。更に目標を失った際の挙動も知りたいところ」
 盛りすぎだろう!?
「呵々……面白ェ! じゃあ攻勢に出ねェとな。走る避けるブチ落とす! 敵はますますムキになる。あのツラが吠え面になるトコ見てやろうゼ?」
 ほら来た。今度は2発。──なぜ2発?
「迎撃時に二手になった為か、偵察班に気付いたか。前者であると願いましょう。ところで、私も戦術検証目的なのです。対空兵器には対空魔術、と」
 エルバッハに万歳丸が、避けてなンかイイ感じに集めりゃいいンだなとアバウトに頷く。

 走った!
 避けた!
 避けて走った!
 追われて、逆に火球が追った!

「分散でヤバくなったら来なさいよ? 追跡観測と迎撃と回復を一気にやっちゃうから」
 合流後の体力も考えろとセリスは釘をさすが、いちばん闘気に満ちているのが彼女である。



 1分のうちの10秒。予備動作を安全圏にとって20秒。岩と低木に隠れ、完全に周囲と同化する動作を、既に身体が覚えている。
 随分と基地との距離を詰めた。ここまで来ると耳の違和感ははっきりとわかる。
「ポッドの発射角だが、陽動班へ向けたものが5基。残りは里を睨んだままだ。ポッドあたりの装填数が8、それが25基、で計200発とは初期観測通りだが……およそ20%が迎撃専門か?」
 J・Dが、白煙がたなびいていた位置と符合すると地図に書く。アンテナが回る毎に耳に異音、再度回って暫く後、ポッドが傾きミサイルが発射される。一方的に伝え聞く陽動班の情報では、顔面にも違和感が生じるらしい。
(最初に捕捉されるまで顔面の方は感じなかったが……)
 レーダーをエコーで再現──いや概念的にはこちらが先か──して索敵を行う生物がいる。飛来するミサイルで耳に違和感はなく、更に陽動班より続報が入る。
「反響音で索敵を行っているのは基地本体のアンテナだ。回転毎の動作なのは、おそらく位置差分でしか検出できないのだろう。俺達の潜入方法も裏付けだ。瞬きやらは視覚補正で精度を上げるため、だろうな」
 何をしている? 源一郎からの制止ハンドサイン。
「あそこから先、鳴子が仕掛けられている。糸を張り、音と反射で報知するタイプだが、赤外線ではないのはやはり赤世界のモノか。索敵切替の所感は?」
 源一郎に答えてJ・D。おそらくポッド発射角の限界、と。
「ここより先、人と亜人の世界。ミサイルの跋扈するエリアと隔てる境界。フレバーテキストはこんな感じでしょうか?」
 ああ、お気になさらず。黒耀が笑う。
 【怨手】──黒耀が得意とするトラップカード。
「退路策定はここしか無いのでしょう? ミサイル挙動に制限が付き、亜人が侵入者を追わねばならない境界こそ、危機を逆転するチャンスとなる」
 なるほど退路確保する俺への連携か。J・Dが支援策に折込完了と黒耀へ頷く。
「敵がリアルブルーの戦術を真似るなら、こちらもやりかえす。むしろ釣り野伏をかけたいところですが、今回は偵察優先ですので」


 源一郎は単独でポッドの陰を伝い基地ビル部へ至る。
「あの? 一人で大丈夫ですか?」
 偵察班に同行していたプリケッタが案じるが、隠密偵察の『隠密』に重視をおくのだ、と笑って返したのが数分前。ものの数十秒で合流に駆けつけられる位置は保っているからと彼女を安心させて、未だ白煙の出ていないポッド側、思ったとおり手薄な警備の隙を突く。
(ポッドとミサイルのバランスが変だと思えば……やはり中身は別物、いや機能の代替特化した技術と歪虚の組み合わせか)
 ポッドのカバーを開いてみれば、装填されていたミサイルは適合品より小型。ではなぜ不釣合いなポッドを必要とするのか? 試しにミサイルを1つ外してみれば、果たして小型カタパルトがポッド内部に組み込まれていた。
「予想通りだが、ならば動力源はどこだ?」
 材質を表面を削り調べれば、機械と歪虚が入り混じった錬金術の成果物。漂着品を複製して弄ったかとは源一郎の見立てだが、時代も大きさもちぐはぐなこれに組み込まれたカタパルトは、確か動力を搭載艦船の炉から摂っていたはずだ。
 配管元のビル壁を伝い歩けば僅かに発熱している。白煙立ち昇る逆面なら顕著なのだろう。
「ビルはコンクリートに近い材質だが、アンテナ部分が起毛している。毟って消えたのでサンプルは取れなかった。コードは冗長化されているな。複数個所の切断を……」
 白煙方面への無線連絡途中──
 ビルの反対側で破裂音が響く。そして無線にノイズ。源一郎は逸る心を抑えビルを渡る。

 破裂音の少し前──
「索敵からミサイル射出までのラグがあると思えば……半自動化に留まっていたとは、な……」
 巨大亜人が1体、ミサイルポッド付属の操作盤に取り付いている。
 錬金術使用禁止条約の成果、か?
 白煙側のポッド実働例を探るJ・Dが、完全自動化が成立した場合の反応速度を想像し、いや塞翁が馬だと思いなおす。速度と省力化と自動化ゆえのメリットと脆さを得るのと、半自動化に留まる際の手間と副産物のような冗長性。意図したバーターではないが、災いか転じて福となるか。
「残る亜人は、1体が補佐。残りが交代でビルに出入りし作業と警備を行っていますが……あの作業……斧を薪割りに使用していると見てよいのですか?」
 錬金術師たるコーリアスとはかけ離れたイメージに、黒耀の困惑した問い。
 薪を搬入する先、あれはミサイル基地ではなく炉、なのだ。おそらく予定していた動力炉が搬入できなかったためだろう。だが──
「十分な代替機能は揃えているはずだ。白煙は2種、炉の燃焼と……おそらくは蒸気だろうな」
 リアルブルー技術、いや概念が洩れているのには違いない。代替方法も、だ。
 またミサイルが発射される。今度は発射角を直角方向に近づけて。陽動班が近づいてきたのだ。ミサイル迎撃地点の限界まで。

 ──その時!
「気付かれた! 退路を行くか?」
「ご冗談を……我々は『威力偵察』しにきたのですよ?」
 ポッドの亜人が角度変更を機に黒耀とJ・Dを捕捉し、二人を追う。
 一時散開! 逃げると見せかけ、実際向かうは敵側面。警備が薄れたポッドとビルを標的とする。
「ディバインウィル発動済です、はいっ」
 同行のプリケッタがひぃと小さい悲鳴を上げて続く。あの亜人。大規模戦従軍した際は新人数人がかりで倒せたヤツに似ている。



 ドタバタと。形容詞的にそれがピッタリだ。
「万歳丸君、装備外すわよ?」
「おーけーおーけー! 次だ次次ィ!」
 万歳丸と重なるように走るセリスが、抱えた全身甲冑ヘパイストスを手放し横に転がる。追うのは先ほど発射されたミサイル数発。追われるは残る万歳丸。
 避ける!
 避ける!
 避けきれない!?
 いや、待ちうけ掴み投げ、追い討ちするは黄金掌《蒼麒麟》。
 一直線に並ぶミサイルを一直線の氣が飲み込む。
「進路をそれたやつは火球でまとめて焼きましたが……ふむ、磁力誘導型だと判れば対処は楽ですね」
 二人の負傷に比して軽傷だがエルバッハも無傷ではない。試したのだ、色々と。
「向こうも始まったみたいだから、さっくり一撃離脱よ? 殲滅を我慢する私偉い!」
 甲冑を再装備したセリスが拳を鳴らす。

 Cooler。J・Dの放つ冷気の弾が黒耀を追う亜人の脚を縫う。
「大丈夫。符は貼り直しました」
 それより配管破壊で蒸気稼動の裏づけを!
 黒耀がビルからのたうつコード根元を切断するが、直前にはいった源一郎の報から一部を切るだけではダメだろうと察している。検証は撤退時、我が身を追わせてとなる。
 J・Dが何度も配管を撃って漸く吹き上がる蒸気は、同時に亜人の硬直を解きJ・D自身の危機を招く。
「増援来ました。……J・D!?」
 符を無駄撃ちさせて亜人が斧を振り上げる。黒耀が咄嗟に身を挺して庇う。意図せぬデュエルだが仕方ない。
 ……直撃は、来なかった。
「間に合ったか。撤収だ」
 ビルから急降下した源一郎の「鬼神大王」が亜人の腕を切り落としたのだと気が付いたのは退却中のことだ。


「っと、忘れるトコだったぜィ」
 万歳丸が振り向きざまに蒼麒麟の残弾をアンテナの顔に撃ち込んだ。
『グギィィィ……!!』
 本当だ生体だ面白ェ!
 悲鳴あげてやがるザマァとはしゃぐ万歳丸に、私もポッドより顔を狙うべきだったかとエルバッハが残念がる。亜人が機械を庇うとは想定外だった。


 退路を急ぐハンター達に、悔し紛れの追撃が1度だけ放たれ罠に沈む。
 それが破壊工作の賜物かは、全員の怪我と引き換えに持ち戻った情報を精査後に判明するだろう。

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重体一覧

参加者一覧

  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士
  • 千の符を散らして
    黒耀 (ka5677
    鬼|25才|女性|符術師

  • 門垣 源一郎(ka6320
    人間(蒼)|30才|男性|疾影士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/04 23:55:04
アイコン 別壊相談卓
万歳丸(ka5665
鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/09/06 18:43:59