ゲスト
(ka0000)
CAMCON開催!
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/16 12:00
- 完成日
- 2016/09/22 02:07
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
サルヴァトーレ・ロッソの帰還以来、クリムゾンウェスト製の魔導アーマーやCAMの重要性が再注目されています。
同盟が担当している物は、これらCAM用の武装ですが、本来、機体以上に重要な存在のはずなのですが、今ひとつ製造者や商人などには認知されていません。
何しろ、ベースとなっているのが異世界の技術と考えられていますから、具体的なイメージを抱けない者も多いようです。
これではいけません。
これから、ますます歪虚との戦いが激しさを増していくだろうというのに、ハンターたちに武器もないCAMで戦わせるわけにはいかないではありませんか。フマーレにあるミシェーラ・ガレージでの武器開発を、技術的にも資金的にも潤滑に行え寝ように支援を集め、人々にもより多く認知してもらわねばなりません。
馴染みがないのであれば、これは見てもらうしかありません。
「では、CAMのコンベンション、すなわちCAMCONを開催しましょう」
相談を受けて、ドメニコ・カファロが助言してくれました。
かくして、CAMや専用武装の展示会が開催される運びとなりました。場所は、フマーレの湾岸地区にある港に面した倉庫街です。
メインは、ミシェーラ・ガレージで開発されている試作兵器の宣伝となっています。それらの有用性をアピールするために、CAMや魔導アーマーの貸与権を持っているハンターたちも集められました。
なるべく目立つようにと、カラーリングも派手です。また、実戦ではないので、ハリボテ的な追加装甲で、目立つデコレーションが施されている機体もあります。まさに、華やかなお祭りといったところでした。
屋内では、武器の本物やレプリカが展示され、開発者が技術的な説明をしています。コンパニオンのお姉さんは華を添える形でニコニコしていますが、中には小型化した武器のレプリカを振り回して人目を集めている娘もいるようです。
外では、実物のCAMや魔導アーマーが、模擬弾などを使って実演を行っています。
まあ、中にはちょっと変わった兵器もあるようですが、おおよそは、歪虚との戦闘を考えられたものです。
「うちで扱うような商品ではありませんが、後学のために見ておいて損はありませんわね」
大きな商談の場でもありますから、お嬢様ことセレーネ・リコもイベントを見に来ていました。
会場は結構な人出で、賑わっているようです。
さてはて、いったいどんな物が展示されているのでしょうか……。
同盟が担当している物は、これらCAM用の武装ですが、本来、機体以上に重要な存在のはずなのですが、今ひとつ製造者や商人などには認知されていません。
何しろ、ベースとなっているのが異世界の技術と考えられていますから、具体的なイメージを抱けない者も多いようです。
これではいけません。
これから、ますます歪虚との戦いが激しさを増していくだろうというのに、ハンターたちに武器もないCAMで戦わせるわけにはいかないではありませんか。フマーレにあるミシェーラ・ガレージでの武器開発を、技術的にも資金的にも潤滑に行え寝ように支援を集め、人々にもより多く認知してもらわねばなりません。
馴染みがないのであれば、これは見てもらうしかありません。
「では、CAMのコンベンション、すなわちCAMCONを開催しましょう」
相談を受けて、ドメニコ・カファロが助言してくれました。
かくして、CAMや専用武装の展示会が開催される運びとなりました。場所は、フマーレの湾岸地区にある港に面した倉庫街です。
メインは、ミシェーラ・ガレージで開発されている試作兵器の宣伝となっています。それらの有用性をアピールするために、CAMや魔導アーマーの貸与権を持っているハンターたちも集められました。
なるべく目立つようにと、カラーリングも派手です。また、実戦ではないので、ハリボテ的な追加装甲で、目立つデコレーションが施されている機体もあります。まさに、華やかなお祭りといったところでした。
屋内では、武器の本物やレプリカが展示され、開発者が技術的な説明をしています。コンパニオンのお姉さんは華を添える形でニコニコしていますが、中には小型化した武器のレプリカを振り回して人目を集めている娘もいるようです。
外では、実物のCAMや魔導アーマーが、模擬弾などを使って実演を行っています。
まあ、中にはちょっと変わった兵器もあるようですが、おおよそは、歪虚との戦闘を考えられたものです。
「うちで扱うような商品ではありませんが、後学のために見ておいて損はありませんわね」
大きな商談の場でもありますから、お嬢様ことセレーネ・リコもイベントを見に来ていました。
会場は結構な人出で、賑わっているようです。
さてはて、いったいどんな物が展示されているのでしょうか……。
リプレイ本文
●CAMCON会場
フマーレの数多くある埠頭の一つに属する倉庫街で、コンベンションは行われていました。
埠頭には何機もの魔導型CAMデュミナスや魔導型ドミニオンが展示され、定時的にデモンストレーションを行っています。
大型の倉庫内は綺麗に整理され、そこにも多くの魔導型CAMや魔導アーマーなどが、既存の武装や試作品の武装と共に展示されていました。
他にも、すぐ近くの海岸では、砂浜から沖にかけてが射撃タイプのデモンストレーション用サブ会場となっています。
いわゆる軍事見本市になるわけですが、会場には様々な人々が集まっていました。
何しろ、歪虚から人々を守る頼もしい力という意味では、人々の生活に直結した話題なのですから。
単純に物珍しいメカに憧れを感じて目を輝かせている子供たちもいますし、物見遊山で見物に来たらしい人々もいます。
中には、これから自分たちが使うかもしれない装備を見に来た軍人やハンターもいますし、商機になりそうだと目を輝かせた商人たちもいます。
主催側としては、CAMや魔導アーマーをもっと身近な頼れる存在として認識してもらい、人々の支持を得るのが目的のコンベンションではあります。けれども、実際には、同盟の商人からより多くの資金を集めるという目的もありました。新しい兵器の開発には、それこそ膨大な資金が必要です。そのためには、もっと同盟の商人に出資してもらう必要があります。
ここで、魔導型CAMや魔導アーマーの有用性をアピールでき、新装備にも興味を持ってもらえれば、正式採用や量産化のめども立つというものです。せっかくミシェーラ・ガレージで新装備が開発されても、オンリーワンではいくつもの戦場を展開する戦いでは役に立ちません。すべての機体が容易に装備でき、量産性やメンテナンス性が良好で、より高性能の物が求められているのです。
そんな裏方の苦労や思惑はおいておいて、イベントの方は華やかに行われていきました。
●屋内会場
「来ておる来ておる、古今東西のユニットたちが綺羅星のごとく集まっておるわ」
会場である倉庫の入り口左右に展示された魔導型デュミナスと魔導型ドミニオンに感激しながら、ミグ・ロマイヤー(ka0665)が、興奮を抑えきれない様子で中へと入っていきました。入り口からしてこれです。もう、ワクワク物でした。機導師として、あるいは、メカニックとして、これほど心躍る催し物はありません。
ミグも出展はしていますが、まずは他の出展者のブースを鑑賞してからです。いったい、どんなトンデモ兵器が展示されているのでしょうか。ワクワク。
室内展示では、実際の試作装備のレプリカが展示され、関係者がその説明を行っていました。
クオン・サガラ(ka0018)が説明していたのは、CAM用の狙撃用サードアームです。
「現在のCAMの狙撃能力は十分であるとは言いがたいものがあります。そこで、私たちが目指したのが、狙撃能力の拡張です。そして、こちらが、狙撃銃を扱うための、専用補助アームとなります」
CAMの腰部を再現したモックに取りつけられた機械腕を前にして、クオンが人々に説明を始めました。
「CAMの腰部に取りつけ、単独で狙撃銃を使用できるという優れものです」
自信満々でクオンが説明しますが、集まった観客たちは少々懐疑的です。
「これ、片方だけでは、バランスが悪いのではなかろうか?」
すかさず、ミグがツッコミます。同じ開発も担う者としては、気になる部分は徹底して気になるのです。
ミグが疑問に思うのももっともです。片側にだけこのがっしりした腕とスナイパーライフルの重量がかかったのでは、バランスが悪すぎます。
「御指摘の点ですが、オートバランサーのプログラム改良によって、許容範囲内と試算されています。また、狙撃は移動しながら行うものではないので、むしろ空いた両手を使って機体の固定が可能と考えております」
ソフトウエアがらみかと、ミグがちょっと考え込みます。ドワーフとしては、ハードウエアは完璧にする自信はありますが、ソフトウエアという概念は真新しいので、まだまだ勉強中です。
「それにしたって、狙撃のためだけに高価な腕一本を製造するのは、費用対効果や利益に合わん気がするが」
ミグ以外からも、商人たちから容赦ない質問が飛びます。これは、自分の時にも、うかうかできないとミグが気を引き締めました。
さすがに実用性と採算性で攻めてくる商人たちですから、なかなかに手厳しい評価が続きます。
単純にくっつければいいという装備ではありませんから、接合部にはそれ相応の伝達回路が必要です。そうでなければ、コックピットからコントロールすることができません。
また、アーム一本でロングバレルの銃を固定するのも理にかないません。従来通り、通常の両手で狙撃銃を扱った方が銃口の跳ね上がりなどを効果的に押さえられるはずです。
あるいは、ショルダー用のアタッチメントとアウトリガーを装備した方が、アームを作るよりも数段低コストで安定するでしょう。
唯一の利点は、補助腕の可動域の広さからくる射界の広さですが、通常射撃であればいざ知らず、狙撃であれば広い可動域はほとんどの場合必要ありません。
「お言葉ですが、現在のCAMのマニピュレータでは、瞬間的で繊細な動きを要求されるスナイパーには、役者不足な点があります。また、使用可能な状態で、通常よりも一種多い武装を携行できるという強みもあります」
きついツッコミにも、クオンは強気でした。狙撃用に特化したアームと言うことが特徴のようです。
「そして、このサードアームの性能を十二分に引き出すのが、こちらにある90ミリマテリアルバースト・スナイパーライフルです」
そう言って、クオンが第二の展示品を紹介しました。
こちらは、炸薬ではなく、マテリアルを使ったスナイパーライフルです。
「クリムゾンウェストの火薬の質では排出される煤の清掃問題がメンテナンス上の問題となりますが、魔導銃と同様のシステムを使えばその点がかなり改善されます。また、ラインさえ確保できれば、弾薬の生産性も良好です。ライフル全体の機構としては、トリガーレスで機構を簡略化し、生産性を高めています。また、小口径高速弾を使うことで威力は減少しても、射程を伸ばすことが可能となっています」
クオンの説明に対して、やはり商人たちは容赦ない質問を浴びせてきました。何しろ、これを量産するとなれば、金を出すのは彼らです。不安定材料は、徹底して潰しておきたいのでしょう。
ひとまず、説明通りの性能を引き出すとすれば、弾薬の薬莢部分の増大化が問題とされました。通常105ミリである弾頭が90ミリと小口径になった分、薬莢も細くなるため、高初速を得るためには長さが増大します。それは、弾薬の運搬のしやすさに直結するため、輸送能力を低下させるのではないかという疑問でした。また、弾頭重量の低下で射程を伸ばしても、有効射程としてはむしろ逆効果ではないのかという声もあがりました。安定した射程を伸ばすのであればバレルの延長ですが、それですとサブアームで固定しにくくなります。また、トリガーレスであるのであれば、むしろ従来のマニピュレータの前腕部に取りつけて、アームガン化した方がよいのではないのかという声も出ました。
「ふむ、それもありじゃなあ」
うんうんと、ミグがその意見にうなずきます。完成品を作りだすのは重要ですが、今目の前にある物を完成品と決めつけることは愚かです。メカは、日々進化する物でした。
どうにも、クオンの目指した性能と、実際の機構が微妙にかみ合ってはいないようです。
「だが、サードアームというのは、なかなかに面白い」
「むしろ、小型化して、給弾用や近接戦闘用や工作用に特化させた方が……」
「小さい方が、コストもかかりませんからなあ」
「スナイパーライフルも、この機構であれば、むしろ内装型の武装に転換した方が……」
「マニピュレータを排し、ガンアームとして肩などに設置した方が、双方の利点を生かせるかもしれませんなあ」
なんだか、クオンそっちのけで、商人たちがひそひそと相談しています。もちろん、ちゃっかりとミグもその中に混じっていました。
「ええと、とりあえず、後で、第二会場で試射を行いますので。よろしければ、お出かけください」
なんだかあさっての方向へ話が広がってしまったので、クオンが慌ててデモンストレーションの案内をします。
「それはぜひ」
情報は逃さないと、あくまでも貪欲な商人たちでした。
別のブースでは、天央 観智(ka0896)が、戦略指南ブースを開いていました。
「古典的な戦法しか存在しなかったクリムゾンウェストにこれからCAMや幻獣を戦力として投入するにあたって、根本的な戦法の変革と、戦闘における意識改革を行わなければなりません」
興味を持って聞いている人々に対して、観智が言いました。
「現状、火力一点主義や大艦巨砲主義に偏りがちな戦術ですが、戦場の拡大化によって、このままではいずれ問題が発生するでしょう。戦力の移動の高速化による戦線の拡大化、その状況にあって、状況に応じた命令を隅々にまで伝達する必要があります」
昨今の大規模化する戦場においては、情報が戦況を左右すると言えます。そのための通信部隊の設立などは急務のはずでした。当然、そのための設備の開発も必要になります。通信基地の設置などによる、長距離通信も必要でしょう。
通信による連携が密になれば、より広範囲を戦場とできるため、連携による十字砲火や、高速部隊によって敵の背後を突いたり、確実な包囲網などが敷けるはずです。また、同時攻撃による飽和攻撃など、面制圧の概念も必要でしょう。
いずれにしても、決定権は人間が掌握しておく必要があるというのが観智の持論でした。とはいえ、クリムゾンウェストの人々にコンピューターによる意思決定という概念はありませんので、いまいちピンとこないようではありましたが。
また、士官学校を出ている者はある程度理解できるとして、一般人にはなんだかチンプンカンプンの様子でした。
実際、情報戦や陣形などによる戦術も重要ですが、CAMや魔導アーマーによる戦術は機甲部隊による戦術に準ずると考えられますので、部隊構成と補給・メンテナンス部隊の配置の重要性の方が急務ではあります。そういう意味では、大規模な戦術に偏った観智の話は、今ひとつピントが外れているようでした。どちらかと言うと、指揮官むけの講義のようです。今回のコンベンションに集まっているのは、現場のパイロットや、後方支援の商人たちですから、観智の話の重要性に気づく者が少ないのも致し方ないのかもしれません。
できれば、同盟軍などの士官学校に、新たなカリキュラムを導入する必要があるかもしれません。観智の話を、高級士官の誰かが聞いてくれていればいいのですが……。
別のブースでは、何やら人だかりができていました。レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)のブースです。
他にブースに比べて女性の割合も多いですし、なぜか魔導カメラ持参の観客が多数います。
ブースの中央には、降着ポーズをとった魔導アーマーヘイルダムベースのプラヴァー重装改が展示されていました。後部スタビライザーを後ろへと伸ばし、両足を前方に出して反動制御用補助脚で安定化させています。コックピットの高さを低くして、乗り降りしやすい姿勢です。
青紫色の機体は、ヘイムダルとは正反対のほっそりとしたシルエットです。極端とも言える軽量化で、ヘイムダルの性能を落とすことなく高機動化を実現しています。おかげで、これ以上の性能拡張は難しいというピーキーさです。
展示状態は、胸部ハッチをオープンのままにしてあります。通常は、胸部装甲ハッチ内にあるラダーで乗り降りしますが、ここには移動型の乗降階段があるので、それを使ってコックピットに行けるようになっていました。当然魔導エンジンに火は入っていませんが、一般の人たちも試乗できるようになっています。
見るからに狭いコクピット内ですが、シートは衝撃吸収素材を贅沢に使い、女性らしく自由にカバーデザインを変えられる物でした。こういう隠れた場所のおしゃれ心は、絶対なくしてはいけないものだとレオーネは考えています。
だからこそです。もう少し、パイロットスーツにもバリエーションがあっていいのではないでしょうか。
「そこで、今日は試作パイロットスーツを御用意しました。希望者は、こちらの更衣室で御希望のパイロットスーツに着替えて、魔導アーマーのコックピットに試乗することができます」
そう説明するレオーネも、リアルブルー風の迷彩模様のアーミージャケット姿でした。
「さあ、どうぞ!」
パッと、ジャケットを脱ぎ捨てるとレオーネが下に着込んでいたピチピチのパイロットスーツに早着替えして見せました。
「おおうっ」と、周囲のカメコがシャッターを切ります。男の娘でもいいのでしょうか……。
しかも、ピチピチで、色々とあれです。まあ、イベント用にごてごてとしたプロテクターっぽい物をつけてあるので、つまみ出されるようなことにはならないと思いますが。それとも、そのせいでさっきから写真を撮られているのでしょうか!?
ブースにある更衣室の横には、レオーネが手作りした様々なパイロットスーツがハンガーに掛けてあります。
飛行服風のパイロットスーツや、ライダースーツ風のシームレスな物、帝国騎士風のちょっと派手な物、辺境風に毛皮でモコモコした物、中には、東方風の巫女服や看護服など、すでに単なるコスプレにしかならないような服まであります。やはり、そういう物が、カメコを呼び寄せているのでしょうか!?
何か、色々な意味で、盛況なレオーネのブースでした。
「こ、この発想はなかったのだ……」
ぴらぴらとしたアイドル風衣装を手にとって、ミグがちょっと顔を赤らめました。この狭いコクピットにミニスカートで座るというのは、ちょっと冒険過ぎます。
「これで、はたして戦えるのかな?」
「気合いです!」
ミグの疑問に、レオーネが即座に答えました。
「このパイロットスーツによる部隊を結成すれば、入隊希望者爆増です! まあ、実際の戦闘には、今ボクが着ているような、防護スーツを着ればいいんですから」
そう言って、レオーネが胸を張りました。ぴっちりスーツは、パッと見た目が脆弱ですが、これには衝撃硬化剤を仕込んであります。瞬間的な衝撃を受けると、硬化してパイロットの身を守るという物です。とはいえ、衝撃硬化剤を仕込んだリキッドアーマーはサルヴァトーレ・ロッソでも本当に稀少なので、コンベンションが終わったら研究施設に返却しなければならないわけですが。
「さあ、ついに、登場、しました。CAM用、おたま……です」
ちょっと恥ずかしそうに、でもキラキラと目を輝かせながら説明しているのは、ミオレスカ(ka3496)です。
彼女が展示しているのは、巨大なおたまでした。
CAMサイズの物なので、掬う部分だけでも巨大な中華鍋よりも大きくがっしりしています。その装甲厚からして、普通の人間であれば十分大型ラウンドシールドとして役に立つでしょう。また、その長さから考えて、メイス的な打撃武器としても使えそうです。
「本当に、おたま……」
いったいなんの意味があるのかと、ミグが目を丸くしました。いかな改造マニアのミグでも、この発想はありませんでした。
「CAMの活躍の場は、何も戦闘だけではありません。そこで、この、おたまです!」
確固たる自信を持って、ミオレスカが言いました。
「戦ってよし、守ってよし、食わせてよし! 後で、開場前でデモンストレーションを行いますので、ぜひおいでください!」
そう言うと、ミオレスカがCAMが作る芋煮会のチラシを観客たちに配っていきました。
「これが、強襲用にカスタマイズした、バーグラリーウルフだ」
ブースに展示された愛機を前にして、キャリコ・ビューイ(ka5044)が言いました。
魔導型デュミナスをベースとしていますが、そのシルエットは歩兵その物です。
丁寧に組み合わされた装甲板は、極力接合部の露出を防ぐと同時に、マウントラッチカバーの役目も兼ねています。これら、多数の外装武装接合部を有する反面、ペイロードはほとんど変化がないため、移動力は犠牲となっていました。それを補うかのように機動力を強化してありますが、それゆえにわずかな挙動でもバランスを崩しやすいという欠点をかかえていました。そのため、操縦にはこの機体に熟練したパイロットを必要とします。
専用のパイロットを育成しないと使用できないというのは、汎用兵器としては致命的な欠点ですが、機体自体の戦闘能力はなかなかのものです。
メインウエポンとしては30ミリアサルトライフル、近接用武装としてはライトニングクローを装備しています。
それに加えて、遠距離攻撃用のフォールディングカノンは、大型砲を中折れ式にし、移動時の安定性を高めた物です。機構が複雑になった分、精度とメンテナンス性に難がありますが、素早く射撃位置に移動できるという利点があります。
また、肩に装備するミサイルランチャーは、7連装で、弾薬の規格さえ統一すれば多目的ランチャーとしても利用できる設計です。
スモークディスチャージャーは、機体各部に装着できる規格となっています。
脚部には、橇つきのクローラーが装備されていて、接地面積の増大化による安定性の向上と、整地された場所や荒れ地での走破性能を高めています。
他にも、小型のガトリングガンや、マイクロミサイルポッドなど、色々なオプションが用意されているようでした。
各装備の個別性能は注目すべきところがありますが、専用のチューニングを必要とする武装も多く、機体自体もそれに対応させる必要があるため、すべての装備を使いこなすためにはパイロットとメカニックを含めたすべての部隊をそれ専用に訓練しなければいけないという問題をかかえています。
使いこなせる者がいないのでは、商品になりません。
また、爆装が多いのも気にはなる点です。誘爆の対策を考えなければ、武装が多いという利点が、致命的な欠点となりかねません。特に、敵との距離が近くなるであろう強襲機としては留意すべきでしょう。
これは、セットではなく、単品としてみるべきなのでしょうか。個々の武装で見れば、生産ラインに乗りそうな物もあります。
「後で、模擬戦闘をお見せする」
やや懐疑的な商人たちに、キャリコはそう一言言うのでした。
隣のブースでは、ハリケーン・バウの前に立って、ミグが説明をしています。
アーミーグリーンの機体は元となった魔導型ドミニオンと比べて、かなり重圧なシルエットとなっています。特に特徴的なのが、柱状の長い頭部でした。重量が増した分は、各部に設置されたスラスターで機動力を補っています。また、右腕には工作用のドリルを改造したシザーハンズを装備し、肩から背負うようにして高周波ブレードを装備していました。
直線的な元のドミニオンのシルエットとは違い、全体に丸みを帯びた追加装甲が施されています。そして、特徴的な球面をもっこの追加装甲が、ミグの展示品でした。
「こちらが、ミグ御自慢のリアクティブアーマーなのである」
自信満々で、ミグが切り出しました。
球面により跳弾性を高めた追加装甲に炸薬を仕込み、カウンターの爆風で敵の攻撃の入射角を変えて攻撃を弾くという物です。リアルブルーでは、主にHEAT弾などの成形炸薬弾に有効な装甲ですが、歪虚に対してはどうなのでしょうか。
「怪物型の敵からのパンチなどには有効そうだな」
「だが、熱線や、ブレスにはどうなんだ? 自爆するだけじゃないのか?」
ちょっと、賛否両論が商人たちからあがります。
まあ、オールマイティな装備というのはほとんど存在しませんから、あたりまえの反応ではありますが。
とりあえず、肉弾戦を挑んでくる歪虚には、効果がありそうです。この場合、重装甲による静止慣性の大きさや、機体の安定性もプラスに働きそうです。
ただし、クリムゾンウェストでは、魔法に準ずる物理的でない攻撃も存在しますので、うまく働くかどうかは敵の攻撃との相性次第という言うことになるでしょう。ライトニングボルトやブリザードに対しては、あまり効果が望めないかもしれません。
いずれにしても、多少の変形は元に戻るメモリーズのような装甲とは違い、炸薬の関係で同一箇所における効果は一回のみですから、過信は危険でしょう。一点集中攻撃を受けたら、二度目はありません。
「なあに、殺られる前に殺れ、そこがポイントだろうが。そのために、CAMのエネルギーを増大させるプロペラントタンク、これを装甲の裏と、カーゴスペースに装備することができるようになっておる」
自信満々で説明するミグでしたが、リアルブルーのCAMパイロットたちが、えっという顔をしました。
推進剤タンクで、どうしてエネルギーが増えるのでしょうか。多分、マテリアルタンクの間違いでしょう。
呼び方はどうあれ、エネルギー量が増えるのはメリットです。ただし、重量の増加分の機動力低下がありますが、リアクティブアーマーにとっては、マイナスだけではないところがメリットです。どうやら、ミグの装備は、すべてを総合的に判断する必要があるようです。それぞれの装備単体ではデメリットが目立ちますが、総合的に欠点を補い合った構成のようです。
「そして、これがミグの目玉! 魔導式荷電粒子砲なのだあ!」
満を持して、ミグが叫びました。砲台に近い巨大なランチャーが、会場に現れます。
思わず、リアルブルー出身者たちから、「おお」と歓声があがりました。みんな目がキラキラしています。浪漫です。
「強化したエネルギーを利用して、一気にローレンツ力を発生させて、ビームを発射するのだ。どうじゃ、浪漫であろう」
うんうんと、一部の者たちがうなずきました。
サルヴァトーレ・ロッソ級でもなければ、簡単に荷電粒子砲を装備することはできないでしょう。小型化は困難です。けれども、クリムゾンウェストの魔導の力を応用すれば、光明が見えるのかもしれません。
「後で、試射を行うので、みんな見に来るのだあ!」
「おおー」
ミグの言葉に、意味が分かっている者たちが、大盛り上がりに盛り上がりりました。
●第二会場
第二会場では、広い砂浜と、海上に浮かんだブイを標的として、実機によるデモンストレーションが行われていました。
最初に現れたのは、クオンの乗るフォボスです。
クリムゾンウェストの人々には馴染みのない、リアルブルーの火星の衛星の名を冠した魔導型デュミナスは、鮮やかな真紅と白にペイントされていました。ベースとなったデュミナスとは違ったその直線的なフォルムは、前面に集中させた追加装甲故です。そのため、増加した機体重量でも機動力を確保するために追加フレームにより背部に羽根状のスラスターを装備し、脚部背面にも内蔵式のスラスターを増加しています。使用時は装甲板を開く形です。これによって、通常歩行なみの機動力を確保しています。
形状的にはスラスターオープン時の背部が弱点となりかねませんが、遠距離狙撃型のため、後ろをとられることは考慮されていません。むしろ、背後に回られたらおしまいです。
また、肩や肘、膝、足首などの稼働部は丁寧にシールされており、湿地や砂地や茂みなどにアンブッシュした場合でも、稼働部に影響が出ないように配慮されています。
頭部は、額部分に補助カメラが装備され、ゴーグル型のカバー下のメインカメラと共に、遠距離索敵に特化した物となっています。
本来の武装は、大型の105ミリスナイパーライフルと、大太刀「鬼霧雨」です。さらに、今日はデモンストレーションのために、右腰部に90ミリマテリアルバースト・スナイパーライフルを持った狙撃用サードアームが設置されていました。機体のラインに沿うように折りたたまれたサードアームはライフルを上にむけ、なるべく腕や脚の動きの邪魔にならないように収納されています。けれども、やはり現在の形状と大きさでは、移動時の障害になるのは否めません。
『それでは、試射を行います』
アナウンスを受けて、クオンがフォボスを移動させ始めました。
けれども、やはり、砂地となると安定性が悪くなります。シールは万全ですので、砂や水には大丈夫なのですが。
決められたポジションまで移動すると、フォボスが海上の的を右手に持った剣で指し示しました。まるで、ホームラン予告のバッターのようです。
ライフルを上にむけて構えていたサードアームが、スーッと的めがけて構えなおしました。人々が予想したよりも、かなり小さな発射音と反動で、弾丸が発射されます。
が、おしい、的を掠めるようにして外れました。観客たちから、「おしい」とか「あーあ」とか、色々な声があがります。
「やはり、FCSのレベルアップの方が急務のようですね」
コックピットの中で、クオンが改めて問題点を噛みしめます。
風が凪いだ瞬間を狙って、クオンが第二射を放ちます。今度は、みごとに的を撃ち抜きました。第一射のデータから誤差修正したおかげです。
観客の一部から、今度は拍手が起きました。
いずれにしても、設計段階からのさらなる最適化作業は必要ですが、サブウエポンとしては使い道を模索できそうです。
『続いて、ハリケーン・バウによる荷電粒子砲? の試射を行います』
アナウンスに呼ばれて、ミグの乗るハリケーン・バウがのっしのっしと現れました。補助キャリアーに載せた大型砲を押してきます。
フォボスと入れ替わるようにして、射撃位置につきます。
「さあ、歴史的瞬間であるのだあ」
ミグが荷電粒子砲のトリガーを引きました。大型砲から、電磁加速された重金属粒子プラズマがビームとして発射されます。
直下の海面を沸騰させて水蒸気を左右に吹き飛ばしつつ、直進したビームが的を消滅させました。
「おおおお!」
観客たちが、一気に盛り上がりました。
「おっし!」
思わず、ミグがコックピットの中でガッツポーズをとります。
「第二射、いくのだあ!」
調子に乗って、ミグがすぐに第二射を発射しました。
とたん、すでに赤熱していた砲身が、耐熱温度を超えて大爆発を起こします。当然、ハリケーン・バウが爆発で後方へと吹っ飛ばされました。
「てへっ、まだまだ、改良の余地があるようだの」
奇跡的に無事だったミグが、ハリケーン・バウのコックピットの中で、ごまかし笑いをしました。
根本的に、ビームを誘導する砲身の耐熱性能が、クリムゾンウェストで生成できる素材では無理がありすぎたようです。あっけなく溶解してしまいました。まあ、それでこそ、魔導による冷却機能を開発すればいいのではと言うことなのですが、その急激な温度変化に耐えられる素材はと言うと……。いずれにしても、連射は不可能です。今回も、一射目が成功したのが奇跡だったのかもしれません。
それにしてもよく無事だったものです。リアクティブアーマーが功を奏したようです。はっ、まさか、このためのリアクティブアーマーだったのでしょうか……。
『続いては、バーグラリーウルフの模擬戦闘となります』
アナウンスされて、バーグラリーウルフが砂浜に侵入してきました。
砂地に対して、脚に装備したクローラーは十二分に機能しているようです。歩行に比べると、遥かに速く移動していきます。ただし、直線走行は良好ですが、旋回にはかなりの熟練を必要とするようでした。キャリコは難なくこなしているようですが、歩行とまったく違う移動方法には、慣れるのが大変でしょう。
模擬戦闘とは謳っていますが、敵機が用意されているわけではないので、砂浜に立られたいくつかの的を仮想敵として破壊していくことになります。
ライフルで牽制攻撃をしつつ、スモークディスチャージャーで煙幕を張ります。その煙を回り込むように移動すると、ミサイルの斉射で最初の的を破壊しました。
移動しながら折りたたんでいたフォールディングカノンを展開すると、次の的にむかって発射しました。反動で大きく機体がぶれるのを強引に修正すると、エクスプロージブボルトで余分な武装を排除して身軽になります。
一気に次の的へむかって加速すると、そのまま体当たりで的を押し倒します。そこへ、コックピットハッチを開いてパイロットの身体を晒すと、キャリコは持っていた拳銃で的を破壊しました。
おおと、観客たちから歓声があがります。戦闘ショーとしてはなかなかに見応えのあるものでした。
最近ユニットを手に入れたばかりのパイロットたちが歓声を送る中、もともと軍属のパイロットたちは少し渋い顔です。
「ワンマンアーミーは、傭兵ならいいが、軍としては厳しいな」
模擬戦闘としてはいいのですが、移動しながらのフォールディングキャノンの使用など、セオリーからは反しています。同様の連係攻撃を兵に強いた場合は、使いこなせずに隙を生み、敵につけ込まれるのがおちです。誰もがキャリコのような動きができるわけではありませんし、キャリコ自身も、すべての戦いで同様の動きができるという保証もないのですから。
とはいえ、各武装が魅力的なのも真実です。
観客によって、評価が分かれるキャリコの実演でした。
●会場前広場
『さあ、これから、作り、ますよー!』
魔導型デュミナスをベースとしたシルバーレードルに乗ったミオレスカが、巨大なおたまを高々と掲げて言いました。
やや鋭角で平面的な装甲に換装されたシルバーレードルは、白銀の機体にライトグリーンのラインをマーキングした美しい機体です。それゆえに、巨大おたまが異様に目立ちます。
『それでは、CAM、お料理教室の、開催です』
植物精油を燃やした巨大なコンロの上に用意された超巨大鍋に、ミオレスカが野菜をどんどんと投入していきました。どうやら、ヘイムダルの胸部装甲から作った特注品のようです。
CAMの力で、固いカボチャも一撃粉砕して、食べやすい大きさに砕いて投入します。適度な水を足したら、塩で味つけして、いよいよおたまの登場です。ムラが出ないようにかき混ぜつつ、丁寧にアクを掬っていきます。
はたして、CAMでこんな繊細な動きができるのかと言えるようなみごとな手際でした。
あっという間に、何十人分もの野菜スープができあがります。
お手伝いさんたちがそれを集まった人々に配っていく間、ミオレスカは次の料理に取りかかります。
円形のCAMシールドを改造した鉄鍋を片手に持ち、投入した野菜や肉をおたまで回して炒めていきます。
『さあ、野菜炒めも、どうぞ♪』
できあがった野菜炒めを、ミオレスカが勧めます。
大規模な進軍が予定された時、その食事の用意は問題となるはずです。みんながみんなカンパンでは、飽きてきて士気が上がりません。とはいっても、大人数の食事を調理するのは大変な手間でしょう。
『そこでCAMコックさんです。その、大きな力となるのが、おたまなのです。おたまばんざい!』
ミオレスカが自信を持って言いました。
それに、おたまであれば、防御にも、攻撃にも使えるはずです。少なくとも、ミオレスカはそう信じています。おたまばんざい。
「おたまばんざい」
なんとなくつられて、一緒に唱和してしまう観客たちでした。
展示が一段落済んだ他の者たちも、ここに集まってきて、スープと野菜炒めに舌鼓を打ちました。
「CAM、その汎用性、恐るべし……」
このおかげで、なんだか変な商用利用を考え始める商人たちもちらほらいたようです。大丈夫なのでしょうか。
ともあれ、CAMCONは、当初の目的を十二分に生かし、なかなか動こうとしなかった商人たちをも、その重い腰をあげさせることに成功したのでした。
フマーレの数多くある埠頭の一つに属する倉庫街で、コンベンションは行われていました。
埠頭には何機もの魔導型CAMデュミナスや魔導型ドミニオンが展示され、定時的にデモンストレーションを行っています。
大型の倉庫内は綺麗に整理され、そこにも多くの魔導型CAMや魔導アーマーなどが、既存の武装や試作品の武装と共に展示されていました。
他にも、すぐ近くの海岸では、砂浜から沖にかけてが射撃タイプのデモンストレーション用サブ会場となっています。
いわゆる軍事見本市になるわけですが、会場には様々な人々が集まっていました。
何しろ、歪虚から人々を守る頼もしい力という意味では、人々の生活に直結した話題なのですから。
単純に物珍しいメカに憧れを感じて目を輝かせている子供たちもいますし、物見遊山で見物に来たらしい人々もいます。
中には、これから自分たちが使うかもしれない装備を見に来た軍人やハンターもいますし、商機になりそうだと目を輝かせた商人たちもいます。
主催側としては、CAMや魔導アーマーをもっと身近な頼れる存在として認識してもらい、人々の支持を得るのが目的のコンベンションではあります。けれども、実際には、同盟の商人からより多くの資金を集めるという目的もありました。新しい兵器の開発には、それこそ膨大な資金が必要です。そのためには、もっと同盟の商人に出資してもらう必要があります。
ここで、魔導型CAMや魔導アーマーの有用性をアピールでき、新装備にも興味を持ってもらえれば、正式採用や量産化のめども立つというものです。せっかくミシェーラ・ガレージで新装備が開発されても、オンリーワンではいくつもの戦場を展開する戦いでは役に立ちません。すべての機体が容易に装備でき、量産性やメンテナンス性が良好で、より高性能の物が求められているのです。
そんな裏方の苦労や思惑はおいておいて、イベントの方は華やかに行われていきました。
●屋内会場
「来ておる来ておる、古今東西のユニットたちが綺羅星のごとく集まっておるわ」
会場である倉庫の入り口左右に展示された魔導型デュミナスと魔導型ドミニオンに感激しながら、ミグ・ロマイヤー(ka0665)が、興奮を抑えきれない様子で中へと入っていきました。入り口からしてこれです。もう、ワクワク物でした。機導師として、あるいは、メカニックとして、これほど心躍る催し物はありません。
ミグも出展はしていますが、まずは他の出展者のブースを鑑賞してからです。いったい、どんなトンデモ兵器が展示されているのでしょうか。ワクワク。
室内展示では、実際の試作装備のレプリカが展示され、関係者がその説明を行っていました。
クオン・サガラ(ka0018)が説明していたのは、CAM用の狙撃用サードアームです。
「現在のCAMの狙撃能力は十分であるとは言いがたいものがあります。そこで、私たちが目指したのが、狙撃能力の拡張です。そして、こちらが、狙撃銃を扱うための、専用補助アームとなります」
CAMの腰部を再現したモックに取りつけられた機械腕を前にして、クオンが人々に説明を始めました。
「CAMの腰部に取りつけ、単独で狙撃銃を使用できるという優れものです」
自信満々でクオンが説明しますが、集まった観客たちは少々懐疑的です。
「これ、片方だけでは、バランスが悪いのではなかろうか?」
すかさず、ミグがツッコミます。同じ開発も担う者としては、気になる部分は徹底して気になるのです。
ミグが疑問に思うのももっともです。片側にだけこのがっしりした腕とスナイパーライフルの重量がかかったのでは、バランスが悪すぎます。
「御指摘の点ですが、オートバランサーのプログラム改良によって、許容範囲内と試算されています。また、狙撃は移動しながら行うものではないので、むしろ空いた両手を使って機体の固定が可能と考えております」
ソフトウエアがらみかと、ミグがちょっと考え込みます。ドワーフとしては、ハードウエアは完璧にする自信はありますが、ソフトウエアという概念は真新しいので、まだまだ勉強中です。
「それにしたって、狙撃のためだけに高価な腕一本を製造するのは、費用対効果や利益に合わん気がするが」
ミグ以外からも、商人たちから容赦ない質問が飛びます。これは、自分の時にも、うかうかできないとミグが気を引き締めました。
さすがに実用性と採算性で攻めてくる商人たちですから、なかなかに手厳しい評価が続きます。
単純にくっつければいいという装備ではありませんから、接合部にはそれ相応の伝達回路が必要です。そうでなければ、コックピットからコントロールすることができません。
また、アーム一本でロングバレルの銃を固定するのも理にかないません。従来通り、通常の両手で狙撃銃を扱った方が銃口の跳ね上がりなどを効果的に押さえられるはずです。
あるいは、ショルダー用のアタッチメントとアウトリガーを装備した方が、アームを作るよりも数段低コストで安定するでしょう。
唯一の利点は、補助腕の可動域の広さからくる射界の広さですが、通常射撃であればいざ知らず、狙撃であれば広い可動域はほとんどの場合必要ありません。
「お言葉ですが、現在のCAMのマニピュレータでは、瞬間的で繊細な動きを要求されるスナイパーには、役者不足な点があります。また、使用可能な状態で、通常よりも一種多い武装を携行できるという強みもあります」
きついツッコミにも、クオンは強気でした。狙撃用に特化したアームと言うことが特徴のようです。
「そして、このサードアームの性能を十二分に引き出すのが、こちらにある90ミリマテリアルバースト・スナイパーライフルです」
そう言って、クオンが第二の展示品を紹介しました。
こちらは、炸薬ではなく、マテリアルを使ったスナイパーライフルです。
「クリムゾンウェストの火薬の質では排出される煤の清掃問題がメンテナンス上の問題となりますが、魔導銃と同様のシステムを使えばその点がかなり改善されます。また、ラインさえ確保できれば、弾薬の生産性も良好です。ライフル全体の機構としては、トリガーレスで機構を簡略化し、生産性を高めています。また、小口径高速弾を使うことで威力は減少しても、射程を伸ばすことが可能となっています」
クオンの説明に対して、やはり商人たちは容赦ない質問を浴びせてきました。何しろ、これを量産するとなれば、金を出すのは彼らです。不安定材料は、徹底して潰しておきたいのでしょう。
ひとまず、説明通りの性能を引き出すとすれば、弾薬の薬莢部分の増大化が問題とされました。通常105ミリである弾頭が90ミリと小口径になった分、薬莢も細くなるため、高初速を得るためには長さが増大します。それは、弾薬の運搬のしやすさに直結するため、輸送能力を低下させるのではないかという疑問でした。また、弾頭重量の低下で射程を伸ばしても、有効射程としてはむしろ逆効果ではないのかという声もあがりました。安定した射程を伸ばすのであればバレルの延長ですが、それですとサブアームで固定しにくくなります。また、トリガーレスであるのであれば、むしろ従来のマニピュレータの前腕部に取りつけて、アームガン化した方がよいのではないのかという声も出ました。
「ふむ、それもありじゃなあ」
うんうんと、ミグがその意見にうなずきます。完成品を作りだすのは重要ですが、今目の前にある物を完成品と決めつけることは愚かです。メカは、日々進化する物でした。
どうにも、クオンの目指した性能と、実際の機構が微妙にかみ合ってはいないようです。
「だが、サードアームというのは、なかなかに面白い」
「むしろ、小型化して、給弾用や近接戦闘用や工作用に特化させた方が……」
「小さい方が、コストもかかりませんからなあ」
「スナイパーライフルも、この機構であれば、むしろ内装型の武装に転換した方が……」
「マニピュレータを排し、ガンアームとして肩などに設置した方が、双方の利点を生かせるかもしれませんなあ」
なんだか、クオンそっちのけで、商人たちがひそひそと相談しています。もちろん、ちゃっかりとミグもその中に混じっていました。
「ええと、とりあえず、後で、第二会場で試射を行いますので。よろしければ、お出かけください」
なんだかあさっての方向へ話が広がってしまったので、クオンが慌ててデモンストレーションの案内をします。
「それはぜひ」
情報は逃さないと、あくまでも貪欲な商人たちでした。
別のブースでは、天央 観智(ka0896)が、戦略指南ブースを開いていました。
「古典的な戦法しか存在しなかったクリムゾンウェストにこれからCAMや幻獣を戦力として投入するにあたって、根本的な戦法の変革と、戦闘における意識改革を行わなければなりません」
興味を持って聞いている人々に対して、観智が言いました。
「現状、火力一点主義や大艦巨砲主義に偏りがちな戦術ですが、戦場の拡大化によって、このままではいずれ問題が発生するでしょう。戦力の移動の高速化による戦線の拡大化、その状況にあって、状況に応じた命令を隅々にまで伝達する必要があります」
昨今の大規模化する戦場においては、情報が戦況を左右すると言えます。そのための通信部隊の設立などは急務のはずでした。当然、そのための設備の開発も必要になります。通信基地の設置などによる、長距離通信も必要でしょう。
通信による連携が密になれば、より広範囲を戦場とできるため、連携による十字砲火や、高速部隊によって敵の背後を突いたり、確実な包囲網などが敷けるはずです。また、同時攻撃による飽和攻撃など、面制圧の概念も必要でしょう。
いずれにしても、決定権は人間が掌握しておく必要があるというのが観智の持論でした。とはいえ、クリムゾンウェストの人々にコンピューターによる意思決定という概念はありませんので、いまいちピンとこないようではありましたが。
また、士官学校を出ている者はある程度理解できるとして、一般人にはなんだかチンプンカンプンの様子でした。
実際、情報戦や陣形などによる戦術も重要ですが、CAMや魔導アーマーによる戦術は機甲部隊による戦術に準ずると考えられますので、部隊構成と補給・メンテナンス部隊の配置の重要性の方が急務ではあります。そういう意味では、大規模な戦術に偏った観智の話は、今ひとつピントが外れているようでした。どちらかと言うと、指揮官むけの講義のようです。今回のコンベンションに集まっているのは、現場のパイロットや、後方支援の商人たちですから、観智の話の重要性に気づく者が少ないのも致し方ないのかもしれません。
できれば、同盟軍などの士官学校に、新たなカリキュラムを導入する必要があるかもしれません。観智の話を、高級士官の誰かが聞いてくれていればいいのですが……。
別のブースでは、何やら人だかりができていました。レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)のブースです。
他にブースに比べて女性の割合も多いですし、なぜか魔導カメラ持参の観客が多数います。
ブースの中央には、降着ポーズをとった魔導アーマーヘイルダムベースのプラヴァー重装改が展示されていました。後部スタビライザーを後ろへと伸ばし、両足を前方に出して反動制御用補助脚で安定化させています。コックピットの高さを低くして、乗り降りしやすい姿勢です。
青紫色の機体は、ヘイムダルとは正反対のほっそりとしたシルエットです。極端とも言える軽量化で、ヘイムダルの性能を落とすことなく高機動化を実現しています。おかげで、これ以上の性能拡張は難しいというピーキーさです。
展示状態は、胸部ハッチをオープンのままにしてあります。通常は、胸部装甲ハッチ内にあるラダーで乗り降りしますが、ここには移動型の乗降階段があるので、それを使ってコックピットに行けるようになっていました。当然魔導エンジンに火は入っていませんが、一般の人たちも試乗できるようになっています。
見るからに狭いコクピット内ですが、シートは衝撃吸収素材を贅沢に使い、女性らしく自由にカバーデザインを変えられる物でした。こういう隠れた場所のおしゃれ心は、絶対なくしてはいけないものだとレオーネは考えています。
だからこそです。もう少し、パイロットスーツにもバリエーションがあっていいのではないでしょうか。
「そこで、今日は試作パイロットスーツを御用意しました。希望者は、こちらの更衣室で御希望のパイロットスーツに着替えて、魔導アーマーのコックピットに試乗することができます」
そう説明するレオーネも、リアルブルー風の迷彩模様のアーミージャケット姿でした。
「さあ、どうぞ!」
パッと、ジャケットを脱ぎ捨てるとレオーネが下に着込んでいたピチピチのパイロットスーツに早着替えして見せました。
「おおうっ」と、周囲のカメコがシャッターを切ります。男の娘でもいいのでしょうか……。
しかも、ピチピチで、色々とあれです。まあ、イベント用にごてごてとしたプロテクターっぽい物をつけてあるので、つまみ出されるようなことにはならないと思いますが。それとも、そのせいでさっきから写真を撮られているのでしょうか!?
ブースにある更衣室の横には、レオーネが手作りした様々なパイロットスーツがハンガーに掛けてあります。
飛行服風のパイロットスーツや、ライダースーツ風のシームレスな物、帝国騎士風のちょっと派手な物、辺境風に毛皮でモコモコした物、中には、東方風の巫女服や看護服など、すでに単なるコスプレにしかならないような服まであります。やはり、そういう物が、カメコを呼び寄せているのでしょうか!?
何か、色々な意味で、盛況なレオーネのブースでした。
「こ、この発想はなかったのだ……」
ぴらぴらとしたアイドル風衣装を手にとって、ミグがちょっと顔を赤らめました。この狭いコクピットにミニスカートで座るというのは、ちょっと冒険過ぎます。
「これで、はたして戦えるのかな?」
「気合いです!」
ミグの疑問に、レオーネが即座に答えました。
「このパイロットスーツによる部隊を結成すれば、入隊希望者爆増です! まあ、実際の戦闘には、今ボクが着ているような、防護スーツを着ればいいんですから」
そう言って、レオーネが胸を張りました。ぴっちりスーツは、パッと見た目が脆弱ですが、これには衝撃硬化剤を仕込んであります。瞬間的な衝撃を受けると、硬化してパイロットの身を守るという物です。とはいえ、衝撃硬化剤を仕込んだリキッドアーマーはサルヴァトーレ・ロッソでも本当に稀少なので、コンベンションが終わったら研究施設に返却しなければならないわけですが。
「さあ、ついに、登場、しました。CAM用、おたま……です」
ちょっと恥ずかしそうに、でもキラキラと目を輝かせながら説明しているのは、ミオレスカ(ka3496)です。
彼女が展示しているのは、巨大なおたまでした。
CAMサイズの物なので、掬う部分だけでも巨大な中華鍋よりも大きくがっしりしています。その装甲厚からして、普通の人間であれば十分大型ラウンドシールドとして役に立つでしょう。また、その長さから考えて、メイス的な打撃武器としても使えそうです。
「本当に、おたま……」
いったいなんの意味があるのかと、ミグが目を丸くしました。いかな改造マニアのミグでも、この発想はありませんでした。
「CAMの活躍の場は、何も戦闘だけではありません。そこで、この、おたまです!」
確固たる自信を持って、ミオレスカが言いました。
「戦ってよし、守ってよし、食わせてよし! 後で、開場前でデモンストレーションを行いますので、ぜひおいでください!」
そう言うと、ミオレスカがCAMが作る芋煮会のチラシを観客たちに配っていきました。
「これが、強襲用にカスタマイズした、バーグラリーウルフだ」
ブースに展示された愛機を前にして、キャリコ・ビューイ(ka5044)が言いました。
魔導型デュミナスをベースとしていますが、そのシルエットは歩兵その物です。
丁寧に組み合わされた装甲板は、極力接合部の露出を防ぐと同時に、マウントラッチカバーの役目も兼ねています。これら、多数の外装武装接合部を有する反面、ペイロードはほとんど変化がないため、移動力は犠牲となっていました。それを補うかのように機動力を強化してありますが、それゆえにわずかな挙動でもバランスを崩しやすいという欠点をかかえていました。そのため、操縦にはこの機体に熟練したパイロットを必要とします。
専用のパイロットを育成しないと使用できないというのは、汎用兵器としては致命的な欠点ですが、機体自体の戦闘能力はなかなかのものです。
メインウエポンとしては30ミリアサルトライフル、近接用武装としてはライトニングクローを装備しています。
それに加えて、遠距離攻撃用のフォールディングカノンは、大型砲を中折れ式にし、移動時の安定性を高めた物です。機構が複雑になった分、精度とメンテナンス性に難がありますが、素早く射撃位置に移動できるという利点があります。
また、肩に装備するミサイルランチャーは、7連装で、弾薬の規格さえ統一すれば多目的ランチャーとしても利用できる設計です。
スモークディスチャージャーは、機体各部に装着できる規格となっています。
脚部には、橇つきのクローラーが装備されていて、接地面積の増大化による安定性の向上と、整地された場所や荒れ地での走破性能を高めています。
他にも、小型のガトリングガンや、マイクロミサイルポッドなど、色々なオプションが用意されているようでした。
各装備の個別性能は注目すべきところがありますが、専用のチューニングを必要とする武装も多く、機体自体もそれに対応させる必要があるため、すべての装備を使いこなすためにはパイロットとメカニックを含めたすべての部隊をそれ専用に訓練しなければいけないという問題をかかえています。
使いこなせる者がいないのでは、商品になりません。
また、爆装が多いのも気にはなる点です。誘爆の対策を考えなければ、武装が多いという利点が、致命的な欠点となりかねません。特に、敵との距離が近くなるであろう強襲機としては留意すべきでしょう。
これは、セットではなく、単品としてみるべきなのでしょうか。個々の武装で見れば、生産ラインに乗りそうな物もあります。
「後で、模擬戦闘をお見せする」
やや懐疑的な商人たちに、キャリコはそう一言言うのでした。
隣のブースでは、ハリケーン・バウの前に立って、ミグが説明をしています。
アーミーグリーンの機体は元となった魔導型ドミニオンと比べて、かなり重圧なシルエットとなっています。特に特徴的なのが、柱状の長い頭部でした。重量が増した分は、各部に設置されたスラスターで機動力を補っています。また、右腕には工作用のドリルを改造したシザーハンズを装備し、肩から背負うようにして高周波ブレードを装備していました。
直線的な元のドミニオンのシルエットとは違い、全体に丸みを帯びた追加装甲が施されています。そして、特徴的な球面をもっこの追加装甲が、ミグの展示品でした。
「こちらが、ミグ御自慢のリアクティブアーマーなのである」
自信満々で、ミグが切り出しました。
球面により跳弾性を高めた追加装甲に炸薬を仕込み、カウンターの爆風で敵の攻撃の入射角を変えて攻撃を弾くという物です。リアルブルーでは、主にHEAT弾などの成形炸薬弾に有効な装甲ですが、歪虚に対してはどうなのでしょうか。
「怪物型の敵からのパンチなどには有効そうだな」
「だが、熱線や、ブレスにはどうなんだ? 自爆するだけじゃないのか?」
ちょっと、賛否両論が商人たちからあがります。
まあ、オールマイティな装備というのはほとんど存在しませんから、あたりまえの反応ではありますが。
とりあえず、肉弾戦を挑んでくる歪虚には、効果がありそうです。この場合、重装甲による静止慣性の大きさや、機体の安定性もプラスに働きそうです。
ただし、クリムゾンウェストでは、魔法に準ずる物理的でない攻撃も存在しますので、うまく働くかどうかは敵の攻撃との相性次第という言うことになるでしょう。ライトニングボルトやブリザードに対しては、あまり効果が望めないかもしれません。
いずれにしても、多少の変形は元に戻るメモリーズのような装甲とは違い、炸薬の関係で同一箇所における効果は一回のみですから、過信は危険でしょう。一点集中攻撃を受けたら、二度目はありません。
「なあに、殺られる前に殺れ、そこがポイントだろうが。そのために、CAMのエネルギーを増大させるプロペラントタンク、これを装甲の裏と、カーゴスペースに装備することができるようになっておる」
自信満々で説明するミグでしたが、リアルブルーのCAMパイロットたちが、えっという顔をしました。
推進剤タンクで、どうしてエネルギーが増えるのでしょうか。多分、マテリアルタンクの間違いでしょう。
呼び方はどうあれ、エネルギー量が増えるのはメリットです。ただし、重量の増加分の機動力低下がありますが、リアクティブアーマーにとっては、マイナスだけではないところがメリットです。どうやら、ミグの装備は、すべてを総合的に判断する必要があるようです。それぞれの装備単体ではデメリットが目立ちますが、総合的に欠点を補い合った構成のようです。
「そして、これがミグの目玉! 魔導式荷電粒子砲なのだあ!」
満を持して、ミグが叫びました。砲台に近い巨大なランチャーが、会場に現れます。
思わず、リアルブルー出身者たちから、「おお」と歓声があがりました。みんな目がキラキラしています。浪漫です。
「強化したエネルギーを利用して、一気にローレンツ力を発生させて、ビームを発射するのだ。どうじゃ、浪漫であろう」
うんうんと、一部の者たちがうなずきました。
サルヴァトーレ・ロッソ級でもなければ、簡単に荷電粒子砲を装備することはできないでしょう。小型化は困難です。けれども、クリムゾンウェストの魔導の力を応用すれば、光明が見えるのかもしれません。
「後で、試射を行うので、みんな見に来るのだあ!」
「おおー」
ミグの言葉に、意味が分かっている者たちが、大盛り上がりに盛り上がりりました。
●第二会場
第二会場では、広い砂浜と、海上に浮かんだブイを標的として、実機によるデモンストレーションが行われていました。
最初に現れたのは、クオンの乗るフォボスです。
クリムゾンウェストの人々には馴染みのない、リアルブルーの火星の衛星の名を冠した魔導型デュミナスは、鮮やかな真紅と白にペイントされていました。ベースとなったデュミナスとは違ったその直線的なフォルムは、前面に集中させた追加装甲故です。そのため、増加した機体重量でも機動力を確保するために追加フレームにより背部に羽根状のスラスターを装備し、脚部背面にも内蔵式のスラスターを増加しています。使用時は装甲板を開く形です。これによって、通常歩行なみの機動力を確保しています。
形状的にはスラスターオープン時の背部が弱点となりかねませんが、遠距離狙撃型のため、後ろをとられることは考慮されていません。むしろ、背後に回られたらおしまいです。
また、肩や肘、膝、足首などの稼働部は丁寧にシールされており、湿地や砂地や茂みなどにアンブッシュした場合でも、稼働部に影響が出ないように配慮されています。
頭部は、額部分に補助カメラが装備され、ゴーグル型のカバー下のメインカメラと共に、遠距離索敵に特化した物となっています。
本来の武装は、大型の105ミリスナイパーライフルと、大太刀「鬼霧雨」です。さらに、今日はデモンストレーションのために、右腰部に90ミリマテリアルバースト・スナイパーライフルを持った狙撃用サードアームが設置されていました。機体のラインに沿うように折りたたまれたサードアームはライフルを上にむけ、なるべく腕や脚の動きの邪魔にならないように収納されています。けれども、やはり現在の形状と大きさでは、移動時の障害になるのは否めません。
『それでは、試射を行います』
アナウンスを受けて、クオンがフォボスを移動させ始めました。
けれども、やはり、砂地となると安定性が悪くなります。シールは万全ですので、砂や水には大丈夫なのですが。
決められたポジションまで移動すると、フォボスが海上の的を右手に持った剣で指し示しました。まるで、ホームラン予告のバッターのようです。
ライフルを上にむけて構えていたサードアームが、スーッと的めがけて構えなおしました。人々が予想したよりも、かなり小さな発射音と反動で、弾丸が発射されます。
が、おしい、的を掠めるようにして外れました。観客たちから、「おしい」とか「あーあ」とか、色々な声があがります。
「やはり、FCSのレベルアップの方が急務のようですね」
コックピットの中で、クオンが改めて問題点を噛みしめます。
風が凪いだ瞬間を狙って、クオンが第二射を放ちます。今度は、みごとに的を撃ち抜きました。第一射のデータから誤差修正したおかげです。
観客の一部から、今度は拍手が起きました。
いずれにしても、設計段階からのさらなる最適化作業は必要ですが、サブウエポンとしては使い道を模索できそうです。
『続いて、ハリケーン・バウによる荷電粒子砲? の試射を行います』
アナウンスに呼ばれて、ミグの乗るハリケーン・バウがのっしのっしと現れました。補助キャリアーに載せた大型砲を押してきます。
フォボスと入れ替わるようにして、射撃位置につきます。
「さあ、歴史的瞬間であるのだあ」
ミグが荷電粒子砲のトリガーを引きました。大型砲から、電磁加速された重金属粒子プラズマがビームとして発射されます。
直下の海面を沸騰させて水蒸気を左右に吹き飛ばしつつ、直進したビームが的を消滅させました。
「おおおお!」
観客たちが、一気に盛り上がりました。
「おっし!」
思わず、ミグがコックピットの中でガッツポーズをとります。
「第二射、いくのだあ!」
調子に乗って、ミグがすぐに第二射を発射しました。
とたん、すでに赤熱していた砲身が、耐熱温度を超えて大爆発を起こします。当然、ハリケーン・バウが爆発で後方へと吹っ飛ばされました。
「てへっ、まだまだ、改良の余地があるようだの」
奇跡的に無事だったミグが、ハリケーン・バウのコックピットの中で、ごまかし笑いをしました。
根本的に、ビームを誘導する砲身の耐熱性能が、クリムゾンウェストで生成できる素材では無理がありすぎたようです。あっけなく溶解してしまいました。まあ、それでこそ、魔導による冷却機能を開発すればいいのではと言うことなのですが、その急激な温度変化に耐えられる素材はと言うと……。いずれにしても、連射は不可能です。今回も、一射目が成功したのが奇跡だったのかもしれません。
それにしてもよく無事だったものです。リアクティブアーマーが功を奏したようです。はっ、まさか、このためのリアクティブアーマーだったのでしょうか……。
『続いては、バーグラリーウルフの模擬戦闘となります』
アナウンスされて、バーグラリーウルフが砂浜に侵入してきました。
砂地に対して、脚に装備したクローラーは十二分に機能しているようです。歩行に比べると、遥かに速く移動していきます。ただし、直線走行は良好ですが、旋回にはかなりの熟練を必要とするようでした。キャリコは難なくこなしているようですが、歩行とまったく違う移動方法には、慣れるのが大変でしょう。
模擬戦闘とは謳っていますが、敵機が用意されているわけではないので、砂浜に立られたいくつかの的を仮想敵として破壊していくことになります。
ライフルで牽制攻撃をしつつ、スモークディスチャージャーで煙幕を張ります。その煙を回り込むように移動すると、ミサイルの斉射で最初の的を破壊しました。
移動しながら折りたたんでいたフォールディングカノンを展開すると、次の的にむかって発射しました。反動で大きく機体がぶれるのを強引に修正すると、エクスプロージブボルトで余分な武装を排除して身軽になります。
一気に次の的へむかって加速すると、そのまま体当たりで的を押し倒します。そこへ、コックピットハッチを開いてパイロットの身体を晒すと、キャリコは持っていた拳銃で的を破壊しました。
おおと、観客たちから歓声があがります。戦闘ショーとしてはなかなかに見応えのあるものでした。
最近ユニットを手に入れたばかりのパイロットたちが歓声を送る中、もともと軍属のパイロットたちは少し渋い顔です。
「ワンマンアーミーは、傭兵ならいいが、軍としては厳しいな」
模擬戦闘としてはいいのですが、移動しながらのフォールディングキャノンの使用など、セオリーからは反しています。同様の連係攻撃を兵に強いた場合は、使いこなせずに隙を生み、敵につけ込まれるのがおちです。誰もがキャリコのような動きができるわけではありませんし、キャリコ自身も、すべての戦いで同様の動きができるという保証もないのですから。
とはいえ、各武装が魅力的なのも真実です。
観客によって、評価が分かれるキャリコの実演でした。
●会場前広場
『さあ、これから、作り、ますよー!』
魔導型デュミナスをベースとしたシルバーレードルに乗ったミオレスカが、巨大なおたまを高々と掲げて言いました。
やや鋭角で平面的な装甲に換装されたシルバーレードルは、白銀の機体にライトグリーンのラインをマーキングした美しい機体です。それゆえに、巨大おたまが異様に目立ちます。
『それでは、CAM、お料理教室の、開催です』
植物精油を燃やした巨大なコンロの上に用意された超巨大鍋に、ミオレスカが野菜をどんどんと投入していきました。どうやら、ヘイムダルの胸部装甲から作った特注品のようです。
CAMの力で、固いカボチャも一撃粉砕して、食べやすい大きさに砕いて投入します。適度な水を足したら、塩で味つけして、いよいよおたまの登場です。ムラが出ないようにかき混ぜつつ、丁寧にアクを掬っていきます。
はたして、CAMでこんな繊細な動きができるのかと言えるようなみごとな手際でした。
あっという間に、何十人分もの野菜スープができあがります。
お手伝いさんたちがそれを集まった人々に配っていく間、ミオレスカは次の料理に取りかかります。
円形のCAMシールドを改造した鉄鍋を片手に持ち、投入した野菜や肉をおたまで回して炒めていきます。
『さあ、野菜炒めも、どうぞ♪』
できあがった野菜炒めを、ミオレスカが勧めます。
大規模な進軍が予定された時、その食事の用意は問題となるはずです。みんながみんなカンパンでは、飽きてきて士気が上がりません。とはいっても、大人数の食事を調理するのは大変な手間でしょう。
『そこでCAMコックさんです。その、大きな力となるのが、おたまなのです。おたまばんざい!』
ミオレスカが自信を持って言いました。
それに、おたまであれば、防御にも、攻撃にも使えるはずです。少なくとも、ミオレスカはそう信じています。おたまばんざい。
「おたまばんざい」
なんとなくつられて、一緒に唱和してしまう観客たちでした。
展示が一段落済んだ他の者たちも、ここに集まってきて、スープと野菜炒めに舌鼓を打ちました。
「CAM、その汎用性、恐るべし……」
このおかげで、なんだか変な商用利用を考え始める商人たちもちらほらいたようです。大丈夫なのでしょうか。
ともあれ、CAMCONは、当初の目的を十二分に生かし、なかなか動こうとしなかった商人たちをも、その重い腰をあげさせることに成功したのでした。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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- 師岬の未来をつなぐ
ミオレスカ(ka3496)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/15 21:29:20 |