ゲスト
(ka0000)
【西参】西ノ彼方ヲ突破セヨ
マスター:赤山優牙
このシナリオは5日間納期が延長されています。
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オープニング
◆unknown
憤怒の歪虚王、始祖たる七が一『九蛇頭尾大黒狐 獄炎』が、ハンターと西方世界諸国、エトファリカ連邦国によって討たれたのは王国暦1015年の夏頃だった。
戦いは激戦と混乱を極めた。いつ切れるか分からない細い運命の系を手繰り寄せ、多くの犠牲と奇跡の上に人類は勝利した。
だが、それで憤怒歪虚との戦いが終結した訳ではなかった。憤怒の本陣は天ノ都より、遥か南東に健在だったからだ。
深い闇の中、声が響く。
「兄がまさか……」
憤怒の歪虚である災狐は、兄である蓬生の命令で別働隊を率いて天ノ都よりも北西に陣取った。
これにより、エトファリカ連邦国を挟撃できるからだ。だが、その思惑は外れた。原因は、エトファリカ連邦国の勢力回復にあった。
まずは長江の地。そして、次に十鳥城。更に、西へと向けて軍を進めて来たのだ。
災狐はこの軍を可能な限り引き付け、その間に、憤怒本陣から挟み撃ちを行う――手はずだった。
「敗れた。だが、お、俺のせいじゃない。強力な部隊だったんだ」
言い訳するように災狐は相対している存在に言った。
先の戦いで深手を追った。負のマテリアルが満ちている憤怒本陣で長時間、身体を休める必要がある程に。
「次は、次は負けない。だからよ、み、見逃してくれ!」
絞り出すような声をあげる災狐。
伏せて命乞いをする姿は哀れであった。
「……西へと向かった人間共の部隊は、死をも恐れていない侍と聞いたが……」
死する事を覚悟した侍。
それに対し、この災狐の姿は、もはや語る必要はないだろう。
「蓬生からの契約だ」
「た、頼む。俺は、ま、まだ!」
脱兎の如く、対峙していた存在から逃げる。
逃げ切れる訳がない。一瞬にして回り込まれた。
「ひぃ!」
「安心しろ。貴様のマテリアルは俺が貰い受ける。……俺の礎となれ」
槍が一閃。
深手を負っているとはいえ、その一撃で災狐は打ち倒された。
その時、闇の中に光が差し込んだ。辺りが明るくなり、災狐を打ち倒し喰らう姿の歪虚が見えた。
魔人型の歪虚だ。その険しい顔は一度見た者は忘れないだろう。
その歪虚の名は――青木。
●西へ
「つまり、赤き大地のホープを目指すのは主目的であり、いくつかの副次的な目的があったという事ですか?」
征西部隊の天幕の一つで紡伎 希(kz0174)は、部隊を率いる長に尋ねた。
それに面倒な様子で応えるのは、女将軍こと、鳴月 牡丹(kz0180)だった。
「東方から西方への陸路を、歪虚勢力を突破しながら向かうのは主目的だよ。そうでなければ、“本隊”は背後を突かれるからさ」
牡丹の言う“本隊”とは残党する憤怒歪虚本拠地へと向かう予定の軍勢である。
「……長江と十鳥城は、本拠地攻略の為の布石。そして、災狐軍に打撃を与えて背後の安全を確保する……紫草様のお考えだったのですね」
「まぁ、今となっては政だと思うけどね。色々とあるんだよ。将軍職っていうのは」
「本拠地攻略に、この部隊を派遣したら、本当に全滅していたかもしれません」
もちろん、歪虚勢力によって閉ざされている東方~西方の陸路を横断するのは危険を伴う。
僅かな可能性でも――そこに希望があるのなら……そんな気持ちで紫草は征西部隊を送り出したのだろうか。
「あの人は何を考えているか、僕も解らないし」
「……私は牡丹様の料理の方が理解できません」
冷めた目でテーブルの上に置かれた『ナニか』を見つめる希。
元々、なにかの食材……らしいが、もはや、元がなんだったのか、予想もできない。
「だって、しょうがないじゃん? 補給が満足じゃないんだしさ」
言い訳するような牡丹の言葉。
征西部隊は災狐軍との戦いの後も西へと向かっていた。当然、補給線は伸びる。
補給路の確保をしながらの前進ではない為、補給隊は道中、はぐれ歪虚や雑魔に襲われる事もあるのだ。
「あの……まさか、1人でもホープに向かうのが可能な理由とは――」
「まぁ、僕は『何でも』食べられるからね。補給がなくとも、在るものでなんとかするから」
「…………」
化け物ですかと言いかけた言葉を飲み込む希。
これが、強さの秘訣と言われても、絶対に真似したいとは思わない。
「話が逸れましたが、この先、どうしますか?」
「いやーさー。もう、障害が無いと思ったら、『アレ』じゃん? おまけに兵糧が少ないから迂回もできない」
「やはり、強行突破ですか」
希は深刻そうに呟いた。
西方世界の勢力範囲までもう少しという所で歪虚勢力が行く手を塞いでいたのだ。
「そうなるかな」
「ハンターの皆様に協力を要請します」
その希の言葉に牡丹は首をゆっくりと回しながら唸る。
「間に合うかな?」
「天ノ都からは間に合いませんが、西方からであれば」
差し出された資料を確認する牡丹。
残された兵糧と計算する。
「お。余裕じゃん」
「……計算間違えてますよ、むしろ、足りません」
牡丹は後頭部を掻いた。
「兵糧を節約し戦闘能力維持ギリギリまで耐え、突撃開始だね。それまでにハンターが間に合うかどうかって事で」
「では、そのように手配してきます」
一礼をして天幕から立ち去る希に、牡丹は何か言いかけ――やめた。
●生存者達
台地を見上げるように陣を構えた征西部隊。台地を越えれば西方である。
隊員達が西の方角を見つめていた。
「生き残ったと思ったら、今度は飢え地獄か。まぁ、もう、どうでもいいけどよ」
「瞬……」
「そんな目で俺を見るなよ正秋。死にたい訳じゃない」
征西部隊の瞬と正秋の二人だった。
命令を無視して決死隊を呼び掛けた瞬。命令を無視してハンター達と共に出撃した正秋。
災狐軍勢との戦いは、二人が率いた隊も大きな役目を果たした。
「分からないんだ。あれらを突破した先に立つ俺の姿が、想像できなくてな」
「……その時、考えればいいんだよ」
瞬にそう言った正秋も正直な所、目的地に着いた後の事は想像できていない。
けど、分かる事はある。それは希望ある未来を、次に繋げる事だ。
「ここに居たのか、二人とも」
声を掛けてきたのは、おっさんの兵士――ゲンタ――だった。
「それにしても、壮観だったな」
台地の上を偵察しに行っていた。
そこには、暴食に属する歪虚の群れ――いや、“群体”が蠢いていた。
アンデットらが寄り集まっているのだ。雑魔なのか歪虚なのかと言われると定かではない。
なので、隊員らは『アレ』を“群体”と呼んでいる。
「見渡す限りって事はなんだ、この世の吹き溜まりか、あそこは?」
悪態つく瞬の言葉。
陣地から見上げた台地一帯に蠢く“群体”。
「きっと、ハンター達が、先に吹き飛ばしてくれるはずだと信じているよ」
「正秋はすっかり、ハンターに肩入れしてるな。ホープについたら、ハンターにでもなるつもりか?」
「……それも悪くないかな」
ここを突破しなければ、ホープへは到達できない。最後の正念場だ。
憤怒の歪虚王、始祖たる七が一『九蛇頭尾大黒狐 獄炎』が、ハンターと西方世界諸国、エトファリカ連邦国によって討たれたのは王国暦1015年の夏頃だった。
戦いは激戦と混乱を極めた。いつ切れるか分からない細い運命の系を手繰り寄せ、多くの犠牲と奇跡の上に人類は勝利した。
だが、それで憤怒歪虚との戦いが終結した訳ではなかった。憤怒の本陣は天ノ都より、遥か南東に健在だったからだ。
深い闇の中、声が響く。
「兄がまさか……」
憤怒の歪虚である災狐は、兄である蓬生の命令で別働隊を率いて天ノ都よりも北西に陣取った。
これにより、エトファリカ連邦国を挟撃できるからだ。だが、その思惑は外れた。原因は、エトファリカ連邦国の勢力回復にあった。
まずは長江の地。そして、次に十鳥城。更に、西へと向けて軍を進めて来たのだ。
災狐はこの軍を可能な限り引き付け、その間に、憤怒本陣から挟み撃ちを行う――手はずだった。
「敗れた。だが、お、俺のせいじゃない。強力な部隊だったんだ」
言い訳するように災狐は相対している存在に言った。
先の戦いで深手を追った。負のマテリアルが満ちている憤怒本陣で長時間、身体を休める必要がある程に。
「次は、次は負けない。だからよ、み、見逃してくれ!」
絞り出すような声をあげる災狐。
伏せて命乞いをする姿は哀れであった。
「……西へと向かった人間共の部隊は、死をも恐れていない侍と聞いたが……」
死する事を覚悟した侍。
それに対し、この災狐の姿は、もはや語る必要はないだろう。
「蓬生からの契約だ」
「た、頼む。俺は、ま、まだ!」
脱兎の如く、対峙していた存在から逃げる。
逃げ切れる訳がない。一瞬にして回り込まれた。
「ひぃ!」
「安心しろ。貴様のマテリアルは俺が貰い受ける。……俺の礎となれ」
槍が一閃。
深手を負っているとはいえ、その一撃で災狐は打ち倒された。
その時、闇の中に光が差し込んだ。辺りが明るくなり、災狐を打ち倒し喰らう姿の歪虚が見えた。
魔人型の歪虚だ。その険しい顔は一度見た者は忘れないだろう。
その歪虚の名は――青木。
●西へ
「つまり、赤き大地のホープを目指すのは主目的であり、いくつかの副次的な目的があったという事ですか?」
征西部隊の天幕の一つで紡伎 希(kz0174)は、部隊を率いる長に尋ねた。
それに面倒な様子で応えるのは、女将軍こと、鳴月 牡丹(kz0180)だった。
「東方から西方への陸路を、歪虚勢力を突破しながら向かうのは主目的だよ。そうでなければ、“本隊”は背後を突かれるからさ」
牡丹の言う“本隊”とは残党する憤怒歪虚本拠地へと向かう予定の軍勢である。
「……長江と十鳥城は、本拠地攻略の為の布石。そして、災狐軍に打撃を与えて背後の安全を確保する……紫草様のお考えだったのですね」
「まぁ、今となっては政だと思うけどね。色々とあるんだよ。将軍職っていうのは」
「本拠地攻略に、この部隊を派遣したら、本当に全滅していたかもしれません」
もちろん、歪虚勢力によって閉ざされている東方~西方の陸路を横断するのは危険を伴う。
僅かな可能性でも――そこに希望があるのなら……そんな気持ちで紫草は征西部隊を送り出したのだろうか。
「あの人は何を考えているか、僕も解らないし」
「……私は牡丹様の料理の方が理解できません」
冷めた目でテーブルの上に置かれた『ナニか』を見つめる希。
元々、なにかの食材……らしいが、もはや、元がなんだったのか、予想もできない。
「だって、しょうがないじゃん? 補給が満足じゃないんだしさ」
言い訳するような牡丹の言葉。
征西部隊は災狐軍との戦いの後も西へと向かっていた。当然、補給線は伸びる。
補給路の確保をしながらの前進ではない為、補給隊は道中、はぐれ歪虚や雑魔に襲われる事もあるのだ。
「あの……まさか、1人でもホープに向かうのが可能な理由とは――」
「まぁ、僕は『何でも』食べられるからね。補給がなくとも、在るものでなんとかするから」
「…………」
化け物ですかと言いかけた言葉を飲み込む希。
これが、強さの秘訣と言われても、絶対に真似したいとは思わない。
「話が逸れましたが、この先、どうしますか?」
「いやーさー。もう、障害が無いと思ったら、『アレ』じゃん? おまけに兵糧が少ないから迂回もできない」
「やはり、強行突破ですか」
希は深刻そうに呟いた。
西方世界の勢力範囲までもう少しという所で歪虚勢力が行く手を塞いでいたのだ。
「そうなるかな」
「ハンターの皆様に協力を要請します」
その希の言葉に牡丹は首をゆっくりと回しながら唸る。
「間に合うかな?」
「天ノ都からは間に合いませんが、西方からであれば」
差し出された資料を確認する牡丹。
残された兵糧と計算する。
「お。余裕じゃん」
「……計算間違えてますよ、むしろ、足りません」
牡丹は後頭部を掻いた。
「兵糧を節約し戦闘能力維持ギリギリまで耐え、突撃開始だね。それまでにハンターが間に合うかどうかって事で」
「では、そのように手配してきます」
一礼をして天幕から立ち去る希に、牡丹は何か言いかけ――やめた。
●生存者達
台地を見上げるように陣を構えた征西部隊。台地を越えれば西方である。
隊員達が西の方角を見つめていた。
「生き残ったと思ったら、今度は飢え地獄か。まぁ、もう、どうでもいいけどよ」
「瞬……」
「そんな目で俺を見るなよ正秋。死にたい訳じゃない」
征西部隊の瞬と正秋の二人だった。
命令を無視して決死隊を呼び掛けた瞬。命令を無視してハンター達と共に出撃した正秋。
災狐軍勢との戦いは、二人が率いた隊も大きな役目を果たした。
「分からないんだ。あれらを突破した先に立つ俺の姿が、想像できなくてな」
「……その時、考えればいいんだよ」
瞬にそう言った正秋も正直な所、目的地に着いた後の事は想像できていない。
けど、分かる事はある。それは希望ある未来を、次に繋げる事だ。
「ここに居たのか、二人とも」
声を掛けてきたのは、おっさんの兵士――ゲンタ――だった。
「それにしても、壮観だったな」
台地の上を偵察しに行っていた。
そこには、暴食に属する歪虚の群れ――いや、“群体”が蠢いていた。
アンデットらが寄り集まっているのだ。雑魔なのか歪虚なのかと言われると定かではない。
なので、隊員らは『アレ』を“群体”と呼んでいる。
「見渡す限りって事はなんだ、この世の吹き溜まりか、あそこは?」
悪態つく瞬の言葉。
陣地から見上げた台地一帯に蠢く“群体”。
「きっと、ハンター達が、先に吹き飛ばしてくれるはずだと信じているよ」
「正秋はすっかり、ハンターに肩入れしてるな。ホープについたら、ハンターにでもなるつもりか?」
「……それも悪くないかな」
ここを突破しなければ、ホープへは到達できない。最後の正念場だ。
リプレイ本文
●クリスティン・ガフ(ka1090)
魔導エンジンが唸る。
味方への巻き込みを避ける為、そして、攻撃すれば同等の威力で反撃してくる群体の性質を考え、クリスティンは一気に仲間達と距離を取った。
「ひたすら倒すだけだな」
小難しい事は考える必要はない。
ただ黙々と群体を倒し続ければいいのだ。
中華風の太刀を構えると守りにも意識を向けながら、一気に薙ぎ払う。
群体共がその衝撃で塵と化していき、同時に負のマテリアルが襲う。
「想定通りだ」
盾を構えて反撃を受け止めるが、中には僅かな隙間を抜けてくるものもある。
そうした急所を突かれる可能性があるのは予想していた。それを見越してスキルをセットしてきたのだ。
振り抜いた太刀を再び上段に構えながら、開いた空間にバイクを進ませる。
見渡す限り群体が広がっているが、無限という事はないはずだ。ハンター達の猛攻は、この吹き溜まりみたいな台地の上を飛ばす事ができるはずだ。
「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!」
“彼ら”が突破できるように、クリスティンはただただ群体をひたすら破り続けるのであった。
●キヅカ・リク(ka0038)
見渡す限り埋め尽くす群体。
その不気味な雰囲気に似たような光景を思い出し、キヅカはうんざりとしていた。
「数年間、開けてなかった物置き……あれを彷彿とさせるよね……鳥肌止まんなくなっちゃってんだから」
かと言って、逃げ出す訳にはいかない。
魔導バイクのスロットを回した。魔導エンジンの独特のサウンドが台地の上に響き渡る。
「行く手を塞がせない。道を作るんだ」
征西部隊を迎える為に奮戦する仲間のハンター達を支援するように、彼はひたすら機導術を放つ。
威力調整した機導術の炎が、幾つもの群体を焼く――燃え去りながら、群体から放たれる嵐のような反撃。それらを盾を構えて強行突破していく。
もちろん、無傷ではない。だが、盾と鎧を上手に使っていて傷は浅い。走っては機導術を放つを繰り返し、群体の中へと深く掘り進んだ。
「……そういえば、噂で聞いた牡丹の料理ってなんだろう」
無事に突破して合流したら希ちゃんにでもこっそりと聞いてみよう。なんでも、見た目も味も奇抜というではないか。
そんな事を思いながら、キヅカは再びバイクのスロットを回した。
●ヴァイス(ka0364)&アニス・エリダヌス(ka2491)
ハンター達の怒号が、群体から発せられる呪詛のようななにかと重なる。
そんな中でも、ヴァイスの声は戦場を響かせていた。
「声を上げろ! 俺達はここに居ると!」
体内のマテリアルを燃やし、群体の目を向ける。
だが、群体は積極的に移動する様子も無かった。皆無ではないものの、まるで押し出されるように空いたスペースに群体が入るようなイメージだ。
それでもヴァイスは声を上げ、マテリアルを燃やして、剣を振るう。
「ここが正念場ですね……わたし達ならば、きっと――」
ヴァイスの背中を守るようにアニスが言葉を続ける。
「――きっと、うまくいきます。わたし達なら……」
征西部隊の前に広がる群体という名の『壁』。
死を覚悟していた“彼ら”。先の災狐との戦いで“彼ら”は、文字通りの死地を乗り越えた。
希望の大地――ホープ――への旅路をここで止めさせる訳にはいかないのだ。
「未来を照らす、希望ある光を……」
天に向かって両手を突き出すアニス。
温もりを感じるような優しい光の花びらが開くと――群体を次々に消滅させていく。
ボロボロと崩れながら、光と対照的などす黒いマテリアルが幾本にも発せられた。
「これ、ぐらい……」
盾を構えて反撃を凌ぐが全てを防ぎきれるというものではない。
崩れそうになった所で、大きな背中が眼前に現れた。
「無茶をするな」
全身を広げアニスを守るように立つ。
彼も盾を持つとはいえ、彼自身とアニスに対する反撃を受け止めているのだ。いかに頑健な歴戦の戦士とはいえ、これでは危険なはず。
「ヴァイスさん……」
「心配するな。少しは頑健に出来ているからな」
顔だけ向けて頼もしく言った戦士にアニスは深く頷いた。
掲げた聖機剣が彼女のマテリアルに反応し、ギミックが展開される。
反撃の数があればあるほど、防具のわずかな隙間に当たる可能性は高い。しかし、それを恐れていては、“彼ら”を救う事は叶わない。
「頼りに、します」
アニスの言葉に、ヴァイスは微笑を浮かべて返事をすると、盾を構えた。
仲間達と共に希望への道を切り開く為に。
●岩井崎 旭(ka0234)
「この東から来るんだよな、腹を空かせた征西部隊。しっかりバッチリ迎えの準備しねーとな」
槍を振り回して群体を吹き飛ばす旭。
同時に襲いかかる群体を避けるかナックルで受け流す。
征西部隊がどこに居るかはまだ見えない。今はひたすら戦い続けるしかないのだ。そして、それが大事な事だと旭は知っていた。そういえば、天ノ都を出る前に一緒に訓練した、あのおっさん兵士は無事だろうか。
「……にしても、半端じゃねえ数だよなァ!」
馬に乗っているにも関わらず、視界の中に映るのは、ひたすら群体である。
どれだけ居るのか、数える気にもならない。
「こいつはまさにやりがいがあるって奴だぜ。行くぜ! 突、撃ィ!!」
気合の掛け声を入れて再び槍を振るう。
敵を多く巻き込むほど、反撃も熾烈になる――が、それでも旭は景気よく豪快に戦い続けた。
傷ついてはスキルで回復。時には攻撃手段を変えてダメージを調整する。
「塵が積もったところで塵の山! 片っ端から叩き潰して吹き飛ばしてやる!」
吠えるように叫び、彼の威勢は決して緩まず、戦い続けるのであった。
●ミィリア(ka2689)
群体によって隔たれてはいるものの、“彼ら”と繋がっている。
ぎゅっと緑色の鉢巻きを締め直したミィリアは、目の前に広がる群体を睨んだ。
微かに蠢いている――そして、負のマテリアルを感じる。歪虚なのか雑魔なのか分からないが、よろしく無い存在である事は確かであり、征西部隊が西へと至る『壁』である事は確実だ。
「なんか気持ち悪いのいるけど、突撃あるのみで、ござる!」
愛馬の兼元がぶるっと武者震いした。
乗り手が重武装で重たい――という訳では決してない。戦用のメイド服なので女子力高い感じでまとまっている。
――戦用のメイド服ってなんだろうと思うが、これがミィリアがミィリアたる所以である――
彼女は、兼元の首元を優しく撫でて、落ち着かせると、白い細身の槍の穂先を天空に向けた。
「いざ、参る!!」
脚で愛馬に合図をすると、乗り手の意を読み取り、兼元は群体へと突撃する。
気合の掛け声と桜吹雪のマテリアルが舞う中、ミィリアの槍が群体を次々に消滅させていく。
反撃はあるが、気にもせずに槍を繰り返し振り回す侍は群体の奥深くへと突き進んだ。
●リューリ・ハルマ(ka0502)&アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)
群体の反撃は執拗だ。
多くの者が群体の反撃に対し防備を固めていたが、アルトは自身の持ち前を最大限に活かした戦い方を演じていた。
「行ける。これなら、打ち込んでいける」
リズムに乗って来たと感じられた。
群体からの鋭い反撃を、身体を捻って回避すると共に反動で小太刀を振るう。
それを駆けながら行うのだ。もちろん、全ての反撃を捌くのは無理があるが、当たりそうになった攻撃に対し武器で受け止める。
「アルトちゃん! 左側に行けるよ!」
叫ぶようなリューリの声がアルトの耳に入って来た。
霊闘士としての奥義を発動し、幻影を纏ったリューリは巨人のようにも思える威圧感を放っていた。
大親友の指示に爽やかな表情で頷くとアルトは小太刀を構え直し、姿勢を低く落として駆ける。そのまま駆けながら群体を切り倒していく。
「群体全体に組織的な動きはないみたいだ」
攻撃を続けながらアルトは観察した結果を口にした。
群体を消滅させたスペースに、群体がどのような動きをみせるのか注意深く見ていた。結果、空いたスペースになだれ込んでくるという心配はないようだった。それは、囲まれるという心配もないだろう。
「合流もしないみたいだね」
リューリも同様の感想を呟く。
蠢く群体同士を切り裂いた後の動きは無かった。切り離された群体はそのままだ。
不気味な呪詛のような叫びを発しているだけで積極的に移動するという風には見られない。
「まさしく、吹き溜まりだ」
「囲まれる心配がないなら、アルトちゃん、援護をよろしくね!」
包囲される心配がないという事は全力を出して前に集中できる。
リューリは一度切れた奥義を再び発動させた。多少の傷はスキルで回復できるので、あとはどれだけ敵を巻き込んで倒せるかだ。
綺麗な金髪の先端が紫色に染まり――リューリが武器を振るう度に、紫色の髪先が彼女の周囲を色付けていく。
「いっくよぉ!!」
楽しげとも受け取れそうなリューリの声が戦場に響いた。
援護を頼まれたアルトだが、必要ないかなと思わず思ってしまう程の彼女の戦い。
状況とクラス、スキルがガッチリと組み合わさったのだろう。リューリの活躍にアルトも負けじと小太刀を構え直したのだった。
●エヴァンス・カルヴィ(ka0639)
「青木の野郎……」
戦いの最中というのに、この赤毛の傭兵は別の歪虚――青木燕太郎――の事を考えていた。
東方、詩天での斬り合いが不完全燃焼だったのか、獰猛な何かが渦巻いている。
「次に戦う時が来たら、あの時の借りは、必ず返すぜ」
強力な歪虚であるがどことなく、自分にも似ている……そんな風にも感じながら。
「とりあえず、今は、目の前の有象無象を蹴散らしてからな!」
エヴァンスは愛剣を大きく振りかぶった。
愛馬はその動きにバランスを崩さないようにしっかりと大地を踏む。
「いくぜセラフ! 他の奴に、獲物を奪わせんなよ!」
言葉と共に愛剣を薙ぎ払う。
かなりの数の群体が剣の餌食となり、その分の反撃が彼を襲うが、その程度で怯む事はない。
群体は数え切れない程居るのだが、その方が彼にとっては気合が入るようで、知らず知らず口元が不敵に緩んだ。
「俺は敵が増えりゃ増える程、強けりゃ強い程、燃えてくる性質なんだよぉ!!」
次は、必ず強烈で致命的な一撃を、あの歪虚へ叩き込むと決意しながら、戦士は吠えた。
●連城 壮介(ka4765)
ヒーリングポーションを一口で飲み終わると、壮介は小太刀を構え直した。
戦闘の経過が全体でどうなっているのか分からないが、今回、それを知った所で壮介が出来る事は変わらない。
「前回は無茶した挙句に結局、お手を煩わせる事になるとは。何たる体たらく……」
重体を押して無茶をした結果、結局、“彼ら”に救われた。
壮介はそうとは思っていないが、その『結果』も、“彼ら”の心に響くものがあったのだが。
「ご迷惑お掛けした分は、何とか此処で返したいですが、最後まで走り抜けられるでしょうか」
そんな不安を口にした。
群体の反撃からはさすがに無傷とはいかない。それでも、なるべくなら効率を落としたくないとも思う。
「……考えても仕方ありません。斬れば分かりますか……参ります」
決意するように静かに言うと、身体のマテリアルを集中する。
一体でも多く、群体を斬り伏せる事は、必ず征西部隊の道を開く事なのだから。
膝が崩れない限り、体が動く限り、戦い続ける――それが侍というものだ。
●夜桜 奏音(ka5754)
符が飛び交う。その先で光り輝く結界が展開され、群体が焼け消えていく。
「この見渡す限りの群体の向こう側に、征西部隊の皆さんがいるんですね」
おびただしい群体の数の為、征西部隊がどこに居るか検討もつかない。
それでも、奏音は東に向かって符術を行使続ける。
「あと少しなんですから、無茶しないでくださいよ」
祈るように呟いた奏音は、そう願わずにはいられなかった。
多くの障害を乗り越えて、東方からここまで来たのだ。それを最後の最後でしくじってしまっては今までの道のりが無駄になってしまう。
奏音は群体の反撃を重厚な盾の背後に隠れて凌ぎ切ると、次の目標に向かって符を投げつける。近接職が当てられない遠方を可能な限り狙う。
「征西部隊が無事でいられるように、少しでも多くの歪虚を減らします」
その想いは奏音だけはなく、他のハンター達も同じ事だろう。
そして、それは討伐していく数に見える事が出来る。周囲を見渡した奏音はハンター達がかなりの数の群体を打倒していると感じた。
●紅薔薇(ka4766)
全体の戦闘の経過は、紅薔薇の目から見ても順調のように見えた。
「銀殿らがよくやっているようじゃの」
チラりと横目で確認する。
ならば、その動きを側面から支援するのみだ。
黒主と名のゴースロン種の馬の背から刀を振り下ろしながら駆ける。
その度に群体の反撃が向かって来るが、俊敏な動きと見事な手網捌きで避け、あるいは、盾で受け止める。ただの盾ではない。王国の名工がアークエルスの魔術師らと共同開発した盾の一つであり、闇の属性を持つ。
「闇を打ち払うは光、闇を受け止めるは闇、じゃな」
群体からの反撃は闇の属性に限られている。
それを盾で受け止める事ができれば、威力を大幅に減退できるのだ。
視線の先に征西部隊が見えて来た。いくつか隊を分けているようだ。
「どこか一つでも突破できればという事かの」
広い台地の上で合流するのは困難だ。だが、どこか1隊でも合流すれば、ある意味、道は繋がるとも言える。
苦戦を続けるように前に進む征西部隊に向かって紅薔薇は周囲に向かって叫んだ。
「敵を踏みつぶし、斬り捨てて前へ! 征西部隊に我らがここに居る事を知らせるのじゃ!!」
●ローエン・アイザック(ka5946)
合流は目の前に迫っている。ハンター達の踏ん張りも、もう、あと少しだ。
「ちょっと無茶するハンターが多いようだね」
群体の反撃はどこを狙ってくるか分からない。
多くのハンター達は防備を固めて来てはいるが、防具の隙間を直撃するのは防ぎようがないからだ。
攻撃する群体が多ければ多いほど、多くの群体からの反撃を受ける。結局は確率の問題かもしれないが、反撃数が多ければ多いほど、そうした急所を直撃する可能性は高くなる。
「脱落者が出ないようにしないとですね」
ハンター達は各自、回復手段を確保して来ているが、自己回復する場合は、その分、手数が減ってしまう。
戦える人数が減ってしまえば、その分、殲滅数は少なくなる。
なので、ローエンは回復をメインに捉えて行動していたのだ。
「必要なら庇う事も視野には入れましたが……」
傍に居なければ庇う事は難しいようであった。
重たい鎧が恨めしいが、万が一の事を思えば仕方がない事だ。
「あんまり重装備はしないから重いねえ」
苦笑を浮かべつつ、ローエンは再び魔法を行使した。仲間を守る為に、それが、征西部隊への最大の援護になると信じ。
●Gacrux(ka2726)
「なるほど、そういう事でしたか」
群体の反撃を受け流し、Gacruxは周囲を見渡した。
かなりの範囲に広がってハンター達は群体を倒し続けている。
ハンターオフィスが提示された討伐数は征西部隊の突破の援護の為だ。
「合流するまでどの位かかるか分かりませんからね」
どこで合流できるか分からない以上、広く討伐する必要があるからだ。
本来であれば、征西部隊の突入路を作るように群体を討伐できればいいのだが、広い台地の上に視界いっぱいに広がる群体の為、それは困難と思われた。
「既に誰かが煙を上げていますが、無駄という事はないでしょう」
Gacruxはそう言いながら、発煙手榴弾を使う。
合流地点の目安が分かっていれば、その分早く進行方向が定まるというものだ。
「さて……高位歪虚は存在していないようですが、念の為、警戒が必要ですね」
これだけの規模で暴食に属する歪虚が群れているのだ。これらを操る存在が居ても不思議ではない。
結局、そんな存在は見つける事は出来なかった。Gacruxは違和感を抱きながら征西部隊と合流したのであった。
●希望に至る路
不気味に微動しながら蠢く群体。
暴食に属する歪虚であるのは分かっているが詳しい事は分からない。吹き溜まりなのか掃き溜めなのか、ともかく様々なアンデットみたいのが入り混じって群れを成していた。
呪いの言葉を吐くように何か発しているが、声なのか、単なる音なのかも分からないが、一つだけ分かる事があった。
「七葵、推して参る!」
1人の侍が剣葵を煌めかせながら群体へと突撃した。
敵がなんだか分からないが、これらを突破し、征西部隊と合流する。それが分かっているだけで十分だ。
七葵(ka4740)は振り抜いた刀を取って返して駆けざまに群体を切り刻んでいく。
群体を倒して空いたスペースにドロテア・フレーベ(ka4126)が滑り込みながら、さらに奥の群体に向かった。
「これは、うんざりする数ね。終わったら一杯やりたいわ」
見渡す限り気色悪い群体ばかりだ。そう思わずにはいられないのだろう。
「まったく、壮観な眺めだねぇ。んま、とっとと、終わらせて飲みにでも行こうぜ」
緑の鉢巻きを巻いている劉 厳靖(ka4574)も、そんな言葉を発した。
厳靖と背中合わせで戦っていた銀 真白(ka4128)が群体の反撃を受け流しながら声をあげる。
「油断は禁物ですよ」
その通りだ。特にただ倒すだけではない。
群体を倒した所で生まれるスペースに入り込んで、さらに奥の群体を倒していく。
タイミングが重要であり、どこかで綻びが生じれば、意図する事が失われる。
「この怒号は東から聞こえるな……征西部隊の突撃か」
微かに聞こえる音に厳靖は眉をひそめた。
もう少し待てば無事に突破できる可能性もあるというのに。
しかし、向こうもこちらの状況が分からない故、突撃は妥当な所だろう。
「『希望』まで、後一息まで来た……」
真白が槍を持つ手に力を込めた。
天ノ都を出発して、死地を乗り越えて来た。災狐をも退けた。
そして、最後の最後、ようやくここまでたどり着いたのだ。しかも、飢えを承知の上でハンター達が来ると信じて待ってくれていた。
「この緑の鉢巻にかけても……この道、推し通らせて貰う!」
白銀の雪が宙で輝くように真白の周囲をマテリアルが包み込む。
そんな友の真剣な姿に、ドロテアは微笑を浮かべた。真白の人柄はよく知っている。だからこそ、力になれればいい。
それに、征西部隊とは乗りかかった縁である。協力する理由には十分過ぎるだろう。
「ここが正念場なのよね? さあ、行くわよ!」
マテリアルを集中し、全身の肌に鮮血のような妖しさの曼珠沙華模様が現われた。
白銀が切り開いた所へ文字通り、身を投げ出しながら群体を打ち倒していく。
呻き声を上げながら反撃を繰り出してくる群体に対し、ドロテアは叫んだ。
「亡者だか何だか知らないけど、生きてるヒトの邪魔すんじゃないわよ!」
絶望し死ぬ事を願った、あるいは、覚悟した“彼ら”は、希望へと向かって歩み始めたのだ。
その歩みを邪魔させない。そんな気迫を感じ、厳靖もマテリアルを集中させる。
両腕の幻影が一つに絡みながら交じり合うと紫紺の龍となった。それは、彼の持つ槍に纏わる。
「おらよっ!」
群体を豪快に薙ぎ払う。
その反撃を受け止めている間にも、厳靖の脇を七葵が駆ける。
切り開いて道を作るのは、正秋だけではなく、征西部隊の為だけでもない。
歪虚によって隔たれた東方と西方。その為、東方は孤独な戦いを続けていた。徐々に勢力域を失い、絶望しか見えない時期もあったはずだ。
獄炎を倒し、大きな危機は去った。だが、転移門で繋がっているとはいえ、孤独である事は変わらないと思う民も居るだろう。
征西部隊の西方遠征の成功は、そんな東方の民の未来を拓く道ともなり得るはずだ。
「征けぇぇぇ!!!」
腹の底から、いや、魂の奥底から、七葵は叫ぶ。
その声が届いたのか、偶然なのか、必然だったのか――まだ姿は見えていないはずなのに、征西部隊からの声がハンター達に届く。
「正秋殿のっ!」
「声だ!」
思わず、真白と七葵の目と声が合わさる。
合流は出来るだけ早い方が良い。となると、ハンター達が切り開いているスペースへの誘導が良いのだが……。
真白は笛を鳴らすが、どこまで聞こえているか分からない。
「ここまで来ているのに……」
悔しさで歯軋りする真白に対して、ドロテアが片目を閉じながら言った。
「だったら、七葵君みたいに声を響かせなさい。きっと……きっと、通じるわよ」
「そうだぜ。こういうのはな、最後は気合だ」
おっさん面の厳靖がニコっと口元を緩めながらドロテアの言葉に追随する。
妙に説得力があるのは、人生としての場数の違いなのだろうか。
再び顔を見合わせた真白と七葵は頷き合うと、大声で叫ぶ。
希望に至る路はここにあると。
●ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
「目指せ! ただひたすら、西へ! 皆でGOウェストなんだからっ!」
見えてきた征西部隊の隊員らに向かって叫ぶルンルン。
「ルンルン忍法とカードの力を駆使して、征西部隊の突破を支援しちゃいますから!」
マテリアルに反応して、前腕部に取り付けられた半円状の盾の全面が展開すると、符が並ぶ。
リアルブルーで崇高な決闘に用いられそうな、そんな雰囲気の盾だが、符術を行使する際にも使えるのだ。
(うっかり、盾しか持って来なかったから焦ったけど……)
姿的には両手に盾である。どれだけ盾好きなのかと疑われても弁明できまい。
ただ、群体からの反撃を受け止めるには意味があったはずだ。
征西部隊らに突入の最適場所をナビゲートする為に用意していた口伝符を掲げた。
「こんな事もあろうかと! って、あ……」
どうやって口伝符を渡そうかと悩む。征西部隊に渡らなければ意味が無いからだ。
その時、運命のいたずらか、誰かのイヌワシが口伝符を掻っ攫って――征西部隊へと向かって飛んで行った。
「結果、オーライなのですっ!」
思わず、そう叫ばずにはいられなかったルンルンだった。
●ボルディア・コンフラムス(ka0796)
広い台地の上で戦闘が続けられている。
ハンター達は其々が持てる全力を出し戦い、それはボルディアも同様だった。
「……テメェ等にかまけてる時間はねぇ」
奥義を駆使し、広範囲を薙ぎ払う。その分、反撃は猛烈であった。覚醒者としての能力も使うが回復が間に合わない。
だが、ゆっくりしていられない事情もある。征西部隊の突撃も開始されているからだ。
「さっさと道を空けやがれ! 雑魚共ォ!!」
大地が揺れるかと思うほどボルディアは叫んだ。
それで怯む群体ではないが、叫ばずにはいられない。征西部隊の兵糧は尽きかけているはずだ。飢えからくる体力の消耗は戦場で極めて危険だ。
どの位、群体の中を突破しただろうか、隊員らの姿が見えた。見るからに疲労困憊な様子だ。
「こんなところで、死ぬんじゃねぇぞ、テメェ等ァ!」
強引に群体の中を突き進み、合流を果たすボルディア。
「これで、全員か?」
「突破口を作るのにいくつか隊を分けている。にしても、助かる」
「よし! 援護するぜ。こんな掃き溜めみたいな場所で死んでも、天国には行けそうにねぇからな!」
ボルディアが先頭に立って来た道へと向かって戦槍を向けた。
●ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)&シェルミア・クリスティア(ka5955)
勝利と栄光のシンボル――とも言われる月桂樹から剣の形に削り出された木剣でユーリは群体を薙ぎ払う。
「託された願いと祈りをこの胸に抱き……絶望も悲しみも、全部断ち斬る」
得体のしれない群体。分かるのは、それが暴食に属する歪虚である事だ。
征西部隊を阻む最後の『壁』。突破が容易ではないのは、すぐに分かった。
「……こんな所で閉ざさせない。私に託した三人の遺志に応える為にも」
騒がしい三兄弟の姿を思い出す――防御が大事だと教えた事――陣地作りの最中の差し入れ――今、改めて思い返しても――暑苦しい連中だった。
「切り開いてみせる。彼等の未来を閉ざさせない為に、私自身の為にっ! シェリィ!」
意を決したユーリは盾を掲げた。
それは、友人であるシェルミアとの連携の為だ。
「ユーリさん……分かりました。お願いします」
僅かな逡巡。姉の親友の覚悟を感じ、シェルミアは符を掲げた。
符術を行使する。その多くの敵を巻き込ませる事ができるが、それは同時に多数の反撃を生む。それらをユーリは庇うつもりなのだ。
「私の友人に手を出させない。代わりに全てを受け止めてみせるっ!」
二人での連携は征西部隊との合流まで続けられた。無傷とはいかなかったが、求められる以上よりも多くの群体を排除した。
「行って来ていいよ、シェリィ」
親愛する友の妹の背中をユーリは押した。
戦いは終わった。征西部隊は無事に最後の『壁』を突破したのだから。
「生き残ったようだ。これから先も決まらないのに、な」
「ありがとうございます」
瞬と正秋の二人が、押されるように前に出たシェルミアに言った。
「先の事なんて、幾らでも迷っていいと思うよ。ホープに着いて、考えたって良いと思う」
「まったく、お節介な女だ」
呆れたような瞬の言葉に、シェルミアは人差し指を口に当てた。
「わたしのお節介は続くよ? 目を付けられたと思って観念してね」
「深入りさせて申し訳ない」
丁寧に謝る正秋に対して笑顔をシェルミアは向けた。
「君達の未来に期待してるんだから」
「俺の時と正秋で、えらく態度が違うな」
「当たり前でしょ」
シェルミアは瞬の言葉に即答する。
そんな若者達の楽しげなやり取りを眺め、ユーリは微笑を浮かべて空を仰ぐ。
あの暑苦しい三兄弟の豪快な笑い声が――聞こえた気がしたからだった。
ハンター達の活躍により、ハンターオフィスが想定した数よりも倍以上の群体を討伐。
その援護を受けて征西部隊は無事に台地を突破した。幾人か負傷したが戦死者は出さず、征西部隊は西方世界へと到着したのであった。
そして、希望の大地へと続く。
●Uisca Amhran(ka0754)&アルラウネ(ka4841)
いつもよりも女子力()を調整した為、黒スーツの男装でUiscaは戦い続けた。
攻守共に申し分なく、大なり小なり怪我人が多い中、無傷で征西部隊と合流した。それは、無理はせずに堅実に刀を振るい続けたアルラウネも同様だった。
「ノゾミちゃん!」
「大丈夫……みたいだね」
合流するなり、紡伎 希(kz0174)の姿を見かけた。
パッと見、元気そうだ。
微笑みを浮かべながら、Uiscaはそっと希に告げる。
「イケメンさんに、宣戦布告をしてきたよ……ノゾミちゃんも、それでいいよね?」
因縁深いある歪虚との決着の時が近付いているはずだ。
希は真剣な表情で、西の方角を見つめる。
「はい……ただ……戦わないといけないと分かっているのですが……」
何か引っかかるものがあるのですと希は言葉を続けた。
Uiscaはそんな希の肩をポンと叩く。
「それを探しながらでも、ね」
慌てる事はもう無い。
征西部隊がホープに到着すれば、希の仕事も一段落する。希の思う事を探すのは、それからでも遅くはないのだから。
これから先、どんな運命が待っているのか――きっと、希望ある未来だと信じたい。
「しんみりしちゃって!」
アルラウネが満面の笑みで希に言った。
兵糧が残り少ないという話しは耳に入っている。希も満足いく食事を摂っていないはずだ。
「まずは、しっかりと食べないと」
「もともと少食ですけど」
「健康的な食事をしないと、大きくならないわよ~?」
豊かな双丘を強調するように持ち上げて力説するアルラウネ。
希の視線がアルラウネと自身の胸と交互に移る。
「そうですよ、ノゾミちゃん。女子力もまずは健康的な食事が大事です」
自信満々に力説するUiscaが胸を張った。ある意味、追い打ちをかけているともいえようか。
希は、Uiscaのそれと自身の控えめな胸を比べ――。
「今からでも間に合えば良いですけど……」
と言い訳するように胸に手を当てた。
思えば『あの時』を迎えるまでは、その日の食事にも困るような生活をしていたのだ。水しか口にしなかった日もあった。
「どうか、間に合いますように……」
希は小さく同じ言葉を繰り返した。
●55⇒55
スキルと防具を最大限に活かし、順当に群体を駆逐して危なげもなく戦い抜いた龍崎・カズマ(ka0178)は征西部隊と合流した。
あらかじめ、ハンター達の位置をカズマが発煙手榴弾で知らせていたのもあって、征西部隊との合流は速やかだった為か、怪我人は居たが戦死者は出ていない。
「本当に、カズマ君は僕が意図する事をやってくれるよね」
全身血だらけの鳴月 牡丹(kz0180)が声を掛けてきた。
普段は頭の上に結いている美しい茶髪も髪留めが外れて無造作に流れている。ここまでの激戦が伺いしれた。
「むしろ、依頼の要件の中に入れておけ」
広大な台地の上だ。視界は群体で塞がれている以上、双方の合流は難しい。
ハンターオフィスが明示した討伐数は、そんな状態でも突破を支援する為の最低限考えられる数だったのだろう。
「風が強くなくて良かったよ。君らは運が良い」
「運が良いのは、この場合、牡丹達の方だろ」
苦笑を浮かべながらカズマはポーションを牡丹へと渡した。
牡丹は血だらけの手でそれを受け取ると満面の笑みをチラっと見せ――ぐっと一気に呷ったのだった。
魔導エンジンが唸る。
味方への巻き込みを避ける為、そして、攻撃すれば同等の威力で反撃してくる群体の性質を考え、クリスティンは一気に仲間達と距離を取った。
「ひたすら倒すだけだな」
小難しい事は考える必要はない。
ただ黙々と群体を倒し続ければいいのだ。
中華風の太刀を構えると守りにも意識を向けながら、一気に薙ぎ払う。
群体共がその衝撃で塵と化していき、同時に負のマテリアルが襲う。
「想定通りだ」
盾を構えて反撃を受け止めるが、中には僅かな隙間を抜けてくるものもある。
そうした急所を突かれる可能性があるのは予想していた。それを見越してスキルをセットしてきたのだ。
振り抜いた太刀を再び上段に構えながら、開いた空間にバイクを進ませる。
見渡す限り群体が広がっているが、無限という事はないはずだ。ハンター達の猛攻は、この吹き溜まりみたいな台地の上を飛ばす事ができるはずだ。
「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!」
“彼ら”が突破できるように、クリスティンはただただ群体をひたすら破り続けるのであった。
●キヅカ・リク(ka0038)
見渡す限り埋め尽くす群体。
その不気味な雰囲気に似たような光景を思い出し、キヅカはうんざりとしていた。
「数年間、開けてなかった物置き……あれを彷彿とさせるよね……鳥肌止まんなくなっちゃってんだから」
かと言って、逃げ出す訳にはいかない。
魔導バイクのスロットを回した。魔導エンジンの独特のサウンドが台地の上に響き渡る。
「行く手を塞がせない。道を作るんだ」
征西部隊を迎える為に奮戦する仲間のハンター達を支援するように、彼はひたすら機導術を放つ。
威力調整した機導術の炎が、幾つもの群体を焼く――燃え去りながら、群体から放たれる嵐のような反撃。それらを盾を構えて強行突破していく。
もちろん、無傷ではない。だが、盾と鎧を上手に使っていて傷は浅い。走っては機導術を放つを繰り返し、群体の中へと深く掘り進んだ。
「……そういえば、噂で聞いた牡丹の料理ってなんだろう」
無事に突破して合流したら希ちゃんにでもこっそりと聞いてみよう。なんでも、見た目も味も奇抜というではないか。
そんな事を思いながら、キヅカは再びバイクのスロットを回した。
●ヴァイス(ka0364)&アニス・エリダヌス(ka2491)
ハンター達の怒号が、群体から発せられる呪詛のようななにかと重なる。
そんな中でも、ヴァイスの声は戦場を響かせていた。
「声を上げろ! 俺達はここに居ると!」
体内のマテリアルを燃やし、群体の目を向ける。
だが、群体は積極的に移動する様子も無かった。皆無ではないものの、まるで押し出されるように空いたスペースに群体が入るようなイメージだ。
それでもヴァイスは声を上げ、マテリアルを燃やして、剣を振るう。
「ここが正念場ですね……わたし達ならば、きっと――」
ヴァイスの背中を守るようにアニスが言葉を続ける。
「――きっと、うまくいきます。わたし達なら……」
征西部隊の前に広がる群体という名の『壁』。
死を覚悟していた“彼ら”。先の災狐との戦いで“彼ら”は、文字通りの死地を乗り越えた。
希望の大地――ホープ――への旅路をここで止めさせる訳にはいかないのだ。
「未来を照らす、希望ある光を……」
天に向かって両手を突き出すアニス。
温もりを感じるような優しい光の花びらが開くと――群体を次々に消滅させていく。
ボロボロと崩れながら、光と対照的などす黒いマテリアルが幾本にも発せられた。
「これ、ぐらい……」
盾を構えて反撃を凌ぐが全てを防ぎきれるというものではない。
崩れそうになった所で、大きな背中が眼前に現れた。
「無茶をするな」
全身を広げアニスを守るように立つ。
彼も盾を持つとはいえ、彼自身とアニスに対する反撃を受け止めているのだ。いかに頑健な歴戦の戦士とはいえ、これでは危険なはず。
「ヴァイスさん……」
「心配するな。少しは頑健に出来ているからな」
顔だけ向けて頼もしく言った戦士にアニスは深く頷いた。
掲げた聖機剣が彼女のマテリアルに反応し、ギミックが展開される。
反撃の数があればあるほど、防具のわずかな隙間に当たる可能性は高い。しかし、それを恐れていては、“彼ら”を救う事は叶わない。
「頼りに、します」
アニスの言葉に、ヴァイスは微笑を浮かべて返事をすると、盾を構えた。
仲間達と共に希望への道を切り開く為に。
●岩井崎 旭(ka0234)
「この東から来るんだよな、腹を空かせた征西部隊。しっかりバッチリ迎えの準備しねーとな」
槍を振り回して群体を吹き飛ばす旭。
同時に襲いかかる群体を避けるかナックルで受け流す。
征西部隊がどこに居るかはまだ見えない。今はひたすら戦い続けるしかないのだ。そして、それが大事な事だと旭は知っていた。そういえば、天ノ都を出る前に一緒に訓練した、あのおっさん兵士は無事だろうか。
「……にしても、半端じゃねえ数だよなァ!」
馬に乗っているにも関わらず、視界の中に映るのは、ひたすら群体である。
どれだけ居るのか、数える気にもならない。
「こいつはまさにやりがいがあるって奴だぜ。行くぜ! 突、撃ィ!!」
気合の掛け声を入れて再び槍を振るう。
敵を多く巻き込むほど、反撃も熾烈になる――が、それでも旭は景気よく豪快に戦い続けた。
傷ついてはスキルで回復。時には攻撃手段を変えてダメージを調整する。
「塵が積もったところで塵の山! 片っ端から叩き潰して吹き飛ばしてやる!」
吠えるように叫び、彼の威勢は決して緩まず、戦い続けるのであった。
●ミィリア(ka2689)
群体によって隔たれてはいるものの、“彼ら”と繋がっている。
ぎゅっと緑色の鉢巻きを締め直したミィリアは、目の前に広がる群体を睨んだ。
微かに蠢いている――そして、負のマテリアルを感じる。歪虚なのか雑魔なのか分からないが、よろしく無い存在である事は確かであり、征西部隊が西へと至る『壁』である事は確実だ。
「なんか気持ち悪いのいるけど、突撃あるのみで、ござる!」
愛馬の兼元がぶるっと武者震いした。
乗り手が重武装で重たい――という訳では決してない。戦用のメイド服なので女子力高い感じでまとまっている。
――戦用のメイド服ってなんだろうと思うが、これがミィリアがミィリアたる所以である――
彼女は、兼元の首元を優しく撫でて、落ち着かせると、白い細身の槍の穂先を天空に向けた。
「いざ、参る!!」
脚で愛馬に合図をすると、乗り手の意を読み取り、兼元は群体へと突撃する。
気合の掛け声と桜吹雪のマテリアルが舞う中、ミィリアの槍が群体を次々に消滅させていく。
反撃はあるが、気にもせずに槍を繰り返し振り回す侍は群体の奥深くへと突き進んだ。
●リューリ・ハルマ(ka0502)&アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)
群体の反撃は執拗だ。
多くの者が群体の反撃に対し防備を固めていたが、アルトは自身の持ち前を最大限に活かした戦い方を演じていた。
「行ける。これなら、打ち込んでいける」
リズムに乗って来たと感じられた。
群体からの鋭い反撃を、身体を捻って回避すると共に反動で小太刀を振るう。
それを駆けながら行うのだ。もちろん、全ての反撃を捌くのは無理があるが、当たりそうになった攻撃に対し武器で受け止める。
「アルトちゃん! 左側に行けるよ!」
叫ぶようなリューリの声がアルトの耳に入って来た。
霊闘士としての奥義を発動し、幻影を纏ったリューリは巨人のようにも思える威圧感を放っていた。
大親友の指示に爽やかな表情で頷くとアルトは小太刀を構え直し、姿勢を低く落として駆ける。そのまま駆けながら群体を切り倒していく。
「群体全体に組織的な動きはないみたいだ」
攻撃を続けながらアルトは観察した結果を口にした。
群体を消滅させたスペースに、群体がどのような動きをみせるのか注意深く見ていた。結果、空いたスペースになだれ込んでくるという心配はないようだった。それは、囲まれるという心配もないだろう。
「合流もしないみたいだね」
リューリも同様の感想を呟く。
蠢く群体同士を切り裂いた後の動きは無かった。切り離された群体はそのままだ。
不気味な呪詛のような叫びを発しているだけで積極的に移動するという風には見られない。
「まさしく、吹き溜まりだ」
「囲まれる心配がないなら、アルトちゃん、援護をよろしくね!」
包囲される心配がないという事は全力を出して前に集中できる。
リューリは一度切れた奥義を再び発動させた。多少の傷はスキルで回復できるので、あとはどれだけ敵を巻き込んで倒せるかだ。
綺麗な金髪の先端が紫色に染まり――リューリが武器を振るう度に、紫色の髪先が彼女の周囲を色付けていく。
「いっくよぉ!!」
楽しげとも受け取れそうなリューリの声が戦場に響いた。
援護を頼まれたアルトだが、必要ないかなと思わず思ってしまう程の彼女の戦い。
状況とクラス、スキルがガッチリと組み合わさったのだろう。リューリの活躍にアルトも負けじと小太刀を構え直したのだった。
●エヴァンス・カルヴィ(ka0639)
「青木の野郎……」
戦いの最中というのに、この赤毛の傭兵は別の歪虚――青木燕太郎――の事を考えていた。
東方、詩天での斬り合いが不完全燃焼だったのか、獰猛な何かが渦巻いている。
「次に戦う時が来たら、あの時の借りは、必ず返すぜ」
強力な歪虚であるがどことなく、自分にも似ている……そんな風にも感じながら。
「とりあえず、今は、目の前の有象無象を蹴散らしてからな!」
エヴァンスは愛剣を大きく振りかぶった。
愛馬はその動きにバランスを崩さないようにしっかりと大地を踏む。
「いくぜセラフ! 他の奴に、獲物を奪わせんなよ!」
言葉と共に愛剣を薙ぎ払う。
かなりの数の群体が剣の餌食となり、その分の反撃が彼を襲うが、その程度で怯む事はない。
群体は数え切れない程居るのだが、その方が彼にとっては気合が入るようで、知らず知らず口元が不敵に緩んだ。
「俺は敵が増えりゃ増える程、強けりゃ強い程、燃えてくる性質なんだよぉ!!」
次は、必ず強烈で致命的な一撃を、あの歪虚へ叩き込むと決意しながら、戦士は吠えた。
●連城 壮介(ka4765)
ヒーリングポーションを一口で飲み終わると、壮介は小太刀を構え直した。
戦闘の経過が全体でどうなっているのか分からないが、今回、それを知った所で壮介が出来る事は変わらない。
「前回は無茶した挙句に結局、お手を煩わせる事になるとは。何たる体たらく……」
重体を押して無茶をした結果、結局、“彼ら”に救われた。
壮介はそうとは思っていないが、その『結果』も、“彼ら”の心に響くものがあったのだが。
「ご迷惑お掛けした分は、何とか此処で返したいですが、最後まで走り抜けられるでしょうか」
そんな不安を口にした。
群体の反撃からはさすがに無傷とはいかない。それでも、なるべくなら効率を落としたくないとも思う。
「……考えても仕方ありません。斬れば分かりますか……参ります」
決意するように静かに言うと、身体のマテリアルを集中する。
一体でも多く、群体を斬り伏せる事は、必ず征西部隊の道を開く事なのだから。
膝が崩れない限り、体が動く限り、戦い続ける――それが侍というものだ。
●夜桜 奏音(ka5754)
符が飛び交う。その先で光り輝く結界が展開され、群体が焼け消えていく。
「この見渡す限りの群体の向こう側に、征西部隊の皆さんがいるんですね」
おびただしい群体の数の為、征西部隊がどこに居るか検討もつかない。
それでも、奏音は東に向かって符術を行使続ける。
「あと少しなんですから、無茶しないでくださいよ」
祈るように呟いた奏音は、そう願わずにはいられなかった。
多くの障害を乗り越えて、東方からここまで来たのだ。それを最後の最後でしくじってしまっては今までの道のりが無駄になってしまう。
奏音は群体の反撃を重厚な盾の背後に隠れて凌ぎ切ると、次の目標に向かって符を投げつける。近接職が当てられない遠方を可能な限り狙う。
「征西部隊が無事でいられるように、少しでも多くの歪虚を減らします」
その想いは奏音だけはなく、他のハンター達も同じ事だろう。
そして、それは討伐していく数に見える事が出来る。周囲を見渡した奏音はハンター達がかなりの数の群体を打倒していると感じた。
●紅薔薇(ka4766)
全体の戦闘の経過は、紅薔薇の目から見ても順調のように見えた。
「銀殿らがよくやっているようじゃの」
チラりと横目で確認する。
ならば、その動きを側面から支援するのみだ。
黒主と名のゴースロン種の馬の背から刀を振り下ろしながら駆ける。
その度に群体の反撃が向かって来るが、俊敏な動きと見事な手網捌きで避け、あるいは、盾で受け止める。ただの盾ではない。王国の名工がアークエルスの魔術師らと共同開発した盾の一つであり、闇の属性を持つ。
「闇を打ち払うは光、闇を受け止めるは闇、じゃな」
群体からの反撃は闇の属性に限られている。
それを盾で受け止める事ができれば、威力を大幅に減退できるのだ。
視線の先に征西部隊が見えて来た。いくつか隊を分けているようだ。
「どこか一つでも突破できればという事かの」
広い台地の上で合流するのは困難だ。だが、どこか1隊でも合流すれば、ある意味、道は繋がるとも言える。
苦戦を続けるように前に進む征西部隊に向かって紅薔薇は周囲に向かって叫んだ。
「敵を踏みつぶし、斬り捨てて前へ! 征西部隊に我らがここに居る事を知らせるのじゃ!!」
●ローエン・アイザック(ka5946)
合流は目の前に迫っている。ハンター達の踏ん張りも、もう、あと少しだ。
「ちょっと無茶するハンターが多いようだね」
群体の反撃はどこを狙ってくるか分からない。
多くのハンター達は防備を固めて来てはいるが、防具の隙間を直撃するのは防ぎようがないからだ。
攻撃する群体が多ければ多いほど、多くの群体からの反撃を受ける。結局は確率の問題かもしれないが、反撃数が多ければ多いほど、そうした急所を直撃する可能性は高くなる。
「脱落者が出ないようにしないとですね」
ハンター達は各自、回復手段を確保して来ているが、自己回復する場合は、その分、手数が減ってしまう。
戦える人数が減ってしまえば、その分、殲滅数は少なくなる。
なので、ローエンは回復をメインに捉えて行動していたのだ。
「必要なら庇う事も視野には入れましたが……」
傍に居なければ庇う事は難しいようであった。
重たい鎧が恨めしいが、万が一の事を思えば仕方がない事だ。
「あんまり重装備はしないから重いねえ」
苦笑を浮かべつつ、ローエンは再び魔法を行使した。仲間を守る為に、それが、征西部隊への最大の援護になると信じ。
●Gacrux(ka2726)
「なるほど、そういう事でしたか」
群体の反撃を受け流し、Gacruxは周囲を見渡した。
かなりの範囲に広がってハンター達は群体を倒し続けている。
ハンターオフィスが提示された討伐数は征西部隊の突破の援護の為だ。
「合流するまでどの位かかるか分かりませんからね」
どこで合流できるか分からない以上、広く討伐する必要があるからだ。
本来であれば、征西部隊の突入路を作るように群体を討伐できればいいのだが、広い台地の上に視界いっぱいに広がる群体の為、それは困難と思われた。
「既に誰かが煙を上げていますが、無駄という事はないでしょう」
Gacruxはそう言いながら、発煙手榴弾を使う。
合流地点の目安が分かっていれば、その分早く進行方向が定まるというものだ。
「さて……高位歪虚は存在していないようですが、念の為、警戒が必要ですね」
これだけの規模で暴食に属する歪虚が群れているのだ。これらを操る存在が居ても不思議ではない。
結局、そんな存在は見つける事は出来なかった。Gacruxは違和感を抱きながら征西部隊と合流したのであった。
●希望に至る路
不気味に微動しながら蠢く群体。
暴食に属する歪虚であるのは分かっているが詳しい事は分からない。吹き溜まりなのか掃き溜めなのか、ともかく様々なアンデットみたいのが入り混じって群れを成していた。
呪いの言葉を吐くように何か発しているが、声なのか、単なる音なのかも分からないが、一つだけ分かる事があった。
「七葵、推して参る!」
1人の侍が剣葵を煌めかせながら群体へと突撃した。
敵がなんだか分からないが、これらを突破し、征西部隊と合流する。それが分かっているだけで十分だ。
七葵(ka4740)は振り抜いた刀を取って返して駆けざまに群体を切り刻んでいく。
群体を倒して空いたスペースにドロテア・フレーベ(ka4126)が滑り込みながら、さらに奥の群体に向かった。
「これは、うんざりする数ね。終わったら一杯やりたいわ」
見渡す限り気色悪い群体ばかりだ。そう思わずにはいられないのだろう。
「まったく、壮観な眺めだねぇ。んま、とっとと、終わらせて飲みにでも行こうぜ」
緑の鉢巻きを巻いている劉 厳靖(ka4574)も、そんな言葉を発した。
厳靖と背中合わせで戦っていた銀 真白(ka4128)が群体の反撃を受け流しながら声をあげる。
「油断は禁物ですよ」
その通りだ。特にただ倒すだけではない。
群体を倒した所で生まれるスペースに入り込んで、さらに奥の群体を倒していく。
タイミングが重要であり、どこかで綻びが生じれば、意図する事が失われる。
「この怒号は東から聞こえるな……征西部隊の突撃か」
微かに聞こえる音に厳靖は眉をひそめた。
もう少し待てば無事に突破できる可能性もあるというのに。
しかし、向こうもこちらの状況が分からない故、突撃は妥当な所だろう。
「『希望』まで、後一息まで来た……」
真白が槍を持つ手に力を込めた。
天ノ都を出発して、死地を乗り越えて来た。災狐をも退けた。
そして、最後の最後、ようやくここまでたどり着いたのだ。しかも、飢えを承知の上でハンター達が来ると信じて待ってくれていた。
「この緑の鉢巻にかけても……この道、推し通らせて貰う!」
白銀の雪が宙で輝くように真白の周囲をマテリアルが包み込む。
そんな友の真剣な姿に、ドロテアは微笑を浮かべた。真白の人柄はよく知っている。だからこそ、力になれればいい。
それに、征西部隊とは乗りかかった縁である。協力する理由には十分過ぎるだろう。
「ここが正念場なのよね? さあ、行くわよ!」
マテリアルを集中し、全身の肌に鮮血のような妖しさの曼珠沙華模様が現われた。
白銀が切り開いた所へ文字通り、身を投げ出しながら群体を打ち倒していく。
呻き声を上げながら反撃を繰り出してくる群体に対し、ドロテアは叫んだ。
「亡者だか何だか知らないけど、生きてるヒトの邪魔すんじゃないわよ!」
絶望し死ぬ事を願った、あるいは、覚悟した“彼ら”は、希望へと向かって歩み始めたのだ。
その歩みを邪魔させない。そんな気迫を感じ、厳靖もマテリアルを集中させる。
両腕の幻影が一つに絡みながら交じり合うと紫紺の龍となった。それは、彼の持つ槍に纏わる。
「おらよっ!」
群体を豪快に薙ぎ払う。
その反撃を受け止めている間にも、厳靖の脇を七葵が駆ける。
切り開いて道を作るのは、正秋だけではなく、征西部隊の為だけでもない。
歪虚によって隔たれた東方と西方。その為、東方は孤独な戦いを続けていた。徐々に勢力域を失い、絶望しか見えない時期もあったはずだ。
獄炎を倒し、大きな危機は去った。だが、転移門で繋がっているとはいえ、孤独である事は変わらないと思う民も居るだろう。
征西部隊の西方遠征の成功は、そんな東方の民の未来を拓く道ともなり得るはずだ。
「征けぇぇぇ!!!」
腹の底から、いや、魂の奥底から、七葵は叫ぶ。
その声が届いたのか、偶然なのか、必然だったのか――まだ姿は見えていないはずなのに、征西部隊からの声がハンター達に届く。
「正秋殿のっ!」
「声だ!」
思わず、真白と七葵の目と声が合わさる。
合流は出来るだけ早い方が良い。となると、ハンター達が切り開いているスペースへの誘導が良いのだが……。
真白は笛を鳴らすが、どこまで聞こえているか分からない。
「ここまで来ているのに……」
悔しさで歯軋りする真白に対して、ドロテアが片目を閉じながら言った。
「だったら、七葵君みたいに声を響かせなさい。きっと……きっと、通じるわよ」
「そうだぜ。こういうのはな、最後は気合だ」
おっさん面の厳靖がニコっと口元を緩めながらドロテアの言葉に追随する。
妙に説得力があるのは、人生としての場数の違いなのだろうか。
再び顔を見合わせた真白と七葵は頷き合うと、大声で叫ぶ。
希望に至る路はここにあると。
●ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
「目指せ! ただひたすら、西へ! 皆でGOウェストなんだからっ!」
見えてきた征西部隊の隊員らに向かって叫ぶルンルン。
「ルンルン忍法とカードの力を駆使して、征西部隊の突破を支援しちゃいますから!」
マテリアルに反応して、前腕部に取り付けられた半円状の盾の全面が展開すると、符が並ぶ。
リアルブルーで崇高な決闘に用いられそうな、そんな雰囲気の盾だが、符術を行使する際にも使えるのだ。
(うっかり、盾しか持って来なかったから焦ったけど……)
姿的には両手に盾である。どれだけ盾好きなのかと疑われても弁明できまい。
ただ、群体からの反撃を受け止めるには意味があったはずだ。
征西部隊らに突入の最適場所をナビゲートする為に用意していた口伝符を掲げた。
「こんな事もあろうかと! って、あ……」
どうやって口伝符を渡そうかと悩む。征西部隊に渡らなければ意味が無いからだ。
その時、運命のいたずらか、誰かのイヌワシが口伝符を掻っ攫って――征西部隊へと向かって飛んで行った。
「結果、オーライなのですっ!」
思わず、そう叫ばずにはいられなかったルンルンだった。
●ボルディア・コンフラムス(ka0796)
広い台地の上で戦闘が続けられている。
ハンター達は其々が持てる全力を出し戦い、それはボルディアも同様だった。
「……テメェ等にかまけてる時間はねぇ」
奥義を駆使し、広範囲を薙ぎ払う。その分、反撃は猛烈であった。覚醒者としての能力も使うが回復が間に合わない。
だが、ゆっくりしていられない事情もある。征西部隊の突撃も開始されているからだ。
「さっさと道を空けやがれ! 雑魚共ォ!!」
大地が揺れるかと思うほどボルディアは叫んだ。
それで怯む群体ではないが、叫ばずにはいられない。征西部隊の兵糧は尽きかけているはずだ。飢えからくる体力の消耗は戦場で極めて危険だ。
どの位、群体の中を突破しただろうか、隊員らの姿が見えた。見るからに疲労困憊な様子だ。
「こんなところで、死ぬんじゃねぇぞ、テメェ等ァ!」
強引に群体の中を突き進み、合流を果たすボルディア。
「これで、全員か?」
「突破口を作るのにいくつか隊を分けている。にしても、助かる」
「よし! 援護するぜ。こんな掃き溜めみたいな場所で死んでも、天国には行けそうにねぇからな!」
ボルディアが先頭に立って来た道へと向かって戦槍を向けた。
●ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)&シェルミア・クリスティア(ka5955)
勝利と栄光のシンボル――とも言われる月桂樹から剣の形に削り出された木剣でユーリは群体を薙ぎ払う。
「託された願いと祈りをこの胸に抱き……絶望も悲しみも、全部断ち斬る」
得体のしれない群体。分かるのは、それが暴食に属する歪虚である事だ。
征西部隊を阻む最後の『壁』。突破が容易ではないのは、すぐに分かった。
「……こんな所で閉ざさせない。私に託した三人の遺志に応える為にも」
騒がしい三兄弟の姿を思い出す――防御が大事だと教えた事――陣地作りの最中の差し入れ――今、改めて思い返しても――暑苦しい連中だった。
「切り開いてみせる。彼等の未来を閉ざさせない為に、私自身の為にっ! シェリィ!」
意を決したユーリは盾を掲げた。
それは、友人であるシェルミアとの連携の為だ。
「ユーリさん……分かりました。お願いします」
僅かな逡巡。姉の親友の覚悟を感じ、シェルミアは符を掲げた。
符術を行使する。その多くの敵を巻き込ませる事ができるが、それは同時に多数の反撃を生む。それらをユーリは庇うつもりなのだ。
「私の友人に手を出させない。代わりに全てを受け止めてみせるっ!」
二人での連携は征西部隊との合流まで続けられた。無傷とはいかなかったが、求められる以上よりも多くの群体を排除した。
「行って来ていいよ、シェリィ」
親愛する友の妹の背中をユーリは押した。
戦いは終わった。征西部隊は無事に最後の『壁』を突破したのだから。
「生き残ったようだ。これから先も決まらないのに、な」
「ありがとうございます」
瞬と正秋の二人が、押されるように前に出たシェルミアに言った。
「先の事なんて、幾らでも迷っていいと思うよ。ホープに着いて、考えたって良いと思う」
「まったく、お節介な女だ」
呆れたような瞬の言葉に、シェルミアは人差し指を口に当てた。
「わたしのお節介は続くよ? 目を付けられたと思って観念してね」
「深入りさせて申し訳ない」
丁寧に謝る正秋に対して笑顔をシェルミアは向けた。
「君達の未来に期待してるんだから」
「俺の時と正秋で、えらく態度が違うな」
「当たり前でしょ」
シェルミアは瞬の言葉に即答する。
そんな若者達の楽しげなやり取りを眺め、ユーリは微笑を浮かべて空を仰ぐ。
あの暑苦しい三兄弟の豪快な笑い声が――聞こえた気がしたからだった。
ハンター達の活躍により、ハンターオフィスが想定した数よりも倍以上の群体を討伐。
その援護を受けて征西部隊は無事に台地を突破した。幾人か負傷したが戦死者は出さず、征西部隊は西方世界へと到着したのであった。
そして、希望の大地へと続く。
●Uisca Amhran(ka0754)&アルラウネ(ka4841)
いつもよりも女子力()を調整した為、黒スーツの男装でUiscaは戦い続けた。
攻守共に申し分なく、大なり小なり怪我人が多い中、無傷で征西部隊と合流した。それは、無理はせずに堅実に刀を振るい続けたアルラウネも同様だった。
「ノゾミちゃん!」
「大丈夫……みたいだね」
合流するなり、紡伎 希(kz0174)の姿を見かけた。
パッと見、元気そうだ。
微笑みを浮かべながら、Uiscaはそっと希に告げる。
「イケメンさんに、宣戦布告をしてきたよ……ノゾミちゃんも、それでいいよね?」
因縁深いある歪虚との決着の時が近付いているはずだ。
希は真剣な表情で、西の方角を見つめる。
「はい……ただ……戦わないといけないと分かっているのですが……」
何か引っかかるものがあるのですと希は言葉を続けた。
Uiscaはそんな希の肩をポンと叩く。
「それを探しながらでも、ね」
慌てる事はもう無い。
征西部隊がホープに到着すれば、希の仕事も一段落する。希の思う事を探すのは、それからでも遅くはないのだから。
これから先、どんな運命が待っているのか――きっと、希望ある未来だと信じたい。
「しんみりしちゃって!」
アルラウネが満面の笑みで希に言った。
兵糧が残り少ないという話しは耳に入っている。希も満足いく食事を摂っていないはずだ。
「まずは、しっかりと食べないと」
「もともと少食ですけど」
「健康的な食事をしないと、大きくならないわよ~?」
豊かな双丘を強調するように持ち上げて力説するアルラウネ。
希の視線がアルラウネと自身の胸と交互に移る。
「そうですよ、ノゾミちゃん。女子力もまずは健康的な食事が大事です」
自信満々に力説するUiscaが胸を張った。ある意味、追い打ちをかけているともいえようか。
希は、Uiscaのそれと自身の控えめな胸を比べ――。
「今からでも間に合えば良いですけど……」
と言い訳するように胸に手を当てた。
思えば『あの時』を迎えるまでは、その日の食事にも困るような生活をしていたのだ。水しか口にしなかった日もあった。
「どうか、間に合いますように……」
希は小さく同じ言葉を繰り返した。
●55⇒55
スキルと防具を最大限に活かし、順当に群体を駆逐して危なげもなく戦い抜いた龍崎・カズマ(ka0178)は征西部隊と合流した。
あらかじめ、ハンター達の位置をカズマが発煙手榴弾で知らせていたのもあって、征西部隊との合流は速やかだった為か、怪我人は居たが戦死者は出ていない。
「本当に、カズマ君は僕が意図する事をやってくれるよね」
全身血だらけの鳴月 牡丹(kz0180)が声を掛けてきた。
普段は頭の上に結いている美しい茶髪も髪留めが外れて無造作に流れている。ここまでの激戦が伺いしれた。
「むしろ、依頼の要件の中に入れておけ」
広大な台地の上だ。視界は群体で塞がれている以上、双方の合流は難しい。
ハンターオフィスが明示した討伐数は、そんな状態でも突破を支援する為の最低限考えられる数だったのだろう。
「風が強くなくて良かったよ。君らは運が良い」
「運が良いのは、この場合、牡丹達の方だろ」
苦笑を浮かべながらカズマはポーションを牡丹へと渡した。
牡丹は血だらけの手でそれを受け取ると満面の笑みをチラっと見せ――ぐっと一気に呷ったのだった。
依頼結果
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【質問卓】お気軽にどうぞ 紡伎 希(kz0174) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/10/19 00:35:36 |
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/10/19 03:25:23 |
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なぜなにファナブラ 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/10/15 22:03:41 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/18 07:23:47 |