ゲスト
(ka0000)
【西参】消魂の肺腑 ~後編~
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2016/09/09 19:00
- 完成日
- 2016/09/19 05:13
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
■死を求めて
先の戦いから落ち着きもしないうちだった。
「準備はいいぞ。瞬」
中年のおっさん兵士であるゲンタが槍を肩に掛けながら言った。
ゲンタの周囲にいる他の隊員達も、其々が得意な武器を手にしている。
「よし、我らは本隊に先駆け、災狐へ突撃するぞ」
集まった者達は静かに――深く、頷いた。
災狐の軍勢は森の外だ。森の中を通れば、発見されるなく敵陣地の近くまでたどり着けるはずだ。
それだけではない。敵の軍勢が移動する隙を見て、上手くいけば、災狐へと迫れるかもしれない。
陣地の仲間達に見つからないように、静かに歩き出す、『彼ら』。
「瞬。いいのか、正秋に声を掛けなくて」
「いいんだ。彼奴は、未来を見ている。そんな奴を連れてはいけない」
きっと、敵軍へ先駆ける事を知れば、死地について来るに違いない。
「彼奴は絶望を乗り越えようとしている。ここで、死んではいけない」
「……瞬、お前……」
「ゲンタのおっさんは、どうして征西部隊に?」
その質問に、ゲンタは険しい顔を見せながら、空を仰ぎ見た。
「俺の息子は、ヨモツヘグリに乗り込んだ。ハンター達の退路を守る為にな」
その兵士らは、己の命と引き換えに役目を果たしたと聞いている。
「……ハンター達に恨みがある訳じゃない。だがな、この行き場のない怒りと悲しみは、いつまでも、この胸の奥で煮えたぎっているんだ」
「そうだったのか……」
「瞬。お前はどうなんだ?」
ゲンタからの返しに、瞬は悲しい顔を浮かべる。
「俺の一族は、領民を捨てて逃げ出し、その途中で襲撃にあって全滅したのさ」
「その噂は聞いている。だが、実際は違うだろう」
「不名誉な認識があるのなら、生き残りの俺は、名誉を取り戻す必要がある。それだけだ」
死地へと向かう侍達。
誰もが、その理由を抱えていた。
◆希vs牡丹
「彼らを止めて下さい!」
一部の隊員らが命令を無視して独自に行動しているとの知らせが入り、紡伎 希(kz0174)が声を大にして言った。
征西部隊を率いる鳴月 牡丹(kz0180)は希の言葉を聞いても――耳の穴に指を突っ込んでいた。
「さぁ、聞こえないね」
「……」
カツカツと近づいて、牡丹の手を引っ張り、耳元で同じ言葉を繰り返した。
「あー。もう、いいよ」
「よくないです。死なせるつもりですか?」
「命令無視なんだから、命令しても仕方ないでしょ」
その言葉に大きくため息をついた希は踵を返す。
「それなら、私が止めてきます」
「“彼ら”は死に場所を求めているんだ。その花道を邪魔しちゃいけない」
「ホープを目指していた訳じゃないのですか!?」
驚いて振り返る希に牡丹は語りだした。
「『僕』は、ね。征西部隊は、当初から全滅を想定されているのさ」
牡丹は語りだした。
征西部隊の主力を構成する隊員らのほとんどが、死地を求めて命令無視や過激な行動等、組織行動に問題がある者達だと。
仮に全滅するような事があっても、率いる者がホープまで到着すれば、表向きの目標は達成できる事を。
そして、最大の目的は、今後、残党する憤怒の歪虚の本拠地へと討伐戦が繰り広げられる際、背後となる北西方向への脅威を取り除く事。
「だからと言って、死を用意するのは間違っています!」
「“僕”や“彼ら”が抱える闇は、ずっと深いんだよ! 邪魔をするな!」
「いいえ、止めます」
立ち去ろうとする希の正面に素早い動きで牡丹が回り込んだ。
「どうしても通るというなら、僕を退けてから行くんだね!」
牡丹の全身からマテリアルのオーラが噴出した――。
◆憧れの人へ
牡丹に挑んだが勝負にならなかった。全身がズタボロだった。
「……ッ……ッ……」
遠慮なく殴られた頬が腫れて痛い。
頭がくらくらするまどろみの中――夢か幻か、銀色の折り鶴が舞っていた。
手を伸ばし掴むと、温もりに満たされていく――。
(貴方は生きてください……それが、私のノゾミです)
そんな声と共に、温かい銀色の光が、一面に広がった。
そこで希は意識がハッキリと覚めた。
大粒の涙を流しながら、思い返した。どうして、私は生きているのかと。なぜ、生きなければいけないのかと。
「『約束』……私達の『約束』……」
緑色の折り鶴を掴み、希は言葉を繰り返した。
そして、思い出した。自分が何故、受付嬢という仕事に就きたいと思ったのかを。
「行か……なきゃ!」
痛みを堪えながら希は立ち上がった。
●ハンター
「……諦めたというつもりはなさそうだね」
牡丹の前に現れた希の姿を見て、女将軍は口を開いた。
心情の変化があったと一目で分かる。希から発せられる雰囲気が全然違った。
「災狐軍勢を破る為、ハンター達を呼びます」
「ハンター達が居ても、結果は変わらないよ」
もはや征西部隊は陣の防衛ですら辛うじてできるかできないかという状態だ。
この状況を打破するには、災狐を打倒すか、軍勢を退けるしかない。そして、それはハンター達が居ても簡単に成し遂げられる事ではない。
「……私は、人々を絶望から救う為に、死を渡してきました……でも、それは救いじゃないと知りました」
救われず絶望した人を死を与える事で解放していた。
だが、それは救いではなかった。ただ、人に死ぬ方法を与えているに過ぎなかった。
「本当に、“彼ら”の死に場所は、ここなのでしょうか?」
「“彼ら”がそう望んでいるんだよ。その為に、征西部隊は編成されたのだから」
「私には、紫草様が死ぬだけの部隊を作るとは思えません」
ホープへ目指す途上を通じて希望を見出して欲しかったのではないか。
「まぁ、ハンターを呼ぶかどうかは任せるよ。さっきも言ったように結果は変わらないからね」
「そんな事はありません。必ず、“彼ら”を救ってくれます」
――どんなに高い障害があったとしても。
――どんなに困難な道があったとしても。
――どんなに深い絶望があったとしても。
「なんで、そう言えるのかな? ノゾミ君、教えてよ」
気合や根性で、戦はどうにかなるものでもない。
それを知った上で、なおも言い続ける希に苛立ちを覚える。
挑発するような牡丹の口調と視線に対し、希は堂々と胸を張って答えた。
「それは、あの方達が――『ハンター』だからです」
先の戦いから落ち着きもしないうちだった。
「準備はいいぞ。瞬」
中年のおっさん兵士であるゲンタが槍を肩に掛けながら言った。
ゲンタの周囲にいる他の隊員達も、其々が得意な武器を手にしている。
「よし、我らは本隊に先駆け、災狐へ突撃するぞ」
集まった者達は静かに――深く、頷いた。
災狐の軍勢は森の外だ。森の中を通れば、発見されるなく敵陣地の近くまでたどり着けるはずだ。
それだけではない。敵の軍勢が移動する隙を見て、上手くいけば、災狐へと迫れるかもしれない。
陣地の仲間達に見つからないように、静かに歩き出す、『彼ら』。
「瞬。いいのか、正秋に声を掛けなくて」
「いいんだ。彼奴は、未来を見ている。そんな奴を連れてはいけない」
きっと、敵軍へ先駆ける事を知れば、死地について来るに違いない。
「彼奴は絶望を乗り越えようとしている。ここで、死んではいけない」
「……瞬、お前……」
「ゲンタのおっさんは、どうして征西部隊に?」
その質問に、ゲンタは険しい顔を見せながら、空を仰ぎ見た。
「俺の息子は、ヨモツヘグリに乗り込んだ。ハンター達の退路を守る為にな」
その兵士らは、己の命と引き換えに役目を果たしたと聞いている。
「……ハンター達に恨みがある訳じゃない。だがな、この行き場のない怒りと悲しみは、いつまでも、この胸の奥で煮えたぎっているんだ」
「そうだったのか……」
「瞬。お前はどうなんだ?」
ゲンタからの返しに、瞬は悲しい顔を浮かべる。
「俺の一族は、領民を捨てて逃げ出し、その途中で襲撃にあって全滅したのさ」
「その噂は聞いている。だが、実際は違うだろう」
「不名誉な認識があるのなら、生き残りの俺は、名誉を取り戻す必要がある。それだけだ」
死地へと向かう侍達。
誰もが、その理由を抱えていた。
◆希vs牡丹
「彼らを止めて下さい!」
一部の隊員らが命令を無視して独自に行動しているとの知らせが入り、紡伎 希(kz0174)が声を大にして言った。
征西部隊を率いる鳴月 牡丹(kz0180)は希の言葉を聞いても――耳の穴に指を突っ込んでいた。
「さぁ、聞こえないね」
「……」
カツカツと近づいて、牡丹の手を引っ張り、耳元で同じ言葉を繰り返した。
「あー。もう、いいよ」
「よくないです。死なせるつもりですか?」
「命令無視なんだから、命令しても仕方ないでしょ」
その言葉に大きくため息をついた希は踵を返す。
「それなら、私が止めてきます」
「“彼ら”は死に場所を求めているんだ。その花道を邪魔しちゃいけない」
「ホープを目指していた訳じゃないのですか!?」
驚いて振り返る希に牡丹は語りだした。
「『僕』は、ね。征西部隊は、当初から全滅を想定されているのさ」
牡丹は語りだした。
征西部隊の主力を構成する隊員らのほとんどが、死地を求めて命令無視や過激な行動等、組織行動に問題がある者達だと。
仮に全滅するような事があっても、率いる者がホープまで到着すれば、表向きの目標は達成できる事を。
そして、最大の目的は、今後、残党する憤怒の歪虚の本拠地へと討伐戦が繰り広げられる際、背後となる北西方向への脅威を取り除く事。
「だからと言って、死を用意するのは間違っています!」
「“僕”や“彼ら”が抱える闇は、ずっと深いんだよ! 邪魔をするな!」
「いいえ、止めます」
立ち去ろうとする希の正面に素早い動きで牡丹が回り込んだ。
「どうしても通るというなら、僕を退けてから行くんだね!」
牡丹の全身からマテリアルのオーラが噴出した――。
◆憧れの人へ
牡丹に挑んだが勝負にならなかった。全身がズタボロだった。
「……ッ……ッ……」
遠慮なく殴られた頬が腫れて痛い。
頭がくらくらするまどろみの中――夢か幻か、銀色の折り鶴が舞っていた。
手を伸ばし掴むと、温もりに満たされていく――。
(貴方は生きてください……それが、私のノゾミです)
そんな声と共に、温かい銀色の光が、一面に広がった。
そこで希は意識がハッキリと覚めた。
大粒の涙を流しながら、思い返した。どうして、私は生きているのかと。なぜ、生きなければいけないのかと。
「『約束』……私達の『約束』……」
緑色の折り鶴を掴み、希は言葉を繰り返した。
そして、思い出した。自分が何故、受付嬢という仕事に就きたいと思ったのかを。
「行か……なきゃ!」
痛みを堪えながら希は立ち上がった。
●ハンター
「……諦めたというつもりはなさそうだね」
牡丹の前に現れた希の姿を見て、女将軍は口を開いた。
心情の変化があったと一目で分かる。希から発せられる雰囲気が全然違った。
「災狐軍勢を破る為、ハンター達を呼びます」
「ハンター達が居ても、結果は変わらないよ」
もはや征西部隊は陣の防衛ですら辛うじてできるかできないかという状態だ。
この状況を打破するには、災狐を打倒すか、軍勢を退けるしかない。そして、それはハンター達が居ても簡単に成し遂げられる事ではない。
「……私は、人々を絶望から救う為に、死を渡してきました……でも、それは救いじゃないと知りました」
救われず絶望した人を死を与える事で解放していた。
だが、それは救いではなかった。ただ、人に死ぬ方法を与えているに過ぎなかった。
「本当に、“彼ら”の死に場所は、ここなのでしょうか?」
「“彼ら”がそう望んでいるんだよ。その為に、征西部隊は編成されたのだから」
「私には、紫草様が死ぬだけの部隊を作るとは思えません」
ホープへ目指す途上を通じて希望を見出して欲しかったのではないか。
「まぁ、ハンターを呼ぶかどうかは任せるよ。さっきも言ったように結果は変わらないからね」
「そんな事はありません。必ず、“彼ら”を救ってくれます」
――どんなに高い障害があったとしても。
――どんなに困難な道があったとしても。
――どんなに深い絶望があったとしても。
「なんで、そう言えるのかな? ノゾミ君、教えてよ」
気合や根性で、戦はどうにかなるものでもない。
それを知った上で、なおも言い続ける希に苛立ちを覚える。
挑発するような牡丹の口調と視線に対し、希は堂々と胸を張って答えた。
「それは、あの方達が――『ハンター』だからです」
リプレイ本文
●
征西部隊の陣地に到着したハンター達は状況を確認し其々が持ち場へと移動しようとしていた。
ヴァレンティーニ家の双子のハンターが、鳴月 牡丹(kz0180)とすれ違ったのは、そんな時であった。
ピタっと先を止めた姉に従って足を止めたコントラルト(ka4753)。言葉を発したのはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)だった。
「怖いんだろう? “彼ら”に、情が湧いて、また失った時が」
その台詞に牡丹も足を止めた。
お互い振り返りもせずに背を向けたまま。
「結局、貴方は死んで欲しくないんだ。僕の為に、『死なないで』位言い放ってみなよ?」
「そんな台詞は力の無いヒロインが言えば良いんだよ」
「まぁ、いいさ。私は勝手に助ける」
「そうかい」
それだけ返事して立ち去る牡丹に、アルトは強い口調で言った。
「設定された目的地の名前の意味を考えてみると良い」
去って行った牡丹をコントラルトは振り返って見送る。
「……行きましょう、アルト」
自分達にしかできない事を。
双子は戦場に向かって再び歩み始めた。
●
ラジェンドラ(ka6353)が陣を横断している時、偶然にも紡伎 希(kz0174)と鉢合わせした。
手を挙げると希は丁寧に頭を下げる。
「ノゾミの嬢ちゃん。前に話をしていた時より、良い顔をしているな」
「そうです、か?」
頭を撫でようとした手をラジェンドラは止めた。
「悪い。あまり話した事の無い、女の子にする事じゃないかったな」
「不思議とラジェンドラさんには親近感がありますけど」
微笑を浮かべた希。
少女の耳飾りが揺れ――バッと希を後ろから現れた小鳥遊 時雨(ka4921)が抱きついた。
「ノゾミはどーする? ノゾミだって『ハンター』でもあるっしょ」
「時雨さん……はい! 私も『ハンター』ですから!」
その返事と表情を見て時雨は何度も頷いた。
「一緒にいこっか。“生きる”為に……皆とっ!」
二人の少女が手をしっかりと握り合う。
その様子を見守っていたラジェンドラに空耳のような声が聞こえた……気がした。
『成長、しましたね』――と。
髪を軽く掻き、ふと、誰かの視線を感じた。
「……やっぱり、どこかで見たような……ロリコンじゃない、みたいだけど」
視線の主はアルラウネ(ka4841)だった。
彼女も希と時雨の様子を見守っていたのだが、それよりもラジェンドラの雰囲気になにか感じたようだった。
ぐいっと谷間が見えるように覗き込んで迫るアルラウネに「気のせいだ」と言いながら視線を外すラジェンドラ。だが、その先にも豊かな双丘が。
「私の魅力とルンルン忍法を駆使して、先行部隊に追い付いて一緒に戦えるよう説得しちゃいます!」
いつも通りに胸をドーンを揺らしルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が宣言していた。
「……大きいのが好み?」
「いや、そういう訳じゃないが……」
ヒソヒソと話す二人を無視し、ルンルンの決意の言葉は続く。
「色んな想いがあると思うけど、無茶な事してお別れなんて嫌だもの!」
思いっきり符を掲げた。
ちなみに「にんじゃてれかぁ♪」と名付けられた口伝符は既に配布済みだ。
「さぁ、いきましょう!!」
飛び切り元気なルンルンの様子に――正確にいうと胸に――時雨と希が嫉妬混じりの視線を向けていたその時、リア充なりたてのハンターが二人現れた。
ヴァイス(ka0364)とアニス・エリダヌス(ka2491)の二人だった。
希の頭をヴァイスはワシャワシャと撫でた。
「正念場だ……気合を入れていくぞ」
「はい! ヴァイス様!」
しっかりと返事をした希の瞳に宿る力を見てヴァイスは力強く頷いた。
一方、希は視線をアニスに向ける。それに気がついてヴァイスは顔を赤くしながら“彼女”を紹介した。
「彼女は、共に歩む、俺の大切な人だ」
「アニス・エリダヌスです。よろしくお願いします」
丁寧な物腰と真剣な表情を湛えたアニスの自己紹介。
一方のヴァイスは自分の事ではないのに顔が赤い。
「ヴぁっくん、真っ赤だよ」
「そ、そんな事はない!」
必死な彼の姿に場の雰囲気が和んだ。
アニスも微笑を浮かべた。女性が苦手な彼の反応もそうだが、希のように親しい人もいるという意外な一面が見れたからだった。
そこへ、ニタりと笑った牡丹が姿を現した。
「困ったね。ノゾミ君は行っちゃダメだよ」
「牡丹様……私は『ハンター』でもありますから」
意を決した希の言葉。
二人の視線がぶつかり合った。
さっと、アニスが前に出て遮る。
「例え、如何な理由があろうと……未来を、ここで諦めさせたりはしません!」
「これは、“彼ら”の問題なんだけどな」
「暗い過去を超えた未来には、希望があるとお伝えしたいです。自分達がそうだったように……」
ハンター達の強い想いに牡丹は一瞬険しい表情を浮かべた。
「どうしても“彼ら”の花道の邪魔に行くというのなら、ノゾミ君だけは置いて行ってもらおうか」
牡丹が一歩進んだ時だった。
「おっと。ボタンよ。待つのじゃ」
「牡丹さん、話し合いの続きです」
二人の巫女ハンターが割って入った。
巫女の目配せに応じ、希とハンター達は先行した征西部隊を追いかけに駆け出した。
●
(阿呆の躾は、婆の仕事かのぅ……ま、一人でヤる訳ではないが)
ニヤっと笑った星輝 Amhran(ka0724)が牡丹の正面に立つ。
「いい加減にしたらどうじゃ、ボタンよ」
「それはこっちの台詞だよ。ノゾミ君は僕の妹分だから、止めなきゃいけない立場なんだよ」
「妹と言うのは、イスカと、ノゾミもそうなのでのぅ。生きるというのは、時として死ぬより辛いモノ……お主も立場が有るなら、生き地獄を踏み征け!」
捨て台詞を吐いて走って立ち去る星輝。
変わって、Uisca Amhran(ka0754)が牡丹の前に立ち塞がった。
「ノゾミちゃんに、言う事を聞かせたいなら倒してみろ、みたいな事言ったそうですね」
「言う事聞かないなら、聞かせるしかないと思わないかい?」
牡丹の返事に小さく溜息をついてからUiscaは杖を構えた。
「……それなら、そうさせてもらいます」
強烈なマテリアルを噴出した牡丹とUiscaの二人が対峙した。
その様子に周囲に居た征西部隊の隊員らが集まる。どうしたものかと困っている様子だ。
「色々不安要素ありすぎまちゅ。せめて、軍として統率とれてれば他に手もありまちたけど」
隊員らに紛れて北谷王子 朝騎(ka5818)が顔をぴょこっと出しながら言う。
率いている牡丹に統制の意思があればもう少し違った展開だったかもしれない。
「いくら強くても、将として隊を統率できなければ3流でちゅ」
その言葉が牡丹に聞こえていたようで、殺気だけで殺されそうな視線を向けられ、小さな悲鳴を上げる朝騎。あらかじめ、隠れ場所として希のスカートの中と思っていたが、肝心の希の姿は既に無かった。
「隠れる所がないでちゅ!」
さっと近くに居たGacrux(ka2726)の背後に隠れた。
そのGacruxは真剣な表情で牡丹へ訊く。
「『花道』とは、即ち『死に様』か?」
「そう受け取って貰って構わないよ」
牡丹の返事にGacruxは両手を広げて周囲を見渡す。
「それは、侍にとって特別な意味を持つものか? それとも、“彼ら”のプライドですか?」
「“彼ら”にとって、意味のある事だよ」
「……今、隊が動けば、災狐討伐を果たし歪虚勢力を退ける好機……この機会を、隊長自らが、みすみす見逃しますか?」
ハンター達と征西部隊全軍でもって当たれば勝利できる可能性が高い。
「僕の目的は西に行く事だからね」
どこかあっさりとした牡丹の言葉。
そして、正面に立つUiscaを睨むと拳を構えた。
一瞬の間。双方が同時に動いた。
「私の妹分を傷つけたお礼です」
Uiscaから放たれた光の波動を諸共せず、牡丹の強烈な蹴りが放たれる。それを盾で受け止めるUisca。
衝撃に隠れながら手品で隠しておいたビールの栓を抜き――牡丹の顔へ放った。
難なく避けようとした牡丹に対し、死角からワイヤーが伸び、その動きを妨害する。回り込んでいた星輝の仕業だ。
噴水のようなビールの飛沫で視界を奪われた牡丹に対し、Uiscaはマテリアルを高めながら会心の一撃を叩き込んだ。
「どんな事をしても諦めず勝とうとした私達の勝ちです!」
だが、その一撃は届かなかった。
瞳を閉じながらUiscaの攻撃を避け、ワイヤーを引っ張り星輝を引き込むと後ろ回し蹴り――からのUiscaへ強烈な連打。
トドメは、吹き飛んだUiscaに向けて星輝を投げつけた。
「つ、強いです……」
「どんな、チートじゃ……」
牡丹の拳から放たれた追撃のマテリアルの衝撃波を二人掛りで辛うじて受け流した。
周囲の征西部隊の隊員もハンター達も静まり返る。
希を追いかける為に牡丹は踵を返す。そこへ龍崎・カズマ(ka0178)が居たのは偶然だった。
「……牡丹」
陣地でボーとしているというからデコピンでも入れて説得しようかと思っていたのに、この惨状である。
「カズマ君も邪魔するなら容赦しないよ」
「犬死を花道っては、云わないんじゃねえのか?」
「……僕や“彼ら”の闇や絶望を犬死に見て欲しくはないね」
どうやら、説得は通じない様子だ。
カズマは拳を力強く握った。勝てる相手ではないのは分かっている。だが、この女将軍に言っておかなければならない事があるからだ。
「抱えた闇とか知るか! そもそも、思いの多寡を比較なんぞできるか。闇に向き合って進むしかねえんだよ!」
「なら、邪魔をするなって言ってる!」
間合いを一瞬で詰めた牡丹の強烈なストレートを辛うじて受け止めるカズマ。
だが、止められたのはそれだけだ。続く連打を捌ききれず、全身に拳が叩き込まれる。
「皆、逝くんだ! それを妨げるな!」
宙を切り裂く拳がカズマの胸を直撃した。
一歩二歩と後ろに下がったが、彼は倒れない。叫びにも似た言葉を胸を抑えながら発した。
「……生き……残っちまったら……自身に、その価値が、あるんだって……証明し続けるしかねえんだよ!」
「五月蝿い! 倒れろ!」
電光の如く突き出される拳を――カズマは今度こそしっかりと受け止め、カウンターを叩き込む。
「死んだ奴が笑って誇れるように!」
「死んだら笑わない! 消えるだけだ!」
「だったら、なんで、『楽しめたかな』と、言った!?」
牡丹は二度ほど陣地で騒ぎを起こしている。
食べられない料理を振舞ってみたり、無駄に陣地を荒らしてみたり。それらは――。
「本当は死んで欲しくないと思っているからだろ! 居なくなる事が怖いのじゃねぇか!」
「黙れ! 黙れぇぇ!」
牡丹の拳が的確にカズマの顔面に入る。
吹き飛ばされたカズマは地に伏せたまま起き上がる様子はない。
身体の埃を払い、牡丹は大きく息を吐きながら周囲の隊員を見渡す。
誰もが牡丹を見つめていた。
「……貴重な戦力のハンターを3人も僕がダメにした。ハンター達の代わりに戦うよ」
異論を唱える隊員が居るはずがない。
すぐに出陣の支度が始まる。
「とんだツンデレなのでちゅ」
朝騎が挑発するような笑顔を向けながら、そんな言葉を呟いた。
再び牡丹からの殺人光線を思わせる視線が向けられ、悲鳴と共に隠れる場所を探し――ちょうど良い所にリンカ・エルネージュ(ka1840)が居たので彼女の背後に回った。
「ここで、死んでも、そこに救いなんてものありはしない」
怪我をして弱っている兵士にポーションを飲ましながら隊員らに声を掛ける。
「心中させる気も、それに付き合う気もないよ! しゃきっとする!」
バンっと兵士の背中を思いっきり叩いて活を入れるリンカ。
容赦ないが、リンカの爽やかな笑顔に仕方ないといった様子で頷く兵士達は頷いた。
ハンター達の行動や言葉が“彼ら”の心に響いたのだろうか。
「これで、作戦成立です。後は間に合うかどうかですね……」
Gacruxが仲間のハンターから手渡された符を手に取った。
●
林の中に居たクリスティン・ガフ(ka1090)は雑魔を仕留めた。
先程まで樹の上で矢を放っていたが今は地上だ。
「思った以上に広く布陣していないな」
征西部隊の陣地へと向かって来る災狐の軍勢は一つの塊のようであった。
前回、災狐の軍勢に相当なダメージを負わせたと聞いた。その事が関係しているのかもしれない。
「貴様らはこれ以上進ませない」
愛刀を構え直した。
戦いはこれからが本番だ。チラリと振り返り、森へ視線を向ける。
そこでは、仲間のハンター達が先行していた征西部隊を説得しているはずだからだ。
先行した瞬とゲンタの部隊に、駆けつけたハンター達が合流していた。
そんな中、パシンと頬を叩く乾いた音が響いた――シェルミア・クリスティア(ka5955)が、名誉の為と繰り返す瞬の頬をひっぱたいた音だった。
「戦果を挙げても戦って死んだら、名誉を取り戻せると思ったら大間違い。未来を閉ざす事に逃げているだけ」
「……お前に、構われる理由はねぇ」
絞り出したような瞬の台詞に、彼の胸元の襟をシェルミアは力強く掴んだ。
「……名誉よりも他者の未来を望んで汚名を着る事を選んだ人から、私は託された」
いつか自分が倒される日が来ると覚悟を決めた人が居た。
不名誉を知っての上で、それでも未来を信じて。
「死にたがりの部隊だって死なせない。わたしが託された未来は、そんな人達だって生きていなきゃ作れない!」
「……」
瞬は神妙な顔でシェルミアの手を掴んで外した。
「……うるさい女だ。とりあえず、此処では死ななければいいだろう」
そういう意味じゃないと口にしようとしたシェルミアだったが、言うの止めた。
瞬の表情を見れば分かる。あれは、勝って生き残る戦士の目だ。
静まり返った先行部隊の面々。一点を見つめている者、項垂れている者、周囲の様子を伺っている者、様々だ。
そこへ、ロジャー=ウィステリアランド(ka2900)の独り言が流れた。
「正直、あんたらが腹に抱えてるモンは、俺には分からないし、それを捨てろと言うつもりもない」
色々な理由があって此処にいるのだろう。
「それでも、絶望せずにこの世界の為に戦ってくれている連中が居るんだ」
森の中から見上げた空は、周囲の緑に際立って青かった。
今日も此処だけではなく、この世界のどこかで戦っているのだろう。
「それ考えたら、俺らがやけっぱちになる訳にはいかんでしょ?」
ロジャーはライフルを掲げた。そして、苦笑を浮かべ自嘲気味に続ける。
「……あー。柄にもないこと言っちまった……所詮、俺はモブハンターよ……」
フッと鼻で笑い、最前線へと赴く為に立ち上がった彼の肩を、おっさんの兵士が叩いた。
「モブなんかじゃねぇよ。誰かの為に命掛けられる奴はよ」
そのおっさん兵士の後ろの兵士らも頷いていた。
兵士らに緑色の鉢巻きを配っていたのは希と時雨の二人だった。
未来へと繋ぐ為に、ハンターが発案したものだ。身につけてない兵士へと直接渡していく。
「“分かる”よ。覚悟決めて、挑んで、それなのに……って」
手にした鉢巻きを見つめたまま時雨が重く呟いた。
そして、自身がまだ鉢巻を巻いていない事に気がつき――付ける。
「私も同じ……だから。全部吹っ切れないし。まだ抱え込んでるトコあるけど……それでも」
鉢巻をギュッと締め戻る手が鶴の形の耳飾りに触れた。
大切な人、心配してくれる人、一緒に歩む人、多くの人が頭の中を過ぎる。
「想ってくれて、託されて……バツ悪いのも同じ。“皆”にごめんは一緒したげる」
まだ鉢巻をしていない兵士に強引に手渡した。
「だから……今は、さ?」
「時雨さん。私の方は渡し終わりました」
ちょうど希が戻って来た。
その表情は、あの塔での時に見せた、雰囲気だった。
「なーんか、置いてけっぽりみたいなのよねー」
時雨と希の様子に、少し拗ねた感じでアルラウネが言う。
「でも、なんだか、良い方向に進んでいそうだから」
両手を広げて二人を引き寄せた。
ここまで色々とあり過ぎた。運命の糸というものがあるのであれば、いつ切れてしまうか分からない程か細い程に。
「アルラウネ様は鉢巻きしないのですか?」
「し、してるよ? ほら、緑色だから同化しているのよね」
言い訳するように惚けるアルラウネに希は頬を膨らませた。
「変に誤魔化さないで下さい」
「それじゃ、確かめないと」
時雨がニヤリと笑った。
「そこは頭じゃないわよ~」
パッと離れたアルラウネに、二人の少女が両手をわしゃわしゃしている。
3人が歓声をあげて森の中を駆け出した。
重々しい空気が変わりつつある中、ルンルンが声を張り上げる。
「まだまだ、みんな、やることがあるんだからっ!」
ルンルンが張り切る度に胸が凄い事になっている。
あんなに揺れて大丈夫かと不安になる者も――居るかもしれない程に。
そんな状況だとは微塵も感じていないであろうルンルンは美しく白い腕をビシっと西へと向けた。
「災狐やっつけて、それから、皆でGOウェストです!」
その宣言を聞いていた兵士らは、西の方角を見つめた。
なにかが見える訳ではない。森がまだ続いているだけど。
「GOウェスト……変な言葉だな」
「あぁ……だが、行ってみるのもいいかもな」
兵士らは武器を各々手に取るのであった。
西へ――希望の大地へ至る為に。
説得は成った。
ハンター達の想いは、確かに先行した征西部隊の隊員らに届いた。
別の依頼で重体を負った連城 壮介(ka4765)は無理な行軍で体力が底を付き、大木に寄りかかるように崩れた。
「この世に……特に、東方に生まれたならば……」
孤独に絶望の中で戦い続けた。多くの人、大切な人達が、逝った人も多いだろう。
「残った貴方達は……貴方達の大切な者達が全力で生きた結果です」
だから――手抜きは駄目だと、言いましたよ。
「残りたくはなかったかもしれません。しかし、残ってしまった。後は貴方達に託されたのです……」
ドサっと音を立てて地に伏せる。
その音に征西部隊の兵士らが気がついた。
「……出来れば生きてほしいですね。そうすれば、俺も命を賭けた甲斐があります」
「おい、しっかりしろ!」
「……本陣に戻ります」
とても戻れるような状態ではない。無茶を承知で先行部隊を追いかけたのだ。
兵士達はお互いの顔を見合わせる――自分達の敗北は、命を掛けてここまで来た若者の死を意味すると。
●
マテリアルの炎が天を突き刺すかのような剣に成り一面を払った。
コントラルトが放っていた機導術であり、範囲内に居た雑魔らが消滅していく。
「今ので最後よ、アルト」
「分かった。一時、森へと退こう。どうやら、先行部隊の方は戦いが始まったようだし」
微かに聞こえる戦いの音。
「個人的には、死にたければ自由だけれど。その死は、誰が背負うのかしらね?」
「征西部隊でいうなら、牡丹……かな」
「誰よりも、死んでほしくないくせに」
そう言いながらコントラルトは拳銃を取り出した。
スキルを撃ち尽くしたが戦いは終わった訳ではない。
「強いと、色々と思う事がある――かもしれないな」
「それじゃ、アルトも?」
アルトはつい先ほどまで何十体もの雑魔を切り捨てた愛刀を掲げ、微笑を浮かべた。
●
瞬率いる先行部隊が森へと迫った災狐の軍勢と戦い始めた頃、反対側の北西に征西部隊が現れた。
本隊ではない。正秋が率いる部隊だ。ハンター達の作戦に応じての事だった。
「瞬殿は正秋殿の友。正秋殿自身、言いたい事もあろう……」
銀 真白(ka4128)が言う通りに正秋にとって瞬は大事な友だ。
彼の心中を察して真白は肩を叩いて言った。
「殴ってもいいと思うぞ」
「は、はい」
「簡単には死なせない。我らとどちらの意地が勝つかだ」
真白の言葉に深く頷く正秋。
七葵(ka4740)も正秋の肩に手を置いた。
「災狐を討つには、多くの力が必要。その前に多くの命が潰えては意味がない」
作戦では三方から災狐軍に攻勢を掛ける事となっている。
周囲の兵士らにも見渡しながら、七葵は呼びかけた。
「炎や倒木、敵により分断されないように注意は必要だ。図体のでかい敵には、木立へ誘い動きを鈍らせた所を突く!」
七葵の言葉に歓声をあげて応える正秋隊の面々を眺めながらドロテア・フレーベ(ka4126)は柔らかい笑みを浮かべていた。
「お友達が関わってるから手伝いに来たけれど。来た甲斐があったみたいね」
正秋が率いる部隊は、死にたがりと聞く征西部隊の中でも違う雰囲気だった。
それは、『お友達』らが必死に呼びかけ続けた結果なのだろう。
「死ねば何も成らない。あたしは、あたしのできる限りの事をする迄よ」
ウィップと共に伝話を手に持つ。
数の上では圧倒的に不利な状態なのに、さらに三方に戦力が分かれているのだ。
これ以上の分断は怖い所である。その為、連携を取る為にも通信は欠かせない。
「ハンターだけじゃ成し得ない」
ミィリア(ka2689)が正秋隊の面々よりも最前線へと立った。
「皆の、それこそ命を賭してでもと固めてきた強い意志が必要で……ござる!」
緑色の鉢巻きが桃色の髪に映える。
「勝利、そして、未来その先に……!」
人は、命と挫けぬ心がある限り何度だって立ち向かっていける。
戦闘開始だ。ミィリアらハンターを先頭に、正秋と兵らが怒号を響かせて突撃した。
炎を吐く犬のような姿をした雑魔が、炎の爆発によって吹き飛ばされる。
「絶望して死に場所を求めて……残された人の気持ちが最もわかるはずのに……」
レイレリア・リナークシス(ka3872)が放っていたファイアーボールだ。
炎の属性だが、全く以て通じない――という訳ではない。威力が減少するがそもそも高威力であればダメージを与える事はできる。
「牡丹様は、何故、それを強いるのでしょうか?」
『女将軍』と呼ばれる程の強さを持つ者なのに。
立て続けに放つファイアーボールは、正秋隊を迎撃しようとした敵の先鋒の一角を打ち砕く。
これで容易に突撃ができる筈だ。
「死にたいと思うのは自由だ。なら、死なせたくない、と思うのも、また自由だろうな」
刀を振るって鞍馬 真(ka5819)が淡々と言った。
各隊からの連絡が入る。好機は今のみだ。
「重視するのは“彼ら”の生存。その為には多少の無茶もする」
爆発で空いた隙に素早く身体を突出させる。
「あれが……災狐か」
軍勢の中に、一際大きい巨大な黒い犬のような歪虚が見えた。
「災狐の撃破を援護する!」
真は体内のマテリアルを燃やし輝かせた。
自らが囮となって血路を開こうとしているのだ。
「今度は威力不足という訳にはいかせません」
正八角形の盤を高々と掲げ、意識を集中させるレイレリア。
「……炎よ、森羅万象を灰燼と帰す絶対なる力となり、あらゆるものを焼き尽くせ!」
突出した真を掠めるような範囲ギリギリで放った炎球の魔法。
爆発が収まらない内に、一つの影が前に進んだ。
クリスティンだった。隊と合流し、敵という敵を斬り刻んでいる。
「災狐まで距離はある。だが――」
軸足をグッと踏み込み態勢を整えつつ方向転換。背側から迫る雑魔を薙ぎ払った。
しかし、それも束の間、圧倒的な数で迫る災狐の軍勢。
「――届かないという訳ではない。天剣絶刀、押して参る!」
ハンター達の奮戦により開いた血路に、正秋隊は深く突き刺さった楔のように災狐へと突撃した。
●
牙を剥く雑魔を斬り落とし、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は乱戦の中に居た。
先に攻撃を開始した瞬部隊は損害が激しい。
「私が、やろうとしてる事は、きっと『莫迦』な事かもしれない……」
兵士らを守りながら敵を倒すという事を意識しながら戦うのは難しい。
「それでも……断ち切ると決めたんだ。絶望も、悲しみも全部……」
敵の目を惹きつけるマテリアルを発した。
美しいく映える騎士の姿に、容赦なく雑魔の群れが襲いかかってくる。
「だから、イチガイ、ジロウ、サブロウ……その為に、力を貸して!」
青白いマテリアルの輝きを発して群れへと踏み込むと愛刀を振るった。
その勢いか、あるいは、なにか力が働いたのか、ユーリへの攻撃は届かない。
「死ぬ為に戦うのではなく、自分達の様な人間を増やさない為に……」
切り落とした雑魔の身体を踏み付けながら先行部隊の兵士らを振り返った。
「今在る悲しみと絶望を断ち切る為に戦いなさいっ!」
マテリアルの輝きが三角形を描き、各頂点から機導術の光が放たれる。
「死ぬ気で戦うのはいい……だが、死ぬ為に戦うな」
ラジェンドラも他のハンター達同様、最前線に出ていた。
(残された奴には、残した奴の想いを継いでいかなくちゃいかないんだ)
その為には這ってでも前に進まないといけない。
ハンター達の想いは通じた。後は、戦って生き延びるだけだ。
「無謀な突撃はするな! 連携して仲間を信じろ!」
大声で叫ぶヴァイス。彼は常に最前線で仲間のハンターや兵士らの動きを把握していた。
いつもなら、急に囲まれないように自身の背後も気にするが、今日は違った。勝利の女神が居るのだから。
「ヴァイスさん、共に、歩みましょう……今度は、わたしが支える番です」
アニスが赤髪のハンターの背を守っていた。
状況に応じ、攻守の魔法で援護する。
必要であれば、直接、聖剣を振るった。
その時、これまでに増して唸るように迫ってくる災狐の軍勢。
増援が来る前に各個撃破しようというつもりなのかもしれない。それは逆に言えば、耐え抜けば勝利を呼び込む事ができる可能性もあるという事だ。
「諦めるな! 最後まで抗うぞ!」
戦士の叫びが戦場を震わせた。
●
「まだです。ここで、まだ止める訳にはいかない」
幾体もの雑魔を倒したが、真は止まる事なく刀を振るい続ける。
敵の中に突撃した正秋隊の退路は残しておかなければならない。必死にもなる。
「押されているのは確かですが、こちらこそ、まだまだです」
レイレリアは魔法を唱え続けている。
その時、大きな歓声が戦場に響いた。それも一人二人ではない。何十人もの歓声だ。
「炎に消えゆ……なんてさせないんだからー!」
真っ先に飛び出して来たのはリンカだった。
剣に青白い炎を灯し、敵の攻撃を受けると氷嵐の魔法を放つ。
「……氷よ、切り裂く氷の嵐となり、全てを凍てつかせて!」
魔法で動きが鈍くなった所に稲妻が駆ける。
朝騎が木の上から撃った符術だ。
頭上へ意識を向ける事ができれば、その分地上での有利かと思っての事だ。
「予測済みでちゅよ」
飛翔する雑魔の攻撃を飛び降りて回避。
予め打ち込んでいた方のアンカーを操作して別木へと移った。
「次を撃つでちゅ!」
投げ放った符から再び稲妻が迸った。
●
戦場の空気がガラリと変わった――ドロテアは、それが意味する事がすぐに理解できた。
牡丹率いる本隊が突撃してきたのだろう。各方面からの攻撃は、伝達不足で若干のズレが生じていたが、そのズレこそが相手の動きを翻弄しているように彼女は感じた。
今なら――行ける。友の刀が届くはず。
「さあ、反撃の時間よ!」
幹や木の上で身を隠しながら戦っていたが、もはやその必要はない。
本隊の突撃を伝えつつ、友達の進む道を支援する。
「災狐というのに、キツーい一発、入れて来なさい」
「ドロテア殿、感謝する」
「行ってくる。ドロテア殿も気をつけてくれ」
真白と七葵は感謝の言葉を告げると正秋と共に駆け出した。
災狐側とて無能ではない。迫ってくる人間達に対して壁を作った。
「推して通る! で、ござる!」
盾を構えて壁を突き破るミィリア。
災狐が見えた。
「人間の分際で!」
災狐は焦っていた。よもや、この様な結末を迎えるとは思っても居なかった。
矢鳴文の名を出した人間も居た。十鳥城の件を追いかけている者もいる以上、自分が狙われていると悟った。
「だが、簡単にはやられないぞ!」
迫ってくる人間に対し炎を吐いた。
それを白侍が盾で受け流す。広がった炎を突き破り、二人の侍が迫る。
左右に分かれた――手の甲が光っている侍を足で払う。その背後に、もう一人、別の侍が控えていた。
「今こそ!」
「正秋殿!」
真白と七葵の声に推され、正秋の刀が深々と災狐へと突き刺さった。
勢い余って根元から刀が折れる。バランスを崩して地に倒れた正秋に対し災狐は足を踏み下ろした。
「させないで、ござる!」
割って入ったのはミィリアだった。災狐の足を跳ね除ける。
追撃しようとする災狐だったが、周囲から無数の矢や魔法が襲いかかり、このままだと危険だと判断した。
総力戦になれば勝てるだろう。だが、自分も唯では済まないかもしれない。
「これで、勝ったと思うなよ人間共! 我が兄、蓬生に、貴様らは真の絶望を知るといい。そして、後悔しろ! ここで死んでおけば良かったとな!」
負け犬の遠吠えのような叫び声を上げ――災狐は部下を盾にして逃げ出したのであった。
●65⇒55
戦闘は集結した。
逃げ出した災狐を討つ事はできなかったが、統率を失った軍団は壊滅させた。
それでも、征西部隊に被害が全く無いという訳ではない。
Gacruxは戦死した兵士らを弔っていた。“彼ら”は、彼らなりに辿り着いた想いの先に居たはずだ。
彼は、ただ――侍の死には、畏敬の念を払いたいと思った。
「見事な、最期でした」
風が西へと向けて吹いた。
災狐の軍勢との戦いは、熾烈を極めたが、ハンター達と征西部隊が勝利した。
深手を負った災狐は何処かへ逃げ去り、軍勢は壊滅。征西部隊は、西へと向けて再び歩みだした。
おしまい
征西部隊の陣地に到着したハンター達は状況を確認し其々が持ち場へと移動しようとしていた。
ヴァレンティーニ家の双子のハンターが、鳴月 牡丹(kz0180)とすれ違ったのは、そんな時であった。
ピタっと先を止めた姉に従って足を止めたコントラルト(ka4753)。言葉を発したのはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)だった。
「怖いんだろう? “彼ら”に、情が湧いて、また失った時が」
その台詞に牡丹も足を止めた。
お互い振り返りもせずに背を向けたまま。
「結局、貴方は死んで欲しくないんだ。僕の為に、『死なないで』位言い放ってみなよ?」
「そんな台詞は力の無いヒロインが言えば良いんだよ」
「まぁ、いいさ。私は勝手に助ける」
「そうかい」
それだけ返事して立ち去る牡丹に、アルトは強い口調で言った。
「設定された目的地の名前の意味を考えてみると良い」
去って行った牡丹をコントラルトは振り返って見送る。
「……行きましょう、アルト」
自分達にしかできない事を。
双子は戦場に向かって再び歩み始めた。
●
ラジェンドラ(ka6353)が陣を横断している時、偶然にも紡伎 希(kz0174)と鉢合わせした。
手を挙げると希は丁寧に頭を下げる。
「ノゾミの嬢ちゃん。前に話をしていた時より、良い顔をしているな」
「そうです、か?」
頭を撫でようとした手をラジェンドラは止めた。
「悪い。あまり話した事の無い、女の子にする事じゃないかったな」
「不思議とラジェンドラさんには親近感がありますけど」
微笑を浮かべた希。
少女の耳飾りが揺れ――バッと希を後ろから現れた小鳥遊 時雨(ka4921)が抱きついた。
「ノゾミはどーする? ノゾミだって『ハンター』でもあるっしょ」
「時雨さん……はい! 私も『ハンター』ですから!」
その返事と表情を見て時雨は何度も頷いた。
「一緒にいこっか。“生きる”為に……皆とっ!」
二人の少女が手をしっかりと握り合う。
その様子を見守っていたラジェンドラに空耳のような声が聞こえた……気がした。
『成長、しましたね』――と。
髪を軽く掻き、ふと、誰かの視線を感じた。
「……やっぱり、どこかで見たような……ロリコンじゃない、みたいだけど」
視線の主はアルラウネ(ka4841)だった。
彼女も希と時雨の様子を見守っていたのだが、それよりもラジェンドラの雰囲気になにか感じたようだった。
ぐいっと谷間が見えるように覗き込んで迫るアルラウネに「気のせいだ」と言いながら視線を外すラジェンドラ。だが、その先にも豊かな双丘が。
「私の魅力とルンルン忍法を駆使して、先行部隊に追い付いて一緒に戦えるよう説得しちゃいます!」
いつも通りに胸をドーンを揺らしルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が宣言していた。
「……大きいのが好み?」
「いや、そういう訳じゃないが……」
ヒソヒソと話す二人を無視し、ルンルンの決意の言葉は続く。
「色んな想いがあると思うけど、無茶な事してお別れなんて嫌だもの!」
思いっきり符を掲げた。
ちなみに「にんじゃてれかぁ♪」と名付けられた口伝符は既に配布済みだ。
「さぁ、いきましょう!!」
飛び切り元気なルンルンの様子に――正確にいうと胸に――時雨と希が嫉妬混じりの視線を向けていたその時、リア充なりたてのハンターが二人現れた。
ヴァイス(ka0364)とアニス・エリダヌス(ka2491)の二人だった。
希の頭をヴァイスはワシャワシャと撫でた。
「正念場だ……気合を入れていくぞ」
「はい! ヴァイス様!」
しっかりと返事をした希の瞳に宿る力を見てヴァイスは力強く頷いた。
一方、希は視線をアニスに向ける。それに気がついてヴァイスは顔を赤くしながら“彼女”を紹介した。
「彼女は、共に歩む、俺の大切な人だ」
「アニス・エリダヌスです。よろしくお願いします」
丁寧な物腰と真剣な表情を湛えたアニスの自己紹介。
一方のヴァイスは自分の事ではないのに顔が赤い。
「ヴぁっくん、真っ赤だよ」
「そ、そんな事はない!」
必死な彼の姿に場の雰囲気が和んだ。
アニスも微笑を浮かべた。女性が苦手な彼の反応もそうだが、希のように親しい人もいるという意外な一面が見れたからだった。
そこへ、ニタりと笑った牡丹が姿を現した。
「困ったね。ノゾミ君は行っちゃダメだよ」
「牡丹様……私は『ハンター』でもありますから」
意を決した希の言葉。
二人の視線がぶつかり合った。
さっと、アニスが前に出て遮る。
「例え、如何な理由があろうと……未来を、ここで諦めさせたりはしません!」
「これは、“彼ら”の問題なんだけどな」
「暗い過去を超えた未来には、希望があるとお伝えしたいです。自分達がそうだったように……」
ハンター達の強い想いに牡丹は一瞬険しい表情を浮かべた。
「どうしても“彼ら”の花道の邪魔に行くというのなら、ノゾミ君だけは置いて行ってもらおうか」
牡丹が一歩進んだ時だった。
「おっと。ボタンよ。待つのじゃ」
「牡丹さん、話し合いの続きです」
二人の巫女ハンターが割って入った。
巫女の目配せに応じ、希とハンター達は先行した征西部隊を追いかけに駆け出した。
●
(阿呆の躾は、婆の仕事かのぅ……ま、一人でヤる訳ではないが)
ニヤっと笑った星輝 Amhran(ka0724)が牡丹の正面に立つ。
「いい加減にしたらどうじゃ、ボタンよ」
「それはこっちの台詞だよ。ノゾミ君は僕の妹分だから、止めなきゃいけない立場なんだよ」
「妹と言うのは、イスカと、ノゾミもそうなのでのぅ。生きるというのは、時として死ぬより辛いモノ……お主も立場が有るなら、生き地獄を踏み征け!」
捨て台詞を吐いて走って立ち去る星輝。
変わって、Uisca Amhran(ka0754)が牡丹の前に立ち塞がった。
「ノゾミちゃんに、言う事を聞かせたいなら倒してみろ、みたいな事言ったそうですね」
「言う事聞かないなら、聞かせるしかないと思わないかい?」
牡丹の返事に小さく溜息をついてからUiscaは杖を構えた。
「……それなら、そうさせてもらいます」
強烈なマテリアルを噴出した牡丹とUiscaの二人が対峙した。
その様子に周囲に居た征西部隊の隊員らが集まる。どうしたものかと困っている様子だ。
「色々不安要素ありすぎまちゅ。せめて、軍として統率とれてれば他に手もありまちたけど」
隊員らに紛れて北谷王子 朝騎(ka5818)が顔をぴょこっと出しながら言う。
率いている牡丹に統制の意思があればもう少し違った展開だったかもしれない。
「いくら強くても、将として隊を統率できなければ3流でちゅ」
その言葉が牡丹に聞こえていたようで、殺気だけで殺されそうな視線を向けられ、小さな悲鳴を上げる朝騎。あらかじめ、隠れ場所として希のスカートの中と思っていたが、肝心の希の姿は既に無かった。
「隠れる所がないでちゅ!」
さっと近くに居たGacrux(ka2726)の背後に隠れた。
そのGacruxは真剣な表情で牡丹へ訊く。
「『花道』とは、即ち『死に様』か?」
「そう受け取って貰って構わないよ」
牡丹の返事にGacruxは両手を広げて周囲を見渡す。
「それは、侍にとって特別な意味を持つものか? それとも、“彼ら”のプライドですか?」
「“彼ら”にとって、意味のある事だよ」
「……今、隊が動けば、災狐討伐を果たし歪虚勢力を退ける好機……この機会を、隊長自らが、みすみす見逃しますか?」
ハンター達と征西部隊全軍でもって当たれば勝利できる可能性が高い。
「僕の目的は西に行く事だからね」
どこかあっさりとした牡丹の言葉。
そして、正面に立つUiscaを睨むと拳を構えた。
一瞬の間。双方が同時に動いた。
「私の妹分を傷つけたお礼です」
Uiscaから放たれた光の波動を諸共せず、牡丹の強烈な蹴りが放たれる。それを盾で受け止めるUisca。
衝撃に隠れながら手品で隠しておいたビールの栓を抜き――牡丹の顔へ放った。
難なく避けようとした牡丹に対し、死角からワイヤーが伸び、その動きを妨害する。回り込んでいた星輝の仕業だ。
噴水のようなビールの飛沫で視界を奪われた牡丹に対し、Uiscaはマテリアルを高めながら会心の一撃を叩き込んだ。
「どんな事をしても諦めず勝とうとした私達の勝ちです!」
だが、その一撃は届かなかった。
瞳を閉じながらUiscaの攻撃を避け、ワイヤーを引っ張り星輝を引き込むと後ろ回し蹴り――からのUiscaへ強烈な連打。
トドメは、吹き飛んだUiscaに向けて星輝を投げつけた。
「つ、強いです……」
「どんな、チートじゃ……」
牡丹の拳から放たれた追撃のマテリアルの衝撃波を二人掛りで辛うじて受け流した。
周囲の征西部隊の隊員もハンター達も静まり返る。
希を追いかける為に牡丹は踵を返す。そこへ龍崎・カズマ(ka0178)が居たのは偶然だった。
「……牡丹」
陣地でボーとしているというからデコピンでも入れて説得しようかと思っていたのに、この惨状である。
「カズマ君も邪魔するなら容赦しないよ」
「犬死を花道っては、云わないんじゃねえのか?」
「……僕や“彼ら”の闇や絶望を犬死に見て欲しくはないね」
どうやら、説得は通じない様子だ。
カズマは拳を力強く握った。勝てる相手ではないのは分かっている。だが、この女将軍に言っておかなければならない事があるからだ。
「抱えた闇とか知るか! そもそも、思いの多寡を比較なんぞできるか。闇に向き合って進むしかねえんだよ!」
「なら、邪魔をするなって言ってる!」
間合いを一瞬で詰めた牡丹の強烈なストレートを辛うじて受け止めるカズマ。
だが、止められたのはそれだけだ。続く連打を捌ききれず、全身に拳が叩き込まれる。
「皆、逝くんだ! それを妨げるな!」
宙を切り裂く拳がカズマの胸を直撃した。
一歩二歩と後ろに下がったが、彼は倒れない。叫びにも似た言葉を胸を抑えながら発した。
「……生き……残っちまったら……自身に、その価値が、あるんだって……証明し続けるしかねえんだよ!」
「五月蝿い! 倒れろ!」
電光の如く突き出される拳を――カズマは今度こそしっかりと受け止め、カウンターを叩き込む。
「死んだ奴が笑って誇れるように!」
「死んだら笑わない! 消えるだけだ!」
「だったら、なんで、『楽しめたかな』と、言った!?」
牡丹は二度ほど陣地で騒ぎを起こしている。
食べられない料理を振舞ってみたり、無駄に陣地を荒らしてみたり。それらは――。
「本当は死んで欲しくないと思っているからだろ! 居なくなる事が怖いのじゃねぇか!」
「黙れ! 黙れぇぇ!」
牡丹の拳が的確にカズマの顔面に入る。
吹き飛ばされたカズマは地に伏せたまま起き上がる様子はない。
身体の埃を払い、牡丹は大きく息を吐きながら周囲の隊員を見渡す。
誰もが牡丹を見つめていた。
「……貴重な戦力のハンターを3人も僕がダメにした。ハンター達の代わりに戦うよ」
異論を唱える隊員が居るはずがない。
すぐに出陣の支度が始まる。
「とんだツンデレなのでちゅ」
朝騎が挑発するような笑顔を向けながら、そんな言葉を呟いた。
再び牡丹からの殺人光線を思わせる視線が向けられ、悲鳴と共に隠れる場所を探し――ちょうど良い所にリンカ・エルネージュ(ka1840)が居たので彼女の背後に回った。
「ここで、死んでも、そこに救いなんてものありはしない」
怪我をして弱っている兵士にポーションを飲ましながら隊員らに声を掛ける。
「心中させる気も、それに付き合う気もないよ! しゃきっとする!」
バンっと兵士の背中を思いっきり叩いて活を入れるリンカ。
容赦ないが、リンカの爽やかな笑顔に仕方ないといった様子で頷く兵士達は頷いた。
ハンター達の行動や言葉が“彼ら”の心に響いたのだろうか。
「これで、作戦成立です。後は間に合うかどうかですね……」
Gacruxが仲間のハンターから手渡された符を手に取った。
●
林の中に居たクリスティン・ガフ(ka1090)は雑魔を仕留めた。
先程まで樹の上で矢を放っていたが今は地上だ。
「思った以上に広く布陣していないな」
征西部隊の陣地へと向かって来る災狐の軍勢は一つの塊のようであった。
前回、災狐の軍勢に相当なダメージを負わせたと聞いた。その事が関係しているのかもしれない。
「貴様らはこれ以上進ませない」
愛刀を構え直した。
戦いはこれからが本番だ。チラリと振り返り、森へ視線を向ける。
そこでは、仲間のハンター達が先行していた征西部隊を説得しているはずだからだ。
先行した瞬とゲンタの部隊に、駆けつけたハンター達が合流していた。
そんな中、パシンと頬を叩く乾いた音が響いた――シェルミア・クリスティア(ka5955)が、名誉の為と繰り返す瞬の頬をひっぱたいた音だった。
「戦果を挙げても戦って死んだら、名誉を取り戻せると思ったら大間違い。未来を閉ざす事に逃げているだけ」
「……お前に、構われる理由はねぇ」
絞り出したような瞬の台詞に、彼の胸元の襟をシェルミアは力強く掴んだ。
「……名誉よりも他者の未来を望んで汚名を着る事を選んだ人から、私は託された」
いつか自分が倒される日が来ると覚悟を決めた人が居た。
不名誉を知っての上で、それでも未来を信じて。
「死にたがりの部隊だって死なせない。わたしが託された未来は、そんな人達だって生きていなきゃ作れない!」
「……」
瞬は神妙な顔でシェルミアの手を掴んで外した。
「……うるさい女だ。とりあえず、此処では死ななければいいだろう」
そういう意味じゃないと口にしようとしたシェルミアだったが、言うの止めた。
瞬の表情を見れば分かる。あれは、勝って生き残る戦士の目だ。
静まり返った先行部隊の面々。一点を見つめている者、項垂れている者、周囲の様子を伺っている者、様々だ。
そこへ、ロジャー=ウィステリアランド(ka2900)の独り言が流れた。
「正直、あんたらが腹に抱えてるモンは、俺には分からないし、それを捨てろと言うつもりもない」
色々な理由があって此処にいるのだろう。
「それでも、絶望せずにこの世界の為に戦ってくれている連中が居るんだ」
森の中から見上げた空は、周囲の緑に際立って青かった。
今日も此処だけではなく、この世界のどこかで戦っているのだろう。
「それ考えたら、俺らがやけっぱちになる訳にはいかんでしょ?」
ロジャーはライフルを掲げた。そして、苦笑を浮かべ自嘲気味に続ける。
「……あー。柄にもないこと言っちまった……所詮、俺はモブハンターよ……」
フッと鼻で笑い、最前線へと赴く為に立ち上がった彼の肩を、おっさんの兵士が叩いた。
「モブなんかじゃねぇよ。誰かの為に命掛けられる奴はよ」
そのおっさん兵士の後ろの兵士らも頷いていた。
兵士らに緑色の鉢巻きを配っていたのは希と時雨の二人だった。
未来へと繋ぐ為に、ハンターが発案したものだ。身につけてない兵士へと直接渡していく。
「“分かる”よ。覚悟決めて、挑んで、それなのに……って」
手にした鉢巻きを見つめたまま時雨が重く呟いた。
そして、自身がまだ鉢巻を巻いていない事に気がつき――付ける。
「私も同じ……だから。全部吹っ切れないし。まだ抱え込んでるトコあるけど……それでも」
鉢巻をギュッと締め戻る手が鶴の形の耳飾りに触れた。
大切な人、心配してくれる人、一緒に歩む人、多くの人が頭の中を過ぎる。
「想ってくれて、託されて……バツ悪いのも同じ。“皆”にごめんは一緒したげる」
まだ鉢巻をしていない兵士に強引に手渡した。
「だから……今は、さ?」
「時雨さん。私の方は渡し終わりました」
ちょうど希が戻って来た。
その表情は、あの塔での時に見せた、雰囲気だった。
「なーんか、置いてけっぽりみたいなのよねー」
時雨と希の様子に、少し拗ねた感じでアルラウネが言う。
「でも、なんだか、良い方向に進んでいそうだから」
両手を広げて二人を引き寄せた。
ここまで色々とあり過ぎた。運命の糸というものがあるのであれば、いつ切れてしまうか分からない程か細い程に。
「アルラウネ様は鉢巻きしないのですか?」
「し、してるよ? ほら、緑色だから同化しているのよね」
言い訳するように惚けるアルラウネに希は頬を膨らませた。
「変に誤魔化さないで下さい」
「それじゃ、確かめないと」
時雨がニヤリと笑った。
「そこは頭じゃないわよ~」
パッと離れたアルラウネに、二人の少女が両手をわしゃわしゃしている。
3人が歓声をあげて森の中を駆け出した。
重々しい空気が変わりつつある中、ルンルンが声を張り上げる。
「まだまだ、みんな、やることがあるんだからっ!」
ルンルンが張り切る度に胸が凄い事になっている。
あんなに揺れて大丈夫かと不安になる者も――居るかもしれない程に。
そんな状況だとは微塵も感じていないであろうルンルンは美しく白い腕をビシっと西へと向けた。
「災狐やっつけて、それから、皆でGOウェストです!」
その宣言を聞いていた兵士らは、西の方角を見つめた。
なにかが見える訳ではない。森がまだ続いているだけど。
「GOウェスト……変な言葉だな」
「あぁ……だが、行ってみるのもいいかもな」
兵士らは武器を各々手に取るのであった。
西へ――希望の大地へ至る為に。
説得は成った。
ハンター達の想いは、確かに先行した征西部隊の隊員らに届いた。
別の依頼で重体を負った連城 壮介(ka4765)は無理な行軍で体力が底を付き、大木に寄りかかるように崩れた。
「この世に……特に、東方に生まれたならば……」
孤独に絶望の中で戦い続けた。多くの人、大切な人達が、逝った人も多いだろう。
「残った貴方達は……貴方達の大切な者達が全力で生きた結果です」
だから――手抜きは駄目だと、言いましたよ。
「残りたくはなかったかもしれません。しかし、残ってしまった。後は貴方達に託されたのです……」
ドサっと音を立てて地に伏せる。
その音に征西部隊の兵士らが気がついた。
「……出来れば生きてほしいですね。そうすれば、俺も命を賭けた甲斐があります」
「おい、しっかりしろ!」
「……本陣に戻ります」
とても戻れるような状態ではない。無茶を承知で先行部隊を追いかけたのだ。
兵士達はお互いの顔を見合わせる――自分達の敗北は、命を掛けてここまで来た若者の死を意味すると。
●
マテリアルの炎が天を突き刺すかのような剣に成り一面を払った。
コントラルトが放っていた機導術であり、範囲内に居た雑魔らが消滅していく。
「今ので最後よ、アルト」
「分かった。一時、森へと退こう。どうやら、先行部隊の方は戦いが始まったようだし」
微かに聞こえる戦いの音。
「個人的には、死にたければ自由だけれど。その死は、誰が背負うのかしらね?」
「征西部隊でいうなら、牡丹……かな」
「誰よりも、死んでほしくないくせに」
そう言いながらコントラルトは拳銃を取り出した。
スキルを撃ち尽くしたが戦いは終わった訳ではない。
「強いと、色々と思う事がある――かもしれないな」
「それじゃ、アルトも?」
アルトはつい先ほどまで何十体もの雑魔を切り捨てた愛刀を掲げ、微笑を浮かべた。
●
瞬率いる先行部隊が森へと迫った災狐の軍勢と戦い始めた頃、反対側の北西に征西部隊が現れた。
本隊ではない。正秋が率いる部隊だ。ハンター達の作戦に応じての事だった。
「瞬殿は正秋殿の友。正秋殿自身、言いたい事もあろう……」
銀 真白(ka4128)が言う通りに正秋にとって瞬は大事な友だ。
彼の心中を察して真白は肩を叩いて言った。
「殴ってもいいと思うぞ」
「は、はい」
「簡単には死なせない。我らとどちらの意地が勝つかだ」
真白の言葉に深く頷く正秋。
七葵(ka4740)も正秋の肩に手を置いた。
「災狐を討つには、多くの力が必要。その前に多くの命が潰えては意味がない」
作戦では三方から災狐軍に攻勢を掛ける事となっている。
周囲の兵士らにも見渡しながら、七葵は呼びかけた。
「炎や倒木、敵により分断されないように注意は必要だ。図体のでかい敵には、木立へ誘い動きを鈍らせた所を突く!」
七葵の言葉に歓声をあげて応える正秋隊の面々を眺めながらドロテア・フレーベ(ka4126)は柔らかい笑みを浮かべていた。
「お友達が関わってるから手伝いに来たけれど。来た甲斐があったみたいね」
正秋が率いる部隊は、死にたがりと聞く征西部隊の中でも違う雰囲気だった。
それは、『お友達』らが必死に呼びかけ続けた結果なのだろう。
「死ねば何も成らない。あたしは、あたしのできる限りの事をする迄よ」
ウィップと共に伝話を手に持つ。
数の上では圧倒的に不利な状態なのに、さらに三方に戦力が分かれているのだ。
これ以上の分断は怖い所である。その為、連携を取る為にも通信は欠かせない。
「ハンターだけじゃ成し得ない」
ミィリア(ka2689)が正秋隊の面々よりも最前線へと立った。
「皆の、それこそ命を賭してでもと固めてきた強い意志が必要で……ござる!」
緑色の鉢巻きが桃色の髪に映える。
「勝利、そして、未来その先に……!」
人は、命と挫けぬ心がある限り何度だって立ち向かっていける。
戦闘開始だ。ミィリアらハンターを先頭に、正秋と兵らが怒号を響かせて突撃した。
炎を吐く犬のような姿をした雑魔が、炎の爆発によって吹き飛ばされる。
「絶望して死に場所を求めて……残された人の気持ちが最もわかるはずのに……」
レイレリア・リナークシス(ka3872)が放っていたファイアーボールだ。
炎の属性だが、全く以て通じない――という訳ではない。威力が減少するがそもそも高威力であればダメージを与える事はできる。
「牡丹様は、何故、それを強いるのでしょうか?」
『女将軍』と呼ばれる程の強さを持つ者なのに。
立て続けに放つファイアーボールは、正秋隊を迎撃しようとした敵の先鋒の一角を打ち砕く。
これで容易に突撃ができる筈だ。
「死にたいと思うのは自由だ。なら、死なせたくない、と思うのも、また自由だろうな」
刀を振るって鞍馬 真(ka5819)が淡々と言った。
各隊からの連絡が入る。好機は今のみだ。
「重視するのは“彼ら”の生存。その為には多少の無茶もする」
爆発で空いた隙に素早く身体を突出させる。
「あれが……災狐か」
軍勢の中に、一際大きい巨大な黒い犬のような歪虚が見えた。
「災狐の撃破を援護する!」
真は体内のマテリアルを燃やし輝かせた。
自らが囮となって血路を開こうとしているのだ。
「今度は威力不足という訳にはいかせません」
正八角形の盤を高々と掲げ、意識を集中させるレイレリア。
「……炎よ、森羅万象を灰燼と帰す絶対なる力となり、あらゆるものを焼き尽くせ!」
突出した真を掠めるような範囲ギリギリで放った炎球の魔法。
爆発が収まらない内に、一つの影が前に進んだ。
クリスティンだった。隊と合流し、敵という敵を斬り刻んでいる。
「災狐まで距離はある。だが――」
軸足をグッと踏み込み態勢を整えつつ方向転換。背側から迫る雑魔を薙ぎ払った。
しかし、それも束の間、圧倒的な数で迫る災狐の軍勢。
「――届かないという訳ではない。天剣絶刀、押して参る!」
ハンター達の奮戦により開いた血路に、正秋隊は深く突き刺さった楔のように災狐へと突撃した。
●
牙を剥く雑魔を斬り落とし、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は乱戦の中に居た。
先に攻撃を開始した瞬部隊は損害が激しい。
「私が、やろうとしてる事は、きっと『莫迦』な事かもしれない……」
兵士らを守りながら敵を倒すという事を意識しながら戦うのは難しい。
「それでも……断ち切ると決めたんだ。絶望も、悲しみも全部……」
敵の目を惹きつけるマテリアルを発した。
美しいく映える騎士の姿に、容赦なく雑魔の群れが襲いかかってくる。
「だから、イチガイ、ジロウ、サブロウ……その為に、力を貸して!」
青白いマテリアルの輝きを発して群れへと踏み込むと愛刀を振るった。
その勢いか、あるいは、なにか力が働いたのか、ユーリへの攻撃は届かない。
「死ぬ為に戦うのではなく、自分達の様な人間を増やさない為に……」
切り落とした雑魔の身体を踏み付けながら先行部隊の兵士らを振り返った。
「今在る悲しみと絶望を断ち切る為に戦いなさいっ!」
マテリアルの輝きが三角形を描き、各頂点から機導術の光が放たれる。
「死ぬ気で戦うのはいい……だが、死ぬ為に戦うな」
ラジェンドラも他のハンター達同様、最前線に出ていた。
(残された奴には、残した奴の想いを継いでいかなくちゃいかないんだ)
その為には這ってでも前に進まないといけない。
ハンター達の想いは通じた。後は、戦って生き延びるだけだ。
「無謀な突撃はするな! 連携して仲間を信じろ!」
大声で叫ぶヴァイス。彼は常に最前線で仲間のハンターや兵士らの動きを把握していた。
いつもなら、急に囲まれないように自身の背後も気にするが、今日は違った。勝利の女神が居るのだから。
「ヴァイスさん、共に、歩みましょう……今度は、わたしが支える番です」
アニスが赤髪のハンターの背を守っていた。
状況に応じ、攻守の魔法で援護する。
必要であれば、直接、聖剣を振るった。
その時、これまでに増して唸るように迫ってくる災狐の軍勢。
増援が来る前に各個撃破しようというつもりなのかもしれない。それは逆に言えば、耐え抜けば勝利を呼び込む事ができる可能性もあるという事だ。
「諦めるな! 最後まで抗うぞ!」
戦士の叫びが戦場を震わせた。
●
「まだです。ここで、まだ止める訳にはいかない」
幾体もの雑魔を倒したが、真は止まる事なく刀を振るい続ける。
敵の中に突撃した正秋隊の退路は残しておかなければならない。必死にもなる。
「押されているのは確かですが、こちらこそ、まだまだです」
レイレリアは魔法を唱え続けている。
その時、大きな歓声が戦場に響いた。それも一人二人ではない。何十人もの歓声だ。
「炎に消えゆ……なんてさせないんだからー!」
真っ先に飛び出して来たのはリンカだった。
剣に青白い炎を灯し、敵の攻撃を受けると氷嵐の魔法を放つ。
「……氷よ、切り裂く氷の嵐となり、全てを凍てつかせて!」
魔法で動きが鈍くなった所に稲妻が駆ける。
朝騎が木の上から撃った符術だ。
頭上へ意識を向ける事ができれば、その分地上での有利かと思っての事だ。
「予測済みでちゅよ」
飛翔する雑魔の攻撃を飛び降りて回避。
予め打ち込んでいた方のアンカーを操作して別木へと移った。
「次を撃つでちゅ!」
投げ放った符から再び稲妻が迸った。
●
戦場の空気がガラリと変わった――ドロテアは、それが意味する事がすぐに理解できた。
牡丹率いる本隊が突撃してきたのだろう。各方面からの攻撃は、伝達不足で若干のズレが生じていたが、そのズレこそが相手の動きを翻弄しているように彼女は感じた。
今なら――行ける。友の刀が届くはず。
「さあ、反撃の時間よ!」
幹や木の上で身を隠しながら戦っていたが、もはやその必要はない。
本隊の突撃を伝えつつ、友達の進む道を支援する。
「災狐というのに、キツーい一発、入れて来なさい」
「ドロテア殿、感謝する」
「行ってくる。ドロテア殿も気をつけてくれ」
真白と七葵は感謝の言葉を告げると正秋と共に駆け出した。
災狐側とて無能ではない。迫ってくる人間達に対して壁を作った。
「推して通る! で、ござる!」
盾を構えて壁を突き破るミィリア。
災狐が見えた。
「人間の分際で!」
災狐は焦っていた。よもや、この様な結末を迎えるとは思っても居なかった。
矢鳴文の名を出した人間も居た。十鳥城の件を追いかけている者もいる以上、自分が狙われていると悟った。
「だが、簡単にはやられないぞ!」
迫ってくる人間に対し炎を吐いた。
それを白侍が盾で受け流す。広がった炎を突き破り、二人の侍が迫る。
左右に分かれた――手の甲が光っている侍を足で払う。その背後に、もう一人、別の侍が控えていた。
「今こそ!」
「正秋殿!」
真白と七葵の声に推され、正秋の刀が深々と災狐へと突き刺さった。
勢い余って根元から刀が折れる。バランスを崩して地に倒れた正秋に対し災狐は足を踏み下ろした。
「させないで、ござる!」
割って入ったのはミィリアだった。災狐の足を跳ね除ける。
追撃しようとする災狐だったが、周囲から無数の矢や魔法が襲いかかり、このままだと危険だと判断した。
総力戦になれば勝てるだろう。だが、自分も唯では済まないかもしれない。
「これで、勝ったと思うなよ人間共! 我が兄、蓬生に、貴様らは真の絶望を知るといい。そして、後悔しろ! ここで死んでおけば良かったとな!」
負け犬の遠吠えのような叫び声を上げ――災狐は部下を盾にして逃げ出したのであった。
●65⇒55
戦闘は集結した。
逃げ出した災狐を討つ事はできなかったが、統率を失った軍団は壊滅させた。
それでも、征西部隊に被害が全く無いという訳ではない。
Gacruxは戦死した兵士らを弔っていた。“彼ら”は、彼らなりに辿り着いた想いの先に居たはずだ。
彼は、ただ――侍の死には、畏敬の念を払いたいと思った。
「見事な、最期でした」
風が西へと向けて吹いた。
災狐の軍勢との戦いは、熾烈を極めたが、ハンター達と征西部隊が勝利した。
深手を負った災狐は何処かへ逃げ去り、軍勢は壊滅。征西部隊は、西へと向けて再び歩みだした。
おしまい
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 22人 |
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重体一覧
- 三千世界の鴉を殺し
連城 壮介(ka4765)
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【質問卓】 紡伎 希(kz0174) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/09/07 22:01:54 |
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仮プレ晒し卓 ロジャー=ウィステリアランド(ka2900) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/09/08 23:30:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/08 16:51:52 |
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相談卓 北谷王子 朝騎(ka5818) 人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/09/09 18:45:47 |