ゲスト
(ka0000)
滾る萌本! 『ハンターマニア』創刊!
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/09 09:00
- 完成日
- 2016/10/23 07:37
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
『萌え』という言葉がある。
それは遠き蒼の世界から入って来た言葉であり、対象への好意、あるいは恋慕、傾倒、執着、興奮……ありとあらゆる感情を表す言葉である。
それは対象物に対する『狭くて深い感情』であり、『好き』などという簡単な言葉では言い表せない――そんな時、自然と口に出る言葉。
そしてその『萌え』はありとあらゆるものを対象とする。
――そう。ハンターとて例外ではない。
人が多く集まるハンターズソサエティ。
その日も受付には、陰鬱な様子のハンターがやってきていた。
「最近、誰かに見られているような気がするんです」
「あらあら。きっと疲れてるんですよー」
定例文であしらうオフィス職員、イソラ。
ここ最近、似たようなハンター達の悩みを聞かされ続けている。
『最近、誰かに見られている気がするんですよね……』
『ちょっと席を外したら、食べかけのお菓子がなくなってて……』
『オフィスに早く来すぎたので居眠りしていたら、気づいたら上着が脱がされてたんですよ……』
連日持ち寄られる悩み。
自意識過剰というには、ちょっと数が多い気がする。
厳しい戦いの中に身を置くハンター達は、常に強いストレスに晒されている。
こんな妄想にとり憑かれるほどに疲れているのだろうか……。
……なんてイソラが考えていた時だった。
「すみません。依頼を出したいんですけど……」
悲壮な顔をして現れたのはイェルズ・オイマト(kz0143)だった。
彼は一介のハンターではあるが、辺境部族で有数の一族であるオイマト族の族長補佐であり、忙しい族長に変わり辺境に起こる事件の依頼を持って来てくれる。
いわば大切な常連だ。
「いらっしゃいませ、イェルズさん。本日は新しいご依頼ですかー?」
「そうなんですけど……いつもと違って内密に、なるべく早く何とかしてほしいんです」
イェルズの必死な様子に小首を傾げるイソラ。
彼の後ろには疲れ切った顔の……ここ連日、悩み事相談にきていたハンター達が立っていた。
げっそりとやつれた彼らは、イェルズの衣服や腕にすがりついている。
「イェルズさん、早く……! 早くそれ提出して!」
「もうこんな生活やだあああ!! 夜も眠れないいい!」
「なんで……! 何で俺なんだよっ!!」
……何があったんだろう。
イソラは若干引いたが、これも仕事だ。ぐっと踏ん張ってイェルズを見つめる。
「何があったのか教えて下さいますー?」
「最近、オフィスにこんなものが出回ってるみたいなんですよ」
数枚の紙を受付に見せるイェルズ。
その紙には『最高傑作「ハンターマニア」創刊間近!』という見出しとともに『身近な英雄を探そう!』という煽り文句がつけられ、膨大な数のハンターの名前が記載されていた。
何十人どころではない。何百人だ。
「……ナニコレ」
「いいからこれを見てください」
イェルズが差し出した紙には、彼の上司であるバタルトゥ・オイマト(kz0023)の姿絵が書かれている。
色付きで、本にしては豪華だ。
普通の立ち姿だけではない。後ろ姿、悩み込む姿、無精ひげの寝起き姿、艶かしい水浴びの水が滴る姿など、実写さながらの細かい描き方は、作者が優れた絵かきであることを証明しており――そして時折、魔導カメラで撮られたと思わしき実写も含まれていた。
驚くべきは姿絵や写真と一緒に、個人情報が細部に至るまで記載されていたことだ。
名前、ふりがな、愛称、身長、体重、職業、肩書き、経歴、装備、口癖、よく出かけるお店と目撃スポット、お揃いになれる小物、食事の好み、ティータイムに好む茶菓子は何か。
その項目は、軽く百を超えていた。
「……バタルトゥさん、お見合いでもされるんですか?」
「違いますよ! ここ読んでみてください!」
そこには『ハンターマニア編集部みっちーのコーナー』と記されている。
【ここがツボ!】
皆に、二十代担当のみっちーが紹介するハンターは『バタルトゥ・オイマト』さん! あのミステリアスな空気に、通り過ぎた時の流れるような鋭い目……ああん私も射抜かれたい!
ただのハンターと違って、オイマト族の族長であり、辺境部族の大首長という複数の肩書を持っているのも高評価。帝国との軋轢も乗り越えた今をときめく出世頭よ! しかも未婚だから誰にでも恋人や奥さんになれる機会があるかも! 恋せよ乙女! 当たって砕ける価値がある!
【彼の好みってな~に?】
オイマト族の逗留地よりは開拓地ホープやノアーラ・クンタウ周辺にいることが多い彼。他の開拓者と違って、よく話してる女の子情報もないから、好みの髪の色や瞳の色、肌の色なんかは編集部でも手に入らないの。
ああ、でも諦めちゃダメ!
どうやら彼は■■な女の子に優しいみたい! 条件が揃うと頭を撫でてもらえるかもよ! きゃー! つまり■■■の■■とか、■じ■■の■■■になって、彼に■■を■えてください、って■■めば、もしかしたら■■関係から始まる■■■■……なんてことも! いやー萌えちゃう! みっちーも試してみる!
――部分的に黒く塗りつぶされている。
何て書いてあったんだろうか。
「ハンターさんの個人情報が出回って、一冊に編集されているようなんです。うちの族長が標的にされてますし……何とかしないと」
ここ最近、一部のハンター達の中で知る人ぞ知る組織、『ハンターマニア編集部』というものがあるらしい。実態は謎だがハンターズソサエティに登録するめぼしいハンターたちの情報を根こそぎ集め、一冊に纏めているようなのだ。
それは基本情報から恥ずかしい秘密まで、余すところなく書かれている。
編集部は個人情報を集めるだけに飽き足らず、ハンターたちの不意をつき、食べかけの食品から衣料品なども盗み出し、冊子「ハンターマニア」創刊記念の景品にしようとしている。
ハンターには隠れファンも多い。あの人を目指してハンターになった、なんて話もよく聞く。
だが、さすがにこれは行き過ぎだ!!
こんなものが世に出回った日には……なんとしてでも創刊を止めなければ!
「居場所は俺が独自に捜査して見つけました。リゼリオの一角の小さい小屋みたいです。毎晩明かりがついていました。徹夜で作業しているようです。6人いて、全員ハンターみたいでした」
「そうですか……。イェルズさん暇だったんですね……」
「違いますよ! 俺は族長の為にですn」
「分かりました。じゃあ一応募集しますね」
イソラは引き気味に頷くと、被害者たちに不憫そうな眼差しを向け、編集部討伐の依頼を張り出したのだった。
一方、編集部は大変な賑わいだった。
「さあ皆、あともう少しだよ! ハンターファンの皆に夢を届けるんだ! 気合いれな!!」
「はい! ミヅハさま! おまかせください!」
それは遠き蒼の世界から入って来た言葉であり、対象への好意、あるいは恋慕、傾倒、執着、興奮……ありとあらゆる感情を表す言葉である。
それは対象物に対する『狭くて深い感情』であり、『好き』などという簡単な言葉では言い表せない――そんな時、自然と口に出る言葉。
そしてその『萌え』はありとあらゆるものを対象とする。
――そう。ハンターとて例外ではない。
人が多く集まるハンターズソサエティ。
その日も受付には、陰鬱な様子のハンターがやってきていた。
「最近、誰かに見られているような気がするんです」
「あらあら。きっと疲れてるんですよー」
定例文であしらうオフィス職員、イソラ。
ここ最近、似たようなハンター達の悩みを聞かされ続けている。
『最近、誰かに見られている気がするんですよね……』
『ちょっと席を外したら、食べかけのお菓子がなくなってて……』
『オフィスに早く来すぎたので居眠りしていたら、気づいたら上着が脱がされてたんですよ……』
連日持ち寄られる悩み。
自意識過剰というには、ちょっと数が多い気がする。
厳しい戦いの中に身を置くハンター達は、常に強いストレスに晒されている。
こんな妄想にとり憑かれるほどに疲れているのだろうか……。
……なんてイソラが考えていた時だった。
「すみません。依頼を出したいんですけど……」
悲壮な顔をして現れたのはイェルズ・オイマト(kz0143)だった。
彼は一介のハンターではあるが、辺境部族で有数の一族であるオイマト族の族長補佐であり、忙しい族長に変わり辺境に起こる事件の依頼を持って来てくれる。
いわば大切な常連だ。
「いらっしゃいませ、イェルズさん。本日は新しいご依頼ですかー?」
「そうなんですけど……いつもと違って内密に、なるべく早く何とかしてほしいんです」
イェルズの必死な様子に小首を傾げるイソラ。
彼の後ろには疲れ切った顔の……ここ連日、悩み事相談にきていたハンター達が立っていた。
げっそりとやつれた彼らは、イェルズの衣服や腕にすがりついている。
「イェルズさん、早く……! 早くそれ提出して!」
「もうこんな生活やだあああ!! 夜も眠れないいい!」
「なんで……! 何で俺なんだよっ!!」
……何があったんだろう。
イソラは若干引いたが、これも仕事だ。ぐっと踏ん張ってイェルズを見つめる。
「何があったのか教えて下さいますー?」
「最近、オフィスにこんなものが出回ってるみたいなんですよ」
数枚の紙を受付に見せるイェルズ。
その紙には『最高傑作「ハンターマニア」創刊間近!』という見出しとともに『身近な英雄を探そう!』という煽り文句がつけられ、膨大な数のハンターの名前が記載されていた。
何十人どころではない。何百人だ。
「……ナニコレ」
「いいからこれを見てください」
イェルズが差し出した紙には、彼の上司であるバタルトゥ・オイマト(kz0023)の姿絵が書かれている。
色付きで、本にしては豪華だ。
普通の立ち姿だけではない。後ろ姿、悩み込む姿、無精ひげの寝起き姿、艶かしい水浴びの水が滴る姿など、実写さながらの細かい描き方は、作者が優れた絵かきであることを証明しており――そして時折、魔導カメラで撮られたと思わしき実写も含まれていた。
驚くべきは姿絵や写真と一緒に、個人情報が細部に至るまで記載されていたことだ。
名前、ふりがな、愛称、身長、体重、職業、肩書き、経歴、装備、口癖、よく出かけるお店と目撃スポット、お揃いになれる小物、食事の好み、ティータイムに好む茶菓子は何か。
その項目は、軽く百を超えていた。
「……バタルトゥさん、お見合いでもされるんですか?」
「違いますよ! ここ読んでみてください!」
そこには『ハンターマニア編集部みっちーのコーナー』と記されている。
【ここがツボ!】
皆に、二十代担当のみっちーが紹介するハンターは『バタルトゥ・オイマト』さん! あのミステリアスな空気に、通り過ぎた時の流れるような鋭い目……ああん私も射抜かれたい!
ただのハンターと違って、オイマト族の族長であり、辺境部族の大首長という複数の肩書を持っているのも高評価。帝国との軋轢も乗り越えた今をときめく出世頭よ! しかも未婚だから誰にでも恋人や奥さんになれる機会があるかも! 恋せよ乙女! 当たって砕ける価値がある!
【彼の好みってな~に?】
オイマト族の逗留地よりは開拓地ホープやノアーラ・クンタウ周辺にいることが多い彼。他の開拓者と違って、よく話してる女の子情報もないから、好みの髪の色や瞳の色、肌の色なんかは編集部でも手に入らないの。
ああ、でも諦めちゃダメ!
どうやら彼は■■な女の子に優しいみたい! 条件が揃うと頭を撫でてもらえるかもよ! きゃー! つまり■■■の■■とか、■じ■■の■■■になって、彼に■■を■えてください、って■■めば、もしかしたら■■関係から始まる■■■■……なんてことも! いやー萌えちゃう! みっちーも試してみる!
――部分的に黒く塗りつぶされている。
何て書いてあったんだろうか。
「ハンターさんの個人情報が出回って、一冊に編集されているようなんです。うちの族長が標的にされてますし……何とかしないと」
ここ最近、一部のハンター達の中で知る人ぞ知る組織、『ハンターマニア編集部』というものがあるらしい。実態は謎だがハンターズソサエティに登録するめぼしいハンターたちの情報を根こそぎ集め、一冊に纏めているようなのだ。
それは基本情報から恥ずかしい秘密まで、余すところなく書かれている。
編集部は個人情報を集めるだけに飽き足らず、ハンターたちの不意をつき、食べかけの食品から衣料品なども盗み出し、冊子「ハンターマニア」創刊記念の景品にしようとしている。
ハンターには隠れファンも多い。あの人を目指してハンターになった、なんて話もよく聞く。
だが、さすがにこれは行き過ぎだ!!
こんなものが世に出回った日には……なんとしてでも創刊を止めなければ!
「居場所は俺が独自に捜査して見つけました。リゼリオの一角の小さい小屋みたいです。毎晩明かりがついていました。徹夜で作業しているようです。6人いて、全員ハンターみたいでした」
「そうですか……。イェルズさん暇だったんですね……」
「違いますよ! 俺は族長の為にですn」
「分かりました。じゃあ一応募集しますね」
イソラは引き気味に頷くと、被害者たちに不憫そうな眼差しを向け、編集部討伐の依頼を張り出したのだった。
一方、編集部は大変な賑わいだった。
「さあ皆、あともう少しだよ! ハンターファンの皆に夢を届けるんだ! 気合いれな!!」
「はい! ミヅハさま! おまかせください!」
リプレイ本文
「ハンターのこと丸裸にしたいだなんて、物好きな人達もいたもんだね~」
「本当だねー。ハンターの生活なんてそんなに面白いものじゃないと思うけどね」
路地を歩く夢路 まよい(ka1328)にこくこくと頷く十色 乃梛(ka5902)。
この2人、自分達の『価値』を全く理解していない。完全に他人事。物見遊山である。
誰からも返事がないので横を向くと、澪(ka6002)がものすごい殺気を放っていた。
その向こう側には鬼の面をつけた謎の人と……心なしかサクラ・エルフリード(ka2598)の顔色が青ざめているように見えて、まよいが小首を傾げる。
「えっと……。サクラ、何か大変そうだね」
「あっ。いえ、大丈夫です……。きちんと解決しませんとね」
「澪さんは大丈夫?」
「大丈夫。絶対殺すから大丈夫」
乃梛の問いに即答する澪。
それって全然大丈夫じゃないような……。
「で、お前さんは何でお面被ってるんだい?」
「ほらっ。これからアジト襲撃するのに顔見られたら嫌じゃない」
ユピテール・オーク(ka5658)のツッコミにアワアワと慌てるノノトト(ka0553)。
――顔を出したらマズい程の問題のある情報でも漏れたんだろうか。
「見えてきました。あそこです……!」
少年に集まる同乗の眼差し。イェルズ・オイマト(kz0143)の声にハンター達が一斉に振り返る。
その目線の先には……一見何の変哲もない、小さな古い小屋。
ハンター達の事前の調査で、内部構造はばっちり分かっている。
「出入り口は2つ。正面口と裏口ですね。窓は小さく逃走には不向き、と……」
壁を壊して逃げるという手段を取られる可能性もあるが、そうなると本が傷つく可能性があるし、そういう強硬策には出ないであろう――。
淡々と状況を分析するサクラに、乃梛はなるほど、と頷く。
「……すごく説得力あるし納得できるけど、サクラさんも割と必死だったりする?」
「えっ? ええ、まあ……」
言葉を濁すサクラ。表面上は平静を保っているが、実は内心、すごく焦っている。
だって、萌本創刊のチラシに自分の名前がバッチリ掲載されていたのを見てしまったのだ。
あんな赤裸々な情報が掲載されて販売された日には表を歩けない……!!
「罠の類はなさそうね。二手に分かれて、同時に侵入しましょ」
「……ちょっと待って。何か聞こえるわ」
俄然殺る気の澪を制止するまよい。
確かに話し声が聞こえるような……?
ハンター達は耳をそばだてて……。
「……やっぱりカップリングとしては、ヴェルナーさんとバタルトゥさんだと思うのよ」
「帝国と辺境が対立する中、惹かれ合う2人……! 禁断の愛……!」
「そこからまたパシュパティ条約の流れが萌えるわよねー」
「立場が気持ちを押し留めていたのに、それがなくなった今……!!」
「愛が一気に深まる訳ですね!! やだーもうたまりませんな!!」
「いやいや、イェルズさんも忘れちゃダメでしょ! 族長と補佐役よ!? いわば夫婦よ!? それだけでパン3個はいけちゃうんですけど!」
「イェルズさんって小さい頃からバタルトゥさんのお世話になってたんでしょ?」
「ショタ要素きたよこれ!! 年の差カップルおいしいですな!!」
「育つの待ってたっていう展開も萌えですよお姉さま!」
「どちらにせよホモォおいしいです!!」
――何か今、すごく聞いちゃいけないものを聞いた気がする。
微妙な顔をするハンター達。見ると、イェルズの目からハイライトが消えている。
こうしている間も、編集部内から聞こえてくる妄想話。
ダメだこいつら、早く何とかしないと……!!
意を決したハンター達。二手に分かれて出入り口に回りこむと、一気にドアを蹴り破る。
濛々と立ち上る土埃。編集部の面々を捕縛すべく、踏み込んだハンター達は、予想外の耳を劈く黄色い声に思わず立ち止まる。
「えっ。何……?!」
「くっ。ブロウビートの使い手がいたのかもしれません……! 皆さん気をつけ……」
耳を押さえるまよいを庇うサクラ。その声に被せ気味に歓声が続く。
「すごい! 本物のハンターさんですよ!」
「きゃああ! どうしようお化粧しておけばよかった!」
「お茶! お茶淹れますね!」
「お茶菓子! 取って置き出すんだよ!」
「わかってますー!」
突然現れたハンター達に大興奮の編集部。
逃げ出すかと思いきや、思わぬ大歓迎ムードに毒気を抜かれたが……すぐさま立ち直った澪がキッと編集部の面々を睨む。
「お茶やお菓子で澪達を買収できると思ってるの!? そんなことをしたって許さないんだから! 本はどこ!? 素直に出しなさい!」
「……………」
無言で槍を構えるサクラ。その顔は能面のようだが、怒気を含んでいることは分かる。
それに動じる様子もなく、妙齢の見目麗しい女性がふふふ……と意味ありげに笑う。
「そんなに慌てて……早く読みたかったのかい? 困った子達だね」
「はぁ?! 何言ってんのよ! 私達は本の発行を阻止しに来たの!」
「ははは。迫真の演技、恐れ入るね。私が編集長のミヅハだ。日頃の協力、感謝するよ」
澪の怒りも全く意に介さないミヅハ。どうやら、ハンター達を完全に協力者だと思い込んでいるらしい。
編集部の面々は全員ハンターであるはず。だからこそ『本気の殺意』が理解できるはずなのに……何かがおかしい。
「それにしても、ハンター達が来てくれるなんて嬉しいサプライズだね。ありがとう、ノノトト。君からのお祝いだろう?」
続いたミヅハの言葉に、凍り付く場。
本気の脅しを編集部の面々が取り合わなかった理由は、もしかして……!
少年に集まる仲間達からの冷たい目線。鬼の面で顔を隠していたが、編集部の者達にはバレバレだったらしい。
部屋の隅でガクガクと震えていたノノトトは、とう! とジャンプすると華麗に正座したまま着地する。
「……すみません。ぼくが……やりました……」
「……殺ス」
「…………」
「わああああ! 待って待って! ごめんなさい! まさかこんなことになると思ってなかったんだよおおお!!」
澪とサクラに武器を突き付けられて、土下座のまま半泣きになるノノトト。
ユピテールはため息をついて少年の肩に手を置く。
「一体何だってこんなことしたんだい……?」
「その……『身近な英雄を探そう!』って、ハンターのお仕事を知ってもらう本を作るんだなって思ってて……」
「勘違いしてたってこと? 集めてる情報の量考えたっておかしいのは分かっただろうに」
「でも、でも! まさか全部掲載するなんて思わないじゃないですか……!」
「それはそうかもねえ……。それにしても随分と際どい姿絵を集めてきたもんだね」
「あっ。その姿絵の仕上げぼくです……。その写真もぼくです……」
「……お前さん、本当に勘違いしてたのかい?」
「自分でもびっくりするくらい勘違いしてたんですよおお!」
近くにあった萌本のチラシを眺めながら言うユピテール。
びゃーーー! っと泣くノノトトに、澪とサクラがイイ笑顔で武器を構える。
「ああああああ! 命だけは! 命だけは助けてくださいいいい!!」
「2人共、お仕置きはこれが全部終わってからにしよう。坊や、あたい達を手伝っておくれ。出来るね?」
殺気立つ乙女達をまあまあと宥めるユピテール。ノノトトがその足に縋りついてガクガクと首を縦に振る。
その様子を、編集部の者達がガン見していた。
「ちょっと! いたいけな少年がお姉さんに慰められてるわよ!」
「きゃー! おねしょたってやつよね! 萌えるわあ!」
「お仕置き……とか言って、お姉さまに手取り足取りあんなことやこんなことされちゃうのかしらっ」
「やだ! ちょっと魔導カメラ用意しなきゃ!!」
大興奮の編集部の面々。その業の深さに頭を抱える澪。
思わず自分を励ます少女をまじまじと見ていた編集部員の娘が、あっ、と声をあげた。
「あら。よく見たら……澪さんですよね。静玖さんはお元気ですか?」
「えっ。何であの子を知ってるの……?」
「静玖さんにはお世話になってるのよ。今回も沢山写真提供してくれてね」
「は……? え……?」
双子の片割れである静玖(ka5980)の名前が出て来て、目を丸くする澪。
――えっ。何? 写真を提供する……?
理解が追いつかない澪。
はい、と編集部員に見せられたページを見て固まる。
そこにはバッチリとポーズを決めて立つ静玖。
気付かぬうちに撮られていららしい、澪の湯浴み着姿の写真もある。
そして、兄である雹(ka5978)と怪しい程に仲睦まじく添い寝しているもの。
更には、彼女たちの私室の写真が……!
【誰にも言えない彼女達の秘密】
澪さんと静玖さん、そして2人の兄である雹さんはとっても仲良し☆
どれくらい仲良しかっていうと、もう恋人の域らしいわよ!
3人の部屋には抱き枕があって、3人それぞれ別々のものと、2人、3人がそれぞれ一緒になったものが揃ってるんですって!
更には手作りぬいぐるみもあるそうよ!
深い兄妹愛よねー! この子達と仲良くなろうと思ったら、3人同時に狙った方がいいかもしれないわ!
「何これえええええ!! ダメ! こんなの絶対ダメ!!」
悲鳴をあげる澪。その横で、何故かまよいと乃梛がバシャバシャと写真を撮られまくっていた。
「まよいさん素敵ー! 背伸びして……そうそう! もうちょっとスカート上げられるかなっ」
「こうかしら……?」
「いいよいいよー! 乃梛さんはちょっと小首かしげて! ローアングルで撮るからね! って、乃梛さんったら下着虎柄なの!? やだー! 顔に似合わず大胆ね!」
「それ水着だから見られても問題ないよー」
あれよあれよと写真を撮られ、その流れでインタビューまでされている。
「まよいさん、リアルブルーでは洋館に作られた地下部屋で暮らしていて、『パパ』と呼んでいた人物に優しくされていたそうです!」
「パパ……! 何だか禁断の響き……!!」
「パパと呼んでいたってことは実のお父さんじゃないのよね!? 何か妄想広がっちゃうわ!」
「乃梛さんのインタビューは?」
「これからです!」
「よし。引き続き頼むよ。お前達! 大急ぎでまよいさんと乃梛さんの特集ページ作るよ!」
「ミヅハ様、もう萌本の製本は終わっていますし増ページは無理ですよ!」
「分かってる! これは別冊の付録にしよう! 折角のお客様だからね……!」
「かしこまりました!!」
大いに盛り上がるミヅハと編集部員達。
ネギ背負ったカモが2匹も来てくれたらそりゃあ張り切りますよね!!
「ん? 十色って子、確か掲載したよね。資料出してきて!」
「はいっ」
「あれっ? エニぃ……?」
編集部員が出して来た資料に目を見開く乃梛。見覚えのある顔を見つけて覗き込む。
――間違いない。双子の片割れの十色 エニア(ka0370)だ。
まさかエニぃまで萌本の餌食になっているなんて……って、あれ? 何か、なんか胸が大きくない……? 私よりずっと大きい、なんで!?
何かの間違いかと思い、他の写真を見るも……枝触手に絡まれている写真も、ちょっと色がアレで誤解を呼びそうな樹液を浴びて虚ろな目になっている写真も、お友達と思わしき人物に押し倒されているイラストもみーんな胸が大きい。
巨乳というか爆乳レベルだ。
「ちょっと待ってうらやm……いやいや。どういうことなの……?」
【エニアさんの誰にもいえない秘密】
とっても優秀な魔術師のエニアさんだけど、実はとっても敏感なんですって!
そのせいで依頼でも色々おいしい……いやいや。ひどい目に遭ってるみたいね。
何が敏感かって? それはヒ・ミ・ツ☆
美しいエニアさんだけど、想い人がいるって噂よ。どんな人か気になるわねー!
ところで、エニアさんは男か女か? そんなことは些細な問題よ! 美しさは性別を超えるのよ!!
あれ……? エニアの性別は確か……。
考え込む乃梛。その横では、サクラが違う資料を見てぷるぷる震えていた。
【誰にも言えない彼女の秘密】
強くて真面目で、立派に聖導士として日々頑張っているサクラさんだけど、誰にも言えない悩みがあるみたい。
それは……ささやかなお胸☆ うーん。みっちーは、つるぺたも魅力的だと思うけどな!
そんな彼女の日課は、寝る前の豊胸体操! 誰にも知られないところで努力してるところがまたいじらしいわよね!
俺はつるぺたでも気にしない。むしろつるぺたを愛している……そんな包容力のある貴方!
サクラさんは未婚、恋人もナシ! ロマンチックにアタックしてみるといいかも!
そんなコメントの横に添えられていた写真は、鏡の前で、あられもない姿で体操をしている姿――。
「……許さない! 絶っっっ対燃やす!!」
サクラの咆哮。そこにいつの間にか消えていたユピテールとノノトトが戻って来た。
「本の在庫は確保した! 皆やっちゃっていいよ!」
「協力したから命だけは助けてくださいいいい!!」
「ん。それじゃ、いくねー!」
こくりと頷いてスリープクラウドをぶちかますまよい。
編集部の面々は次々と倒れ込み……。
お仕置きとして亀甲縛りにされた編集部の面々は、何だかとても喜んでいた。
……これすらも彼女達にとってはご褒美らしい。業が深いにも程がある。
そしてノノトトもまた、亀甲縛りで転がされていた。
「何でぼくまでえええ!」
「お仕置きに決まってるだろ? 萌本発行まではまだ百歩譲って許せたにしても、盗品やらフェチの品々を付録にするのはやりすぎ。犯罪はダメだよ」
「「いやいやダメでしょこんなもの発行しちゃ!!」」
懇々と説教をするユピテールに即答するサクラと澪。
乃梛は苦笑しつつ続ける。
「そうだね。本の発行自体は悪くないから……オフィスの承認を受けたらどうかな?」
「うん。もう少し内容をソフトにしたらいいと思う」
「何事も程々ってことだね。まあ、私は公開されて困る秘密はないけど」
「そうだね……。私達、何か大切なものを見失っていたのかも。一からやり直そう」
「ミヅハ様……!!」
ノノトトとまよいの言葉に、編集部の面々は感極まって涙を落した――。
……縛られたままなので感動もなにもあったもんじゃないですが。
こうして、萌本『ハンターマニア』の発行は阻止され、敢行前にその大半が燃えて消えた。
……はずだが、何故か数冊が戦火を生き残った、という噂が闇の市場に流れた。
マニア垂涎の傑作を求めて、時に数万Gの値で競売にかけられたが、本物だった試しはなく――。
消えたとされた萌本は、実は事件に関わったハンター達によって持ち出されおり、オフィスに寄付されたという噂が飛び交ったが……真相は闇の中。
そしてその後。ミヅハ達が新たな『ハンターマニア』の制作を開始したという話が聞こえてきたのは、また別の話である。
「本当だねー。ハンターの生活なんてそんなに面白いものじゃないと思うけどね」
路地を歩く夢路 まよい(ka1328)にこくこくと頷く十色 乃梛(ka5902)。
この2人、自分達の『価値』を全く理解していない。完全に他人事。物見遊山である。
誰からも返事がないので横を向くと、澪(ka6002)がものすごい殺気を放っていた。
その向こう側には鬼の面をつけた謎の人と……心なしかサクラ・エルフリード(ka2598)の顔色が青ざめているように見えて、まよいが小首を傾げる。
「えっと……。サクラ、何か大変そうだね」
「あっ。いえ、大丈夫です……。きちんと解決しませんとね」
「澪さんは大丈夫?」
「大丈夫。絶対殺すから大丈夫」
乃梛の問いに即答する澪。
それって全然大丈夫じゃないような……。
「で、お前さんは何でお面被ってるんだい?」
「ほらっ。これからアジト襲撃するのに顔見られたら嫌じゃない」
ユピテール・オーク(ka5658)のツッコミにアワアワと慌てるノノトト(ka0553)。
――顔を出したらマズい程の問題のある情報でも漏れたんだろうか。
「見えてきました。あそこです……!」
少年に集まる同乗の眼差し。イェルズ・オイマト(kz0143)の声にハンター達が一斉に振り返る。
その目線の先には……一見何の変哲もない、小さな古い小屋。
ハンター達の事前の調査で、内部構造はばっちり分かっている。
「出入り口は2つ。正面口と裏口ですね。窓は小さく逃走には不向き、と……」
壁を壊して逃げるという手段を取られる可能性もあるが、そうなると本が傷つく可能性があるし、そういう強硬策には出ないであろう――。
淡々と状況を分析するサクラに、乃梛はなるほど、と頷く。
「……すごく説得力あるし納得できるけど、サクラさんも割と必死だったりする?」
「えっ? ええ、まあ……」
言葉を濁すサクラ。表面上は平静を保っているが、実は内心、すごく焦っている。
だって、萌本創刊のチラシに自分の名前がバッチリ掲載されていたのを見てしまったのだ。
あんな赤裸々な情報が掲載されて販売された日には表を歩けない……!!
「罠の類はなさそうね。二手に分かれて、同時に侵入しましょ」
「……ちょっと待って。何か聞こえるわ」
俄然殺る気の澪を制止するまよい。
確かに話し声が聞こえるような……?
ハンター達は耳をそばだてて……。
「……やっぱりカップリングとしては、ヴェルナーさんとバタルトゥさんだと思うのよ」
「帝国と辺境が対立する中、惹かれ合う2人……! 禁断の愛……!」
「そこからまたパシュパティ条約の流れが萌えるわよねー」
「立場が気持ちを押し留めていたのに、それがなくなった今……!!」
「愛が一気に深まる訳ですね!! やだーもうたまりませんな!!」
「いやいや、イェルズさんも忘れちゃダメでしょ! 族長と補佐役よ!? いわば夫婦よ!? それだけでパン3個はいけちゃうんですけど!」
「イェルズさんって小さい頃からバタルトゥさんのお世話になってたんでしょ?」
「ショタ要素きたよこれ!! 年の差カップルおいしいですな!!」
「育つの待ってたっていう展開も萌えですよお姉さま!」
「どちらにせよホモォおいしいです!!」
――何か今、すごく聞いちゃいけないものを聞いた気がする。
微妙な顔をするハンター達。見ると、イェルズの目からハイライトが消えている。
こうしている間も、編集部内から聞こえてくる妄想話。
ダメだこいつら、早く何とかしないと……!!
意を決したハンター達。二手に分かれて出入り口に回りこむと、一気にドアを蹴り破る。
濛々と立ち上る土埃。編集部の面々を捕縛すべく、踏み込んだハンター達は、予想外の耳を劈く黄色い声に思わず立ち止まる。
「えっ。何……?!」
「くっ。ブロウビートの使い手がいたのかもしれません……! 皆さん気をつけ……」
耳を押さえるまよいを庇うサクラ。その声に被せ気味に歓声が続く。
「すごい! 本物のハンターさんですよ!」
「きゃああ! どうしようお化粧しておけばよかった!」
「お茶! お茶淹れますね!」
「お茶菓子! 取って置き出すんだよ!」
「わかってますー!」
突然現れたハンター達に大興奮の編集部。
逃げ出すかと思いきや、思わぬ大歓迎ムードに毒気を抜かれたが……すぐさま立ち直った澪がキッと編集部の面々を睨む。
「お茶やお菓子で澪達を買収できると思ってるの!? そんなことをしたって許さないんだから! 本はどこ!? 素直に出しなさい!」
「……………」
無言で槍を構えるサクラ。その顔は能面のようだが、怒気を含んでいることは分かる。
それに動じる様子もなく、妙齢の見目麗しい女性がふふふ……と意味ありげに笑う。
「そんなに慌てて……早く読みたかったのかい? 困った子達だね」
「はぁ?! 何言ってんのよ! 私達は本の発行を阻止しに来たの!」
「ははは。迫真の演技、恐れ入るね。私が編集長のミヅハだ。日頃の協力、感謝するよ」
澪の怒りも全く意に介さないミヅハ。どうやら、ハンター達を完全に協力者だと思い込んでいるらしい。
編集部の面々は全員ハンターであるはず。だからこそ『本気の殺意』が理解できるはずなのに……何かがおかしい。
「それにしても、ハンター達が来てくれるなんて嬉しいサプライズだね。ありがとう、ノノトト。君からのお祝いだろう?」
続いたミヅハの言葉に、凍り付く場。
本気の脅しを編集部の面々が取り合わなかった理由は、もしかして……!
少年に集まる仲間達からの冷たい目線。鬼の面で顔を隠していたが、編集部の者達にはバレバレだったらしい。
部屋の隅でガクガクと震えていたノノトトは、とう! とジャンプすると華麗に正座したまま着地する。
「……すみません。ぼくが……やりました……」
「……殺ス」
「…………」
「わああああ! 待って待って! ごめんなさい! まさかこんなことになると思ってなかったんだよおおお!!」
澪とサクラに武器を突き付けられて、土下座のまま半泣きになるノノトト。
ユピテールはため息をついて少年の肩に手を置く。
「一体何だってこんなことしたんだい……?」
「その……『身近な英雄を探そう!』って、ハンターのお仕事を知ってもらう本を作るんだなって思ってて……」
「勘違いしてたってこと? 集めてる情報の量考えたっておかしいのは分かっただろうに」
「でも、でも! まさか全部掲載するなんて思わないじゃないですか……!」
「それはそうかもねえ……。それにしても随分と際どい姿絵を集めてきたもんだね」
「あっ。その姿絵の仕上げぼくです……。その写真もぼくです……」
「……お前さん、本当に勘違いしてたのかい?」
「自分でもびっくりするくらい勘違いしてたんですよおお!」
近くにあった萌本のチラシを眺めながら言うユピテール。
びゃーーー! っと泣くノノトトに、澪とサクラがイイ笑顔で武器を構える。
「ああああああ! 命だけは! 命だけは助けてくださいいいい!!」
「2人共、お仕置きはこれが全部終わってからにしよう。坊や、あたい達を手伝っておくれ。出来るね?」
殺気立つ乙女達をまあまあと宥めるユピテール。ノノトトがその足に縋りついてガクガクと首を縦に振る。
その様子を、編集部の者達がガン見していた。
「ちょっと! いたいけな少年がお姉さんに慰められてるわよ!」
「きゃー! おねしょたってやつよね! 萌えるわあ!」
「お仕置き……とか言って、お姉さまに手取り足取りあんなことやこんなことされちゃうのかしらっ」
「やだ! ちょっと魔導カメラ用意しなきゃ!!」
大興奮の編集部の面々。その業の深さに頭を抱える澪。
思わず自分を励ます少女をまじまじと見ていた編集部員の娘が、あっ、と声をあげた。
「あら。よく見たら……澪さんですよね。静玖さんはお元気ですか?」
「えっ。何であの子を知ってるの……?」
「静玖さんにはお世話になってるのよ。今回も沢山写真提供してくれてね」
「は……? え……?」
双子の片割れである静玖(ka5980)の名前が出て来て、目を丸くする澪。
――えっ。何? 写真を提供する……?
理解が追いつかない澪。
はい、と編集部員に見せられたページを見て固まる。
そこにはバッチリとポーズを決めて立つ静玖。
気付かぬうちに撮られていららしい、澪の湯浴み着姿の写真もある。
そして、兄である雹(ka5978)と怪しい程に仲睦まじく添い寝しているもの。
更には、彼女たちの私室の写真が……!
【誰にも言えない彼女達の秘密】
澪さんと静玖さん、そして2人の兄である雹さんはとっても仲良し☆
どれくらい仲良しかっていうと、もう恋人の域らしいわよ!
3人の部屋には抱き枕があって、3人それぞれ別々のものと、2人、3人がそれぞれ一緒になったものが揃ってるんですって!
更には手作りぬいぐるみもあるそうよ!
深い兄妹愛よねー! この子達と仲良くなろうと思ったら、3人同時に狙った方がいいかもしれないわ!
「何これえええええ!! ダメ! こんなの絶対ダメ!!」
悲鳴をあげる澪。その横で、何故かまよいと乃梛がバシャバシャと写真を撮られまくっていた。
「まよいさん素敵ー! 背伸びして……そうそう! もうちょっとスカート上げられるかなっ」
「こうかしら……?」
「いいよいいよー! 乃梛さんはちょっと小首かしげて! ローアングルで撮るからね! って、乃梛さんったら下着虎柄なの!? やだー! 顔に似合わず大胆ね!」
「それ水着だから見られても問題ないよー」
あれよあれよと写真を撮られ、その流れでインタビューまでされている。
「まよいさん、リアルブルーでは洋館に作られた地下部屋で暮らしていて、『パパ』と呼んでいた人物に優しくされていたそうです!」
「パパ……! 何だか禁断の響き……!!」
「パパと呼んでいたってことは実のお父さんじゃないのよね!? 何か妄想広がっちゃうわ!」
「乃梛さんのインタビューは?」
「これからです!」
「よし。引き続き頼むよ。お前達! 大急ぎでまよいさんと乃梛さんの特集ページ作るよ!」
「ミヅハ様、もう萌本の製本は終わっていますし増ページは無理ですよ!」
「分かってる! これは別冊の付録にしよう! 折角のお客様だからね……!」
「かしこまりました!!」
大いに盛り上がるミヅハと編集部員達。
ネギ背負ったカモが2匹も来てくれたらそりゃあ張り切りますよね!!
「ん? 十色って子、確か掲載したよね。資料出してきて!」
「はいっ」
「あれっ? エニぃ……?」
編集部員が出して来た資料に目を見開く乃梛。見覚えのある顔を見つけて覗き込む。
――間違いない。双子の片割れの十色 エニア(ka0370)だ。
まさかエニぃまで萌本の餌食になっているなんて……って、あれ? 何か、なんか胸が大きくない……? 私よりずっと大きい、なんで!?
何かの間違いかと思い、他の写真を見るも……枝触手に絡まれている写真も、ちょっと色がアレで誤解を呼びそうな樹液を浴びて虚ろな目になっている写真も、お友達と思わしき人物に押し倒されているイラストもみーんな胸が大きい。
巨乳というか爆乳レベルだ。
「ちょっと待ってうらやm……いやいや。どういうことなの……?」
【エニアさんの誰にもいえない秘密】
とっても優秀な魔術師のエニアさんだけど、実はとっても敏感なんですって!
そのせいで依頼でも色々おいしい……いやいや。ひどい目に遭ってるみたいね。
何が敏感かって? それはヒ・ミ・ツ☆
美しいエニアさんだけど、想い人がいるって噂よ。どんな人か気になるわねー!
ところで、エニアさんは男か女か? そんなことは些細な問題よ! 美しさは性別を超えるのよ!!
あれ……? エニアの性別は確か……。
考え込む乃梛。その横では、サクラが違う資料を見てぷるぷる震えていた。
【誰にも言えない彼女の秘密】
強くて真面目で、立派に聖導士として日々頑張っているサクラさんだけど、誰にも言えない悩みがあるみたい。
それは……ささやかなお胸☆ うーん。みっちーは、つるぺたも魅力的だと思うけどな!
そんな彼女の日課は、寝る前の豊胸体操! 誰にも知られないところで努力してるところがまたいじらしいわよね!
俺はつるぺたでも気にしない。むしろつるぺたを愛している……そんな包容力のある貴方!
サクラさんは未婚、恋人もナシ! ロマンチックにアタックしてみるといいかも!
そんなコメントの横に添えられていた写真は、鏡の前で、あられもない姿で体操をしている姿――。
「……許さない! 絶っっっ対燃やす!!」
サクラの咆哮。そこにいつの間にか消えていたユピテールとノノトトが戻って来た。
「本の在庫は確保した! 皆やっちゃっていいよ!」
「協力したから命だけは助けてくださいいいい!!」
「ん。それじゃ、いくねー!」
こくりと頷いてスリープクラウドをぶちかますまよい。
編集部の面々は次々と倒れ込み……。
お仕置きとして亀甲縛りにされた編集部の面々は、何だかとても喜んでいた。
……これすらも彼女達にとってはご褒美らしい。業が深いにも程がある。
そしてノノトトもまた、亀甲縛りで転がされていた。
「何でぼくまでえええ!」
「お仕置きに決まってるだろ? 萌本発行まではまだ百歩譲って許せたにしても、盗品やらフェチの品々を付録にするのはやりすぎ。犯罪はダメだよ」
「「いやいやダメでしょこんなもの発行しちゃ!!」」
懇々と説教をするユピテールに即答するサクラと澪。
乃梛は苦笑しつつ続ける。
「そうだね。本の発行自体は悪くないから……オフィスの承認を受けたらどうかな?」
「うん。もう少し内容をソフトにしたらいいと思う」
「何事も程々ってことだね。まあ、私は公開されて困る秘密はないけど」
「そうだね……。私達、何か大切なものを見失っていたのかも。一からやり直そう」
「ミヅハ様……!!」
ノノトトとまよいの言葉に、編集部の面々は感極まって涙を落した――。
……縛られたままなので感動もなにもあったもんじゃないですが。
こうして、萌本『ハンターマニア』の発行は阻止され、敢行前にその大半が燃えて消えた。
……はずだが、何故か数冊が戦火を生き残った、という噂が闇の市場に流れた。
マニア垂涎の傑作を求めて、時に数万Gの値で競売にかけられたが、本物だった試しはなく――。
消えたとされた萌本は、実は事件に関わったハンター達によって持ち出されおり、オフィスに寄付されたという噂が飛び交ったが……真相は闇の中。
そしてその後。ミヅハ達が新たな『ハンターマニア』の制作を開始したという話が聞こえてきたのは、また別の話である。
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被害者友の会控室【相談卓】 イェルズ・オイマト(kz0143) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/10/08 23:55:57 |
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最終発言 2016/10/08 22:51:14 |