ゲスト
(ka0000)
Pクレープ~夜の闇に潜む
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2016/10/04 22:00
- 完成日
- 2016/10/18 02:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは同盟領、極彩色の街「ヴァリオス」のどこか。
その日の晩は、満月。
月影さやかで明かりも持たずに街を歩けるほどだった。
ハンチングを目深に被った浮浪児も、ほら、明かりを持っていない。
「散歩にちょうどいいのにな」
浮浪児、気まぐれで立ち止まると周りに誰もいないのを惜しむように呟く。
「ま、こんな深夜に出歩くのは訳ありくらいしかいやしないけどね」
口の端で自嘲して、また歩く。
通りにはやはり、誰もいない。
「ん?」
不意に、何かに気付いて立ち止まった。
顔を向けたのは、路地裏の影。月の明かりすら届かない場所。
そこから誰かが手招きしている。
浮浪児、そちらに急ぐ。
「今週の取り分は?」
影に入ると、そこに座っていた人影からそんなことを言われた。
「三日後のいつもの酒場の一番奥の席」
「分かりました」
浮浪児が答えると背を丸めた人影が立ち去ろうとする。
「待った。……最近、ゲームが動いてないからと上が怒っている。今週分も前の週から減ってるはずだ」
「辻斬りマーダーゲームの賭け事ですかね? 知りませんなぁ。もともと倒せとは言われていませんし。そちらが勝手に相手を放ってきてるだけのはずですよ? 相手を送り込んでくりゃ相手もしますがね」
どうやらこの街の闇でそんな賭け事が行われているらしい。
「そう伝えとく。それより、賭けが進まないので公に退治を依頼するらしいよ」
「公に?」
立ち去ろうとしていた人影がくるんと振り返った。手には杖。
「ほほぅ。これまでは遺体もあんたたちが処理して決して表沙汰にはしてなかったはず。わたくしたちを売るおつもりなら、こちらが先に動いて大事にしてもよろしゅうございますが?」
人影が前のめりになる。月明かりが男の姿を照らす。正体は背を丸めた青白い男だった。余談であるが、先日Pクレープに顔を出し、青竜紅刃流と試合をした仕込み杖の抜刀使いだ。
「……そのままの言葉で伝えるが、怒らないで聞いてくれよ? このままあんたたちを手元に置いていても戦わないんじゃ飽きたおもちゃも同然。飽きたおもちゃは捨てるだけだが、放置して捨てるか壊して捨てるかで最後の賭けをするそうだ」
「あぁ、それなら妥当でしょうなぁ。ほかの五人も納得でござんしょ?」
青白い男、にやり。
「とはいえ、公に雇われる人たちにはどう説明するんで?」
男、今度は変な心配をする。
「街の顔役に被害を知らせて、ハンターを雇ってもらうみたい」
「いいでしょう。事故とはいえハンターを斬ってハンターをやめた身。来るハンターには悪いが、けじめにはうってつけ」
「ほかの五人も似たようなことを言ってたらしい。それじゃ、事を進めるよう伝えるよ」
そんなこんなで、青白い男は再び月影の路地裏に溶けるように紛れ、浮浪児は再び月明かりの通りに戻った。
その後日、街角屋台「Pクレープ」の店頭で。
「よ」
「いらっしゃいませ」
屋台で働く南那初華(kz0135)の元に、禿頭のチンピラ兄ィちゃんがやって来た。
「今日は何にする?」
「あんた、占い小路でお好み焼きっての焼いたことがあるんだって?」
「ほへ? う、うん。そんなこともあったよ」
ずい、とカウンター越しに身を寄せひそひそ話をするチンピラに頷く初華。
「すまねぇ。この前、ミステリ・クラブであんたたちが拾ってきたネタが動きだしてな。……街の官憲に追われることのない安全地帯を用意する必要があってな」
あー、と得心した初華。
「占い小路、そういった取り締まる人とか嫌うものね」
「気難しい者だらけだからな。……しかし、あんたの名前を出したらあっさり了解してもらった。一体どうやって気に入られたんだ?」
「あはは……お好み焼きだね、きっと」
「とにかく、あんたらも情報を仕入れたろ? マーダーゲームの件だ。……ゲームをおしまいにするんで今いる殺し屋を倒すことになった。町の顔役にバラしたら一発でハンターを雇う話になった。あんたは、参加者の帰りを占い小路の休憩所で待てばいいだけだ。お好み焼きを焼いてな。絶対にそれ以外で参加するんじゃねぇぞ」
「う……わ、分かった」
そんなこんなで、
・仕込み杖の男(抜刀術)
・ダブルナイフ(投擲二刀流)
・カランビット(指通し付きナイフ)
・トンファーマント(トンファー使い)
・仕込み靴使い(足技)
・ナックルアッパー(拳闘)
の六人の暗器使いを一対一で倒してもらえる人、求ム。
なお、夜の街ではあからさまに武器を持って歩いていると官憲に止められます。
敵も暗器勝負でしか応じてくれません(戦闘無しの失敗フラグ)。
暗器の種類は敵に合わせる必要はありません。
その日の晩は、満月。
月影さやかで明かりも持たずに街を歩けるほどだった。
ハンチングを目深に被った浮浪児も、ほら、明かりを持っていない。
「散歩にちょうどいいのにな」
浮浪児、気まぐれで立ち止まると周りに誰もいないのを惜しむように呟く。
「ま、こんな深夜に出歩くのは訳ありくらいしかいやしないけどね」
口の端で自嘲して、また歩く。
通りにはやはり、誰もいない。
「ん?」
不意に、何かに気付いて立ち止まった。
顔を向けたのは、路地裏の影。月の明かりすら届かない場所。
そこから誰かが手招きしている。
浮浪児、そちらに急ぐ。
「今週の取り分は?」
影に入ると、そこに座っていた人影からそんなことを言われた。
「三日後のいつもの酒場の一番奥の席」
「分かりました」
浮浪児が答えると背を丸めた人影が立ち去ろうとする。
「待った。……最近、ゲームが動いてないからと上が怒っている。今週分も前の週から減ってるはずだ」
「辻斬りマーダーゲームの賭け事ですかね? 知りませんなぁ。もともと倒せとは言われていませんし。そちらが勝手に相手を放ってきてるだけのはずですよ? 相手を送り込んでくりゃ相手もしますがね」
どうやらこの街の闇でそんな賭け事が行われているらしい。
「そう伝えとく。それより、賭けが進まないので公に退治を依頼するらしいよ」
「公に?」
立ち去ろうとしていた人影がくるんと振り返った。手には杖。
「ほほぅ。これまでは遺体もあんたたちが処理して決して表沙汰にはしてなかったはず。わたくしたちを売るおつもりなら、こちらが先に動いて大事にしてもよろしゅうございますが?」
人影が前のめりになる。月明かりが男の姿を照らす。正体は背を丸めた青白い男だった。余談であるが、先日Pクレープに顔を出し、青竜紅刃流と試合をした仕込み杖の抜刀使いだ。
「……そのままの言葉で伝えるが、怒らないで聞いてくれよ? このままあんたたちを手元に置いていても戦わないんじゃ飽きたおもちゃも同然。飽きたおもちゃは捨てるだけだが、放置して捨てるか壊して捨てるかで最後の賭けをするそうだ」
「あぁ、それなら妥当でしょうなぁ。ほかの五人も納得でござんしょ?」
青白い男、にやり。
「とはいえ、公に雇われる人たちにはどう説明するんで?」
男、今度は変な心配をする。
「街の顔役に被害を知らせて、ハンターを雇ってもらうみたい」
「いいでしょう。事故とはいえハンターを斬ってハンターをやめた身。来るハンターには悪いが、けじめにはうってつけ」
「ほかの五人も似たようなことを言ってたらしい。それじゃ、事を進めるよう伝えるよ」
そんなこんなで、青白い男は再び月影の路地裏に溶けるように紛れ、浮浪児は再び月明かりの通りに戻った。
その後日、街角屋台「Pクレープ」の店頭で。
「よ」
「いらっしゃいませ」
屋台で働く南那初華(kz0135)の元に、禿頭のチンピラ兄ィちゃんがやって来た。
「今日は何にする?」
「あんた、占い小路でお好み焼きっての焼いたことがあるんだって?」
「ほへ? う、うん。そんなこともあったよ」
ずい、とカウンター越しに身を寄せひそひそ話をするチンピラに頷く初華。
「すまねぇ。この前、ミステリ・クラブであんたたちが拾ってきたネタが動きだしてな。……街の官憲に追われることのない安全地帯を用意する必要があってな」
あー、と得心した初華。
「占い小路、そういった取り締まる人とか嫌うものね」
「気難しい者だらけだからな。……しかし、あんたの名前を出したらあっさり了解してもらった。一体どうやって気に入られたんだ?」
「あはは……お好み焼きだね、きっと」
「とにかく、あんたらも情報を仕入れたろ? マーダーゲームの件だ。……ゲームをおしまいにするんで今いる殺し屋を倒すことになった。町の顔役にバラしたら一発でハンターを雇う話になった。あんたは、参加者の帰りを占い小路の休憩所で待てばいいだけだ。お好み焼きを焼いてな。絶対にそれ以外で参加するんじゃねぇぞ」
「う……わ、分かった」
そんなこんなで、
・仕込み杖の男(抜刀術)
・ダブルナイフ(投擲二刀流)
・カランビット(指通し付きナイフ)
・トンファーマント(トンファー使い)
・仕込み靴使い(足技)
・ナックルアッパー(拳闘)
の六人の暗器使いを一対一で倒してもらえる人、求ム。
なお、夜の街ではあからさまに武器を持って歩いていると官憲に止められます。
敵も暗器勝負でしか応じてくれません(戦闘無しの失敗フラグ)。
暗器の種類は敵に合わせる必要はありません。
リプレイ本文
●
極彩色の街「ヴァリオス」の街は夜に沈んでいた。
「とはいえ、丸い月のおかげで明るいですね」
石畳の通りを一人歩くGacrux(ka2726)が見上げた時だった。
――こつん。
足元に小石が転がった。横合いから投げられたのだ。
探すと、建物の狭い路地に黒い人影があった。影から月明かりの中に手を出し、ちょい、と人差し指を曲げる。
「お相手、ということでいいか?」
誘われるままに暗がりに入るとへの字に口を引き結んだ男から手短に聞かれた。
「……利用する価値が無くなればお払い箱、でしたか?」
「利用していると思っていたらされてるものさ」
ガクルックスが呟くと、そんな返答。
翻訳すると、人違いではありませんよね、ああ俺で間違いないさ、というやり取り。
証拠に、相手は持ち手に丸い穴の開いたナイフを構えた。カランビットだ。
対するガクルックス、ロングコートの中に右手を隠す。
「利用してたんですか?」
「さあな。……それより、戦う必要はあるのか?」
逆に聞いてきた。言葉の割に、ナイフの輪っかに指を入れてくるっと回すあたり、ヤル気はみなぎっている。
「……俺は戦わねばならない。手合わせを願いますよ…!」
ガクルックス、言葉を絞り出しつつ右手出す。
鎖鎌だ。
分銅を素早く投げると、相手の手に……。
いや、相手はわざと左上腕部を絡めてきたッ!
別の場所で、婆(ka6451)。
「まったく。似顔絵か最近流行りのキャメラの写真でも用意しておくもんじゃろが」
ぶちぶち文句を言いながら、暗い裏路地をえっちらおっちら歩く。
「バアさん、何こんな場所うろついてんだ? 危ねぇだろ」
突然横合いからそんな声が掛かった。
見ると、マントを羽織った背の低い若い男性が立っていた。困ったように眉を捻じ曲げている。
「人を探さにゃらんでの。なんぞ棒を振り回すもんじゃったなあ。とんふぁー、まんと? とかいうたかのう」
ぼやくように言うと、相手が少し腰を落とした。
「こんな服着たバアさん寄越して……何考えてんだ、奴ら」
「なんじゃ? これはわしの普段着じゃが、なんぞ文句でもあるんかの?」
勘弁してくれよ、な感じの相手。婆はたすき掛けをしてたもとを上げ、功夫シューズの足を前に踏み出した。戦籠手「虎咆」と闘脚絆「猩々」が姿を現した。
「あるよ。……見くびられたもんだ」
若者、マントを翻して踏み込んで来た。
――ばしいっ!
「元気がええの」
婆、構えた左腕に力を入れて腰を落としていた。
敵のマントの影から円弧を描いて伸びてきた武器を受けたのだ。
「そいでもって、工夫もしとる」
何と、受けられるとそこを支点にさらに円弧を描きトゲ付きの棒が伸びて来るようになっていた。これを食らったのだ。
敵、さらに動く。
が、その動きを止めて目を見開いた。
シャリファ・アスナン(ka2938)はため息をついていた。
「森の中と違って気配が分かりにくいね」
明るい月を見上げる。
どこで見ても月だけは変わらない。そう考えると心が落ち着く。
ほかに変わらないものは何だろう、と思っていたら風の鳴く音を聞いたような気がした。
「誰? 敵かな?」
「ちょっとびっくりした」
振り向いた路地の影から、目深に丸つば帽子を被った男が出てきた。
「けん制ではあったが俺のナイフを避けるとはね」
そう。
シャリファ、横合いから投げられたナイフの音に気付いて身をかわしていたのだ。
「森の中でもそうやってナイフを投げるからね」
「なるほど。森の戦士に敬意を」
敵、感心した様子。改めて左手に長めのナイフを、右手に短いナイフを構えた。
「ありがとう。……一対一だね。やろうか」
対するシャリファ、黒い細身のナイフを抜いた。
刹那、襲い掛かる。ナイフ「サグストロ」を影に紛らせ敵の首を狙う。
カツン、と左手のナイフで防がれた。
と、同時に右手のナイフで突いてくる。
「っ、と」
ドッジダッシュでの回避。
いや、間髪入れず接近し今度は脚狙い。敵、身を屈めてナイフを合わせるとカウンターで突いてくる。今度はかわせない。
「……ふうん」
劣勢のシャリファだが、敵がカウンター特化だということは把握した。
●
「……」
その頃、真田 天斗(ka0014)は通りに設けられた小広場のベンチに視線を投げていた。
「俺に用事があるのか?」
そこに座っていた男がのっそりと立ち上がりつつ聞いてくる。
「貴方が私に用事があるのなら」
執事服を着た天斗、白いバトラーグローブをした手を自らの胸に当てる。
「人違いじゃなけりゃ、文句はねぇな?」
オープンフィンガーのグローブを付けつつ、男が近付いてくる。
そこに待ったを掛けた。
「何だ?」
「私は真田天斗と申します。出来れば貴方の名前を教えていただけないでしょうか」
一礼し、「礼儀として」と促す天斗。相手は口を捻じ曲げた。
「名前なんざ捨てたよ。……今はナックルだけだ」
「ありがとうございます」
最後の付け加えに笑みを返す。きゅっとグローブ「スキアタキオン」を着けた。
「では、始めましょうか」
天斗、すたんすたんとフットワークをリズムを取る。ニヤリ、と敵。
「嬉しいね。第一ラウンド開始だ」
カァン、という音はないが、互いにリズムを取って接近する。ジャブで距離を測る天斗。スウェーでかわす敵。
きゅきゅっ、というステップの乾いた音が夜の街に響く。
「おい」
別の場所で、鞍馬 真(ka5819)は官憲に呼び止められていた。
「こんな夜中にどうした? それに手にしているのは……」
真、振り向く。
あっ、と官憲。
「これですか? 足の悪い親へのプレゼントなんだ」
手にした杖を軽やかに持ち直して言う真。
官憲、先ほど呼び止めた背中は間違いなく油断のない、ただ者ならない雰囲気と踏んでいたのだが、振り向いた時にはまったくそんな様子がなかったので面喰っていた。
「なら、いい。気を付けて帰れよ」
「ありがとう」
別れて歩く真。
「……すいませんね」
しばらく行くと、また背中から呼び止める声。
振り向くと、男が杖を持っていた。
「折角の決闘だ、楽しくやろうか」
真も杖を前にして言う。
もう、言葉はない。
敵は腰を落としてじり、と足を運び間合いを計る。杖は腰溜めの構え。
真も同じく杖を腰に。
注意深く敵の間合いを確認しつつ呼吸を整えている。
空に月が明るい。
その月に、雲がかかった。
影が二人にのしかかった刹那、しゅっと何かが滑る音が二つ……いや、一つに聞こえたッ!
そして、狐中・小鳥(ka5484)。
「ふぅ」
夜の街をちょっと不安そうに歩きつつ、ため息。
「誰かをお探し?」
そこに、路地の影から何者かが出てきた。
南瓜パンツに尖った靴を履いた、白化粧の道化師である。
「きみ、辻斬り屋でいいのかな?」
「返事は無粋ね」
道化師の女性、高く膝を上げて小鳥の方に大きくステップ。着地と同時に刃を仕込んだ爪先が襲ってくる。小鳥のチャイナ服の脇が破れた。
「ん、同じ足技使う人だしどれくらい通用するかやってみるんだよっ」
「そう? 楽しそうね」
小鳥、相手のハイキックを地面に手を付きかわす。同時に軸足を狙ってローキック。
これを爪先だけのジャンプでかわす敵。その動きで足を蹴り下げて来る!
「懐に入ったよ!」
対する小鳥、反転した勢いのまま円軌道を上に。下から上への回し蹴りだ。
――がしっ!
脚と脚の交錯。
ここからさらに身をひねる小鳥。派手に跳ね上がるチャイナ服の裾。反転して後ろ回し蹴……。
ああっ!
敵も同じ動きだ。
またも相討ち……いや、小鳥が劣勢になっている。
●
「ほら、どうしたの?」
間合いが開いた。押し込んだ道化師、勝ち誇ったように次の蹴りを繰り出してくる。
「今回は蹴りだけってわけじゃないんだよ。こっちでもいくよっ」
ぱしん、といい音がしたがこれは小鳥の柳の構え。攻撃に逆らわず手で受け流した。
そのまま踏み込み鳩尾を……おっと、敵は身をねじり小鳥の正拳突きの狙いをずらした。
そしてバックステップを追い渾身のアッパー。
が、敵の膝蹴りで潰された。こっぴどく路地に転がる小鳥。
敵、これを逃さない。間合いを保つようにジャンプで追う。
「勝負!」
「柳の構え!」
敵の渾身の蹴りを脇腹で受けた小鳥、痛みをこらえつつ……。
「懐に入ったよ!」
敵の、バランスを取る腕を取った!
そのまま反転し敵を背負って、投げ。
それだけではない!
「えいやっ! 転がした後に……踵落としなんだよー!」
転がった敵の左肩口に炸裂。
小鳥、悶える敵から割符だけをいただいた。
真は、目を見開いていた。
(相討ち……か)
双方が居合抜きを放つ中、途中でやめて身をひねったではないか!
回転する動きで敵との間合いを一瞬、ずらしたが無傷ではいられない。
しぶく血には構わず、次の回転で敵との間合いを詰めた。
そのまま、柄の尻でがつり。
「逃げましたね?」
横っ面を殴られた敵は不満たらたらだ。ダメージは真のほうが大きいのに。
「刀をぶつけあって音で騒ぎになっても、ね」
「言いますね。相討ちでも得物を使い慣れているかどうかの力量差で鈍い音しかしませんよ」
再び切り掛かって来る敵。耐える真。
「逃げてもいいですよ?」
「……できない。本当に鈍い音だけか?」
挑発され、確認する。
「その程度の技なら」
「ならば」
真、抜刀。
相手も応じた。
――ガッ……。
「いまの、は?」
「心の刃。……最近の技だ」
「黒服さん、覚えておきますよ」
刀を弾かれ斬られた敵、割符を落としながら崩れた。
そして、天斗。
「む!」
敵の速いアッパーを、ドッジダッシュで何とか直撃をかわした。
「やるな?」
「それだけの腕を持ちながら闇の世界に落ちてしまうとは」
必殺ブローをわずかに食らったが、そんなそぶりも見せず残念そうに頭を振る。
「どうでしょう。此処で敗北したのならばまたハンターとして活躍してはくれないでしょうか」
「ハンターとして精神的に敗北したのだ、敗者には敗者のプライドがある」
敵、物凄い形相で詰めてきた。
「光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北する事など断じて無いと言う事を教えて差し上げましょう」
天斗も応じるが、これは敵の気迫が勝る。
必殺のアッパー、来る!
「光はここにある」
実は天斗、直前に素早く位置をずらしている。敵も構えを修正していたため、わずかなスキができていた。
そこへ、アサルトディスタンスッ!
――げしっ!
アッパーをわずかに食らいつつもすれ違いざまに上から渾身の力で叩きつぶした。カウンターで入り、敵はノックダウン。
「……私に勝ちたかったら這い上がって下さい。何時でもお相手致しましょう」
天斗、転がった割符を広い月光浴びつつ肩越しに言い立ち去った。
●
シャリファは苦戦していた。
「くっ」
敵の顔を狙ったところ、投げナイフが首の下目掛けて飛んで来た。腕を出して防いだものの、その隙にペースを握られた。フェイント気味に蹴りを出し、これが命中して一息つく。
いや、ここで勝負を掛けた。
「しゅっ!」
シャリファ、ナイフを投げた。わざわざ口で投擲を知らせた!
「ふん」
もちろんかわす敵。ここに突っ込みワンツー。
ただし、これは牽制。
改めて敵が繰り出すナイフ。斬られたがものともせずに手を取った。そのまま跳躍。細身の身体をひねり自らのひざ裏を相手の首にかけて引き倒すと……。
「離さないよ」
三角締めに極めた!
「くそっ」
敵、しばらくするとタップ代わりに割符を落とした。
「ふぇっふぇっ」
婆の方は形勢逆転していた。
戦籠手「虎咆」で相手の身体を叩きつつ敵の攻撃をかわしているのだ。
「うおっ?」
触れられた所に走る衝撃に驚く敵。
「これな、凄いじゃろ?」
婆は得意そう。
「衝撃波が飛んでけばまだ凄いんじゃが、軽く叩いて衝撃が放たれるのもいやなもんじゃろ」
「だったらそれごと潰す!」
「おぅ?!」
敵の気合の入った攻撃に仰け反る婆。が、次の攻撃は手の平で合わせつつ衝撃。
「埒が明くかあっ!」
「こういうのもあるでの」
しびれを切らして突っ込んできたところを投げ。さらに踏みつけ。
「この婆ぁ」
「ほっほ、どちらが先に倒れるか、楽しみじゃのう」
体力の削り合いは、続く。
そして、ガクルックス。
「しっ!」
鎖が腕に絡んだと同時に自ら踏み込み斬りつけて来る敵。マントなど斬られつつもかわすと、脇腹蹴りで応じる。
これがきれいに入り、再び間合いが開く。鎖はほどけている。
敵、輪っかを中心に武器を回して持ち手を長くし構えた。
「ほう…! 面白い武術ですねえ!」
感心した途端に、来た。
マントの下からナイフを投げるガクルックス。敵、身をひねってかわすと斬り込んで来た。今度はかわしても大きく振るい抉られた。
「出会う場所が違えば、ご指南を願いたいところですよ…!」
語尾に力が籠ったのは、先ほどとは違い敵を追ってレガースで敵を力いっぱい横なぎに蹴り倒したから。
「なんか、嫌な思い出でもあるのか?」
敵、振り返って聞いてきた。
「さあ?」
ガクルックス、問われてムキになって突っ込んだ!
再び鎖鎌がぎらりと光る!
●
「あの、ガクさん? 大丈夫?」
占い小路の休憩所で、南那初華(kz0135)が心配そうにしていた。
「敵は見逃しましたよ」
物憂げに煙草咥え、まるで深い闇を彷徨うかのようにしていたガクルックスが答える。が、どこか虚ろ。横には割符。
「やれやれ、楽しかったわい」
そこに婆が戻って来た。ほれ、と割符を渡しお好み焼きを待つ。
「初華さん、終わったんだよ♪」
さらに小鳥もやって来た。
「ど、どうだった、小鳥さん?」
「結構緊張したんだよ」
破れたチャイナ服に照れつつ、割符を置いてにこぱ。
「ただいま」
今度は真。
こちらも結構やられている。
「ちょ、真さん、大丈夫?」
「戦ったら腹が減ったよ」
慌てて駆け寄ろうとした初華を笑顔とともにその一言で止めた。お好み焼きを焼いてほしい、ということだ。
さらに、天斗も帰還。白手袋の執事スタイルのまま、割符を出す。
「天斗さん……」
「御心配をお掛けしました。それではお好み焼きを頂きますね」
心配そうな初華に、いつもと同じ姿を見せる。決して息も乱さない。
が、これに初華は不満を爆発させた。
「んもう、みんなして何なのよぅ」
一人蚊帳の外、といった感じがしたのだろう。
そこに、一言。
「美味しいね」
すでに戻っていたシャリファが、お好み焼きを食べて笑顔。
それに注目していた五人は、改めて初華を振り返る。彼らはまだお好み焼きがまだなのだ。
「わ、分かったわよぅ」
焼く作業に戻る初華。
役に立っているのだ、とちゃんと思い直したらしい。吹っ切れて充実した顔をしている。
極彩色の街「ヴァリオス」の街は夜に沈んでいた。
「とはいえ、丸い月のおかげで明るいですね」
石畳の通りを一人歩くGacrux(ka2726)が見上げた時だった。
――こつん。
足元に小石が転がった。横合いから投げられたのだ。
探すと、建物の狭い路地に黒い人影があった。影から月明かりの中に手を出し、ちょい、と人差し指を曲げる。
「お相手、ということでいいか?」
誘われるままに暗がりに入るとへの字に口を引き結んだ男から手短に聞かれた。
「……利用する価値が無くなればお払い箱、でしたか?」
「利用していると思っていたらされてるものさ」
ガクルックスが呟くと、そんな返答。
翻訳すると、人違いではありませんよね、ああ俺で間違いないさ、というやり取り。
証拠に、相手は持ち手に丸い穴の開いたナイフを構えた。カランビットだ。
対するガクルックス、ロングコートの中に右手を隠す。
「利用してたんですか?」
「さあな。……それより、戦う必要はあるのか?」
逆に聞いてきた。言葉の割に、ナイフの輪っかに指を入れてくるっと回すあたり、ヤル気はみなぎっている。
「……俺は戦わねばならない。手合わせを願いますよ…!」
ガクルックス、言葉を絞り出しつつ右手出す。
鎖鎌だ。
分銅を素早く投げると、相手の手に……。
いや、相手はわざと左上腕部を絡めてきたッ!
別の場所で、婆(ka6451)。
「まったく。似顔絵か最近流行りのキャメラの写真でも用意しておくもんじゃろが」
ぶちぶち文句を言いながら、暗い裏路地をえっちらおっちら歩く。
「バアさん、何こんな場所うろついてんだ? 危ねぇだろ」
突然横合いからそんな声が掛かった。
見ると、マントを羽織った背の低い若い男性が立っていた。困ったように眉を捻じ曲げている。
「人を探さにゃらんでの。なんぞ棒を振り回すもんじゃったなあ。とんふぁー、まんと? とかいうたかのう」
ぼやくように言うと、相手が少し腰を落とした。
「こんな服着たバアさん寄越して……何考えてんだ、奴ら」
「なんじゃ? これはわしの普段着じゃが、なんぞ文句でもあるんかの?」
勘弁してくれよ、な感じの相手。婆はたすき掛けをしてたもとを上げ、功夫シューズの足を前に踏み出した。戦籠手「虎咆」と闘脚絆「猩々」が姿を現した。
「あるよ。……見くびられたもんだ」
若者、マントを翻して踏み込んで来た。
――ばしいっ!
「元気がええの」
婆、構えた左腕に力を入れて腰を落としていた。
敵のマントの影から円弧を描いて伸びてきた武器を受けたのだ。
「そいでもって、工夫もしとる」
何と、受けられるとそこを支点にさらに円弧を描きトゲ付きの棒が伸びて来るようになっていた。これを食らったのだ。
敵、さらに動く。
が、その動きを止めて目を見開いた。
シャリファ・アスナン(ka2938)はため息をついていた。
「森の中と違って気配が分かりにくいね」
明るい月を見上げる。
どこで見ても月だけは変わらない。そう考えると心が落ち着く。
ほかに変わらないものは何だろう、と思っていたら風の鳴く音を聞いたような気がした。
「誰? 敵かな?」
「ちょっとびっくりした」
振り向いた路地の影から、目深に丸つば帽子を被った男が出てきた。
「けん制ではあったが俺のナイフを避けるとはね」
そう。
シャリファ、横合いから投げられたナイフの音に気付いて身をかわしていたのだ。
「森の中でもそうやってナイフを投げるからね」
「なるほど。森の戦士に敬意を」
敵、感心した様子。改めて左手に長めのナイフを、右手に短いナイフを構えた。
「ありがとう。……一対一だね。やろうか」
対するシャリファ、黒い細身のナイフを抜いた。
刹那、襲い掛かる。ナイフ「サグストロ」を影に紛らせ敵の首を狙う。
カツン、と左手のナイフで防がれた。
と、同時に右手のナイフで突いてくる。
「っ、と」
ドッジダッシュでの回避。
いや、間髪入れず接近し今度は脚狙い。敵、身を屈めてナイフを合わせるとカウンターで突いてくる。今度はかわせない。
「……ふうん」
劣勢のシャリファだが、敵がカウンター特化だということは把握した。
●
「……」
その頃、真田 天斗(ka0014)は通りに設けられた小広場のベンチに視線を投げていた。
「俺に用事があるのか?」
そこに座っていた男がのっそりと立ち上がりつつ聞いてくる。
「貴方が私に用事があるのなら」
執事服を着た天斗、白いバトラーグローブをした手を自らの胸に当てる。
「人違いじゃなけりゃ、文句はねぇな?」
オープンフィンガーのグローブを付けつつ、男が近付いてくる。
そこに待ったを掛けた。
「何だ?」
「私は真田天斗と申します。出来れば貴方の名前を教えていただけないでしょうか」
一礼し、「礼儀として」と促す天斗。相手は口を捻じ曲げた。
「名前なんざ捨てたよ。……今はナックルだけだ」
「ありがとうございます」
最後の付け加えに笑みを返す。きゅっとグローブ「スキアタキオン」を着けた。
「では、始めましょうか」
天斗、すたんすたんとフットワークをリズムを取る。ニヤリ、と敵。
「嬉しいね。第一ラウンド開始だ」
カァン、という音はないが、互いにリズムを取って接近する。ジャブで距離を測る天斗。スウェーでかわす敵。
きゅきゅっ、というステップの乾いた音が夜の街に響く。
「おい」
別の場所で、鞍馬 真(ka5819)は官憲に呼び止められていた。
「こんな夜中にどうした? それに手にしているのは……」
真、振り向く。
あっ、と官憲。
「これですか? 足の悪い親へのプレゼントなんだ」
手にした杖を軽やかに持ち直して言う真。
官憲、先ほど呼び止めた背中は間違いなく油断のない、ただ者ならない雰囲気と踏んでいたのだが、振り向いた時にはまったくそんな様子がなかったので面喰っていた。
「なら、いい。気を付けて帰れよ」
「ありがとう」
別れて歩く真。
「……すいませんね」
しばらく行くと、また背中から呼び止める声。
振り向くと、男が杖を持っていた。
「折角の決闘だ、楽しくやろうか」
真も杖を前にして言う。
もう、言葉はない。
敵は腰を落としてじり、と足を運び間合いを計る。杖は腰溜めの構え。
真も同じく杖を腰に。
注意深く敵の間合いを確認しつつ呼吸を整えている。
空に月が明るい。
その月に、雲がかかった。
影が二人にのしかかった刹那、しゅっと何かが滑る音が二つ……いや、一つに聞こえたッ!
そして、狐中・小鳥(ka5484)。
「ふぅ」
夜の街をちょっと不安そうに歩きつつ、ため息。
「誰かをお探し?」
そこに、路地の影から何者かが出てきた。
南瓜パンツに尖った靴を履いた、白化粧の道化師である。
「きみ、辻斬り屋でいいのかな?」
「返事は無粋ね」
道化師の女性、高く膝を上げて小鳥の方に大きくステップ。着地と同時に刃を仕込んだ爪先が襲ってくる。小鳥のチャイナ服の脇が破れた。
「ん、同じ足技使う人だしどれくらい通用するかやってみるんだよっ」
「そう? 楽しそうね」
小鳥、相手のハイキックを地面に手を付きかわす。同時に軸足を狙ってローキック。
これを爪先だけのジャンプでかわす敵。その動きで足を蹴り下げて来る!
「懐に入ったよ!」
対する小鳥、反転した勢いのまま円軌道を上に。下から上への回し蹴りだ。
――がしっ!
脚と脚の交錯。
ここからさらに身をひねる小鳥。派手に跳ね上がるチャイナ服の裾。反転して後ろ回し蹴……。
ああっ!
敵も同じ動きだ。
またも相討ち……いや、小鳥が劣勢になっている。
●
「ほら、どうしたの?」
間合いが開いた。押し込んだ道化師、勝ち誇ったように次の蹴りを繰り出してくる。
「今回は蹴りだけってわけじゃないんだよ。こっちでもいくよっ」
ぱしん、といい音がしたがこれは小鳥の柳の構え。攻撃に逆らわず手で受け流した。
そのまま踏み込み鳩尾を……おっと、敵は身をねじり小鳥の正拳突きの狙いをずらした。
そしてバックステップを追い渾身のアッパー。
が、敵の膝蹴りで潰された。こっぴどく路地に転がる小鳥。
敵、これを逃さない。間合いを保つようにジャンプで追う。
「勝負!」
「柳の構え!」
敵の渾身の蹴りを脇腹で受けた小鳥、痛みをこらえつつ……。
「懐に入ったよ!」
敵の、バランスを取る腕を取った!
そのまま反転し敵を背負って、投げ。
それだけではない!
「えいやっ! 転がした後に……踵落としなんだよー!」
転がった敵の左肩口に炸裂。
小鳥、悶える敵から割符だけをいただいた。
真は、目を見開いていた。
(相討ち……か)
双方が居合抜きを放つ中、途中でやめて身をひねったではないか!
回転する動きで敵との間合いを一瞬、ずらしたが無傷ではいられない。
しぶく血には構わず、次の回転で敵との間合いを詰めた。
そのまま、柄の尻でがつり。
「逃げましたね?」
横っ面を殴られた敵は不満たらたらだ。ダメージは真のほうが大きいのに。
「刀をぶつけあって音で騒ぎになっても、ね」
「言いますね。相討ちでも得物を使い慣れているかどうかの力量差で鈍い音しかしませんよ」
再び切り掛かって来る敵。耐える真。
「逃げてもいいですよ?」
「……できない。本当に鈍い音だけか?」
挑発され、確認する。
「その程度の技なら」
「ならば」
真、抜刀。
相手も応じた。
――ガッ……。
「いまの、は?」
「心の刃。……最近の技だ」
「黒服さん、覚えておきますよ」
刀を弾かれ斬られた敵、割符を落としながら崩れた。
そして、天斗。
「む!」
敵の速いアッパーを、ドッジダッシュで何とか直撃をかわした。
「やるな?」
「それだけの腕を持ちながら闇の世界に落ちてしまうとは」
必殺ブローをわずかに食らったが、そんなそぶりも見せず残念そうに頭を振る。
「どうでしょう。此処で敗北したのならばまたハンターとして活躍してはくれないでしょうか」
「ハンターとして精神的に敗北したのだ、敗者には敗者のプライドがある」
敵、物凄い形相で詰めてきた。
「光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北する事など断じて無いと言う事を教えて差し上げましょう」
天斗も応じるが、これは敵の気迫が勝る。
必殺のアッパー、来る!
「光はここにある」
実は天斗、直前に素早く位置をずらしている。敵も構えを修正していたため、わずかなスキができていた。
そこへ、アサルトディスタンスッ!
――げしっ!
アッパーをわずかに食らいつつもすれ違いざまに上から渾身の力で叩きつぶした。カウンターで入り、敵はノックダウン。
「……私に勝ちたかったら這い上がって下さい。何時でもお相手致しましょう」
天斗、転がった割符を広い月光浴びつつ肩越しに言い立ち去った。
●
シャリファは苦戦していた。
「くっ」
敵の顔を狙ったところ、投げナイフが首の下目掛けて飛んで来た。腕を出して防いだものの、その隙にペースを握られた。フェイント気味に蹴りを出し、これが命中して一息つく。
いや、ここで勝負を掛けた。
「しゅっ!」
シャリファ、ナイフを投げた。わざわざ口で投擲を知らせた!
「ふん」
もちろんかわす敵。ここに突っ込みワンツー。
ただし、これは牽制。
改めて敵が繰り出すナイフ。斬られたがものともせずに手を取った。そのまま跳躍。細身の身体をひねり自らのひざ裏を相手の首にかけて引き倒すと……。
「離さないよ」
三角締めに極めた!
「くそっ」
敵、しばらくするとタップ代わりに割符を落とした。
「ふぇっふぇっ」
婆の方は形勢逆転していた。
戦籠手「虎咆」で相手の身体を叩きつつ敵の攻撃をかわしているのだ。
「うおっ?」
触れられた所に走る衝撃に驚く敵。
「これな、凄いじゃろ?」
婆は得意そう。
「衝撃波が飛んでけばまだ凄いんじゃが、軽く叩いて衝撃が放たれるのもいやなもんじゃろ」
「だったらそれごと潰す!」
「おぅ?!」
敵の気合の入った攻撃に仰け反る婆。が、次の攻撃は手の平で合わせつつ衝撃。
「埒が明くかあっ!」
「こういうのもあるでの」
しびれを切らして突っ込んできたところを投げ。さらに踏みつけ。
「この婆ぁ」
「ほっほ、どちらが先に倒れるか、楽しみじゃのう」
体力の削り合いは、続く。
そして、ガクルックス。
「しっ!」
鎖が腕に絡んだと同時に自ら踏み込み斬りつけて来る敵。マントなど斬られつつもかわすと、脇腹蹴りで応じる。
これがきれいに入り、再び間合いが開く。鎖はほどけている。
敵、輪っかを中心に武器を回して持ち手を長くし構えた。
「ほう…! 面白い武術ですねえ!」
感心した途端に、来た。
マントの下からナイフを投げるガクルックス。敵、身をひねってかわすと斬り込んで来た。今度はかわしても大きく振るい抉られた。
「出会う場所が違えば、ご指南を願いたいところですよ…!」
語尾に力が籠ったのは、先ほどとは違い敵を追ってレガースで敵を力いっぱい横なぎに蹴り倒したから。
「なんか、嫌な思い出でもあるのか?」
敵、振り返って聞いてきた。
「さあ?」
ガクルックス、問われてムキになって突っ込んだ!
再び鎖鎌がぎらりと光る!
●
「あの、ガクさん? 大丈夫?」
占い小路の休憩所で、南那初華(kz0135)が心配そうにしていた。
「敵は見逃しましたよ」
物憂げに煙草咥え、まるで深い闇を彷徨うかのようにしていたガクルックスが答える。が、どこか虚ろ。横には割符。
「やれやれ、楽しかったわい」
そこに婆が戻って来た。ほれ、と割符を渡しお好み焼きを待つ。
「初華さん、終わったんだよ♪」
さらに小鳥もやって来た。
「ど、どうだった、小鳥さん?」
「結構緊張したんだよ」
破れたチャイナ服に照れつつ、割符を置いてにこぱ。
「ただいま」
今度は真。
こちらも結構やられている。
「ちょ、真さん、大丈夫?」
「戦ったら腹が減ったよ」
慌てて駆け寄ろうとした初華を笑顔とともにその一言で止めた。お好み焼きを焼いてほしい、ということだ。
さらに、天斗も帰還。白手袋の執事スタイルのまま、割符を出す。
「天斗さん……」
「御心配をお掛けしました。それではお好み焼きを頂きますね」
心配そうな初華に、いつもと同じ姿を見せる。決して息も乱さない。
が、これに初華は不満を爆発させた。
「んもう、みんなして何なのよぅ」
一人蚊帳の外、といった感じがしたのだろう。
そこに、一言。
「美味しいね」
すでに戻っていたシャリファが、お好み焼きを食べて笑顔。
それに注目していた五人は、改めて初華を振り返る。彼らはまだお好み焼きがまだなのだ。
「わ、分かったわよぅ」
焼く作業に戻る初華。
役に立っているのだ、とちゃんと思い直したらしい。吹っ切れて充実した顔をしている。
依頼結果
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MVP一覧
- Pクレープ店員
真田 天斗(ka0014)
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/10/02 22:19:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/03 21:30:42 |