ゲスト
(ka0000)
【月機】炎の機将
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/25 09:00
- 完成日
- 2016/10/08 03:11
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
歪虚忍び寄る『おばけクルミの里』。
ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。
***
辺境某所――。
「回収出来た武装コンテナは我も合わせて三つか」
歪虚の指揮官、和装を纏った長い黒髪の少女、牙城・焔(kz0191)が側近三名を前にして言った。
「大変申し訳ありません焔様! 力及ばず……」
焔の前にひれ伏すのは側近三名の中で唯一武装コンテナの回収に失敗した球磨・遥。
「よい。現状は三つで十分だ。それに攻撃特化型では無いお前には難しい任務だった事は承知している。緑と組めば結果はまた違っただろう」
「はは、焔様……何と情け深い。有り難いお言葉です……」
「遥、お前には今後に期待する。次の作戦で挽回せよ」
焔は三つの武装コンテナにぶっとい筆で『ほむら』と自分の名前を(何故かひらながで)書きながら言った。
「はっ! 肝に銘じます!」
遥がビシッと敬礼したところで。
「さて……そろそろコーリアス殿が幻獣の里に攻撃を仕掛ける頃合いだな」
「どうやら相手方も対策を用意していたようです」
「そのための準備期間、三週間であろう」
ふむりと顎に手を当てる焔に側近筆頭、白川・桜が言い、焔が答える。桜は「ええ」と頷く。
「盟約通り我らも動かねばならぬが……正直あまり気が乗らぬな。コーリアス殿だけで十分ではないか」
「戦力的には我らが動く必要は無いかと思われます」
焔の側近、菊池・緑が口を開いた。
「そうなのだがな。約束は約束だ。果たさねばならぬ。武器はこうしてきちんと錬成して貰ったのだからな」
「では、どのように?」
桜の問いに焔はこう答える。
「盟約を守るという『姿勢』だけ見せればよい。本気を出す必要は無い……が、相応の戦力で向かうぞ」
「了解致しました」
「少しコーリアス殿の真似をしてハンターの話を聞いてみるのも良いかもしれぬな。無謀にも戦いを挑んで来るというのならそれもまた良し」
ふふふ、と焔は口元に悪い笑みを浮かべる。
「では準備が整い次第出立するぞ」
「はっ」
***
おばけクルミの里――。防衛線の一角。
「なんだよアレ……あんなの聞いてない!」
「あんなのどうするんだよ……俺達だけではどうしようもないぞ!」
声を上げるハンター達。
彼らが双眼鏡で確認したのは進軍中の牙城・焔、そして側近三名、及び多数の火蜥蜴であった。
焔が率いる過剰とも言える強力な軍勢。それが相手ではここに居るハンター四~六人ではとてもじゃないが防衛線を支えきれない。
「ん?」
「どうした?」
「敵の動きが止まった……」
焔の軍勢は一定の距離まで進軍すると、停止。今のところ攻撃を仕掛けてくる様子は無い。
「どういうつもりだよ牙城・焔! 遊んでんのか! お喋りでもしに来たのか!」
普通に考えれば大戦力を防衛線の前に置いて無言の圧力をかける――という事なのだろうが、現状でそれに意味があるとは思えない。
「…………いや、案外そうかもしれないぞ」
「なんだって?」
「向こうが本気なら今ごろここは火の海だ。……向こうは、焔達は、話し合う用意があるのかもしれない」
絶望的な戦力差を前に、ハンター達はどのように対応するのか――。
ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。
***
辺境某所――。
「回収出来た武装コンテナは我も合わせて三つか」
歪虚の指揮官、和装を纏った長い黒髪の少女、牙城・焔(kz0191)が側近三名を前にして言った。
「大変申し訳ありません焔様! 力及ばず……」
焔の前にひれ伏すのは側近三名の中で唯一武装コンテナの回収に失敗した球磨・遥。
「よい。現状は三つで十分だ。それに攻撃特化型では無いお前には難しい任務だった事は承知している。緑と組めば結果はまた違っただろう」
「はは、焔様……何と情け深い。有り難いお言葉です……」
「遥、お前には今後に期待する。次の作戦で挽回せよ」
焔は三つの武装コンテナにぶっとい筆で『ほむら』と自分の名前を(何故かひらながで)書きながら言った。
「はっ! 肝に銘じます!」
遥がビシッと敬礼したところで。
「さて……そろそろコーリアス殿が幻獣の里に攻撃を仕掛ける頃合いだな」
「どうやら相手方も対策を用意していたようです」
「そのための準備期間、三週間であろう」
ふむりと顎に手を当てる焔に側近筆頭、白川・桜が言い、焔が答える。桜は「ええ」と頷く。
「盟約通り我らも動かねばならぬが……正直あまり気が乗らぬな。コーリアス殿だけで十分ではないか」
「戦力的には我らが動く必要は無いかと思われます」
焔の側近、菊池・緑が口を開いた。
「そうなのだがな。約束は約束だ。果たさねばならぬ。武器はこうしてきちんと錬成して貰ったのだからな」
「では、どのように?」
桜の問いに焔はこう答える。
「盟約を守るという『姿勢』だけ見せればよい。本気を出す必要は無い……が、相応の戦力で向かうぞ」
「了解致しました」
「少しコーリアス殿の真似をしてハンターの話を聞いてみるのも良いかもしれぬな。無謀にも戦いを挑んで来るというのならそれもまた良し」
ふふふ、と焔は口元に悪い笑みを浮かべる。
「では準備が整い次第出立するぞ」
「はっ」
***
おばけクルミの里――。防衛線の一角。
「なんだよアレ……あんなの聞いてない!」
「あんなのどうするんだよ……俺達だけではどうしようもないぞ!」
声を上げるハンター達。
彼らが双眼鏡で確認したのは進軍中の牙城・焔、そして側近三名、及び多数の火蜥蜴であった。
焔が率いる過剰とも言える強力な軍勢。それが相手ではここに居るハンター四~六人ではとてもじゃないが防衛線を支えきれない。
「ん?」
「どうした?」
「敵の動きが止まった……」
焔の軍勢は一定の距離まで進軍すると、停止。今のところ攻撃を仕掛けてくる様子は無い。
「どういうつもりだよ牙城・焔! 遊んでんのか! お喋りでもしに来たのか!」
普通に考えれば大戦力を防衛線の前に置いて無言の圧力をかける――という事なのだろうが、現状でそれに意味があるとは思えない。
「…………いや、案外そうかもしれないぞ」
「なんだって?」
「向こうが本気なら今ごろここは火の海だ。……向こうは、焔達は、話し合う用意があるのかもしれない」
絶望的な戦力差を前に、ハンター達はどのように対応するのか――。
リプレイ本文
●
おばけクルミの里・防衛線の一角。そこへ進軍してきた牙城・焔(kz0191)率いる強力な軍勢――。
しかしそれに対抗するのは……たった四名のハンターだった。
「懐かしきかな理不尽なる鉄風雷火、ってか?」
勇敢なる四名のハンターの内の一人、龍崎・カズマ(ka0178)はそう言ってみせる。
ちなみに彼はマテリアルリンクを介して、牙城・焔と交戦経験のあるハンターから話を聞こうとしたのだが……
マテリアルリンクは精神的な繋がりであるのと、リンクしている本人がその場に居ないため情報収集は叶わなかった。
ただし牙城・焔の容姿や現在判明している戦闘能力などハンターズソサエティ(HS)の報告書に記載されている情報はこの場に居る四人は把握していた。
焔本人と側近の顔を間違うということはまずないだろう。
(歪虚に思考があるならば。そこに付け込む隙はある筈)
メガネを中指でくいっと直す仕草をしつつ、難しげな表情を浮かべている知的な青年は初月 賢四郎(ka1046)。
ケイ(ka4032)は敵との交渉失敗――最悪の事態に備えて防衛線を守る幻獣達に、すぐに撤退出来るよう荷物を纏める様に言ったが……彼らは退かなかった。
彼らにとっておばけクルミの里は何物にも代え難い故郷なのだ。
そして彼らは意思を示した。「ハンター達を信じる」と。これにはケイも苦笑いして頷くしかなかった。
(これはリアルブルーからの転移直前の戦場を思い出すなぁ)
口笛を吹きながらどこかぼんやりしているのはゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)。
この絶望的な状況と彼自身の過去を重ねているのだろうか……。
「っとと、昔の感傷に浸ってる場合じゃないな。さて、どうしたものかねぇ……」
と、ゼクスは言うがこの場に居るハンターの、敵に対しての方針は決まっていた。『交渉』である。
あまりにも戦力差があり過ぎるために戦闘を仕掛けても勝ち目はないことは明らか。
ならば歪虚相手に話し合って退いてもらうしかない。非常に困難だが――里を守るためにはやる他無い。
覚悟を決めた四名のハンターはいざ敵陣へ赴く……。
***
敵陣へ交渉のために乗り込んだ四名のハンター。
相手は牙城・焔を筆頭とし、側近三名、多数の火蜥蜴……その威圧感は半端ではない。
まず最初に前へ歩み出たのはカズマ。
「敵意や害意とかは一切向ける気はない」
カズマは剣を背後の地面に突き立てた後に、挨拶し、握手を求める。
その様子を見た焔は意外そうな顔をし、制止する部下を抑え、前に出て握手に応じる。
だが焔がカズマの手を握った瞬間――焔の手から炎が上がった。カズマは慌てて手を離す。
「――っ!?」
「ふふ、すまぬな。ちょっとした悪戯だ」
ニヤリと笑みを浮かべる焔。
「……ちょっと洒落にならない冗談だな」
カズマは額に冷や汗を浮かべる。
「だがくれぐれも勘違いはしないで貰いたい。我々は友好のためにここへ来たのでは無いということを。それくらい判るだろう?」
「…………勿論だ。本来なら里を焼き払うために来たんだろ。こっちはそれをどうにかして貰うためにここに来たんだ」
そしてカズマは続ける。
「唯の話に武器を手に、と言うのは無粋が過ぎる。それに話の途中で不意打ちした所で、この数の差だ、割の合わないことこの上ない」
カズマは一拍置き、
「ならば武器など手に無くても変わるまい」
「ほほう、それで非武装か。自分達の置かれた状況は理解している様だな」
カズマが言い、焔が答える。
「そもそも、交渉なんて大層なものは出来ない。何しろそちらが求めているものが判らない。こちらが何を出せるのかも判らない。ないない尽くしでどうしようもない」
そして彼は核心に迫る。
「だから率直に訊こうか。『この場を退いて貰う為には何をすればいい?』」
「……ふむ。それをもう切り出してくるとは切実なようだな。ならば答えよう。『我はお前達と話をしたいと思っている』」
カズマの真剣な問いに、焔はニヤリとした笑みから少し表情を直して再び答えた。
●
「話……ですか。ならば少しばかり語らせていただきましょう」
次に歩み出たのは賢四郎。
「人の武器は言葉と文字。それにより死を克服してきた。言葉と文字による知識の積み重ね。自らの屍を霧散させずに積み重ねるのが人です」
「ふむ……確かに古来よりそのように言うな。我も『元・人間』ゆえ、その辺は理解している」
言葉と文字が人間の武器と言う賢四郎に焔はふむふむと頷く。
「ここで我々が戦って負けて死んでも、屍を積み重ねさせるだけですよ」
「お前達をここで殺しても無駄な殺生だから見逃せ、と?」
「そのように受け取ってもらっても構いません」
焔が問い、賢四郎が答える。
そこで賢四郎は『【東征】東方解放戦功労章』を取り出して見せる。
「何も無しで信じろというのも無理でしょう。知識が武器というのはこれが証拠ですよ」
「ふ、何かと思えば勲章か。そのようなものに一切興味は無いが、お前が只者ではないことは理解した」
焔は少し笑って言う。しかし馬鹿にした様子では無い。
(こちらが死ぬ覚悟でいけば被害は与えられずとも、そちらの札を切らせる、その程度はいけるとは思いますよ)
「そちらの武器は見せずにこちらの手札を一方的に見れるなら今の勝ちに拘らなくてもいいのでは? 決めるのは其方ですが」
●
続いて相手の方へ出向いたのはケイ。
「初めまして、こう見えてもエルフなケイさんよ。まあよろしくね」
ケイは焔達に向かってそのように自己紹介する。
最初は得物を持って行くつもりだったが仲間に合わせて非武装にして来た。
「さて、先ずはお互いの状況の確認からかしらね? 待っててくれた理由がお話したいということならとても嬉しいわ」
そう言ってから、ケイは敵の陣容に物怖じせずに続ける。
「私達としてはこのままお話だけで退いてくれるに越したことはないけれど、それだけじゃ駄目かしら」
「我としてはお前達ハンター四人全員と話してから『これからどのように動くか』決めたいところだな」
焔はケイに対しそのように答える。つまり――まだ里が攻撃される可能性は残っているということ……。
「里を攻撃されるのは困っちゃうのよね。其方の武器的に、火の海になってしまうでしょう?」
ケイは出会ってからずっと相手の様子を観察。どういう人物なのか把握しつつ言葉を選びながら話を進める。
「それはそうだな。元々この里を焼き払うために用意した戦力だ」
恐ろしいことをサラッと口にする焔。「しかしまだ攻める気はない」と付け加える。
「こちらの頭脳は優秀よ? 趣向を凝らした戦いというのも乙なものだと思うわ。トランプゲームでもよし、問答でもよし、受けて立とうじゃない?」
これに対しては「いや、話だけで十分だ。今のところ楽しませてもらっているぞ」と焔はニヤリと笑みを浮かべ、言う。
「戦うにしても此処で己らとそちらの一部戦力との戦闘で手打ちにしてほしいわね」
ここで戦いの話に。ケイはあまり焔を刺激しないように話す。
「其方は少ない労力で交戦した義理を果たし、此方は最低限守りたいものを護れる」
「『交渉』らしいことを言ったな。まあ……我としては兵を出している時点である程度コーリアス殿への義理は果たしている」
今のところ焔から殺気は感じない……。ただHSの情報にあった側近筆頭の白川・桜だったか――は冷たい殺気を絶えず放っている。
「新兵器は使わないでくれると嬉しいわ。正直使うまでもないでしょう? 折角の報酬、もっといい機会までとっておいて頂戴な」
「ふ、やはり【灼導】を警戒するか。里の件に関してはこの新武器の製作者、コーリアス殿が引き起こしたことだからな」
焔は「現時点では使うつもりは無い」と言った。
●
最後にゼクス。非武装で焔の所へ向かい、他の面子との対話から焔達の性格や傾向を推測及び把握。
『着火の指輪』で火を着けた紙巻煙草を口に咥えて吹かしながら、事の成り行きを見守っていた彼が口を開く。
「里を攻め込むにしては不自然なまでにかなり過剰な戦力だな……。そちらの実力を鑑みても数人で事足りるだろうに。もしかして、『戦うのが面倒』な理由でもあるのか?」
「正直に言えば我はコーリアス殿だけで十分ではないかと思っているのだ。あくまで個人的な見解だがな」
「我の可愛い部下や火蜥蜴を今回の戦場に駆り出す必要性をあまり感じない」と焔は付け足す。
「まぁ、あくまで仮説だが……こちらの戦力を分散させる等の狙いがあるなら、そちらの『役目』は十二分に果たしてると思うぜ」
ゼクスの言葉に焔は「ふむ?」と小首をかしげる。
「とはいえ……不自然だと思わないか? そちらに対してあまりにも戦力が少なすぎる事に」
焔は「それはそうだな。我らを相手にするには高い練度のハンターが三~四倍必要だろう」と答える。
「なぁ、こうは考えられないか? たった四人で、そちらの軍勢を『繋ぎ留めさせている』と……。大元を討つ為に、俺達が『捨て石』となっている……と」
焔は「ふふ」と笑い、「なんだ、お前達は捨て石に――『死にたいのか?』ならば叶えさせてやっても良いのだぞ?」と言い、一本の刀を抜いてハンター達へ鋭利な切っ先を向ける。
ゼクスを初めとするハンター達の背中にぞわりと寒気が奔る。しかしなんとか顔は平静を保った。
「……そっちの大将が討たれれば、里を落とした所で『勝ち』にはならないだろ? あんた個人は別として、軍勢全体の戦局でみれば……だがな」
少し置いてゼクスが言った。焔は刀をハンター達へ向けたまま言う。「コーリアス殿を討つ……か。出来るとは思えんな」焔の刀に炎が宿り、めらめらと燃え始める。
ハンター達は「交渉決裂か」と思うが――その時、ふっとその炎が消える。
「まあ、よい。『少人数のハンターに足止めされていた』ということにしよう。なかなかに面白い話が聞けた」
焔はチャキンと刀を鞘へ戻す。その言葉にハンター達はホッと胸を撫で下ろす。
「今回はこのまま退こう。だが次はどうなるかわからんぞ。せいぜい我をがっかりさせぬよう腕を磨いておくことだ。……さらば」
焔の号令により、彼女率いる歪虚の軍勢はおばけクルミの里から撤退を開始した。
危ういところではあったが、四名のハンター達は交渉により何とか『戦術的勝利』を得たのであった。
おばけクルミの里・防衛線の一角。そこへ進軍してきた牙城・焔(kz0191)率いる強力な軍勢――。
しかしそれに対抗するのは……たった四名のハンターだった。
「懐かしきかな理不尽なる鉄風雷火、ってか?」
勇敢なる四名のハンターの内の一人、龍崎・カズマ(ka0178)はそう言ってみせる。
ちなみに彼はマテリアルリンクを介して、牙城・焔と交戦経験のあるハンターから話を聞こうとしたのだが……
マテリアルリンクは精神的な繋がりであるのと、リンクしている本人がその場に居ないため情報収集は叶わなかった。
ただし牙城・焔の容姿や現在判明している戦闘能力などハンターズソサエティ(HS)の報告書に記載されている情報はこの場に居る四人は把握していた。
焔本人と側近の顔を間違うということはまずないだろう。
(歪虚に思考があるならば。そこに付け込む隙はある筈)
メガネを中指でくいっと直す仕草をしつつ、難しげな表情を浮かべている知的な青年は初月 賢四郎(ka1046)。
ケイ(ka4032)は敵との交渉失敗――最悪の事態に備えて防衛線を守る幻獣達に、すぐに撤退出来るよう荷物を纏める様に言ったが……彼らは退かなかった。
彼らにとっておばけクルミの里は何物にも代え難い故郷なのだ。
そして彼らは意思を示した。「ハンター達を信じる」と。これにはケイも苦笑いして頷くしかなかった。
(これはリアルブルーからの転移直前の戦場を思い出すなぁ)
口笛を吹きながらどこかぼんやりしているのはゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)。
この絶望的な状況と彼自身の過去を重ねているのだろうか……。
「っとと、昔の感傷に浸ってる場合じゃないな。さて、どうしたものかねぇ……」
と、ゼクスは言うがこの場に居るハンターの、敵に対しての方針は決まっていた。『交渉』である。
あまりにも戦力差があり過ぎるために戦闘を仕掛けても勝ち目はないことは明らか。
ならば歪虚相手に話し合って退いてもらうしかない。非常に困難だが――里を守るためにはやる他無い。
覚悟を決めた四名のハンターはいざ敵陣へ赴く……。
***
敵陣へ交渉のために乗り込んだ四名のハンター。
相手は牙城・焔を筆頭とし、側近三名、多数の火蜥蜴……その威圧感は半端ではない。
まず最初に前へ歩み出たのはカズマ。
「敵意や害意とかは一切向ける気はない」
カズマは剣を背後の地面に突き立てた後に、挨拶し、握手を求める。
その様子を見た焔は意外そうな顔をし、制止する部下を抑え、前に出て握手に応じる。
だが焔がカズマの手を握った瞬間――焔の手から炎が上がった。カズマは慌てて手を離す。
「――っ!?」
「ふふ、すまぬな。ちょっとした悪戯だ」
ニヤリと笑みを浮かべる焔。
「……ちょっと洒落にならない冗談だな」
カズマは額に冷や汗を浮かべる。
「だがくれぐれも勘違いはしないで貰いたい。我々は友好のためにここへ来たのでは無いということを。それくらい判るだろう?」
「…………勿論だ。本来なら里を焼き払うために来たんだろ。こっちはそれをどうにかして貰うためにここに来たんだ」
そしてカズマは続ける。
「唯の話に武器を手に、と言うのは無粋が過ぎる。それに話の途中で不意打ちした所で、この数の差だ、割の合わないことこの上ない」
カズマは一拍置き、
「ならば武器など手に無くても変わるまい」
「ほほう、それで非武装か。自分達の置かれた状況は理解している様だな」
カズマが言い、焔が答える。
「そもそも、交渉なんて大層なものは出来ない。何しろそちらが求めているものが判らない。こちらが何を出せるのかも判らない。ないない尽くしでどうしようもない」
そして彼は核心に迫る。
「だから率直に訊こうか。『この場を退いて貰う為には何をすればいい?』」
「……ふむ。それをもう切り出してくるとは切実なようだな。ならば答えよう。『我はお前達と話をしたいと思っている』」
カズマの真剣な問いに、焔はニヤリとした笑みから少し表情を直して再び答えた。
●
「話……ですか。ならば少しばかり語らせていただきましょう」
次に歩み出たのは賢四郎。
「人の武器は言葉と文字。それにより死を克服してきた。言葉と文字による知識の積み重ね。自らの屍を霧散させずに積み重ねるのが人です」
「ふむ……確かに古来よりそのように言うな。我も『元・人間』ゆえ、その辺は理解している」
言葉と文字が人間の武器と言う賢四郎に焔はふむふむと頷く。
「ここで我々が戦って負けて死んでも、屍を積み重ねさせるだけですよ」
「お前達をここで殺しても無駄な殺生だから見逃せ、と?」
「そのように受け取ってもらっても構いません」
焔が問い、賢四郎が答える。
そこで賢四郎は『【東征】東方解放戦功労章』を取り出して見せる。
「何も無しで信じろというのも無理でしょう。知識が武器というのはこれが証拠ですよ」
「ふ、何かと思えば勲章か。そのようなものに一切興味は無いが、お前が只者ではないことは理解した」
焔は少し笑って言う。しかし馬鹿にした様子では無い。
(こちらが死ぬ覚悟でいけば被害は与えられずとも、そちらの札を切らせる、その程度はいけるとは思いますよ)
「そちらの武器は見せずにこちらの手札を一方的に見れるなら今の勝ちに拘らなくてもいいのでは? 決めるのは其方ですが」
●
続いて相手の方へ出向いたのはケイ。
「初めまして、こう見えてもエルフなケイさんよ。まあよろしくね」
ケイは焔達に向かってそのように自己紹介する。
最初は得物を持って行くつもりだったが仲間に合わせて非武装にして来た。
「さて、先ずはお互いの状況の確認からかしらね? 待っててくれた理由がお話したいということならとても嬉しいわ」
そう言ってから、ケイは敵の陣容に物怖じせずに続ける。
「私達としてはこのままお話だけで退いてくれるに越したことはないけれど、それだけじゃ駄目かしら」
「我としてはお前達ハンター四人全員と話してから『これからどのように動くか』決めたいところだな」
焔はケイに対しそのように答える。つまり――まだ里が攻撃される可能性は残っているということ……。
「里を攻撃されるのは困っちゃうのよね。其方の武器的に、火の海になってしまうでしょう?」
ケイは出会ってからずっと相手の様子を観察。どういう人物なのか把握しつつ言葉を選びながら話を進める。
「それはそうだな。元々この里を焼き払うために用意した戦力だ」
恐ろしいことをサラッと口にする焔。「しかしまだ攻める気はない」と付け加える。
「こちらの頭脳は優秀よ? 趣向を凝らした戦いというのも乙なものだと思うわ。トランプゲームでもよし、問答でもよし、受けて立とうじゃない?」
これに対しては「いや、話だけで十分だ。今のところ楽しませてもらっているぞ」と焔はニヤリと笑みを浮かべ、言う。
「戦うにしても此処で己らとそちらの一部戦力との戦闘で手打ちにしてほしいわね」
ここで戦いの話に。ケイはあまり焔を刺激しないように話す。
「其方は少ない労力で交戦した義理を果たし、此方は最低限守りたいものを護れる」
「『交渉』らしいことを言ったな。まあ……我としては兵を出している時点である程度コーリアス殿への義理は果たしている」
今のところ焔から殺気は感じない……。ただHSの情報にあった側近筆頭の白川・桜だったか――は冷たい殺気を絶えず放っている。
「新兵器は使わないでくれると嬉しいわ。正直使うまでもないでしょう? 折角の報酬、もっといい機会までとっておいて頂戴な」
「ふ、やはり【灼導】を警戒するか。里の件に関してはこの新武器の製作者、コーリアス殿が引き起こしたことだからな」
焔は「現時点では使うつもりは無い」と言った。
●
最後にゼクス。非武装で焔の所へ向かい、他の面子との対話から焔達の性格や傾向を推測及び把握。
『着火の指輪』で火を着けた紙巻煙草を口に咥えて吹かしながら、事の成り行きを見守っていた彼が口を開く。
「里を攻め込むにしては不自然なまでにかなり過剰な戦力だな……。そちらの実力を鑑みても数人で事足りるだろうに。もしかして、『戦うのが面倒』な理由でもあるのか?」
「正直に言えば我はコーリアス殿だけで十分ではないかと思っているのだ。あくまで個人的な見解だがな」
「我の可愛い部下や火蜥蜴を今回の戦場に駆り出す必要性をあまり感じない」と焔は付け足す。
「まぁ、あくまで仮説だが……こちらの戦力を分散させる等の狙いがあるなら、そちらの『役目』は十二分に果たしてると思うぜ」
ゼクスの言葉に焔は「ふむ?」と小首をかしげる。
「とはいえ……不自然だと思わないか? そちらに対してあまりにも戦力が少なすぎる事に」
焔は「それはそうだな。我らを相手にするには高い練度のハンターが三~四倍必要だろう」と答える。
「なぁ、こうは考えられないか? たった四人で、そちらの軍勢を『繋ぎ留めさせている』と……。大元を討つ為に、俺達が『捨て石』となっている……と」
焔は「ふふ」と笑い、「なんだ、お前達は捨て石に――『死にたいのか?』ならば叶えさせてやっても良いのだぞ?」と言い、一本の刀を抜いてハンター達へ鋭利な切っ先を向ける。
ゼクスを初めとするハンター達の背中にぞわりと寒気が奔る。しかしなんとか顔は平静を保った。
「……そっちの大将が討たれれば、里を落とした所で『勝ち』にはならないだろ? あんた個人は別として、軍勢全体の戦局でみれば……だがな」
少し置いてゼクスが言った。焔は刀をハンター達へ向けたまま言う。「コーリアス殿を討つ……か。出来るとは思えんな」焔の刀に炎が宿り、めらめらと燃え始める。
ハンター達は「交渉決裂か」と思うが――その時、ふっとその炎が消える。
「まあ、よい。『少人数のハンターに足止めされていた』ということにしよう。なかなかに面白い話が聞けた」
焔はチャキンと刀を鞘へ戻す。その言葉にハンター達はホッと胸を撫で下ろす。
「今回はこのまま退こう。だが次はどうなるかわからんぞ。せいぜい我をがっかりさせぬよう腕を磨いておくことだ。……さらば」
焔の号令により、彼女率いる歪虚の軍勢はおばけクルミの里から撤退を開始した。
危ういところではあったが、四名のハンター達は交渉により何とか『戦術的勝利』を得たのであった。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
---|
面白かった! | 5人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
- 【ⅩⅢ】死を想え
ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 ケイ(ka4032) エルフ|22才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/09/24 23:05:16 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/24 01:22:26 |