ゲスト
(ka0000)
魔法公害のミシニア 其の参
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/06 07:30
- 完成日
- 2016/10/14 04:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その町『ミシニア』はグラズヘイム王国南部の伯爵地【ニュー・ウォルター】に存在する。
ミシニアは鍛冶を主体とした工場の町だが、機導術への感心は薄かった。
そもそも王国全体が他国に比べて機導術の導入が遅れ気味である。思案したタオリ町長は各地から指導者を呼んで機導術の工房を立ち上げた。
一朝一夕にはいかないが、生活を大きく変える冷蔵庫等の日用品や畑を耕す農耕魔導機械を独自生産。一歩一歩技術力を高めていった。
機導術の魔導機械にメンテナンスが不可欠である。少しずつ機導師等の職人によるアフターケアを充実させる。
町に新たな道を拓いたタオリ町長だが、喝采ばかりを浴びたわけではない。彼の強引なやり方を非難する声があったのも事実だ。
そのタオリ町長が半年ほど前に亡くなった。深夜の大通りにて、心臓にナイフを突き立てられて殺されたのである。
官憲によって捜査は行われたものの、未解決のまま終了してしまう。その後、新女性町長としてノリアが就いた頃からミシニアの雰囲気が変わった。
煙害が酷くなり、さらに雑魔が出没する騒ぎが起こる。
煙については元々が鍛冶の町なので程度の問題だとしても、誰もが気にしていたのが雑魔の出没だ。工場に未処理の鉱物マテリアルの残滓が溜まっていて、魔法公害が発生しているのではないかと誰もが心配した。
やがてスライムに襲われて、ついに人死がででしまう。それでもノリア町長は工房に問題なしと、町の人々からでていた調査の要望を頑なに拒んだ。
二人の目撃者が前町長タオリの殺害を目撃していた。
その後、裁縫店を営んでいた女性ミッシルは身の危険を察して失踪する。もう一人の男性リストンは官憲に掴まって郊外の牢獄に囚われた。
事態を重く捉えたミシニアの有志達はハンターに協力を求める。酒場を訪ねたハンター一行に有志代表の青年ガナイが情報を提供した。
一行は目撃者双方と接触。ミッシルとリストンの身柄を安全なハンターズソサエティー支部に送り届ける。二人によって前町長タオリの殺害状況が詳しく語られた。
「聞こえてきたの。ここまでよくやってくれたと。女の声で、これから先はもう用済みだってタオリ町長に話しかけていたのよ」
ミッシルはタオリにナイフを突き刺した犯人の言葉を覚えている。
「俺が居た場所は遠くて、会話は断片的にしか聞こえなかったんだ。でもミッシルさんがいっていたことは正しいと思うよ。……あの犯人の声に聞き覚えがある。ノリア町長とそっくりだ」
リストンは犯人の声質をはっきりと覚えていた。
殺人犯はフードを深く被っていて、顔の特徴については二人ともわからない。
「そうだ。もう一つ。死ぬ寸前のタオリ町長がいっていたの。機導術の魔導機械に仕掛けたとか」
「俺にも聞こえていたが、最後の部分が小さすぎてよくわからなかったよ」
ミッシルとリストンの証言はこれですべて。殺害された前町長タオリは、いくつかの機導術工房の経営者に圧力をかけていた。いうなれば賄賂の要求である。
タオリ町長が殺害されたのにも関わらず、ミシニアの町では新たな圧力が続いている。
ガガリニカ工房経営者の妻が青年ガナイと有志達に助けを求めた。現町長ノリアらしき人物から夫が脅迫を受けたと。
ガナイ達は再びハンターズソサエティー支部に協力を求める。来訪したハンター一行はガリニカ工房の関係者を守るため、そして裏で手を引く卑怯者を暴くために動いた。
スライム出没の謎を解き、そして実行犯確保に至る。しかし背後でにやける真犯人の捕縛までには至らなかった。ノリア町長が怪しいものの、状況証拠は別にして物的証拠がなかったからだ。
経緯は領主アーリアへと伝わる。それによってノリア町長は官憲を自分の手足のように使う横暴な振る舞いはできなくなった。
また彼女の悪評がミシニアの町を駆け抜ける。利益供与を受けている輩を除いて、誰もがノリア町長に疑いの目を注ぐようになった。
どんよりとした曇り空のミシニア町。
「どうすればノリアを失脚させられるのだろうか……」
いつもの酒場でガナイと有志達は相談を繰り返す。交わされる内容はどうすればノリア町長を糾弾できるかだ。
今は世間に悪事がばれたために大人しくしているだけというのが大方の意見である。腹黒いノリア町長のことだ。ほとぼりが冷めたのなら、引っ込めていた歯牙を露わにすることだろう。より巧妙に悪事を働くことは、誰にでも容易に想像がついた。
「あの女狐のことだ。どこかに奪った金を蓄財しているはず」
「しかし普通、金に名前を書く奴はいないぞ」
「いや、わからんぞ。例えば賄賂の取引の際に渡されたバックに元の持ち主がわかるような、何かが仕込まれているとか。脅迫されて仕方なく金を支払ったとしてもだ。俺なら何かを残しておくね」
「あり得ない話ではないな」
「最初は確認したり、処分していたとしてもだ。うまくいくのが当たり前になると、危機感が薄れるのが人だよ。ノリアとて例外ではないだろう」
「ノリアを直接尋問できない以上、とにかく脅迫で得た賄賂がどこに隠されているのか、探す必要があるな」
話し合いはまとまった。そしてハンターズソサエティー支部に三度目の協力を要請。有能なハンター達に再びの協力を願う。
探しだして欲しいのはノリア町長が脅迫で集めた賄賂だ。近場か、または遠方かはわからないが、いずれにしても何処かに隠してあるはず。何らかの方法でノリアの懐を窮状させられたのなら、脅迫した金に手を付けるに違いない。監視して足取りを追えばおそらく隠し場所へと辿り着けるだろう。
ガナイはそのような依頼文の記述を受付嬢に要望するのだった。
ミシニアは鍛冶を主体とした工場の町だが、機導術への感心は薄かった。
そもそも王国全体が他国に比べて機導術の導入が遅れ気味である。思案したタオリ町長は各地から指導者を呼んで機導術の工房を立ち上げた。
一朝一夕にはいかないが、生活を大きく変える冷蔵庫等の日用品や畑を耕す農耕魔導機械を独自生産。一歩一歩技術力を高めていった。
機導術の魔導機械にメンテナンスが不可欠である。少しずつ機導師等の職人によるアフターケアを充実させる。
町に新たな道を拓いたタオリ町長だが、喝采ばかりを浴びたわけではない。彼の強引なやり方を非難する声があったのも事実だ。
そのタオリ町長が半年ほど前に亡くなった。深夜の大通りにて、心臓にナイフを突き立てられて殺されたのである。
官憲によって捜査は行われたものの、未解決のまま終了してしまう。その後、新女性町長としてノリアが就いた頃からミシニアの雰囲気が変わった。
煙害が酷くなり、さらに雑魔が出没する騒ぎが起こる。
煙については元々が鍛冶の町なので程度の問題だとしても、誰もが気にしていたのが雑魔の出没だ。工場に未処理の鉱物マテリアルの残滓が溜まっていて、魔法公害が発生しているのではないかと誰もが心配した。
やがてスライムに襲われて、ついに人死がででしまう。それでもノリア町長は工房に問題なしと、町の人々からでていた調査の要望を頑なに拒んだ。
二人の目撃者が前町長タオリの殺害を目撃していた。
その後、裁縫店を営んでいた女性ミッシルは身の危険を察して失踪する。もう一人の男性リストンは官憲に掴まって郊外の牢獄に囚われた。
事態を重く捉えたミシニアの有志達はハンターに協力を求める。酒場を訪ねたハンター一行に有志代表の青年ガナイが情報を提供した。
一行は目撃者双方と接触。ミッシルとリストンの身柄を安全なハンターズソサエティー支部に送り届ける。二人によって前町長タオリの殺害状況が詳しく語られた。
「聞こえてきたの。ここまでよくやってくれたと。女の声で、これから先はもう用済みだってタオリ町長に話しかけていたのよ」
ミッシルはタオリにナイフを突き刺した犯人の言葉を覚えている。
「俺が居た場所は遠くて、会話は断片的にしか聞こえなかったんだ。でもミッシルさんがいっていたことは正しいと思うよ。……あの犯人の声に聞き覚えがある。ノリア町長とそっくりだ」
リストンは犯人の声質をはっきりと覚えていた。
殺人犯はフードを深く被っていて、顔の特徴については二人ともわからない。
「そうだ。もう一つ。死ぬ寸前のタオリ町長がいっていたの。機導術の魔導機械に仕掛けたとか」
「俺にも聞こえていたが、最後の部分が小さすぎてよくわからなかったよ」
ミッシルとリストンの証言はこれですべて。殺害された前町長タオリは、いくつかの機導術工房の経営者に圧力をかけていた。いうなれば賄賂の要求である。
タオリ町長が殺害されたのにも関わらず、ミシニアの町では新たな圧力が続いている。
ガガリニカ工房経営者の妻が青年ガナイと有志達に助けを求めた。現町長ノリアらしき人物から夫が脅迫を受けたと。
ガナイ達は再びハンターズソサエティー支部に協力を求める。来訪したハンター一行はガリニカ工房の関係者を守るため、そして裏で手を引く卑怯者を暴くために動いた。
スライム出没の謎を解き、そして実行犯確保に至る。しかし背後でにやける真犯人の捕縛までには至らなかった。ノリア町長が怪しいものの、状況証拠は別にして物的証拠がなかったからだ。
経緯は領主アーリアへと伝わる。それによってノリア町長は官憲を自分の手足のように使う横暴な振る舞いはできなくなった。
また彼女の悪評がミシニアの町を駆け抜ける。利益供与を受けている輩を除いて、誰もがノリア町長に疑いの目を注ぐようになった。
どんよりとした曇り空のミシニア町。
「どうすればノリアを失脚させられるのだろうか……」
いつもの酒場でガナイと有志達は相談を繰り返す。交わされる内容はどうすればノリア町長を糾弾できるかだ。
今は世間に悪事がばれたために大人しくしているだけというのが大方の意見である。腹黒いノリア町長のことだ。ほとぼりが冷めたのなら、引っ込めていた歯牙を露わにすることだろう。より巧妙に悪事を働くことは、誰にでも容易に想像がついた。
「あの女狐のことだ。どこかに奪った金を蓄財しているはず」
「しかし普通、金に名前を書く奴はいないぞ」
「いや、わからんぞ。例えば賄賂の取引の際に渡されたバックに元の持ち主がわかるような、何かが仕込まれているとか。脅迫されて仕方なく金を支払ったとしてもだ。俺なら何かを残しておくね」
「あり得ない話ではないな」
「最初は確認したり、処分していたとしてもだ。うまくいくのが当たり前になると、危機感が薄れるのが人だよ。ノリアとて例外ではないだろう」
「ノリアを直接尋問できない以上、とにかく脅迫で得た賄賂がどこに隠されているのか、探す必要があるな」
話し合いはまとまった。そしてハンターズソサエティー支部に三度目の協力を要請。有能なハンター達に再びの協力を願う。
探しだして欲しいのはノリア町長が脅迫で集めた賄賂だ。近場か、または遠方かはわからないが、いずれにしても何処かに隠してあるはず。何らかの方法でノリアの懐を窮状させられたのなら、脅迫した金に手を付けるに違いない。監視して足取りを追えばおそらく隠し場所へと辿り着けるだろう。
ガナイはそのような依頼文の記述を受付嬢に要望するのだった。
リプレイ本文
●
不穏な空気が澱む町、ミシニア。
夕闇の最中に辿り着いたハンター一行は足早に酒場を目指す。わずかな道のりにかかわず、町の人々がノリアの悪評を口の端にのぼらせているのが耳元に届く。
「ここまで町の人にも不審が募るようになったなら、彼女が失脚するのも時間の問題よ」
エマ・ハミルトン(ka4835)はそれらの人々を横目で眺めた。
酒場に入ると官憲の姿はなく、ガナイと町の有志達が待機していた。
「ラーリア工房の実質オーナーがノリアなんて。魔導冷凍庫を開発してるって本当なのかな?」
「依頼書に添付した書類の通りだ。何でも大々的に売り込もうとしているらしいぞ」
席に着いたばかりのメイム(ka2290)の問いにガナイが答える。ラーリア工房では部品すべてを内製してはおらず、細い配管などの一部は外注しているという。ただ具体的な取引先は不明だった。
「頭使う仕事ってなら、できることはそんなにねぇな……ま、そいつはあんたらに任せて、俺はいつも通りやるか。確か行方不明者がいたよな」
ツィーウッド・フェールアイゼン(ka2773)は主に聞き込みを行おうと考えていた。
「俺もやろう。つまりは尻尾を掴めってことだよな。窮鼠猫を噛む……確実にいこう」
ザレム・アズール(ka0878)はガリニカ工房を含めた工房関係者から話を聞くつもりである。配管を含めてラーリア工房の取引品目がわかれば、さらに追い詰めることができると計算していた。
「さて……決着をつけましょう」
シルヴィア・オーウェン(ka6372)はラーリア工房の社員食堂に納品されている食材に注目する。成果をだすためには有志達の協力が不可欠。求めると有志達は快く引き受けてくれた。
滞在期間中はガナイが用意した宿部屋に寝泊まりをする。
夜間に済ませられる準備は終わらせておく。仮眠をとったハンター達は翌朝から本格的に動きだしたのだった。
●
「ここか」
ツィーウッドはガナイからもらった住所先を訪ねて回る。空き家では家捜しをし、人がいたときには市長に告げ口されないよう細心の注意を払う。
六軒目の古びた建物の一室には倒産した工房の元経営者家族が暮らしている。留守番の娘は父親の失踪にノリア市長が関与しているのではないかと疑っていた。
「市長の噂が本当かどうか気になってな。近くを通ったとき、あんたたちのことを近所の人等が話していたのさ。それで立ち寄ったんだが迷惑だったらすぐに帰るぜ」
「いえ構いません。噂については私もそうではないか……いや絶対そうだと思っています」
ツィーウッドの疑問を呼び水にして、娘が行方不明の父親のことを語りだす。母親から聞いた話によれば何者かに脅迫されていたという。多額の賄賂を何度も要求されて、ついには資金繰りに困って倒産に至った。その何者かの正体がノリア市長だと娘は想像していた。
「こいつは?」
ツィーウッドは娘が床下から取りだした手紙を渡される。最後に記されたサインは娘の父親である元工房経営者のもの。その手紙には賄賂で渡した一部の硬貨に『へ』の字に似た傷を刻んだとある。他にも硬貨数枚を縦に割った上で実情を認めた紙片を忍び込ませてあるとのことだ。
「俺にこれを託されたところで、どうにもならねぇぜ。さっきもいったが興味半分でこうしているだけだからな」
「いいんです。話し相手になって頂いて、おかげですっきりしました」
娘は悲しみの表情を浮かべつつもツィーウッドに微笑んだ。
ツィーウッドが集めた情報は宿部屋へ戻ったときに仲間達に伝えられた。
●
エマは眼鏡等で変装し、作業員としてラーリア工房に潜り込む。
(仕事は普通ね。酷い環境といえばそうだけど、この程度は工房ならどこも同じだろうし)
エマを含めた女性の多くは組み立てに従事していたが、男性が主となる研削の現場は油まみれだ。回転する砥石に鋳造部品を当てて余分な個所を削り取っていく。部品は不気味な色の薬品に漬けてから、もう一度丁寧に手作業で研磨。その上でエマがいる組み立ての現場へと運ばれた。
休憩時、エマは同じ現場で働く赤毛の女性作業員と社員食堂で昼食をとる。
「工房務めはここが初めてなの?」
エマが話しかけると赤毛女性がため息をつく。
「違うわ。前のところが半年前に潰れちゃってね。そのときの工房主がここを紹介してくれたんだけど……。ここ、大手のはずなのに給金安いのよね」
「ここを選んだ私がいうのも何だけど、どうして? この町なら工房はいくつもあるし」
赤毛女性がエマに向けて首を横に振った。
「もの凄く不況なのよ。私的には魔導の機械って売れている印象があるんだけど、町のみんながそういっているし。前の工房は実際に潰れたしね。だから他の勤め先を探すの大変そうで……でも振り返ってみれば事なかれだったかも」
赤毛女性の話にエマは耳を傾け続ける。
(何もかもラーリア工房にとって都合がよい状況と刷り込みね。不況の印象もきっとノリアが演出したに違いないわ。……ついでにガナイからもらった情報を流しておこうかしら)
エマは別の工房へ移ろうか迷っていると吐露した。その上でここよりも条件のよい別工房があると赤毛女性に教える。半信半疑な彼女だったが、三日後の仕事前に会ったときには喜んでいた。その日の午後から赤毛女性の姿は見かけられなくなった。別工房に転職したからである。
好待遇な別工房の話題はラーリア工房内を駆け巡る。この事実は作業員達の気持ちを鷲掴みにしたのだった。
●
メイムとザレムはラーリア工房近くの空き家から様子を窺った。
かなりの頻度で行き交う納品と出荷の荷馬車。十数分に一度は工房の裏門を通り過ぎていく。
「魔導冷凍庫って言えば、帝国でも安くない機器。王国で自主生産できるなら慌てなくても目玉商品になるのにねー」
「それほどの技術があるなら卑怯な手を……、この音、もしかしてあの荷馬車がそうか?」
三日目の昼過ぎ。目の前を通り過ぎようとした荷馬車から金属が擦れ合う音が聞こえてきた。
工房の裏門へ辿り着く前に交通量の激しい四つ辻が立ち塞がる。二人は停車している間に荷台へと乗り込んで貨物の中身を確かめた。
魔導冷凍庫用の配管なのを確かめて退散。納品が終わった帰路の荷馬車を停めて御者に事情を説明する。自分ではわからないとのことで、配管を納品した工房へ向かうこととなった。そして工房主と面会した。
「本日はどのようなご用件で」
「ご存じとは思いますが御社が取引されているラーリア工房の噂についてです。まずはこちらを見てもらえますか?」
メイムが提示したのは先に集めた状況証拠の品々だ。写真や資料など多岐にわたる。
「これは……酷いですね」
工房主は技術者だけあって爆発跡を見ただけで、どのようなことが起こったのか察してくれた。
「こちらは領主の許可証だ。目を通してくれ。アーリア伯爵も非常に疑っているのだが、物的証拠が乏しい状況なんだ」
「是非に協力してもらえないかな。その後の補償が成される様計らうので一週間程度納品を滞らせて欲しいんだよ」
ザレムとメイムが交互に工房主を説得する。最初は乗り気ではなかった彼も事情を汲んでくれた。明日から出荷を減らし、三日後には納品なしにしてくれるという。
それからしばらくの間、監視対象はノリアとなる。ザレムとメイムに加えてツィーウッドの三人で尾行を開始。昼夜問わずに監視を続けたのだった。
●
シルヴィアはラーリア工房へ食材を納品している業者を訪問する。商店主との面会の場でアーリア伯爵から頂いた許可証を提示して説得を試みた。
「偽物だと疑うのであれば確認をとって頂いても構いません」
「その必要は。こちらは本物で間違いない」
商店主は以前に領主アーリアから書状を受け取ったときがある。そのときの筆跡とそっくりなので疑う余地はないという。
領主には特別な恩があると協力要請にも快諾してくれた。シルヴィアは納品業者に化けてラーリア工房内に潜入を果たす。
荷下ろしは同行した本物の納品業者に任せて工房内を彷徨った。そして休憩中の事務所へと辿り着く。次回納品用の書類を改竄すると素知らぬ顔で立ち去る。
そして翌日。
「こ、こんなの聞いていないぞ。特に紅茶を荷馬車一両分なんて、あり得ないだろ? 持ち帰ってくれ!」
食材の納品業者が荷馬車十両で乗りつけた状況に、ラーリア工房の担当は大声を張りあげた。
「そう言われましても。こちらの写しと本物の書類の割り印はぴたりと合います。こちらは契約通りに遂行していますので受け取って頂かないと」
「常識ってのがあるだろ。しかも二週間もの間、これが続くだなんて」
「常識というのなら、こちらに比がないのが現状です。一方的な契約破棄であれば、今後得られたであろう一年分の代金を賠償として請求させて頂きます」
シルヴィアは裁判沙汰にしても構わないと強気で攻める。ミシニアで大量納品が可能な食材業者は当該の商店のみだ。隣町から取り寄せたのなら割高になること必至である。
八方塞がりな状況にラーリア工房の担当は渋々引き取らざるを得なくなった。
●
ラーリア工房と配管業者の間で行われた納品に関しての会議は物別れに終わる。
また作業員が次々と退職していった。給金の値上げが実施されたものの、焼け石に水の状態。作業員の補充に経費はかかり、特に高給な技能職を雇い直すのは困難を極める。
食材納品業者とのいざこざにおいても資金が消えていく。
資産家であっても『真水』と呼ばれる即座に動かせる金額には限界がある。好調なのに黒字倒産が発生する所以だ。それはラーリア工房とて同じこと。魔導冷凍庫を開発するために大量の資金投入した上での様々な困難は、ノリアを追い込むのに充分だった。
ハンター一行がミシニア来訪して九日目の深夜。
「何やら動きが感じられるな」
静かな夜の町に物音がする。真っ先に気づいたザレムが様子を窺うとノリアの屋敷門が開かれた。程なく一両の大型馬車が通りへと飛びだす。
周囲に散らばっていた仲間達に無線や魔導短伝話で連絡。一斉に馬車を追いかけた。
「領主たるもの、民の目を忘れては身を滅ぼす。……父の言葉です」
シルヴィアは走りながら呟いた。冷静さを装っているのか馬車の速さはそれほどでもない。覚醒しているので余裕で追いつけるが、気づかれないよう距離をとる。
「ここはもしかして?」
仰いだメイムの瞳には星空と月、そして鐘楼の輪郭が映った。ノリアの馬車は教会の裏口へと横付けされる。
ノリアが馬車と教会のわずかな隙間を通り過ぎていく。
エマはその様子を「間違いなくノリアでしたわ」と魔導短伝話で伝達。所持していない仲間には口頭や無線による仲介が行われる。すぐにハンター全員が裏手へと集まった。
「教会の礼拝、または密室になる懺悔の部屋なら秘密のやり取りをするのにうってつけです。恐喝で奪った金品はここにありそうです」
殆どのハンターがシルヴィアと同じ意見に辿り着いていた。まずは邪魔な馬車の御者や同乗者を排除。騒がないよう気絶させてから縄で縛り、馬車内へと転がしておく。
裏口から教会内に踏み込んだ。教会の通路は暗く、ツィーウッドのLEDライトが役立つ。
物影に隠れて懺悔室の様子を窺う。中からでてきたノリアは安心しきった表情を浮かべていた。
ノリアは護衛と一緒に礼拝堂へと移る。まもなく司祭と助祭が現れた。助祭が押していた荷車には大きな革袋が載せられていた。
「私の名はシルヴィア・ユナ・ノエル・オーウェン。貴女のすべてを暴きに来ました」
貴族然とした態度で名乗るシルヴィアに続いてハンター達が次々と姿を晒す。
ザレムは礼状らしき書類を掲げて、いかにも公権介入の雰囲気を漂わせる。
逃げだそうとしたノリアだったが、廊下への扉を潜り抜けた途端に悲鳴をあげた。
扉向こうから現れたのはノリアを後ろ手に捕まえたツィーウッドである。手を離してノリアの背中を軽く押し、礼拝堂に戻す。
「うーん。これだけじゃ足りないよね。他にもあるんじゃない?」
革袋の中身が金貨なのを確認したメイムが助祭へと迫る。
良心の呵責に堪えかねていた助祭の口は軽かった。司祭やノリアの制止を無視して知る限りを白状し始める。
「ち、地下室にチーズや葡萄酒樽が隠してあります……。少し前から換金し始めて、他のお金に足してあります。実は司祭様の懐に何割かが――」
助祭は司祭が着服した件まで吐露した。大慌てでノリアに言い訳をする司祭だが後の祭りである。
「もう観念するんだな。税金の納め時だよ」
ザレムの手に握られていたPDAには、ノリアと司祭、助祭達の悪行がこれでもかと記録済みだ。破れかぶれになった司祭が杖を掲げて襲いかかってきたが、彼の敵ではなかった。峰打ちのザレムの刀を介して司祭は雷撃に曝される。痺れて気絶してその場へと倒れ込んだ。
「こんなの……認めませんよ私は……」
ノリアが床へとへたり込む。乱れた髪もそのままで俯いたまま、ぶつぶつと何か呟いていた。
「あとはそっちで好きにやっといてくれ、俺はまあ……手ェかしてくれたところに挨拶回ってくるわ」
そういってツィーウッドは一人去っていった。
●
革袋の金貨の中には行方不明者が残した傷や紙片が残されていた。これも有力な証拠の一つとなる。
ツィーウッドは魔導伝話を使ってマール支部に連絡。娘の父親が落ち延びていた先は城塞都市マールだった。
数日後、ミシニアに戻った父親と家族が再会を果たす。
「すまなかった。すまなかったよ」
「いいの。だって、命を狙われていたんだもの」
抱きしめ合う父親と娘の姿に涙ぐむ者は多かった。
「何とお礼をいってよいのやら思いつかなくて。ありがとうございます」
ハンター一行が帰路へ就く間際、ガナイと有志一同が見送りに現れる。
ノリアは町長の座から降ろされただけでなく重罪人となった。当分の間は伯爵が選んだ人物がミシニア町を統べることだろう。
ノリアの財産は伯爵が没収したが、これは換金の手間を考えての処置である。
これまでに脅迫された工房主には伯爵からの見舞金が支払われた。また工房を失ってしまった者には、ラーリア工房の施設を分割して貸しだされる。経営が軌道に乗ったのであれば元の工房を買い戻したり、または新規の工房を建てることだろう。
汚職にまみれていたミシニアの町に光明が射す。それを達成することができたのは、ハンターの大活躍があればこそであった。
不穏な空気が澱む町、ミシニア。
夕闇の最中に辿り着いたハンター一行は足早に酒場を目指す。わずかな道のりにかかわず、町の人々がノリアの悪評を口の端にのぼらせているのが耳元に届く。
「ここまで町の人にも不審が募るようになったなら、彼女が失脚するのも時間の問題よ」
エマ・ハミルトン(ka4835)はそれらの人々を横目で眺めた。
酒場に入ると官憲の姿はなく、ガナイと町の有志達が待機していた。
「ラーリア工房の実質オーナーがノリアなんて。魔導冷凍庫を開発してるって本当なのかな?」
「依頼書に添付した書類の通りだ。何でも大々的に売り込もうとしているらしいぞ」
席に着いたばかりのメイム(ka2290)の問いにガナイが答える。ラーリア工房では部品すべてを内製してはおらず、細い配管などの一部は外注しているという。ただ具体的な取引先は不明だった。
「頭使う仕事ってなら、できることはそんなにねぇな……ま、そいつはあんたらに任せて、俺はいつも通りやるか。確か行方不明者がいたよな」
ツィーウッド・フェールアイゼン(ka2773)は主に聞き込みを行おうと考えていた。
「俺もやろう。つまりは尻尾を掴めってことだよな。窮鼠猫を噛む……確実にいこう」
ザレム・アズール(ka0878)はガリニカ工房を含めた工房関係者から話を聞くつもりである。配管を含めてラーリア工房の取引品目がわかれば、さらに追い詰めることができると計算していた。
「さて……決着をつけましょう」
シルヴィア・オーウェン(ka6372)はラーリア工房の社員食堂に納品されている食材に注目する。成果をだすためには有志達の協力が不可欠。求めると有志達は快く引き受けてくれた。
滞在期間中はガナイが用意した宿部屋に寝泊まりをする。
夜間に済ませられる準備は終わらせておく。仮眠をとったハンター達は翌朝から本格的に動きだしたのだった。
●
「ここか」
ツィーウッドはガナイからもらった住所先を訪ねて回る。空き家では家捜しをし、人がいたときには市長に告げ口されないよう細心の注意を払う。
六軒目の古びた建物の一室には倒産した工房の元経営者家族が暮らしている。留守番の娘は父親の失踪にノリア市長が関与しているのではないかと疑っていた。
「市長の噂が本当かどうか気になってな。近くを通ったとき、あんたたちのことを近所の人等が話していたのさ。それで立ち寄ったんだが迷惑だったらすぐに帰るぜ」
「いえ構いません。噂については私もそうではないか……いや絶対そうだと思っています」
ツィーウッドの疑問を呼び水にして、娘が行方不明の父親のことを語りだす。母親から聞いた話によれば何者かに脅迫されていたという。多額の賄賂を何度も要求されて、ついには資金繰りに困って倒産に至った。その何者かの正体がノリア市長だと娘は想像していた。
「こいつは?」
ツィーウッドは娘が床下から取りだした手紙を渡される。最後に記されたサインは娘の父親である元工房経営者のもの。その手紙には賄賂で渡した一部の硬貨に『へ』の字に似た傷を刻んだとある。他にも硬貨数枚を縦に割った上で実情を認めた紙片を忍び込ませてあるとのことだ。
「俺にこれを託されたところで、どうにもならねぇぜ。さっきもいったが興味半分でこうしているだけだからな」
「いいんです。話し相手になって頂いて、おかげですっきりしました」
娘は悲しみの表情を浮かべつつもツィーウッドに微笑んだ。
ツィーウッドが集めた情報は宿部屋へ戻ったときに仲間達に伝えられた。
●
エマは眼鏡等で変装し、作業員としてラーリア工房に潜り込む。
(仕事は普通ね。酷い環境といえばそうだけど、この程度は工房ならどこも同じだろうし)
エマを含めた女性の多くは組み立てに従事していたが、男性が主となる研削の現場は油まみれだ。回転する砥石に鋳造部品を当てて余分な個所を削り取っていく。部品は不気味な色の薬品に漬けてから、もう一度丁寧に手作業で研磨。その上でエマがいる組み立ての現場へと運ばれた。
休憩時、エマは同じ現場で働く赤毛の女性作業員と社員食堂で昼食をとる。
「工房務めはここが初めてなの?」
エマが話しかけると赤毛女性がため息をつく。
「違うわ。前のところが半年前に潰れちゃってね。そのときの工房主がここを紹介してくれたんだけど……。ここ、大手のはずなのに給金安いのよね」
「ここを選んだ私がいうのも何だけど、どうして? この町なら工房はいくつもあるし」
赤毛女性がエマに向けて首を横に振った。
「もの凄く不況なのよ。私的には魔導の機械って売れている印象があるんだけど、町のみんながそういっているし。前の工房は実際に潰れたしね。だから他の勤め先を探すの大変そうで……でも振り返ってみれば事なかれだったかも」
赤毛女性の話にエマは耳を傾け続ける。
(何もかもラーリア工房にとって都合がよい状況と刷り込みね。不況の印象もきっとノリアが演出したに違いないわ。……ついでにガナイからもらった情報を流しておこうかしら)
エマは別の工房へ移ろうか迷っていると吐露した。その上でここよりも条件のよい別工房があると赤毛女性に教える。半信半疑な彼女だったが、三日後の仕事前に会ったときには喜んでいた。その日の午後から赤毛女性の姿は見かけられなくなった。別工房に転職したからである。
好待遇な別工房の話題はラーリア工房内を駆け巡る。この事実は作業員達の気持ちを鷲掴みにしたのだった。
●
メイムとザレムはラーリア工房近くの空き家から様子を窺った。
かなりの頻度で行き交う納品と出荷の荷馬車。十数分に一度は工房の裏門を通り過ぎていく。
「魔導冷凍庫って言えば、帝国でも安くない機器。王国で自主生産できるなら慌てなくても目玉商品になるのにねー」
「それほどの技術があるなら卑怯な手を……、この音、もしかしてあの荷馬車がそうか?」
三日目の昼過ぎ。目の前を通り過ぎようとした荷馬車から金属が擦れ合う音が聞こえてきた。
工房の裏門へ辿り着く前に交通量の激しい四つ辻が立ち塞がる。二人は停車している間に荷台へと乗り込んで貨物の中身を確かめた。
魔導冷凍庫用の配管なのを確かめて退散。納品が終わった帰路の荷馬車を停めて御者に事情を説明する。自分ではわからないとのことで、配管を納品した工房へ向かうこととなった。そして工房主と面会した。
「本日はどのようなご用件で」
「ご存じとは思いますが御社が取引されているラーリア工房の噂についてです。まずはこちらを見てもらえますか?」
メイムが提示したのは先に集めた状況証拠の品々だ。写真や資料など多岐にわたる。
「これは……酷いですね」
工房主は技術者だけあって爆発跡を見ただけで、どのようなことが起こったのか察してくれた。
「こちらは領主の許可証だ。目を通してくれ。アーリア伯爵も非常に疑っているのだが、物的証拠が乏しい状況なんだ」
「是非に協力してもらえないかな。その後の補償が成される様計らうので一週間程度納品を滞らせて欲しいんだよ」
ザレムとメイムが交互に工房主を説得する。最初は乗り気ではなかった彼も事情を汲んでくれた。明日から出荷を減らし、三日後には納品なしにしてくれるという。
それからしばらくの間、監視対象はノリアとなる。ザレムとメイムに加えてツィーウッドの三人で尾行を開始。昼夜問わずに監視を続けたのだった。
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シルヴィアはラーリア工房へ食材を納品している業者を訪問する。商店主との面会の場でアーリア伯爵から頂いた許可証を提示して説得を試みた。
「偽物だと疑うのであれば確認をとって頂いても構いません」
「その必要は。こちらは本物で間違いない」
商店主は以前に領主アーリアから書状を受け取ったときがある。そのときの筆跡とそっくりなので疑う余地はないという。
領主には特別な恩があると協力要請にも快諾してくれた。シルヴィアは納品業者に化けてラーリア工房内に潜入を果たす。
荷下ろしは同行した本物の納品業者に任せて工房内を彷徨った。そして休憩中の事務所へと辿り着く。次回納品用の書類を改竄すると素知らぬ顔で立ち去る。
そして翌日。
「こ、こんなの聞いていないぞ。特に紅茶を荷馬車一両分なんて、あり得ないだろ? 持ち帰ってくれ!」
食材の納品業者が荷馬車十両で乗りつけた状況に、ラーリア工房の担当は大声を張りあげた。
「そう言われましても。こちらの写しと本物の書類の割り印はぴたりと合います。こちらは契約通りに遂行していますので受け取って頂かないと」
「常識ってのがあるだろ。しかも二週間もの間、これが続くだなんて」
「常識というのなら、こちらに比がないのが現状です。一方的な契約破棄であれば、今後得られたであろう一年分の代金を賠償として請求させて頂きます」
シルヴィアは裁判沙汰にしても構わないと強気で攻める。ミシニアで大量納品が可能な食材業者は当該の商店のみだ。隣町から取り寄せたのなら割高になること必至である。
八方塞がりな状況にラーリア工房の担当は渋々引き取らざるを得なくなった。
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ラーリア工房と配管業者の間で行われた納品に関しての会議は物別れに終わる。
また作業員が次々と退職していった。給金の値上げが実施されたものの、焼け石に水の状態。作業員の補充に経費はかかり、特に高給な技能職を雇い直すのは困難を極める。
食材納品業者とのいざこざにおいても資金が消えていく。
資産家であっても『真水』と呼ばれる即座に動かせる金額には限界がある。好調なのに黒字倒産が発生する所以だ。それはラーリア工房とて同じこと。魔導冷凍庫を開発するために大量の資金投入した上での様々な困難は、ノリアを追い込むのに充分だった。
ハンター一行がミシニア来訪して九日目の深夜。
「何やら動きが感じられるな」
静かな夜の町に物音がする。真っ先に気づいたザレムが様子を窺うとノリアの屋敷門が開かれた。程なく一両の大型馬車が通りへと飛びだす。
周囲に散らばっていた仲間達に無線や魔導短伝話で連絡。一斉に馬車を追いかけた。
「領主たるもの、民の目を忘れては身を滅ぼす。……父の言葉です」
シルヴィアは走りながら呟いた。冷静さを装っているのか馬車の速さはそれほどでもない。覚醒しているので余裕で追いつけるが、気づかれないよう距離をとる。
「ここはもしかして?」
仰いだメイムの瞳には星空と月、そして鐘楼の輪郭が映った。ノリアの馬車は教会の裏口へと横付けされる。
ノリアが馬車と教会のわずかな隙間を通り過ぎていく。
エマはその様子を「間違いなくノリアでしたわ」と魔導短伝話で伝達。所持していない仲間には口頭や無線による仲介が行われる。すぐにハンター全員が裏手へと集まった。
「教会の礼拝、または密室になる懺悔の部屋なら秘密のやり取りをするのにうってつけです。恐喝で奪った金品はここにありそうです」
殆どのハンターがシルヴィアと同じ意見に辿り着いていた。まずは邪魔な馬車の御者や同乗者を排除。騒がないよう気絶させてから縄で縛り、馬車内へと転がしておく。
裏口から教会内に踏み込んだ。教会の通路は暗く、ツィーウッドのLEDライトが役立つ。
物影に隠れて懺悔室の様子を窺う。中からでてきたノリアは安心しきった表情を浮かべていた。
ノリアは護衛と一緒に礼拝堂へと移る。まもなく司祭と助祭が現れた。助祭が押していた荷車には大きな革袋が載せられていた。
「私の名はシルヴィア・ユナ・ノエル・オーウェン。貴女のすべてを暴きに来ました」
貴族然とした態度で名乗るシルヴィアに続いてハンター達が次々と姿を晒す。
ザレムは礼状らしき書類を掲げて、いかにも公権介入の雰囲気を漂わせる。
逃げだそうとしたノリアだったが、廊下への扉を潜り抜けた途端に悲鳴をあげた。
扉向こうから現れたのはノリアを後ろ手に捕まえたツィーウッドである。手を離してノリアの背中を軽く押し、礼拝堂に戻す。
「うーん。これだけじゃ足りないよね。他にもあるんじゃない?」
革袋の中身が金貨なのを確認したメイムが助祭へと迫る。
良心の呵責に堪えかねていた助祭の口は軽かった。司祭やノリアの制止を無視して知る限りを白状し始める。
「ち、地下室にチーズや葡萄酒樽が隠してあります……。少し前から換金し始めて、他のお金に足してあります。実は司祭様の懐に何割かが――」
助祭は司祭が着服した件まで吐露した。大慌てでノリアに言い訳をする司祭だが後の祭りである。
「もう観念するんだな。税金の納め時だよ」
ザレムの手に握られていたPDAには、ノリアと司祭、助祭達の悪行がこれでもかと記録済みだ。破れかぶれになった司祭が杖を掲げて襲いかかってきたが、彼の敵ではなかった。峰打ちのザレムの刀を介して司祭は雷撃に曝される。痺れて気絶してその場へと倒れ込んだ。
「こんなの……認めませんよ私は……」
ノリアが床へとへたり込む。乱れた髪もそのままで俯いたまま、ぶつぶつと何か呟いていた。
「あとはそっちで好きにやっといてくれ、俺はまあ……手ェかしてくれたところに挨拶回ってくるわ」
そういってツィーウッドは一人去っていった。
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革袋の金貨の中には行方不明者が残した傷や紙片が残されていた。これも有力な証拠の一つとなる。
ツィーウッドは魔導伝話を使ってマール支部に連絡。娘の父親が落ち延びていた先は城塞都市マールだった。
数日後、ミシニアに戻った父親と家族が再会を果たす。
「すまなかった。すまなかったよ」
「いいの。だって、命を狙われていたんだもの」
抱きしめ合う父親と娘の姿に涙ぐむ者は多かった。
「何とお礼をいってよいのやら思いつかなくて。ありがとうございます」
ハンター一行が帰路へ就く間際、ガナイと有志一同が見送りに現れる。
ノリアは町長の座から降ろされただけでなく重罪人となった。当分の間は伯爵が選んだ人物がミシニア町を統べることだろう。
ノリアの財産は伯爵が没収したが、これは換金の手間を考えての処置である。
これまでに脅迫された工房主には伯爵からの見舞金が支払われた。また工房を失ってしまった者には、ラーリア工房の施設を分割して貸しだされる。経営が軌道に乗ったのであれば元の工房を買い戻したり、または新規の工房を建てることだろう。
汚職にまみれていたミシニアの町に光明が射す。それを達成することができたのは、ハンターの大活躍があればこそであった。
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相談卓 エマ・ハミルトン(ka4835) エルフ|20才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/10/15 13:20:10 |
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▼質問卓 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/10/03 20:40:54 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/02 03:42:48 |