• 月機

【月機】三眼の破砕者

マスター:真柄葉

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/25 07:30
完成日
2016/10/02 00:52

みんなの思い出

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オープニング

 歪虚忍び寄る『おばけクルミの里』。
 ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
 ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
 月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
 ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。

●森の細道
「隊長……本当にここから攻めてくるんでしょうか」
「攻めてくるはずだ。相手があのコーリアスだとするなら、この道にも必ず何かをけし掛けてくる……!」
 隊員の不安そうな声に、隊長は出来うる限り自信をもって答える。

 里に続く道はいくつかあり、この小隊が今いる場所もそんな一つ。
 防衛を任された小隊は、様々な策を検討した結果、道の封鎖を決めた。
 隊長の号令の元、隊員達は防柵を立て塹壕を掘り、土塁を盛る。
 歪虚に対しては些か心もとない防壁であるものの、出来うる限りの防御姿勢は整えたはずだ。
 それぞれに不安を覚えながらも、隊長以下小隊の面々はじっと息を殺し、道の先を見つめていた。

 ――――ギュルルルルル…………。

「な、なんだこの音は……」
 最初に気が付いたのは隊長だった。
 静かな森には到底似つかわしくない奇怪な音が森の奥から木霊している。
「何か音が聞こえます……」
 きょろきょろと視線を彷徨わせたが隊員達が緑濃い森の奥へ視線を遣った、その瞬間。

 ――――ドーーーーンっ!

 森を揺らす重低音と共に、その風景が変化した。
「た、隊長! き、木が!!」
「お、落ち着け! まずは様子を探るんだ! 敵と決まったわけではない!!」
 ゆっくりと倒れていく森の奥の木々。鳴り続く奇怪な音。逃げ惑う鳥――誰しもが頬に汗し、息を飲んだ。
 隊長はああ言っているが、皆それが何であるか直感的にわかっているのだ。
 ある者は震える体を押さえ、またある者は無意識に後退る。
「来るぞ! 構えろ!!」
 隊長の号令に、半ば無意識に体を動かし、隊員達が銃を森に向ける。
 小隊の視線を集めながら、森は一本、また一本と確実に木々を減らしていき――ついに森と道を隔てる最後の一本が破砕された。

「な、なんだこいつは……」
 巨大な体躯は大人3人ほどもあるだろう。巨木ほどもある太い腕には、先ほどから聞こえていた耳に障る音を発する巨大な剣。そして、反対の腕には五つの口を持つ巨大な銃。
 身体の各所には鎧のつもりか、見慣れぬ機械が装着され、実に奇怪な様相になっていた。
「なんという事だ……これ程の大物が来るなんて……!」
 この体躯であればそれなりの地位にある怠惰の兵である事は、一目瞭然。
 予想を超える大物の出現に、隊長は声を震わせ立ち尽くした。
「た、隊長!!」
「じゅ、銃兵、一斉射だ! 銃撃を浴びせつつゆっくりと後退するぞ! いいか、まともにやり合おうとは思うなよ! 時間を稼ぐんだ!!」
 呆然自失も隊員の声に呼び戻され隊長はすぐさま声を上げた。
 発せられたこの号令に不満を示す者などいない。隊員は銃弾の雨を一斉に巨人に浴びせると共に、ゆっくりと後退を始めた。
「き、効いていないのか……?」
 しかし、森からはい出た巨人は息つく暇もないほどに浴びせられる銃弾を、まるで蚊の一刺しほどにも感じる様子はない。
「まずい……」
 しかしそれでも、やはり鬱陶しかったのだろうか。巨人はゆっくりと無造作に、そして無慈悲に左手を持ちあげると――。
「くるぞっ!! 銃撃を中止して散開しろぉぉ!!!」
 吸い込まれそうなほどに黒い銃口の先から、破砕の業火が吐き出された。

リプレイ本文


「悪いがこいつの相手はあんたらじゃ荷が重い。大人しく退いてくれ! ここはわっしらが受け持つ!」
 巨人が放ったグレネードの一撃に蹴散らされた防衛小隊へ向け、対崎 紋次郎(ka1892)が声を張り上げた。
「わ、わかった! 済まないが任せる!」
 紋次郎達の救援に、隊長は即座に首肯する。
 これは職務放棄ではない。目の前に現れた敵に対し、自分を含めた小隊の力が遠く及ばない事は瞬時に理解できた。
 隊長は声を張り上げると、爆撃にも匹敵する巨人の砲撃で散り散りになった部下達をかき集めた。
「我々は即座に撤退を開始する! 本隊へ合流する為、里に入るぞ!」
 怪我を負った隊員を余力のある隊員が助けながら、小隊は整然と列を整えると撤退を開始する。
「よく纏まったいい小隊だ」
「あちらの世界の訓練方式でも取り入れてるのかな」
「ああ、そうかもしれないな」
 列を乱すことなく速やかに退いていく小隊を見送る紋次郎とシン(ka4968)。
「それじゃ、やりますか」
 そう言うとシンはくるりと体を反転させた。

 巨人の歩みは遅いものの、その一歩が巨大なだけに、進攻速度は人の駆け足と変わらない。
 巨大な重機にも似た武器を振り回し、無差別な破砕を振り撒きながら、確実に迫ってくる。

「わっしらの役目は足止め。他の皆が解析を終了するまで、踏ん張るとするか」
「了解。せいぜいかき回してやろう」
 二人は視線を交わすことなく頷くと、迎撃を開始した。
 紋次郎がその場で片膝をつき、長銃を構える。
 ストックを最長へと調整すると、側面のサブグリップを握り照準器に顔を寄せた。
「右!」
 駆け出したシンへ届くように発せられた声に合わせ吐き出された銃弾は、シンの頬をかすめる程に至近距離を飛翔。巨人の右足へとヒットする。
「お見事!」
 着弾に吠える巨人が大ぶりの横薙ぎ。
 ハンターであろうと直撃を受ければ一瞬で肉片と化すであろう一撃を数本の髪の毛を散らしながら掻い潜り、シンが左足を目標に据えた。
「シッ!」
 王宮の柱ほどもある巨大な脚には、素体を護る機械の鎧が不格好に取り付けられてある。
 しかし、触れる程に接近すれば、それも隙間だらけのハリボテと同義。シンは膝関節に狙いを定めると舞うような一撃を見舞った。

 一方、退却を進める小隊では――。
「隊長さん!」
「なんだ!」
「提案がありますっ!」
「提案だと!? 今がどういう時かわかって……お前は誰だ?」
 同じ軍服を身につけた見慣れぬ顔に、隊長が怪訝そうに問いかけた。
「はいっ! つい3分前に仮入隊しましたルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)軍曹でありますっ!」
「……」
 謎の軍服の謎の自己紹介に、隊長の不信はつのる。
「あ、信じてませんね? まぁ、無理もありません。いきなり仮入隊とか、私としても設定にちょっと無理があるかなーっと思ってたところなんですっ!」
 うんうんと謎の納得を示すルンルンは、ぱちんと指を鳴らすと。
「それではご期待に応えて――戦場に咲いた一輪の花! 一見すればどこにでもいそうな美少女軍人! しかし、その実は正義のニンジャ! ニンジャキャプタールンルンなのですっ!」
 何処からか聞こえるファンファーレと共に、がばっと一息に軍服を脱ぎ捨てた。
「……それで、提案と言うのはなんだ」
 そんなルンルン渾身の前振りを完全にないものとして、隊長は問いかける。
「そのおざなり感がちょっと気になりますが、いいです! 実はこれを撒くのを手伝ってほしいのですっ!」
「これは……?」
「ふふふ……よくぞ聞いてくれました!」
 隊長が「あ、しまった」と呟いた事も気にもせず、ルンルンは自慢の胸を大きく張り、説明を始めた。

「……なるほど。ネーミングセンスは置いておいて、有効な策だ」
「……なんだかちょっと心にグサッと来る感じですけど、理解してもらえてうれしいですっ!」
 耳打ちにごにょごにょと解説したルンルンの策を受け入れ、撤退をしながらも隊長は部下にてきぱきと指示を出していく。
「それじゃ皆さんよろしくお願いします! 札を撒いた後は、あの鳥を追ってください! 安全な場所まで案内してくれます!」
 と、ルンルンは大空を舞う一匹の鳥を指さした。
「どうか御無事で!」
 軍人特有の一体感に感動しながらルンルンはそう言い残し、颯爽と森へと姿を消した。


「コーリアス……ほんと碌なことしないわね」
 樹上でじっと瞳を閉じていた愛梨(ka5827)がぼそりと呟いた。
「何か視えたのか?」
「小隊の皆が符を撒いてくれたわ」
 ヴィント・アッシェヴェルデン(ka6346)の問いかけに、瞳を開いた愛梨は道の一点を指さした。
「……それだけか?」
「今はね」
 そこはルンルンが小隊に頼み、符を撒いた地点。
「それはいい。いつ現れる」
 葉の生茂る樹中は視界が極端に悪い。
 戦況を確認できない苛立ちに、ヴィントは語尾きつく問いかけた。
「焦らないで。シン達がうまいことやってくれてる。まだ来ないわ」
「……そうか」
 そう真っ直ぐに指摘され、ようやく自身の精神状況に気付いたのか、ヴィントはポケットから取り出した飴を一つ口に放り込んだ。
「飴?」
「気にするな。俺流の精神統一だ」
「へぇ、珍しい」
 どこか人間離れした雰囲気を持つヴィントが見せた人らしい一面に、愛梨はにかっと牙を見せた。

「アナライズデバイス起動!」
 二人の場所よりまた一段高い枝に陣取るクレール・ディンセルフ(ka0586)は、じっと声を殺し双眼鏡を覗いていた。
「重火器は……グレネードランチャー。5つの銃口径と着弾地点の被害状況から分析して、威力は帝国の新型大砲クラス」
 木の皮を纏い葉を塗したクレールは、機士としての眼とデバイスの知識をもって、巨大な破砕者の装備を分析していく。
「弾倉は無し。追加装填は無いと考えていい。……そもそも、あの右腕で装填は不可能か」
 と、クレールはグレネードランチャーから反対の手に装着された凶器に視線を移した。
「チェーンソー……リアルブルーの伐採機器――と言うにはあまりにも狂気めいてる。この世のもの全てを破砕する、まるで歪虚そのものを体現したよう」
 デバイスに映し出される、血と樹汁にまみれた凶器にクレールは息を飲む。
「武装は大きく二つ。他に目ぼしい凶器は……うん? あれは何……機械じゃ、ない?」
 巨人の全身をくまなく見つめていたクレールが、無骨な機械装甲から見え隠れする明らかに機械とは別種の装備の存在に気付いた。
「1、2……3。装飾? 違う、装備の装飾ならあんな所には取り付けない」
 巨人の額、喉、鳩尾の三か所に埋め込まれた玉。鍛冶師として、技師として培ってきた眼でさえ、それが何なのかわからない。それは宝石の様でも球体レンズの様でもある。
「判断を下すのは早い、かな。一度皆の意見を聞かないと」
 そう言って、クレールはトランシーバーの発信ボタンを押した。


「発っ!」
 巨人の鈍重な蹴りを円を描くようにひらりと避け、シンがアキレス腱にサーベルを突き立てる。
 刃は分厚い皮を切り裂き、突き刺さる感覚を腕に伝えた。
「いくら装甲がぶ厚かろうと、やりようはいくらでもあるんだよ!」
 紋次郎が排莢と同時に装填された次弾を即座に発射させる。
 銃撃の非力さは、正確に一点をつき続ける事によって補われていた。
「小隊は……無事逃げたみたいだな」
 銃撃の合間、ちらりと後方を確認した紋次郎が呟く。
「対崎さん、連絡きたよ!」
 同じくして、紋次郎の位置まで引いてきたシンは手に持つトランシーバーを差し出した。

「……なるほど、やるね愛ちゃん」
「クレールの分析も流石だ」
 トランシーバーから聞こえてきた仲間達の声に、二人は顔を見合わせ微かに微笑んだ。
「よし、あともう少しだ。うまく誘導するぞ」
「ああ、任せといてよ!」


「トラップカードオープン!」
 太い木の上に姿を現したルンルンが、符を持った片手を突き上げ高らかに読み上げた。
「絡め取れ土蜘蛛達!!」
 がばっと振り下ろされた腕に呼応する様に、巨人の足元から無数の蜘蛛の腕を模した触手が生まれる。
 撤退する小隊の協力を得てルンルンが敷設したトラップが巨人の歩みを止めた。

「今よ! ここで決めるわ!」

 森中から道へと躍り出た愛梨が、声の限り叫ぶ。
「まずは邪魔なそいつからだ!」
 携えていた銃を投げ捨てると、腰に差した杖を取り出した紋次郎は、マテリアルの噴出により得た推進を全開に巨人へ肉薄する。
「シン、下がれ!」
「無茶するなよ!」
「善処する!」
 今なお巨人に取り付き斬撃を浴びせ続けるシンと肩を並べると、紋次郎は撤退を指示。
「さぁ、合わせろよ!」
 シンが下がった事を確認し、誰に聞かせるでもなく叫んだ紋次郎は、残りのマテリアルを一気に解放した。
 鈍い音と共に、グレネードランチャーがほんの僅かに蹴り上げられる――そして、その瞬間、巨人の左手で巨大な爆発が起こった。
「お、おい! 生きてるか!?」
 何とか体を丸めダメージを押さえたものの、もろに爆発に巻き込まれふっ飛ばされた紋次郎にシンが駆け寄る。
「ぐぅ……なんとかな……だが流石の腕だな、ヴィント」
 しかし、紋次郎は自分の身などより、後ろの森の中で、きっと顔色一つ変えず次弾を装填しているであろう仲間に賛辞を贈る。

 紋次郎の蹴りが跳ね上げたグレネードランチャーは、一直線に射線を通した。
 ヴィントはその一瞬を見逃さず、銃身の奥に装填された弾を正確に狙撃したのだ。

「まだまだ、手を休めないわよ! ルンルン、乗せて! あの凶悪な武器を撃つわ!」
「はいっ!」
 暴発に大きくのけぞった巨人に向け、符術師の二人が距離を置きながら符を構えた。
「舞えよ雷獣! 青靂乃矢!!」
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法三雷神の術!!」
 雷を纏って打ち出される愛梨の幻影の矢に、ルンルンの陽気な雷神達が乗り込んだ。
 矢は巨大な雷となり、巨人へと閃光を曳く。
 雷神様が跨る矢は、雷鳴の轟きを従え、チェーンソーを打ち上げた。

 巨人は両腕を大きく跳ね上げられ、無防備に腹を晒した。
「見えた!! 今こそ追撃の時!!」
 暴発に体を傾げる巨人に向けクレールが叫ぶと、足場の枝を大きく蹴る。
 マテリアルの光の加護を受け、大きく跳躍したクレールは5mを越える巨人の頭上を取った。
「閃け紋章剣!」
 跳躍もそのままに、頭を下に自由落下を始めたクレールが、カッと目を見開き左手で拳を握る右手の手首を掴む。
 右手の甲に現れた月の紋章。
「三日月集いて! 三光と成せ!!」
 右手の拳を解放すると共に生まれた三日月の刃が、三枚に分裂する。
「月雫! 額から脳を抉れ! 喉がら脳幹を裂け! 鳩尾から腸を穿て! ふざけた機械と共に! 全てを砕けぇぇぇぇ!!!」
 クレールの放った三条の光が巨人に取り付けられた三つの玉を同時に破砕した。


 硝子の割れる様な甲高い音を立て破壊された玉がパラパラと破片を散らす。
 巨人は反らされた体勢からゆっくりと、体を戻していった。
「やったか……?」
 シンが、サーベルを握る手を緩めようとした、その瞬間。

『……人間風情が小賢しい!!』

 低くまるで地震のように響く声と共に見開かれた三つの眼。
 跳ねあがっていた巨大な鋸が、巨大な暴風が狂気の斬撃を伴って振り下ろされた。
「きゃぁぁぁ!」
 大技を繰り出した反動か、僅かに硬直していたクレールが、狂気の片鱗に掠られ吹き飛ぶ。
『どうやら、随分と好き勝手をしてくれたようだな』
 再び響いた声。
 一回りも二回りも巨大に見える巨人は、自身のダメージを確認する様に体を見回した。
「愛梨さん、もう一度!」
「ええ!」
 洗脳の呪縛から解放された巨人に向け、ルンルンと愛梨は再び符にマテリアルを通わせ――。
『三神雷獣の舞!!』
 幻影の矢に乗る三人の雷神を呼び出した。
『笑止!』
 巨人が大きく一歩踏み出すと、大上段に構えた大鋸を振り下ろす。
 大鋸は二人が呼び出した幻影の雷神諸共大地を抉り、礫を纏った衝撃波が二人を吹き飛ばした。

「操り人形の方がまだやりやすかったね……」
 今までも強力であった巨人の攻撃に意思が乗り、これまで簡単に読めていた攻撃の軌道が、まったく読めない。
 シンはグッと奥歯を噛みしめながら、怪我を負った仲間を庇い、じりじりと後退するしかなかった。


 突然の状況の変化を、一人冷静に俯瞰するヴィント。
「戦局の天秤は、敵に傾いたか……」
 小さく呟いたヴィントは、スコープを覗く。
 大きなダメージを負った紋次郎とクレールをシンが担ぎ上げ、ルンルンと愛梨は互いに支え合いながら後退している。
「しかし、これならどうだ?」
 抑揚の無い声と共に、スコープ越しに交わった視線に向け、引き金を引いた。

 森の一角から放たれた銃弾は、巨人の右目を正確に射抜いた。
 ――しかし。
『そこか』
 遠く森の中から、小さく呻く声が聞こえる。
 潰された眼など気にもせず投げられた礫は、まだ狙撃態勢の解けきらぬヴィントを直撃した。

「くそっ、目を潰されても平気なのか……!」
 シンは呻くように呟く。
 頼みの綱であったヴィントの一撃も巨人を止めるには至らない。
「シン、頼みがある……」
「対崎さん!」
 聞こえた声の方を見やると、肩を貸す紋次郎が顔だけを上げていた。
「一瞬だ……一瞬でいい。時間を稼いでくれ……!」
 爆風に焼かれた体を何とか起こし、紋次郎が願い出る。
「一瞬って言われても……」
 しかし、シンはこの願いにすぐに首を縦に振れなかった。
 自身も少なからぬ傷を負っているし、再び前線に出れば負傷した者達が無防備に晒される。
「私に任せてください!」
 そんなシンの逡巡を感じ取ったのか、愛梨の肩を借り気丈に立ち上がったルンルンが紋次郎の願いに答えた。
「行きます……! ルンルン忍法五星花! 煌いて星っ!!」
 ルンルンの符から放たれる眩い閃光が、一瞬にして辺りを飲み込んだ。
「シン……!」
「支える! 思い切りやってくれ!」
「……ああ! さぁ、受けてみろ……これが対巨人用に編み出した、俺のとっておきだ……!」
 シンに体を支えられながら紋次郎が見えない弓を構える。
 三光が一本に収束し放たれた光の矢は、巨人の瞼の上から二つ目の眼を貫いた。
『ぐっ……』
 三つ目の二つまでも潰され、流石の巨人も歩みを止めた。
「最後の光が……無くなる前に、さっさと……家に帰りな!」
 鋭い眼光で巨人を射抜く紋次郎。
 目を覚ましたクレールが、傷付いた体をおして再びマテリアルを練り上げ、愛梨とルンルンもまた、再び符を構えた。
 そして後方では落樹したヴィントが、太い幹に背を預け、再び銃を構えている。
『……ふん、命拾いしたな人間共』
 残った一眼でハンター達一人一人を見回した巨人は、吐き捨てるようにそう呟くと、フッと殺気を収縮させ、そのまま森へと消えた。

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    クレール・ディンセルフka0586
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎ka1892

重体一覧

  • 明日も元気に!
    クレール・ディンセルフka0586
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎ka1892
  • 王女の私室に入った
    シンka4968

参加者一覧

  • 明日も元気に!
    クレール・ディンセルフ(ka0586
    人間(紅)|23才|女性|機導師
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎(ka1892
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • 王女の私室に入った
    シン(ka4968
    人間(蒼)|16才|男性|舞刀士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • アヴィドの友達
    愛梨(ka5827
    人間(紅)|18才|女性|符術師
  • 白腕の13
    ヴィント・アッシェヴェルデン(ka6346
    人間(蒼)|18才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】巨人対応、小隊救援
クレール・ディンセルフ(ka0586
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/09/24 22:53:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/20 22:51:15