ゲスト
(ka0000)
【郷祭】トマト酒の悲劇
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/29 22:00
- 完成日
- 2016/11/08 00:50
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
名産品はもちろんトマト。トマト祭りが毎年開催されるこの村の名前はカルドルビーノという。
その村でも一際トマト作りとトマト祭りに燃える男がいる。
彼の名はパーザ――トマト祭り実行委員であり、月チームの自称参謀を務める男だ。
今年も残念ながら祭りでは負けを期したが、彼の野望は未だ潰えていない。長年の研究の末作り上げたトマト酒。
それを今年の郷祭で大々的に発表し、引いては各国への輸出を目論んでいるのだ。
「概ねトマト祭りでの反応は上々だった。つまりはこれはいけるっ」
村の仲間にも知られないように秘密裏に作った生産拠点は少し山側にある。
敷地は彼の所有になっているから問題はない筈だ。トマト畑から少し距離がある場所であったが、それも仕方のない事。この酒造りには山から湧き出た水を使っているし、場所もあそこでなくては適度な温度が保てないのだ。
「さて、祭りも近い。そろそろ私の最高傑作を祭り会場に卸さなくては」
パーザは誰にともなくそう呟き、自宅を後にする。
「そう言えば名前はどうしたものか…とびきり気品のある名前が相応しいが」
彼の作ったトマト酒――その酒を一言で表すならフルーツトマトのカクテルのよう。白ワインを加える事でトマト特有の生臭さを緩和し、美味しさだけを十分に引き立てたのだ。これならば女性のみならず、すっきりとしたのど越しで甘過ぎず男性受けもすると睨んでいる。
であるから売れる事間違いなしと確信をもっている彼の足取りはとても軽い。
トマト酒の生産拠点のある場所までは少しの山道が続くも全くものともしない。
だが、その後彼を待っていたのは…。
(むっ、まさか泥棒か?)
鍵をかけていた筈の工房横の倉庫の中から気配を感じて、隙間から中を覗き込む。
すると灯りもつけずに中で蠢く影を見つけて、彼の内に宿ったのは激しい怒り――。
(奴ら、私の精魂込めて作った酒を飲んでいるのではないかっ!)
ハッキリとは見えないが、水音がする。という事は中の奴らは彼の大事な商品に口をつけているという事だ。
「ぐぬぬっ、何という事だ…」
だがしかし、こちらは一人だ。今飛び込んでも勝ち目はない。
けれど、それでも彼の怒りは収まらず何か一言でも言ってやりたいという衝動が彼を突き動かす。
(どうしてくれようか…私の、私の大事なトマト酒を…)
扉に触れていた手が怒りでぶるぶると震える。その震えが扉に伝わって、不意に中から声がかかる。
『ダレ、ダ?』
その声にパーザはギョッとした。
片言に近い言葉遣いの濁声――中の影が立ち上がる。
その立ち上がったシルエットが、幾分彼の知るものと差異があって、
(まっ、まさか人じゃないッ?)
二足歩行ではあるが筋肉の質量が尋常ではない。拳闘士やドワーフとてあそこまで鍛え上げられる者はいないだろう。それ程に体格のあるその影からギラリと光って見えた瞳は人ならざる者の雰囲気を有している。
(あれは…オークッ!!?)
彼は意外な侵入者に思わず尻餅をつく。
『オイ、ミテコイ』
その音にあちらも気付いて、部下と思しき者に命令を下す。その後はもう無我夢中だった。
甲高い声のひょろひょろとした化け物に追われて、死に物狂いで町へと走った。
するとその速さに追いつけなかったのか、はたまた面倒になったのか。敵はいつしか追跡を諦めてくれたようで彼がハンターオフィスに辿りついた時にはもう背後にいたその化け物の姿はなく、変わりに汗まみれの彼だけが皆の視線を集める結果となる。
「あ、あの…大丈夫ですか?」
息も切れ切れに床に膝をついた彼を見て、オフィスの係員が水を差出す。
「助けてくれ…」
パーザが紡いだ言葉に一瞬目を丸くする係員。しかし、この様子は只事ではない事は判る。
「私の、私のトマト酒が化け物に…」
そういう彼に、
「ともかくお話をお聞きします。どうぞこちらへ」
と係員は冷静に事情を尋ねるのだった。
その村でも一際トマト作りとトマト祭りに燃える男がいる。
彼の名はパーザ――トマト祭り実行委員であり、月チームの自称参謀を務める男だ。
今年も残念ながら祭りでは負けを期したが、彼の野望は未だ潰えていない。長年の研究の末作り上げたトマト酒。
それを今年の郷祭で大々的に発表し、引いては各国への輸出を目論んでいるのだ。
「概ねトマト祭りでの反応は上々だった。つまりはこれはいけるっ」
村の仲間にも知られないように秘密裏に作った生産拠点は少し山側にある。
敷地は彼の所有になっているから問題はない筈だ。トマト畑から少し距離がある場所であったが、それも仕方のない事。この酒造りには山から湧き出た水を使っているし、場所もあそこでなくては適度な温度が保てないのだ。
「さて、祭りも近い。そろそろ私の最高傑作を祭り会場に卸さなくては」
パーザは誰にともなくそう呟き、自宅を後にする。
「そう言えば名前はどうしたものか…とびきり気品のある名前が相応しいが」
彼の作ったトマト酒――その酒を一言で表すならフルーツトマトのカクテルのよう。白ワインを加える事でトマト特有の生臭さを緩和し、美味しさだけを十分に引き立てたのだ。これならば女性のみならず、すっきりとしたのど越しで甘過ぎず男性受けもすると睨んでいる。
であるから売れる事間違いなしと確信をもっている彼の足取りはとても軽い。
トマト酒の生産拠点のある場所までは少しの山道が続くも全くものともしない。
だが、その後彼を待っていたのは…。
(むっ、まさか泥棒か?)
鍵をかけていた筈の工房横の倉庫の中から気配を感じて、隙間から中を覗き込む。
すると灯りもつけずに中で蠢く影を見つけて、彼の内に宿ったのは激しい怒り――。
(奴ら、私の精魂込めて作った酒を飲んでいるのではないかっ!)
ハッキリとは見えないが、水音がする。という事は中の奴らは彼の大事な商品に口をつけているという事だ。
「ぐぬぬっ、何という事だ…」
だがしかし、こちらは一人だ。今飛び込んでも勝ち目はない。
けれど、それでも彼の怒りは収まらず何か一言でも言ってやりたいという衝動が彼を突き動かす。
(どうしてくれようか…私の、私の大事なトマト酒を…)
扉に触れていた手が怒りでぶるぶると震える。その震えが扉に伝わって、不意に中から声がかかる。
『ダレ、ダ?』
その声にパーザはギョッとした。
片言に近い言葉遣いの濁声――中の影が立ち上がる。
その立ち上がったシルエットが、幾分彼の知るものと差異があって、
(まっ、まさか人じゃないッ?)
二足歩行ではあるが筋肉の質量が尋常ではない。拳闘士やドワーフとてあそこまで鍛え上げられる者はいないだろう。それ程に体格のあるその影からギラリと光って見えた瞳は人ならざる者の雰囲気を有している。
(あれは…オークッ!!?)
彼は意外な侵入者に思わず尻餅をつく。
『オイ、ミテコイ』
その音にあちらも気付いて、部下と思しき者に命令を下す。その後はもう無我夢中だった。
甲高い声のひょろひょろとした化け物に追われて、死に物狂いで町へと走った。
するとその速さに追いつけなかったのか、はたまた面倒になったのか。敵はいつしか追跡を諦めてくれたようで彼がハンターオフィスに辿りついた時にはもう背後にいたその化け物の姿はなく、変わりに汗まみれの彼だけが皆の視線を集める結果となる。
「あ、あの…大丈夫ですか?」
息も切れ切れに床に膝をついた彼を見て、オフィスの係員が水を差出す。
「助けてくれ…」
パーザが紡いだ言葉に一瞬目を丸くする係員。しかし、この様子は只事ではない事は判る。
「私の、私のトマト酒が化け物に…」
そういう彼に、
「ともかくお話をお聞きします。どうぞこちらへ」
と係員は冷静に事情を尋ねるのだった。
リプレイ本文
●約束
トマトのお酒と聞いて味をパッと連想できる者は少ない。
だから酒好きの者達はきっと興味を示す。この依頼もその他でもない。仕事が終わった試飲させて欲しいと言う声がロニ・カルディス(ka0551)と婆(ka6451)から上がってパーザはそれを快諾。
「ほほぉ、そうと決まれば張り切って行かねばのう」
婆はいい返事に気分良さげだ。彼女はこの中で最高齢ではあるが、まだ背筋もしゃんとしているしパワーにおいては若い者に負けるつもりはない。ただ、自覚がある所は一点…綿密な作戦を考えるのは苦手であった。だから、作戦会議に入ると卓にはつくもののこれと言って意見を出す事はない。
「うふふ~お祭りのトマト美味しかったの~。あれがお酒になったらきっと…」
その横では彼女とは違う意味で口を出さないでいるハンターが一人。今年のトマト祭り経験者のディーナ・フェルミ(ka5843)である。
脳裏でその時味わった真っ赤なトマトの味を反芻し、天井を見上げたまま口元から涎が垂れている。
「おやおや、可愛らしい女子がそれじゃあいかんのう」
婆は気を利かせて、彼女の口元を拭く何とも言えぬ平和な光景――。
卓上では加工場と倉庫の図面が広げられ、経験豊富な仲間らが細かな打合わせが続いている。
「まあ、だったらそこは俺に任せな。挑発すンのは得意だぜェ」
そうこうしていると話は陽動と突入の両面からに固まって、自信家の万歳丸(ka5665)はいの一番に挑発役を志願する。
「俺は倉庫制圧に向かう。取り急ぎ内部の様子でも見てこよう」
そう言って斥候に出たのはザレム・アズール(ka0878)だ。
今回疾影士の職種がいないからと隠密の知識のある彼が様子を見に行くらしい。
「異存ないです。しかし、多くのコボルトが工房を占拠したとの事ですが、中は鮨詰め状態なのでしょうか?」
だったら面白そうだと思いつつも言葉を呑み込んで百々尻 うらら(ka6537)が言う。
「流石にそこまでにはなっていないと思います。けれど急がないと」
どういうつもりで占拠したのかは判らない。しかし、早くしなければ酒樽に被害が出るかもしれないとシルヴィア・オーウェン(ka6372)が事の緊急性を訴える。
「まさか飲んでるとかじゃないだろうが、酒の一滴は血の一滴。大切にしなくてはな」
ロニの言葉。話がまとまった所で早速彼らはパーザに案内され工房へ向かう事になる。
辺りの景観は実に長閑で、少し先で大戦が行われている事を忘れさせる。
とそこへザレムが早々と戻り、中の様子を報告する。
「ハッキリ言って倉庫内は灯りがついてないから数は判断できないな。屋根の下にある小窓からも積んである樽が邪魔で通路側は死角になっている。まあ、その中央通路に敵はいると思うが」
窓を開ければ日差しが差し込んでばれてしまう。それを危惧して、ザレムは覗くだけに収めたらしい。
「加工場の方は?」
淡々とした様子でアリア・セリウス(ka6424)が尋ねる。
「見た感じ、気配はなかったな。まあ、あっちには飲み食いできるものすらないらしいが」
パーザにその事を確認し、ザレムが答える。
「成程…でも、その方が助かりますね」
とこれはシルヴィア。両方にいないのなら、倉庫に集中できる。
一応新手を考慮する必要があるが、それでもずっと楽になる事に変わりはない。
「まあ、どう転んでもぶっ倒しゃいいんだろ! 簡単な事だぜェ」
万歳丸の言葉に皆が頷く。相手はオークとコボルトだ。
数が判らないとはいえ、単細胞の集まりに過ぎない。ならば知恵のある彼等にかかれば朝飯前だろう。
「では、手筈通りに…」
皆がそれぞれに視線を送る。そして、ここに工房奪還作戦が開始される。
(しっかし、まあなんでトマトなんか狙うかねェ……あんなもん、旨かねェだろォに…)
万歳丸が密かに心中で呟く。そう、彼はトマトが嫌いであった。
●倉庫
やるからには豪快に――ガラリと勢いよく倉庫の扉を引く。
そして、投げ込まれたのは煙の立ち昇る手榴弾…それはアリアが用意してもので、勢いよく中へと投げ込めばもくもく煙が立ち上りまるで火事が発生したかのようだ。一度扉を閉めて、中の混乱を誘う。
「あー、火事ですよ! どなたか、逃げ遅れた方はいませんか!」
「こりゃいかんわっ。はよせんと~、こりゃあ大火事になっちまうよぉ!!」
シルビィアが叫び、婆が太鼓を打ち鳴らし慌てふためく。勿論これは芝居であるが、二人共割と楽しそうだ。
(さーて、どれだけ出てくるやら)
ロニは茂みで待機しつつ様子を伺う。
(収穫祭は祝いの宴…願いの種を撒き、祈りを注がれ芽吹いた夢の果実たちを、凶災もたらす魔に穢させたりしない)
アリアが強い意志を明確に大太刀を握り締める。外班四名、準備は万端のようであったが、まずは内から。
倉庫内にて戦闘の狼煙は上がる。さっき開いた時に飛び込んだのは万歳丸とザレムで、遅れてディーナとうららが続く。
そうして、開口一番に万歳丸が大声を上げる。
「取り立てじゃコルァァァッ!! 出すもんだせやてめェらァッ!」
実際のところ無銭飲酒していたかは定かではないが、ともあれ何処かのあくどい取り立て屋宜しく、中にいる敵全体を怒鳴りつける。
『何ダ、オマエ…』
そう問うオークに、
「こちとらここの家主から依頼受けてきた万歳丸様だァ! 銭出しゃ許してやらなくもないが、ってお前だろ、こいつらたぶらかしたのはよォ」
睨みを利かせて近くにいたコボルトを握り締め問いかける。
『ドウ言ウ、ツモリダ?』
そう言うオークに万歳丸はくつくつと笑って、
「金もねェのに弱いモン従えて昼間っから酒飲ンでンじゃねェ豚男ォ!」
それがこの戦いの引き金となった。掴んでいたコボルトをオークへとほり投げる。
話している間にも投げ込まれていた煙は徐々に広がり、残りの三人の姿を隠す。
それにより行動はしやすくなる。
ディーナは煙に紛れて、前へと駆け抜けていくザレムとうららを見送り、樽の方に向かう。
(えっと、作戦は確か……あれ、何でしたっけ?)
そう言えばちゃんと聞いていなかった事を思い出すが、彼女の天然思考は慌てる事無く自分なりの行動を開始させる。
「と、とりあえず美味しいトマト酒を守るの…」
戦闘開始と同時に弾かれたりして樽に被害が及ぶのを避けようと、ホーリーヴェールを使用し樽の強度を上げる。ザレムは速さを活かして、通路にいるコボルト達を時に纏めて串刺しにしてゆく。その暴れっぷりにオークも危機を感じたらしかった。万歳丸の投げつけたコボルトを自ら薙ぎ払って、オークは後方へと向かう。途中積まれた酒樽を崩そうとするが、
「壊しちゃダメなの~」
と妨害に駆け付けたディーナによって阻まれ、更に後退。殴る感触が苦手な彼女であったがクロイツハンマーを振り抜き、くらわせた脛への一撃に流石のオークも巨体を揺らす。そんな痛がるオークの傍でちょっとしたハプニング。実際地面が揺れたかどうかは定かではないが、ザレムと共に先行しジグザグに進んでいたうららが足を取られて丁度オークの傍ですっ転ぶ。
「えっ、ちょ…待ってザレムさーん!」
恥ずかしいポーズで転んだままうららの目がオークと交わる。
にたりと笑われた気がした。なぜなら、彼女は顔面から転び、乙女のキュートなお尻が露になっていたのだ。
「うらァァァ、色ボケ豚野郎がァァ!!」
それに気付いて、本来ならば外に撤退する筈だった万歳丸が踏み込み、拳を食らわせる。
「えと…有難う、ございます…」
そう言ううららに、未だ露になっているその部分から視線を逸らしつつ手を上げる彼であった。
●屋外
コボルトは小さく、そして素早い。群れを成し、別のリーダーを置いている事が多いが、緊急事態となればそのリーダーの指示も役には立たないだろう。現に混乱する倉庫内ではコボルト達は思い思いに動き出す。とは言っても彼等一人一人の力はそれ程ではなく、それを本人達も判っているようで三匹が一組のグループを構成し逃げ出す時も彼ら特有の意志疎通を介して屋外へと逃げてゆく。
『マテ、コラッ!』
オークのそんな言葉も生命の危機に瀕しては彼らの耳には届かない。倉庫上部にある窓から出て行く者や正面の引き戸から逃げ出す者、後方の扉の鍵を開けに行く者と様々だ。
「やっぱり敵は烏合の衆だったな」
倉庫後方の扉から出てきたコボルトを見据えてロニがにやりと笑う。
そんな雑魚相手でも彼は容赦しなかった。フォースクラッシュで威力を上げて、自慢のスタッフで殴り飛ばす。
更に飛ばされた一匹は運悪く婆の所に飛んで追い打ちに泣く。
「ほうれ、どうしたどうした。これでは準備体操にもならんのう」
と挑発を交えて、なんと婆はヌンチャク片手に軽快なステップを踏みつつ奮闘中。歳を感じさせぬその動きは見事なものだ。が、そこへ予期せぬ新手――というか、ラスボス登場。万歳丸の一撃をきっかけに中では分が悪いと踏んだのか倉庫の壁をブチ破り、コボルト達を従えていたらしいオークが外へと姿を現す。
「まさかあれでも生きているとはな…」
万歳丸のそれを見ていたザレムが驚いたとばかりに言葉する。
「敵は排除するのみです!」
そう言い強打で突っ込むシルヴィアであるが、手にした龍剣はオークには通らない。
「な、何てこと…」
踏み込むその前にオークから放たれた乱刃によって、彼女は後方に弾かれ近くにいた仲間も踏ん張らねば体勢を保ってはいられない。
「どうやらこいつは骨がありそうだ…」
ロニがスタッフを構え直す。
「あなた、怪我は?」
近くにいたアリアがシルヴィアにそう尋ねて、大した事がないのを悟ると彼女は敵に向き直る。
「力ばかりの醜いものは嫌いよ…そして、傲慢な妖魔もね」
オークを見据えて、何処かミステリアスな雰囲気を纏ったアリアが刃を突き付けたまま、オークに歩み寄る。
その何とも言えない空気を感じてかオークも闇雲に動かない。武士同士が対峙した時の様に、互いに静かな時間が流れる。そこで密かに動いたのはロニだった。彼はオークの後方に位置していて、退路を塞ぐ場所にいる。コボルトは中の面子がほぼほぼやってくれていたようだし、取りこぼしは外の皆でカバーしきれていたから残る敵はあのオークのみだ。彼自身が直接行ってもいいが、今の状態に水を差すのは野暮というもの。けれど、万が一のことを考えるとサポートするに越した事はない。
アリアが駆け出すのを見取り、ロニが術の発動を見計らう。
距離を詰めつつ、その勢いのままアリアは攻撃態勢。まるで踊るように…流れる様な動きだ。
そこでロニもそれに合わせて、
(じっとしてろよ、デカブツが)
彼の杖が僅かに輝く。その直後、オークの足元には光の杭が現れ、奴を固定する。
そこへアリアの渾身の一閃。鈴花・回雪からの天蓋花・残照がオークに深手を負わせる。
それを光焔斬舞と名付けて…彼女曰く、この刃は妖魔を斬り祓うものらしい。
実際のところは命中率無視の豪快な攻撃であったから、ロニのそれがなかったら少しばかり危なかったと思う。
けれど、成功した今敵は苦悶の表情を浮かべ、我武者羅に手にした剣を振り回すのみ。
「私のでも当たればそこそこ痛いのですよ?」
シルヴィアが立て直して、再びオークの許へと走る。
「助太刀しようかのう」
そう言って近くに落ちているコボルトの遺体を婆はぶん投げる。
「後少し、頑張って欲しいの~」
倉庫の方では一掃を終えたディーナの応援が飛ぶ。
その後はそれ程時間はかからなかった。タフだとは言え、敵が一人になってしまえば何の事はない。
多勢に無勢といういい方は余りよくないかもしれないが、オークは袋叩きに合い事切れる。
「しっかし、なんつーかコレ片付けんの、面倒だナァ…」
遺体となって残っている敵を袋に詰め集めつつ、万歳丸が言う。
「なあに、この後のご褒美があると思えば楽しいもんじゃろう?」
そう言うのは婆だ。さっきの戦闘でも立証された事だが、この老婆只者ではない。
「あ、いや…その事なんだが、俺はァ…」
ふと初めに仲間が取り付けていた約束を思い出して万歳丸が言葉を濁す。がその声は仲間に届いていなかった。
●決定
無事工房の邪魔者達が一掃されて、扉こそ壊れたもののハンター達の好意により修理された。
パーザはそれに感謝しトマト酒飲み放題の大盤振る舞い。楽しみにしていた者達からはお替りの声が上がっている。
「不思議な味だな。思ったより甘くないし、生臭くもない」
少し口に含んで味を楽しむロニの横でザレムは料理との相性を模索する。
(この感じだと肉より魚に合うか。いや、ゼリーにして味わうのも捨てがたい)
料理好きとして…こういう新しいものに出会えるのは嬉しいものだ。
「あれぇ、万歳丸さんは飲まないの~?」
そんな中、そろりと裏口に向かう彼を見つけてディーナが首を傾げる。
「あ、いや、俺はその…まだ未成年で」
紅の世界においては飲酒可能な年齢は割と地方で異なっているが、彼の発言は明らかに嘘だ。
「なんじゃ、飲めんのか?」
そこで婆から煽りが入るが、こればかりは無理だ。言い返したいのをぐっと我慢してぎこちない笑顔を返す。
「あ、だったらトマトジュースがありますよ。何たって、トマト村ですから」
そこでパーザが万歳丸にとって余計なものを持ってきてくれるから、さぁ大変。
勿論百パーセントトマトで出来ているジュースであるから彼にとっては最凶ドリンクでしかない。
見る見るうちに体中から汗が吹き出る。
ジュースと酒…どちらかと言えば、酒の方がまだ幾分いけそうか。
「えぇい、判った。呑んでやるよォ!!」
万歳丸は意を決し、トマト酒の入ったカップを煽る。
(お…割といけるカ…も…って、後味にいたァーーー!!)
一瞬美味しいと思ったが、やはりまだまだ苦手意識のある人間には難しいらしい。
お土産に仲間がトマトジュースを貰う中彼は苦手を打ち明け、口直しにと渡された野菜ジュースで気を紛らわす。
「ところで名前はどうされるのですか? もしよかったらと思い考えてきたのですが…」
シルヴィアがパーザに尋ねる。
「まだ考えてませんが…折角なのでお聞かせ下さい」
そうして持ち寄られた名前の候補はどれも素敵で、パーザの頭を悩ませる。
(うーん、どれもいいが…よく考えたら似ている所もあるし…それをうまくまとめれば…)
試行錯誤が続いて後日、郷祭で発表された名は『サン・ルビーノ』。
月チームの彼であったが、皆のイメージにやはり太陽と赤が多かった事、加えてサンは別の意味も持つ訳で…。
「さぁさ私自慢のトマト酒、ぜひご賞味あれ!」
祭りでもサン・ルビーノは多くの人の注目を浴びて、一般販売が行われるのもそう遠くはないことだろう。
トマトのお酒と聞いて味をパッと連想できる者は少ない。
だから酒好きの者達はきっと興味を示す。この依頼もその他でもない。仕事が終わった試飲させて欲しいと言う声がロニ・カルディス(ka0551)と婆(ka6451)から上がってパーザはそれを快諾。
「ほほぉ、そうと決まれば張り切って行かねばのう」
婆はいい返事に気分良さげだ。彼女はこの中で最高齢ではあるが、まだ背筋もしゃんとしているしパワーにおいては若い者に負けるつもりはない。ただ、自覚がある所は一点…綿密な作戦を考えるのは苦手であった。だから、作戦会議に入ると卓にはつくもののこれと言って意見を出す事はない。
「うふふ~お祭りのトマト美味しかったの~。あれがお酒になったらきっと…」
その横では彼女とは違う意味で口を出さないでいるハンターが一人。今年のトマト祭り経験者のディーナ・フェルミ(ka5843)である。
脳裏でその時味わった真っ赤なトマトの味を反芻し、天井を見上げたまま口元から涎が垂れている。
「おやおや、可愛らしい女子がそれじゃあいかんのう」
婆は気を利かせて、彼女の口元を拭く何とも言えぬ平和な光景――。
卓上では加工場と倉庫の図面が広げられ、経験豊富な仲間らが細かな打合わせが続いている。
「まあ、だったらそこは俺に任せな。挑発すンのは得意だぜェ」
そうこうしていると話は陽動と突入の両面からに固まって、自信家の万歳丸(ka5665)はいの一番に挑発役を志願する。
「俺は倉庫制圧に向かう。取り急ぎ内部の様子でも見てこよう」
そう言って斥候に出たのはザレム・アズール(ka0878)だ。
今回疾影士の職種がいないからと隠密の知識のある彼が様子を見に行くらしい。
「異存ないです。しかし、多くのコボルトが工房を占拠したとの事ですが、中は鮨詰め状態なのでしょうか?」
だったら面白そうだと思いつつも言葉を呑み込んで百々尻 うらら(ka6537)が言う。
「流石にそこまでにはなっていないと思います。けれど急がないと」
どういうつもりで占拠したのかは判らない。しかし、早くしなければ酒樽に被害が出るかもしれないとシルヴィア・オーウェン(ka6372)が事の緊急性を訴える。
「まさか飲んでるとかじゃないだろうが、酒の一滴は血の一滴。大切にしなくてはな」
ロニの言葉。話がまとまった所で早速彼らはパーザに案内され工房へ向かう事になる。
辺りの景観は実に長閑で、少し先で大戦が行われている事を忘れさせる。
とそこへザレムが早々と戻り、中の様子を報告する。
「ハッキリ言って倉庫内は灯りがついてないから数は判断できないな。屋根の下にある小窓からも積んである樽が邪魔で通路側は死角になっている。まあ、その中央通路に敵はいると思うが」
窓を開ければ日差しが差し込んでばれてしまう。それを危惧して、ザレムは覗くだけに収めたらしい。
「加工場の方は?」
淡々とした様子でアリア・セリウス(ka6424)が尋ねる。
「見た感じ、気配はなかったな。まあ、あっちには飲み食いできるものすらないらしいが」
パーザにその事を確認し、ザレムが答える。
「成程…でも、その方が助かりますね」
とこれはシルヴィア。両方にいないのなら、倉庫に集中できる。
一応新手を考慮する必要があるが、それでもずっと楽になる事に変わりはない。
「まあ、どう転んでもぶっ倒しゃいいんだろ! 簡単な事だぜェ」
万歳丸の言葉に皆が頷く。相手はオークとコボルトだ。
数が判らないとはいえ、単細胞の集まりに過ぎない。ならば知恵のある彼等にかかれば朝飯前だろう。
「では、手筈通りに…」
皆がそれぞれに視線を送る。そして、ここに工房奪還作戦が開始される。
(しっかし、まあなんでトマトなんか狙うかねェ……あんなもん、旨かねェだろォに…)
万歳丸が密かに心中で呟く。そう、彼はトマトが嫌いであった。
●倉庫
やるからには豪快に――ガラリと勢いよく倉庫の扉を引く。
そして、投げ込まれたのは煙の立ち昇る手榴弾…それはアリアが用意してもので、勢いよく中へと投げ込めばもくもく煙が立ち上りまるで火事が発生したかのようだ。一度扉を閉めて、中の混乱を誘う。
「あー、火事ですよ! どなたか、逃げ遅れた方はいませんか!」
「こりゃいかんわっ。はよせんと~、こりゃあ大火事になっちまうよぉ!!」
シルビィアが叫び、婆が太鼓を打ち鳴らし慌てふためく。勿論これは芝居であるが、二人共割と楽しそうだ。
(さーて、どれだけ出てくるやら)
ロニは茂みで待機しつつ様子を伺う。
(収穫祭は祝いの宴…願いの種を撒き、祈りを注がれ芽吹いた夢の果実たちを、凶災もたらす魔に穢させたりしない)
アリアが強い意志を明確に大太刀を握り締める。外班四名、準備は万端のようであったが、まずは内から。
倉庫内にて戦闘の狼煙は上がる。さっき開いた時に飛び込んだのは万歳丸とザレムで、遅れてディーナとうららが続く。
そうして、開口一番に万歳丸が大声を上げる。
「取り立てじゃコルァァァッ!! 出すもんだせやてめェらァッ!」
実際のところ無銭飲酒していたかは定かではないが、ともあれ何処かのあくどい取り立て屋宜しく、中にいる敵全体を怒鳴りつける。
『何ダ、オマエ…』
そう問うオークに、
「こちとらここの家主から依頼受けてきた万歳丸様だァ! 銭出しゃ許してやらなくもないが、ってお前だろ、こいつらたぶらかしたのはよォ」
睨みを利かせて近くにいたコボルトを握り締め問いかける。
『ドウ言ウ、ツモリダ?』
そう言うオークに万歳丸はくつくつと笑って、
「金もねェのに弱いモン従えて昼間っから酒飲ンでンじゃねェ豚男ォ!」
それがこの戦いの引き金となった。掴んでいたコボルトをオークへとほり投げる。
話している間にも投げ込まれていた煙は徐々に広がり、残りの三人の姿を隠す。
それにより行動はしやすくなる。
ディーナは煙に紛れて、前へと駆け抜けていくザレムとうららを見送り、樽の方に向かう。
(えっと、作戦は確か……あれ、何でしたっけ?)
そう言えばちゃんと聞いていなかった事を思い出すが、彼女の天然思考は慌てる事無く自分なりの行動を開始させる。
「と、とりあえず美味しいトマト酒を守るの…」
戦闘開始と同時に弾かれたりして樽に被害が及ぶのを避けようと、ホーリーヴェールを使用し樽の強度を上げる。ザレムは速さを活かして、通路にいるコボルト達を時に纏めて串刺しにしてゆく。その暴れっぷりにオークも危機を感じたらしかった。万歳丸の投げつけたコボルトを自ら薙ぎ払って、オークは後方へと向かう。途中積まれた酒樽を崩そうとするが、
「壊しちゃダメなの~」
と妨害に駆け付けたディーナによって阻まれ、更に後退。殴る感触が苦手な彼女であったがクロイツハンマーを振り抜き、くらわせた脛への一撃に流石のオークも巨体を揺らす。そんな痛がるオークの傍でちょっとしたハプニング。実際地面が揺れたかどうかは定かではないが、ザレムと共に先行しジグザグに進んでいたうららが足を取られて丁度オークの傍ですっ転ぶ。
「えっ、ちょ…待ってザレムさーん!」
恥ずかしいポーズで転んだままうららの目がオークと交わる。
にたりと笑われた気がした。なぜなら、彼女は顔面から転び、乙女のキュートなお尻が露になっていたのだ。
「うらァァァ、色ボケ豚野郎がァァ!!」
それに気付いて、本来ならば外に撤退する筈だった万歳丸が踏み込み、拳を食らわせる。
「えと…有難う、ございます…」
そう言ううららに、未だ露になっているその部分から視線を逸らしつつ手を上げる彼であった。
●屋外
コボルトは小さく、そして素早い。群れを成し、別のリーダーを置いている事が多いが、緊急事態となればそのリーダーの指示も役には立たないだろう。現に混乱する倉庫内ではコボルト達は思い思いに動き出す。とは言っても彼等一人一人の力はそれ程ではなく、それを本人達も判っているようで三匹が一組のグループを構成し逃げ出す時も彼ら特有の意志疎通を介して屋外へと逃げてゆく。
『マテ、コラッ!』
オークのそんな言葉も生命の危機に瀕しては彼らの耳には届かない。倉庫上部にある窓から出て行く者や正面の引き戸から逃げ出す者、後方の扉の鍵を開けに行く者と様々だ。
「やっぱり敵は烏合の衆だったな」
倉庫後方の扉から出てきたコボルトを見据えてロニがにやりと笑う。
そんな雑魚相手でも彼は容赦しなかった。フォースクラッシュで威力を上げて、自慢のスタッフで殴り飛ばす。
更に飛ばされた一匹は運悪く婆の所に飛んで追い打ちに泣く。
「ほうれ、どうしたどうした。これでは準備体操にもならんのう」
と挑発を交えて、なんと婆はヌンチャク片手に軽快なステップを踏みつつ奮闘中。歳を感じさせぬその動きは見事なものだ。が、そこへ予期せぬ新手――というか、ラスボス登場。万歳丸の一撃をきっかけに中では分が悪いと踏んだのか倉庫の壁をブチ破り、コボルト達を従えていたらしいオークが外へと姿を現す。
「まさかあれでも生きているとはな…」
万歳丸のそれを見ていたザレムが驚いたとばかりに言葉する。
「敵は排除するのみです!」
そう言い強打で突っ込むシルヴィアであるが、手にした龍剣はオークには通らない。
「な、何てこと…」
踏み込むその前にオークから放たれた乱刃によって、彼女は後方に弾かれ近くにいた仲間も踏ん張らねば体勢を保ってはいられない。
「どうやらこいつは骨がありそうだ…」
ロニがスタッフを構え直す。
「あなた、怪我は?」
近くにいたアリアがシルヴィアにそう尋ねて、大した事がないのを悟ると彼女は敵に向き直る。
「力ばかりの醜いものは嫌いよ…そして、傲慢な妖魔もね」
オークを見据えて、何処かミステリアスな雰囲気を纏ったアリアが刃を突き付けたまま、オークに歩み寄る。
その何とも言えない空気を感じてかオークも闇雲に動かない。武士同士が対峙した時の様に、互いに静かな時間が流れる。そこで密かに動いたのはロニだった。彼はオークの後方に位置していて、退路を塞ぐ場所にいる。コボルトは中の面子がほぼほぼやってくれていたようだし、取りこぼしは外の皆でカバーしきれていたから残る敵はあのオークのみだ。彼自身が直接行ってもいいが、今の状態に水を差すのは野暮というもの。けれど、万が一のことを考えるとサポートするに越した事はない。
アリアが駆け出すのを見取り、ロニが術の発動を見計らう。
距離を詰めつつ、その勢いのままアリアは攻撃態勢。まるで踊るように…流れる様な動きだ。
そこでロニもそれに合わせて、
(じっとしてろよ、デカブツが)
彼の杖が僅かに輝く。その直後、オークの足元には光の杭が現れ、奴を固定する。
そこへアリアの渾身の一閃。鈴花・回雪からの天蓋花・残照がオークに深手を負わせる。
それを光焔斬舞と名付けて…彼女曰く、この刃は妖魔を斬り祓うものらしい。
実際のところは命中率無視の豪快な攻撃であったから、ロニのそれがなかったら少しばかり危なかったと思う。
けれど、成功した今敵は苦悶の表情を浮かべ、我武者羅に手にした剣を振り回すのみ。
「私のでも当たればそこそこ痛いのですよ?」
シルヴィアが立て直して、再びオークの許へと走る。
「助太刀しようかのう」
そう言って近くに落ちているコボルトの遺体を婆はぶん投げる。
「後少し、頑張って欲しいの~」
倉庫の方では一掃を終えたディーナの応援が飛ぶ。
その後はそれ程時間はかからなかった。タフだとは言え、敵が一人になってしまえば何の事はない。
多勢に無勢といういい方は余りよくないかもしれないが、オークは袋叩きに合い事切れる。
「しっかし、なんつーかコレ片付けんの、面倒だナァ…」
遺体となって残っている敵を袋に詰め集めつつ、万歳丸が言う。
「なあに、この後のご褒美があると思えば楽しいもんじゃろう?」
そう言うのは婆だ。さっきの戦闘でも立証された事だが、この老婆只者ではない。
「あ、いや…その事なんだが、俺はァ…」
ふと初めに仲間が取り付けていた約束を思い出して万歳丸が言葉を濁す。がその声は仲間に届いていなかった。
●決定
無事工房の邪魔者達が一掃されて、扉こそ壊れたもののハンター達の好意により修理された。
パーザはそれに感謝しトマト酒飲み放題の大盤振る舞い。楽しみにしていた者達からはお替りの声が上がっている。
「不思議な味だな。思ったより甘くないし、生臭くもない」
少し口に含んで味を楽しむロニの横でザレムは料理との相性を模索する。
(この感じだと肉より魚に合うか。いや、ゼリーにして味わうのも捨てがたい)
料理好きとして…こういう新しいものに出会えるのは嬉しいものだ。
「あれぇ、万歳丸さんは飲まないの~?」
そんな中、そろりと裏口に向かう彼を見つけてディーナが首を傾げる。
「あ、いや、俺はその…まだ未成年で」
紅の世界においては飲酒可能な年齢は割と地方で異なっているが、彼の発言は明らかに嘘だ。
「なんじゃ、飲めんのか?」
そこで婆から煽りが入るが、こればかりは無理だ。言い返したいのをぐっと我慢してぎこちない笑顔を返す。
「あ、だったらトマトジュースがありますよ。何たって、トマト村ですから」
そこでパーザが万歳丸にとって余計なものを持ってきてくれるから、さぁ大変。
勿論百パーセントトマトで出来ているジュースであるから彼にとっては最凶ドリンクでしかない。
見る見るうちに体中から汗が吹き出る。
ジュースと酒…どちらかと言えば、酒の方がまだ幾分いけそうか。
「えぇい、判った。呑んでやるよォ!!」
万歳丸は意を決し、トマト酒の入ったカップを煽る。
(お…割といけるカ…も…って、後味にいたァーーー!!)
一瞬美味しいと思ったが、やはりまだまだ苦手意識のある人間には難しいらしい。
お土産に仲間がトマトジュースを貰う中彼は苦手を打ち明け、口直しにと渡された野菜ジュースで気を紛らわす。
「ところで名前はどうされるのですか? もしよかったらと思い考えてきたのですが…」
シルヴィアがパーザに尋ねる。
「まだ考えてませんが…折角なのでお聞かせ下さい」
そうして持ち寄られた名前の候補はどれも素敵で、パーザの頭を悩ませる。
(うーん、どれもいいが…よく考えたら似ている所もあるし…それをうまくまとめれば…)
試行錯誤が続いて後日、郷祭で発表された名は『サン・ルビーノ』。
月チームの彼であったが、皆のイメージにやはり太陽と赤が多かった事、加えてサンは別の意味も持つ訳で…。
「さぁさ私自慢のトマト酒、ぜひご賞味あれ!」
祭りでもサン・ルビーノは多くの人の注目を浴びて、一般販売が行われるのもそう遠くはないことだろう。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/28 10:10:18 |
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トマト酒の悲劇 万歳丸(ka5665) 鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/10/29 10:09:47 |