ゲスト
(ka0000)
タスカービレ〜少竜巻を崩せ!
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/19 07:30
- 完成日
- 2016/11/03 00:37
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●余談(本編は次段)
「では、今後は白ワインを特産として強く押し出すのですね?」
ここは同盟領、農耕推進地「ジェオルジ」の片田舎「タスカービレ」。
今が収穫の忙しい最中呼び出された農業責任者のカノーア・キアーヴェが面倒臭そうに言った。
「こちらで主流の赤ワインの割り振りを変えるわけではありませんし、混乱がないはずです」
説明したジェオルジの役人、フィーネ・リスパルミオが説得する。
「確かに白ワインは売りもんにしてなかったからいいけど。主流の味からは外れてるし」
そこまで言って口調を変えるカノーア。
「……あんた、白茶の技術者として派遣されてるんだろ?」
「こちらではこれまで白茶にかかりきりでしたが、本来は農耕推進地としての先進的な取り組みや新たな取り組みを支えジェオルジ全体の発展に貢献するための支援を目的としています」
「村長一家はうちとこの白ワインは門外不出の姿勢だったはずだが」
女性役人に確認するカノーア。正確には彼の言い分が正しく、カノーアが従うべきはフィーネではなくタスカービレ村の村長たるセコ・フィオーリである。門外不出なのは味が主流から外れているから。地元の家庭で飲むテーブルワインとして親しまれてはいるが。
「新たに水産資源として『チクワ』に取り組んでいるのはご存知ですね?」
確認するフィーネ。頷くカノーア。
過去に失敗した新種茶葉開発とそれに伴う人口流出を補う、白茶開発を発端にした東方風村作りの一環として川魚の養殖を背景として、今年からチクワの生産に着手している。これはすでに周知済みだ。
チクワとはもちろん、竹輪。
穴の中にキュウリなど入れたが、よりこちらで馴染みの深いチーズを穴に入れて親近感を増している。
「チーズ入りチクワと白ワインの味が合うそうです。村長に白ワインの特産化を話すと懐かしそうにしておられたので、タスカービレの叙事詩……『レ・リリカ』の名前ではどうかとうかがうと喜んでオーケーしてもらいました」
「味の良さ、分かってもらえるかな?」
これを聞いたカノーア、心配そうに呟いた。
「淡泊な味のチクワと一緒なら。イ寺さんによるとこの白ワイン、リアルブルーの上等な新酒に近い味だそうです。チクワも東方由来。きっと合います。新しいチクワと古い……いえ、叙事詩の名前で売り出す新たな白ワインなら、きっと!」
カノーア、フィーネの言葉にわだかまりが落ちたような笑みを浮かべた。
●本編
その、イ寺鑑(kz0175)。
「んあ、近くの村に歪虚がいる〜?」
本日は移民したタスカービレにいるようだ。
住み込む青竜紅刃流のログハウス道場2階の自室のベッドで辛そうな声を出す。
「はい。ゾンビみたいなんですが、自分を中心に竜巻を起こしたり、別の場所に起こした竜巻を操って近寄る者を攻撃するんです」
門下生、必死に説明する。
「ううう……昨晩は白ワインの味見の連続から結局酒盛りになってとんでもない量を飲まされたのに……」
とか何とかいいつつもぞもぞベッドから出てくるのは、青竜紅風流の立場を分かっているから。
設立間もなく、よその村からの困り事はしっかりと受けて名前を売り込んでおかねばならないのだ。特に、そのままハンターオフィスに退治依頼されようものなら存在意義が問われる。少なくとも、まずは現地にいる青竜紅刃流に相談がくるようにしないと。
「先生、大丈夫ですか?」
「うう……現地に被害はなく、緊急性はないんだな?」
門下生はうなずく。村の外れの道で、近くを通らなければたちまちは実害はないという。もちろん今後どうなるかは分からないが。
「よぉし、何とか……する」
要は現地におもむき、まずは状態を知ればいいのだ。
頭痛を堪えつつ外に出る。
で、現地。
「あれか」
丘陵地の道に立つ、負のオーラをまとった死人が立っていた。
鑑に気付くと、ぼふっと竜巻をまとう。範囲は敵が両手を広げたよりも広い程度。高さは2階建ての建物程度か。
「下がってろ!」
門下生に一喝し、出る!
同時に敵が竜巻を6つ生み出し艦の行く手をふさぐ。
「くそっ!」
斬れるか不安ながらほかに手がないので竜巻に鋭く斬りつける。
と、風の壁が斬れた。中に光の球が浮いている。
「青竜!」
がうん、と短銃を抜き打ち。
渦巻く風の切れ間はすぐに閉じたが、光源に当たったようで竜巻は消えた。
「これなら行け……うわっ!」
二日酔いの艦、視野が狭まっていたか。背後に回られた竜巻に触れられると上空にすっ飛ばされた。
「まあ、倒れると襲うのをやめるのも分かった。ハンターオフィスに依頼するように進言してくれ」
一応無事だった艦、ベッドの中から指示するのだった。
「では、今後は白ワインを特産として強く押し出すのですね?」
ここは同盟領、農耕推進地「ジェオルジ」の片田舎「タスカービレ」。
今が収穫の忙しい最中呼び出された農業責任者のカノーア・キアーヴェが面倒臭そうに言った。
「こちらで主流の赤ワインの割り振りを変えるわけではありませんし、混乱がないはずです」
説明したジェオルジの役人、フィーネ・リスパルミオが説得する。
「確かに白ワインは売りもんにしてなかったからいいけど。主流の味からは外れてるし」
そこまで言って口調を変えるカノーア。
「……あんた、白茶の技術者として派遣されてるんだろ?」
「こちらではこれまで白茶にかかりきりでしたが、本来は農耕推進地としての先進的な取り組みや新たな取り組みを支えジェオルジ全体の発展に貢献するための支援を目的としています」
「村長一家はうちとこの白ワインは門外不出の姿勢だったはずだが」
女性役人に確認するカノーア。正確には彼の言い分が正しく、カノーアが従うべきはフィーネではなくタスカービレ村の村長たるセコ・フィオーリである。門外不出なのは味が主流から外れているから。地元の家庭で飲むテーブルワインとして親しまれてはいるが。
「新たに水産資源として『チクワ』に取り組んでいるのはご存知ですね?」
確認するフィーネ。頷くカノーア。
過去に失敗した新種茶葉開発とそれに伴う人口流出を補う、白茶開発を発端にした東方風村作りの一環として川魚の養殖を背景として、今年からチクワの生産に着手している。これはすでに周知済みだ。
チクワとはもちろん、竹輪。
穴の中にキュウリなど入れたが、よりこちらで馴染みの深いチーズを穴に入れて親近感を増している。
「チーズ入りチクワと白ワインの味が合うそうです。村長に白ワインの特産化を話すと懐かしそうにしておられたので、タスカービレの叙事詩……『レ・リリカ』の名前ではどうかとうかがうと喜んでオーケーしてもらいました」
「味の良さ、分かってもらえるかな?」
これを聞いたカノーア、心配そうに呟いた。
「淡泊な味のチクワと一緒なら。イ寺さんによるとこの白ワイン、リアルブルーの上等な新酒に近い味だそうです。チクワも東方由来。きっと合います。新しいチクワと古い……いえ、叙事詩の名前で売り出す新たな白ワインなら、きっと!」
カノーア、フィーネの言葉にわだかまりが落ちたような笑みを浮かべた。
●本編
その、イ寺鑑(kz0175)。
「んあ、近くの村に歪虚がいる〜?」
本日は移民したタスカービレにいるようだ。
住み込む青竜紅刃流のログハウス道場2階の自室のベッドで辛そうな声を出す。
「はい。ゾンビみたいなんですが、自分を中心に竜巻を起こしたり、別の場所に起こした竜巻を操って近寄る者を攻撃するんです」
門下生、必死に説明する。
「ううう……昨晩は白ワインの味見の連続から結局酒盛りになってとんでもない量を飲まされたのに……」
とか何とかいいつつもぞもぞベッドから出てくるのは、青竜紅風流の立場を分かっているから。
設立間もなく、よその村からの困り事はしっかりと受けて名前を売り込んでおかねばならないのだ。特に、そのままハンターオフィスに退治依頼されようものなら存在意義が問われる。少なくとも、まずは現地にいる青竜紅刃流に相談がくるようにしないと。
「先生、大丈夫ですか?」
「うう……現地に被害はなく、緊急性はないんだな?」
門下生はうなずく。村の外れの道で、近くを通らなければたちまちは実害はないという。もちろん今後どうなるかは分からないが。
「よぉし、何とか……する」
要は現地におもむき、まずは状態を知ればいいのだ。
頭痛を堪えつつ外に出る。
で、現地。
「あれか」
丘陵地の道に立つ、負のオーラをまとった死人が立っていた。
鑑に気付くと、ぼふっと竜巻をまとう。範囲は敵が両手を広げたよりも広い程度。高さは2階建ての建物程度か。
「下がってろ!」
門下生に一喝し、出る!
同時に敵が竜巻を6つ生み出し艦の行く手をふさぐ。
「くそっ!」
斬れるか不安ながらほかに手がないので竜巻に鋭く斬りつける。
と、風の壁が斬れた。中に光の球が浮いている。
「青竜!」
がうん、と短銃を抜き打ち。
渦巻く風の切れ間はすぐに閉じたが、光源に当たったようで竜巻は消えた。
「これなら行け……うわっ!」
二日酔いの艦、視野が狭まっていたか。背後に回られた竜巻に触れられると上空にすっ飛ばされた。
「まあ、倒れると襲うのをやめるのも分かった。ハンターオフィスに依頼するように進言してくれ」
一応無事だった艦、ベッドの中から指示するのだった。
リプレイ本文
●
「おぉ、来た来た」
五人のハンターが依頼のあった村へ到着した時、多くの野次馬が通りに出て出迎えた。
「なかなか強そうじゃ」
「剣使いがいるな」
五人が通り過ぎるたびに、期待する声が交わされる。
「前に戦ってくれた師範と同門らしい」
「弔い合戦か」
これを聞いてウーナ(ka1439)が苦笑する。
「弔い合戦って……鑑センセ、死んだわけじゃないよね?」
「イ寺様が不覚を取っただけですね」
ウーナの問い掛けに多由羅(ka6167)がうつむき加減のまま返した。
「まー、せっかくバトルがあるのに俺様ちゃんを呼んでいかないからそういうことになるじゃーん」
新たにゾファル・G・初火(ka4407)がそんなことを言う。
ゾファル、たまにタスカービレ村に来ることがあっても門下生への指導は鑑に任せっきりで青竜紅刃流道場ですっかり食っちゃ寝の食客状態だったりする。
ちょっとゾファルの門下生指導の様子を振り返ってみよう。
「ゾファル先生、太刀筋を見ていただきたいのですが」
「あ~……」
弟子に呼ばれたゾファル。スカートなのに胡坐をだらしなく組んだままあくびをしつつ腹をぽりぽりかいている。
「んじゃ、やってみるじゃ~ん……」
眠気眼のまま、面倒くさそうに顎をしゃくる。門下生は礼儀正しく一礼して基本の動きから鋭い抜き打ちを見せる。
「どうでしょう……あっ!」
振り返った門下生、愕然とした。
「んあ? いいんじゃね?」
何とゾファル、うとうとしてよく見てなかったようだ。
「ち、ちょっと先生」
「俺様ちゃん、でかい武器使う奴しか見てれねーんじゃん」
居合の苦手な者たちを手ほどきするのが日課の、食客のような存在なのである。
本題に戻る。
「なんか……イ寺さんがこの会話を聞いたらどう思うか……だよ」
死んだとか不覚を取ったとか連れて行かなかったとか、とにかく好き放題にな言いように狐中・小鳥(ka5484)が汗たら~してる。
「まあ、本人が目の前にいませんからね」
横で仙堂 紫苑(ka5953)が静かにフォローする。
「あ? サムライカーンの目の前で言ったに決まってるじゃん。……やっと俺様ちゃん向きの敵のお出ましじゃーん、って」
振り向いたゾファルが、それが何か、な感じ。
「……こっちに来る前に、かな? イ寺さんの反応、どうだったんだろ?」
「恨みがましい目で見てただけじゃん!」
聞いた小鳥。ゾファルはからから笑うだけ。
「そ、そうかなぁ。心配してたんじゃないかなとも思うんだよ……」
「そうですね。……イ寺様としても青竜紅刃流が連敗するなどということがあってはならぬと考えるでしょうし」
小鳥と多由羅の会話。
これを聞いてウーナも頷いた。
「そうだよね、青竜紅刃流は立ち上げたばかり。……絶対に引けないよね」
流派の威信を懸ける、という流れだ。
これに紫苑、おや、と態度を改めた。
立ち上げたばかり、という言葉に引かれたのだ。新しもの好きである。
「控えめに戦うつもりでしたが……」
ちゃきり、とバトルライフルを抜いてみせる。
「引いた位置でも、できることを」
あるいは、普段刀で戦うところを銃のみで行く、というところに引き締まる気持ちがあったのかもしれない。
やがて、村の顔役たちのいる場所に到着。
「よう来てくれた。ささ、早速……」
簡単に経緯の説明を受け、戦場へと赴く。
●
で、 丘陵地の道。
「どぉれー。来てやったじゃん」
正しくは、跨った愛馬「黒船」に連れてこられたゾファルがいつもやってるようにあくびをしつつ腹をぽりぽりかきながら周りを見る。
「あれですね。分かりやすい」
紫苑が負のオーラをまとった死人を確認したと同時に、ほかの声も上がる。
「これ、もしかしてタスカービレにも関係あるんじゃない?」
ウーナがこの道の役目に気付いた。
「そういえばこの道を通ってもタスカービレにも行けますかね?」
多由羅も頷く。
「それはちょっと困るんだよ」
小鳥、声を荒げた。
「せっかく名産も出来て色々動いてるんだし、周囲の不安要素は排除しないとだね」
「これは引けないね」
「あれがイ寺様が不覚を取ったとは……相手にとって不足ありません…!」
小鳥、ウーナ、多由羅が目の色を変えて武器を手にする。
と、同時に敵の死人もこちらに気付いた。
ぼふっ、と死人の姿が竜巻の中に消え、周囲に護衛の竜巻六つが生まれた。
「話だと竜巻の中に玉があったってことだしそれが本体なのかな? わかりやすすぎる気がしないでもないけど」
「あたしは猟撃士だけど……青竜紅刃流師範として前に出るよ!」
小鳥の話にウーナが頷き一歩踏みでる。手にした魔導拳銃剣「エルス」がかちゃかちゃと音を立てて直刀モードに切り替わった。
「ウーナさんは遠慮なく青竜紅刃流で行っちゃって♪ 見せる時はしっかり見せないとだしねー♪」
応援する小鳥。武器はダンサーズショートソードと小太刀「風魔」だ。
「そういえばイ寺さまは剣と銃の連撃で竜巻を消滅させたとか……」
多由羅は、大太刀「鬼霧雨」を持つ手のほうを振り向いた。
「普段は刀ですが……俺も一応射撃だって出来るんですよ?」
視線を受け、バトルライフルを両手に持った紫苑が不敵に言ってのけた。流派の威信を懸けているなら、と一歩引いて支援に専念するつもりだ。
「速いけど、大丈夫かな?」
「では……我が剣、受けて頂きましょう!」
振り向いたまま確認する小鳥。横では多由羅がもう行った!
もちろんウーナも。
そして……騎乗のゾファルが一番速い!
「自分も全力ですよ」
紫苑、請け合って皆を見送る。
ドカカッ、と駆ける「黒船」に跨りゾファルが両刃斧「ギガースアックス」をぶん回す。
「おらおら~。道を空けるじゃん、竜巻どもー!」
単騎斬り込むが、もちろん攻撃用竜巻がやって来る。
「風負けない質量を思い知るがいいじゃ~ん!」
黒船が逸らして最接近したところを両刃斧の重い一撃が切り裂く。
ずばっ、と表面の風が斬れた。ふしぎな光景だがそうなるので仕方ない。
その奥に、リンゴ大の光球が浮いていた。
「あれだなぁ」
脇腹に力を入れ今しがたぶん回した大質量の巨大斧を再び振り抜くべく構えるが、その時にはもう竜巻表面の裂け口は元に戻ろうとしていた。
この時、最後方の紫苑。
「まずは……」
すたん、とバトルライフルが火を噴く。
これがゾファルの破った竜巻の中に吸い込まれ光球を打ち抜いた。
ばふっ、と表面でだけ猛威を振るっていた竜巻が消えた。
「いい手応えですね」
なかなか面白い、と微笑する紫苑だった。
もっとも突出したゾファルは横の竜巻が消えたとはいえ、高い代償を払うことになる。
●
時は一瞬だけさかのぼる。
「ん、吹き飛ばされないよう気をつけながら斬って行くんだよ」
小鳥が2列目で左に開いた。ちょうど前で右に構えたゾファルの反対側面である。
もちろんゾファルの狙った竜巻と逆から別の竜巻が回り込んできている。
その数、二体。動きは速い。
が、それを上回る動きを小鳥が見せた。
「速さっていうのは、こういうのをいうんだよ!」
ショートソードと小太刀で右、左と縦横無尽。敵のゾファル包囲の動きを看破し、二体の間に割り込み最短距離で双方を攻撃したのだ。
「玉への攻撃はお任せするね♪」
おっと。一瞬振り返って舌をちょっとだけぺろりと出してウインク。止めを任せることで斬撃に集中したのだ。
このちょっと前、ウーナ。
「敵は竜巻、8つ出せるんだっけ?」
口にしつつ右へ。
左を小鳥任せ、ゾファルを包囲しようと迫る右の2つを視界に捕らえる。
「紫苑さん、1つお願い!」
まず最初の竜巻に斬りつけ脇をすり抜けた。
そしてもう一体には……。
「青竜紅刃流・射の型!」
ウーナの獅子に赤く輝いていた幾何学模様に、まるで血が通うようにさらに赤い輝きが走った!
――ずばっ、がぅん……。
「遠近両対応のクローズドコンバットも、青竜紅刃流は近近の最大火力でたたきつぶすんだからね」
斬りつけ打ち込みすり抜けたウーナの、子供っぽいゲーム感覚の残忍さが牙を剥く。
ところで、先に切った竜巻は?
「まさかタイミングが重なるとはな……」
最後尾の紫苑、瞳に歯車のような文様が浮かび言動が若干粗くなっている。こきりと指を鳴らしたかと思うとマシーナリーモノクルのフレームに右手の指先を添えた。そこにあるのは魔導機械だ。
「ちょうど3つ。複数同時撃破の餌食だ」
差し出した左手の平を中心にデルタレイの三角形が浮かび上がる。3つの頂点から光が飛んだ。
「いい感じだよ」
「さすが」
小鳥の左右の竜巻、そしてウーナが逸らした竜巻の3つを撃破した。
そして、最初に駆け出していた多由羅。
「ゾファルは目立ちますからね……イ寺様の轍は踏みませんよ」
何と、ゾファルに追い越されたところから右に外れ、大きく回り込んでいた。
「やはり密かに1つだけ竜巻が回り込んでいますね」
予想通りの動きだった。
この時には、敵までの直線距離で小鳥にもウーナにも追い越されていた。
そしてウーナの言葉が聞こえてくるのだ。
「敵は竜巻、8つ出せるんだっけ?」
「ええ……ですから、残りの2つも出しましたよ」
多由羅、にぃ、と鬼のような……というか、鬼の微笑。
敵が残り2つの竜巻を出したのを確認したのだ。
もちろんこれはゾファルを先頭とした本隊には見えていない。先に出した6つの竜巻で死角になっているのだ。横に大きくそれた多由羅にだけ、見えた。
「では、殺(や)りますよ……1つ」
大きく回り込んでいた1つの竜巻を斬る!
この時、紫苑。
「……相当忙しい流派だな」
デルタレイ直後でライフルを正しく構え狙っているヒマがない。
「いきなり奥の手を使う羽目になるとはな」
構えはそこそこに、ライフルを撃つのではなく機導術の媒介にしたッ!
――どんっ。
機導砲、発射。
これが多由羅の斬った裂け目の閉じるまでに間に合い中の光球を穿つ。
そしてその竜巻を切り抜けた多由羅。
「さらに回り込んでいますが……」
新たに向かってきた竜巻一つを不留一歩の理で交わしつつ次の場所へと動いている。
その目の前で!
「にゃあぁぁぁ!」
先頭を行くゾファルが、もう一つの新たな竜巻に巻き込まれて吹き飛んでいた。
死角から一気に来たのだ。無理もない。
が!
「ふぅ。さすがに俺様ちゃんでもリーフシールドは持ってないじゃん」
愛馬と自分を縛り付け自重を重くしていたため、吹っ飛ばされたのは非常に低い高さ。もっとも、愛馬に若干下敷きになってしまったが。
「いや……それは別の有効な手段を手に入れる方が大変というフラグでは?」
ここで多由羅、カットイン。
言葉は呆れ気味だが動きと瞳はいつもの通り。
腰を捻った低い姿勢から大太刀「鬼霧雨」を地面にするように間合いに入り……。
「紅蓮斬!」
発火し赤い軌道を残した斬撃がずばっと切り裂く。
「それならまっすぐ行くだけ!」
ウーナもここに突っ込んできた。
多由羅の斬った竜巻に銃撃をぶち込んでさらに前を向く。
そこにもう邪魔な竜巻はない。
敵の死体が竜巻を解いてこちらを向いていた。
「ウーナさん、遠慮なく青竜紅刃流で行っちゃって♪」
見せる時はしっかり見せないとだしねー♪、と励ます小鳥は、ゾファルの復帰に手を貸している。
「ありがとっ、小鳥ちゃん……センセに続いて2番手ウーナ、参る!」
ぐおおっ、と敵に迫るウーナ。小鳥もフォローに続いている。
そしてここで、思いもよらぬ事態になるッ!
●
――ぼふっ!
「え? うわっ!」
それは一瞬だった。
「ウーナさん……わっ!」
ウーナと小鳥が吹っ飛んだ。
何と、敵の死体から新たに7つの竜巻が発生したのだ。
今度は先と違い間合いが近い。ほぼ消滅させたと思っていた分対応が遅れたのだ。
「つまり、常に8つ出すことができる、ということですか……」
「ひでえ話じゃ~ん」
多由羅も吹っ飛ばされ、そしてまたもゾファルが吹き飛ぶ。
この時、最後尾で最初に出した最後の竜巻と戦っていた紫苑。
「……くっ」
吹っ飛ばされていたが、膝をついて立ち上がる。竜巻はまだ残ったままだ。
「時間稼ぎだ! 誰かが時間稼ぎをしろ!」
それだけ言って皆の方に走る。最後尾から見ていた分、気付きやすかった。
竜巻に追われたが、ジェットブーツで華麗に交わす。
「なるほど。竜巻を出したまま引き離せば敵は護衛を失いますね」
多由羅、すぐにピンと来て円舞の動き。バックステップで敵の本体から離れる。
「止めを刺さなきゃいいのか? だったら俺様ちゃんにまかせとくじゃ~ん」
ゾファルも復帰。すぐにどどど、と逆走し敵本体から距離を取る。派手な動きに竜巻どもが釣られた。
「多由羅ちゃん、挟み撃ちするじゃ~ん」
「いいでしょう」
反転してチャージング。全く手を抜かない攻撃で次々と竜巻を斬りまくる。
そして反対側から多由羅も来ている。下からの紅蓮斬に……返す刀の振り下ろしは別の竜巻に。
とにかく手数を掛けて竜巻どもをここから動かないよう斬るだけ斬りまくる。
「おっと。こっちだ」
うっかり本体に戻りそうな竜巻には、紫苑がジェットブーツで回り込んで狙われ、元の位置に戻す。
そして、敵本体。
「こっちは任せておいて!」
最後の一つの竜巻と小鳥が戦っている。
これで完全にウーナがフリーになった。
目の前の死人が竜巻を纏う。
「それだけじゃもう防げないんだから!」
サイドステップで小鳥の背後からウーナが出る。
「これが……」
ウーナ、直刀エルスの斬撃で本体の竜巻を切った。
「これが!」
そしてさらされた死人にチェイサーの銃撃!
が、竜巻は収まらない。
竜巻の中、よろけた死人の口の中にリンゴ大の光球が見えた。
ウーナの瞳が険しくなる!
チャンスは一瞬だ。
「これが……あたしたちの流派だ!」
かちゃん、とエルスを銃モードに。
どぅんと放つと同時に竜巻の裂け目が閉じた。
果たしてッ!
●
「それで?」
道場で鑑が聞いた。
「もちろん」
「イ寺様が不覚を取った歪虚を倒させて頂きました」
得意げなウーナと多由羅。って、多由羅さん少し大人げないですよ、そのドヤ顔。
「……」
「い、いえ、決して天狗になるわけではないですよ?」
鑑の無言の視線に慌てる多由羅だったり。
「死体は旅人だろうって、鑑センセ」
ウーナは少し寂しげ。
「ま、まああちらの村からは感謝されたんだよ」
「小鳥ちゃんもそう言うし、風呂にでもしようぜー」
とりなす小鳥にお気楽なゾファル。
「チクワとワインで一杯っていうのは?」
「お、いいこと言うじゃん? さ、いこうぜー」
紫苑の言葉に、門下生に用意させるよう言って出かけるゾファル。
この後、ひとっ風呂浴びて白ワインとチクワで楽しく酒盛りするのだった。
「鑑さん、お酒はほどほどだよ?」
「う、分かってるよ、小鳥」
ちゃんちゃん♪
「おぉ、来た来た」
五人のハンターが依頼のあった村へ到着した時、多くの野次馬が通りに出て出迎えた。
「なかなか強そうじゃ」
「剣使いがいるな」
五人が通り過ぎるたびに、期待する声が交わされる。
「前に戦ってくれた師範と同門らしい」
「弔い合戦か」
これを聞いてウーナ(ka1439)が苦笑する。
「弔い合戦って……鑑センセ、死んだわけじゃないよね?」
「イ寺様が不覚を取っただけですね」
ウーナの問い掛けに多由羅(ka6167)がうつむき加減のまま返した。
「まー、せっかくバトルがあるのに俺様ちゃんを呼んでいかないからそういうことになるじゃーん」
新たにゾファル・G・初火(ka4407)がそんなことを言う。
ゾファル、たまにタスカービレ村に来ることがあっても門下生への指導は鑑に任せっきりで青竜紅刃流道場ですっかり食っちゃ寝の食客状態だったりする。
ちょっとゾファルの門下生指導の様子を振り返ってみよう。
「ゾファル先生、太刀筋を見ていただきたいのですが」
「あ~……」
弟子に呼ばれたゾファル。スカートなのに胡坐をだらしなく組んだままあくびをしつつ腹をぽりぽりかいている。
「んじゃ、やってみるじゃ~ん……」
眠気眼のまま、面倒くさそうに顎をしゃくる。門下生は礼儀正しく一礼して基本の動きから鋭い抜き打ちを見せる。
「どうでしょう……あっ!」
振り返った門下生、愕然とした。
「んあ? いいんじゃね?」
何とゾファル、うとうとしてよく見てなかったようだ。
「ち、ちょっと先生」
「俺様ちゃん、でかい武器使う奴しか見てれねーんじゃん」
居合の苦手な者たちを手ほどきするのが日課の、食客のような存在なのである。
本題に戻る。
「なんか……イ寺さんがこの会話を聞いたらどう思うか……だよ」
死んだとか不覚を取ったとか連れて行かなかったとか、とにかく好き放題にな言いように狐中・小鳥(ka5484)が汗たら~してる。
「まあ、本人が目の前にいませんからね」
横で仙堂 紫苑(ka5953)が静かにフォローする。
「あ? サムライカーンの目の前で言ったに決まってるじゃん。……やっと俺様ちゃん向きの敵のお出ましじゃーん、って」
振り向いたゾファルが、それが何か、な感じ。
「……こっちに来る前に、かな? イ寺さんの反応、どうだったんだろ?」
「恨みがましい目で見てただけじゃん!」
聞いた小鳥。ゾファルはからから笑うだけ。
「そ、そうかなぁ。心配してたんじゃないかなとも思うんだよ……」
「そうですね。……イ寺様としても青竜紅刃流が連敗するなどということがあってはならぬと考えるでしょうし」
小鳥と多由羅の会話。
これを聞いてウーナも頷いた。
「そうだよね、青竜紅刃流は立ち上げたばかり。……絶対に引けないよね」
流派の威信を懸ける、という流れだ。
これに紫苑、おや、と態度を改めた。
立ち上げたばかり、という言葉に引かれたのだ。新しもの好きである。
「控えめに戦うつもりでしたが……」
ちゃきり、とバトルライフルを抜いてみせる。
「引いた位置でも、できることを」
あるいは、普段刀で戦うところを銃のみで行く、というところに引き締まる気持ちがあったのかもしれない。
やがて、村の顔役たちのいる場所に到着。
「よう来てくれた。ささ、早速……」
簡単に経緯の説明を受け、戦場へと赴く。
●
で、 丘陵地の道。
「どぉれー。来てやったじゃん」
正しくは、跨った愛馬「黒船」に連れてこられたゾファルがいつもやってるようにあくびをしつつ腹をぽりぽりかきながら周りを見る。
「あれですね。分かりやすい」
紫苑が負のオーラをまとった死人を確認したと同時に、ほかの声も上がる。
「これ、もしかしてタスカービレにも関係あるんじゃない?」
ウーナがこの道の役目に気付いた。
「そういえばこの道を通ってもタスカービレにも行けますかね?」
多由羅も頷く。
「それはちょっと困るんだよ」
小鳥、声を荒げた。
「せっかく名産も出来て色々動いてるんだし、周囲の不安要素は排除しないとだね」
「これは引けないね」
「あれがイ寺様が不覚を取ったとは……相手にとって不足ありません…!」
小鳥、ウーナ、多由羅が目の色を変えて武器を手にする。
と、同時に敵の死人もこちらに気付いた。
ぼふっ、と死人の姿が竜巻の中に消え、周囲に護衛の竜巻六つが生まれた。
「話だと竜巻の中に玉があったってことだしそれが本体なのかな? わかりやすすぎる気がしないでもないけど」
「あたしは猟撃士だけど……青竜紅刃流師範として前に出るよ!」
小鳥の話にウーナが頷き一歩踏みでる。手にした魔導拳銃剣「エルス」がかちゃかちゃと音を立てて直刀モードに切り替わった。
「ウーナさんは遠慮なく青竜紅刃流で行っちゃって♪ 見せる時はしっかり見せないとだしねー♪」
応援する小鳥。武器はダンサーズショートソードと小太刀「風魔」だ。
「そういえばイ寺さまは剣と銃の連撃で竜巻を消滅させたとか……」
多由羅は、大太刀「鬼霧雨」を持つ手のほうを振り向いた。
「普段は刀ですが……俺も一応射撃だって出来るんですよ?」
視線を受け、バトルライフルを両手に持った紫苑が不敵に言ってのけた。流派の威信を懸けているなら、と一歩引いて支援に専念するつもりだ。
「速いけど、大丈夫かな?」
「では……我が剣、受けて頂きましょう!」
振り向いたまま確認する小鳥。横では多由羅がもう行った!
もちろんウーナも。
そして……騎乗のゾファルが一番速い!
「自分も全力ですよ」
紫苑、請け合って皆を見送る。
ドカカッ、と駆ける「黒船」に跨りゾファルが両刃斧「ギガースアックス」をぶん回す。
「おらおら~。道を空けるじゃん、竜巻どもー!」
単騎斬り込むが、もちろん攻撃用竜巻がやって来る。
「風負けない質量を思い知るがいいじゃ~ん!」
黒船が逸らして最接近したところを両刃斧の重い一撃が切り裂く。
ずばっ、と表面の風が斬れた。ふしぎな光景だがそうなるので仕方ない。
その奥に、リンゴ大の光球が浮いていた。
「あれだなぁ」
脇腹に力を入れ今しがたぶん回した大質量の巨大斧を再び振り抜くべく構えるが、その時にはもう竜巻表面の裂け口は元に戻ろうとしていた。
この時、最後方の紫苑。
「まずは……」
すたん、とバトルライフルが火を噴く。
これがゾファルの破った竜巻の中に吸い込まれ光球を打ち抜いた。
ばふっ、と表面でだけ猛威を振るっていた竜巻が消えた。
「いい手応えですね」
なかなか面白い、と微笑する紫苑だった。
もっとも突出したゾファルは横の竜巻が消えたとはいえ、高い代償を払うことになる。
●
時は一瞬だけさかのぼる。
「ん、吹き飛ばされないよう気をつけながら斬って行くんだよ」
小鳥が2列目で左に開いた。ちょうど前で右に構えたゾファルの反対側面である。
もちろんゾファルの狙った竜巻と逆から別の竜巻が回り込んできている。
その数、二体。動きは速い。
が、それを上回る動きを小鳥が見せた。
「速さっていうのは、こういうのをいうんだよ!」
ショートソードと小太刀で右、左と縦横無尽。敵のゾファル包囲の動きを看破し、二体の間に割り込み最短距離で双方を攻撃したのだ。
「玉への攻撃はお任せするね♪」
おっと。一瞬振り返って舌をちょっとだけぺろりと出してウインク。止めを任せることで斬撃に集中したのだ。
このちょっと前、ウーナ。
「敵は竜巻、8つ出せるんだっけ?」
口にしつつ右へ。
左を小鳥任せ、ゾファルを包囲しようと迫る右の2つを視界に捕らえる。
「紫苑さん、1つお願い!」
まず最初の竜巻に斬りつけ脇をすり抜けた。
そしてもう一体には……。
「青竜紅刃流・射の型!」
ウーナの獅子に赤く輝いていた幾何学模様に、まるで血が通うようにさらに赤い輝きが走った!
――ずばっ、がぅん……。
「遠近両対応のクローズドコンバットも、青竜紅刃流は近近の最大火力でたたきつぶすんだからね」
斬りつけ打ち込みすり抜けたウーナの、子供っぽいゲーム感覚の残忍さが牙を剥く。
ところで、先に切った竜巻は?
「まさかタイミングが重なるとはな……」
最後尾の紫苑、瞳に歯車のような文様が浮かび言動が若干粗くなっている。こきりと指を鳴らしたかと思うとマシーナリーモノクルのフレームに右手の指先を添えた。そこにあるのは魔導機械だ。
「ちょうど3つ。複数同時撃破の餌食だ」
差し出した左手の平を中心にデルタレイの三角形が浮かび上がる。3つの頂点から光が飛んだ。
「いい感じだよ」
「さすが」
小鳥の左右の竜巻、そしてウーナが逸らした竜巻の3つを撃破した。
そして、最初に駆け出していた多由羅。
「ゾファルは目立ちますからね……イ寺様の轍は踏みませんよ」
何と、ゾファルに追い越されたところから右に外れ、大きく回り込んでいた。
「やはり密かに1つだけ竜巻が回り込んでいますね」
予想通りの動きだった。
この時には、敵までの直線距離で小鳥にもウーナにも追い越されていた。
そしてウーナの言葉が聞こえてくるのだ。
「敵は竜巻、8つ出せるんだっけ?」
「ええ……ですから、残りの2つも出しましたよ」
多由羅、にぃ、と鬼のような……というか、鬼の微笑。
敵が残り2つの竜巻を出したのを確認したのだ。
もちろんこれはゾファルを先頭とした本隊には見えていない。先に出した6つの竜巻で死角になっているのだ。横に大きくそれた多由羅にだけ、見えた。
「では、殺(や)りますよ……1つ」
大きく回り込んでいた1つの竜巻を斬る!
この時、紫苑。
「……相当忙しい流派だな」
デルタレイ直後でライフルを正しく構え狙っているヒマがない。
「いきなり奥の手を使う羽目になるとはな」
構えはそこそこに、ライフルを撃つのではなく機導術の媒介にしたッ!
――どんっ。
機導砲、発射。
これが多由羅の斬った裂け目の閉じるまでに間に合い中の光球を穿つ。
そしてその竜巻を切り抜けた多由羅。
「さらに回り込んでいますが……」
新たに向かってきた竜巻一つを不留一歩の理で交わしつつ次の場所へと動いている。
その目の前で!
「にゃあぁぁぁ!」
先頭を行くゾファルが、もう一つの新たな竜巻に巻き込まれて吹き飛んでいた。
死角から一気に来たのだ。無理もない。
が!
「ふぅ。さすがに俺様ちゃんでもリーフシールドは持ってないじゃん」
愛馬と自分を縛り付け自重を重くしていたため、吹っ飛ばされたのは非常に低い高さ。もっとも、愛馬に若干下敷きになってしまったが。
「いや……それは別の有効な手段を手に入れる方が大変というフラグでは?」
ここで多由羅、カットイン。
言葉は呆れ気味だが動きと瞳はいつもの通り。
腰を捻った低い姿勢から大太刀「鬼霧雨」を地面にするように間合いに入り……。
「紅蓮斬!」
発火し赤い軌道を残した斬撃がずばっと切り裂く。
「それならまっすぐ行くだけ!」
ウーナもここに突っ込んできた。
多由羅の斬った竜巻に銃撃をぶち込んでさらに前を向く。
そこにもう邪魔な竜巻はない。
敵の死体が竜巻を解いてこちらを向いていた。
「ウーナさん、遠慮なく青竜紅刃流で行っちゃって♪」
見せる時はしっかり見せないとだしねー♪、と励ます小鳥は、ゾファルの復帰に手を貸している。
「ありがとっ、小鳥ちゃん……センセに続いて2番手ウーナ、参る!」
ぐおおっ、と敵に迫るウーナ。小鳥もフォローに続いている。
そしてここで、思いもよらぬ事態になるッ!
●
――ぼふっ!
「え? うわっ!」
それは一瞬だった。
「ウーナさん……わっ!」
ウーナと小鳥が吹っ飛んだ。
何と、敵の死体から新たに7つの竜巻が発生したのだ。
今度は先と違い間合いが近い。ほぼ消滅させたと思っていた分対応が遅れたのだ。
「つまり、常に8つ出すことができる、ということですか……」
「ひでえ話じゃ~ん」
多由羅も吹っ飛ばされ、そしてまたもゾファルが吹き飛ぶ。
この時、最後尾で最初に出した最後の竜巻と戦っていた紫苑。
「……くっ」
吹っ飛ばされていたが、膝をついて立ち上がる。竜巻はまだ残ったままだ。
「時間稼ぎだ! 誰かが時間稼ぎをしろ!」
それだけ言って皆の方に走る。最後尾から見ていた分、気付きやすかった。
竜巻に追われたが、ジェットブーツで華麗に交わす。
「なるほど。竜巻を出したまま引き離せば敵は護衛を失いますね」
多由羅、すぐにピンと来て円舞の動き。バックステップで敵の本体から離れる。
「止めを刺さなきゃいいのか? だったら俺様ちゃんにまかせとくじゃ~ん」
ゾファルも復帰。すぐにどどど、と逆走し敵本体から距離を取る。派手な動きに竜巻どもが釣られた。
「多由羅ちゃん、挟み撃ちするじゃ~ん」
「いいでしょう」
反転してチャージング。全く手を抜かない攻撃で次々と竜巻を斬りまくる。
そして反対側から多由羅も来ている。下からの紅蓮斬に……返す刀の振り下ろしは別の竜巻に。
とにかく手数を掛けて竜巻どもをここから動かないよう斬るだけ斬りまくる。
「おっと。こっちだ」
うっかり本体に戻りそうな竜巻には、紫苑がジェットブーツで回り込んで狙われ、元の位置に戻す。
そして、敵本体。
「こっちは任せておいて!」
最後の一つの竜巻と小鳥が戦っている。
これで完全にウーナがフリーになった。
目の前の死人が竜巻を纏う。
「それだけじゃもう防げないんだから!」
サイドステップで小鳥の背後からウーナが出る。
「これが……」
ウーナ、直刀エルスの斬撃で本体の竜巻を切った。
「これが!」
そしてさらされた死人にチェイサーの銃撃!
が、竜巻は収まらない。
竜巻の中、よろけた死人の口の中にリンゴ大の光球が見えた。
ウーナの瞳が険しくなる!
チャンスは一瞬だ。
「これが……あたしたちの流派だ!」
かちゃん、とエルスを銃モードに。
どぅんと放つと同時に竜巻の裂け目が閉じた。
果たしてッ!
●
「それで?」
道場で鑑が聞いた。
「もちろん」
「イ寺様が不覚を取った歪虚を倒させて頂きました」
得意げなウーナと多由羅。って、多由羅さん少し大人げないですよ、そのドヤ顔。
「……」
「い、いえ、決して天狗になるわけではないですよ?」
鑑の無言の視線に慌てる多由羅だったり。
「死体は旅人だろうって、鑑センセ」
ウーナは少し寂しげ。
「ま、まああちらの村からは感謝されたんだよ」
「小鳥ちゃんもそう言うし、風呂にでもしようぜー」
とりなす小鳥にお気楽なゾファル。
「チクワとワインで一杯っていうのは?」
「お、いいこと言うじゃん? さ、いこうぜー」
紫苑の言葉に、門下生に用意させるよう言って出かけるゾファル。
この後、ひとっ風呂浴びて白ワインとチクワで楽しく酒盛りするのだった。
「鑑さん、お酒はほどほどだよ?」
「う、分かってるよ、小鳥」
ちゃんちゃん♪
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/18 13:45:37 |
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相談だよー 狐中・小鳥(ka5484) 人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/10/18 17:09:28 |