ゲスト
(ka0000)
【HW】焔ちゃんと焼き芋
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/31 07:30
- 完成日
- 2016/11/18 14:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境某所。焔の隠れ里――。
里周囲の木々の葉も色付き、ここも実りの秋を迎えていた。
「焔様、今年は大豊作ですよ!」
牙城・焔(kz0191)の部下である白川・桜が軍手をした手でサツマイモを掘り起し、蔓ごと掲げてみせる。
「美味しそうなお芋です。焼けばきっと甘くてホクホクですよ」
「これならハンターにも喜んでもらえそうですね」
他の二人の部下、菊池・緑と球磨・遥も満面の笑みである。
「うむうむ。しっかりと生育しているようだな。パーティーに十分な量が収穫できそうだ」
同じく笑顔で頷く焔。現在四人は里のサツマイモ畑で収穫作業中であった。
畑の周りでは今年生まれたベビー火蜥蜴(赤ちゃん)達が楽しそうに駆け回っている。
「さて三人とも、他の準備もあるゆえ、手早く収穫を終えてしまうぞ」
焔の言葉に桜・緑・遥は「了解です!」と声を上げた。
***
収穫作業を終えた焔達。今度は落ち葉集めと芋洗いである。
緑と遥が竹箒でせっせと落ち葉集め。焔と桜は収穫した芋を水場で綺麗に荒い、水に浸けた後にアルミホイルに包む作業を行う。
地味な作業だが焔は苦では無かった。むしろ楽しい。それはハンター達の喜ぶ顔を想像しているからこそ。
「焔様、落ち葉が集め終りました」
「とりあえずこのくらいあれば良いでしょう」
緑と遥が戻って来た。二人の後ろには山盛りの落ち葉や枯れ木。
「うむ、ご苦労。こちらももうすぐ終わる。少し休憩していてよいぞ」
二人は「はい、ありがとうございます」と言って家屋の縁側に腰掛けた。
「焔様、楽しそうですね」ふと桜が口を開いた。
「うむ。我らが丹精込めて育てた芋をハンター達に振る舞うのだからな。……喜んでくれればよいな」
ぼそりと言った焔に対し桜は「きっと喜んでくれますよ」と言ってにこりと笑った。
***
しばらくして、芋の準備完了。薪や落ち葉の準備完了。レンガや石で火床も設置完了。あとは火種だけ。
「焔様、そーっと、そーっとですよ」
「わ、わかっている。ゆくぞ……!」
桜の言葉に若干ビビりながらも焔は慎重に指先から炎を出し、まずは火床に置いた薪に無事着火。
「お見事です、焔様!」
「うむ!」
それから落ち葉を適量ずつかけて火を大きくしてゆく。
…………またしばらくして熾火(火勢が盛んで赤く熱した炭火。おこし火)が完成。
「ここに芋を投入すれば良いのだな」
「そうですね。一応トングを使いましょうか」
四人は熾火にアルミホイルに包まれた芋を次々と投入し、それから落ち葉で蓋をする。
「あとは待つだけか……」
「そうです。ひたすらに待つだけです」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「そうか」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「そうか……」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「火力が足りないのではないか?」
「えっ」
「火を足してやろう」
「ちょっ、まっ」
部下三名が制止する間もなく、待ち切れなくなった焔は手から業火を放射。
――当然ながら芋は熾火ごと瞬時に消し炭と化した……。
「…………」
それを目にした焔は正気に戻ったらしく、茫然とした表情になる。
「あ、あの……焔様……?」
桜が恐る恐る焔の様子を窺うと……
「……ぐすっ」
その目に光るのは涙。
「焔様っ!?」
「我は……我はなんということを……ぐすっ。ハンター達をもてなすための大事な焼き芋を消し炭にするなどと……なんということを……ぐすっ」
自分がしてしまったことを後悔し、涙を流し続ける焔に部下達は大慌て。
「大丈夫ですよ! 焔様! お芋はまだあります!」
「落ち葉や薪もまた集めれば良いですし!」
「今からやり直せばハンター達が来るまでに間に合いますよ!」
「ぐすっ……お前達……」
三人の部下に宥められ、焔はやっと落ち着いた。桜から渡されたハンカチで涙を拭く。
「我が焦ったばかりに、台無しにしてしまって悪かった。今から急いで準備し直そうと思う。手伝ってくれるか?」
部下三人は「勿論です!」と声を上げ、その答えを聞いた焔に笑顔が戻ったのだった。
里周囲の木々の葉も色付き、ここも実りの秋を迎えていた。
「焔様、今年は大豊作ですよ!」
牙城・焔(kz0191)の部下である白川・桜が軍手をした手でサツマイモを掘り起し、蔓ごと掲げてみせる。
「美味しそうなお芋です。焼けばきっと甘くてホクホクですよ」
「これならハンターにも喜んでもらえそうですね」
他の二人の部下、菊池・緑と球磨・遥も満面の笑みである。
「うむうむ。しっかりと生育しているようだな。パーティーに十分な量が収穫できそうだ」
同じく笑顔で頷く焔。現在四人は里のサツマイモ畑で収穫作業中であった。
畑の周りでは今年生まれたベビー火蜥蜴(赤ちゃん)達が楽しそうに駆け回っている。
「さて三人とも、他の準備もあるゆえ、手早く収穫を終えてしまうぞ」
焔の言葉に桜・緑・遥は「了解です!」と声を上げた。
***
収穫作業を終えた焔達。今度は落ち葉集めと芋洗いである。
緑と遥が竹箒でせっせと落ち葉集め。焔と桜は収穫した芋を水場で綺麗に荒い、水に浸けた後にアルミホイルに包む作業を行う。
地味な作業だが焔は苦では無かった。むしろ楽しい。それはハンター達の喜ぶ顔を想像しているからこそ。
「焔様、落ち葉が集め終りました」
「とりあえずこのくらいあれば良いでしょう」
緑と遥が戻って来た。二人の後ろには山盛りの落ち葉や枯れ木。
「うむ、ご苦労。こちらももうすぐ終わる。少し休憩していてよいぞ」
二人は「はい、ありがとうございます」と言って家屋の縁側に腰掛けた。
「焔様、楽しそうですね」ふと桜が口を開いた。
「うむ。我らが丹精込めて育てた芋をハンター達に振る舞うのだからな。……喜んでくれればよいな」
ぼそりと言った焔に対し桜は「きっと喜んでくれますよ」と言ってにこりと笑った。
***
しばらくして、芋の準備完了。薪や落ち葉の準備完了。レンガや石で火床も設置完了。あとは火種だけ。
「焔様、そーっと、そーっとですよ」
「わ、わかっている。ゆくぞ……!」
桜の言葉に若干ビビりながらも焔は慎重に指先から炎を出し、まずは火床に置いた薪に無事着火。
「お見事です、焔様!」
「うむ!」
それから落ち葉を適量ずつかけて火を大きくしてゆく。
…………またしばらくして熾火(火勢が盛んで赤く熱した炭火。おこし火)が完成。
「ここに芋を投入すれば良いのだな」
「そうですね。一応トングを使いましょうか」
四人は熾火にアルミホイルに包まれた芋を次々と投入し、それから落ち葉で蓋をする。
「あとは待つだけか……」
「そうです。ひたすらに待つだけです」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「そうか」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「そうか……」
…………。
「まだか?」
「まだです」
「火力が足りないのではないか?」
「えっ」
「火を足してやろう」
「ちょっ、まっ」
部下三名が制止する間もなく、待ち切れなくなった焔は手から業火を放射。
――当然ながら芋は熾火ごと瞬時に消し炭と化した……。
「…………」
それを目にした焔は正気に戻ったらしく、茫然とした表情になる。
「あ、あの……焔様……?」
桜が恐る恐る焔の様子を窺うと……
「……ぐすっ」
その目に光るのは涙。
「焔様っ!?」
「我は……我はなんということを……ぐすっ。ハンター達をもてなすための大事な焼き芋を消し炭にするなどと……なんということを……ぐすっ」
自分がしてしまったことを後悔し、涙を流し続ける焔に部下達は大慌て。
「大丈夫ですよ! 焔様! お芋はまだあります!」
「落ち葉や薪もまた集めれば良いですし!」
「今からやり直せばハンター達が来るまでに間に合いますよ!」
「ぐすっ……お前達……」
三人の部下に宥められ、焔はやっと落ち着いた。桜から渡されたハンカチで涙を拭く。
「我が焦ったばかりに、台無しにしてしまって悪かった。今から急いで準備し直そうと思う。手伝ってくれるか?」
部下三人は「勿論です!」と声を上げ、その答えを聞いた焔に笑顔が戻ったのだった。
リプレイ本文
●夢のお話
秋も深まりそろそろ冬の足音が近づいてきた頃――鉄 剣(ka6402)は自宅の寝室に敷かれた布団の上で目を覚まし、上半身を起こした。
「はて、僕はどうしてここにいるんでしょうかね?」
剣はかくりと首をかしげる。自分はいつの間に寝ていたのか。今日は何をするのだったか。しばし考えて……ポンと手の平を打つ。
「ああそうだ、焔さんにお誘いを受けて焼き芋パーティーに誘われたんでしたっけ、忘れてはいけませんね」
本日の予定を思い出した剣は寝間着姿で早朝の冷えた空気に身体を振るわせつつ布団を片付け。着替えた後に準備を始める。
「……よし、これ位で大丈夫でしょうかね」
暫くして準備を整えた剣は荷物を背負い、焔達が待つ里へ出発した。
***
「折角御呼ばれしたんじゃからのう、なあんも手ぶらで来るのも味気ないもんじゃて」
婆(ka6451)も焔達の里へ持っていく物を準備中。
「酒や蒸し饅頭、羊羹といった差し入れ持参でお邪魔しようかのう」
こちらは手作りの甘味の差し入れが中心の様である。
「さぁて、腕に寄りをかけて作ったもんを、色々入れ物に詰めて風呂敷に包んで水牛に詰んで、えっちらおっちら引いていくとしようかの」
準備を終えた婆もいざ出発。時間を掛けてゆっくりと向かう為、婆は早朝に自宅を出た。
***
さて、焔達の隠れ里にやって来たハンター達――。
「焔かぁ……会うのはいつ振りだっけなぁ? 変わりねえといいけどな」
里の入り口で友人の顔を思い浮かべるボルディア・コンフラムス(ka0796)。
「ま~た数が増えてんなぁ……。よーしよしよし、ボルディアだぞ。覚えてっかお前等」
里を駆け回るベビー火蜥蜴の中でも去年生まれた子達と戯れる。
知った顔の来訪にベビー火蜥蜴達は「きゅーきゅー♪」と鳴いて喜んだ。
それから彼女は他のハンター達と共に焔の屋敷へと向かった。
「よォ、焔。元気そうじゃねぇか。ほら、こいつは土産だぜ」
「おや来たかボルディア殿達。待っていたぞ。土産はありがたく頂こう」
長い黒髪、和装の美少女、牙城・焔(kz0191)とその部下達が姿を現し、ハンター達を出迎える。
「お招き有難う。秋は味覚に嬉しい季節だなあ」
黒髪の美青年、ザレム・アズール(ka0878)はその様に挨拶。
「体育の秋で体を適度に動かしたあとの食欲の秋はまた格別だとは思わないか」
ザレムは笑みを浮かべながらその様に言う。
「思ってもなかった招待なので、俺の心も華やいでいるよ」
にこにこしながら話す彼。そしてふと思い出す。
「ああ、そういえば初対面になるのかな。俺はザレム、宜しくな。見てのとおりハンターさ」
改めて挨拶をし、焔達と握手を交わす。
「お芋かぁ、甘くて美味しいよね。実りの秋っていうし、この時期は食べ物がおいしい季節だもの」
緑髪に赤い瞳の美少年、ルーエル・ゼクシディア(ka2473)もにっこり笑顔。
「……でも食べすぎには注意、なんてね。女性陣にとっては悩みの種だよね」
ふむんと顎に手を当てる仕草をするルーエル。
「まぁでも、此処にいる人達なら日頃から身体を使うお仕事してるし、大丈夫だと思うけど」
犬子 七穂(ka6562)は――
「はろーはろー。焼き芋ぱーてぃーですか~」
周りをパッと明るくする様な元気少女。どこか犬っぽい雰囲気を感じさせる彼女は動物が大好き!
「いいですねー秋ですねー」
これから始まる焼き芋パーティーもだが、ベビー火蜥蜴と遊ぶのを楽しみにしている様だ。
●焼き芋パーティー
「お招きいただいてありがとうございます」
皆で焼き芋を焼いている最中の熾火の前に移動し、剣も焔達に恭しく挨拶。
「いやいや、招待を受けてくれてこちらも嬉しいぞ」
焔は純粋な笑みを浮かべる。
「秋の色づく山々も美しいですが、皆様も変わらずお美しいですね」
剣がそう言うと焔は。
「む、そうか。せ、世辞など言っても何も出ぬぞ! ……焼き芋は出るが」
頬を赤らめ身体をもじもじとさせ、照れた様子を見せる。
「お世辞なんかじゃありませんよ。焔さんは本当にお美しいです」
「……」
それを聞いた焔は顔をぼっと真っ赤にして固まってしまった。
そこで焔の部下筆頭である白川・桜が剣に耳打ち。
(焔様は男性に褒められることに慣れていないのです。ご容赦下さいませ)
剣は「アッハイ」と答えるしかなかった。
「焔さん達はいつも何してるの?」
熾火で暖を取りながらルーエルが質問。
「……あ、ああ、普段は畑仕事や家畜の世話等だな」
復活した焔が答える。
「ふーん、いいねえそういうの。ちょっと憧れるかも」
「うむ。なかなかに大変だがここでの暮らしは楽しいぞ。さあそろそろ芋の様子を見てみようか。今日は楽しんで行ってくれ」
「あ。うん、と……それじゃあご招待されたお芋パーティーを楽しませて頂きます」
ルーエルはにこにこと笑顔を浮かべながら言う。
焔の部下の菊池・緑と球磨・遥が熾火からアルミホイルに包まれたサツマイモを一つ取り出し、串を刺してみる。
二人から「もうちょっとですね」との答え。
「これだけのお芋を焼くの、大変だったでしょう……失敗とかしなかった?」
「ししし失敗等する訳が無かろう。ほほほ本当だぞ?」
焔はあからさまに動揺し視線を泳がせる。
「ふふふ、本当かなぁ。怪しいね?」
慌てる様子を微笑ましく見つめるルーエルであった。
「おう、おう、良い匂いじゃのう」
婆も良い感じに焼けてきたサツマイモの匂いにほっこり笑顔。
そんなところで焔が近くに繋いでいる水牛について婆に話しかけた。
「……おう? こいつかのう? 良いべコじゃろう」
「うむ、良い牛だ。毛並にも艶がある。健康な証拠だな」
「荷も運べる、畑も耕せる、良い乳もでると良いことづくめでなあ、重宝しとるんじゃよ」
「我が里でも牛は数頭飼育しているが水牛は居ないな。聞いた所によれば水牛の乳で作るチーズが美味いとか。興味がある」
などと婆と焔は芋が焼き上がるまで牛談義で盛り上がったそうな。
そんなこんなで焼き芋が無事完成! 真っ先にボルディア、
「さて、何はともあれ焼き芋だな。ここに来るまでずっと歩いてたから、俺ぁもう腹が減ってたまんねぇんだよ」
あちあちと言いながらアルミホイルと皮を剥いてホックホクの焼き芋を頬張り、一個を一気に食した後に冷たい牛乳を一杯ごきゅごきゅと飲み干した。
「……うん。甘くて美味ぇ。やるな焔ァ!」
「ふ、当たり前だろう。我が里でとれたサツマイモだぞ」
胸を張り、得意げにする焔。
「――ところで、あの隅っこに隠すようにして置いてある黒い物体はなんなんだ?」
二つ目に手を出しつつ、ボルディアが問う。
「はて、なんのことやら分からぬな」
明後日の方を向いて誤魔化す焔。
「お芋さんも焼けたらな、順番に少しずつ分けてな、皆で食おう。差し入れも広げての」
婆も土産の酒、手作り蒸し饅頭や羊羹を皆に勧める。
「皆で食う芋が一番うまいんじゃあ」
「そうだな。こういった焼き芋は皆で食べてこそ、だな」
焔はうんうんと頷く。
他の者達もはふはふと熱々ホクホクの焼き芋を頬張り、焼き芋パーティーは盛り上がる。
「焼き芋にはみるくですよー。すいーとぽてとみたいで美味しいですよーおためしあれー」
にっこにこの笑顔で焼き芋を食べながら他の者にも勧める七穂。
飲み物は冷えた牛乳の他、コーヒーや剣が用意した緑茶が振る舞われた。
焼き芋パーティーが盛り上がりを見せる中でザレム、
「これはお土産。一寸した味の変化をと思ってな」
彼が用意して来たのは――
「甘栗だ。このままでも良いし、焼芋と交互頬張っても良い。これを串に刺して炙って焼いて……焼き甘栗にしても中々の物だよ」
「ありがたい、頂こう。折角だ、皆にも振舞おう」
ザレムが持参した甘栗は剣の焼きマシュマロと合わせて女性陣に大変好評であった。
「焔さん達はどうしてハンターを招こうと?」
焼き芋を頬張りつつザレムは問う。
「そうだな。ハンターには日頃から世話になっているからな。そのお返しだ」
その様に話す焔の表情は優しい笑みだった。
●宴会とベビー火蜥蜴
焼き芋パーティーも中盤に差し掛かった頃、一部では酒盛りへ。また一部では雑談やベビー火蜥蜴との遊びへ移行。
「さぁ飲め! 俺の地元の酒だからな、きっと美味いぜ」
ボルディアが持参した焼酎などの酒瓶を開け始めた。
まず自分が一口行った後に皆にも勧める。
ザレムは白川・桜とお話中。
「本職はシェフでな。料理修行で彼方此方旅して、生き抜く術を覚醒によって身につけた感じかな」
「料理人兼ハンターなのですね。依頼の出先でもザレムさんが居れば美味しいご飯が食べられそうです」
焼き芋をはむはむしながら桜は答える。ザレムもあちあちとホイル剥き、焔や部下に感謝しつつ焼き芋をもぐもぐ。
「これだけ集めるのは大変だったろうに」
「確かに準備にはそれなりの手間が掛かりましたが皆さんの笑顔を見れば苦労も何のそのですよ」
桜は穏やかな笑みを浮かべる。と、そこでザレムが『あるもの』に気付く。
(ん? あの隅っこにある消炭の山は一体……? あっ)
そこでザレムの肩を桜が突き、ザレムが振り返ると桜は人差し指を立て唇に当て、片目を閉じていた。『それは内緒』という事だ。
「美味い。もう一つ頂こう。そちらも遠慮せず、焼き甘栗もどうぞだ」
「それでは頂きますね」
ザレムは焼き芋二つ目をはむはむ。桜は焼き栗をもぐもぐ。……穏やかな時間が流れる。
「……これだけ美味しそうに食べてるところをみると、皆甘い物とか好き? 甘味処とかあったら目がなさそうだよね」
ルーエルが焼き芋にがっついている菊池・緑や球磨・遥を見て言う。
「む、女子が少しはしたなかったですかね? 甘いものは当然ながら好きですよ」
「そうなんですか!? ……あ、私も甘いものは好きです」
「ううん、別に変じゃなくて、僕は女性らしくていいと思うけどな」
ルーエルはにっこーり笑顔。二人は安堵。
「もし僕が住んでる帝国の方に遊びが来ることがあったら、紹介するよっ」
「帝国かぁ……いつか行ってみたいですね」
「きっと大都会なんでしょうねー」
そんなところで焼き芋の匂いを嗅ぎつけたのかベビー火蜥蜴達がやって来た。
「火蜥蜴もお芋食べるの? おいでおいで」
ベビー火蜥蜴達は焼き芋を分けて貰って「きゅーきゅー♪」と大喜び。
「……おお。温かい。この里ってもしかして暖房いらず?」
ベビー火蜥蜴を抱っこしたルーエルの感想である。『火蜥蜴』という名前だけあって体温が高いのだ。
「よし、僕とちょっと遊ぼうか。ふふふ、簡単な追いかけっこだよ」
そう言ってルーエルと火蜥蜴達は駆け出す。
「とてもとても楽しいお時間を過ごさせて頂きありがとうございます」
剣もベビー火蜥蜴を抱っこし、自分が食べている焼き芋を分け与えながら焔に話しかけた。
「いやいや、先ほども言ったが気にする事は無い。むしろ楽しんで貰えて私も嬉しい」
少しボルディアの酒が進んで頬を紅潮させながら焔が答える。
「年初めの頃には今度はこちらが皆さんを歓迎できたら嬉しいです」
「そうだな……それもよいな。考えておこう」
焔は微笑んで答え、また酒を一口煽った。
「おう、おう、小さい蜥蜴さんらがぎょうさんおるのう。皆稚児かえ? 可愛いのう」
焼き芋を食べ終えた婆は酒をちびちびやりながら、ルーエルと一緒に庭を駆け回るベビー火蜥蜴達を眺める。
「お姉さん方だけで面倒見取るのかえ? えらいねえ」
「そうだな。小さいうちは我らも面倒を見る。火蜥蜴もれっきとした里の仲間だからな。大切にせねば」
焔は少し真面目な口調で答えた。
「もうすこうし大きくなったら、がっつり殴って強くせんとなあ……子は殴って殴られてつようなるもんじゃろ? 婆そうじゃった」
「殴るのは……どうだろうか……。随分とスパルタ教育だな」
それには焔も苦笑する。
「うわぁ、火蜥蜴赤ちゃん? かわいーですねっ」
主にベビー火蜥蜴と戯れることが目的だった七穂はきゅーきゅー! と可愛らしく鳴く実物を前にして大はしゃぎ。
「ぷにぷにしてもいいですかー? えへへかわいーですね~」
「良いですよ。ぷにぷにだけでなく抱っこしてあげてください」
にっこりと優しい笑みを浮かべて白川・桜が答える。
「ぎゅーってするとあったかいです……!」
「そうでしょうそうでしょう。この子達が居れば冬も快適です。夏は――ですけど」
「わあ……本当にあったかい……それにぷにぷに柔らかい……ずっとこうしていたいです……」
七穂はベビー火蜥蜴を抱っこし頬ずりしてうっとりした表情。
●夢の終り……
「所でよぉ、焔ァ。お前そろそろいい人見つかんねえのか?」
大分酒が進んできたボルディアが焔に絡む。
「む、何の事だ」
「ここの生活もイイんだろうけど、ちったぁ人里に出て男に慣れとかねえと……行き遅れるぞ」
「むむむ」
ボルディアは焔の肩に手を回す。
「なあ、ぶっちゃけコイツ男に免疫ねェだろ? このままでイイと思うか?」
「よ、よいとは思わぬが……そういうボルディア殿はどうなのだ」
「……あ? 俺? 俺は~~ホラ、依頼でしょっちゅう野郎共といるからイイんだよ。いざとなりゃ兄貴達に養ってもらうしな」
「兄上が居るのか。それは良いな。……いや、この場合は良いのか??」
焔の思考は若干混乱してきた。
「ああ、穏やかで楽しいひと時、何て僕は幸せなんでしょうか」
剣は食後、縁側に腰掛け、ずずいと緑茶を啜る。焼き芋は凄く美味しかった。
都会の喧騒を離れて静かな田舎の里で皆で焼き芋会……心が洗われる。
「こんなあったかくてかわいいだなんて……私もうここに住みますー!」
ベビー火蜥蜴の可愛さにすっかり魅了されメロメロになった七穂は若干暴走気味。
「そうです、里長さんに私もここにすんでいいかきいてみましょー許可をとるのです……!」
と言う訳で七穂は焔の元へやって来て事情を話す。無論ベビー火蜥蜴は抱いたまま。
「こ、ここに住む? こちらはよいがお前はよいのか? ハンターとしては不便であろう?」
ド真面目に答える焔。
「いいのですー! ずっとベビー火蜥蜴ちゃん達と暮らすのですー!!」
ベビー火蜥蜴をだぎゅーと抱っこしたまま焔に詰め寄る七穂。
***
「……うーん、お腹いっぱい。火蜥蜴とも沢山遊んだし、なんだか眠くなっちゃった」
遊び疲れたルーエルは焔の自宅に上がらせて貰って、座敷で休憩していた。
「少しだけ、横になろうかな……」
そのままごろんとルーエルは横になり、少しまどろんだ後にすぅすぅと寝息を立て、眠りに落ちて行った――。
こうしてハンター達を招いた焔達の里の焼き芋パーティーは盛況の内に幕を閉じたのだった。
秋も深まりそろそろ冬の足音が近づいてきた頃――鉄 剣(ka6402)は自宅の寝室に敷かれた布団の上で目を覚まし、上半身を起こした。
「はて、僕はどうしてここにいるんでしょうかね?」
剣はかくりと首をかしげる。自分はいつの間に寝ていたのか。今日は何をするのだったか。しばし考えて……ポンと手の平を打つ。
「ああそうだ、焔さんにお誘いを受けて焼き芋パーティーに誘われたんでしたっけ、忘れてはいけませんね」
本日の予定を思い出した剣は寝間着姿で早朝の冷えた空気に身体を振るわせつつ布団を片付け。着替えた後に準備を始める。
「……よし、これ位で大丈夫でしょうかね」
暫くして準備を整えた剣は荷物を背負い、焔達が待つ里へ出発した。
***
「折角御呼ばれしたんじゃからのう、なあんも手ぶらで来るのも味気ないもんじゃて」
婆(ka6451)も焔達の里へ持っていく物を準備中。
「酒や蒸し饅頭、羊羹といった差し入れ持参でお邪魔しようかのう」
こちらは手作りの甘味の差し入れが中心の様である。
「さぁて、腕に寄りをかけて作ったもんを、色々入れ物に詰めて風呂敷に包んで水牛に詰んで、えっちらおっちら引いていくとしようかの」
準備を終えた婆もいざ出発。時間を掛けてゆっくりと向かう為、婆は早朝に自宅を出た。
***
さて、焔達の隠れ里にやって来たハンター達――。
「焔かぁ……会うのはいつ振りだっけなぁ? 変わりねえといいけどな」
里の入り口で友人の顔を思い浮かべるボルディア・コンフラムス(ka0796)。
「ま~た数が増えてんなぁ……。よーしよしよし、ボルディアだぞ。覚えてっかお前等」
里を駆け回るベビー火蜥蜴の中でも去年生まれた子達と戯れる。
知った顔の来訪にベビー火蜥蜴達は「きゅーきゅー♪」と鳴いて喜んだ。
それから彼女は他のハンター達と共に焔の屋敷へと向かった。
「よォ、焔。元気そうじゃねぇか。ほら、こいつは土産だぜ」
「おや来たかボルディア殿達。待っていたぞ。土産はありがたく頂こう」
長い黒髪、和装の美少女、牙城・焔(kz0191)とその部下達が姿を現し、ハンター達を出迎える。
「お招き有難う。秋は味覚に嬉しい季節だなあ」
黒髪の美青年、ザレム・アズール(ka0878)はその様に挨拶。
「体育の秋で体を適度に動かしたあとの食欲の秋はまた格別だとは思わないか」
ザレムは笑みを浮かべながらその様に言う。
「思ってもなかった招待なので、俺の心も華やいでいるよ」
にこにこしながら話す彼。そしてふと思い出す。
「ああ、そういえば初対面になるのかな。俺はザレム、宜しくな。見てのとおりハンターさ」
改めて挨拶をし、焔達と握手を交わす。
「お芋かぁ、甘くて美味しいよね。実りの秋っていうし、この時期は食べ物がおいしい季節だもの」
緑髪に赤い瞳の美少年、ルーエル・ゼクシディア(ka2473)もにっこり笑顔。
「……でも食べすぎには注意、なんてね。女性陣にとっては悩みの種だよね」
ふむんと顎に手を当てる仕草をするルーエル。
「まぁでも、此処にいる人達なら日頃から身体を使うお仕事してるし、大丈夫だと思うけど」
犬子 七穂(ka6562)は――
「はろーはろー。焼き芋ぱーてぃーですか~」
周りをパッと明るくする様な元気少女。どこか犬っぽい雰囲気を感じさせる彼女は動物が大好き!
「いいですねー秋ですねー」
これから始まる焼き芋パーティーもだが、ベビー火蜥蜴と遊ぶのを楽しみにしている様だ。
●焼き芋パーティー
「お招きいただいてありがとうございます」
皆で焼き芋を焼いている最中の熾火の前に移動し、剣も焔達に恭しく挨拶。
「いやいや、招待を受けてくれてこちらも嬉しいぞ」
焔は純粋な笑みを浮かべる。
「秋の色づく山々も美しいですが、皆様も変わらずお美しいですね」
剣がそう言うと焔は。
「む、そうか。せ、世辞など言っても何も出ぬぞ! ……焼き芋は出るが」
頬を赤らめ身体をもじもじとさせ、照れた様子を見せる。
「お世辞なんかじゃありませんよ。焔さんは本当にお美しいです」
「……」
それを聞いた焔は顔をぼっと真っ赤にして固まってしまった。
そこで焔の部下筆頭である白川・桜が剣に耳打ち。
(焔様は男性に褒められることに慣れていないのです。ご容赦下さいませ)
剣は「アッハイ」と答えるしかなかった。
「焔さん達はいつも何してるの?」
熾火で暖を取りながらルーエルが質問。
「……あ、ああ、普段は畑仕事や家畜の世話等だな」
復活した焔が答える。
「ふーん、いいねえそういうの。ちょっと憧れるかも」
「うむ。なかなかに大変だがここでの暮らしは楽しいぞ。さあそろそろ芋の様子を見てみようか。今日は楽しんで行ってくれ」
「あ。うん、と……それじゃあご招待されたお芋パーティーを楽しませて頂きます」
ルーエルはにこにこと笑顔を浮かべながら言う。
焔の部下の菊池・緑と球磨・遥が熾火からアルミホイルに包まれたサツマイモを一つ取り出し、串を刺してみる。
二人から「もうちょっとですね」との答え。
「これだけのお芋を焼くの、大変だったでしょう……失敗とかしなかった?」
「ししし失敗等する訳が無かろう。ほほほ本当だぞ?」
焔はあからさまに動揺し視線を泳がせる。
「ふふふ、本当かなぁ。怪しいね?」
慌てる様子を微笑ましく見つめるルーエルであった。
「おう、おう、良い匂いじゃのう」
婆も良い感じに焼けてきたサツマイモの匂いにほっこり笑顔。
そんなところで焔が近くに繋いでいる水牛について婆に話しかけた。
「……おう? こいつかのう? 良いべコじゃろう」
「うむ、良い牛だ。毛並にも艶がある。健康な証拠だな」
「荷も運べる、畑も耕せる、良い乳もでると良いことづくめでなあ、重宝しとるんじゃよ」
「我が里でも牛は数頭飼育しているが水牛は居ないな。聞いた所によれば水牛の乳で作るチーズが美味いとか。興味がある」
などと婆と焔は芋が焼き上がるまで牛談義で盛り上がったそうな。
そんなこんなで焼き芋が無事完成! 真っ先にボルディア、
「さて、何はともあれ焼き芋だな。ここに来るまでずっと歩いてたから、俺ぁもう腹が減ってたまんねぇんだよ」
あちあちと言いながらアルミホイルと皮を剥いてホックホクの焼き芋を頬張り、一個を一気に食した後に冷たい牛乳を一杯ごきゅごきゅと飲み干した。
「……うん。甘くて美味ぇ。やるな焔ァ!」
「ふ、当たり前だろう。我が里でとれたサツマイモだぞ」
胸を張り、得意げにする焔。
「――ところで、あの隅っこに隠すようにして置いてある黒い物体はなんなんだ?」
二つ目に手を出しつつ、ボルディアが問う。
「はて、なんのことやら分からぬな」
明後日の方を向いて誤魔化す焔。
「お芋さんも焼けたらな、順番に少しずつ分けてな、皆で食おう。差し入れも広げての」
婆も土産の酒、手作り蒸し饅頭や羊羹を皆に勧める。
「皆で食う芋が一番うまいんじゃあ」
「そうだな。こういった焼き芋は皆で食べてこそ、だな」
焔はうんうんと頷く。
他の者達もはふはふと熱々ホクホクの焼き芋を頬張り、焼き芋パーティーは盛り上がる。
「焼き芋にはみるくですよー。すいーとぽてとみたいで美味しいですよーおためしあれー」
にっこにこの笑顔で焼き芋を食べながら他の者にも勧める七穂。
飲み物は冷えた牛乳の他、コーヒーや剣が用意した緑茶が振る舞われた。
焼き芋パーティーが盛り上がりを見せる中でザレム、
「これはお土産。一寸した味の変化をと思ってな」
彼が用意して来たのは――
「甘栗だ。このままでも良いし、焼芋と交互頬張っても良い。これを串に刺して炙って焼いて……焼き甘栗にしても中々の物だよ」
「ありがたい、頂こう。折角だ、皆にも振舞おう」
ザレムが持参した甘栗は剣の焼きマシュマロと合わせて女性陣に大変好評であった。
「焔さん達はどうしてハンターを招こうと?」
焼き芋を頬張りつつザレムは問う。
「そうだな。ハンターには日頃から世話になっているからな。そのお返しだ」
その様に話す焔の表情は優しい笑みだった。
●宴会とベビー火蜥蜴
焼き芋パーティーも中盤に差し掛かった頃、一部では酒盛りへ。また一部では雑談やベビー火蜥蜴との遊びへ移行。
「さぁ飲め! 俺の地元の酒だからな、きっと美味いぜ」
ボルディアが持参した焼酎などの酒瓶を開け始めた。
まず自分が一口行った後に皆にも勧める。
ザレムは白川・桜とお話中。
「本職はシェフでな。料理修行で彼方此方旅して、生き抜く術を覚醒によって身につけた感じかな」
「料理人兼ハンターなのですね。依頼の出先でもザレムさんが居れば美味しいご飯が食べられそうです」
焼き芋をはむはむしながら桜は答える。ザレムもあちあちとホイル剥き、焔や部下に感謝しつつ焼き芋をもぐもぐ。
「これだけ集めるのは大変だったろうに」
「確かに準備にはそれなりの手間が掛かりましたが皆さんの笑顔を見れば苦労も何のそのですよ」
桜は穏やかな笑みを浮かべる。と、そこでザレムが『あるもの』に気付く。
(ん? あの隅っこにある消炭の山は一体……? あっ)
そこでザレムの肩を桜が突き、ザレムが振り返ると桜は人差し指を立て唇に当て、片目を閉じていた。『それは内緒』という事だ。
「美味い。もう一つ頂こう。そちらも遠慮せず、焼き甘栗もどうぞだ」
「それでは頂きますね」
ザレムは焼き芋二つ目をはむはむ。桜は焼き栗をもぐもぐ。……穏やかな時間が流れる。
「……これだけ美味しそうに食べてるところをみると、皆甘い物とか好き? 甘味処とかあったら目がなさそうだよね」
ルーエルが焼き芋にがっついている菊池・緑や球磨・遥を見て言う。
「む、女子が少しはしたなかったですかね? 甘いものは当然ながら好きですよ」
「そうなんですか!? ……あ、私も甘いものは好きです」
「ううん、別に変じゃなくて、僕は女性らしくていいと思うけどな」
ルーエルはにっこーり笑顔。二人は安堵。
「もし僕が住んでる帝国の方に遊びが来ることがあったら、紹介するよっ」
「帝国かぁ……いつか行ってみたいですね」
「きっと大都会なんでしょうねー」
そんなところで焼き芋の匂いを嗅ぎつけたのかベビー火蜥蜴達がやって来た。
「火蜥蜴もお芋食べるの? おいでおいで」
ベビー火蜥蜴達は焼き芋を分けて貰って「きゅーきゅー♪」と大喜び。
「……おお。温かい。この里ってもしかして暖房いらず?」
ベビー火蜥蜴を抱っこしたルーエルの感想である。『火蜥蜴』という名前だけあって体温が高いのだ。
「よし、僕とちょっと遊ぼうか。ふふふ、簡単な追いかけっこだよ」
そう言ってルーエルと火蜥蜴達は駆け出す。
「とてもとても楽しいお時間を過ごさせて頂きありがとうございます」
剣もベビー火蜥蜴を抱っこし、自分が食べている焼き芋を分け与えながら焔に話しかけた。
「いやいや、先ほども言ったが気にする事は無い。むしろ楽しんで貰えて私も嬉しい」
少しボルディアの酒が進んで頬を紅潮させながら焔が答える。
「年初めの頃には今度はこちらが皆さんを歓迎できたら嬉しいです」
「そうだな……それもよいな。考えておこう」
焔は微笑んで答え、また酒を一口煽った。
「おう、おう、小さい蜥蜴さんらがぎょうさんおるのう。皆稚児かえ? 可愛いのう」
焼き芋を食べ終えた婆は酒をちびちびやりながら、ルーエルと一緒に庭を駆け回るベビー火蜥蜴達を眺める。
「お姉さん方だけで面倒見取るのかえ? えらいねえ」
「そうだな。小さいうちは我らも面倒を見る。火蜥蜴もれっきとした里の仲間だからな。大切にせねば」
焔は少し真面目な口調で答えた。
「もうすこうし大きくなったら、がっつり殴って強くせんとなあ……子は殴って殴られてつようなるもんじゃろ? 婆そうじゃった」
「殴るのは……どうだろうか……。随分とスパルタ教育だな」
それには焔も苦笑する。
「うわぁ、火蜥蜴赤ちゃん? かわいーですねっ」
主にベビー火蜥蜴と戯れることが目的だった七穂はきゅーきゅー! と可愛らしく鳴く実物を前にして大はしゃぎ。
「ぷにぷにしてもいいですかー? えへへかわいーですね~」
「良いですよ。ぷにぷにだけでなく抱っこしてあげてください」
にっこりと優しい笑みを浮かべて白川・桜が答える。
「ぎゅーってするとあったかいです……!」
「そうでしょうそうでしょう。この子達が居れば冬も快適です。夏は――ですけど」
「わあ……本当にあったかい……それにぷにぷに柔らかい……ずっとこうしていたいです……」
七穂はベビー火蜥蜴を抱っこし頬ずりしてうっとりした表情。
●夢の終り……
「所でよぉ、焔ァ。お前そろそろいい人見つかんねえのか?」
大分酒が進んできたボルディアが焔に絡む。
「む、何の事だ」
「ここの生活もイイんだろうけど、ちったぁ人里に出て男に慣れとかねえと……行き遅れるぞ」
「むむむ」
ボルディアは焔の肩に手を回す。
「なあ、ぶっちゃけコイツ男に免疫ねェだろ? このままでイイと思うか?」
「よ、よいとは思わぬが……そういうボルディア殿はどうなのだ」
「……あ? 俺? 俺は~~ホラ、依頼でしょっちゅう野郎共といるからイイんだよ。いざとなりゃ兄貴達に養ってもらうしな」
「兄上が居るのか。それは良いな。……いや、この場合は良いのか??」
焔の思考は若干混乱してきた。
「ああ、穏やかで楽しいひと時、何て僕は幸せなんでしょうか」
剣は食後、縁側に腰掛け、ずずいと緑茶を啜る。焼き芋は凄く美味しかった。
都会の喧騒を離れて静かな田舎の里で皆で焼き芋会……心が洗われる。
「こんなあったかくてかわいいだなんて……私もうここに住みますー!」
ベビー火蜥蜴の可愛さにすっかり魅了されメロメロになった七穂は若干暴走気味。
「そうです、里長さんに私もここにすんでいいかきいてみましょー許可をとるのです……!」
と言う訳で七穂は焔の元へやって来て事情を話す。無論ベビー火蜥蜴は抱いたまま。
「こ、ここに住む? こちらはよいがお前はよいのか? ハンターとしては不便であろう?」
ド真面目に答える焔。
「いいのですー! ずっとベビー火蜥蜴ちゃん達と暮らすのですー!!」
ベビー火蜥蜴をだぎゅーと抱っこしたまま焔に詰め寄る七穂。
***
「……うーん、お腹いっぱい。火蜥蜴とも沢山遊んだし、なんだか眠くなっちゃった」
遊び疲れたルーエルは焔の自宅に上がらせて貰って、座敷で休憩していた。
「少しだけ、横になろうかな……」
そのままごろんとルーエルは横になり、少しまどろんだ後にすぅすぅと寝息を立て、眠りに落ちて行った――。
こうしてハンター達を招いた焔達の里の焼き芋パーティーは盛況の内に幕を閉じたのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/27 23:03:35 |
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焼き芋おいしいな(相談卓) 鉄 剣(ka6402) 人間(リアルブルー)|21才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/10/26 17:35:49 |
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焔ちゃんに御質問(質問卓) 鉄 剣(ka6402) 人間(リアルブルー)|21才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/10/26 22:24:53 |