ゲスト
(ka0000)
【初心】森の中の遊具広場
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/13 19:00
- 完成日
- 2016/09/27 00:26
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある森に、とある人影。
かさりと動く灌木の茂みの奥に、きょろりと動く瞳。
「きょうはダメか」
茂みの中から陰鬱そうな男が出てきた。
手には弓。
「……まあ、ガキの頃からそういう人生だ」
特に感情も表すことなく呟く。
仮に続きを口にしたとすれば、「菓子を配ると言われて寄ってみりゃあ見逃され、かくれんぼするってんで隠れりゃ、そのまま忘れら去れてみんな帰ってたり」などとぼやくだろう。
男、実際そういう人生を歩んできた。
とはいえ、特に腹を立てているわけではない。
「目立つことがないってんなら、猟師にでもなってしこたま稼ごうと思ったが……」
世の中そう甘くないようで、獲物の動物が木々に隠れた彼に気付かず寄ってくるなどということはなかった。
――ただ単に、目立たずツキもないだけか。
そう諦観するときもある。
いや。たったいま、これまでのようにあきらめたような溜息をまたついた。
――もしかしたら、人生常にあきらめと共にあるのかもしれないとも。
そんなことも思うが、すぐにくっくっくと喉を鳴らす。
「ま、目立ちたいわけでもないけどね」
泣きそうな笑い顔。板についている。
目立ったところで目立ちたい奴からやっかまれ、気にされたあげく探られたくもない腹を探られるのだ。世の中そういうもんだ、と泣き顔のような笑い顔を……いや、下を向いた。
この時だった。
「はっ!」
とっさに身を翻し大木の影に隠れた。恐ろしく素早い。
たったいま、何かの物音を聞いたのだが……。
『げっげっげっ』
『びひひひひ』
耳を澄ますと唸り声とも鳴き声ともつかない声が遠くからする。
そちらの森を見ると、広場があった。点在する木につるされたターザンロープや片側に大岩の乗せられたシーソー、がっしりとした木と木の間に渡された鉄棒などがあるではないか。
しかも、小柄なゴブリンたちがいる!
「……奴らが作ったのか?」
ぎゅっとロープを引き絞ったり、ぐんぐんと引っ張り身を預けるゴブリンたち。大丈夫と見ると楽しそうに遊んだり、近くにいる仲間に遠心力を付けた蹴りを見舞って笑ったり。でもって、くらったゴブリンがムキになって片側を固定したシーソーに飛び乗り反動でジャンプし、仕返しの蹴り。
げひひひひ、と笑い声がこだまする。仲違いもせず楽しそうだ。
「遊んでいるのか……ん?」
おっと。別方向から草のすれる音。
ゴブリンたちもすぐに気付いた。リーダー格らしい大きな1匹が近くに集めてある拳くらいの大きさの石を投げつけると、小さいゴブリンたちが一斉に向かう。
その視線の、何と鋭いことか。
さきほどまでの遊んでいた風貌とは完全に違う。戦う異形の、おぞましい顔だ。手にした武器も今までより力強い。
ゴブリンの動きに、草にひそんでいた何かの逃げる音が聞こえる。四足歩行特有の足運び。このリズムはシカだろう。
「……いかん」
男、自らの置かれた立場を再認識した。
ゴブリンどもがいなくなった隙に脱兎のごとく逃げた。ツキはあるようだ。
数日後、どこかの町のハンターオフィスで。
「あ、初華さん。今日も構ってオーラ全開ですね」
「ほへ? 構ってオーラ?」
たまたま立ち寄った南那初華(kz0135)が受付嬢にそう声を掛けられた。
「『ちょっとヒマだし何かないかな~』みたいな感じじゃない。リアルブルーじゃとりあえずテレビを付けて気になった番組を見るタイプだったでしょ? ……そんな初華さんにはコレ。『はぐれ猟師は見た! 森の中に突然現れた遊具広場の謎!』」
ばばん、と差し出された依頼状を見ると、とある村の奥の森でゴブリンが居座っているので退治してほしいという内容。
「……謎でもなんでもないじゃないのよぅ」
「でも楽しそうでしょ? 新人ハンターさん向けの依頼なんだけど、念のため経験者のバックアッパーが必要なのよね~。……初華さん、巻き込まれないと何もできないタイプだから、お願いしていいですよね?」
ぽわわん、とキモ可愛いゴブリンがあははうふふしながらブランコなんかで遊んでる姿を想像している隙にちゃっかり押しつける受付嬢。なかなかやり手である。
「またバックアッパー……」
この前、眼鏡の女性係員に押し付けられたばかりなのに、とか絶句する初華。
「巻き込まれ体質なんだから文句言わない。それよりこの猟師みたいに目立たない体質の方がいいんですか?」
「体質勝手に決めつけてるし。というか、目立たない体質の方がいいなぁ……」
「でもこの猟師も結局巻き込まれてるから同じよね? ハイ決まり」
というわけで、森の中の遊具広場にいるゴブリン約10匹を倒す新人ハンター、求ム。
かさりと動く灌木の茂みの奥に、きょろりと動く瞳。
「きょうはダメか」
茂みの中から陰鬱そうな男が出てきた。
手には弓。
「……まあ、ガキの頃からそういう人生だ」
特に感情も表すことなく呟く。
仮に続きを口にしたとすれば、「菓子を配ると言われて寄ってみりゃあ見逃され、かくれんぼするってんで隠れりゃ、そのまま忘れら去れてみんな帰ってたり」などとぼやくだろう。
男、実際そういう人生を歩んできた。
とはいえ、特に腹を立てているわけではない。
「目立つことがないってんなら、猟師にでもなってしこたま稼ごうと思ったが……」
世の中そう甘くないようで、獲物の動物が木々に隠れた彼に気付かず寄ってくるなどということはなかった。
――ただ単に、目立たずツキもないだけか。
そう諦観するときもある。
いや。たったいま、これまでのようにあきらめたような溜息をまたついた。
――もしかしたら、人生常にあきらめと共にあるのかもしれないとも。
そんなことも思うが、すぐにくっくっくと喉を鳴らす。
「ま、目立ちたいわけでもないけどね」
泣きそうな笑い顔。板についている。
目立ったところで目立ちたい奴からやっかまれ、気にされたあげく探られたくもない腹を探られるのだ。世の中そういうもんだ、と泣き顔のような笑い顔を……いや、下を向いた。
この時だった。
「はっ!」
とっさに身を翻し大木の影に隠れた。恐ろしく素早い。
たったいま、何かの物音を聞いたのだが……。
『げっげっげっ』
『びひひひひ』
耳を澄ますと唸り声とも鳴き声ともつかない声が遠くからする。
そちらの森を見ると、広場があった。点在する木につるされたターザンロープや片側に大岩の乗せられたシーソー、がっしりとした木と木の間に渡された鉄棒などがあるではないか。
しかも、小柄なゴブリンたちがいる!
「……奴らが作ったのか?」
ぎゅっとロープを引き絞ったり、ぐんぐんと引っ張り身を預けるゴブリンたち。大丈夫と見ると楽しそうに遊んだり、近くにいる仲間に遠心力を付けた蹴りを見舞って笑ったり。でもって、くらったゴブリンがムキになって片側を固定したシーソーに飛び乗り反動でジャンプし、仕返しの蹴り。
げひひひひ、と笑い声がこだまする。仲違いもせず楽しそうだ。
「遊んでいるのか……ん?」
おっと。別方向から草のすれる音。
ゴブリンたちもすぐに気付いた。リーダー格らしい大きな1匹が近くに集めてある拳くらいの大きさの石を投げつけると、小さいゴブリンたちが一斉に向かう。
その視線の、何と鋭いことか。
さきほどまでの遊んでいた風貌とは完全に違う。戦う異形の、おぞましい顔だ。手にした武器も今までより力強い。
ゴブリンの動きに、草にひそんでいた何かの逃げる音が聞こえる。四足歩行特有の足運び。このリズムはシカだろう。
「……いかん」
男、自らの置かれた立場を再認識した。
ゴブリンどもがいなくなった隙に脱兎のごとく逃げた。ツキはあるようだ。
数日後、どこかの町のハンターオフィスで。
「あ、初華さん。今日も構ってオーラ全開ですね」
「ほへ? 構ってオーラ?」
たまたま立ち寄った南那初華(kz0135)が受付嬢にそう声を掛けられた。
「『ちょっとヒマだし何かないかな~』みたいな感じじゃない。リアルブルーじゃとりあえずテレビを付けて気になった番組を見るタイプだったでしょ? ……そんな初華さんにはコレ。『はぐれ猟師は見た! 森の中に突然現れた遊具広場の謎!』」
ばばん、と差し出された依頼状を見ると、とある村の奥の森でゴブリンが居座っているので退治してほしいという内容。
「……謎でもなんでもないじゃないのよぅ」
「でも楽しそうでしょ? 新人ハンターさん向けの依頼なんだけど、念のため経験者のバックアッパーが必要なのよね~。……初華さん、巻き込まれないと何もできないタイプだから、お願いしていいですよね?」
ぽわわん、とキモ可愛いゴブリンがあははうふふしながらブランコなんかで遊んでる姿を想像している隙にちゃっかり押しつける受付嬢。なかなかやり手である。
「またバックアッパー……」
この前、眼鏡の女性係員に押し付けられたばかりなのに、とか絶句する初華。
「巻き込まれ体質なんだから文句言わない。それよりこの猟師みたいに目立たない体質の方がいいんですか?」
「体質勝手に決めつけてるし。というか、目立たない体質の方がいいなぁ……」
「でもこの猟師も結局巻き込まれてるから同じよね? ハイ決まり」
というわけで、森の中の遊具広場にいるゴブリン約10匹を倒す新人ハンター、求ム。
リプレイ本文
●
「あれ?」
ゴブリンのいる地点まで森の中を移動中、南那初華(kz0135)が何か思い出したようだ。
「エメさんって……何で新人向けの依頼に入ってるの?」
「ベテラン以外なら別に良かったはずだ」
エメラルド・シルフィユ(ka4678)は毅然と初華に言い返す。
「それに……」
エメラルド、改まって言う。
「日々修練を積んではいるのだが……私はまだまだ未熟のようだ……」
「……胸張って自信満々で言われてもねぇ」
初華が突っ込んだように、エメラルドは胸張って自信に満ち溢れていた。
「自己分析ができている、ということだ。とにかく、ゴブリン退治をした事はなかったはずだ。何事も経験。優れたハンター、優れた聖導士となる為腕を振るうぞ」
「いいこと言いますね、エメラルドさん!」
横から鳳凰院瑠美(ka4534)が元気良く首を突っ込んできた。
「やっぱり何事も経験ですよね!」
意気に感じたようで、両手に持ったトンファーをぶん回しつつとにかく体を動かす。
その横で。
「そう、人生は何事も経験ですわね!」
ぽむ、と手を合わせひらめいているのは、樋口 霰(ka6443)。
すぐさまぐりんとリズレット・ウォルター(ka3580)の方を向いた。
でもって、ぐぐっと身を寄せる。
「リズレットくぅん、人生何事も経験ですわよ?」
「わ、私か? 私の人生は特に何事も経験でなくともよい」
リズレット、霰が身を寄せきる前に大きく後ずさっていた。
「あらら。後ろ向きな人生ですわね?」
「いや、ちゃんと前を向いたまま下がったはずだが」
距離を取ってのぐだぐだな会話はともかく。
一通り体を動かした瑠美に、狐中・小鳥(ka5484)が声を掛けていた。
「瑠美さんはトンファーで戦闘依頼によくいってるのかな?」
「ううん、まったく!」
瑠美、振り返ってにこり。
そんな様子を見て初華がこっそりエメラルドに言う。
「……何か危なっかしいような?」
そんな言葉はともかく、小鳥は続けて話し掛けている。
「それでこの依頼に? 思い切りがいいよね♪」
「思い切りの良さが私の持ち味だと思うの!」
瑠美、思い切りよく返事する。
でもって、初華に呟かれたエメラルドの反応は。
「危なっかしいのはお前だ!」
突然、初華とは別の方にダッシュして叫ぶ。
その先にいたのは。
「遊ぶゴブリン、遊ぶゴブリ……はっ! エメさん、何ですか?」
一人でどこかに行こうとしていた遠藤・恵(ka3940)がエメラルドに首根っこつかまれてびくっとしていた。
「目的地はそちらではないだろう!」
ちょうどその時、瑠美は小鳥と会話が弾んでいた。
「狐中さんは、どうしてこの依頼に?」
「ギルドで初華さんを見掛けて、また何かに巻き込まれてるなとか思ってたら……」
ほわほわと回想する小鳥。
「あや、初華さんが何か押し付けられてる? 相変わらず巻き込まれる事多いよねー…ふぇ?」
「あ、小鳥さんだ。小鳥さ~ん、受付の人が一緒にお茶飲まないかって~」
「お茶?」
小鳥、お茶に釣れて近寄ったのが運の尽き、初華に巻き込まれてしまった。
それはそれとして、恵。
「エメ、私は巻き込まれーではありませんよー」
「迷子体質であろうが!」
エメラルド、有無を言わさず引っ張って皆のところに戻る。
「わ、私を巻き込まないでくれるか?」
「巻き込むも何も、リズレットくんが逃げてるだけですわ」
リズレットと霰は相変わらず。
「と、とにかくみんな、行くんだかからねっ!」
初華、皆に向かって大声で。
これで一応、ベテランとして仕事をしたことになったようで。
●
で、ゴブリンたちのたむろする遊具広場を発見した。
ゴブリンたちは木々に隠れるこちらに気付くことなく、ブランコやターザンロープで遊んでいる。
「っていうかなんでこんなもの作ったのでしょうねえ」
ひそむ恵が疑問に大きく瞳を見開き首を傾げる。
「ここに居座るなら塀の一つでも作れば良さそうなものだが」
横に距離を取って一人隠れるリズレットがぽそり。
「まあ、じゃれて仲良しそうね。リズレットくんも見習うべきですわ」
距離を取られた霰、あてつけるように言う。
「じゃれてるというか、喧嘩してないか?」
エメラルドは呆れている。確かにゴブリンたちは遊具を使って仲間を蹴ったり体当たりして笑っている。
「いいなぁ、楽しそうだなぁ」
瑠美は何だかそわそわ。ゴブリンたちが思いっきり体を動かしているのがうらやましいようで。
「実は武器でしたー、な感じですね。敵を油断させるためでしょうかね?」
そんな疑問を口にする恵。
「とりあえず数もそれなりに多いしこちらから奇襲をしかけておきたい所、かな? 見つからないようこっそりだね♪」
小鳥はすでに広場を回り込むようにこっそり右手に移動している。
「ではスリープクラウドを使う」
「こちらはそれと同時に斬り込もう。恵を頼む」
マイヤワンドを手にするリズレットに、がさがさと小鳥に続くエメラルドが声を掛ける。
「エメ、ひっどぉい」
恵はぷんすかしながらも虹の弓を準備。リズレットとともにここに残る。
「わたしはこっち!」
「瑠美さん、待ってくださいですわ」
瑠美と霰は左手に開いた。
これで奇襲準備は万端だ。
(よし)
皆が移動した後、元の木陰に隠れていたリズレット。頃やよしと見てゴブリンどもの広場に向かって立つと集中した。
「水の精霊の加護を宿せし宝玉よ。穏やかな波に包まれるがごとく揺り籠のような安らぎをあの者共に」
細杖を掲げると、ゴブリンどもの広場に青白い雲状のガスが一瞬広がった。
リズレットが詠唱を終えて確認すると、表情が険しくなった。
「……まさか、スリープクラウド対策?」
厳しく細められた瞳。
失敗とまではいかないが、まさかこうなるとは、と面が引き締まる。
身体の一番大きなリーダー格以外は眠りに間違いなく落ちたのだが、運良く遊具で遊んでいたゴブリンは地面に落ちたり誰かとぶつかったりして睡眠状態から回復していたのだ。
皆に信頼されて作戦に組み入れてもらった手段。
その期待を裏切ってしまった、と感じている。長子である故か。
が、その思いはすぐに救われることとなる。
「指揮を取らせませんよー」
リズレットから横に離れた場所に潜んでいた恵が身を晒し、七色に輝く細身のロングボウ「虹の弓」を引き絞る。
恵の狙いは一番大きなゴブリンだ。
――ひゅん……。
一瞬七色に光った矢は、リーダーの防具に命中し弾き飛ばした。
真顔になってこっちを見るゴブリン。
瞬間、石を投げた。
「結構大きな石を投げてきますねー」
隠れていた幹に再び引っ込みつつ、思う。
(思い起こすとこれまでろくなことありませんねー)
山で遭難したり、帰れずに家出と間違われたり。こっちに来てからもいろいろあった。
「ま、いいでしょう」
そして今、しみじみ思う。
「人生、投げたらいけませんねー」
隠れていた場所からまた出ると味方が突入していた。矢を何本かつがえて一度に放ち弾幕とする。
●
時は若干遡り、リズレットのスリープクラウドが炸裂した直後。
「投げさせたりはさせないの」
瑠美が一気にゴブリンの広場に突入していた。瞬脚だ。
ぶん、と固めた右拳でフックを放つ構え。
運良くターザンロープから落ちることで目覚めたゴブリンは、すかさず防御の構え。
しかし、ガツン。
『ごふっ……』
瑠璃の得物は、トンファー。殴るような拳の動きは途中までで、半円を描きぐうんと伸びたトンファーがゴブリンの側頭部に命中した。
「あっ」
しかし、その一匹の影からターザンロープでやって来た一匹に蹴りを食らった。
運良く先ほど殴ったゴブリンは追撃に来ていない。
いや、仲間を起こしているのだからむしろまずいか。
このままで孤立する、と思った瞬間。
――とすとすっ。
恵からの援護射撃だ。
「……家族以外との連携は初めてかな?」
気を取り直した瑠美、再び闘争心がわく。
「ガンガン攻めれば敵の注意もこっちに向くはず」
踏み込み、ロープを持つ敵の手をトンファーで狙い叩き落とす。
その、瑠美の背中にきらきらっと桜型妖精が舞った。
『ぐふ……』
後ろに回ろうとしたゴブリンが妖精の飛ぶ先を見ると。
「私はあまり幸せな人生を送ってこなかったけど……」
霰がいた。
手にはユナイテッドドライブソード。長剣モードだ。
『ぐふっ!』
棍棒を手にしたゴブリン、霰に襲い掛かる。
が、そこは霰の距離。
「私に殺される憐れな命よりは幸せよね!」
半身の状態から踏み込み一発でちょうど斬りごろとなる。
疾風剣だ。
舞い飛ぶ棍棒。敵は万歳状態だ。
霰、これを逃すはずはない。
ちゃきりと構えなおすドライブソード。上段から袈裟に一撃。
「たくさん死ねば相対的に不幸な私も幸せになれるかしらね?」
斬り降りした状態で、艶やかに笑み。
●
こちら、右手側。
同じく、時はスリープクラウド直撃の時。
「向こうが対処する前に出来る限り攻撃をするんだよ!」
小鳥も突撃。
まずは寝たゴブリンにショートソードで斬りつける。
「まだまだなんだよ」
崩れ落ちるところを戦籠手「災厄」で固めた拳でアッパーカット。永遠のおねんねをさせてやる。
が、ここで目覚めたゴブリンがブランコで向かってきた。大ジャンプして上段の棍棒で叩き伏せるつもりだ。
「させないんだよ……あ、そうか♪」
小鳥、アッパーカットで迎撃しようと身を屈めたところで悟った。
ブランコにしてもターザンロープにしても、足元が死角になるのだ。
もっとも、今の敵は結局大ジャンプして遥か後方に着地するのだったが。
そして、エメラルド。
「おい、小鳥を狙ってたんじゃなかったのか!」
大ジャンプしたゴブリン、目標を小鳥の後ろから突撃してきたエメラルドに変えていた。
くるっと回って、棍棒を叩きつけてくる。
――がしっ!
エメラルド、水晶の刃を持つ剣で受けたがそのまま体当たりを受けた。必死に横に流すエメラルド。
『ぎぎっ』
横に弾かれ着地したゴブリンは、どうだと言わんばかりに振り返った。
そして、恐怖した。
「サーカス攻撃もいいが、それが終わればどうもできまい」
お仕置きの時間だ、とばかりに踏み込むエメラルド。ホーリーセイバーの白い光がロングソード「クリスタルマスター」の水晶の刃を包む。
――ずばっ!
清らかな一撃が、なすすべがなくなったゴブリンを葬り去った。
この時、後衛。
「結構、遊具狙うの楽しいですねー」
恵、振り子状に動く敵の動きを見つつ撃つ、いつもとは違う感覚をエンジョイしていた。
中には、どこから撃たれたかも気付かずにくたばるゴブリンもいる。
ただ、攻撃が目立つと狙われてしまう。
「はわっ!」
再び投石。
身を隠してやり過ごすと……。
「あっ!」
すぐ近くに迫られていた。
がつん、と敵の攻撃を辛うじて弓で防ぐ。
近接武器は持ってないぞ。絶体絶命だ。
しかし。
――どしっ!
横合いからの石つぶて。
「これを待っていたんだろう?」
リズレットのアースバレットだ。攻撃を事前に防ぐ行動が遅れたのは、リズレットからの射撃がしやすい位置取りを取り直したためだ。
それだけではない。
リズレット、恵のいる場所に駆け寄って来たではないか。
「これでよし」
おもむろにストーンウォール。
「ありがとう」
「スリープクラウドの効果が結果的にあまりなかったのだが、それを助けてもらった。今度は助けない、とぉ?」
そこまで言ったリズレット、恵の方を見てどもった。
恵が瞳を丸くして、至近距離でリズレットの顔を見ていたのに気付いたのだ。
「じゃ、じゃあ……あっ!」
慌ててストーンウォールから出たところ、こんな大きな物ができてゴブリンどもが見逃すはずもなく寄って来ていた。そいつに一撃食らったところを恵が弓矢で退けるのだった。
●
その頃、左翼。
「よっ、と」
霰、敵があん馬しつつ足で攻撃してきたところを受け流し。
「考えるな、感じろ! って言葉があった気がする!」
泳いだ敵に反応した瑠美、少し遠いが瞬脚で回り込んでトンファーで横殴り&縦殴り。先ほどまで囲まれる中、もがくようにトンファーを振るっていたことで何かつかむものがあったのかもしれない。腰を落とし歩幅をこまめに変えて遠近自在に振る。
そして右翼。
「そこを死角と思うなぁ!」
エメラルド、垂直ポールを軸に回って蹴りを繰り出したゴブリンを受ける。重さのある蹴りだったが耐えて動きを止めてから長剣で止めを刺した。
一方の小鳥。
「纏まっていたら狙い目なんだよ♪ 縦横無尽に走り回って……」
小鳥、円舞で戦い敵を自分の動いていた円周に集めていた。
そこを狙って新たなステップを踏む!
「斬りつけるんだよ!」
縦横無尽。
一気に手数で攻める。
「よし、加勢する」
エメラルドも輪に加わり激しさを増す。
そこに、小鳥を目掛け鋭い一撃。
「わわっ!」
『ぐあっ!』
敵のボスである。小鳥を狙っていた。
それもそのはず。
小鳥のアッパー攻撃が遠心力を利用した攻撃の死角を突きやすいとみられていたからだ。
ぶうん、ぶうんと長い棍棒を振るうボス。
「足元を狙う攻撃ばかりなんだよ」
バックステップでかわす小鳥。嫌がっているとみてさらに踏み込むボス。
これが命取りとなった。
「でも、頭上がお留守!」
小鳥、傍らのシーソーを利用してジャンプ。ふわりと舞うチャイナ服の裾。その陰から現れる白い太腿と真っ赤なシューズ!
「踵落としだよー!」
――どしっ!
脳天に入り、ノックアウト。
●
「誰かが迷い込んで遊ばないように」
戦い終わり、恵がターザンロープなどを切っている。
「早速遊んで巻き込まれているのもいるようだ」
エメラルドは横を見る。
「な、何よぅ。ちょっと試してみたらスカートの裾が絡んだだけよぅ」
初華、垂直ポールでくるってやってみたようで。
「あや~」
これを見た小鳥、ふと傍らで騒がしい二人組にも気付く。
「リズレットくん、あざがないか見てくれないかしら?」
霰は腕を上げて脇の下と胸の横を色っぽくさらしていたり。
「いや……」
「ここじゃダメ? 夜のベッドの中のほうがお好み?」
リズレット、霰にからかわれて隠した顔は真っ赤だったり。
「……初華さんもあっちも絡まれまくりだね~」
小鳥、やれやれな感じ。
「狐中さん、わたしの戦い、どうでした?」
おっと。そんな小鳥に瑠美が絡む。
「よ、よかったと思うよ?」
「やったね♪」
瑠美、褒められ満面の笑み。
それだけではない。
「うれしい。なんかこう、タイミングとかつかんじゃった♪」
「え? あやや……」
嬉しさの余り、思わず小鳥の手を掴んで走り出した。
「ちょ、私も~?」
初華もまきこまれー。手を握られ走らされる。
「エメ、首根っこつかんできます?」
「仕方ないな」
恵に言われてやれやれと追い掛ける準備をするエメラルドだった。
「あれ?」
ゴブリンのいる地点まで森の中を移動中、南那初華(kz0135)が何か思い出したようだ。
「エメさんって……何で新人向けの依頼に入ってるの?」
「ベテラン以外なら別に良かったはずだ」
エメラルド・シルフィユ(ka4678)は毅然と初華に言い返す。
「それに……」
エメラルド、改まって言う。
「日々修練を積んではいるのだが……私はまだまだ未熟のようだ……」
「……胸張って自信満々で言われてもねぇ」
初華が突っ込んだように、エメラルドは胸張って自信に満ち溢れていた。
「自己分析ができている、ということだ。とにかく、ゴブリン退治をした事はなかったはずだ。何事も経験。優れたハンター、優れた聖導士となる為腕を振るうぞ」
「いいこと言いますね、エメラルドさん!」
横から鳳凰院瑠美(ka4534)が元気良く首を突っ込んできた。
「やっぱり何事も経験ですよね!」
意気に感じたようで、両手に持ったトンファーをぶん回しつつとにかく体を動かす。
その横で。
「そう、人生は何事も経験ですわね!」
ぽむ、と手を合わせひらめいているのは、樋口 霰(ka6443)。
すぐさまぐりんとリズレット・ウォルター(ka3580)の方を向いた。
でもって、ぐぐっと身を寄せる。
「リズレットくぅん、人生何事も経験ですわよ?」
「わ、私か? 私の人生は特に何事も経験でなくともよい」
リズレット、霰が身を寄せきる前に大きく後ずさっていた。
「あらら。後ろ向きな人生ですわね?」
「いや、ちゃんと前を向いたまま下がったはずだが」
距離を取ってのぐだぐだな会話はともかく。
一通り体を動かした瑠美に、狐中・小鳥(ka5484)が声を掛けていた。
「瑠美さんはトンファーで戦闘依頼によくいってるのかな?」
「ううん、まったく!」
瑠美、振り返ってにこり。
そんな様子を見て初華がこっそりエメラルドに言う。
「……何か危なっかしいような?」
そんな言葉はともかく、小鳥は続けて話し掛けている。
「それでこの依頼に? 思い切りがいいよね♪」
「思い切りの良さが私の持ち味だと思うの!」
瑠美、思い切りよく返事する。
でもって、初華に呟かれたエメラルドの反応は。
「危なっかしいのはお前だ!」
突然、初華とは別の方にダッシュして叫ぶ。
その先にいたのは。
「遊ぶゴブリン、遊ぶゴブリ……はっ! エメさん、何ですか?」
一人でどこかに行こうとしていた遠藤・恵(ka3940)がエメラルドに首根っこつかまれてびくっとしていた。
「目的地はそちらではないだろう!」
ちょうどその時、瑠美は小鳥と会話が弾んでいた。
「狐中さんは、どうしてこの依頼に?」
「ギルドで初華さんを見掛けて、また何かに巻き込まれてるなとか思ってたら……」
ほわほわと回想する小鳥。
「あや、初華さんが何か押し付けられてる? 相変わらず巻き込まれる事多いよねー…ふぇ?」
「あ、小鳥さんだ。小鳥さ~ん、受付の人が一緒にお茶飲まないかって~」
「お茶?」
小鳥、お茶に釣れて近寄ったのが運の尽き、初華に巻き込まれてしまった。
それはそれとして、恵。
「エメ、私は巻き込まれーではありませんよー」
「迷子体質であろうが!」
エメラルド、有無を言わさず引っ張って皆のところに戻る。
「わ、私を巻き込まないでくれるか?」
「巻き込むも何も、リズレットくんが逃げてるだけですわ」
リズレットと霰は相変わらず。
「と、とにかくみんな、行くんだかからねっ!」
初華、皆に向かって大声で。
これで一応、ベテランとして仕事をしたことになったようで。
●
で、ゴブリンたちのたむろする遊具広場を発見した。
ゴブリンたちは木々に隠れるこちらに気付くことなく、ブランコやターザンロープで遊んでいる。
「っていうかなんでこんなもの作ったのでしょうねえ」
ひそむ恵が疑問に大きく瞳を見開き首を傾げる。
「ここに居座るなら塀の一つでも作れば良さそうなものだが」
横に距離を取って一人隠れるリズレットがぽそり。
「まあ、じゃれて仲良しそうね。リズレットくんも見習うべきですわ」
距離を取られた霰、あてつけるように言う。
「じゃれてるというか、喧嘩してないか?」
エメラルドは呆れている。確かにゴブリンたちは遊具を使って仲間を蹴ったり体当たりして笑っている。
「いいなぁ、楽しそうだなぁ」
瑠美は何だかそわそわ。ゴブリンたちが思いっきり体を動かしているのがうらやましいようで。
「実は武器でしたー、な感じですね。敵を油断させるためでしょうかね?」
そんな疑問を口にする恵。
「とりあえず数もそれなりに多いしこちらから奇襲をしかけておきたい所、かな? 見つからないようこっそりだね♪」
小鳥はすでに広場を回り込むようにこっそり右手に移動している。
「ではスリープクラウドを使う」
「こちらはそれと同時に斬り込もう。恵を頼む」
マイヤワンドを手にするリズレットに、がさがさと小鳥に続くエメラルドが声を掛ける。
「エメ、ひっどぉい」
恵はぷんすかしながらも虹の弓を準備。リズレットとともにここに残る。
「わたしはこっち!」
「瑠美さん、待ってくださいですわ」
瑠美と霰は左手に開いた。
これで奇襲準備は万端だ。
(よし)
皆が移動した後、元の木陰に隠れていたリズレット。頃やよしと見てゴブリンどもの広場に向かって立つと集中した。
「水の精霊の加護を宿せし宝玉よ。穏やかな波に包まれるがごとく揺り籠のような安らぎをあの者共に」
細杖を掲げると、ゴブリンどもの広場に青白い雲状のガスが一瞬広がった。
リズレットが詠唱を終えて確認すると、表情が険しくなった。
「……まさか、スリープクラウド対策?」
厳しく細められた瞳。
失敗とまではいかないが、まさかこうなるとは、と面が引き締まる。
身体の一番大きなリーダー格以外は眠りに間違いなく落ちたのだが、運良く遊具で遊んでいたゴブリンは地面に落ちたり誰かとぶつかったりして睡眠状態から回復していたのだ。
皆に信頼されて作戦に組み入れてもらった手段。
その期待を裏切ってしまった、と感じている。長子である故か。
が、その思いはすぐに救われることとなる。
「指揮を取らせませんよー」
リズレットから横に離れた場所に潜んでいた恵が身を晒し、七色に輝く細身のロングボウ「虹の弓」を引き絞る。
恵の狙いは一番大きなゴブリンだ。
――ひゅん……。
一瞬七色に光った矢は、リーダーの防具に命中し弾き飛ばした。
真顔になってこっちを見るゴブリン。
瞬間、石を投げた。
「結構大きな石を投げてきますねー」
隠れていた幹に再び引っ込みつつ、思う。
(思い起こすとこれまでろくなことありませんねー)
山で遭難したり、帰れずに家出と間違われたり。こっちに来てからもいろいろあった。
「ま、いいでしょう」
そして今、しみじみ思う。
「人生、投げたらいけませんねー」
隠れていた場所からまた出ると味方が突入していた。矢を何本かつがえて一度に放ち弾幕とする。
●
時は若干遡り、リズレットのスリープクラウドが炸裂した直後。
「投げさせたりはさせないの」
瑠美が一気にゴブリンの広場に突入していた。瞬脚だ。
ぶん、と固めた右拳でフックを放つ構え。
運良くターザンロープから落ちることで目覚めたゴブリンは、すかさず防御の構え。
しかし、ガツン。
『ごふっ……』
瑠璃の得物は、トンファー。殴るような拳の動きは途中までで、半円を描きぐうんと伸びたトンファーがゴブリンの側頭部に命中した。
「あっ」
しかし、その一匹の影からターザンロープでやって来た一匹に蹴りを食らった。
運良く先ほど殴ったゴブリンは追撃に来ていない。
いや、仲間を起こしているのだからむしろまずいか。
このままで孤立する、と思った瞬間。
――とすとすっ。
恵からの援護射撃だ。
「……家族以外との連携は初めてかな?」
気を取り直した瑠美、再び闘争心がわく。
「ガンガン攻めれば敵の注意もこっちに向くはず」
踏み込み、ロープを持つ敵の手をトンファーで狙い叩き落とす。
その、瑠美の背中にきらきらっと桜型妖精が舞った。
『ぐふ……』
後ろに回ろうとしたゴブリンが妖精の飛ぶ先を見ると。
「私はあまり幸せな人生を送ってこなかったけど……」
霰がいた。
手にはユナイテッドドライブソード。長剣モードだ。
『ぐふっ!』
棍棒を手にしたゴブリン、霰に襲い掛かる。
が、そこは霰の距離。
「私に殺される憐れな命よりは幸せよね!」
半身の状態から踏み込み一発でちょうど斬りごろとなる。
疾風剣だ。
舞い飛ぶ棍棒。敵は万歳状態だ。
霰、これを逃すはずはない。
ちゃきりと構えなおすドライブソード。上段から袈裟に一撃。
「たくさん死ねば相対的に不幸な私も幸せになれるかしらね?」
斬り降りした状態で、艶やかに笑み。
●
こちら、右手側。
同じく、時はスリープクラウド直撃の時。
「向こうが対処する前に出来る限り攻撃をするんだよ!」
小鳥も突撃。
まずは寝たゴブリンにショートソードで斬りつける。
「まだまだなんだよ」
崩れ落ちるところを戦籠手「災厄」で固めた拳でアッパーカット。永遠のおねんねをさせてやる。
が、ここで目覚めたゴブリンがブランコで向かってきた。大ジャンプして上段の棍棒で叩き伏せるつもりだ。
「させないんだよ……あ、そうか♪」
小鳥、アッパーカットで迎撃しようと身を屈めたところで悟った。
ブランコにしてもターザンロープにしても、足元が死角になるのだ。
もっとも、今の敵は結局大ジャンプして遥か後方に着地するのだったが。
そして、エメラルド。
「おい、小鳥を狙ってたんじゃなかったのか!」
大ジャンプしたゴブリン、目標を小鳥の後ろから突撃してきたエメラルドに変えていた。
くるっと回って、棍棒を叩きつけてくる。
――がしっ!
エメラルド、水晶の刃を持つ剣で受けたがそのまま体当たりを受けた。必死に横に流すエメラルド。
『ぎぎっ』
横に弾かれ着地したゴブリンは、どうだと言わんばかりに振り返った。
そして、恐怖した。
「サーカス攻撃もいいが、それが終わればどうもできまい」
お仕置きの時間だ、とばかりに踏み込むエメラルド。ホーリーセイバーの白い光がロングソード「クリスタルマスター」の水晶の刃を包む。
――ずばっ!
清らかな一撃が、なすすべがなくなったゴブリンを葬り去った。
この時、後衛。
「結構、遊具狙うの楽しいですねー」
恵、振り子状に動く敵の動きを見つつ撃つ、いつもとは違う感覚をエンジョイしていた。
中には、どこから撃たれたかも気付かずにくたばるゴブリンもいる。
ただ、攻撃が目立つと狙われてしまう。
「はわっ!」
再び投石。
身を隠してやり過ごすと……。
「あっ!」
すぐ近くに迫られていた。
がつん、と敵の攻撃を辛うじて弓で防ぐ。
近接武器は持ってないぞ。絶体絶命だ。
しかし。
――どしっ!
横合いからの石つぶて。
「これを待っていたんだろう?」
リズレットのアースバレットだ。攻撃を事前に防ぐ行動が遅れたのは、リズレットからの射撃がしやすい位置取りを取り直したためだ。
それだけではない。
リズレット、恵のいる場所に駆け寄って来たではないか。
「これでよし」
おもむろにストーンウォール。
「ありがとう」
「スリープクラウドの効果が結果的にあまりなかったのだが、それを助けてもらった。今度は助けない、とぉ?」
そこまで言ったリズレット、恵の方を見てどもった。
恵が瞳を丸くして、至近距離でリズレットの顔を見ていたのに気付いたのだ。
「じゃ、じゃあ……あっ!」
慌ててストーンウォールから出たところ、こんな大きな物ができてゴブリンどもが見逃すはずもなく寄って来ていた。そいつに一撃食らったところを恵が弓矢で退けるのだった。
●
その頃、左翼。
「よっ、と」
霰、敵があん馬しつつ足で攻撃してきたところを受け流し。
「考えるな、感じろ! って言葉があった気がする!」
泳いだ敵に反応した瑠美、少し遠いが瞬脚で回り込んでトンファーで横殴り&縦殴り。先ほどまで囲まれる中、もがくようにトンファーを振るっていたことで何かつかむものがあったのかもしれない。腰を落とし歩幅をこまめに変えて遠近自在に振る。
そして右翼。
「そこを死角と思うなぁ!」
エメラルド、垂直ポールを軸に回って蹴りを繰り出したゴブリンを受ける。重さのある蹴りだったが耐えて動きを止めてから長剣で止めを刺した。
一方の小鳥。
「纏まっていたら狙い目なんだよ♪ 縦横無尽に走り回って……」
小鳥、円舞で戦い敵を自分の動いていた円周に集めていた。
そこを狙って新たなステップを踏む!
「斬りつけるんだよ!」
縦横無尽。
一気に手数で攻める。
「よし、加勢する」
エメラルドも輪に加わり激しさを増す。
そこに、小鳥を目掛け鋭い一撃。
「わわっ!」
『ぐあっ!』
敵のボスである。小鳥を狙っていた。
それもそのはず。
小鳥のアッパー攻撃が遠心力を利用した攻撃の死角を突きやすいとみられていたからだ。
ぶうん、ぶうんと長い棍棒を振るうボス。
「足元を狙う攻撃ばかりなんだよ」
バックステップでかわす小鳥。嫌がっているとみてさらに踏み込むボス。
これが命取りとなった。
「でも、頭上がお留守!」
小鳥、傍らのシーソーを利用してジャンプ。ふわりと舞うチャイナ服の裾。その陰から現れる白い太腿と真っ赤なシューズ!
「踵落としだよー!」
――どしっ!
脳天に入り、ノックアウト。
●
「誰かが迷い込んで遊ばないように」
戦い終わり、恵がターザンロープなどを切っている。
「早速遊んで巻き込まれているのもいるようだ」
エメラルドは横を見る。
「な、何よぅ。ちょっと試してみたらスカートの裾が絡んだだけよぅ」
初華、垂直ポールでくるってやってみたようで。
「あや~」
これを見た小鳥、ふと傍らで騒がしい二人組にも気付く。
「リズレットくん、あざがないか見てくれないかしら?」
霰は腕を上げて脇の下と胸の横を色っぽくさらしていたり。
「いや……」
「ここじゃダメ? 夜のベッドの中のほうがお好み?」
リズレット、霰にからかわれて隠した顔は真っ赤だったり。
「……初華さんもあっちも絡まれまくりだね~」
小鳥、やれやれな感じ。
「狐中さん、わたしの戦い、どうでした?」
おっと。そんな小鳥に瑠美が絡む。
「よ、よかったと思うよ?」
「やったね♪」
瑠美、褒められ満面の笑み。
それだけではない。
「うれしい。なんかこう、タイミングとかつかんじゃった♪」
「え? あやや……」
嬉しさの余り、思わず小鳥の手を掴んで走り出した。
「ちょ、私も~?」
初華もまきこまれー。手を握られ走らされる。
「エメ、首根っこつかんできます?」
「仕方ないな」
恵に言われてやれやれと追い掛ける準備をするエメラルドだった。
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狐中・小鳥(ka5484)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/13 01:28:50 |
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相談卓~ 鳳凰院瑠美(ka4534) 人間(リアルブルー)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/09/13 18:36:10 |