ゲスト
(ka0000)
【剣機】人のようなもの
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/24 19:00
- 完成日
- 2014/10/02 07:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
黒い影が地面を舐めると同時、叩きつけるような暴風が、直上から吹き下ろされる。瞬間、馬車を覆う幌が大きくたわみ軋みを上げた。
御者と馬の悲鳴が重なる。
荷台に乗っていたハンター達は、咄嗟に武器を取り意識を研ぎ澄まさせる。
――しかし、続いて訪れた轟音と、大地をひっくり返したかのような地響きと振動が、そんな些細な警戒など無意味なことだと教えてくれた。
次の瞬間、馬車は粉々に砕け、ハンター達ごと吹き飛ばされ石畳を転がっていた。
三半規管を直接ぶん殴られたかのような衝撃に、一行は声も出せない。
辺りには、悲鳴が散らばっていた。そも、ここは帝国でも比較的に大きな街道だ。どんよりと曇った空の下とはいえ、昼間の人通りは中々のものだ。なれば、この衝撃に巻き込まれた人間は少なくない。
数瞬を置き、ハンター達はようやく立ち上がった。そうして顔を上げた先に、妙な物体が石畳を砕いて地面に突き刺さっているのを見た。
それは、鈍色に輝く巨大な立方体。貨物を運ぶ際に用いられる、コンテナと言えば伝わりやすいだろうか。しかし、ひどく大きく、厳重な作りをしている。まるで、高所からの落下を想定しているかのような――
ハンター達は空を見上げる。しかし、頭上には黒く重苦しい雲が広がっているだけだ。
衝撃の前に馬車の上を通った影が、これを落としたのかもしれない。そう考えれば、つい最近、帝国内で異様な化け物が目撃された事件が頭を過る。
だが、深く考える暇もなく、目の前の箱が妙な音を発し始めた。
ゴン、ゴンと、金属を叩く重い音。
しかしそれは、外から叩いているのではない。篭った音は――その内側から響いている。
大気を震わす爆音が、見るものの全身を打つ。離れて野次馬に徹している一般人はもとより、ハンター達ですら、瞬きを忘れて顛末を見守った。
箱の一面が、音の度に、強烈な力によって外側へ盛り上がっていく。
そこは扉だったのだろうが、落下の衝撃で歪んでしまったのか。メキメキと音を立てて、扉らしき面に這う鉄管を無理矢理に引き千切っていく。
ここは外だというのに、逃げることのできない室内に追い詰められているような圧迫感が一同を襲った。
そして遂に、ドン、と一際大きな音が響くと、箱の一面が破裂したように吹き飛んだ。同時に、むせ返るような腐臭が辺りに立ち込める。
低い唸り声と金切り声が同時に聞こえ、箱からそれが姿を現す。
たったの一歩で、地面が小さく震えた。たったの一息で、辺りの腐臭が酷くなる。そしてたったの一声で、周りの一般人は腰を抜かして座り込んでしまった。
巨人、としか言い様がない。見上げるような異様な巨躯の、腐れた人型の化け物だった。手には巨大なチェーンソーを握り、その両肩には金属質の筒が二本、半ば肉に埋もれるように突き刺さっていた。
瞼のない濁った灰色の目がぐるぐると、周囲を見渡す。
その目は、事もあろうに腰を抜かした一般人を視界に収め、止まった。
ニタリと、皮膚が削げ落ち表情筋の明らかになった顔が歪む。嬉しそうに一声上げ、巨大なゾンビは手にしたチェーンソーのエンジンに火を入れた。同時に、ギイと甲高い音を発して、肩の筒がぐるりとその先端を一般人に向ける。
筒が水平になり、初めて気づく。それは幾つもの砲口を持つ、巨大な銃に他ならなかった。
咄嗟にハンター達は戦闘態勢に入る。帝国の中心にほど近いとはいえ、師団の応援を待つ時間もない。なれば、やることは一つだ。
例え身を挺したとしても、人々の命を守ることはハンターの使命であるはずなのだから。
御者と馬の悲鳴が重なる。
荷台に乗っていたハンター達は、咄嗟に武器を取り意識を研ぎ澄まさせる。
――しかし、続いて訪れた轟音と、大地をひっくり返したかのような地響きと振動が、そんな些細な警戒など無意味なことだと教えてくれた。
次の瞬間、馬車は粉々に砕け、ハンター達ごと吹き飛ばされ石畳を転がっていた。
三半規管を直接ぶん殴られたかのような衝撃に、一行は声も出せない。
辺りには、悲鳴が散らばっていた。そも、ここは帝国でも比較的に大きな街道だ。どんよりと曇った空の下とはいえ、昼間の人通りは中々のものだ。なれば、この衝撃に巻き込まれた人間は少なくない。
数瞬を置き、ハンター達はようやく立ち上がった。そうして顔を上げた先に、妙な物体が石畳を砕いて地面に突き刺さっているのを見た。
それは、鈍色に輝く巨大な立方体。貨物を運ぶ際に用いられる、コンテナと言えば伝わりやすいだろうか。しかし、ひどく大きく、厳重な作りをしている。まるで、高所からの落下を想定しているかのような――
ハンター達は空を見上げる。しかし、頭上には黒く重苦しい雲が広がっているだけだ。
衝撃の前に馬車の上を通った影が、これを落としたのかもしれない。そう考えれば、つい最近、帝国内で異様な化け物が目撃された事件が頭を過る。
だが、深く考える暇もなく、目の前の箱が妙な音を発し始めた。
ゴン、ゴンと、金属を叩く重い音。
しかしそれは、外から叩いているのではない。篭った音は――その内側から響いている。
大気を震わす爆音が、見るものの全身を打つ。離れて野次馬に徹している一般人はもとより、ハンター達ですら、瞬きを忘れて顛末を見守った。
箱の一面が、音の度に、強烈な力によって外側へ盛り上がっていく。
そこは扉だったのだろうが、落下の衝撃で歪んでしまったのか。メキメキと音を立てて、扉らしき面に這う鉄管を無理矢理に引き千切っていく。
ここは外だというのに、逃げることのできない室内に追い詰められているような圧迫感が一同を襲った。
そして遂に、ドン、と一際大きな音が響くと、箱の一面が破裂したように吹き飛んだ。同時に、むせ返るような腐臭が辺りに立ち込める。
低い唸り声と金切り声が同時に聞こえ、箱からそれが姿を現す。
たったの一歩で、地面が小さく震えた。たったの一息で、辺りの腐臭が酷くなる。そしてたったの一声で、周りの一般人は腰を抜かして座り込んでしまった。
巨人、としか言い様がない。見上げるような異様な巨躯の、腐れた人型の化け物だった。手には巨大なチェーンソーを握り、その両肩には金属質の筒が二本、半ば肉に埋もれるように突き刺さっていた。
瞼のない濁った灰色の目がぐるぐると、周囲を見渡す。
その目は、事もあろうに腰を抜かした一般人を視界に収め、止まった。
ニタリと、皮膚が削げ落ち表情筋の明らかになった顔が歪む。嬉しそうに一声上げ、巨大なゾンビは手にしたチェーンソーのエンジンに火を入れた。同時に、ギイと甲高い音を発して、肩の筒がぐるりとその先端を一般人に向ける。
筒が水平になり、初めて気づく。それは幾つもの砲口を持つ、巨大な銃に他ならなかった。
咄嗟にハンター達は戦闘態勢に入る。帝国の中心にほど近いとはいえ、師団の応援を待つ時間もない。なれば、やることは一つだ。
例え身を挺したとしても、人々の命を守ることはハンターの使命であるはずなのだから。
リプレイ本文
巨大な咆哮が空気を揺さぶり、その一歩が大地を揺るがす。掲げるチェーンソーの刃はギャリギャリと、耳が痛くなるような高音を発してあらゆるものを噛み千切るべく回転を始める。同時に、両肩に埋もれた幾つもの砲口を有する銃器――ガトリング砲がゆっくりと、その自慢の砲火を浴びせるべく唸りを上げ始めていた。
巨大なゾンビが辺りを睥睨する中、ハンター達の判断は一瞬だった。
「こんなことになるなんて……私は足止めを!」
「ふはははは! 斯様に見事な強敵が、向こうからやって来るとは!」
ミリア・コーネリウス(ka1287)とバルバロス(ka2119)は共に、背負った大剣を引き抜いてゾンビに向けて勇猛に吶喊する。俊敏なミリアを先頭に、バルバロスは豪快に笑いながらその後を追って地面を蹴る。
巨大なゾンビは、しかしそれを気に留めない。その目線は未だに、一般人に向けられている。禍々しく口角を上げ、口の端から濁った唾液を垂れ流している。
両肩の銃口も小動物のように忙しなく動きながらも、そちらに狙いを定めているようだった。
「出来る時に、出来る人が、出来る事を……!」
十色 エニア(ka0370)はゾンビから距離を取りつつ、一般人との間に入る。既にワンドには魔力が込められ、先端に灯った炎が出番を待ちわびて渦巻いている。
「さて、聖なる力は有効なのかしら? ……汚れ無き天空の光よ。血に塗れし不浄を照らし出せ――ホーリーライト!」
同時に、ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)は杖の先に光をたたえ、
「……クソっ――みんな、力を合わせてやっつけちゃおう! 何の罪もない人達を襲うなんて、許せないよ!」
心の中の黒い物を吐き捨ててから、サトコ・ロロブリジーダ(ka2475)はキリッと可愛らしく杖を構えた。その眼前には、石の礫がいつの間にか浮かび上がっている。
そして、ゾンビがのっそりと動き始めると同時に、三つの魔法が次々に放たれた。
エニアの炎で形作られた矢とサトコの石弾は、共にゾンビの右肩に陣取る砲身へと殺到する。だが、忙しなく頭を振る砲身は思いのほか狙いが付けづらく、ゾンビの横顔を掠めて黒雲に吸い込まれていく。
ガーベラの光球は、ゾンビの胸に直撃して光を放ちながら炸裂した。ゾンビの体表を流れる体液が飛び散るを見るにその衝撃は小さくなかっただろうが――その動きは少しも鈍ることはない。しかし、
「あら、そちらに有効なのかしら」
その光を受けた砲身が、キィと甲高い鳴き声を上げてにわかに暴れだした。それは、まるで巨大なゾンビと裏腹な反応で、遠くからその異様を見つめる魔法使いたちに疑問を植え付ける。
あの巨大なゾンビと、肩のガトリング砲は同じものを根拠としている生物……歪虚なのだろうか。
とはいえ、そんなことを考えている暇もない。一瞬だけその行動を阻害されたように見えた砲身も、再び狙いをつけ始めている。
●
頭上で光が迸り、ボトボトとゾンビの体液が降り注ぐ。その体液が皮膚に触れると同時、じゅうと小さく煙を上げて焼ける痛みが走った。
ミリアとバルバロスは、皮膚のないゾンビの体表から滲み出るものが毒であることに気がづいた。
「足止めをするだけなら……!」
だが、同時に多少ならばそれを浴びても支障のないことにも気づく。
ミリアは構わず大剣を振り上げ、ゾンビの懐へと飛び込んだ。
できることならば、ミリアも肩を狙いたい。しかし、相手は自分の倍以上の巨躯を誇っている。
「やぁっ!」
ならばまず、膝をつかせることが先決だ。
幸いにも、これほど巨大な相手ならば、目をつぶっても攻撃は当たる。ミリアは大きく振りかぶった大剣を、全身の筋肉を躍動させて力の限り大木のような足に向けて振り下ろした。
音が伴うほどの強力な一撃――しかし切っ先は、骨の上を滑って皮膚を裂くに留まった。
斬撃が見事に膝に吸い込まれたまでは良かったのだが、その巨体を支える骨格の強度を見誤ったのかもしれない。
分かたれた皮膚の隙間から、薄緑の体液が小さく噴き出す。
「ぶるあぁぁぁぁあ!!」
ミリアの背後から、雄叫びが上がった。
「存分に、楽しませてもらうぞ!」
追撃を仕掛けるバルバロスの隆々な筋肉が、さらに大きく隆起する。武器に祖霊の力を込め、ミリアの頭上を無骨な刃が通り抜ける。
ゴンと、大きな打撃音が響いた。振り抜かれた一撃はゾンビの膝小僧を直撃し、その衝撃はゾンビの体幹を強く揺らす。
ゾンビは思わずたたらを踏んだ。よろめき踏み出された足が、石畳を砕き地面を揺らす。
そこでようやく、ゾンビは厄介な闖入者たちに気づいたかのように濁った眼球をぐるりと回した。足元の小さな生物は、自分を害する存在であると認識する。
――咆哮が上がった。
耳朶に叩きつけられる、痛いほどの轟音。そして叫びながら、ゾンビは手にしたチェーンソーを袈裟懸けに振り回した。
動きは遅い。しかし、二メートルはある長大な凶器は、ゾンビの巨体も相まって周囲をまとめてなぎ払う。その対象はミリアとバルバロス、足元に群がる両名だった。
目に見えないほどの速度で回転する巨大な刃が、石畳を苦もなく噛み砕いて迫り来る。ミリアは咄嗟に飛び退り、バルバロスはゾンビの足元に飛び込むことで回避しようと試みる。
――当然、直撃を受けないのは大前提だ。あんなものをまともに受ければ、痛いどころの話ではない。
しかし、地面を削りながら迫るチェーンソーは、刃そのものだけが脅威ではなかった。
高速の刃に弾かれた、砕けた石や砂の礫が、二人に襲いかかる。視界が埋まる程の土砂の散弾が全身を叩いた。
「きゃっ……!」
「ぬうっ!」
強い痛みが走る。幸いにも、装備の上から体を貫くような、恐ろしい攻撃力ではない。しかし、それでも少なからずダメージを受け、二人は顔をしかめた。
●
「やあやあ皆さん生きてるね? では、彼らが足止めしてる間に逃げようか。腰が抜けたって這うことは出来るだろう? 誘導するから全力で這いたまえ」
五人が足止めを行っている間に、フワ ハヤテ(ka0004)は巻き込まれた一般人の元へと駆け寄っていた。一般人の数はちょうど十人。同じ方向に固まってくれていたのはありがたい。
彼らは、不意にまくし立てられたフワの声にビクリと震えると、呪縛から解かれたように混乱の様子を見せ始めた。悲鳴を上げ、手と足だけでずりずりと後退る。
「ほら、とにかく町に向けて逃げるんだ。手も足もちゃんと残っているだろう? だったら、逃げることはそんなに難しくない」
そう言って、近くの中年男性の腕を掴むと、無理やり引っ張りあげた。立たされた男はフワの腕を振り払うと千鳥足で必死に後ずさり……足をもつれさせて、豪快に地面を転がった。
「……よし、そんな動きでも二メートルは逃げられた。あと百回か、二百回……若しくは千回くらい? それくらい転がれば町に辿り着ける。簡単な話じゃないか」
とにかく、フワは混乱を少しでも解くために声を掛け続けた。せめてガトリングの射程外まで逃げてくれれば、フワも攻撃に加わることができる。
フワは人々の腕を取り、起き上がる手伝いを続けた。腰が抜けたと言っても、足はある。歩くことも走ることもできるはずだ。
――しかし、そこでフワは不穏な気配を感じた。
「フワさん、危ない!」
「……っ!」
エニアの声が届くと同時に、フワは振り向いていた。
次の瞬間、フワの目に飛び込んできたのは――小さくも目に焼きつくように強烈な、閃光だった。
背後に声をかける暇もない。
ゾンビの両肩に備え付けられたガトリング砲が、大量の弾丸を吐き出し始める。
辺りの石畳が次々と粉砕される。数えきれないほどの弾丸がそこら中に撒き散らされる。
風を切る音を立て、フワの至近を通った弾丸も一発や二発ではない。
だが、それでも弾丸の直撃を受ける者はいなかった。ガトリング砲の狙いが、想像以上に適当だったのだ。思ったよりも射程は短い。
所詮は歪虚。少なくともこの場面では、そんな認識でいいのかもしれない。
「ウィンドガスト!」
エニアは一般人達とフワを背後にして、自分の体に風を纏わせた。体を巻く風は、弾丸の軌道を逸らす効果がある。守るにはうってつけの魔法だ。思惑通り、数発の弾丸が風の流れに巻かれあらぬ方向へと飛び去った。
「全く、野蛮ね」
ガーベラは嘆息し、ゾンビの上半身へ向けて再びホーリーライトを放つ。狙いが適当だとはいえ、直撃する確率がゼロなわけではない。そしてハンターとして、一般人を見殺しにする訳にはいかない。
二度目の光球は、ゾンビの頭付近に直撃した。炸裂し、流石にゾンビも苦悶の唸りを上げる。そして同じように、ガトリング砲も叫びを上げた。砲身が、変わらず弾丸を吐き出しながらもデタラメにグルグルと回る。
当然のごとく、弾は先ほど以上に辺りに散らばった。
「うおあ……っ! っチ、危ねェもんぶっ放してんじゃねぇぞコラァっ!」
足元の地面が破裂し、たたらを踏んだ瞬間にサトコは叫んでいた。同時に、空中に石塊を生み出し、放つ。石塊は真っ直ぐに右肩のガトリング砲へと向かい――そして、豪快な金属音を上げてその繊細な砲身を大きく歪ませた。
あの銃は、強い衝撃に弱い。彼女のその確信は、間違いなく正しかった。砲が歪んだ次の瞬間、ガトリング砲そのものが炎を上げて爆発したのだ。
「っしゃァ!」
それ見て、サトコは思わずガッツポーズを取っていた。
「……あなた、そんなキャラクターだったの?」
「うぇっ?」
それを傍で見ていたガーベラの素朴な疑問に、サトコは慌てて弁解するのだった。
●
次々に繰り出される大剣の一撃は、確実にダメージを与えている、はずだ。
「これは、思った以上にタフですね」
しかし片側のガトリングを破壊されながらも、ゾンビは悠々と、チェーンソーを振るい続ける。
「ぬうん!」
バルバロスが勢い良く大剣を振り上げ、迫るチェーンソーに下から叩きつける。衝撃で僅かに逸らされた刃が、二人の頭上を掠めていく。
だが、その後が続かない。
二人は明らかに攻めあぐねていた。問題は、攻撃する度に飛び散る毒液だ。あれを回避しながらでは、満足に攻撃に集中することはできない。
「……うむ。ミリアよ、攻勢に転ずるぞ!」
――それを打破するのは、簡単だった。要は、毒液を気にしなければいい。
バルバロスは、笑みを浮かべていた。幸いにも、自己治癒により彼の体力は高い水準を保っている。毒液の効果もそれほど高いわけではなく、多少の無理は効くだろう。
ミリアは、バルバロスの表情を見て、その行動を察した。
「攻撃こそ最大の防御なり……でしたよね? バルバロスさん」
ミリアもまた、笑みを浮かべる。
「然り。それが戦士よ!」
叫び、バルバロスが地面を蹴った。体内には、溢れんばかりにマテリアルが満ちている。手にしたツヴァイヘンダーには、祖霊の力が込められている。
「ぶるあぁぁぁぁあ!!」
幾度目かの雄叫びと共に、バルバロスの豪腕が大剣を振るった。叩きつけられた切っ先が、ゾンビの筋肉を断ち切っていく感触が腕を伝う。
――毒液が吹き出した。まともに浴びる。だが、
「ぬおぉぉぉぉお!!」
バルバロスは一歩も退かない。雄叫びを上げ、斬り裂く刃へ込める力を決して緩めない。
そして、遂にゾンビの体は傾いだ。バルバロスが剣を振りぬくと同時に膝を折り、片腕を地面につく。
「……行きます!」
それ見て、ミリアが駆け出した。
邪魔なガトリングは、高い場所にあって手が出せない。その前提が崩れていた。
ミリアはゾンビの腕を駆け上がった。残ったガトリングは生きていて、ミリアの体を弾丸が掠めていく。
だが、退かない。
「やぁっ!」
振りかぶる。
そして、ようやく届いた。
●
「さて皆さん、そろそろ動けるようになったかい?」
ハンター達の活躍を目の当たりにした人々の目に、ようやく光が戻り始めていた。
彼らはゆっくりと立ち上がり、震える唇で礼を言い、町へと駆けていく。
「あの!」
その中の一人に向けて、エニアが声をかけた。
「町に着いたら、すぐ応援を呼んでね! あれを町に近づけさせるわけには、いかないから」
「なるほど。なら、できるだけ大げさに騒いでくれると助かるかもね」
声をかけられた彼は強く頷き、町へと駆けて行った。
「よし、それじゃあ……」
一般人が全員、町へ向かったことを確認し、エニアは傍に転がっていた馬車の破片を漁り始めた。
「うん? 何をしているのかな?」
「これを、使えないかと思ってね」
エニアが探しだしたのは、衣類の束だった。一抱えもあるそれを持ち、エニアはゾンビの元へと向かう。ゾンビは膝をつき、チェーンソーが地面を削りながら唸っていた。
そしてエニアはひょいと、その束をチェーンソーに向けて放り投げた。当然、その衣類は刃に斬り裂かれてしまう。
「……なるほどね」
意図を察したフワも衣類を投げる。
それを何度か繰り返し……そして、ガチンと大きな音が鳴って、チェーンソーの刃が止まった。異様な音を出し始める。衣類の繊維が機構に入り込み、その動作を阻害したのだ。
かなりの馬力を持っているようにも関わらず、この程度で不良を起こす。どうやら、ガトリング同様、チェーンソーも所詮は歪虚、だったらしい。
だが、これでゾンビの攻撃手段を大きく削ることができた。こうなれば、もう負けることはないだろう。
●
視界も煙る大雨の降りだす中、ハンター達は驚異的な体力を持つゾンビと戦い続けた。途中で町から応援に来た帝国兵も戦いに加わったが、それでもなお、ゾンビはなかなか倒れなかった。
ようやくゾンビが倒れ伏し動きを止めたのは、俄雨も通り過ぎ、空に光が差す頃だった。
「ふう、ようやく終わったわね」
ガーベラが、濡れた髪を鬱陶しそうにかき上げる。
「うえーん、疲れましたぁ」
可愛らしく、しかし少しわざとらしく肩を落とすサトコ。
「うむ、良い戦いだった!」
「ええ、皆さん無事で良かったです」
その横で、バルバロスが豪快に笑い、ミリアが微笑む。
「避難した人達も、無事だったんだよね?」
エニアの疑問には、帝国兵達が笑顔で答えた。
「……ふむ」
そしてフワは、ゾンビの消えた後に残った、ガトリングの砲身とチェーンソーの残骸を思案顔で見つめていた。
剣機の思惑は、未然に防がれた。しかし、これはいわば前哨戦に過ぎない。剣機そのものを何とかしない限り、何も終わらない。
だがそれでも、多くの命を救うことができた。
ハンター達は、そんな泡沫の余韻に浸っていた。これからも、自分たちがいる限り、命は救われ続けるのだと信じて。
巨大なゾンビが辺りを睥睨する中、ハンター達の判断は一瞬だった。
「こんなことになるなんて……私は足止めを!」
「ふはははは! 斯様に見事な強敵が、向こうからやって来るとは!」
ミリア・コーネリウス(ka1287)とバルバロス(ka2119)は共に、背負った大剣を引き抜いてゾンビに向けて勇猛に吶喊する。俊敏なミリアを先頭に、バルバロスは豪快に笑いながらその後を追って地面を蹴る。
巨大なゾンビは、しかしそれを気に留めない。その目線は未だに、一般人に向けられている。禍々しく口角を上げ、口の端から濁った唾液を垂れ流している。
両肩の銃口も小動物のように忙しなく動きながらも、そちらに狙いを定めているようだった。
「出来る時に、出来る人が、出来る事を……!」
十色 エニア(ka0370)はゾンビから距離を取りつつ、一般人との間に入る。既にワンドには魔力が込められ、先端に灯った炎が出番を待ちわびて渦巻いている。
「さて、聖なる力は有効なのかしら? ……汚れ無き天空の光よ。血に塗れし不浄を照らし出せ――ホーリーライト!」
同時に、ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)は杖の先に光をたたえ、
「……クソっ――みんな、力を合わせてやっつけちゃおう! 何の罪もない人達を襲うなんて、許せないよ!」
心の中の黒い物を吐き捨ててから、サトコ・ロロブリジーダ(ka2475)はキリッと可愛らしく杖を構えた。その眼前には、石の礫がいつの間にか浮かび上がっている。
そして、ゾンビがのっそりと動き始めると同時に、三つの魔法が次々に放たれた。
エニアの炎で形作られた矢とサトコの石弾は、共にゾンビの右肩に陣取る砲身へと殺到する。だが、忙しなく頭を振る砲身は思いのほか狙いが付けづらく、ゾンビの横顔を掠めて黒雲に吸い込まれていく。
ガーベラの光球は、ゾンビの胸に直撃して光を放ちながら炸裂した。ゾンビの体表を流れる体液が飛び散るを見るにその衝撃は小さくなかっただろうが――その動きは少しも鈍ることはない。しかし、
「あら、そちらに有効なのかしら」
その光を受けた砲身が、キィと甲高い鳴き声を上げてにわかに暴れだした。それは、まるで巨大なゾンビと裏腹な反応で、遠くからその異様を見つめる魔法使いたちに疑問を植え付ける。
あの巨大なゾンビと、肩のガトリング砲は同じものを根拠としている生物……歪虚なのだろうか。
とはいえ、そんなことを考えている暇もない。一瞬だけその行動を阻害されたように見えた砲身も、再び狙いをつけ始めている。
●
頭上で光が迸り、ボトボトとゾンビの体液が降り注ぐ。その体液が皮膚に触れると同時、じゅうと小さく煙を上げて焼ける痛みが走った。
ミリアとバルバロスは、皮膚のないゾンビの体表から滲み出るものが毒であることに気がづいた。
「足止めをするだけなら……!」
だが、同時に多少ならばそれを浴びても支障のないことにも気づく。
ミリアは構わず大剣を振り上げ、ゾンビの懐へと飛び込んだ。
できることならば、ミリアも肩を狙いたい。しかし、相手は自分の倍以上の巨躯を誇っている。
「やぁっ!」
ならばまず、膝をつかせることが先決だ。
幸いにも、これほど巨大な相手ならば、目をつぶっても攻撃は当たる。ミリアは大きく振りかぶった大剣を、全身の筋肉を躍動させて力の限り大木のような足に向けて振り下ろした。
音が伴うほどの強力な一撃――しかし切っ先は、骨の上を滑って皮膚を裂くに留まった。
斬撃が見事に膝に吸い込まれたまでは良かったのだが、その巨体を支える骨格の強度を見誤ったのかもしれない。
分かたれた皮膚の隙間から、薄緑の体液が小さく噴き出す。
「ぶるあぁぁぁぁあ!!」
ミリアの背後から、雄叫びが上がった。
「存分に、楽しませてもらうぞ!」
追撃を仕掛けるバルバロスの隆々な筋肉が、さらに大きく隆起する。武器に祖霊の力を込め、ミリアの頭上を無骨な刃が通り抜ける。
ゴンと、大きな打撃音が響いた。振り抜かれた一撃はゾンビの膝小僧を直撃し、その衝撃はゾンビの体幹を強く揺らす。
ゾンビは思わずたたらを踏んだ。よろめき踏み出された足が、石畳を砕き地面を揺らす。
そこでようやく、ゾンビは厄介な闖入者たちに気づいたかのように濁った眼球をぐるりと回した。足元の小さな生物は、自分を害する存在であると認識する。
――咆哮が上がった。
耳朶に叩きつけられる、痛いほどの轟音。そして叫びながら、ゾンビは手にしたチェーンソーを袈裟懸けに振り回した。
動きは遅い。しかし、二メートルはある長大な凶器は、ゾンビの巨体も相まって周囲をまとめてなぎ払う。その対象はミリアとバルバロス、足元に群がる両名だった。
目に見えないほどの速度で回転する巨大な刃が、石畳を苦もなく噛み砕いて迫り来る。ミリアは咄嗟に飛び退り、バルバロスはゾンビの足元に飛び込むことで回避しようと試みる。
――当然、直撃を受けないのは大前提だ。あんなものをまともに受ければ、痛いどころの話ではない。
しかし、地面を削りながら迫るチェーンソーは、刃そのものだけが脅威ではなかった。
高速の刃に弾かれた、砕けた石や砂の礫が、二人に襲いかかる。視界が埋まる程の土砂の散弾が全身を叩いた。
「きゃっ……!」
「ぬうっ!」
強い痛みが走る。幸いにも、装備の上から体を貫くような、恐ろしい攻撃力ではない。しかし、それでも少なからずダメージを受け、二人は顔をしかめた。
●
「やあやあ皆さん生きてるね? では、彼らが足止めしてる間に逃げようか。腰が抜けたって這うことは出来るだろう? 誘導するから全力で這いたまえ」
五人が足止めを行っている間に、フワ ハヤテ(ka0004)は巻き込まれた一般人の元へと駆け寄っていた。一般人の数はちょうど十人。同じ方向に固まってくれていたのはありがたい。
彼らは、不意にまくし立てられたフワの声にビクリと震えると、呪縛から解かれたように混乱の様子を見せ始めた。悲鳴を上げ、手と足だけでずりずりと後退る。
「ほら、とにかく町に向けて逃げるんだ。手も足もちゃんと残っているだろう? だったら、逃げることはそんなに難しくない」
そう言って、近くの中年男性の腕を掴むと、無理やり引っ張りあげた。立たされた男はフワの腕を振り払うと千鳥足で必死に後ずさり……足をもつれさせて、豪快に地面を転がった。
「……よし、そんな動きでも二メートルは逃げられた。あと百回か、二百回……若しくは千回くらい? それくらい転がれば町に辿り着ける。簡単な話じゃないか」
とにかく、フワは混乱を少しでも解くために声を掛け続けた。せめてガトリングの射程外まで逃げてくれれば、フワも攻撃に加わることができる。
フワは人々の腕を取り、起き上がる手伝いを続けた。腰が抜けたと言っても、足はある。歩くことも走ることもできるはずだ。
――しかし、そこでフワは不穏な気配を感じた。
「フワさん、危ない!」
「……っ!」
エニアの声が届くと同時に、フワは振り向いていた。
次の瞬間、フワの目に飛び込んできたのは――小さくも目に焼きつくように強烈な、閃光だった。
背後に声をかける暇もない。
ゾンビの両肩に備え付けられたガトリング砲が、大量の弾丸を吐き出し始める。
辺りの石畳が次々と粉砕される。数えきれないほどの弾丸がそこら中に撒き散らされる。
風を切る音を立て、フワの至近を通った弾丸も一発や二発ではない。
だが、それでも弾丸の直撃を受ける者はいなかった。ガトリング砲の狙いが、想像以上に適当だったのだ。思ったよりも射程は短い。
所詮は歪虚。少なくともこの場面では、そんな認識でいいのかもしれない。
「ウィンドガスト!」
エニアは一般人達とフワを背後にして、自分の体に風を纏わせた。体を巻く風は、弾丸の軌道を逸らす効果がある。守るにはうってつけの魔法だ。思惑通り、数発の弾丸が風の流れに巻かれあらぬ方向へと飛び去った。
「全く、野蛮ね」
ガーベラは嘆息し、ゾンビの上半身へ向けて再びホーリーライトを放つ。狙いが適当だとはいえ、直撃する確率がゼロなわけではない。そしてハンターとして、一般人を見殺しにする訳にはいかない。
二度目の光球は、ゾンビの頭付近に直撃した。炸裂し、流石にゾンビも苦悶の唸りを上げる。そして同じように、ガトリング砲も叫びを上げた。砲身が、変わらず弾丸を吐き出しながらもデタラメにグルグルと回る。
当然のごとく、弾は先ほど以上に辺りに散らばった。
「うおあ……っ! っチ、危ねェもんぶっ放してんじゃねぇぞコラァっ!」
足元の地面が破裂し、たたらを踏んだ瞬間にサトコは叫んでいた。同時に、空中に石塊を生み出し、放つ。石塊は真っ直ぐに右肩のガトリング砲へと向かい――そして、豪快な金属音を上げてその繊細な砲身を大きく歪ませた。
あの銃は、強い衝撃に弱い。彼女のその確信は、間違いなく正しかった。砲が歪んだ次の瞬間、ガトリング砲そのものが炎を上げて爆発したのだ。
「っしゃァ!」
それ見て、サトコは思わずガッツポーズを取っていた。
「……あなた、そんなキャラクターだったの?」
「うぇっ?」
それを傍で見ていたガーベラの素朴な疑問に、サトコは慌てて弁解するのだった。
●
次々に繰り出される大剣の一撃は、確実にダメージを与えている、はずだ。
「これは、思った以上にタフですね」
しかし片側のガトリングを破壊されながらも、ゾンビは悠々と、チェーンソーを振るい続ける。
「ぬうん!」
バルバロスが勢い良く大剣を振り上げ、迫るチェーンソーに下から叩きつける。衝撃で僅かに逸らされた刃が、二人の頭上を掠めていく。
だが、その後が続かない。
二人は明らかに攻めあぐねていた。問題は、攻撃する度に飛び散る毒液だ。あれを回避しながらでは、満足に攻撃に集中することはできない。
「……うむ。ミリアよ、攻勢に転ずるぞ!」
――それを打破するのは、簡単だった。要は、毒液を気にしなければいい。
バルバロスは、笑みを浮かべていた。幸いにも、自己治癒により彼の体力は高い水準を保っている。毒液の効果もそれほど高いわけではなく、多少の無理は効くだろう。
ミリアは、バルバロスの表情を見て、その行動を察した。
「攻撃こそ最大の防御なり……でしたよね? バルバロスさん」
ミリアもまた、笑みを浮かべる。
「然り。それが戦士よ!」
叫び、バルバロスが地面を蹴った。体内には、溢れんばかりにマテリアルが満ちている。手にしたツヴァイヘンダーには、祖霊の力が込められている。
「ぶるあぁぁぁぁあ!!」
幾度目かの雄叫びと共に、バルバロスの豪腕が大剣を振るった。叩きつけられた切っ先が、ゾンビの筋肉を断ち切っていく感触が腕を伝う。
――毒液が吹き出した。まともに浴びる。だが、
「ぬおぉぉぉぉお!!」
バルバロスは一歩も退かない。雄叫びを上げ、斬り裂く刃へ込める力を決して緩めない。
そして、遂にゾンビの体は傾いだ。バルバロスが剣を振りぬくと同時に膝を折り、片腕を地面につく。
「……行きます!」
それ見て、ミリアが駆け出した。
邪魔なガトリングは、高い場所にあって手が出せない。その前提が崩れていた。
ミリアはゾンビの腕を駆け上がった。残ったガトリングは生きていて、ミリアの体を弾丸が掠めていく。
だが、退かない。
「やぁっ!」
振りかぶる。
そして、ようやく届いた。
●
「さて皆さん、そろそろ動けるようになったかい?」
ハンター達の活躍を目の当たりにした人々の目に、ようやく光が戻り始めていた。
彼らはゆっくりと立ち上がり、震える唇で礼を言い、町へと駆けていく。
「あの!」
その中の一人に向けて、エニアが声をかけた。
「町に着いたら、すぐ応援を呼んでね! あれを町に近づけさせるわけには、いかないから」
「なるほど。なら、できるだけ大げさに騒いでくれると助かるかもね」
声をかけられた彼は強く頷き、町へと駆けて行った。
「よし、それじゃあ……」
一般人が全員、町へ向かったことを確認し、エニアは傍に転がっていた馬車の破片を漁り始めた。
「うん? 何をしているのかな?」
「これを、使えないかと思ってね」
エニアが探しだしたのは、衣類の束だった。一抱えもあるそれを持ち、エニアはゾンビの元へと向かう。ゾンビは膝をつき、チェーンソーが地面を削りながら唸っていた。
そしてエニアはひょいと、その束をチェーンソーに向けて放り投げた。当然、その衣類は刃に斬り裂かれてしまう。
「……なるほどね」
意図を察したフワも衣類を投げる。
それを何度か繰り返し……そして、ガチンと大きな音が鳴って、チェーンソーの刃が止まった。異様な音を出し始める。衣類の繊維が機構に入り込み、その動作を阻害したのだ。
かなりの馬力を持っているようにも関わらず、この程度で不良を起こす。どうやら、ガトリング同様、チェーンソーも所詮は歪虚、だったらしい。
だが、これでゾンビの攻撃手段を大きく削ることができた。こうなれば、もう負けることはないだろう。
●
視界も煙る大雨の降りだす中、ハンター達は驚異的な体力を持つゾンビと戦い続けた。途中で町から応援に来た帝国兵も戦いに加わったが、それでもなお、ゾンビはなかなか倒れなかった。
ようやくゾンビが倒れ伏し動きを止めたのは、俄雨も通り過ぎ、空に光が差す頃だった。
「ふう、ようやく終わったわね」
ガーベラが、濡れた髪を鬱陶しそうにかき上げる。
「うえーん、疲れましたぁ」
可愛らしく、しかし少しわざとらしく肩を落とすサトコ。
「うむ、良い戦いだった!」
「ええ、皆さん無事で良かったです」
その横で、バルバロスが豪快に笑い、ミリアが微笑む。
「避難した人達も、無事だったんだよね?」
エニアの疑問には、帝国兵達が笑顔で答えた。
「……ふむ」
そしてフワは、ゾンビの消えた後に残った、ガトリングの砲身とチェーンソーの残骸を思案顔で見つめていた。
剣機の思惑は、未然に防がれた。しかし、これはいわば前哨戦に過ぎない。剣機そのものを何とかしない限り、何も終わらない。
だがそれでも、多くの命を救うことができた。
ハンター達は、そんな泡沫の余韻に浸っていた。これからも、自分たちがいる限り、命は救われ続けるのだと信じて。
依頼結果
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相談卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/09/24 01:18:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/20 19:53:40 |