ゲスト
(ka0000)
アマリリス~ゴブリンの竪穴
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/21 22:00
- 完成日
- 2016/10/03 23:34
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「義賊みたいなものをつくりたいんだけど」
ここは蒸気工業都市フマーレ郊外の、旧グリス氏邸。
「ほら、鉱山街に元盗賊たちが増えただろ? 前回手伝ってもらったハンターの中にも故郷を歪虚に襲われたみたいなことを言う人がいたし」
モータルが屋敷の主人たるアマリリス商会の代表、アムに懇願していた。モータルはまだ若く、そしてアムも若い。
「モータル」
「え?」
ここでアム、眉間にしわを寄せて執務室の椅子から立ち上がった。
「義賊なんて所詮は賊じゃない。人から良い目で見られるわけじゃないわ」
この言葉にモータルはむっとした。
「目的は人助けだ。良い目で見られようが見られまいが関係ない! それに義賊じゃなくて義勇軍なら別にいいだろ?」
「……ベンドはどうなのよ」
執務机を挟んでにらみ合うが、アムが静かに視線を外した。
ベンドとは闇の密売人「ベンド商会」の代表だ。
アムに出資し、アマリリス商会を立ち上げさせた人物でもある。目的はグリス氏の進めていたセル鉱山事業に参画し、ベンド商会の取り扱う密造酒の安定供給先にすることなど。そんな動機だったが、関連業者の裏切りやグリス氏の自殺の末、最終的に鉱山事業を買い取って今に至っている。
さらにもともとは、モータルが税逃れの密造酒を造る村でベンドと同行することになり、その後に家出をしたアムが合流した。
ベンドが人助けをしていることを知っている者などは味方をしてくれるが、当然敵も多い。
閑話休題。
黙ったモータルにアムが畳み掛ける。
「人助けをしてても、ベンドは嫌われてるのよ。……アマリリス商会まで嫌われるようなことはできないの。私たちはベンド商会のいわば表の窓口。一緒に見られちゃダメなの」
「……でも、鉱山街でメイスンが困ってるよ。荒々しいのが増えて」
モータル、食い下がった。
実際問題、モータルとアムの後にベンドと行動を共にすることになった男、メイスンは困っている。
もともと石工の弟子だったため鉱山街で知識など生かしていたが、「黄昏一団」、「灰猫一味」、「山の牙団」の三つの盗賊団の生き残りが参入して人員管理の手が行き届かなくなっていた。荒々しい者は先に立ち上げた鉱山街の自警団に入れるなどしていたが、CAMの光学レンズに利用する蛍石の産出に切り替えてから生活が豊かになり気も緩みがちになっている。
内情は、やや荒れ始めていた。
「……仕方ないわね。困った者たちは街から外してベンドの護衛に回ってもらおうかしら」
ただ、そっちの方が大変なはずだけど、と闇笑みするアム。
「じゃあ……」
「数人単位よ。鉱山街の守りが手薄になって新たな盗賊に落とされたりなんかしたら目も当てられないわ。それと……」
粘るモータルに折れる形のアムだが、最後に真顔をした。
「前回の時、ゴブリンの鉱山だと思っていた場所がもぬけの殻で鉱山でもなかったって話じゃない。しかも竪穴だったって話だし。……まずは出て行きたい人にはそこを調べてもらいたいわ」
「……ゴブリン、何者かに襲われて仕方なく出て行ったとかいう感じだったはず。離れた場所には伝説の巨人がいたり吸血鬼がいたこともあったし、何があるか分からない。覚醒してない人だと危ないんじゃないかな?」
「作られた巨人と吸血鬼はゴブリンの鉱山とは反対側だったでしょ? 今回は森林狼たちの勢力圏だった方の森」
ちなみに森林狼とも戦ったことがある。セル鉱山方面を縄張りにする狼は以前の依頼で片付けている。
「そうだけど……でも、やっぱり洞窟に吸血鬼歪虚がいたんだし」
「ま、元々ハンターを雇うつもりだけどね」
というわけで、覚醒者のモータルと数人の元盗賊を率いてゴブリンたちのいた竪穴を調べてもらう人、求ム。
なお、竪穴の入り口は結構大きく、下に降りるロープが何本も吊るされているほか、下には中折れした階段が落ちている。何らかの脅威が存在し、最終的にゴブリンたちがそこにいられなくなる原因になったものと思われる。
ここは蒸気工業都市フマーレ郊外の、旧グリス氏邸。
「ほら、鉱山街に元盗賊たちが増えただろ? 前回手伝ってもらったハンターの中にも故郷を歪虚に襲われたみたいなことを言う人がいたし」
モータルが屋敷の主人たるアマリリス商会の代表、アムに懇願していた。モータルはまだ若く、そしてアムも若い。
「モータル」
「え?」
ここでアム、眉間にしわを寄せて執務室の椅子から立ち上がった。
「義賊なんて所詮は賊じゃない。人から良い目で見られるわけじゃないわ」
この言葉にモータルはむっとした。
「目的は人助けだ。良い目で見られようが見られまいが関係ない! それに義賊じゃなくて義勇軍なら別にいいだろ?」
「……ベンドはどうなのよ」
執務机を挟んでにらみ合うが、アムが静かに視線を外した。
ベンドとは闇の密売人「ベンド商会」の代表だ。
アムに出資し、アマリリス商会を立ち上げさせた人物でもある。目的はグリス氏の進めていたセル鉱山事業に参画し、ベンド商会の取り扱う密造酒の安定供給先にすることなど。そんな動機だったが、関連業者の裏切りやグリス氏の自殺の末、最終的に鉱山事業を買い取って今に至っている。
さらにもともとは、モータルが税逃れの密造酒を造る村でベンドと同行することになり、その後に家出をしたアムが合流した。
ベンドが人助けをしていることを知っている者などは味方をしてくれるが、当然敵も多い。
閑話休題。
黙ったモータルにアムが畳み掛ける。
「人助けをしてても、ベンドは嫌われてるのよ。……アマリリス商会まで嫌われるようなことはできないの。私たちはベンド商会のいわば表の窓口。一緒に見られちゃダメなの」
「……でも、鉱山街でメイスンが困ってるよ。荒々しいのが増えて」
モータル、食い下がった。
実際問題、モータルとアムの後にベンドと行動を共にすることになった男、メイスンは困っている。
もともと石工の弟子だったため鉱山街で知識など生かしていたが、「黄昏一団」、「灰猫一味」、「山の牙団」の三つの盗賊団の生き残りが参入して人員管理の手が行き届かなくなっていた。荒々しい者は先に立ち上げた鉱山街の自警団に入れるなどしていたが、CAMの光学レンズに利用する蛍石の産出に切り替えてから生活が豊かになり気も緩みがちになっている。
内情は、やや荒れ始めていた。
「……仕方ないわね。困った者たちは街から外してベンドの護衛に回ってもらおうかしら」
ただ、そっちの方が大変なはずだけど、と闇笑みするアム。
「じゃあ……」
「数人単位よ。鉱山街の守りが手薄になって新たな盗賊に落とされたりなんかしたら目も当てられないわ。それと……」
粘るモータルに折れる形のアムだが、最後に真顔をした。
「前回の時、ゴブリンの鉱山だと思っていた場所がもぬけの殻で鉱山でもなかったって話じゃない。しかも竪穴だったって話だし。……まずは出て行きたい人にはそこを調べてもらいたいわ」
「……ゴブリン、何者かに襲われて仕方なく出て行ったとかいう感じだったはず。離れた場所には伝説の巨人がいたり吸血鬼がいたこともあったし、何があるか分からない。覚醒してない人だと危ないんじゃないかな?」
「作られた巨人と吸血鬼はゴブリンの鉱山とは反対側だったでしょ? 今回は森林狼たちの勢力圏だった方の森」
ちなみに森林狼とも戦ったことがある。セル鉱山方面を縄張りにする狼は以前の依頼で片付けている。
「そうだけど……でも、やっぱり洞窟に吸血鬼歪虚がいたんだし」
「ま、元々ハンターを雇うつもりだけどね」
というわけで、覚醒者のモータルと数人の元盗賊を率いてゴブリンたちのいた竪穴を調べてもらう人、求ム。
なお、竪穴の入り口は結構大きく、下に降りるロープが何本も吊るされているほか、下には中折れした階段が落ちている。何らかの脅威が存在し、最終的にゴブリンたちがそこにいられなくなる原因になったものと思われる。
リプレイ本文
●
「唐突にゴブリンが現れたと思ったら此処から追い出されたんですか……」
眼前の竪穴を見下ろしサクラ・エルフリード(ka2598)が呟いた。
「あれから別件でゴブリン退治をしたが、ロープにぶら下がって襲ってきた。奴らロープとかが好きなのか?」
サクラの横に立つエメラルド・シルフィユ(ka4678)は森の木にくくられ竪穴に垂らされたロープを足先でつんつんつつきながら聞く。
「あまり聞かない。でも何でもやってくる奴らですので」
ゴブリンの話題に敏感なカイン・マッコール(ka5336)、険しい瞳で返した。その場にいればこの手でロープごと、などと言い出しそう。
「しっかし、見事に壊してんなぁ」
あれ、折れたって感じじゃねぇよなぁ、と竪穴の下を見ているのはジャック・エルギン(ka1522)。
「他人に上らせた梯子を外す、なんて楽しいですわね」
さぞかし盛大に落ちたことでしょう、と樋口 霰(ka6443)。日常でそれをやっちゃいけません。
「ほっほっほっほ、世には梯子酒というのもあってな♪」
御酒部 千鳥(ka6405)が冗談話に乗る。
それはともかく。
「ふむ、ロープを使わないところから四足歩行型の敵の可能性が高いか?」
エメラルドがそんな考察をしてみる。
「梯子も四足歩行だとキツイぜ?」
「中から蛇が出るか鬼が出るか……」
肩をすくめるジャックに、口元に手を当て考え込むサクラ。
「鬼は二足歩行で、蛇に足はないですわね?」
極端に来ましたね、とステラ・フォーク(ka0808)。
「蛇なら梯子に絡まりそうですわ」
「鬼ならロープで登れるのぅ」
我が身に手をくねらせる霰に、ほっほっほと指摘する千鳥。
「森には狼がいたんだろう? 落ちたりはしないのか?」
「狼なら落ちたら落ちたままだな。個人的にゃ、大型の強い獣か何かが、ゴブリンとの戦闘で竪穴に
落ちたか落とされたかしたんだとみるぜ?」
再びそんな会話のエメラルドとジャック。
そんな横で。
「え? どうしました?」
アマリリス商会のモータルが義勇隊の部下越しに振り返った。
「……あなた、何をしたいの?」
じっとモータルと指揮する部下を見詰めていたアリア・セリウス(ka6424)が聞いた。思わず口に出た、といった体だ。
「自分は亜人の襲撃から盗賊に助けられたけど、そいつらは盗賊でしかなかった。……誰かを助けて、それで盗賊じゃない集団を作りたい」
モータル、敏感にアリアの視線の意味に気付いた。
いや、今連れている元盗賊たちに聞かせたかったのかもしれない。
が、アリアの瞳はそのまま。「それで?」といった佇まいだ。
「危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために」
モータル、普段の口癖を呟いた。迷った時に自分を支える言葉。明らかに自分に言い聞かせていた。
「見届けましょう」
アリア、それだけ言って瞳を伏せた。
納得ではない。
だから、見るのだ。
その向こうで、モータルの過去話が耳に入ったカインが振り向いていた。亜人襲撃の話に密かに瞳を燃やす。
「この辺は物騒だからな。俺らの帰り道、しっかり頼むぜ……んじゃ行くとすっか!」
「ん、先に下に降りさせて貰いますね……」
そんな中、ジャックがアリアにスペアのロープを手渡した。横ではサクラが垂れたロープにつかまり、一番に竪穴の底へと下りて行った。
●
「広いですね…」
サクラ、グングニルに光の精霊を纏わせ周りを巡らせていた。
照らし出されたのはごつごつした広間である。
「穴の上から投げたナイフやハンマーか」
ジャックは穴の直下を確認中。
「……敵は寄って来ないな」
降りた直後に体にくくった装備を解いたカイン。光源のランタンを地面に置き襲撃に備え身を屈めていたが、警戒を解いた。
「使ってくれ」
「え?」
安全を確保してから下りてきたモータルたちにランタンを貸すカイン。
「光源を用意した状態で移動したくない、敵に奇襲を許すことになりそうですので」
「でも中は……」
「一つあれば十分、ってことだな」
ジャックのランタンだけで行くようだ。
「道は一本のようです……」
サクラ、発見した通路を皆に知らせる。
「邪魔ですわね」
おっと。
ここで霰が豊かな胸を反らしてから試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」を振るったぞ。
ききっ、と鳴きつつ落ちたのは蝙蝠だった。
「邪魔なものは始末した方がすっきりいたしますわね!」
ぐしゃり、と蝙蝠を踏みつぶし恍惚とした表情を浮かべながら通路に向かう。
とにかく、四人で奥に進む。
「鍾乳洞タイプではありませんね……」
「待った」
トンネル状の通路を確認するサクラに、先頭を行くジャックがストップを掛けた。ランタンを盾「アルマジロ」で隠す。
「何かありました?」
後方から霰が聞く。
「……気配、だな」
「ネズミですね。ゴブリンの骨に人骨、それに狼の頭蓋骨」
警戒するジャックに、場所の特定をしたカイン。全員、首をひねる。
「先に出来る限り殺してから調査しましょう、殺しながら調べるのは少しやりづらい」
カインが立ち上がった時だった!
「なんか居やがる!」
首筋がチリチリするぜ、とジャック。
今度こそ危険な気配を察知した。
●
こちら、竪穴の外。
「全周、というわけにはいきませんが」
アリアが周りの森にロープと鳴子を渡していた。
「こちらは任せておくとよいのぅ」
足りない方面には、そちらを向いて千鳥がどかっと座った。ほっほっほ、と酒を出しぐびり。纏う着物「黒昇龍」の合わせはすでにだらんとなって胸元の艶やかな肌が眩しい。
「……ダメだな」
エメラルドはトランシーバーを試していたが、さすがに遮蔽物が多く届かない様子。
「下からでも通話できないみたいですわね。かなり進んだのでしょうか?」
竪穴の開口部傍にしゃがみ込み下のモータルと声を掛け合ったステラ、下を向いたことでずれた眼鏡を直しながらエメラルドを振り返る。
そこへ、作業終了したアリアがやって来た。ステラの傍には、下から釣り上げたゴブリンの死体が転がっている。
「爪痕……。毒の痕跡などは確認できず」
敵の正体を少しでも暴こうと調べるアリア。
「モータル、変化はないか?」
「はい。通路は一つなので警戒しやすいです」
エメラルドの上からの呼び声にそんな返答。
「上と下を気にしなくてはならない中、頑張ってますわね」
「うむ。ここから敵を通すわけにはいかないな」
気丈な声ににこりと微笑むステラ。エメラルドも頷く。
「危ない橋を渡れ……」
その様子にアリア、先に聞いたモータルの言葉を反芻する。
(自分のためではなく、誰かのため)
そこに復讐心や名誉への欲はないのだろう。
(誇りのため? ……分からない)
あるいはアリア、分かっているのかもしれない。
肌に合わない風ではないことを。
その時だった!
「ほっほっ……む?」
――からからん。
胡坐をかいていた千鳥がふらりと立ち上がり、鳴子が鳴った。
『があっ!』
刹那、森から狼が出てきた!
「ん、どうやらお客が来た様じゃ♪」
大きくステップする千鳥。
なびく袂に唸る鉄拳「紫微星」。指の形は猪口を持つように、クルミを割るように。
指突きだ。
その、伸びた腕の位置が高い。
『がっ!』
何と、突っ込んできた狼は二足歩行をしていた。
人狼――ワーウルフである。
「神に仕える身として見過ごせん!」
ロッドを振るったエメラルド。ホーリーライトで攻撃後に千鳥に突っ込んだもう一匹を打ち抜く。
飛び退る二匹。ダメージは多くない。
この時アリア、物思いからはっと我に返り振り向き名乗る!
「アリア・セリウス。アマリリス商会の護衛として、寄らば敵意ありと斬るわ」
人狼に言葉は通じない。二足歩行をしているが足は後脚の形状に近い。ほぼ狼なのだ。
その分、突っ込みも鋭い。
「ほっほ……ほぉ?」
千鳥、酒を飲んで酔練華する間に寄せられ爪を食らう。
ばっ、と桜が散るように着物の残骸が散り体当たりを食らう。
「千鳥、大丈夫か?」
エメラルドが背後に急ぎ回復。
「斬られたのは服だけよのぉ。この穴は現在使用中じゃ。お引き取り願うぞよ」
千鳥、ゆうらりと相手張り付いたまま機械脚甲「モートル」で倒れずついて行くと、首に腕を絡めて首投げ。ひっく、と身を起こすと破れた着物から肌がより露わになっていた。
「穴は渡さんし酒も渡さんのじゃ」
「酒は濡れ衣だろう!」
穴への道を塞ぐように左にスライドする千鳥に合わせ、その背後でエメラルドも左にスライドする。エメラルド、抜かれないよう千鳥のバックアップに徹するつもりだ。
もう一匹は動き出しでたたらを踏んでいた。
「こちらは木の葉の音にも集中していた身ですわ」
瞳を伏せ簡単な瞑想をしていたステラが、オートマチック「エタンドルE66」を放っていたのだ。
『ぐあっ!』
人狼、一発食らったが剛毛で傷は浅い。構わず動こうとする。
「いくら早くても……」
足元を狙う。これはかわされた。
しかしッ!
「天蓋斬舞――」
かわした場所にアリアが突っ込んでいる!
「私の刃に臆すなら、この先通ること許さずよ」
大上段からの、まばゆき一撃を大太刀「破幻」に乗せた。
――どかっ!
敵、臆した。
威力に危機感を感じたか横に転げて逃げた。ぶった切られた狼の尻尾が宙に舞い、塵と化す。歪虚である。
「二足だから倒れつつ動く分厄介ですわ」
ステラの射撃は当たるのだが敵の動きも速いためクリーンヒットにつながらない。
(……誰かのために、自分が)
この時、アリアの心にモータルの言葉が蘇る。
瞬間、守りの構え。敵の攻撃を受けた。
「ここですわね?」
ステラ、意図を読み取り打ち込む。
『がっ』
人狼、離れた。
アリア、心の何かが晴れていた。
「義勇の誇り、瞳で感じてみましょう」
一転、攻撃。疾く、鋭く、斬威の舞手として。
そして、千鳥。
「少し飲みたいのぅ」
「任せておけ」
酒を飲み気を練りたい千鳥に気付き、エメラルドが再び光弾を放つ。
これを食らった人狼、少し目をつぶった。
そして目を開き気付く。
「ほっほ……」
千鳥が目の前にいるのだ。
「っほ♪」
ぽん、と相手の右肩に手を乗せる。瞬間、くたっと体が弛緩した。
そこに、指突。右肩口に捻じり込んだ。
『ぐはっ』
吹っ飛んだ人狼。そのまま息絶え消えるのだった。
●
時は遡り、洞窟内。
「前にいますわ!」
霰がいち早く気付く。
眼差しの先――進行方向に前傾姿勢で二足歩行する二つの影。狼の頭部!
二体。それらが物凄い勢いで走って来たッ!
「ワーウルフかよ。だが、勢いを止めりゃ終わりだ!」
「……遅れました」
ジャックとグングニルを投擲したサクラが盾を構えて前に出る。とにかく壁を作り突進からの初撃を防ぐつもりだ。
しかし次の瞬間、信じられないことが起こった。
『ぐあっ!』
敵二体、左右に分かれグングニルをかわすとそのまま壁を疾走し始めたではないか。
「え?」
「くっ……」
頭上を抜かれて愕然と顎を上げる壁役二枚。
そして鬼爪籠手を構える二列目のカイン。挟み撃ちにされたぞ?
――どしっ、ずばっ!
「隙だらけですわね?」
最後列の霰が前に踏み出し右の人狼を居合で斬った!
一方のカイン、左上からの襲撃をモロに受け人狼に組み敷かれていた。
「カイン!」
「まさか洞窟内で挟まれるとは思わなかった」
ジャックが叫ぶと人狼は『ぐぶっ』と声をくぐもらせて転げ逃げた。
カインがダガーで敵の腹を貫き捻じっていたのだ。受けつつ敵ののしかかる力を利用したのだ。いくら体毛が硬くても貫通できる。もっとも、カインのダメージも酷いものだが。
「無事ならいい」
踏み越えバスターソードを振り下ろし人狼を追撃するジャックだった。
その横で霰。
「がっつきばかりで初心みたいですわ」
「圧倒的な強さ、というわけではなさそうですね…」
電光石火と受け流しで激しくやり合っている間に、戻ってきたグングニルをキャッチしたサクラが参戦。踏み込んで突きを見舞う。
この隙に納刀する霰。それまでの移動で位置もいい。
「呼吸が大事」
改めて襲ってくるところを居合で虚を突き止めを刺した。
「これで敵のやってくることも分かりました」
次に敵と遭遇した時、やはりサクラは槍を投擲した。
と同時に走る。
人狼、壁を走る前動作だったので避けられない。
サクラ、体当たりと同時に槍を引き抜き……。
「これで止めです…! 裁きの一撃を喰らいなさい…!」
槍に魔力を集中させて押し潰した。
「一匹ならこれでいい」
カインは壁から来た敵の目にLEDライト照射。その横から霰、ジャックの挟み撃ち。そしてカインが息の根を止める連携を見せた。
●
場面は外に戻る。
「……?」
リズムよく攻めて完全に戦いを掌握していたアリアのリズムが、狂った。
『フンッ』
敵、誘いに乗らず突然穴の方に駆け出したのだ。その、何と速いことか。
「え?」
ステラ、穴の傍に張り付いている。当然銃で狙うが、気付いた。
敵は、穴に逃げるつもりなのだ!
(止められるかしら?)
外す、もしくは止めにならなければおそらく下で四肢を使い着地するだろう。
一瞬の問い掛けの答えは、行動で示した。
人狼の突っ込む先に移動し、身を挺した。銃を撃つ暇はない。
――ドガッ!
「……ぁ」
衝撃とともに、転移前の光景が浮かんだような気がする。ステラを呼ぶ懐かしい声も聞こえたような気がする。
……落ちる!
「え? ステラさん!」
下で驚くモータルの声。
『ぐあ?』
「はっ!?」
人狼、下の様子に気付いた。隙ができる。ステラもその声で体当たりの衝撃から目覚めた。
――ぐしゃっ。
「ステラさん?」
「だ、大丈夫ですわ」
ステラ、寸でのところで人狼と位置を入れ替え地面に叩きつけていた。それがクッションになった。人狼はもう立てない。
●
「アムの嬢ちゃんも商売が目的だったのに、今じゃ鉱山街の顔役か」
すべてが終わって焚火を囲む中、ジャックが空を見上げた。
「人助けするベンドさんの力になれば、と思ってるみたい」
モータルの返事に、興味深そうなアリアの視線。
「モータルさん、ありがとうございました」
ステラは先の礼に湯を沸かし、紅茶を入れている。
「ほっほっほ♪」
ああっ!
千鳥はその紅茶で酒を割っている。
「外で飲む酒はいいですわね~」
旅先での飲食大好きな霰が相伴に預かろうと待機してたり。
そこに、サクラ、カイン、エメラルドが戻ってきた。
「弔ってきたぞ。ついでに調査もな」
「誰かが集団で住んでいた形跡がある。ゴブリンはそれを取り出してたんじゃないか?」
「ただ、年代は古そうです…。そのあとに狼か人狼といったところでしょうか…」
とにかく、もうちょっと詳しく調べる必要もあるという。
「ま、根気よく支えてやれよ。言い合う相手が居るだけで違うもんさ」
ジャックはぽむとモータルの肩を叩き励ますのだった。
「唐突にゴブリンが現れたと思ったら此処から追い出されたんですか……」
眼前の竪穴を見下ろしサクラ・エルフリード(ka2598)が呟いた。
「あれから別件でゴブリン退治をしたが、ロープにぶら下がって襲ってきた。奴らロープとかが好きなのか?」
サクラの横に立つエメラルド・シルフィユ(ka4678)は森の木にくくられ竪穴に垂らされたロープを足先でつんつんつつきながら聞く。
「あまり聞かない。でも何でもやってくる奴らですので」
ゴブリンの話題に敏感なカイン・マッコール(ka5336)、険しい瞳で返した。その場にいればこの手でロープごと、などと言い出しそう。
「しっかし、見事に壊してんなぁ」
あれ、折れたって感じじゃねぇよなぁ、と竪穴の下を見ているのはジャック・エルギン(ka1522)。
「他人に上らせた梯子を外す、なんて楽しいですわね」
さぞかし盛大に落ちたことでしょう、と樋口 霰(ka6443)。日常でそれをやっちゃいけません。
「ほっほっほっほ、世には梯子酒というのもあってな♪」
御酒部 千鳥(ka6405)が冗談話に乗る。
それはともかく。
「ふむ、ロープを使わないところから四足歩行型の敵の可能性が高いか?」
エメラルドがそんな考察をしてみる。
「梯子も四足歩行だとキツイぜ?」
「中から蛇が出るか鬼が出るか……」
肩をすくめるジャックに、口元に手を当て考え込むサクラ。
「鬼は二足歩行で、蛇に足はないですわね?」
極端に来ましたね、とステラ・フォーク(ka0808)。
「蛇なら梯子に絡まりそうですわ」
「鬼ならロープで登れるのぅ」
我が身に手をくねらせる霰に、ほっほっほと指摘する千鳥。
「森には狼がいたんだろう? 落ちたりはしないのか?」
「狼なら落ちたら落ちたままだな。個人的にゃ、大型の強い獣か何かが、ゴブリンとの戦闘で竪穴に
落ちたか落とされたかしたんだとみるぜ?」
再びそんな会話のエメラルドとジャック。
そんな横で。
「え? どうしました?」
アマリリス商会のモータルが義勇隊の部下越しに振り返った。
「……あなた、何をしたいの?」
じっとモータルと指揮する部下を見詰めていたアリア・セリウス(ka6424)が聞いた。思わず口に出た、といった体だ。
「自分は亜人の襲撃から盗賊に助けられたけど、そいつらは盗賊でしかなかった。……誰かを助けて、それで盗賊じゃない集団を作りたい」
モータル、敏感にアリアの視線の意味に気付いた。
いや、今連れている元盗賊たちに聞かせたかったのかもしれない。
が、アリアの瞳はそのまま。「それで?」といった佇まいだ。
「危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために」
モータル、普段の口癖を呟いた。迷った時に自分を支える言葉。明らかに自分に言い聞かせていた。
「見届けましょう」
アリア、それだけ言って瞳を伏せた。
納得ではない。
だから、見るのだ。
その向こうで、モータルの過去話が耳に入ったカインが振り向いていた。亜人襲撃の話に密かに瞳を燃やす。
「この辺は物騒だからな。俺らの帰り道、しっかり頼むぜ……んじゃ行くとすっか!」
「ん、先に下に降りさせて貰いますね……」
そんな中、ジャックがアリアにスペアのロープを手渡した。横ではサクラが垂れたロープにつかまり、一番に竪穴の底へと下りて行った。
●
「広いですね…」
サクラ、グングニルに光の精霊を纏わせ周りを巡らせていた。
照らし出されたのはごつごつした広間である。
「穴の上から投げたナイフやハンマーか」
ジャックは穴の直下を確認中。
「……敵は寄って来ないな」
降りた直後に体にくくった装備を解いたカイン。光源のランタンを地面に置き襲撃に備え身を屈めていたが、警戒を解いた。
「使ってくれ」
「え?」
安全を確保してから下りてきたモータルたちにランタンを貸すカイン。
「光源を用意した状態で移動したくない、敵に奇襲を許すことになりそうですので」
「でも中は……」
「一つあれば十分、ってことだな」
ジャックのランタンだけで行くようだ。
「道は一本のようです……」
サクラ、発見した通路を皆に知らせる。
「邪魔ですわね」
おっと。
ここで霰が豊かな胸を反らしてから試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」を振るったぞ。
ききっ、と鳴きつつ落ちたのは蝙蝠だった。
「邪魔なものは始末した方がすっきりいたしますわね!」
ぐしゃり、と蝙蝠を踏みつぶし恍惚とした表情を浮かべながら通路に向かう。
とにかく、四人で奥に進む。
「鍾乳洞タイプではありませんね……」
「待った」
トンネル状の通路を確認するサクラに、先頭を行くジャックがストップを掛けた。ランタンを盾「アルマジロ」で隠す。
「何かありました?」
後方から霰が聞く。
「……気配、だな」
「ネズミですね。ゴブリンの骨に人骨、それに狼の頭蓋骨」
警戒するジャックに、場所の特定をしたカイン。全員、首をひねる。
「先に出来る限り殺してから調査しましょう、殺しながら調べるのは少しやりづらい」
カインが立ち上がった時だった!
「なんか居やがる!」
首筋がチリチリするぜ、とジャック。
今度こそ危険な気配を察知した。
●
こちら、竪穴の外。
「全周、というわけにはいきませんが」
アリアが周りの森にロープと鳴子を渡していた。
「こちらは任せておくとよいのぅ」
足りない方面には、そちらを向いて千鳥がどかっと座った。ほっほっほ、と酒を出しぐびり。纏う着物「黒昇龍」の合わせはすでにだらんとなって胸元の艶やかな肌が眩しい。
「……ダメだな」
エメラルドはトランシーバーを試していたが、さすがに遮蔽物が多く届かない様子。
「下からでも通話できないみたいですわね。かなり進んだのでしょうか?」
竪穴の開口部傍にしゃがみ込み下のモータルと声を掛け合ったステラ、下を向いたことでずれた眼鏡を直しながらエメラルドを振り返る。
そこへ、作業終了したアリアがやって来た。ステラの傍には、下から釣り上げたゴブリンの死体が転がっている。
「爪痕……。毒の痕跡などは確認できず」
敵の正体を少しでも暴こうと調べるアリア。
「モータル、変化はないか?」
「はい。通路は一つなので警戒しやすいです」
エメラルドの上からの呼び声にそんな返答。
「上と下を気にしなくてはならない中、頑張ってますわね」
「うむ。ここから敵を通すわけにはいかないな」
気丈な声ににこりと微笑むステラ。エメラルドも頷く。
「危ない橋を渡れ……」
その様子にアリア、先に聞いたモータルの言葉を反芻する。
(自分のためではなく、誰かのため)
そこに復讐心や名誉への欲はないのだろう。
(誇りのため? ……分からない)
あるいはアリア、分かっているのかもしれない。
肌に合わない風ではないことを。
その時だった!
「ほっほっ……む?」
――からからん。
胡坐をかいていた千鳥がふらりと立ち上がり、鳴子が鳴った。
『があっ!』
刹那、森から狼が出てきた!
「ん、どうやらお客が来た様じゃ♪」
大きくステップする千鳥。
なびく袂に唸る鉄拳「紫微星」。指の形は猪口を持つように、クルミを割るように。
指突きだ。
その、伸びた腕の位置が高い。
『がっ!』
何と、突っ込んできた狼は二足歩行をしていた。
人狼――ワーウルフである。
「神に仕える身として見過ごせん!」
ロッドを振るったエメラルド。ホーリーライトで攻撃後に千鳥に突っ込んだもう一匹を打ち抜く。
飛び退る二匹。ダメージは多くない。
この時アリア、物思いからはっと我に返り振り向き名乗る!
「アリア・セリウス。アマリリス商会の護衛として、寄らば敵意ありと斬るわ」
人狼に言葉は通じない。二足歩行をしているが足は後脚の形状に近い。ほぼ狼なのだ。
その分、突っ込みも鋭い。
「ほっほ……ほぉ?」
千鳥、酒を飲んで酔練華する間に寄せられ爪を食らう。
ばっ、と桜が散るように着物の残骸が散り体当たりを食らう。
「千鳥、大丈夫か?」
エメラルドが背後に急ぎ回復。
「斬られたのは服だけよのぉ。この穴は現在使用中じゃ。お引き取り願うぞよ」
千鳥、ゆうらりと相手張り付いたまま機械脚甲「モートル」で倒れずついて行くと、首に腕を絡めて首投げ。ひっく、と身を起こすと破れた着物から肌がより露わになっていた。
「穴は渡さんし酒も渡さんのじゃ」
「酒は濡れ衣だろう!」
穴への道を塞ぐように左にスライドする千鳥に合わせ、その背後でエメラルドも左にスライドする。エメラルド、抜かれないよう千鳥のバックアップに徹するつもりだ。
もう一匹は動き出しでたたらを踏んでいた。
「こちらは木の葉の音にも集中していた身ですわ」
瞳を伏せ簡単な瞑想をしていたステラが、オートマチック「エタンドルE66」を放っていたのだ。
『ぐあっ!』
人狼、一発食らったが剛毛で傷は浅い。構わず動こうとする。
「いくら早くても……」
足元を狙う。これはかわされた。
しかしッ!
「天蓋斬舞――」
かわした場所にアリアが突っ込んでいる!
「私の刃に臆すなら、この先通ること許さずよ」
大上段からの、まばゆき一撃を大太刀「破幻」に乗せた。
――どかっ!
敵、臆した。
威力に危機感を感じたか横に転げて逃げた。ぶった切られた狼の尻尾が宙に舞い、塵と化す。歪虚である。
「二足だから倒れつつ動く分厄介ですわ」
ステラの射撃は当たるのだが敵の動きも速いためクリーンヒットにつながらない。
(……誰かのために、自分が)
この時、アリアの心にモータルの言葉が蘇る。
瞬間、守りの構え。敵の攻撃を受けた。
「ここですわね?」
ステラ、意図を読み取り打ち込む。
『がっ』
人狼、離れた。
アリア、心の何かが晴れていた。
「義勇の誇り、瞳で感じてみましょう」
一転、攻撃。疾く、鋭く、斬威の舞手として。
そして、千鳥。
「少し飲みたいのぅ」
「任せておけ」
酒を飲み気を練りたい千鳥に気付き、エメラルドが再び光弾を放つ。
これを食らった人狼、少し目をつぶった。
そして目を開き気付く。
「ほっほ……」
千鳥が目の前にいるのだ。
「っほ♪」
ぽん、と相手の右肩に手を乗せる。瞬間、くたっと体が弛緩した。
そこに、指突。右肩口に捻じり込んだ。
『ぐはっ』
吹っ飛んだ人狼。そのまま息絶え消えるのだった。
●
時は遡り、洞窟内。
「前にいますわ!」
霰がいち早く気付く。
眼差しの先――進行方向に前傾姿勢で二足歩行する二つの影。狼の頭部!
二体。それらが物凄い勢いで走って来たッ!
「ワーウルフかよ。だが、勢いを止めりゃ終わりだ!」
「……遅れました」
ジャックとグングニルを投擲したサクラが盾を構えて前に出る。とにかく壁を作り突進からの初撃を防ぐつもりだ。
しかし次の瞬間、信じられないことが起こった。
『ぐあっ!』
敵二体、左右に分かれグングニルをかわすとそのまま壁を疾走し始めたではないか。
「え?」
「くっ……」
頭上を抜かれて愕然と顎を上げる壁役二枚。
そして鬼爪籠手を構える二列目のカイン。挟み撃ちにされたぞ?
――どしっ、ずばっ!
「隙だらけですわね?」
最後列の霰が前に踏み出し右の人狼を居合で斬った!
一方のカイン、左上からの襲撃をモロに受け人狼に組み敷かれていた。
「カイン!」
「まさか洞窟内で挟まれるとは思わなかった」
ジャックが叫ぶと人狼は『ぐぶっ』と声をくぐもらせて転げ逃げた。
カインがダガーで敵の腹を貫き捻じっていたのだ。受けつつ敵ののしかかる力を利用したのだ。いくら体毛が硬くても貫通できる。もっとも、カインのダメージも酷いものだが。
「無事ならいい」
踏み越えバスターソードを振り下ろし人狼を追撃するジャックだった。
その横で霰。
「がっつきばかりで初心みたいですわ」
「圧倒的な強さ、というわけではなさそうですね…」
電光石火と受け流しで激しくやり合っている間に、戻ってきたグングニルをキャッチしたサクラが参戦。踏み込んで突きを見舞う。
この隙に納刀する霰。それまでの移動で位置もいい。
「呼吸が大事」
改めて襲ってくるところを居合で虚を突き止めを刺した。
「これで敵のやってくることも分かりました」
次に敵と遭遇した時、やはりサクラは槍を投擲した。
と同時に走る。
人狼、壁を走る前動作だったので避けられない。
サクラ、体当たりと同時に槍を引き抜き……。
「これで止めです…! 裁きの一撃を喰らいなさい…!」
槍に魔力を集中させて押し潰した。
「一匹ならこれでいい」
カインは壁から来た敵の目にLEDライト照射。その横から霰、ジャックの挟み撃ち。そしてカインが息の根を止める連携を見せた。
●
場面は外に戻る。
「……?」
リズムよく攻めて完全に戦いを掌握していたアリアのリズムが、狂った。
『フンッ』
敵、誘いに乗らず突然穴の方に駆け出したのだ。その、何と速いことか。
「え?」
ステラ、穴の傍に張り付いている。当然銃で狙うが、気付いた。
敵は、穴に逃げるつもりなのだ!
(止められるかしら?)
外す、もしくは止めにならなければおそらく下で四肢を使い着地するだろう。
一瞬の問い掛けの答えは、行動で示した。
人狼の突っ込む先に移動し、身を挺した。銃を撃つ暇はない。
――ドガッ!
「……ぁ」
衝撃とともに、転移前の光景が浮かんだような気がする。ステラを呼ぶ懐かしい声も聞こえたような気がする。
……落ちる!
「え? ステラさん!」
下で驚くモータルの声。
『ぐあ?』
「はっ!?」
人狼、下の様子に気付いた。隙ができる。ステラもその声で体当たりの衝撃から目覚めた。
――ぐしゃっ。
「ステラさん?」
「だ、大丈夫ですわ」
ステラ、寸でのところで人狼と位置を入れ替え地面に叩きつけていた。それがクッションになった。人狼はもう立てない。
●
「アムの嬢ちゃんも商売が目的だったのに、今じゃ鉱山街の顔役か」
すべてが終わって焚火を囲む中、ジャックが空を見上げた。
「人助けするベンドさんの力になれば、と思ってるみたい」
モータルの返事に、興味深そうなアリアの視線。
「モータルさん、ありがとうございました」
ステラは先の礼に湯を沸かし、紅茶を入れている。
「ほっほっほ♪」
ああっ!
千鳥はその紅茶で酒を割っている。
「外で飲む酒はいいですわね~」
旅先での飲食大好きな霰が相伴に預かろうと待機してたり。
そこに、サクラ、カイン、エメラルドが戻ってきた。
「弔ってきたぞ。ついでに調査もな」
「誰かが集団で住んでいた形跡がある。ゴブリンはそれを取り出してたんじゃないか?」
「ただ、年代は古そうです…。そのあとに狼か人狼といったところでしょうか…」
とにかく、もうちょっと詳しく調べる必要もあるという。
「ま、根気よく支えてやれよ。言い合う相手が居るだけで違うもんさ」
ジャックはぽむとモータルの肩を叩き励ますのだった。
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相談用スレッド ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/09/21 20:40:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/19 11:42:02 |