ゲスト
(ka0000)
【猫譚】少年、憧れのユグディラを目の前に
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/22 19:00
- 完成日
- 2016/10/29 17:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●お舟で行くの?
プエル(kz0127)はこれまでやってきたことの経緯と状況をべリアルに説明しに戻った。
ユグディラ捕獲は失敗したため、猫を集めて許しを請う。猫たちの世話をしまくって愛着が湧いているため提供を求められたら大泣きするところであった。
貴族間の不和を掻き立てること……に関しては成功とも失敗とも行かず。たぶん、現状維持だろうなと。プエルの目的と相反することだと後で気づいて、現状時で良かったと胸の内では安堵している。
べリアルの態度から可も不可も感じられなかった。雑魔等を借りられるようなので一応の成果は出せているという感触だった。
安堵するプエルは一人になったときに不意に胸の中がもやもやした。
カバンの中からレチタティーヴォ人形を取り出し、抱きしめてうずくまる。
「ふえええ、レチタティーヴォ様……。僕、なんでこんなことしているんだろう」
主が用意したといわれるプエルの終幕という舞台。ただし、その真意はレチタティーヴォ自身が死んでいるために不明。あえて線路を敷き続けたプエルの相方と仕立て屋はどこまで理解していたのか全く分からない。
「たぶん、うまく行ってはいなかったんだよ」
プエルは父や妹の言葉を聞いて逃げだした。ハンターの隙をついて逃げきれてしまった、自分より強いはずの相手から。
単純に喜べない。
この事態が大好きな主レチタティーヴォの意図とずれるなら、怒られるかもしれないしあきれられるかもしれない。
それはつらいこと。もし主が当時いたら、逃げたことは褒めてもらえたのか?
そんなことは誰も分からない、本人がいないのだから。
「レチタティーヴォ様」
人形を抱きしめていると、ふと背後に気配を感じる。
「おい、プエル」
黒髪の青年がやってくる。べリアルの下に来たとき、借りたそこそこにできるかもしれない下っ端という立場らしい人物。プエルが名前を付けてマエロルとなった堕落者。一応、彼の出自に関してはプエルは調べた。利用できるならしたいが難しいかもしれない、時間がかかりすぎるのだ。
慌ててプエルはカバンにレチタティーヴォ人形をしまった。しまったのはいいが、腹のあたりが破れた。終幕に壊れた人形とは異なり、ちょっとしたことで壊れる人形。これで何体目か。
「ふえええええ」
プエルは半泣きで引っ張り出す。笑顔のレチタティーヴォ人形の腹は綿がはみ出している。
「あー、人形が死んだ」
「もー……何の用なの? 僕、ちょっとセンチメンタル中」
「センチメンタル中? あー、で、船があるんだ。ユグディラは島から来るって話もある。だから行くかなと思って?」
「……ユグディラ! え、行く行く!」
そんなわけで亡き主への思いをしまいつつ、プエルは前に突き進む。
(なんとかしてユグディラは守って、触らせてもらって、あわよくばペットにして……べリアルは――)
プエルはワクワクしながらマエロルについていったのだった。
●難破
そんなこんなでプエルは出かけたが、水辺に突っ伏して倒れていた。
「ふええええ! どうして! どうして! 僕だけ、僕だけ、波打ち際にいるんだ! 泳ぐなら夏でしょ!」
乾いたが塩まみれ。操って武器にするはずのぬいぐるみは流され、手元にいるものはずっしりと重い。操れても動くのだろうかと不安だ。
「……ここどこ? わー、お舟だ。うーん、ひとまず高いところに登ろう」
プエルは砂浜からとぼとぼと上がっていき、少し高いところにやってきた。
「……緑たくさん。うーん……ん?」
灌木の茂みから猫が勢いよく飛び出したのだった。
猫は後ろ足で立って立ち止まり、背中の毛を逆立てる。
プエルはきょとんとした顔から嬉しそうな顔になる。
「……ねこじゃらしなくなってる! あああ、袋だ! 猫は袋に入るっていうし」
「しゃあああああ」
「怖くないよ、おいで、おいでー」
ユグディラは自分が来た方を振り返る。プエルも怖いが後ろから来るかもしれないものも怖い。
「……何かあったのかな……」
そこに犬のような雑魔がやってきた。それはユグディラに襲い掛かる。
「だめだよ!」
プエルは雑魔を攻撃し倒した。雑魔はユグディラがいなければペットにしている毛がふさふさな犬だった。
「……にゃー?」
「にゃー」
「……」
ユグディラとプエルは互いの思いのままじっとする。
近くで大きな悲鳴が聞こえたのだ。ユグディラは尻込みを見せたが慌てて走り始めた。その瞬間、プエルは幻覚らしいものを受ける。
「え? ええええっ! 大変だ!」
ユグディラを追いかけていった。
●ハンター
ユグディラの島にやってきたハンターは雑魔が多いことに驚く。ユグディラに接触するよりもまずはその雑魔をどうにかしたほうがいいのではということが提案に出た。
そして、ハンターたちは位置を確認しつつ、進んでいく。
羊歪虚を見たような気もした。その瞬間、緊張が走る。
羊歪虚がいるならば狩場として素晴らしいところなってしまうだろう。
雑魔を倒しつつ進んでいくと、比較的広い場所に出た。そこには怯えるユグディラとそれを狙う雑魔がいる。
ハンターの対角線上にはユグディラを追いかけてきたらしい人影が。
「わあああ、大変だ! ユグディラ! ね、ね、雑魔を倒したら、ちょっとでいいから撫でさせてよ! 僕は別に君たちをいじめたいわけじゃないんだ! ……ハンターがいる……ねえ、羊はいなかった? いなかったら余は君たちに話したいこともある」
プエルは最後は声を潜めた。ただ、距離があって聞こえにくいのだが。
悠長なことはしていられない。雑魔たちはユグディラを襲い、侵入者であるハンターも排除しようとしているのだ。
プエル(kz0127)はこれまでやってきたことの経緯と状況をべリアルに説明しに戻った。
ユグディラ捕獲は失敗したため、猫を集めて許しを請う。猫たちの世話をしまくって愛着が湧いているため提供を求められたら大泣きするところであった。
貴族間の不和を掻き立てること……に関しては成功とも失敗とも行かず。たぶん、現状維持だろうなと。プエルの目的と相反することだと後で気づいて、現状時で良かったと胸の内では安堵している。
べリアルの態度から可も不可も感じられなかった。雑魔等を借りられるようなので一応の成果は出せているという感触だった。
安堵するプエルは一人になったときに不意に胸の中がもやもやした。
カバンの中からレチタティーヴォ人形を取り出し、抱きしめてうずくまる。
「ふえええ、レチタティーヴォ様……。僕、なんでこんなことしているんだろう」
主が用意したといわれるプエルの終幕という舞台。ただし、その真意はレチタティーヴォ自身が死んでいるために不明。あえて線路を敷き続けたプエルの相方と仕立て屋はどこまで理解していたのか全く分からない。
「たぶん、うまく行ってはいなかったんだよ」
プエルは父や妹の言葉を聞いて逃げだした。ハンターの隙をついて逃げきれてしまった、自分より強いはずの相手から。
単純に喜べない。
この事態が大好きな主レチタティーヴォの意図とずれるなら、怒られるかもしれないしあきれられるかもしれない。
それはつらいこと。もし主が当時いたら、逃げたことは褒めてもらえたのか?
そんなことは誰も分からない、本人がいないのだから。
「レチタティーヴォ様」
人形を抱きしめていると、ふと背後に気配を感じる。
「おい、プエル」
黒髪の青年がやってくる。べリアルの下に来たとき、借りたそこそこにできるかもしれない下っ端という立場らしい人物。プエルが名前を付けてマエロルとなった堕落者。一応、彼の出自に関してはプエルは調べた。利用できるならしたいが難しいかもしれない、時間がかかりすぎるのだ。
慌ててプエルはカバンにレチタティーヴォ人形をしまった。しまったのはいいが、腹のあたりが破れた。終幕に壊れた人形とは異なり、ちょっとしたことで壊れる人形。これで何体目か。
「ふえええええ」
プエルは半泣きで引っ張り出す。笑顔のレチタティーヴォ人形の腹は綿がはみ出している。
「あー、人形が死んだ」
「もー……何の用なの? 僕、ちょっとセンチメンタル中」
「センチメンタル中? あー、で、船があるんだ。ユグディラは島から来るって話もある。だから行くかなと思って?」
「……ユグディラ! え、行く行く!」
そんなわけで亡き主への思いをしまいつつ、プエルは前に突き進む。
(なんとかしてユグディラは守って、触らせてもらって、あわよくばペットにして……べリアルは――)
プエルはワクワクしながらマエロルについていったのだった。
●難破
そんなこんなでプエルは出かけたが、水辺に突っ伏して倒れていた。
「ふええええ! どうして! どうして! 僕だけ、僕だけ、波打ち際にいるんだ! 泳ぐなら夏でしょ!」
乾いたが塩まみれ。操って武器にするはずのぬいぐるみは流され、手元にいるものはずっしりと重い。操れても動くのだろうかと不安だ。
「……ここどこ? わー、お舟だ。うーん、ひとまず高いところに登ろう」
プエルは砂浜からとぼとぼと上がっていき、少し高いところにやってきた。
「……緑たくさん。うーん……ん?」
灌木の茂みから猫が勢いよく飛び出したのだった。
猫は後ろ足で立って立ち止まり、背中の毛を逆立てる。
プエルはきょとんとした顔から嬉しそうな顔になる。
「……ねこじゃらしなくなってる! あああ、袋だ! 猫は袋に入るっていうし」
「しゃあああああ」
「怖くないよ、おいで、おいでー」
ユグディラは自分が来た方を振り返る。プエルも怖いが後ろから来るかもしれないものも怖い。
「……何かあったのかな……」
そこに犬のような雑魔がやってきた。それはユグディラに襲い掛かる。
「だめだよ!」
プエルは雑魔を攻撃し倒した。雑魔はユグディラがいなければペットにしている毛がふさふさな犬だった。
「……にゃー?」
「にゃー」
「……」
ユグディラとプエルは互いの思いのままじっとする。
近くで大きな悲鳴が聞こえたのだ。ユグディラは尻込みを見せたが慌てて走り始めた。その瞬間、プエルは幻覚らしいものを受ける。
「え? ええええっ! 大変だ!」
ユグディラを追いかけていった。
●ハンター
ユグディラの島にやってきたハンターは雑魔が多いことに驚く。ユグディラに接触するよりもまずはその雑魔をどうにかしたほうがいいのではということが提案に出た。
そして、ハンターたちは位置を確認しつつ、進んでいく。
羊歪虚を見たような気もした。その瞬間、緊張が走る。
羊歪虚がいるならば狩場として素晴らしいところなってしまうだろう。
雑魔を倒しつつ進んでいくと、比較的広い場所に出た。そこには怯えるユグディラとそれを狙う雑魔がいる。
ハンターの対角線上にはユグディラを追いかけてきたらしい人影が。
「わあああ、大変だ! ユグディラ! ね、ね、雑魔を倒したら、ちょっとでいいから撫でさせてよ! 僕は別に君たちをいじめたいわけじゃないんだ! ……ハンターがいる……ねえ、羊はいなかった? いなかったら余は君たちに話したいこともある」
プエルは最後は声を潜めた。ただ、距離があって聞こえにくいのだが。
悠長なことはしていられない。雑魔たちはユグディラを襲い、侵入者であるハンターも排除しようとしているのだ。
リプレイ本文
●救出へ
「部下とはぐれたか? みんな気を付けろ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はつぶやいた後、不安定な場所であるがバイクを走らせプエルのそばまで一気に走り抜ける。途中にいたユグディラは散り散りに逃げ、雑魔も一瞬動きが止まる。
「ユグディラたち! 俺たちが守る、だから、こっちに来られるならおいで」
ザレム・アズール(ka0878)は機導術【ジェットブーツ】を使い、ユグディラがいるあたりに出る。
「あぁ、猫さん……なんて言っている場合ではないですね。避難してください」
ルカ(ka0962)は声を掛ける。猫そっくりで二足歩行するユグディラにときめきつつも、疲弊しているユグディラの女王や王国にある法術陣のことが脳裏をかすめる。それらを守るためにも、己を盾にしてでもユグディラは守ろうと前に出る。
「プエルにはいろいろ聞きたいことがありますが、まずはユグディラたちの救助ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は呟き、魔法で攻撃するためにマテリアルを活性化させる。まとめて雑魔を攻撃できるとはいえ、ユグディラや仲間を巻き込むのは本意ではないため、慎重に選ぶ。
「よりによってあの小僧か。やはり何かある……」
コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)はキリッと奥歯をかむと、距離を保ちつつ雑魔を倒すために馬を進める。倒すべき相手とはいえ、重要な情報を持つならまずそれが先だった。
「退屈しのぎにちょうどいい! 行くぞ!」
喜々として雑魔に向かって行く不動シオン(ka5395)。馬で抜け、邪魔な草は薙ぎ払う。もちろん、ユグディラがいないこと瞬時に確認してから。
「ほいほーい! またしてもネコさんが大ピンチ。ネズミさん……ヌートリアですか、今まで見たことはないですね。クマさんは、名前からして危険です。気を付けましょう」
小宮・千秋(ka6272)は小さい体で軽快なステップを踏み、軽やかに告げ敵との間合を計った。
●戦闘
コーネリアの銃弾がクマ雑魔に叩き込まれる。クマの雑魔はコーネリアに向かって突進してきた。
この隙に追い込まれていたユグディラたちは逃げ出す。
「まだ攻撃は続くのだぞ!」
その雑魔に対してシオンの銃弾が掠る。しかし、クマ雑魔はコーネリアに向かったまま止まらず、両手をあげて攻撃をしてくる。
「ちっ」
よけきれなかったコーネリアを羽交い絞めにし、鋭い牙でかみつく。
「攻撃しやすくなった。雑魔だろうと、ハンターの前ではただの熊だ!」
オートマチックでコーネリアは攻撃を行う。クマ雑魔がひるんだところに、シオンの十文字槍による攻撃が叩き込まれた。
再度、叩き込まれた銃弾に雑魔は霧散した。
「あっけなさすぎる!」
次の敵にそれぞれ向かった。
ザレムはまず【デルタレイ】で左手にいるヌートリア雑魔に攻撃を仕掛けた。続いて同じ魔法を使うか、銃で攻撃するか敵を見つつ考える。
ネズミたちから魔法が飛んでくる。水を圧縮したような弾であるがよけきれない。しかし、幸いなことに鎧で止められたようだ。
「ユグディラたち、新手が来るかもしれないから逃げるか、俺たちのそばで伏せて隠れろ」
怪我をしている個体もいるが動けるため、指示に従う。
ザレムがプエルの方を見ると、レイオスとにらみ合っている状態だった。
「ユグディラは守ります!」
ルカは一匹のクマ雑魔の前に出た、敵の気をそらすために。
「わたくしもいますよー。黒猫さん、マルチーズさん! 気を付けつつ、かく乱ですよー」
千秋はマテリアルで己の鎧を作り上げ、構える。
「いつでも来るのですー!」
「こっちでもいいですよ」
ルカの言葉に千秋は慌てるが、彼女が真剣なのはわかり困惑もする。
「駄目ですよー、役割分担は重要です」
クマ雑魔は千秋に鋭い爪をたたきつけた。一度受け止めることができず失敗する。
「大丈夫? 怪我を治すなら言ってくださいね」
「行けますよー。その時ではありません」
クマ雑魔が再度来たとき、千秋は敵の動きをうまく利用して倒したのだ。
「今です、畳みかけます」
援護も受けつつクマ雑魔を討伐した。
エルバッハは羊歪虚たちを警戒しつつも、ユグディラが逃げてくる目印となっていた。たまたま後方にいるから自然とそうなっただけだが重要だ。
「まとめて攻撃できるといいのですが」
【ウィンドスラッシュ】を確実に当てていくしかない。
千秋がひっくり返した雑魔にも魔法を叩き込む。
「これで1つ片付きましたね。それにしても、敵が来るとするとどこからでしょうか」
周囲に目を走らせる。ユグディラたちは髭をぴくぴくさせ警戒をしているようだった。
レイオスはプエルのところまでやってきたが、ヌートリアのような雑魔が突進してきたため対応する。話を聞く気があるレイオスを助けるようにプエルが魔法を放ったため、レイオスはひやりとした。その魔法が目標に当たると弾けるという効果があるためであるが、鎧で止まった。
「……で、羊歪虚は近くで見てはいない、と一応言っておく」
「でも話をする状況じゃないね」
プエルは肩をすくめるが、ハンターによって雑魔が倒されるのは時間の問題であった。
ユグディラたちが警戒の声を発した。
●嘆きと嫉妬
「プエル! どうする? 指示は?」
やってきたマエロルは声をあげるがその前にハンターは立ちふさがる。
「羊どもが来るのは想定済みだ。私の憎しみの餌食になりたいのなら、望み通り引導を渡してやる!」
コーネリアの銃口が向く。
「挟み撃ちにもなっていない。暇を持て余しているのだ! 私を頼ませてくれるなら歓迎だ、料理しやる」
シオンが踵を返しタイミングを計る。
「巻き込まないならいいですね? 【ブリザード】」
エルバッハの放った魔法が合図となり、羊歪虚とマエロルに攻撃が集中する。
「駄目だ、マエロルを殺したら!」
プエルは前にいるレイオスに大剣を叩き込む。
受けたレイオスは首をかしげたくなる。以前受けた重みは全くない。自分が成長したためなのか、プエルの気が散っているためなのか。
「何が駄目なんだ。あれは、お前の監視じゃないのか」
「分からないよ」
鍔競り合いで動きが取れない。
「もう終わったよ」
ユグディラを守りつつ機導術を使っていたザレムが告げる。
「あいつはこれで良かったのかもしれないけど……でも、まあ、君たちがべリアルをとっとと倒してくれれば、問題ないのか」
プエルは鍔競り合いから逃げるように後方に飛ぶ。
「どういう意味だよ」
レイオスは武器を構えたままプエルの動向を見る。
「後悔先に立たず……これじゃ違うな。なかなかレチタティーヴォ様のマネは難しい」
プエルは武器を鞘に納めて肩をすくめた。
●ぬいぐるみ
コーネリアは周囲を警戒するように立つ。プエルも倒すべきではあるが、状況に必要なことは見落とすつもりはなかった。黙って武器に手をかけ、仲間のやり取りに耳を傾ける。
「お久しぶりです、プエルさん」
千秋が丁寧なあいさつをすると、プエルが怪訝な顔になる。
「久しぶり。君はいつも誰にでもそうなのか?」
「はい、礼儀正しいことは重要ですー。それにメイドの基本ですよねー。この耳と尻尾も重要です」
「ふーん」
プエルは千秋の足元にいるマルチーズと黒猫に威嚇される。
「それよりユグディラ、触りたい。僕もユグディラ守ったんだよ、ちょっとお礼に撫でさせてよ」
ユグディラは脱兎のごとくハンターの後方に逃げた。
「少しも触られたくないのですか?」
怪我の手当てをしていたルカがユグディラに問いかけると一斉に首を縦に振った。
「殺したりしないのに」
「それでもだめなのかい?」
ザレムが問うと、奇妙な幻覚が見える。抽象的で非常にわかりにくかったが、光と闇、柔らかいと固いというような対立するイメージだった。
「……君はユグディラを可愛いと感じる、プラスの心を持てる君がなぜ破滅にばかり身をゆだねるんだい?」
ザレムの言葉にプエルは目を瞬く。
「……歪虚の版図の奥で暮らすとか……交わらない方法はないのかな」
「何を言っているんだ」
プエルが鼻で笑う。
「僕はニコラス・クリシスと言う名のグラズヘイム王国の貴族だよ。王国に住んで何が悪いんだい? それにみんな無に還るんだよ?」
「……っ」
悲痛な表情のザレムの手に、子狐のぬいぐるみが握られている。
「何それ?」
「可愛いのが好きなんだろうから、これをプレゼントしたかったんだ」
「……えっ?」
「それは……さっき俺が言ったことを考えてほしい、餞別という気持ちからかな」
故郷にいるだけの存在であれば、難しい話だ。
「……可愛いよ、それ。でも、僕は14歳男で騎士団長に憧れて、かっこよくなりたくて……でも、ニコラスなら素直に受け取れただろうね」
プエルはぬいぐるみをつついた。
「で、話は前に言っていたクリシス家や王女様のためになるってやつのことか?」
レイオスの言葉にプエルは手をたたいた。
「そうそう。べリアル倒すことだよ」
「……あなたの主ではないのですか?」
「僕の主っていうなら、レチタティーヴォ様以外ありえないよ」
ルカに屈託なく笑うがどこか暗い。彼の主はすでにハンターによって討伐されている。
「僕がレチタティーヴォ様にお会いしたころを考えたんだ。ホロウレイドの戦いの後だし……べリアル嫌いでしょ?」
リアルブルーにいた者は伝聞のことであり、クリムゾンウェストに籍を置く者でもぴんと来ない時のこと。
「……ん? ひょっとして俺と同じくらい」
「……そうなんだよ、記憶戻ったら気づいた僕も」
話から計算したザレムの言葉にプエルは溜息をもらす。
「で、べリアル倒すって具体的には?」
「そこが問題なんだ!」
プエルは首を傾げた。
「一応考えているんだけど、時間かかりすぎるんだ。べリアルの下で信用されるすごい部下になってからの方が動きやすいと思ったんだよ。少しは評価上がったみたいだけど……。うまい具合に島から動いたぽいし、なら今のうちかなって。でも僕が演出するにも準備がまだなんだ」
「計画ないに等しいか」
「そういうことだね」
レイオスは頭を抱える。
「今はべリアル軍にいて……べリアルを倒すとして、あなたはどうするんですか、そのあと」
エルバッハの問いかけにプエルは首をかしげる。
「うーん。人間同士で殺し合うっていうシナリオも面白いよね、レチタティーヴォ様がおっしゃっていたドラマってそういうことだよね」
「……それはあなたの考えですか?」
「……そうだけど? レチタティーヴォ様みたいな演出家になるのと遊びたいだけ」
エルバッハはプエルが年齢以上に子供に見える。
「よく個性がないって言われた……レチタティーヴォ様にお会いする前の記憶がないせいだと思った。でも、記憶がよみがえったらよみがえったでいろいろ気持ちが悪くて……」
「記憶がないほうが良かったですか?」
「分からない」
「そうですか」
エルバッハは考える、最初見たときのプエルは無邪気な子供であったのは、記憶がなく、ただレチタティーヴォのためという行動が純粋だったからかもしれないと。
「さっき、羊どもを倒すとき、止めたが……何かあるのか?」
「あるよ。僕の計画の1つだったんだよ」
シオンに告げる。
「イスルダ島に初めて行ったとき、人間がいないから驚いたんだ」
「……歪虚の島だからですね」
ルカは眉を顰める。
「でも、最初から歪虚の島だったわけではないよ? 歪虚が住み着く前は住民いたわけでしょ? その住民はどうなったのかって考えたことある?」
「逃げられないのは殺されたか?」
コーネリアが忌々し気につぶやくとプエルが肯定する。
「マエロルもその逃げられなかった人。マエロルは家族を守ろうとして傲慢のヒトのいうことを聞いて歪虚になった。でも、誰も守らなくて家族も歪虚になっちゃった。ただ殺されて雑魔化した人もいるらしいよ。マエロルがあの島にずーといた理由は強い歪虚に従うしかできなかったから。マエロルはずーと恨んでいるんだよ、王国の人間も歪虚も」
プエルは歌うように告げる。
「計画っていうのは」
「恨んでいる奴いるなら、後ろからつつけたらなって。時間がかかるし、リスクが高い……僕がもっと力があればこんなに苦しまなかったのかもしれない。うらやましいなぁ人間が、成長できるもんね」
プエルはハンターを見る。
「べリアルは動く。それより僕、せっかくならユグディラに触りたい」
プエルはしゃがんで「おいでー」と手を差し出すが、やはりユグディラは逃げる。
「仕方がないか」
プエルはあきらめて立ち上がる。
「本当に協力する気があるなら、どうするんだ、連絡方法は」
コーネリアの問いかけにプエルは首をかしげる。
「うーん、何とかしてみるよ……意外と僕連絡つけるのうまいから。うっ、睨まないでよ。何か案があれば言ってくれればいいのに」
プエルは苦笑する。
「じゃ、僕は行くね。調べないと……傲慢側の協力者がゼロになっちゃたから」
ハンターが攻撃しないことを肯定と捕らえ、お辞儀をしてから立ち去った。
「どこまで歪虚の言葉を信じるんだ?」
コーネリアは肉親を殺されているため疑いは深い。
「隠すことはしても嘘はついてきていないはず」
レイオスは思い返す。レチタティーヴォ絡みは口をつぐむが、嘘はついてきていないはずだ。
「同い年か……」
ザレムは渡せなかった子狐のぬいぐるみを抱きしめる。
「もし、プエルがそれを受け取って、次に敵対したとき、そのぬいぐるみが操られて攻撃して来たらザレムさんどうしますか」
「倒すけど……なんか複雑な気持ちはするかもしれない」
エルバッハの指摘にザレムは子狐の穏やかな顔を見てから背嚢にしまった。
「……怪我治しますよ? 意外と皆さん軽傷で済んでいます?」
ルカの問いかけに怪我が残る者もうなずく。
「意外と強くなくて良かったですね」
「もし、プエルさんも攻撃していた場合、どうなっていたのでしょうか?」
千秋の問いに剣を交えたことがある者に視線が集まる。
「話を聞かない、そして攻撃していれば……ユグディラ巻き込み普通に攻撃したんじゃないかな。仲間いないと、範囲魔法も使うし」
「それやられていたら、私、飛び出して守りますよ……肉盾ってやつですよ!」
グッとこぶしを握るルカ。
「ならなくて良かったというか」
ユグディラを守るなら仕方がないが、それはそれで問題だとレイオスは息を吐く。
「雑魔も強いほうだが、弱かった。あのプエルはどうなんだ」
シオンの言葉にレイオスは首を傾げた。
「手ごたえがなかった」
「お前が強くなったからじゃないのか? なら次に刃を交えたときは倒せるだろう」
シオンの言葉にレイオスはうなずくしかなかった。
ユグディラたちはお礼を述べつつ、不安そうにハンターを見ていた。
「部下とはぐれたか? みんな気を付けろ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はつぶやいた後、不安定な場所であるがバイクを走らせプエルのそばまで一気に走り抜ける。途中にいたユグディラは散り散りに逃げ、雑魔も一瞬動きが止まる。
「ユグディラたち! 俺たちが守る、だから、こっちに来られるならおいで」
ザレム・アズール(ka0878)は機導術【ジェットブーツ】を使い、ユグディラがいるあたりに出る。
「あぁ、猫さん……なんて言っている場合ではないですね。避難してください」
ルカ(ka0962)は声を掛ける。猫そっくりで二足歩行するユグディラにときめきつつも、疲弊しているユグディラの女王や王国にある法術陣のことが脳裏をかすめる。それらを守るためにも、己を盾にしてでもユグディラは守ろうと前に出る。
「プエルにはいろいろ聞きたいことがありますが、まずはユグディラたちの救助ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は呟き、魔法で攻撃するためにマテリアルを活性化させる。まとめて雑魔を攻撃できるとはいえ、ユグディラや仲間を巻き込むのは本意ではないため、慎重に選ぶ。
「よりによってあの小僧か。やはり何かある……」
コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)はキリッと奥歯をかむと、距離を保ちつつ雑魔を倒すために馬を進める。倒すべき相手とはいえ、重要な情報を持つならまずそれが先だった。
「退屈しのぎにちょうどいい! 行くぞ!」
喜々として雑魔に向かって行く不動シオン(ka5395)。馬で抜け、邪魔な草は薙ぎ払う。もちろん、ユグディラがいないこと瞬時に確認してから。
「ほいほーい! またしてもネコさんが大ピンチ。ネズミさん……ヌートリアですか、今まで見たことはないですね。クマさんは、名前からして危険です。気を付けましょう」
小宮・千秋(ka6272)は小さい体で軽快なステップを踏み、軽やかに告げ敵との間合を計った。
●戦闘
コーネリアの銃弾がクマ雑魔に叩き込まれる。クマの雑魔はコーネリアに向かって突進してきた。
この隙に追い込まれていたユグディラたちは逃げ出す。
「まだ攻撃は続くのだぞ!」
その雑魔に対してシオンの銃弾が掠る。しかし、クマ雑魔はコーネリアに向かったまま止まらず、両手をあげて攻撃をしてくる。
「ちっ」
よけきれなかったコーネリアを羽交い絞めにし、鋭い牙でかみつく。
「攻撃しやすくなった。雑魔だろうと、ハンターの前ではただの熊だ!」
オートマチックでコーネリアは攻撃を行う。クマ雑魔がひるんだところに、シオンの十文字槍による攻撃が叩き込まれた。
再度、叩き込まれた銃弾に雑魔は霧散した。
「あっけなさすぎる!」
次の敵にそれぞれ向かった。
ザレムはまず【デルタレイ】で左手にいるヌートリア雑魔に攻撃を仕掛けた。続いて同じ魔法を使うか、銃で攻撃するか敵を見つつ考える。
ネズミたちから魔法が飛んでくる。水を圧縮したような弾であるがよけきれない。しかし、幸いなことに鎧で止められたようだ。
「ユグディラたち、新手が来るかもしれないから逃げるか、俺たちのそばで伏せて隠れろ」
怪我をしている個体もいるが動けるため、指示に従う。
ザレムがプエルの方を見ると、レイオスとにらみ合っている状態だった。
「ユグディラは守ります!」
ルカは一匹のクマ雑魔の前に出た、敵の気をそらすために。
「わたくしもいますよー。黒猫さん、マルチーズさん! 気を付けつつ、かく乱ですよー」
千秋はマテリアルで己の鎧を作り上げ、構える。
「いつでも来るのですー!」
「こっちでもいいですよ」
ルカの言葉に千秋は慌てるが、彼女が真剣なのはわかり困惑もする。
「駄目ですよー、役割分担は重要です」
クマ雑魔は千秋に鋭い爪をたたきつけた。一度受け止めることができず失敗する。
「大丈夫? 怪我を治すなら言ってくださいね」
「行けますよー。その時ではありません」
クマ雑魔が再度来たとき、千秋は敵の動きをうまく利用して倒したのだ。
「今です、畳みかけます」
援護も受けつつクマ雑魔を討伐した。
エルバッハは羊歪虚たちを警戒しつつも、ユグディラが逃げてくる目印となっていた。たまたま後方にいるから自然とそうなっただけだが重要だ。
「まとめて攻撃できるといいのですが」
【ウィンドスラッシュ】を確実に当てていくしかない。
千秋がひっくり返した雑魔にも魔法を叩き込む。
「これで1つ片付きましたね。それにしても、敵が来るとするとどこからでしょうか」
周囲に目を走らせる。ユグディラたちは髭をぴくぴくさせ警戒をしているようだった。
レイオスはプエルのところまでやってきたが、ヌートリアのような雑魔が突進してきたため対応する。話を聞く気があるレイオスを助けるようにプエルが魔法を放ったため、レイオスはひやりとした。その魔法が目標に当たると弾けるという効果があるためであるが、鎧で止まった。
「……で、羊歪虚は近くで見てはいない、と一応言っておく」
「でも話をする状況じゃないね」
プエルは肩をすくめるが、ハンターによって雑魔が倒されるのは時間の問題であった。
ユグディラたちが警戒の声を発した。
●嘆きと嫉妬
「プエル! どうする? 指示は?」
やってきたマエロルは声をあげるがその前にハンターは立ちふさがる。
「羊どもが来るのは想定済みだ。私の憎しみの餌食になりたいのなら、望み通り引導を渡してやる!」
コーネリアの銃口が向く。
「挟み撃ちにもなっていない。暇を持て余しているのだ! 私を頼ませてくれるなら歓迎だ、料理しやる」
シオンが踵を返しタイミングを計る。
「巻き込まないならいいですね? 【ブリザード】」
エルバッハの放った魔法が合図となり、羊歪虚とマエロルに攻撃が集中する。
「駄目だ、マエロルを殺したら!」
プエルは前にいるレイオスに大剣を叩き込む。
受けたレイオスは首をかしげたくなる。以前受けた重みは全くない。自分が成長したためなのか、プエルの気が散っているためなのか。
「何が駄目なんだ。あれは、お前の監視じゃないのか」
「分からないよ」
鍔競り合いで動きが取れない。
「もう終わったよ」
ユグディラを守りつつ機導術を使っていたザレムが告げる。
「あいつはこれで良かったのかもしれないけど……でも、まあ、君たちがべリアルをとっとと倒してくれれば、問題ないのか」
プエルは鍔競り合いから逃げるように後方に飛ぶ。
「どういう意味だよ」
レイオスは武器を構えたままプエルの動向を見る。
「後悔先に立たず……これじゃ違うな。なかなかレチタティーヴォ様のマネは難しい」
プエルは武器を鞘に納めて肩をすくめた。
●ぬいぐるみ
コーネリアは周囲を警戒するように立つ。プエルも倒すべきではあるが、状況に必要なことは見落とすつもりはなかった。黙って武器に手をかけ、仲間のやり取りに耳を傾ける。
「お久しぶりです、プエルさん」
千秋が丁寧なあいさつをすると、プエルが怪訝な顔になる。
「久しぶり。君はいつも誰にでもそうなのか?」
「はい、礼儀正しいことは重要ですー。それにメイドの基本ですよねー。この耳と尻尾も重要です」
「ふーん」
プエルは千秋の足元にいるマルチーズと黒猫に威嚇される。
「それよりユグディラ、触りたい。僕もユグディラ守ったんだよ、ちょっとお礼に撫でさせてよ」
ユグディラは脱兎のごとくハンターの後方に逃げた。
「少しも触られたくないのですか?」
怪我の手当てをしていたルカがユグディラに問いかけると一斉に首を縦に振った。
「殺したりしないのに」
「それでもだめなのかい?」
ザレムが問うと、奇妙な幻覚が見える。抽象的で非常にわかりにくかったが、光と闇、柔らかいと固いというような対立するイメージだった。
「……君はユグディラを可愛いと感じる、プラスの心を持てる君がなぜ破滅にばかり身をゆだねるんだい?」
ザレムの言葉にプエルは目を瞬く。
「……歪虚の版図の奥で暮らすとか……交わらない方法はないのかな」
「何を言っているんだ」
プエルが鼻で笑う。
「僕はニコラス・クリシスと言う名のグラズヘイム王国の貴族だよ。王国に住んで何が悪いんだい? それにみんな無に還るんだよ?」
「……っ」
悲痛な表情のザレムの手に、子狐のぬいぐるみが握られている。
「何それ?」
「可愛いのが好きなんだろうから、これをプレゼントしたかったんだ」
「……えっ?」
「それは……さっき俺が言ったことを考えてほしい、餞別という気持ちからかな」
故郷にいるだけの存在であれば、難しい話だ。
「……可愛いよ、それ。でも、僕は14歳男で騎士団長に憧れて、かっこよくなりたくて……でも、ニコラスなら素直に受け取れただろうね」
プエルはぬいぐるみをつついた。
「で、話は前に言っていたクリシス家や王女様のためになるってやつのことか?」
レイオスの言葉にプエルは手をたたいた。
「そうそう。べリアル倒すことだよ」
「……あなたの主ではないのですか?」
「僕の主っていうなら、レチタティーヴォ様以外ありえないよ」
ルカに屈託なく笑うがどこか暗い。彼の主はすでにハンターによって討伐されている。
「僕がレチタティーヴォ様にお会いしたころを考えたんだ。ホロウレイドの戦いの後だし……べリアル嫌いでしょ?」
リアルブルーにいた者は伝聞のことであり、クリムゾンウェストに籍を置く者でもぴんと来ない時のこと。
「……ん? ひょっとして俺と同じくらい」
「……そうなんだよ、記憶戻ったら気づいた僕も」
話から計算したザレムの言葉にプエルは溜息をもらす。
「で、べリアル倒すって具体的には?」
「そこが問題なんだ!」
プエルは首を傾げた。
「一応考えているんだけど、時間かかりすぎるんだ。べリアルの下で信用されるすごい部下になってからの方が動きやすいと思ったんだよ。少しは評価上がったみたいだけど……。うまい具合に島から動いたぽいし、なら今のうちかなって。でも僕が演出するにも準備がまだなんだ」
「計画ないに等しいか」
「そういうことだね」
レイオスは頭を抱える。
「今はべリアル軍にいて……べリアルを倒すとして、あなたはどうするんですか、そのあと」
エルバッハの問いかけにプエルは首をかしげる。
「うーん。人間同士で殺し合うっていうシナリオも面白いよね、レチタティーヴォ様がおっしゃっていたドラマってそういうことだよね」
「……それはあなたの考えですか?」
「……そうだけど? レチタティーヴォ様みたいな演出家になるのと遊びたいだけ」
エルバッハはプエルが年齢以上に子供に見える。
「よく個性がないって言われた……レチタティーヴォ様にお会いする前の記憶がないせいだと思った。でも、記憶がよみがえったらよみがえったでいろいろ気持ちが悪くて……」
「記憶がないほうが良かったですか?」
「分からない」
「そうですか」
エルバッハは考える、最初見たときのプエルは無邪気な子供であったのは、記憶がなく、ただレチタティーヴォのためという行動が純粋だったからかもしれないと。
「さっき、羊どもを倒すとき、止めたが……何かあるのか?」
「あるよ。僕の計画の1つだったんだよ」
シオンに告げる。
「イスルダ島に初めて行ったとき、人間がいないから驚いたんだ」
「……歪虚の島だからですね」
ルカは眉を顰める。
「でも、最初から歪虚の島だったわけではないよ? 歪虚が住み着く前は住民いたわけでしょ? その住民はどうなったのかって考えたことある?」
「逃げられないのは殺されたか?」
コーネリアが忌々し気につぶやくとプエルが肯定する。
「マエロルもその逃げられなかった人。マエロルは家族を守ろうとして傲慢のヒトのいうことを聞いて歪虚になった。でも、誰も守らなくて家族も歪虚になっちゃった。ただ殺されて雑魔化した人もいるらしいよ。マエロルがあの島にずーといた理由は強い歪虚に従うしかできなかったから。マエロルはずーと恨んでいるんだよ、王国の人間も歪虚も」
プエルは歌うように告げる。
「計画っていうのは」
「恨んでいる奴いるなら、後ろからつつけたらなって。時間がかかるし、リスクが高い……僕がもっと力があればこんなに苦しまなかったのかもしれない。うらやましいなぁ人間が、成長できるもんね」
プエルはハンターを見る。
「べリアルは動く。それより僕、せっかくならユグディラに触りたい」
プエルはしゃがんで「おいでー」と手を差し出すが、やはりユグディラは逃げる。
「仕方がないか」
プエルはあきらめて立ち上がる。
「本当に協力する気があるなら、どうするんだ、連絡方法は」
コーネリアの問いかけにプエルは首をかしげる。
「うーん、何とかしてみるよ……意外と僕連絡つけるのうまいから。うっ、睨まないでよ。何か案があれば言ってくれればいいのに」
プエルは苦笑する。
「じゃ、僕は行くね。調べないと……傲慢側の協力者がゼロになっちゃたから」
ハンターが攻撃しないことを肯定と捕らえ、お辞儀をしてから立ち去った。
「どこまで歪虚の言葉を信じるんだ?」
コーネリアは肉親を殺されているため疑いは深い。
「隠すことはしても嘘はついてきていないはず」
レイオスは思い返す。レチタティーヴォ絡みは口をつぐむが、嘘はついてきていないはずだ。
「同い年か……」
ザレムは渡せなかった子狐のぬいぐるみを抱きしめる。
「もし、プエルがそれを受け取って、次に敵対したとき、そのぬいぐるみが操られて攻撃して来たらザレムさんどうしますか」
「倒すけど……なんか複雑な気持ちはするかもしれない」
エルバッハの指摘にザレムは子狐の穏やかな顔を見てから背嚢にしまった。
「……怪我治しますよ? 意外と皆さん軽傷で済んでいます?」
ルカの問いかけに怪我が残る者もうなずく。
「意外と強くなくて良かったですね」
「もし、プエルさんも攻撃していた場合、どうなっていたのでしょうか?」
千秋の問いに剣を交えたことがある者に視線が集まる。
「話を聞かない、そして攻撃していれば……ユグディラ巻き込み普通に攻撃したんじゃないかな。仲間いないと、範囲魔法も使うし」
「それやられていたら、私、飛び出して守りますよ……肉盾ってやつですよ!」
グッとこぶしを握るルカ。
「ならなくて良かったというか」
ユグディラを守るなら仕方がないが、それはそれで問題だとレイオスは息を吐く。
「雑魔も強いほうだが、弱かった。あのプエルはどうなんだ」
シオンの言葉にレイオスは首を傾げた。
「手ごたえがなかった」
「お前が強くなったからじゃないのか? なら次に刃を交えたときは倒せるだろう」
シオンの言葉にレイオスはうなずくしかなかった。
ユグディラたちはお礼を述べつつ、不安そうにハンターを見ていた。
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仔猫争奪戦 コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561) 人間(リアルブルー)|25才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/10/22 16:37:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/22 18:59:58 |