救援要請~山間の村を救え~

マスター:植田誠

シナリオ形態
イベント
難易度
不明
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/09/09 12:00
完成日
2016/09/22 16:31

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 その日も、村は平和であった。
 歪虚による侵攻という不安要素はあるものの、それは日常的に存在しているものであり、いつも気にしていてはしょうがない……まぁ、ようは慣れてしまっているということだ。
 だが、そんな村を悲劇が襲う。
 しばらく続いた長雨がいけなかったのか。
 それともこの村が山間にあったことがいけなかったのか。
 それは容易に判断しかねる。きっと、複合的な要因が重なった結果なのだろう。
 その日、平和な村は地響きとともに多量の土砂に飲み込まれていった。


「緊急事態、ですね」
 最初に発見したのは、哨戒に出ていた第5師団兵長サラ・グリューネマンだった。
 山崩れによる土砂の流入。それにより村一つが土砂に埋め尽くされていた。
 村、とはいったが規模が小さいというわけではない。外部からの商人なども合わせれば1000人以上は人がいたはずだ。被害を免れた人ももちろんいるだろうが、大多数の人が被災していることだろう。
「第5師団だけでは厳しいですね」
 グリフォンは救助に向いた幻獣である……が、こういった大規模な災害になると話は別だ。一人二人救い出すのとはわけが違うし、グリフォンは性質的に瓦礫や土砂の除去には向かない。無論、それらに埋まった人々の救助なども。
「すぐに支援要請を出す必要がありますね」
 こうして緊急の依頼が発令される。
 土砂に押しつぶされた住人を救い出せ……どんな手を使っても。

リプレイ本文


 災害現場となった村。そこから最も近い街に臨時の本部は置かれていた。
「今回はよろしく、グリューネマン兵長」
「ええ、よろしく」
 キヅカ・リク(ka0038)、ザレム・アズール(ka0878)、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)の3人は兵長と簡単に挨拶を交わすとすぐに対応に関しての協議を始めた。
「とりあえず地図は全員に供給してもらって……住人の数は?」
「旅人や商人もいるので絶対ではありませんが、おおよそ1000人程の規模です」
「1000人……これは厳しいな」
 リクの質問に対する回答を受け、ザレム脳内で作業を組み立てていく。
「生存ボーダーはおよそ72時間といったところ……可能な限りの人員増を依頼し、全体の組織化を行う必要がある」
「その点はわかっています。すでに村へは何名か向かわせています。また、グリフォンライダーも飛ばしますので現地までそちらに乗っていくことも可能です」
「ありがとう。それと避難区域に関して……」
 こうして淡々と救助に関する話し合いが行われる。
「医療要員は?」
「無論手配してあります」
「ふむ、ならば問題は重傷者の受け入れ先か?」
 アウレールの問いにも兵長は即答していく。第5師団において兵長は師団長に次ぐ権限と能力を持っている。こういった事務処理方面にも期待してよさそうであった。ただ、第5師団自体はこういった大規模な救助活動は専門外だ。
「村の捜索エリアを細分化して捜索を効率化したらどうだろう。横軸をアルファベット、縦軸を数字で分割して周知を徹底させるんだ」
「それと、住民代表に住民台帳なりを提出させた方がいい。生存者と行方不明者をチェックしないとな」
「それだけじゃない。日没後のことも考える必要がある。ローテを組んで作業員の休息を確保しなければいけないな」
「なるほど……わかりました。それぞれすぐに手配しておきましょう」
 だからこそ、3人から出される意見は兵長にとって大いに参考になることであり、救助活動を円滑に進める一助になったことは疑いようもなかった。
 短いが濃い内容のやり取りでいくつかの事柄が決定される。
 まずは村内に安全な場所を確保し仮の避難区域を設定。救護エリアなどもそこに設ける。
 その間に本部のあるこの街に住居を用意しておく。
 グリフォンライダーは上空からの偵察を行うとともに通信時各エリアの中継を行うことなどを周知していく。この他にも定められたいくつかのことを伝達するとともに、それに基づき帝国兵が動き出す。
「……これなら私たちは……」
「あぁ。俺たちも現場に向かうとしよう」
 協議の後は、アウレールなどは状況の把握や整理に努めるつもりであったが、本部の帝国兵たちがその仕事を十分こなしてくれている。
「それに、CAMや魔導アーマーは一機でも現場に投じた方がいい……そういうことだな」
「その通りだ。さぁ、道を開きに行くとしよう」
 アウレールはザレムとともに自機のもとへと向かった。
 一方、現地に向かいたくても向かえない者も存在した。
「大怪我してるからって、じっとなんてしてられない……もん……!」
 苦痛に顔をゆがめながら声を上げる時音 ざくろ(ka1250)。
「だって! そのためのCAMじゃないか! 戦いの為じゃない! 困ってる人たちを助けるための……!」
 だが、それが許されるかと言われればそうではない。歪虚による爆発で大怪我を負った状態で、それでもできることがあるはずだ。そう思いやってきたざくろ。だが、ミイラ取りがミイラになる状況は避けなければならない。そのため、兵長の判断で現場へ向かうことは許されなかった。
 これにはケガだけでなく、手続きに問題があったためかざくろのCAMがこちらに来ていなかったためでもあった。尤も、仮にCAMがあってもこの体では動かすことができたかは怪しいが。
「お時ちゃん……」
 慟哭するざくろを見つめる八劒 颯(ka1804)。できれば連れていきたい。一緒に並んで依頼を完遂したい。だが、現場の状況次第ではあるものの、重体の身ではやはり危険だ。
「……ごめん。困らせるつもりはなかったんだ」
「気にしないでください……はやて、行ってきますの」
 颯はそういうと魔導アーマー量産型「Gustav」に乗り、ざくろに見送られ出発した。
(……せめて、ここでできることをしないと……)
 痛む体に鞭打って、ざくろは本部へと向かう。デスクワークや物資の手配要請など、現場に直接かかわらなくてもできることはあるのだから。
「……災害救援か。どこの世界でも軍の管轄になるのか」
 魔導アーマー量産型を使用する榊 兵庫(ka0010)。自身もかつてはサルヴァトーレ・ロッソで軍人をやっていたからか、思うところが思うところがあるのかもしれない。
「その方が組織的に動けていいんでしょうね……あ、その荷物はこっちにお願い!」
 その横にはロベリア・李(ka4206)の魔導トラックがあり、荷台に荷物を積み込んでいる最中だ。
 載せているは木箱。その中には支援物資が種類ごとに詰められている。衣服や食料、水などもおそらくは埋もれてしまっていることだろう。こういった物資の必要性は非常に高い。
「準備ができたらすぐに出よう。最低限通る道は確保していく」
「助かるわ。お願いね」
 先んじて出発していく兵庫。それを見送るロベリアの魔導トラックには物資とともに1機の魔導アーマーが積まれていく。ポンコツ丸と名付けられた、ノーマン・コモンズ(ka0251)の魔導アーマー量産型だ。
「出番は現地に到着してからですかねー」
 ノーマンはそう呟きながら機器の再確認を行う。道中の撤去を行いながらの移動を行う予定であったが、ロベリアの申し出もありトラックに同乗させてもらうことにしたのだ。
「……ん? どうかしました?」
 ノーマンの視線はどこか緊張した面持ちのシャルア・レイセンファード(ka4359)に向けられた。
「こ、こういう依頼は初めてなのですよ……」
 自分たちの働きが人の生死を直接左右する。のんびりマイペースな性格のシャルアでもこういう依頼ではプレッシャーがかかるのだろう。
「……大丈夫ですよー」
 一瞬の逡巡の後、ノーマンはシャルアの頭にポンと手を乗せた。
「僕がついてますからね。一緒に頑張りましょう」
「……はい! あたし、精一杯頑張りますから、ね!」
 その言葉と行動で落ち着いたのだろうか。シャルアの顔には笑顔が浮かんだ。
 エルディラ(ka3982)もすぐに魔導アーマー量産型で移動を開始。兵庫とは別ルートを選択する。それは兵衛たちのルートと比べ被害が大きい……ほとんど通りようの無い道になっている。
「試運転……にしては、急を要する状況らしいのぅ」
 こちらも荷台はある。が、物資などは詰められていない。その代りに仕事の手伝いをする帝国兵の姿があった。
 エルディラの目的は道中の交通網確保にある。
 村へ至るためにも、村から出るためにも、交通の復旧は必須なのは自明だ。試運転と自分で言っているように、操作に関しては不慣れなのだろう。だが、嘆いている暇は無い。
(……何せ、人の生死がかかっておるからな。全力を尽くすとしよう)
 早速、目の前には転がってきたであろう大岩を発見。それをエルディラはハンマーで容易に破砕する。
「ふむ、人の身でこれを壊そうとすると多少苦労しそうなものじゃが……さすが魔導アーマーといったところかの」
 エルディラは、そのまま砕けた破片をクローでつかんで移動させる。細かい破片は帝国兵が地道に荷台へと移動させる形だ。
「その調子で頼むぞ。しかし……荷台の積載量では心もとないな……」
 残骸をそのままにはできないので、荷台に乗せて、集積場に捨ててきて、また戻ってくるということを繰り返していくことになる。だが、それでは効率が悪い。どうしたものかと考えていた時だった。
「エルディラさん! お待たせしました!」
 ソニックフォン・ブラスターから発されたであろう声。見ると後方から鳳城 錬介(ka6053)の魔導トラックがやってきていた。
 元々土砂や瓦礫を運搬することで道の開通を目指していた錬介。ただ、その土砂などをどこに捨てるかは検討しておく必要があり、本部で相談を行ったため少し遅れての到着となったのだ
「別ルートからザレムさんも道の開通を行うそうです。こちらのフォローはお任せください」
「おお、助かるぞ」
 これでエルディラの懸念は解消されたことになる。このルートの開通もそう遠くないだろう。
 本部に視点を戻すと、グリフォンライダーが数騎待機していた。こちらは医療班だ。
 医術の心得がある帝国兵とともに、グリフォンに乗って現地へ飛ぶ。
「人命救助には瓦礫の撤去も大事だけど、まずは医者がいないとね」
 呟く冷泉 雅緋(ka5949)。本職の医者というわけではないが、聖導師として多少の心得はある。
「怪我や病に苦しんでる人がいればそれを助けるのが医者よ。わかってるわね、りんちゃん?」
「わかってるって姐御!」
 覚醒者の力があればなんとかできる……とでも思っているのであろう、大伴 鈴太郎(ka6016)の様子。それを、ロゼと自称するロス・バーミリオン(ka4718)不安そうに見つめる。だが、そちらだけに意識を振り向けるわけにはいかない。何より、これから行く先には救うべき人がいるのだ。
(一人でも多く私は救って見せる)
 そう心に誓う。
「準備大丈夫です。行ってください」
 こちらも医師の志鷹 都(ka1140)。白衣やら医療器具やら、最低限のものを用意してグリフォンにまたがる。
(あまり重篤な患者がいないと良いのですが……)
 その場で満足な治療が行えるとは限らない。その場合手早く後送する必要があるのだが、交通状態がどうなっているかもわからない。不安は隠しようがない……しかし、それをおくびにも出さない。医者の方が不安がっていてはしょうがないのだから。
「こっちも急がないといけないわね」
 トリアージ用の道具を一式持って、空を見上げていたエイル・メヌエット(ka2807)も、イェジド「ソルフェ」にまたがり現地へ急ぐ。
(あきらめないで……今、行くから。あなたを……)
「……いいえ。あなたたちを助けに」
 常は冷静であるソルフェもそんな主の願いをかなえようとするためか、元来の好戦性をむき出しにしたかのように速く、現場へと駆け抜けていった。


「さて、まずは周辺の偵察からじゃな」
 魔導型ドミニオン「ハリケーン・バウ」に乗り、いち早く現場に駆け付けたミグ・ロマイヤー(ka0665)。物資など何も持たず、とにかく急いできたのにはわけがある。
 現場となっている村は山間にある。このことから二次災害が発生する可能性があるからだ。
 雨が止んでるからと言って安心できない、とはザレムの言だが、その通りだ。
(空からの状況把握はグリフォンライダーに任せればよかろう。こちらは地表からじゃな)
 本来、こういう目的であればハリケーン・バウは置いて生身で行った方がよかったのかもしれない。ハリケーン・バウ自体が崩落などのトリガーとなる可能性だってあったのだから。
 だが、その点はミグも警戒している。覚醒状態にあるミグは人機一体を使用してハリケーン・バウの操縦精度を上げて対応している。
 そんなミグが向かった警戒地形は、ダム湖や河川のせき止め、崩落した斜面からの地下水の噴出、地滑りの痕跡など。
 こういったところは生身で向かうと自身が巻き添えになってしまい危険だ。そういう意味でも、ハリケーン・バウを使用していてよかったといえるだろう。
 この間にも、続々とハンターたちが到着してくる。
「待たせたね。怪我人はどうなってる?」
「医療班の方ですか? 助かります!」
 雅緋を始め到着した医療班は帝国兵に連れられて怪我人が集められている場所へと急ぐ。
「とりあえずテントは張ってあるみたいだね。あとは……」
「結構道が荒れてたから不安だったけど、間に合ったわね」
 グリフォンに乗ってきた医療班から遅れて、エイルが到着。手にはトリアージ用のリボンが握られている。
「トリアージについてはわかるわよね? みんな協力してちょうだい!」
「わかりました。急ぎましょう!」
 髪をまとめ、白衣を身に着けた都は、エイルからリボンを受け取り早速作業に入る。
 トリアージとは患者の状態を見て緊急度ごとに分けていき、色分けしていく方法だ。これにより治療の順序を決め救命の可能性を高めるのだ。
「了解したわ! ……大丈夫よね、りんちゃん?」
「あ、あぁ……大丈夫だ……大丈夫……」
 自分に言い聞かせるようにつぶやく鈴太郎。それを横目にロゼは手際よくリボンをつけていく。
「物資などの整理は?」
「まだ持ってきたままの状態でほとんどが……」
「わかりました。それじゃ指示を出しますね。よろしいですか?」
 治療エリアの横に設けられたスペースではアシェ-ル(ka2983)が声を張り上げ物資の整理を行っていく。人と関わるのが苦手なアシェールにとってはある種苦痛を伴う作業だったかもしれない。だが、今はそれを押し殺して作業に従事する。
(私は……私にできることをやるだけです……!)
「物資はここでいいのか?」
 そこに到着した兵庫はすぐに魔導アーマーから飛び降りると、帝国兵にも手伝ってもらい物資を降ろしていく。
「これを降ろしたらすぐに撤去作業に入る。急いでくれ」
 兵庫の後に続いて魔導トラックが到着した。
「とりあえずは物資を降ろして整理が先か。手伝うぜ」
「それでは、荷物を種別ごとに分けて置いていってください!」
「了解した」
 トラックを運転してきた柊 真司(ka0705)はアシェールの指示を受けて荷物整理に従事する。
「とりあえずこのルートはこのまま往路で使うとして……エルディラと錬介が開いている方から戻る形にしたらいいかしらね……本部にそのこと言っておかないと」
 同じタイミングで到着していたロベリアは、地図を登録したPDAを確認した後、荷台の切り離しにかかる。このまま荷台を倉庫の代わりに使うつもりのようだ。
「荷物は最初から種別ごとにしてあるわ」
「さすがです! それではそちらにまとめさせてもらう形にしましょう」
 ロベリアのトラック、そのもう一つの荷台からは魔導アーマーが起動し、移動する。
「運搬感謝します」
「気にしないで。そっちも頼むわよ!」
 ノーマンは、そのまま魔導アーマーで物資の乗った荷台を指示された場所に動かした。こうして治療エリアと物資置き場も兼ねた避難所の体裁が着々と整っていくなか、ノーマンは村内に進行していく。
「いよいよです。僕は操作に集中しますので……頼みますよ」
 そういうとノーマンは同乗しているシャルアに視線を向ける。ちょうどノーマンの膝にお姫様抱っこでもされるかのように座っているシャルアは、小さくうなずくと、息を大きく吸った。
「みなさ~ん! 救援部隊が到着して避難所を準備しています~! 村外れまで集まってくださ~い!」
 ソニックフォン・ブラスターを通じシャルアの声が村中へと響いていく。
「さぁ、私たちもお仕事なの……!」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)は2匹の犬を連れてきていた。
「匂いを、辿ってほしいの」
 一生懸命撫でながら、その想いが犬たちに伝わるようにディーナは続ける。
「人を見つけてほしいの。この土の下に閉じ込められてしまった人たちを探したいの……教えて、ね?」
 ディーナの声が伝わったのだろうか。犬たちは地面に鼻をこすりつけながら移動を始めた。
「しっかり、ね」
 その様子を見ながらアリス・ブラックキャット(ka2914)はペットの黒猫とウサギを避難所に預けた。
「あの2匹はなんのために?」
「住人のメンタルケアのため……いわゆるアニマルセラピーみたいなものかな」
「なるほど、そういうことか」
 アリスに質問したマリィア・バルデス(ka5848)。その傍らには2匹の犬がいた。
「考えることは皆一緒ということかな?」
 イェジド「Василий」にまたがるHolmes(ka3813)。こちらも犬を連れている。目的はやはり匂いだろう。
「わたしは、ちょっと違うけどね」
 そういうとアリスは覚醒によって生えた黒い兎耳を指さした。
「なるほど耳か。了解した。それにしても……いくらハンターが強くなろうと、天災の前には何もできない、というわけかな」
「確かに、いつ起こるか予測もできないものね……」
「でも、それは手をこまねいている理由にはならない、よね」
「もちろんだ。後手に回ったからと言って、うつむいている暇はないだろう。一刻も早い救助を」
「ええ、一人でも多く救うために……!」
 アリス、Holmes、マリィア……それに先行したディーナ。耳や鼻を活かした探索者たちは村内に散っていった。
「さて、私もいくかな」
 一通り避難所の準備を手伝った不動シオン(ka5395)は一服しようと煙草に火をつけようとして……この緊迫した状況では不謹慎かとそのまま戻す。
(人助けはガラじゃないが……)
 生粋の戦闘屋であるシオンには人を助けるとか守るといった感情は希薄である。しかし、この世界の住人の世話になっている以上最低限の仁義は尽くさねばならないと考えていた。
「義理は、返さないとな」
 そういってシオンも走り出した。
『周辺の偵察は完了したのじゃ。まずそうな場所をマーキングした地図をグリフォンライダーに持って行ってもらうので情報として反映させてほしいのじゃ』
「了解。伝達します」
 ミグからの報告を受けたカール・フォルシアン(ka3702)はそれを避難所に伝える。カールが自身に課したのは現場と本部の中継役。だが、本部と現場の距離は思いのほか大きく、電波増幅を使っても届かない。
「そもそも、電波増幅だって何度も使えるものじゃない……もどかしいですね」
 悔しそうにつぶやくカール。不幸中の幸いというべきか、避難所から本部には直通の回線を設けたようで、本部との伝達には事欠かなさそうだ。それに、空にはグリフォンライダーも異変を察知したときすぐ対応できるように飛んでいる。
「電波増幅は本当の緊急時に使うとして……ここは瓦礫の撤去に回りますか」
 そういって魔導型デュミナス「白夜」のコンソールをポンとたたく。
「……僕も、この子も戦い……何かを壊すだけの道具じゃありませんから」


「音がなくなった……今がチャンスだね」
 そう言ってアリスは地面に耳をつけ超聴覚を使用する。
 リクの進言で本部が決定した一定間隔での静音状態。その隙をつく形でアリスは人を探していく。
「……いた!」
 かすかな声を頼りに、アリスは走る。そこはつぶれた一軒家のようだった。
「要救助者を発見、アーマーやCAMは不要……待ってて、今助けるから」
 トランシーバーで報告を入れると鉞を構えて、瓦礫を除去していく。鉞を使いノックバックを使用。この際万が一にも連鎖的な崩壊を招かないように注意は怠らない。
 そこからさらにてこの原理で慎重に瓦礫の除去を行い……やがて、閉じ込められた人までたどり着いた。
「α、γ、よくやったわ」
 マリィアの方でも犬を利用した捜索がうまくいった。だが、こちらは瓦礫が多く一人でどうこうするのは難しそうだ。
「バイクがあればね……」
 そうすればロープでもつけて引っ張っていくという手が取れたが、瓦礫や土砂で荒れている村内ではバイクを使うことがまず難しくおいてきたままだった。
「手伝うか?」
 そこに、帝国兵と瓦礫の除去を行っていたシオンがやってきた。
「助かるわ。覚醒者二人ならなんとかなるでしょう」
 帝国兵の力も借り、崩れないように慎重に瓦礫をどけていき、救出を行う。
「キミ達の鼻には期待しているよ」
 二匹の犬とВасилийによる捜索を行うHolmes。特にВасилийはイェジドであり、その狼嗅覚は高い効果を発揮した。すぐに土砂が流れ込んだ家、その中に人がいる気配を見出した。
「ん、このあたりだね。ありがとう」
 Holmesは自身も聽により聴覚を大幅に上昇させて要救助者の声を聴いた。
「これぐらいなら土砂をどけていけばなんとかなるね。William、Basil、Василий、頼んだよ」
 Holmesの指示で2匹と1頭は土砂を掘り進める。
「さて、ボクも……こう見えて力には自信があるんだ! すぐに助け出すよ!」
 取り残された人を勇気づけるように声を山車ながら、やがて埋もれていた部屋の隅からおびえる村人を救い出した。
 散発的に降る雨が匂いを消してしまわないか心配ではあったが、杞憂だったようで、順調に捜索はすすめられた。
 だが、必ずしも救助まで順調にいくとは限らなかった。
 ディーナの方でも犬たちが仕事を果たし、人のいる場所を見つけた。元々宿か何かのようだったそれは、しかし完全に土砂に埋まっているようだった。
「誰かいますか~!」
 足元にわずかに見えた屋根の部分だろうか。そこに向かって声を上げるディーナ。すると、足元から声が聞こえた。それも複数。
「怪我は無い? 水や食べ物は大丈夫?」
 それに対しては水も食料もあるにはあるが、取りに行くことができないと返ってきた。
(土砂が室内に入り込んでみうごきができないのかしら……)
 すぐにディーナは無線を通じ連絡を入れる。
 すると、すぐに近くで作業をしていた颯がGustavに乗って来てくれた。
「要救助者は?」
「この下にいるの!」
「了解、はやてにおまかせですの!」
 颯は、バケットクローを利用して、まずは周囲の土砂を取り除いていく。
(どこに人が埋まっているのかわかりませんから注意しないと……)
 颯は除去と並行して応援を要請する。実は建物自体はすでに倒壊しているが、周囲の土砂がそれを支えている……そんな状況を想定した。
「すまない。待たせたか?」
「いえ、ちょうどいいタイミングです!」
 ある程度土砂をどけたタイミングで魔導型デュミナス「PzI-2M ザントメンヒェン」を駆るアウレールが到着。
(要請に応じいつでも来れるように避難所で待機していたが……当たりだったな)
 ここからはスムーズだった。屋根部分をアウレールのクレーンで支えるようにしておき、その間に土砂をすべて撤去する。
「後は救助するだけですね。そのままクレーンは維持でお願いしますわ!」
「了解した。落としたりはしないから安心しろ」
 アウレールの返事を受け、颯はしばし考える。脳裏に浮かぶは3種のドリル。
(……ディーナに返事を返したということはまだ体力はあるはず。ならここは慎重に……)
アーマーから降りると軽量で扱いやすいドリル、コルネートを準備。
「どりる機導師は伊達ではありません!」
 そういうと、ドリルで少しずつ壁を壊し救助者のもとへ向かう。
「私たちは中の土砂をどけるのよ!」
 いつの間にやら集まってきていた帝国兵とともに、ディーナはスコップで掘り進む。
「……ここの救助も時間の問題だな。他へいくとしよう」
 連絡を受けて手伝いに来たシオンだったが、それを受け他の場所へと向かう。
「危険だから壁から離れていろ!」
 別の場所では兵庫が魔導鋸を使用して大胆に壁に穴を開け、そこから救助を行う姿も見られた。万が一にも天井が崩れないように、外側からはミグのハリケーン・バウが抑えている。
 カールも白夜に家の残骸を移動させて救助された人々が移動しやすいように道を作り出していた。 
 こういった魔導アーマー、CAMの働きはすさまじいものがあった。単純に戦闘力が高いというだけでなく、人の力とはまた違う作業能力の高さを垣間見ることができた。
「さてさて、ポンコツ丸の出番と行きますかねー」
「頑張ってください、ノーマンさん!」
 こちらでも、シャルアの応援を傍らで受けながら、バケットクローを使い土砂の掘り出し。さらにそこに埋まった瓦礫をクレーンで引き上げる。
 その下にはソルフェに乗ったエイルの姿があった。トリアージの準備を粗方済ませたエイルもソルフェの狼嗅覚を頼りに救助活動を行っていたのだ。
「助かったわ! さぁ、もう大丈夫よ!」
 その声には焦りのようなものが含まれていた。ソルフェが捉えていたのは人のにおいだけではない。血の匂いも、だ。
「まずいわ……緊急、重傷者一名! すぐに治療エリアに連れ行くわ!」
 応急処置としてヒールを使用しながら、エイルはソルフェを走らせた。


 治療エリアは大忙しであった。怪我だけでなく、災害に絡む精神的な不調や病気などが後を絶たなかった。
「ここなら安全ですからね。落ち着いてください」
 都は多数の患者に対し一人一人丁寧に対応していく。重篤な患者はグリフォンやその他移動手段ですぐさま後送されていく。
 そうなると、当然ながら軽症者は後回しにされ、ここに残される。その数はかなり多い。
「大丈夫だよ。すぐによくなるからね」
 中には子供もいた。泣き叫ぶ子供に視線を合わせ、その頭を撫でてやりながら都は治療を行っていく。
(少しでも安心させてあげないと……)
 母のような愛情を持って、しかしプロとしての真摯さをもち、都は治療にあたっていく。
「ほらキャンディだ。ゆっくり舐めて食べな」
 同じように子供の相手をする雅緋。こちらは治療よりも治療エリアの保守が主な役割だ。
 例えば、トリアージを行ったとそれに基づき大まかに区分して離れすぎない程度に分かれてもらったり、あとから来た患者への対応を行ったり。
 もちろん要請がかかれば手伝いに行くこともあるが。
「何してるの、急ぎなさい!!」
 不意に、治療エリアの一角で怒号が響く。あれは、ロゼが治療を行っている場所だ。
「……あっちは大丈夫かね」
 そちらを心配しつつも、今の声で不安そうな表情がぶり返した子供の相手をしなければならず、雅緋はそちらに意識を振り向けた。
 一方、そのロゼが治療を行っている場所はまさに戦場のようであった。こちらはどちらかといえば重傷者が集められており、軍医などと一緒に応急処置を行っていた。
「やっぱりちゃんとした病院じゃないと駄目ね……早くしなさい、りんちゃん!」
「あ、あの……」
 視線を患者から上げると、そこには鞄を持った鈴太郎の姿があった。
「ど、どれのことかわからなくて……その……」
 鈴太郎が言い終わるより早く、ロゼは鞄をひったくるように取り上げ、道具を取り出す。鈴太郎はロゼから道具を取り出すように言われたのだが、自身の知識不足ゆえにそれがどれかわからなかったのだ。
(現場……これが本当の……)
 最初は、ロゼの手が回っていない患者に対しチャクラヒールを使用して治療を行ったりもした。だが、それもすぐに限界に達し、それからはロゼの指示にも対応できずおろおろとするばかりだった。
「ロゼさん! 緊急!!」
 そこにエイルが飛び込んできた。先ほど連絡した怪我人だ。
「来たわね、そこに寝かせてちょうだい……都ちゃん! こっちお願い!」
「わかりました、すぐに!」
 自分ではなく都に手伝いを頼んだロゼを見て、鈴太郎は患者を前に何もできない自分に焦りと後悔を感じる。そして、その眼には……
「泣く暇があるなら!」
 ビクリと鈴太郎の体が跳ねる。
「泣く暇があるなら、今貴女ができることをしなさい! 今、りんちゃんが出来る事は何!」
 それはロゼなりの鈴太郎に対する喝だったのだろう。それを受け、鈴太郎は気持ちを切り替える。
「そちらの患者、脱水症状みたいなのでミネラルウォーターを飲ませてあげてください」
「わ、わかったぜ」
 不意に出された都からの指示を受け、鈴太郎は行動を起こす。
「……ありがとね、都ちゃん。やればできる子なんだからもっと自信をもって欲しいんだけど……」
「どういたしまして……さぁ、私たちも頑張りましょう」
 そう言って二人は目の前の患者に集中する。
「おっと、これは……手伝った方がよさそうだねぇ」
 そこに雅緋も手伝いに合流。こうして医療班は協力して命をつなぎとめていった。


「こんな時間になってしまったか……」
 魔導型デュミナスを使用して道を広げる作業に従事していたザレム。彼がここにたどり着いたのは日が暮れてからだった。
(槍と盾ではこの手の土木作業には適さないか……やはりスコップの一つでも用意すべきだったか)
 盾で土砂をどけることは不可能ではなかったが、なかなか操作しづらいものがあり、それがこの時間まで長引かせることになってしまった。
 だが、夜になっても救助活動は続けられていた。
 カールは一度避難所に戻ると医療班の手伝いを行っていた。
 その間アウレールがザントメンヒェンを投光器代わりに使っているのに習い、白夜も照明代わりに使用していた。
「しばらくは僕が診てますから、少し休んで下さい」
 ハンターといえど人間だ。不眠不休では動けない。帝国兵も含め交代で休みをとっていた。
 そんな疲労感の溢れる避難所を満たすのは食べ物の香りだった。
「まずはコレでも食って心を落ち着けてほしいぜ」
 そういって真司は熱いポトフを避難民に差し出した。
 避難場所では炊き出しが行われていたのだ。
 まずは食事をして落ち着かせて、精神的な方はそのあとゆっくり立ちなおせればいいとは真司の言だ。その言葉に賛同した、というわけでもないのだろうが、何名かの帝国兵もその作業を手伝っている。
 それにしても料理までできるとは、オールラウンドプレイヤーと呼ばれるだけのことはある。
「材料はトラックに積んできてるからな。材料が足りなくなるってことはないはずだ」
 そういいつつ手早く作業を行っていく。
「ただ、これだけってわけにもいかないかな……」
 食べる人数が多いため、まとめて作れた方がいいだろうと選択したポトフであったが、他の料理がないではいささかバリエーションにかけるか。
「支援物資にも食料もありますから、そこから出していけば大丈夫だと思います」
「そうだな。そのための支援物資でもあるわけだし」
 輸送がひと段落ついたため、真司の作業をアシュールも手伝っていた。
 避難所の一角ではアウレールがオカリナの演奏を披露する。その傍らにはアリスが連れてきていたペットが子供と触れ合っている。それも全ては被災者のストレスケアのためだ。時折降ってくる弱い雨のせいもあって被災者の精神面が心配される。こういったストレスケアの配慮は重要であった。
 そのころ本部では、兵長はじめ帝国兵が忙しく動き回っている。その中にはリクとざくろの姿もあった。
「道の瓦礫や土砂は8割方撤去できたみたいだね。エルディラ君から連絡があった」
「そうですか……それなら明日には交通も全面的に回復できそうですね」
 リクと兵長が話しているところにざくろが地図を持ってやってきた。
「このままだと集積所が瓦礫でいっぱいになっちゃうから……ここの広場を第二集積所にしたらどうかな……っ」
 そう提案しながら、ざくろの顔が苦痛でゆがむ。やはり痛みは相当のものとみえる。
「……時音君、少し休んだ方が……」
「そうはいかないよ。今もまだ生き埋めになっている人がいるかもしれないのに、ざくろだけ何もしないなんて……できないよ」
 それ以上リクは何も言うことができなかった。せめてこれ以上ざくろの怪我が重症化しないことを願いつつ、次の作業……傷病者の受け入れ先の増援手配に手を付けるのだった。


「……多少はましになってきたか?」
 コクピットから周囲を眺めた兵庫。まだまだ瓦礫は多いのだが、CAMや魔導アーマーが複数いる他、帝国兵も頑張っている。
「こちらは街道の整備に回った方がいいかもしれないな」
 外部からの救援を円滑に進めるためには道の復興がなにより重要だ。支援物資一つとっても現時点では輸送に限りがある。道が十全に整えばそういった問題も解消される。
 だが、結果的にその必要はなくなった。
 避難所から連絡が入ったのだ。エルディラたちが道の撤去作業を完了したと。
「……といっても、まだ一本だけじゃがな」
 避難所の仲間たちに合流したエルディラが言った。
「この調子で他の道の開通。それと道幅もある程度広げて交通の利便性を上げたいところですね」
 錬介は幾度も道と、瓦礫の集積所を行き来したトラックのボディをねぎらうように撫でた。
(そういえば、購入したばかりで名前を付けてなかった……何が良いかな)
 そんなことをふと考えた錬介だったが、すぐに新たな仕事が舞い降りる。
「本部のキヅカさんから連絡が入りました。医療施設の目途が立ったから中軽症者も街の方に輸送してほしいとのことです!」
 アシェールが伝えた本部からの言葉はすぐに伝えられ、移動が始まる。
 魔導トラック持ちはそろってそれに従事することになる。
「大丈夫? ちょっと揺れるけど我慢してね……!」
 ロベリアの数度目の復路。今回は重傷者の搬送が含まれている。
 毛布とロープで患者は固定。帝国兵も同乗してもらい急場にも対応できるようにしている。
 とはいえ、やはり不安は不安である。
(速度より安全運転を重視ね)
「帰りにまた食材を準備してこないとな」
 真司としても食材の準備も兼ねて一度戻りたいところだったのでタイミングとしては良かった。
「お時ちゃんはちゃんとおとなしくしてるでしょうか……」
 颯も荷台を活用して怪我人の移送を行うことになった。
 こうして、傷病者の移動とともに、街に知り合いがいたりする村人も並行して移動していった。
「さて、こちらも作業を続けよう」
 多少数が減ったものの、それでも村人の数は多く、それらの支援や治療などにも手が必要だった。
 それに、行方不明者も。
 ザレムが本部からもらってきた生存者と非生存者、行方不明者のリストを照らし合わせながらなおも作業は続けられ、その結果何人かは助けられた。
 だが、助けられない人も相当数いた。それは仕方のないことだ。災害が起きたその瞬間にハンターたちが居合わせたわけではないのだから。
「……間に合わなくて……ごめんね……」
「仕方ない。仕方ないさ……この様子では仮に一日早かったとしても間に合わなかった……」
 発見したアリスを慰めるようにシオンが言った。


 それからさらに数日が経過した。
 数度の雨に見舞われながらも捜索は滞りなく完了し、死亡者7名、残りは生存。行方不明者は無しという結果となった。
 追悼の祈りを捧げるアウレールの隣で、アリスは無言で花を供えた。亡くなった7名は村外れに葬られていた。
(ごめんね……)
 もう何度目かの謝罪とともに、写真立てを一つ置く。それは一緒に発見された遺品であった。
(無力な一般人を戦いに巻き込むのは嫌いだ。だが今回は天災……討ってやるべき敵も無しか)
 その様子を遠くから一人見ていたシオンは自分の仕事を終わったとばかりに煙草に火をつけた。
『これで人の面では良い結果になったとはいえ、村としては手痛い被害じゃのぉ』
「確かに……ほとんどの家がつぶされてしまいましたし、畑の類も……」
 撤去作業に従事するミグから来た無線にカールが答えた。
 これからの復興作業を思うと頭がいたい。
 だが、人的被害が抑えられたのは紛れもなくハンターたちの活躍によるものだっただろう。第5師団だけで動いていたのであればこういう結果にはならなかったはずだ。
『それに、人の被害が少なかったということは、立て直す人材が残ったということでもあるのじゃからな』
「前向きに捉えればそうなりますね……大変なのに変わりはありませんが」
 ハンターたちも、この日の作業を最後に任務が終了となる。あとは村人と、帝国軍に頑張ってもらうしかない。
「CAMを使えるのも今日までですし、できるだけ片付けましょう」
『そうじゃな』
 治療エリアでも引き継ぎなどが行われていた。もっとも、大多数は街の方に移送したので当初と比べれば閑散としたものだったが。
「お待たせ。必要な薬もらってきたわよ!」
「早かったわね、ありがとう。この薬の保存には気を使ってちょうだいね……あら、どうしたのりんちゃん」
「姐御……今度勉強を見てほしいんだ」
 マリィアから受け取った薬に関し帝国兵に指示を出していたロゼ。そんなロゼに鈴太郎はそんなことを言った。それが何を意味することかロゼにはすぐわかった。かつて目指した、看護師になるという夢。それに真剣に向き合おうとしている、ということを。
「懐かしいですね……」
 その様子を見ていた都がぽつりとつぶやく。
「確かに、青春って感じだねぇ」
 雅緋の言ったことと、都の思いには若干の違いがあったものの、夢に向かおうとする鈴太郎の姿はどこかほほえましい、というのは共通していたかもしれない。
「お疲れ様なの。帰ったらシャンプーしないとね」
 ディーナはそう言って今回頑張ってくれた犬たちを依頼開始時と同じようにたくさん撫でてやる。犬はじめ、ペットたちの活躍は無視できないものだった。
 それは、ディーナだけではない。
「帰ったらたっぷり水遊びさせてあげるわ。リクくんも付き合せちゃおうかしら」
「ボクのところはブラッシングとカットかな」
 エイルとHolmesはそう言って互いのイェジドを労った。
「道の整備もおおよそ進んだことだしよしとせねばならんな」
 エルディラは土にまみれて汚れてしまった魔導アーマーを見ながら、どこか満足そうだった。操縦に慣れるという意味でも今回の依頼は価値があっただろう。
「ザレムさん! そろそろ撤収ですよ!」
「あぁ……くれぐれも災害の予兆は見落とさないようにしてくれ」
 アシュールに呼ばれたザレムは帝国兵に強く念押しして歩き出す。そこには錬介の魔導トラック。そして、空になった荷台に積まれたCAMの姿があった。
「無事に終わって、よかったです……亡くなった方がいたのは残念ですけど……」
 シャルアは少し嗄れた声で言った。この数日間ノーマンの横でひたすら叫び続けたらこうもなる。だが、シャルアが助けに来たと、助かると伝えたことはきっと村人に希望を与えたことだろう。
「シャルアさんの言葉に救われた人もいたと思いますよ、きっと」
 ノーマンから素直に褒められたシャルアは照れたように頬を赤く染めた。
 その様子を兵庫とロベリアが眺めていた。魔導アーマーの積み込みが終わったので呼びに来たのだ。
「……そろそろ声をかけるとするか」
「そうね……私も、役に立てたのかしら」
「ロベリアが役に立っていないのなら、みんな役立たずだったろうさ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
 こうして、現場のハンターたちは引き上げていった。
「今回はありがとうございました」
「いえ、復興作業もまだありますから、頑張ってください」
 兵長とリクが挨拶を交わす。少し離れたところでそれを見ていたざくろと颯。
「……ざくろも、今度は現場で活躍して見せるからね」
「今度は二人一緒に、ですよね」
 こうして、ハンターが行っていた全業務は帝国軍に引き継がれた。
 被害がこれだけで済んだのはハンターたちの力によるところが大きく、依頼が大成功で終わったことは疑う余地もなかった。 

依頼結果

依頼成功度大成功
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参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    マドウアーマーリョウサンガタ
    魔導アーマー量産型(ka0010unit001
    ユニット|魔導アーマー
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • まめしの伝道者
    ノーマン・コモンズ(ka0251
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ポンコツマル
    ポンコツ丸(ka0251unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    魔導トラック
    魔導トラック(ka0705unit002
    ユニット|車両
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス(ka0878unit002
    ユニット|CAM
  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    グスタフ
    Gustav(ka1804unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    パンツァーインファンテリー
    PzI-2M ザントメンヒェン(ka2531unit001
    ユニット|CAM
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ソルフェ
    ソルフェ(ka2807unit001
    ユニット|幻獣
  • それでも尚、世界を紡ぐ者
    アリス・ブラックキャット(ka2914
    人間(紅)|25才|女性|霊闘士
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • はじめての友達
    カール・フォルシアン(ka3702
    人間(蒼)|13才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ミードナット・ソール
    白夜(ka3702unit001
    ユニット|CAM
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ヴァシーリー
    Василий(ka3813unit001
    ユニット|幻獣
  • 今を歌う
    エルディラ(ka3982
    ドワーフ|12才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    マドウアーマーリョウサンガタ
    魔導アーマー量産型(ka3982unit001
    ユニット|魔導アーマー
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハンヴィー ディープレッド
    HMMWV D.R.(ka4206unit001
    ユニット|車両
  • 想い伝う花を手に
    シャルア・レイセンファード(ka4359
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 静かに過ごす星の夜
    冷泉 雅緋(ka5949
    人間(蒼)|28才|女性|聖導士
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ネコマサムネ
    猫正宗(ka6053unit001
    ユニット|車両

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/07 10:01:39
アイコン 【相談卓】災害救助本部
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/09/09 01:23:22