ゲスト
(ka0000)
コボルドの手習い
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/09/22 19:00
- 完成日
- 2016/09/27 23:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
● コボちゃんおつかいちゅう
ハンターオフィス・ジェオルジ支局にマスコットとして飼われている(本人的にはそう思ってないが)トイプードルに激似のコボルド、コボちゃん。
彼は最近、お使いすることを覚えた。
支局職員から品物が記されたメモとお金の入ったバスケットを持って近隣の雑貨屋へ行き、店の人間に渡し、品物とお釣りを詰めてもらって戻ってくるというだけの、簡単なお仕事だ。
それを何度か繰り返しているうちにコボちゃんは、『文字』というものの存在に気づいた。
自分が口でいくら言っても、店の人間は何も持ってこない。だけど、これを見せるとすぐに(別に欲しくもないものばかりだけど)何か持ってくる。
どうやら『文字』というものは、相手に言うことを聞かせる力があるらしい……。
ところで雑貨屋には、食えもしない紙だのインクだのペン先だのなどといったつまらないものばかりではない。牛乳、卵、お菓子、乾物、飲み物などといった食料品もある。
コボちゃんはその中でも、特にビーフジャーキーが欲しかった。
自分も『文字』が書けたらあれを持ってこさせることが出来るのではなかろうか――などと考えつつ、バスケットを持って帰路に就く。
● しきょくのひとたち
ここはハンターオフィス・ジェオルジ支局。
職員のマリー、ジュアンが、ハンターの八橋杏子と、お茶を飲みながら世間話。
お昼休みの息抜き。
「へえー、コボルドにお使いさせてるの? 可能なんだ、そういうことが」
「買い物リストとお金を入れたバスケット持たせて、店主さんに渡すだけだから。犬でも出来ることならコボルドにだって出来るんじゃないかと思ってやらせてみたら、案外うまくいったのよ。ねー、ジュアン?」
「うん。途中で食べちゃうといけないから、口に入るものは頼まないようにしているけど……大体はうまくいってるよ」
「途中でお使い忘れてどこかへ行っちゃうってことはないの?」
「うーん。今のところはないよね、マリー」
「そうね。お使い行く度犬用ビスケットあげることにしてるから、その効果かもしれないけど」
のんびり話しているそこに、扉を軽く引っ掻く音。続いてバスケットを下げたコボちゃんが顔を出す。
「わし!」
ジュアンが席から立った。
「おかえりー。ちょっと待っててね、ビスケット取ってくるから」
「わしし! わしし!」
甲高く吠え続けるコボちゃんを横目にマリーは、ふと思った。
「……そういえば、コボルドの知能って正味どのくらいのレベルなのかしらね?」
「そうねえ……犬よりは上と思うわよ。ゴブリンの指示に従って動くことが出来るんだし。ただ論理的思考となるとどうかしらねえ……コボルド語はまだ解読されていないし」
● コボちゃんのきもち
違う違う古い袋に入ってるのはいらない。新しい袋を開けろ。しけってるんだぞ、それ。
コボちゃんが口酸っぱくそう言ったのにもかかわらずジュアンは、しけったビスケットをよこしてきた。
わからん奴らめ。
憤慨しながらコボちゃんはビスケットを受け取る。
こいつらはちっともコボルド語を理解しない。結構長いこと聞かせてやっているのに。耳が悪いんじゃなかろうか――実際ものすごく悪いようだが。ついでに鼻も悪いようだが。
あ、やっぱりビスケットしけってる。
「わしししし! わしー!」
● よくじつ、いらいがきた
ヴォイドゲートの探索に合わせ、亜人との交流が可能かどうかということに対する関心が、盛り上がりを見せている。
本日寄せられたこの依頼も、そういう流れに沿ったものであるだろう。
が、それにしたってマリーたちは、多少面食らう。
「『コボルドが字を覚えることは出来るかどうかの実験を手伝ってほしい』……って、なんでうちにこんな依頼が」
「コボちゃんがいるからじゃないかな。人馴れしてるから、確かにそういうこともしやすいとは思うけど」
当のコボちゃんはコボちゃんハウスの上で、空き缶三味線をかき鳴らしている。
なんだか知らないが昨日から相当機嫌が悪い。
ハンターオフィス・ジェオルジ支局にマスコットとして飼われている(本人的にはそう思ってないが)トイプードルに激似のコボルド、コボちゃん。
彼は最近、お使いすることを覚えた。
支局職員から品物が記されたメモとお金の入ったバスケットを持って近隣の雑貨屋へ行き、店の人間に渡し、品物とお釣りを詰めてもらって戻ってくるというだけの、簡単なお仕事だ。
それを何度か繰り返しているうちにコボちゃんは、『文字』というものの存在に気づいた。
自分が口でいくら言っても、店の人間は何も持ってこない。だけど、これを見せるとすぐに(別に欲しくもないものばかりだけど)何か持ってくる。
どうやら『文字』というものは、相手に言うことを聞かせる力があるらしい……。
ところで雑貨屋には、食えもしない紙だのインクだのペン先だのなどといったつまらないものばかりではない。牛乳、卵、お菓子、乾物、飲み物などといった食料品もある。
コボちゃんはその中でも、特にビーフジャーキーが欲しかった。
自分も『文字』が書けたらあれを持ってこさせることが出来るのではなかろうか――などと考えつつ、バスケットを持って帰路に就く。
● しきょくのひとたち
ここはハンターオフィス・ジェオルジ支局。
職員のマリー、ジュアンが、ハンターの八橋杏子と、お茶を飲みながら世間話。
お昼休みの息抜き。
「へえー、コボルドにお使いさせてるの? 可能なんだ、そういうことが」
「買い物リストとお金を入れたバスケット持たせて、店主さんに渡すだけだから。犬でも出来ることならコボルドにだって出来るんじゃないかと思ってやらせてみたら、案外うまくいったのよ。ねー、ジュアン?」
「うん。途中で食べちゃうといけないから、口に入るものは頼まないようにしているけど……大体はうまくいってるよ」
「途中でお使い忘れてどこかへ行っちゃうってことはないの?」
「うーん。今のところはないよね、マリー」
「そうね。お使い行く度犬用ビスケットあげることにしてるから、その効果かもしれないけど」
のんびり話しているそこに、扉を軽く引っ掻く音。続いてバスケットを下げたコボちゃんが顔を出す。
「わし!」
ジュアンが席から立った。
「おかえりー。ちょっと待っててね、ビスケット取ってくるから」
「わしし! わしし!」
甲高く吠え続けるコボちゃんを横目にマリーは、ふと思った。
「……そういえば、コボルドの知能って正味どのくらいのレベルなのかしらね?」
「そうねえ……犬よりは上と思うわよ。ゴブリンの指示に従って動くことが出来るんだし。ただ論理的思考となるとどうかしらねえ……コボルド語はまだ解読されていないし」
● コボちゃんのきもち
違う違う古い袋に入ってるのはいらない。新しい袋を開けろ。しけってるんだぞ、それ。
コボちゃんが口酸っぱくそう言ったのにもかかわらずジュアンは、しけったビスケットをよこしてきた。
わからん奴らめ。
憤慨しながらコボちゃんはビスケットを受け取る。
こいつらはちっともコボルド語を理解しない。結構長いこと聞かせてやっているのに。耳が悪いんじゃなかろうか――実際ものすごく悪いようだが。ついでに鼻も悪いようだが。
あ、やっぱりビスケットしけってる。
「わしししし! わしー!」
● よくじつ、いらいがきた
ヴォイドゲートの探索に合わせ、亜人との交流が可能かどうかということに対する関心が、盛り上がりを見せている。
本日寄せられたこの依頼も、そういう流れに沿ったものであるだろう。
が、それにしたってマリーたちは、多少面食らう。
「『コボルドが字を覚えることは出来るかどうかの実験を手伝ってほしい』……って、なんでうちにこんな依頼が」
「コボちゃんがいるからじゃないかな。人馴れしてるから、確かにそういうこともしやすいとは思うけど」
当のコボちゃんはコボちゃんハウスの上で、空き缶三味線をかき鳴らしている。
なんだか知らないが昨日から相当機嫌が悪い。
リプレイ本文
コボルド。
よく『雑魚キャラ』と位置付けられてしまうこの亜人の生態は、意外とよく分かっていない。
●
「コボルドは、そもそも異種族であるゴブリンの命令を理解している」
「今回の場合も、人間側の意思表示を、かなりの水準まで理解しているらしいですし」
「であれば、見込みはありますな。亜人との交渉がもっとスムーズに出来るようになるかも」
議論を戦わす学者先生たちとともに、ハンターオフィス・ジェオルジ支店へやってきたハンター一同。
さてコボちゃんはと探してみれば、コボちゃんハウスの上で空き缶三味線をかき鳴らしている。
顔かたちはトイプードル。着ているものはシルクハットにチョッキ、ジャケット。首にリボンタイ。『コボルド』と聞いて一般的に想像されるものとは、だいぶ異なった容姿。
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は、コボちゃんについて面識があるという天竜寺 舞(ka0377)に確認を取る。
「あれがコボちゃんですか?」
「ああ、そうだ。まあ、あたしより妹の方がアレについて詳しいんだけど。……にしても機嫌が悪そうだな」
確かにコボちゃん、顎をしゃくれさせ歯を剥いている。面白くないことでもあったのだろうか。
パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は手を振り、声をかけてみる。
「こんにちは、コボちゃん。パティダヨー♪」
コボちゃんはそっちを見たが、すぐ鼻先をあさってに向けた。
ザレム・アズール(ka0878)は指笛で注意を引いてみたが、無視された。もう一度吹いてみたら、うるさいとばかり吠えられた。
「わし! わわしし!」
しかし怒っても顔がプードル。怖くない。
エスカルラータ(ka0220)は友好の気持ちを示すべく、今聞いたばかりのコボちゃん語を適当に駆使する。
「わしし! わしー!」
「わし!? わわわわしー!」
気のせいだろうか一層吠え始めた。
(エスカルラータさん、今何かコボルド的にまずい言葉を使っちゃったんじゃないかなー……)
という疑いを抱かないでもないブレナー ローゼンベック(ka4184)。
学者先生たちも似たような懸念を覚えたのか、エスカルラータを止めにかかった。
「静かに、静かに。対象をあまり興奮させないでください。この後の意志疎通実験に差し支えますので……」
ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)は彼らの物言いに含まれる無神経さについて、不快さを覚えた。
(『亜人交流の為の実験』……交流と実験って、並立する概念じゃないわよね……実験て、相手を下に見ていなきゃ出てこない発想よね……)
ユキヤも学者たちの言葉に、ケイと同様、傲慢な匂いを嗅ぎ取った。
(”実験”……亜人さん達と交流は勿論したいですけれど、少し……哀しい言い方ですね……)
一歩引いて事態を眺めていたジン(ka6225)は、差し当たって解決すべき問題を提示する。
「で、どうやってあいつを降ろす?」
「ああ、それならあたしがやるよ」
三味線を手にした舞は、コボちゃんハウスの屋根まで二蹴りで上る。わうー、と警戒音を発するコボちゃんの前に座り込み、軽く即興べべんべん。
対抗意識が出てきたのかコボちゃんは唸るのを止め、空き缶三味線でべんべべべん。
「お、あんた三味線が弾けるの?」
じゃあこれは出来るかなー、と煽りつつ舞は、どんどんビートを早め、激しくしていく。
負けじとコボちゃんも弦をかき鳴らす。
荒波の激しさでかき鳴らされる東方的な音色に、ジンは、つい聞き入った。
ついでだからということで、エスカルラータも参加する。歌は彼女の得意分野なのだ。
「きたぁのぉ~海ょぉ~うぉと~この~海よぉ~~♪」
支所の窓が開いて、マリーが顔を出した。
「ちょっと、なんなのあんたたち! さっきからうるさいわよ!」
しかしその声は喧噪にかき消される。演奏会はその後、30分も続いた。
●
青天井の下並んでいるのは2つの学習机。
クッションでかさ増しした席に座っているのはコボちゃん。そうでない席に座っているのはエスカルラータ。
この『お勉強』が単なる人間側の押し付けとならないようにしたい。対等な立場での相互理解を、というのが彼女の考え。
そのためには同じ生徒として机を並べるのもよきかな。頑張ろうねの意志を込めて、雰囲気コボ語で話しかける。
「わしわし」
それが本来コボ語でどういう意味なのか知らないが、コボちゃん、一応返事した。
「うー、わしっ」
パトリシアはそんなコボちゃんに手を伸ばす。
「触ってもいーい?」
コボちゃんが特に拒否しなかったので、頭を撫で頬ずりし、最終的にもふもふはぐはぐ。
「ふあふあ、かわいぃネー♪♪」
最後の段階に至ってコボちゃんは、かなり眉間を狭めていたが、暴れはしなかった。支所に居着いてはや半年以上。人から触られることに慣れてきているのであろう。相手が一般人でなくハンターだという理由も、大いにあろうが。
ところで『文字』を覚えると言うのなら、まず『書く』ことに慣れてもらわなければならない。というわけで。
「サテ、おべんきょーデスっ!」
パトリシアは大きな画用紙を、コボちゃんとエスカルラータの机に置く。
ブレナーが子供用のクレヨンを持ってくる。24色色とりどり。
パトリシアは、赤いクレヨンを選んだ。
「こーやって、使うんダヨ―?」
紙の中央にぐるっと大きな丸を描き、コボちゃんに見せる。
それからコボちゃんに緑のクレヨンを握らせる。手を添えて、先程の丸の横に丸を描かせた。
「ね、描けたデショ?」
記憶にはないが、自分も昔こうやって字を習ったりしていたのだろうか……と目を細め、思いを馳せるジン。
紙に跡が残るというのが面白かったらしい。コボちゃんはすぐ、自分で勝手にクレヨンを動かし始めた。何かを描くというのではなく手遊びの延長だ。ざーっと横に線を引く。
ザレムは、少々大袈裟なくらい褒める。
「おおっ! すごいじゃないかコボ! 偉いぞ偉いぞ!」
そこで袖をエスカルラータに引かれた。
何かと思って見てみれば、エスカルラータの画用紙にも、丸だの線だの描いてある。
言わんとするところを察し、今度は彼女を褒めるザレム。
「エスカルラータもすごいじゃないか! こんなにたくさん線が引けるなんて、天才だな!」
するとコボちゃん、競争意識をもったらしい。もっとたくさん線を引く。ついでにぐるぐる丸を描く。
ブレナーとパトリシアは自分たちも画用紙を持ってきて、絵を描いた。
コップに入った水、肉、クッキー、ミルク、犬用ビスケット、ドッグフード、支所職員のマリーとジュアン、空き缶三味線、等々。どれもコボちゃんの身の回りに関係あるものばかり。
ブレナーは絵の横に単語の頭文字を記し、コボちゃんに見せる。
「コボちゃんは、この中でどれが好きですか?」
コボちゃんは、『ビスケット』、『マリー』、『ジュアン』の絵を見て、せっかく忘れていた昨日の一件をまた思い出してしまった。気が付いたら空腹でもあったので、倍加して腹が立ってきた。
そんなわけで絵を思い切り引っ掻く。
「わしー! わわわわ! わしししし!」
「わし!? わしわし!」
隣にいたエスカルラータが両手を持って止めたときには、画用紙の真ん中――マリーとジュアンが描いてあった部分だが――に大穴が空いていた。
ジンが脇から口を挟む。
「……疲れてきたんじゃないのか?」
舞もそこは同意見。
「これまで経験がないこと、やってるわけだしね」
間近で観察していた学者先生方も、観察対象の集中力が切れてきたのだろうという見方で一致する。
香しい紅茶の香りが漂ってきた。
気づけばユキヤが、ガーデンテーブルをセッティングしている。
「皆さん、少し休憩、如何ですか?」
テーブルの上にはケーキスタンドと、人数分のティーカップ。
食べ物の匂いを嗅ぎ付けたコボちゃんは、ぴょんと椅子から飛び降り、そちらへ駆けて行く。
「学者先生方もご一緒に如何ですか? 美味しい紅茶、持ってきましたから」
●
ケイは拍子をつけて歌いながら、コボちゃんにパンを渡す。
「パン、パン、焼き立てふかふかの、おいしいパン、パン♪」
パンを受け取ったコボちゃんに、ユキヤが横からアドバイス。
「このパンに、こうやって蜂蜜をつけると更に美味しいんですよ」
スプーンでパンの上に蜜を滴らせるのを見たコボちゃんは、掴んだパンを蜂蜜のビンへ直に突っ込んだ。そして引っ張り出し、ぱくり。
ねとついた手を嘗めしかめつらしく、先ほどパトリシアたちが描いた絵を見やる。
ケイが尋ねた。
「コボは何が好き?」
コボはビスケットの絵に手を置いた。
質問の意味を解すること、絵に描かれてあるものと実際に存在するものを関連づけることは、頭の中で出来ているらしい。
確信を持ったケイは『ビスケット』と言う文字を紙片に書き、それを実物とともに渡す。
「ビスケットが好き? それなら〇ね。分かる? さっき見せた、赤いカードの上に描いてあった、この印、これが、まる」
あれくらいのことが出来るのであれば、字くらい覚えられないわけがない……と舞は思うのであるが、ザレムによるとそれは早計な考えだとのこと。
「絵を実物と結び付けるまでは、簡単なんだ。言葉や文字の概念を持たない者に最初に教えるのは、文字でも言葉でも無い。物に名前が有るということと、文字という概念なんだ。全く発想が及ばない彼に『未知の概念に閃いて貰う』必要があるんだ」
そんなものだろうか。
思って舞は、自身の考案した勉強法――地面の上に干し肉の切れ端と骨を並べ、両者を表す文字を描き、二つを関連づけさせる――という試みを始める。
「コボー、いいか、これは『ホネ』。これは、『ニク』」
肉と骨が大好きなコボちゃんは、すぐさま近づいてきた。
「わしわし!」
「こら、まだ字が書けてないんだからとったらいけない!」
ジンも試みに協力した。隙あらば肉を横から掠め取ろうとする鼻先を、押さえる役をする。
何度も同じことを繰り返した後、肉と骨をいったんしまい込む舞。
コボちゃんは、画用紙を持ってきて、肉の絵を叩いた。
「わし、わし!」
よこせと言う意味らしい。
ザレムは一計を案じ、エスカルラータに耳打ちした。
エスカルラータはコボによく見えるように、彼が並べたカードを手に取る。
『りんご』
『ほしい』
『1』
3枚を選んで渡し、りんごを1個ゲット。
「わし!」
それを見たコボちゃんはカードに対し、大いに興味がわいてきた。
なんだかよく分からないがこれをどうにかしたら、あの人間が食べ物を寄越すらしい。
「わし? わし?」
ザレムから受け取ったカードをめくるコボちゃん。はたと手が止まる。
画用紙に書いてある食べ物の横に、カードの表にあるのと似た形の模様がついていると気づいたのだ。
「わし……わしー」
地面に座って考え込むコボちゃん。
様子を見ていた舞は、『ホネ』『ニク』という字の書かれたカードを見せつつ、同じ文字を、棒で地面に書き記して行く。絵かき歌風の節回しで、お尻ふりふりダンス。
「タテヨコナナメに棒入れて~もひとつナナメに棒入れて~」
エスカルラータも真似して、地面に文字を書く。大きく、分かりやすく。
「わし? わしっし……」
コボちゃんもつられて、尻尾ふりふりダンス。棒で地面を引っ掻いてみる。
『ホネ』
『ニク』
『ホネ』
『ニク』
「上手く書ければお店で買い物できるぞ♪」
何度も何度も同じ形を書いたところで、コボちゃんぴたりと動きを止める。
先程のカードと画用紙の所へ戻ってきて、眉間にしわを寄せ、小さく唸り――突然たれ耳をパッと持ち上げた。
『ニク』と書かれたカードを手に取り、テーブルに飛び上がり、ザレムの顔に突き付ける。
「わし、わふっふ!」
ザレムは試しにみかんを出してみた。
するとコボちゃんそれを撥ね除ける。唸ってカードを、顔にめり込みそうなほど押し付けてくる。
「いたたた分かったこれは違うな、じゃあ、これか?」
りんごを出すと、うー、と歯を剥いた。くちゃくちゃになった画用紙を持ってきて、肉の絵をばんばん叩く。
ペンとノートを手に察を続けている学者先生方は、軽くどよめいた。
「カードに書かれているもの以外を拒否した。これは文字の概念を理解したと見ていいのではありませんか?」
「いや、断定は早計です。独立して意味を持つものではなく、図案の付属物であると考えているのかもしれません」
その話を聞いたパトリシアは、新しい画用紙を持ってきた。
「コボちゃん、お肉欲しいならちゃんと書かなイト。さっき舞が棒でガリガリしてた字ダヨ。ちょっと難しいカモ知れないケド、やってご覧?」
コボちゃんは渡されたクレヨンを紙に押し当てた。ケイが紙を指でなぞり、アシストする。
「いい、こうよ。ニ、ク」
白い空間をいっぱいに使い、大きな大きな、押したらバラバラになりそうな感じの文字が書かれた。
『ニク』
●
「いや、実に興味深い結果です。至急これらの記録を持ち帰り、さらに詳しく分析してみることにします」
興奮を隠せない体の学者先生方は、そう言っていち早く帰って行った。
せっかく覚えた字を忘れたら勿体ない。思ったハンターたちは支所に、今回作った単語カードを提供することにする。
「よかったら、これで時々新しい言葉を教えてあげて頂戴」
「学習意欲はあるみたいですから」
ケイとブレナーの言葉にジュアンは、いいよ、と頷いた。
「向こうの気持ちが分かれば、僕らも色々助かるからね」
翻ってマリーは乗り気で無さそうである。
「安請け合いして大丈夫なの? 勤務外労働なんて、あたしは嫌だからね」
舞は、これから起きるだろう事態を想像する。
(コボ、勝手に骨だの肉だの買いに行っちゃうかもなあ)
彼女が視線を向ける先には、コボちゃんから吠え方の指導を受けているエスカルラータの姿があった。
「わし! わし!」
パトリシアも参加している。
「わし!」
両者、コボルド語で「オッス」くらいは言えるようになるんじゃないだろうか、とザレムは思う。そこから先の会話は無理でも。
ジンはコボちゃんの前で、土をひと掴みすくい取った。自分も文字を教えてみたくなったのだ。
「これが『土』だ」
しかしコボちゃんは残念ながら、食べ物以外の名詞に興味がわかないらしく、匂いを嗅ぐだけに止まった。
ユキヤはそんな彼に、ネックレスを渡す。
「気に入って頂けるか分かりませんけれど今日の記念です」
コボちゃんは偉そうに胸を張って受け取った。
舞から貰った干し肉と骨で満杯になったジャケットのポッケへ、ぎゅうぎゅう押し込む。
彼は微笑んで、その頭を撫でた。
「また、お会いしましょうね」
●
依頼を終えての結論。コボルドは字を覚えることが可能である。
ただし、食べ物に関する名詞以外は、まだまだ理解が及ばない。
よく『雑魚キャラ』と位置付けられてしまうこの亜人の生態は、意外とよく分かっていない。
●
「コボルドは、そもそも異種族であるゴブリンの命令を理解している」
「今回の場合も、人間側の意思表示を、かなりの水準まで理解しているらしいですし」
「であれば、見込みはありますな。亜人との交渉がもっとスムーズに出来るようになるかも」
議論を戦わす学者先生たちとともに、ハンターオフィス・ジェオルジ支店へやってきたハンター一同。
さてコボちゃんはと探してみれば、コボちゃんハウスの上で空き缶三味線をかき鳴らしている。
顔かたちはトイプードル。着ているものはシルクハットにチョッキ、ジャケット。首にリボンタイ。『コボルド』と聞いて一般的に想像されるものとは、だいぶ異なった容姿。
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は、コボちゃんについて面識があるという天竜寺 舞(ka0377)に確認を取る。
「あれがコボちゃんですか?」
「ああ、そうだ。まあ、あたしより妹の方がアレについて詳しいんだけど。……にしても機嫌が悪そうだな」
確かにコボちゃん、顎をしゃくれさせ歯を剥いている。面白くないことでもあったのだろうか。
パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は手を振り、声をかけてみる。
「こんにちは、コボちゃん。パティダヨー♪」
コボちゃんはそっちを見たが、すぐ鼻先をあさってに向けた。
ザレム・アズール(ka0878)は指笛で注意を引いてみたが、無視された。もう一度吹いてみたら、うるさいとばかり吠えられた。
「わし! わわしし!」
しかし怒っても顔がプードル。怖くない。
エスカルラータ(ka0220)は友好の気持ちを示すべく、今聞いたばかりのコボちゃん語を適当に駆使する。
「わしし! わしー!」
「わし!? わわわわしー!」
気のせいだろうか一層吠え始めた。
(エスカルラータさん、今何かコボルド的にまずい言葉を使っちゃったんじゃないかなー……)
という疑いを抱かないでもないブレナー ローゼンベック(ka4184)。
学者先生たちも似たような懸念を覚えたのか、エスカルラータを止めにかかった。
「静かに、静かに。対象をあまり興奮させないでください。この後の意志疎通実験に差し支えますので……」
ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)は彼らの物言いに含まれる無神経さについて、不快さを覚えた。
(『亜人交流の為の実験』……交流と実験って、並立する概念じゃないわよね……実験て、相手を下に見ていなきゃ出てこない発想よね……)
ユキヤも学者たちの言葉に、ケイと同様、傲慢な匂いを嗅ぎ取った。
(”実験”……亜人さん達と交流は勿論したいですけれど、少し……哀しい言い方ですね……)
一歩引いて事態を眺めていたジン(ka6225)は、差し当たって解決すべき問題を提示する。
「で、どうやってあいつを降ろす?」
「ああ、それならあたしがやるよ」
三味線を手にした舞は、コボちゃんハウスの屋根まで二蹴りで上る。わうー、と警戒音を発するコボちゃんの前に座り込み、軽く即興べべんべん。
対抗意識が出てきたのかコボちゃんは唸るのを止め、空き缶三味線でべんべべべん。
「お、あんた三味線が弾けるの?」
じゃあこれは出来るかなー、と煽りつつ舞は、どんどんビートを早め、激しくしていく。
負けじとコボちゃんも弦をかき鳴らす。
荒波の激しさでかき鳴らされる東方的な音色に、ジンは、つい聞き入った。
ついでだからということで、エスカルラータも参加する。歌は彼女の得意分野なのだ。
「きたぁのぉ~海ょぉ~うぉと~この~海よぉ~~♪」
支所の窓が開いて、マリーが顔を出した。
「ちょっと、なんなのあんたたち! さっきからうるさいわよ!」
しかしその声は喧噪にかき消される。演奏会はその後、30分も続いた。
●
青天井の下並んでいるのは2つの学習机。
クッションでかさ増しした席に座っているのはコボちゃん。そうでない席に座っているのはエスカルラータ。
この『お勉強』が単なる人間側の押し付けとならないようにしたい。対等な立場での相互理解を、というのが彼女の考え。
そのためには同じ生徒として机を並べるのもよきかな。頑張ろうねの意志を込めて、雰囲気コボ語で話しかける。
「わしわし」
それが本来コボ語でどういう意味なのか知らないが、コボちゃん、一応返事した。
「うー、わしっ」
パトリシアはそんなコボちゃんに手を伸ばす。
「触ってもいーい?」
コボちゃんが特に拒否しなかったので、頭を撫で頬ずりし、最終的にもふもふはぐはぐ。
「ふあふあ、かわいぃネー♪♪」
最後の段階に至ってコボちゃんは、かなり眉間を狭めていたが、暴れはしなかった。支所に居着いてはや半年以上。人から触られることに慣れてきているのであろう。相手が一般人でなくハンターだという理由も、大いにあろうが。
ところで『文字』を覚えると言うのなら、まず『書く』ことに慣れてもらわなければならない。というわけで。
「サテ、おべんきょーデスっ!」
パトリシアは大きな画用紙を、コボちゃんとエスカルラータの机に置く。
ブレナーが子供用のクレヨンを持ってくる。24色色とりどり。
パトリシアは、赤いクレヨンを選んだ。
「こーやって、使うんダヨ―?」
紙の中央にぐるっと大きな丸を描き、コボちゃんに見せる。
それからコボちゃんに緑のクレヨンを握らせる。手を添えて、先程の丸の横に丸を描かせた。
「ね、描けたデショ?」
記憶にはないが、自分も昔こうやって字を習ったりしていたのだろうか……と目を細め、思いを馳せるジン。
紙に跡が残るというのが面白かったらしい。コボちゃんはすぐ、自分で勝手にクレヨンを動かし始めた。何かを描くというのではなく手遊びの延長だ。ざーっと横に線を引く。
ザレムは、少々大袈裟なくらい褒める。
「おおっ! すごいじゃないかコボ! 偉いぞ偉いぞ!」
そこで袖をエスカルラータに引かれた。
何かと思って見てみれば、エスカルラータの画用紙にも、丸だの線だの描いてある。
言わんとするところを察し、今度は彼女を褒めるザレム。
「エスカルラータもすごいじゃないか! こんなにたくさん線が引けるなんて、天才だな!」
するとコボちゃん、競争意識をもったらしい。もっとたくさん線を引く。ついでにぐるぐる丸を描く。
ブレナーとパトリシアは自分たちも画用紙を持ってきて、絵を描いた。
コップに入った水、肉、クッキー、ミルク、犬用ビスケット、ドッグフード、支所職員のマリーとジュアン、空き缶三味線、等々。どれもコボちゃんの身の回りに関係あるものばかり。
ブレナーは絵の横に単語の頭文字を記し、コボちゃんに見せる。
「コボちゃんは、この中でどれが好きですか?」
コボちゃんは、『ビスケット』、『マリー』、『ジュアン』の絵を見て、せっかく忘れていた昨日の一件をまた思い出してしまった。気が付いたら空腹でもあったので、倍加して腹が立ってきた。
そんなわけで絵を思い切り引っ掻く。
「わしー! わわわわ! わしししし!」
「わし!? わしわし!」
隣にいたエスカルラータが両手を持って止めたときには、画用紙の真ん中――マリーとジュアンが描いてあった部分だが――に大穴が空いていた。
ジンが脇から口を挟む。
「……疲れてきたんじゃないのか?」
舞もそこは同意見。
「これまで経験がないこと、やってるわけだしね」
間近で観察していた学者先生方も、観察対象の集中力が切れてきたのだろうという見方で一致する。
香しい紅茶の香りが漂ってきた。
気づけばユキヤが、ガーデンテーブルをセッティングしている。
「皆さん、少し休憩、如何ですか?」
テーブルの上にはケーキスタンドと、人数分のティーカップ。
食べ物の匂いを嗅ぎ付けたコボちゃんは、ぴょんと椅子から飛び降り、そちらへ駆けて行く。
「学者先生方もご一緒に如何ですか? 美味しい紅茶、持ってきましたから」
●
ケイは拍子をつけて歌いながら、コボちゃんにパンを渡す。
「パン、パン、焼き立てふかふかの、おいしいパン、パン♪」
パンを受け取ったコボちゃんに、ユキヤが横からアドバイス。
「このパンに、こうやって蜂蜜をつけると更に美味しいんですよ」
スプーンでパンの上に蜜を滴らせるのを見たコボちゃんは、掴んだパンを蜂蜜のビンへ直に突っ込んだ。そして引っ張り出し、ぱくり。
ねとついた手を嘗めしかめつらしく、先ほどパトリシアたちが描いた絵を見やる。
ケイが尋ねた。
「コボは何が好き?」
コボはビスケットの絵に手を置いた。
質問の意味を解すること、絵に描かれてあるものと実際に存在するものを関連づけることは、頭の中で出来ているらしい。
確信を持ったケイは『ビスケット』と言う文字を紙片に書き、それを実物とともに渡す。
「ビスケットが好き? それなら〇ね。分かる? さっき見せた、赤いカードの上に描いてあった、この印、これが、まる」
あれくらいのことが出来るのであれば、字くらい覚えられないわけがない……と舞は思うのであるが、ザレムによるとそれは早計な考えだとのこと。
「絵を実物と結び付けるまでは、簡単なんだ。言葉や文字の概念を持たない者に最初に教えるのは、文字でも言葉でも無い。物に名前が有るということと、文字という概念なんだ。全く発想が及ばない彼に『未知の概念に閃いて貰う』必要があるんだ」
そんなものだろうか。
思って舞は、自身の考案した勉強法――地面の上に干し肉の切れ端と骨を並べ、両者を表す文字を描き、二つを関連づけさせる――という試みを始める。
「コボー、いいか、これは『ホネ』。これは、『ニク』」
肉と骨が大好きなコボちゃんは、すぐさま近づいてきた。
「わしわし!」
「こら、まだ字が書けてないんだからとったらいけない!」
ジンも試みに協力した。隙あらば肉を横から掠め取ろうとする鼻先を、押さえる役をする。
何度も同じことを繰り返した後、肉と骨をいったんしまい込む舞。
コボちゃんは、画用紙を持ってきて、肉の絵を叩いた。
「わし、わし!」
よこせと言う意味らしい。
ザレムは一計を案じ、エスカルラータに耳打ちした。
エスカルラータはコボによく見えるように、彼が並べたカードを手に取る。
『りんご』
『ほしい』
『1』
3枚を選んで渡し、りんごを1個ゲット。
「わし!」
それを見たコボちゃんはカードに対し、大いに興味がわいてきた。
なんだかよく分からないがこれをどうにかしたら、あの人間が食べ物を寄越すらしい。
「わし? わし?」
ザレムから受け取ったカードをめくるコボちゃん。はたと手が止まる。
画用紙に書いてある食べ物の横に、カードの表にあるのと似た形の模様がついていると気づいたのだ。
「わし……わしー」
地面に座って考え込むコボちゃん。
様子を見ていた舞は、『ホネ』『ニク』という字の書かれたカードを見せつつ、同じ文字を、棒で地面に書き記して行く。絵かき歌風の節回しで、お尻ふりふりダンス。
「タテヨコナナメに棒入れて~もひとつナナメに棒入れて~」
エスカルラータも真似して、地面に文字を書く。大きく、分かりやすく。
「わし? わしっし……」
コボちゃんもつられて、尻尾ふりふりダンス。棒で地面を引っ掻いてみる。
『ホネ』
『ニク』
『ホネ』
『ニク』
「上手く書ければお店で買い物できるぞ♪」
何度も何度も同じ形を書いたところで、コボちゃんぴたりと動きを止める。
先程のカードと画用紙の所へ戻ってきて、眉間にしわを寄せ、小さく唸り――突然たれ耳をパッと持ち上げた。
『ニク』と書かれたカードを手に取り、テーブルに飛び上がり、ザレムの顔に突き付ける。
「わし、わふっふ!」
ザレムは試しにみかんを出してみた。
するとコボちゃんそれを撥ね除ける。唸ってカードを、顔にめり込みそうなほど押し付けてくる。
「いたたた分かったこれは違うな、じゃあ、これか?」
りんごを出すと、うー、と歯を剥いた。くちゃくちゃになった画用紙を持ってきて、肉の絵をばんばん叩く。
ペンとノートを手に察を続けている学者先生方は、軽くどよめいた。
「カードに書かれているもの以外を拒否した。これは文字の概念を理解したと見ていいのではありませんか?」
「いや、断定は早計です。独立して意味を持つものではなく、図案の付属物であると考えているのかもしれません」
その話を聞いたパトリシアは、新しい画用紙を持ってきた。
「コボちゃん、お肉欲しいならちゃんと書かなイト。さっき舞が棒でガリガリしてた字ダヨ。ちょっと難しいカモ知れないケド、やってご覧?」
コボちゃんは渡されたクレヨンを紙に押し当てた。ケイが紙を指でなぞり、アシストする。
「いい、こうよ。ニ、ク」
白い空間をいっぱいに使い、大きな大きな、押したらバラバラになりそうな感じの文字が書かれた。
『ニク』
●
「いや、実に興味深い結果です。至急これらの記録を持ち帰り、さらに詳しく分析してみることにします」
興奮を隠せない体の学者先生方は、そう言っていち早く帰って行った。
せっかく覚えた字を忘れたら勿体ない。思ったハンターたちは支所に、今回作った単語カードを提供することにする。
「よかったら、これで時々新しい言葉を教えてあげて頂戴」
「学習意欲はあるみたいですから」
ケイとブレナーの言葉にジュアンは、いいよ、と頷いた。
「向こうの気持ちが分かれば、僕らも色々助かるからね」
翻ってマリーは乗り気で無さそうである。
「安請け合いして大丈夫なの? 勤務外労働なんて、あたしは嫌だからね」
舞は、これから起きるだろう事態を想像する。
(コボ、勝手に骨だの肉だの買いに行っちゃうかもなあ)
彼女が視線を向ける先には、コボちゃんから吠え方の指導を受けているエスカルラータの姿があった。
「わし! わし!」
パトリシアも参加している。
「わし!」
両者、コボルド語で「オッス」くらいは言えるようになるんじゃないだろうか、とザレムは思う。そこから先の会話は無理でも。
ジンはコボちゃんの前で、土をひと掴みすくい取った。自分も文字を教えてみたくなったのだ。
「これが『土』だ」
しかしコボちゃんは残念ながら、食べ物以外の名詞に興味がわかないらしく、匂いを嗅ぐだけに止まった。
ユキヤはそんな彼に、ネックレスを渡す。
「気に入って頂けるか分かりませんけれど今日の記念です」
コボちゃんは偉そうに胸を張って受け取った。
舞から貰った干し肉と骨で満杯になったジャケットのポッケへ、ぎゅうぎゅう押し込む。
彼は微笑んで、その頭を撫でた。
「また、お会いしましょうね」
●
依頼を終えての結論。コボルドは字を覚えることが可能である。
ただし、食べ物に関する名詞以外は、まだまだ理解が及ばない。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/19 10:18:50 |
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手習い計画(相談卓) パトリシア=K=ポラリス(ka5996) 人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/09/22 17:13:18 |