ゲスト
(ka0000)
大も小も兼ねる
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/23 19:00
- 完成日
- 2016/11/05 15:02
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
とある依頼がハンターオフィスに提示された。
その内容は隊商が旅の途中で見つけ、通報してきたスライム1体の駆除というものだった。
これだけならそう珍しい依頼でもない。だが、よくよく内容を確認してみると……この依頼がただ事ではない、ということがわかる。
何しろ、ユニットの使用を許可する旨が書かれているのだから。
●
「まず、2種類のスライムが出てきます」
帝国軍の兵士が自己紹介もそこそこに話を始めた。
「一つはグランドスライム。もう一つはプチスライム、と呼称しています」
この時点で、ハンター達には疑問が浮かんだ。内容はスライム『1体』の駆除であるはずなのに、2種類とはどういうことなのか。
「はい。討伐対象はグランドスライム1体であっています。ただこのグランドスライム、攻撃を受けると水飛沫のように破片が飛び散っていくんですが……その破片の一つ一つがプチスライムとして独自に行動をとるようになるのです」
グランドスライム自体がプチスライムの集合体なのか、それとも単に分裂の一種なのか……そのあたりは定かではないが、とにかくこのスライムは分裂していくらしい。
「分裂体といって侮ってはいけません。このプチスライムの体当たり1発で兵士が昏倒してしまうのです」
さらに、非常に素早く、逃げようとした兵士にも瞬時に追いつき体当たりを食らわせてきたという。幸いだったのは、プチスライムの耐久力が非常に低く、体当たりを行うと自分も飛び散ってしまったことだ。その後分裂や再生なども行わなかったようで、それで死んでしまったようだ。
「……これだけなら、覚醒者ならなんとかなる。そうお考えでしょうね。そこで、こちらの資料をご覧ください」
確かにこれだけならユニットを使用しなくても事足りそうではある。そんなハンターたちの考えを察したのか、兵士は次の資料を提示する。そこには、先ほどのプチスライムに関する情報などに添えて、グランドスライムに関する情報が書かれていた。
「字面ではわかりにくいかもしれませんが……そこに書いてあるのは事実です。それを読めばユニット使用の許可が下りた理由もお分かりになるでしょう」
そこには、はっきりと書いてある。グランドスライム、その高さはおよそ10mである、と。
「横幅は20mぐらいです。写真もありますよ?」
そういって見せられた写真には、やや遠目ではあるが、確かに木よりも高いその姿が写されていた。このサイズがダメージを受けるたびにプチスライムを作り出していくとなると、その数はいったいどれだけになるのか、想像もつかない。
「こちらも一応魔導アーマーなど用意して事に当たったのですが、その攻撃も質量に見合うものでして、一発もらっただけで大破してしまい、逃げ帰ることになってしまいました」
ため息をつきながら兵士は続けた。
「帝国軍としてもこれ以上の損害は避けたいのです。そのためにも、皆さんの協力が必要です。どうか、よろしくお願いいたします」
とある依頼がハンターオフィスに提示された。
その内容は隊商が旅の途中で見つけ、通報してきたスライム1体の駆除というものだった。
これだけならそう珍しい依頼でもない。だが、よくよく内容を確認してみると……この依頼がただ事ではない、ということがわかる。
何しろ、ユニットの使用を許可する旨が書かれているのだから。
●
「まず、2種類のスライムが出てきます」
帝国軍の兵士が自己紹介もそこそこに話を始めた。
「一つはグランドスライム。もう一つはプチスライム、と呼称しています」
この時点で、ハンター達には疑問が浮かんだ。内容はスライム『1体』の駆除であるはずなのに、2種類とはどういうことなのか。
「はい。討伐対象はグランドスライム1体であっています。ただこのグランドスライム、攻撃を受けると水飛沫のように破片が飛び散っていくんですが……その破片の一つ一つがプチスライムとして独自に行動をとるようになるのです」
グランドスライム自体がプチスライムの集合体なのか、それとも単に分裂の一種なのか……そのあたりは定かではないが、とにかくこのスライムは分裂していくらしい。
「分裂体といって侮ってはいけません。このプチスライムの体当たり1発で兵士が昏倒してしまうのです」
さらに、非常に素早く、逃げようとした兵士にも瞬時に追いつき体当たりを食らわせてきたという。幸いだったのは、プチスライムの耐久力が非常に低く、体当たりを行うと自分も飛び散ってしまったことだ。その後分裂や再生なども行わなかったようで、それで死んでしまったようだ。
「……これだけなら、覚醒者ならなんとかなる。そうお考えでしょうね。そこで、こちらの資料をご覧ください」
確かにこれだけならユニットを使用しなくても事足りそうではある。そんなハンターたちの考えを察したのか、兵士は次の資料を提示する。そこには、先ほどのプチスライムに関する情報などに添えて、グランドスライムに関する情報が書かれていた。
「字面ではわかりにくいかもしれませんが……そこに書いてあるのは事実です。それを読めばユニット使用の許可が下りた理由もお分かりになるでしょう」
そこには、はっきりと書いてある。グランドスライム、その高さはおよそ10mである、と。
「横幅は20mぐらいです。写真もありますよ?」
そういって見せられた写真には、やや遠目ではあるが、確かに木よりも高いその姿が写されていた。このサイズがダメージを受けるたびにプチスライムを作り出していくとなると、その数はいったいどれだけになるのか、想像もつかない。
「こちらも一応魔導アーマーなど用意して事に当たったのですが、その攻撃も質量に見合うものでして、一発もらっただけで大破してしまい、逃げ帰ることになってしまいました」
ため息をつきながら兵士は続けた。
「帝国軍としてもこれ以上の損害は避けたいのです。そのためにも、皆さんの協力が必要です。どうか、よろしくお願いいたします」
リプレイ本文
●
「まったく、スライム一匹相手取って帝国軍が敗北とは父ちゃん情けなくって涙……」
でてくらぁ……と、言いかけて、ミグ・ロマイヤー(ka0665)は唖然としてしまった。
その視界にはとてつもなく大きなスライムが一体映っていた。
「どこからでも出てくるスライムっつっても、ここまでデカくなるもんなのな」
周囲を見回しながら岩井崎 旭(ka0234)がつぶやく。周囲には木が生えているものの、そこまで邪魔にはならないように思われる。
「これならここで戦っても問題なさそうだな。な、ウォルドーフ」
見回す旭の隣にはウォルドーフが並び立っていた。銀の毛並みに、燃える焔にも見える鬣と尻尾を持つのが特徴のイェジドだ。
「こういうのって、ほっといたらどこまでデカくなるのか、興味はあるな……まぁ、デカくなりすぎるとほんとに手に負えなくなりそうだな」
こちらは純白の毛並みを持つイェジドのイレーネ。その傍らにはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が立っていた。
「最近は巨大な敵が多くなったな……いや、そういう敵が俺たちに回されるようになったのか……」
「それだけじゃない。今回は分裂する敵だ……少々厄介だな」
グランドスライムを眺めていたロニ・カルディス(ka0551)に答えるように榊 兵庫(ka0010)がつぶやく。
「分裂しようが関係ないね。敵がいなくなるまでぶん殴る。シンプルにいくぞー」
ミリア・エインズワース(ka1287)がそういうと、それに呼応するようにクリーム色の体毛を持つイェジドのざんぎえふも吠えた。
少し離れたところでは雨を告げる鳥(ka6258)が魔導カメラを使用してグランドスライムの様子を撮影していた。
(突然変異の類であろうが、負のマテリアルの集合体ともいうべき稀有な存在だ。記録する価値がある)
「……もういいかな。派手にやると掃除が大変そうだけどまぁ……頑張ろうか」
ヘイムダル『ヴェルガンド』に搭乗したグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)は、雨を告げる鳥が魔導カメラを仕舞うのを確認してハッチを閉じた。
●
まず動いたのはロニ。
「巨大……とはいえ、動きは鈍いか」
容易に接近したロニはレクイエムを使用。静かな鎮魂歌がグランドスライムの行動を阻害する。
「……元から鈍いから、効果があったのかいま一つわかりにくいな。だが、問題なく効いたはずだ」
それに伴い各自がグランドスライムを囲むように動く。
とにもかくにも攻撃してみないと始まらない。その攻撃の規模はまちまちであったが。
「圧死なんて最低から数えて2番目にひどい死に方じゃからな。警戒するにこしたことはなかろう」
ミグは包囲しつつもやや離れたところに位置。仲間の攻撃を確認し、それによるプチスライムの生成数を見てから対応していくつもりのようだ。
グランドスライムよりは小さいものの、参加者の中では大きい方にあたるヴェルガンド。
「さて、いい訓練になるといいけどな」
乗り込んだグリムバルドはマシンガンを構えさせ、グランドスライムに対して斉射。マシンガンの弾丸は吸い込まれるようにスライムへ命中していく。
「こっちもデカい分狙われたらちょっと面倒だけど、そうはならなさそうだな」
この辺りはロニのレクイエムが効いているお陰だろう。スライムは動こうとしない。
「私は再度告げる。どの程度の威力の攻撃で、どの程度の数の敵が生成されるのか、確認を忘れないように」
そう声を上げたのち、雨を告げる鳥はその手をグランドスライムへ向ける。
「流転せよ。流転せよ。不均衡なる力。人理聡慧の灯火。紅の矢よ。顕現せよ」
詠唱により現れた炎の矢はグランドスライムに直撃する。
「レインのいう通り、数は確認しておいた方がいいか」
兵庫も槍での刺突。特にスキルなどを使ったわけではない通常攻撃。これで数を図ろうとする。
「頼むぜ、ウォルドーフ」
そちらもしっかり仕事をこなせ、というつもりだろうか。旭を一瞥し離れていくウォルドーフ。プチスライムが逃げ出して後日復活されるのが面倒と考えた旭はウォルドーフに外側で逃げようとする敵の殲滅を任せる。
そして、自身はグランドスライムへ向かう。
「そのでけー図体、ごっそりぶち撒きやがれ!」
旭はハルバードを手に吹き荒れる塵旋風。周囲を旋風のごとく薙ぎ払う。
「さて、まずは真っ二つぐらいにしちまうか」
ミリアはソウルエッジを使用。魔力を付与した斬魔刀を構える。
「いくぞ、ざんぎえふ!」
いうが早いか、ざんぎえふはミリアを乗せて駆けだす。
そのまま勢いをつけながらざんぎえふは鋭い牙でグランドスライムを攻撃。ずんぐりむっくりとした印象を受ける外見だが、動きはイェジドらしく俊敏だ。さらに、その背に乗ったミリアは、接触の瞬間飛び降りることで勢いをつけながら薙ぎ払い。相棒との合わせ技だ。
「イレーネ、足は止めないように」
アルトはイレーネにそう指示を出す。と、同時にその場から消える。いや、消えたように見えただけだ。踏鳴による高速移動。この時点でアルトはすでに超重刀を抜刀。スライムの脇を駆け抜けるように斬りつける。駆け抜けたその後に、切り裂かれ飛沫を上げるスライムの傷跡が見える。
アルトを始め、ミリアや旭のような範囲攻撃は通常の攻撃より大きな効果を与えているように見える。デカいからこその弊害というやつであろう。
「おお、さすがは歴戦の強者ぞろい。よい解体っぷりじゃな。さて……」
その様子を見ていたミグ。この調子なら自身の出番はないかもしれないな、などと思っていた矢先、またも唖然とする出来事が。
「な、何か多くないかの」
降り注ぎながら形を成していくプチスライムたち。その数は100を優に超えていた。
●
「私は問う。その数は如何に」
「200までは数えたが、そこから先はもうわからんのじゃ」
雨を告げる鳥からの質問にミグはそう答える。みなほぼ同じタイミングで攻撃を仕掛けたため、こうしてまとめて大量の敵が出てくることになったのだろう。
だが、敵の数はそれで済まない。グランドスライムへの攻撃の手は未だ緩まないからだ。
「結構多いな。細かい奴は任せたぞ、ざんぎえふ」
わふ、と小さく返事でもするように吠えたざんぎえふ。その爪と牙を持って、手近なプチスライムを攻撃していく。これはグランドスライムを攻撃するミリアがプチスライムに囲まれないようにすることが目的だろう。
そのミリアは斬魔刀を構え、グランドスライムを一直線に見据える。
「断てると信じれば、ってな!」
気合とともに薙ぎ払う。その威圧によってグランドスライムが一瞬硬直したかのような錯覚を受ける。さらにミリアは連続攻撃を加えていく。これによって当然のように敵の体は爆ぜ、さらにプチスライムは増える。
「っ……小さい奴の攻撃なら受け止めきれるけど、デカいのはそうもいかないかなら」
グランドスライムを削れば、その体も縮小し大きなダメージを負う可能性が減る。ざんぎえふでも処理しきれなかったスライムがミリアを襲うが、それを避け、受け、あるいは薙ぎ払いに巻き込みながら、ミリアは攻撃を続けた。
「あっちはうまくやってくれてるかな」
外縁で逃げようとする敵のカバーに回っているウォルドーフを気に掛ける旭。その頬をグランドスライムの攻撃がかすめる。本当にかすっただけだが、体に響く衝撃は思いのほか大きい。
「気は抜けないってか……上等!」
受けたダメージはすぐさまリジェネレーションを使用して回復。そして、態勢を立て直しつつ追撃の塵旋風。
「端から削りきってやる!」
周囲のプチスライムもまとめて薙ぎ払う。これなら囲まれる心配も少ない。
グランドスライムにはこのミリアと旭の二人が中心になって攻撃を仕掛ける。その大きさは当初と比べると3割から4割程度目減りしているように見え、今も順調に減少を続けているようだ。
「天地開闢にして原初の崩壊。星に眠りし不滅の炎よ。万象等しく灰燼に帰せ」
そこに雨を告げる鳥が詠唱。生れ出た火の玉がグランドスライムの足元あたりに命中する。
二人の攻撃に合わせて使用したのは、それによって生成されたプチスライムが拡散する前に仕留めようというつもりのようだ。
その目論見はうまくいき、数体のプチスライムが生まれてすぐ灰となる。
ただ、旭もミリアも使用しているのは範囲攻撃。加害範囲が広いためか、生まれるプチスライムも数はもちろん範囲も意外と広く、ファイアボールだけではカバーしきれない。
生まれたプチスライムのうちいくつかが雨を告げる鳥に体当たりを敢行。単発のダメージはやや撃たれ弱い雨を告げる鳥でも十分耐えうるものだったが、2発、3発と受けると厳しい。
「大丈夫か?」
「っ……私は、感謝する。ありがとう」
カバーに入った兵庫は雨を告げる鳥に接近したプチスライムを叩き落すと、さらにその周囲を薙ぎ払い、一時的にプチスライムが居ない状態を作り出す。
「よし、イェジドのあたりまで下がった方がいい」
「了解した」
雨を告げる鳥はそのまま距離をとると、再度魔法による広域殲滅を図る。
「凍れる棺よ開け。永久の刻を巡る白き闇。無音の世界の中で安息を齎さん」
冷気の嵐を巻き起こすブリザード。これによりプチスライムの動きを制しようとする。が、制するまでもなく今の範囲にいたスライムは動きを止める。
(やはり弱い。だが、私は手を抜かない)
常にプチスライムの生成がこちらの殲滅力を上回らないよう、グランドスライムに対応する味方以上に奮起する。
「……さて、一体一体は脅威にもならないが、これだけ多いと掃討に時間がかかるな。それなら……」
兵庫は手近なプチスライムをたたき伏せると、その場から飛退く。逃げる、というよりはグランドスライムから距離をとる動きだ。
「この辺りでいいか」
ここでソウルトーチを使用。距離をとったのはグランドスライムを引き寄せないようにするため。プチスライムをピンポイントで引き付けて一網打尽にしようという策だ。この狙いは大当たりで、多数のプチスライムが寄ってくる。
ただ、いかんせん敵の数が多い。薙ぎ払いで多数を殲滅しても、残った敵に体当たりを食らう。
守りの堅い兵庫ではあるが、雨を告げる鳥が受けた数の数倍に体当たりを食らって大きなダメージを受けた。
それでも倒れない兵庫は、そのままソウルトーチと薙ぎ払いを利用して殲滅していく。
「予想はしていたが、すごい量だな」
呟くロニは、あえて集団の渦中に飛び込む。無論、勝算あってのことだ。
集団は当然ロニに向かって突っ込んでくる。だが、それよりもロニが速い。大鎌の柄、その先端を地面に突き立てる。同時に広がる光がスライムたちを瞬時に塵へと還す。セイクリッドフラッシュだ。
「……だが、このまま削り落としていこう」
全周囲をカバーするこの攻撃にはほぼ死角はない。無論射撃攻撃などで近寄らないようにして戦うなどの手もあるのだが、単純な体当たりしか行えないスライムにはそんなことは不可能だし、思いつきもしないだろう。
「さぁ、かかってくるといい」
そう言って、再度ロニは鎌の柄を地面に突き立てる。スライムたちは、ただただ無策に突っ込んでいき、ただただ無様に消し飛ばされるだけであった。
「さて、つぶしていくとしようかの」
プチスライムごときにスキルを使うのはもったいないと考えていたミグ。大型の盾でしらみつぶしにしていく方針だ。攻性防壁での弾き飛ばしなども考えていたが、盾を振り盾にあてれば軽くつぶせる。
だが、移動中であったりそこにいただけのスライムへの攻撃ならともかく、体当たりしてきているスライムは勢いも強く、その衝撃は意外と大きい。
「くっ……」
真正面から盾で受け止めたミグ。その衝撃で軽く態勢が崩れてしまう。この隙に一匹、懐に入り込まれる。死角から寄ってきていたようだ。これには敵の数が多かったため注意が散漫になっていたのもある。
結果的に、もろに体当たりを喰らってしまう。
「圧死はせんじゃろうが、取り囲まれて滅多打ちもごめんじゃな」
再度プチスライム全体を視野に入れられるように引くと、今度はファイアスローワーを使用。
「スライム共も、消毒じゃー!」
扇状の破壊エネルギーが寄ってくるスライムを焼却処理する。
「やれやれ、最初からこうやっておれば早かったかのぉ」
一方、アルトは回避しつつプチスライムを処理していく。
(小さい分速い……けど、小回りが利かないみたいだな。避けるのは難しくない)
移動しながらの散華は足を止めないことで敵の的にならないというメリットもあり効果的。
(難しくない、けど……)
ここで、何かを閃いたアルト。あえて足を止めた。当然ながら、プチスライムは動きを止めたところを狙ってくる。だが、これは撒き餌だ。
「遅い」
一匹の攻撃を回避する。と、同時にその場を急速移動するアルト。瞬影を使用したのだ。アルトの早業についていけず、互いにぶつかり合って自滅するプチスライム。
敵の数が減り多少余裕ができたアルトはイレーネの方へ目を向ける。
イレーネは足を止めずに対処する方針。後衛の防衛も指示していたためその立ち位置はグランドスライムを中心にやや外側。旭のウォルドーフと同じような立ち位置か。そのおかげか攻撃してくるプチスライムはやや少ないように見える。ふと、アルトの脳裏にはイレーネとの出会いが思い浮かんだ。あの時は助太刀に入ったのだが……
「イレーネなら、あの程度は十分捌けるな」
そう判断したアルトは、目前の敵に対し集中を高めていく。
「スライムの集合体みたいなものなんだよな。一体じゃ弱くても集まることで強くなるっていうお手本みたいなやつだな」
一方、ヴェルガンドを操るグリムバルドはそう呟きながらもマシンガンを使いプチスライムに対し掃射。着実に殲滅していく。しかし、数が多い。
(……ここはファイアスローワーで殲滅したほうが早いか?)
そう判断したグリムバルド。だが、量産型と違いヘイムダルは閉鎖型のコクピット。機導術を使うならばコクピットを開けなければならない。
「うぉっ!?」
だが、開けようとした瞬間、目前にスライムが突っ込んできたため慌てて閉じる。
ガンと衝撃が伝わってくる。次いでベチャリと何かがつぶれるような音が聞こえた気がした。プチスライムの攻撃はやはりそこまで強力なわけではなく、アーマーなら長時間耐えられそうだ。
「このまま戦った方がいいかな。それに、コクピットまで入られたら面倒だよな、これ……」
呟きながら、グリムバルドは機体を制御し腕を振る。振られた腕に当たったプチスライムがつぶれる様子が見えた。機体の大きさとプチスライムの耐久力が低いことが合わされば、ただ動くだけ、ただ無造作に腕を振り回すだけでも脅威になる。
「ただ、あんまり暴れると味方の邪魔か」
こうしてグリムバルドはそのまま搭乗しつつ、寄ってきたスライムは振り払い、遠くの敵は弾幕を張る形で戦闘を継続していく。
最初こそ生成されたプチスライムの数に驚かされたが、それらの耐久力は低い。
範囲攻撃を利用した戦法でその数をガンガン減らしていく。
グランドスライムの方もダメージを受けその巨体がみるみる小さく削られていき……
「喰らえ!」
ミリアが上段から斬魔刀を振り下ろしスライムを両断。同じ大きさぐらいの2匹に分かれる。そこを片方はざんぎえふ。片方は旭が仕留めた。
「よし! 残りは……」
旭が周囲を見回すが、もはやスライムの姿は見えない。
やや離れたところにはイレーネ、ウォルドーフの姿。こちらに戻ってきているのを見ると、戦線を離脱しようとしたスライムも皆殲滅できたようだ。
●
「私は、提案する。念のため再度周辺の索敵を」
雨を告げる鳥の提案に従い周辺を探してみてもスライムの姿は見当たらない。
これで、敵の殲滅は完了したとみて間違いなさそうだ。
「しかし、お互い結構くらったな」
ざんぎえふを労うように撫でながらミリアは言った。ダメージはざんぎえふの方がかなり多い。大きい分プチスライムの攻撃が当たりやすかったのかもしれない。ただ、ざんぎえふの頑張りでミリアのダメージがかなり抑えられたのも事実だろう。
「お疲れ様」
戦いが終わりアルトの元へ戻ってきたイレーネ。戦闘時の獰猛さはすでに鳴りを潜めており、穏やかな平時の状態に戻っている。
その体には多少痣ができている。攻撃を幾分か受けてしまったようだ。
「今度は全部躱せるように、強くなろう」
そう、アルトはイレーネを励ました。
「しかし……嫌らしい敵だったな」
肩で息をつく兵庫。この戦いで最も疲弊したのはあるいは彼だっただろう。
(これなら多少危険が伴おうと歯ごたえのある個体と戦った方がましだったかもしれないな)
雑魚を延々とたたき続けるのは相応に苦痛だっただろう。それに、雑魚であるからこそ勝利の充足もいまいちということだろう。こうネガティブな方向に思考が向かうのも疲れが原因だろうか。
「まぁ、所詮はスライムだったということだ」
こちらは無傷のロニ。今回の敵と、それに対する戦闘手段は非常に相性が良かった。その結果だろう。
「結構当たっちまったな。まぁ仕方ないか」
ヴェルガンドから降りたグリムバルド。装甲はところどころへこみや傷がついている。大型のユニットでは小物を相手にするのはやや難しかったのだろう。とはいえ、機体を移動させ、それに当たっただけでスライムを数匹処理出来たりもした。
「大型での対応も一長一短ということかの」
ミグは自慢のユニットがオーバーホール中だったため生身で参戦せざるを得なかった。それを少し残念にも思ったかもしれないが、同時にユニットだけでは討ち漏らしが出たかもしれなかったのでこれはこれで必要だったと割り切る。
「さて、それじゃ戻って報告するとしようぜ」
ウォルドーフにまたがりながら旭がそういった。
こうしてハンターたちは帰路についた。
帝国軍を打ち破った超巨大スライムの脅威は取り除かれた。作戦は大成功と言っていいだろう。
「まったく、スライム一匹相手取って帝国軍が敗北とは父ちゃん情けなくって涙……」
でてくらぁ……と、言いかけて、ミグ・ロマイヤー(ka0665)は唖然としてしまった。
その視界にはとてつもなく大きなスライムが一体映っていた。
「どこからでも出てくるスライムっつっても、ここまでデカくなるもんなのな」
周囲を見回しながら岩井崎 旭(ka0234)がつぶやく。周囲には木が生えているものの、そこまで邪魔にはならないように思われる。
「これならここで戦っても問題なさそうだな。な、ウォルドーフ」
見回す旭の隣にはウォルドーフが並び立っていた。銀の毛並みに、燃える焔にも見える鬣と尻尾を持つのが特徴のイェジドだ。
「こういうのって、ほっといたらどこまでデカくなるのか、興味はあるな……まぁ、デカくなりすぎるとほんとに手に負えなくなりそうだな」
こちらは純白の毛並みを持つイェジドのイレーネ。その傍らにはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が立っていた。
「最近は巨大な敵が多くなったな……いや、そういう敵が俺たちに回されるようになったのか……」
「それだけじゃない。今回は分裂する敵だ……少々厄介だな」
グランドスライムを眺めていたロニ・カルディス(ka0551)に答えるように榊 兵庫(ka0010)がつぶやく。
「分裂しようが関係ないね。敵がいなくなるまでぶん殴る。シンプルにいくぞー」
ミリア・エインズワース(ka1287)がそういうと、それに呼応するようにクリーム色の体毛を持つイェジドのざんぎえふも吠えた。
少し離れたところでは雨を告げる鳥(ka6258)が魔導カメラを使用してグランドスライムの様子を撮影していた。
(突然変異の類であろうが、負のマテリアルの集合体ともいうべき稀有な存在だ。記録する価値がある)
「……もういいかな。派手にやると掃除が大変そうだけどまぁ……頑張ろうか」
ヘイムダル『ヴェルガンド』に搭乗したグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)は、雨を告げる鳥が魔導カメラを仕舞うのを確認してハッチを閉じた。
●
まず動いたのはロニ。
「巨大……とはいえ、動きは鈍いか」
容易に接近したロニはレクイエムを使用。静かな鎮魂歌がグランドスライムの行動を阻害する。
「……元から鈍いから、効果があったのかいま一つわかりにくいな。だが、問題なく効いたはずだ」
それに伴い各自がグランドスライムを囲むように動く。
とにもかくにも攻撃してみないと始まらない。その攻撃の規模はまちまちであったが。
「圧死なんて最低から数えて2番目にひどい死に方じゃからな。警戒するにこしたことはなかろう」
ミグは包囲しつつもやや離れたところに位置。仲間の攻撃を確認し、それによるプチスライムの生成数を見てから対応していくつもりのようだ。
グランドスライムよりは小さいものの、参加者の中では大きい方にあたるヴェルガンド。
「さて、いい訓練になるといいけどな」
乗り込んだグリムバルドはマシンガンを構えさせ、グランドスライムに対して斉射。マシンガンの弾丸は吸い込まれるようにスライムへ命中していく。
「こっちもデカい分狙われたらちょっと面倒だけど、そうはならなさそうだな」
この辺りはロニのレクイエムが効いているお陰だろう。スライムは動こうとしない。
「私は再度告げる。どの程度の威力の攻撃で、どの程度の数の敵が生成されるのか、確認を忘れないように」
そう声を上げたのち、雨を告げる鳥はその手をグランドスライムへ向ける。
「流転せよ。流転せよ。不均衡なる力。人理聡慧の灯火。紅の矢よ。顕現せよ」
詠唱により現れた炎の矢はグランドスライムに直撃する。
「レインのいう通り、数は確認しておいた方がいいか」
兵庫も槍での刺突。特にスキルなどを使ったわけではない通常攻撃。これで数を図ろうとする。
「頼むぜ、ウォルドーフ」
そちらもしっかり仕事をこなせ、というつもりだろうか。旭を一瞥し離れていくウォルドーフ。プチスライムが逃げ出して後日復活されるのが面倒と考えた旭はウォルドーフに外側で逃げようとする敵の殲滅を任せる。
そして、自身はグランドスライムへ向かう。
「そのでけー図体、ごっそりぶち撒きやがれ!」
旭はハルバードを手に吹き荒れる塵旋風。周囲を旋風のごとく薙ぎ払う。
「さて、まずは真っ二つぐらいにしちまうか」
ミリアはソウルエッジを使用。魔力を付与した斬魔刀を構える。
「いくぞ、ざんぎえふ!」
いうが早いか、ざんぎえふはミリアを乗せて駆けだす。
そのまま勢いをつけながらざんぎえふは鋭い牙でグランドスライムを攻撃。ずんぐりむっくりとした印象を受ける外見だが、動きはイェジドらしく俊敏だ。さらに、その背に乗ったミリアは、接触の瞬間飛び降りることで勢いをつけながら薙ぎ払い。相棒との合わせ技だ。
「イレーネ、足は止めないように」
アルトはイレーネにそう指示を出す。と、同時にその場から消える。いや、消えたように見えただけだ。踏鳴による高速移動。この時点でアルトはすでに超重刀を抜刀。スライムの脇を駆け抜けるように斬りつける。駆け抜けたその後に、切り裂かれ飛沫を上げるスライムの傷跡が見える。
アルトを始め、ミリアや旭のような範囲攻撃は通常の攻撃より大きな効果を与えているように見える。デカいからこその弊害というやつであろう。
「おお、さすがは歴戦の強者ぞろい。よい解体っぷりじゃな。さて……」
その様子を見ていたミグ。この調子なら自身の出番はないかもしれないな、などと思っていた矢先、またも唖然とする出来事が。
「な、何か多くないかの」
降り注ぎながら形を成していくプチスライムたち。その数は100を優に超えていた。
●
「私は問う。その数は如何に」
「200までは数えたが、そこから先はもうわからんのじゃ」
雨を告げる鳥からの質問にミグはそう答える。みなほぼ同じタイミングで攻撃を仕掛けたため、こうしてまとめて大量の敵が出てくることになったのだろう。
だが、敵の数はそれで済まない。グランドスライムへの攻撃の手は未だ緩まないからだ。
「結構多いな。細かい奴は任せたぞ、ざんぎえふ」
わふ、と小さく返事でもするように吠えたざんぎえふ。その爪と牙を持って、手近なプチスライムを攻撃していく。これはグランドスライムを攻撃するミリアがプチスライムに囲まれないようにすることが目的だろう。
そのミリアは斬魔刀を構え、グランドスライムを一直線に見据える。
「断てると信じれば、ってな!」
気合とともに薙ぎ払う。その威圧によってグランドスライムが一瞬硬直したかのような錯覚を受ける。さらにミリアは連続攻撃を加えていく。これによって当然のように敵の体は爆ぜ、さらにプチスライムは増える。
「っ……小さい奴の攻撃なら受け止めきれるけど、デカいのはそうもいかないかなら」
グランドスライムを削れば、その体も縮小し大きなダメージを負う可能性が減る。ざんぎえふでも処理しきれなかったスライムがミリアを襲うが、それを避け、受け、あるいは薙ぎ払いに巻き込みながら、ミリアは攻撃を続けた。
「あっちはうまくやってくれてるかな」
外縁で逃げようとする敵のカバーに回っているウォルドーフを気に掛ける旭。その頬をグランドスライムの攻撃がかすめる。本当にかすっただけだが、体に響く衝撃は思いのほか大きい。
「気は抜けないってか……上等!」
受けたダメージはすぐさまリジェネレーションを使用して回復。そして、態勢を立て直しつつ追撃の塵旋風。
「端から削りきってやる!」
周囲のプチスライムもまとめて薙ぎ払う。これなら囲まれる心配も少ない。
グランドスライムにはこのミリアと旭の二人が中心になって攻撃を仕掛ける。その大きさは当初と比べると3割から4割程度目減りしているように見え、今も順調に減少を続けているようだ。
「天地開闢にして原初の崩壊。星に眠りし不滅の炎よ。万象等しく灰燼に帰せ」
そこに雨を告げる鳥が詠唱。生れ出た火の玉がグランドスライムの足元あたりに命中する。
二人の攻撃に合わせて使用したのは、それによって生成されたプチスライムが拡散する前に仕留めようというつもりのようだ。
その目論見はうまくいき、数体のプチスライムが生まれてすぐ灰となる。
ただ、旭もミリアも使用しているのは範囲攻撃。加害範囲が広いためか、生まれるプチスライムも数はもちろん範囲も意外と広く、ファイアボールだけではカバーしきれない。
生まれたプチスライムのうちいくつかが雨を告げる鳥に体当たりを敢行。単発のダメージはやや撃たれ弱い雨を告げる鳥でも十分耐えうるものだったが、2発、3発と受けると厳しい。
「大丈夫か?」
「っ……私は、感謝する。ありがとう」
カバーに入った兵庫は雨を告げる鳥に接近したプチスライムを叩き落すと、さらにその周囲を薙ぎ払い、一時的にプチスライムが居ない状態を作り出す。
「よし、イェジドのあたりまで下がった方がいい」
「了解した」
雨を告げる鳥はそのまま距離をとると、再度魔法による広域殲滅を図る。
「凍れる棺よ開け。永久の刻を巡る白き闇。無音の世界の中で安息を齎さん」
冷気の嵐を巻き起こすブリザード。これによりプチスライムの動きを制しようとする。が、制するまでもなく今の範囲にいたスライムは動きを止める。
(やはり弱い。だが、私は手を抜かない)
常にプチスライムの生成がこちらの殲滅力を上回らないよう、グランドスライムに対応する味方以上に奮起する。
「……さて、一体一体は脅威にもならないが、これだけ多いと掃討に時間がかかるな。それなら……」
兵庫は手近なプチスライムをたたき伏せると、その場から飛退く。逃げる、というよりはグランドスライムから距離をとる動きだ。
「この辺りでいいか」
ここでソウルトーチを使用。距離をとったのはグランドスライムを引き寄せないようにするため。プチスライムをピンポイントで引き付けて一網打尽にしようという策だ。この狙いは大当たりで、多数のプチスライムが寄ってくる。
ただ、いかんせん敵の数が多い。薙ぎ払いで多数を殲滅しても、残った敵に体当たりを食らう。
守りの堅い兵庫ではあるが、雨を告げる鳥が受けた数の数倍に体当たりを食らって大きなダメージを受けた。
それでも倒れない兵庫は、そのままソウルトーチと薙ぎ払いを利用して殲滅していく。
「予想はしていたが、すごい量だな」
呟くロニは、あえて集団の渦中に飛び込む。無論、勝算あってのことだ。
集団は当然ロニに向かって突っ込んでくる。だが、それよりもロニが速い。大鎌の柄、その先端を地面に突き立てる。同時に広がる光がスライムたちを瞬時に塵へと還す。セイクリッドフラッシュだ。
「……だが、このまま削り落としていこう」
全周囲をカバーするこの攻撃にはほぼ死角はない。無論射撃攻撃などで近寄らないようにして戦うなどの手もあるのだが、単純な体当たりしか行えないスライムにはそんなことは不可能だし、思いつきもしないだろう。
「さぁ、かかってくるといい」
そう言って、再度ロニは鎌の柄を地面に突き立てる。スライムたちは、ただただ無策に突っ込んでいき、ただただ無様に消し飛ばされるだけであった。
「さて、つぶしていくとしようかの」
プチスライムごときにスキルを使うのはもったいないと考えていたミグ。大型の盾でしらみつぶしにしていく方針だ。攻性防壁での弾き飛ばしなども考えていたが、盾を振り盾にあてれば軽くつぶせる。
だが、移動中であったりそこにいただけのスライムへの攻撃ならともかく、体当たりしてきているスライムは勢いも強く、その衝撃は意外と大きい。
「くっ……」
真正面から盾で受け止めたミグ。その衝撃で軽く態勢が崩れてしまう。この隙に一匹、懐に入り込まれる。死角から寄ってきていたようだ。これには敵の数が多かったため注意が散漫になっていたのもある。
結果的に、もろに体当たりを喰らってしまう。
「圧死はせんじゃろうが、取り囲まれて滅多打ちもごめんじゃな」
再度プチスライム全体を視野に入れられるように引くと、今度はファイアスローワーを使用。
「スライム共も、消毒じゃー!」
扇状の破壊エネルギーが寄ってくるスライムを焼却処理する。
「やれやれ、最初からこうやっておれば早かったかのぉ」
一方、アルトは回避しつつプチスライムを処理していく。
(小さい分速い……けど、小回りが利かないみたいだな。避けるのは難しくない)
移動しながらの散華は足を止めないことで敵の的にならないというメリットもあり効果的。
(難しくない、けど……)
ここで、何かを閃いたアルト。あえて足を止めた。当然ながら、プチスライムは動きを止めたところを狙ってくる。だが、これは撒き餌だ。
「遅い」
一匹の攻撃を回避する。と、同時にその場を急速移動するアルト。瞬影を使用したのだ。アルトの早業についていけず、互いにぶつかり合って自滅するプチスライム。
敵の数が減り多少余裕ができたアルトはイレーネの方へ目を向ける。
イレーネは足を止めずに対処する方針。後衛の防衛も指示していたためその立ち位置はグランドスライムを中心にやや外側。旭のウォルドーフと同じような立ち位置か。そのおかげか攻撃してくるプチスライムはやや少ないように見える。ふと、アルトの脳裏にはイレーネとの出会いが思い浮かんだ。あの時は助太刀に入ったのだが……
「イレーネなら、あの程度は十分捌けるな」
そう判断したアルトは、目前の敵に対し集中を高めていく。
「スライムの集合体みたいなものなんだよな。一体じゃ弱くても集まることで強くなるっていうお手本みたいなやつだな」
一方、ヴェルガンドを操るグリムバルドはそう呟きながらもマシンガンを使いプチスライムに対し掃射。着実に殲滅していく。しかし、数が多い。
(……ここはファイアスローワーで殲滅したほうが早いか?)
そう判断したグリムバルド。だが、量産型と違いヘイムダルは閉鎖型のコクピット。機導術を使うならばコクピットを開けなければならない。
「うぉっ!?」
だが、開けようとした瞬間、目前にスライムが突っ込んできたため慌てて閉じる。
ガンと衝撃が伝わってくる。次いでベチャリと何かがつぶれるような音が聞こえた気がした。プチスライムの攻撃はやはりそこまで強力なわけではなく、アーマーなら長時間耐えられそうだ。
「このまま戦った方がいいかな。それに、コクピットまで入られたら面倒だよな、これ……」
呟きながら、グリムバルドは機体を制御し腕を振る。振られた腕に当たったプチスライムがつぶれる様子が見えた。機体の大きさとプチスライムの耐久力が低いことが合わされば、ただ動くだけ、ただ無造作に腕を振り回すだけでも脅威になる。
「ただ、あんまり暴れると味方の邪魔か」
こうしてグリムバルドはそのまま搭乗しつつ、寄ってきたスライムは振り払い、遠くの敵は弾幕を張る形で戦闘を継続していく。
最初こそ生成されたプチスライムの数に驚かされたが、それらの耐久力は低い。
範囲攻撃を利用した戦法でその数をガンガン減らしていく。
グランドスライムの方もダメージを受けその巨体がみるみる小さく削られていき……
「喰らえ!」
ミリアが上段から斬魔刀を振り下ろしスライムを両断。同じ大きさぐらいの2匹に分かれる。そこを片方はざんぎえふ。片方は旭が仕留めた。
「よし! 残りは……」
旭が周囲を見回すが、もはやスライムの姿は見えない。
やや離れたところにはイレーネ、ウォルドーフの姿。こちらに戻ってきているのを見ると、戦線を離脱しようとしたスライムも皆殲滅できたようだ。
●
「私は、提案する。念のため再度周辺の索敵を」
雨を告げる鳥の提案に従い周辺を探してみてもスライムの姿は見当たらない。
これで、敵の殲滅は完了したとみて間違いなさそうだ。
「しかし、お互い結構くらったな」
ざんぎえふを労うように撫でながらミリアは言った。ダメージはざんぎえふの方がかなり多い。大きい分プチスライムの攻撃が当たりやすかったのかもしれない。ただ、ざんぎえふの頑張りでミリアのダメージがかなり抑えられたのも事実だろう。
「お疲れ様」
戦いが終わりアルトの元へ戻ってきたイレーネ。戦闘時の獰猛さはすでに鳴りを潜めており、穏やかな平時の状態に戻っている。
その体には多少痣ができている。攻撃を幾分か受けてしまったようだ。
「今度は全部躱せるように、強くなろう」
そう、アルトはイレーネを励ました。
「しかし……嫌らしい敵だったな」
肩で息をつく兵庫。この戦いで最も疲弊したのはあるいは彼だっただろう。
(これなら多少危険が伴おうと歯ごたえのある個体と戦った方がましだったかもしれないな)
雑魚を延々とたたき続けるのは相応に苦痛だっただろう。それに、雑魚であるからこそ勝利の充足もいまいちということだろう。こうネガティブな方向に思考が向かうのも疲れが原因だろうか。
「まぁ、所詮はスライムだったということだ」
こちらは無傷のロニ。今回の敵と、それに対する戦闘手段は非常に相性が良かった。その結果だろう。
「結構当たっちまったな。まぁ仕方ないか」
ヴェルガンドから降りたグリムバルド。装甲はところどころへこみや傷がついている。大型のユニットでは小物を相手にするのはやや難しかったのだろう。とはいえ、機体を移動させ、それに当たっただけでスライムを数匹処理出来たりもした。
「大型での対応も一長一短ということかの」
ミグは自慢のユニットがオーバーホール中だったため生身で参戦せざるを得なかった。それを少し残念にも思ったかもしれないが、同時にユニットだけでは討ち漏らしが出たかもしれなかったのでこれはこれで必要だったと割り切る。
「さて、それじゃ戻って報告するとしようぜ」
ウォルドーフにまたがりながら旭がそういった。
こうしてハンターたちは帰路についた。
帝国軍を打ち破った超巨大スライムの脅威は取り除かれた。作戦は大成功と言っていいだろう。
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作戦会議室 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/10/23 14:44:30 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/22 02:13:08 |