ゲスト
(ka0000)
釘バットで騒ぐ夜
マスター:村井朋靖

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/24 19:00
- 完成日
- 2014/10/04 20:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●押し付けて、剥ぎ取る。
最近では観光立国としても名を上げる、港湾都市ポルトワール。
その繁栄の陰にひっそりと「ダウンタウン」と呼ばれる地域が佇んでいた。
どこぞの船から抜け出した者、生活に困窮して流れ着いた者、最初からこの辺に住んでいた者……そんないわくつきの連中が集まり、いくつものコミュニティーを形成したのだ。そう、ダウンタウンは一箇所ではなく、ポルトワール中央区を除く周辺区域に点在している。
現在、ここを仕切っているのが、ヴァネッサ(kz0030)という女傑をリーダーとする集団である。
彼女はここに居着くや否や、そのカリスマ性を発揮し、多くの仲間を獲得。すぐさま重犯罪の抑制に動き出した。
当時のダウンタウンは、時の為政者を悩ませるほど荒れており、コミュニティーの存続を認めさせるには、まずは血生臭さを排する必要があった。
そこでヴァネッサは地元由来の盗賊団、渡航者で結成された強盗団などを順に壊滅させ、手に入れた金銭はダウンタウンの善良な市民のためになるような運用を行った。
彼女は頭がよく、人を見る才能がある。自分の領分でない部分は、信頼できる者に任せた。今回の場合、ダウンタウンに理解のある権力者に金を工面した上で便宜を図ってもらう……といった感じだ。
「ふふっ、餅は餅屋っていうしね」
これが功を奏し、ポルトワールを仕切る統合本部もヴァネッサの手腕を認めた。これ以降、現在に至るまで、重大犯罪は成りを潜めている。
ただ、ダウンタウンのみならず、犯罪の芽はどこでも育まれるものだ。そして、今日もまた……
昼間でも日が差さぬ薄暗い路地を、上品な黒スーツを着こなした壮年の男が悠然と歩く。その隣に屈強な男が控え、後ろには構成員らしき男らが付き従う。
黒ずくめの男、総勢9人の行脚。さすがに都市統合本部が提供する食べ物の配給に向かうという雰囲気ではない。
先頭を行く男は粗末な小屋の前で立ち止まり、手にした杖で扉を叩いて、家主が出るのを待った。
「ああ、なんだい?」
素っ気もなしに出たのは、無精ヒゲの親父。
「ごきげんよう、旦那さん。ちょっといいかね?」
紳士は相手の了承も得ず、まずは手下を狭い家の中に入れる。あまりにも手慣れた感じで、親父の方が目を丸くした。
「な、何してんだ、あんたら!」
「昨夜、私はお前にビールを奢りましたよね?」
全員が入ったのを確認し、スーツの男は扉を閉めた。
「あ、ああ。そりゃ忘れてねぇよ……」
そう……昨夜、ふたりは寂れた酒場にいた。
カウンター席で1杯のビールをチビチビやってる親父に対し、この紳士は気前よくビールを1杯奢り「ぐいっと飲むものだろう?」と声をかけた。親父は喜んで飲んだが、その後は特に会話が弾むこともなく、その場を後にしたのだが……
出会ったことを否定しないと見るや、今度は屈強な男が騒ぎ始めた。
「こちらの旦那はお礼がほしいと、こう言ってるんだ。どうだ、親父。お前にその気持ちはあるか、んん~?」
親父は「ありがとうございました」と言えば済む話ではないことは、すでに承知している。でなければ、こんなに人を連れてこない。
「で、俺は何をすれば……?」
「あなたの心に感謝の気持ちがあるのなら、ビール20杯分のお金を差し出しなさい。どんなことをしてでもね」
紳士の要求はあまりにも理不尽。しかし、そんな無法がまかり通ってしまうのが、ダウンタウンという土地なのだ。
「家の中を見てもらったらわかるだろうが、そんな金はすぐに用意できない」
「じゃあ、3日後まで待ちましょう。明日の同じ時間、またここに来ます」
紳士はおもむろに懐中時計を開き、「では、3日後の昼2時ということで」と伝えると、扉を開いて出て行こうとした。
その時だ。屈強な男がしたり顔で言い添える。
「1日待つ分の利子は10杯分だ。つまり30杯分追加だな、はっはっは!」
「そ、そんな!」
「俺はいいんだぜ? お前が今から20杯分しっかり痛めつけられるってんならよ?」
この時、取り巻きの7人の目が細くなる。彼らは暴力にモノを言わせる連中で、上の許可が出れば容赦なく暴れ尽くすだろう。
親父は力なく頷き、連中にご退出いただくが、金を工面する手段など持ち合わせているはずがない。執行猶予に値する時間をただ無為に過ごし、夜は「元気なうちにもう1杯」とばかりに、昨日と同じ酒場へ足を向けた。
●運命の出会い
親父が伏し目がちに酒場を覗き込むと、いつもの席には女性がふたり座っていた。
「はぁ、なるほど。ツイてない尽くし、か……」
それでもいつもと同じような景色が見たいと、彼は女性らの隣に陣取り、いつものようにビールを1杯だけ頼んだ。
注文が届くのを待つ間、親父は隣の席を眺める。彼女らは夕食ついでに飲んでいるらしく、赤毛の女性が短髪の女性に対して敬語を使っていることから、主従関係であるかのように見えた。
「この辺に名家はないと思うが……」
彼がそう呟くと、隣から元気な声がする。赤毛の女性だ。
「もう、ヴァネッサさんは隠れ家が多すぎです! 私がどれだけ一生懸命お掃除してるか知ってますか?」
「おかげさまで掃除したとこしか使わないようになったよ。また別の隠れ家も教えるから、よろしく頼むよ」
相手は感謝こそするが、まったく悪びれもせず、楽しそうに微笑みながらジョッキをあおる。
親父は、この黒髪の女性の名を聞き逃さなかった。そして意を決し、声をかける。
「あ、あの……ダウンタウンで名高きヴァネッサさんとお見受けいたします。どうか、この俺の話を聞いていただければ……!」
ヴァネッサは相手の表情を見て、「まずは落ち着いて。それと全部話すんだよ」と伝え、その一部始終に耳を傾けた。
親父の話を聞き終えたヴァネッサは、渋い表情でつまみを頬張る。
「手の込んだというか、実に情けないというか……そんな程度の低い賊がいるとは思わなかったね」
彼女が力なく首を振ると、マリカ・ミスティーと名乗る赤毛の女性も「うんうん」と頷いた。先ほどの話では家政婦かと思ったが、本人によればヴァネッサの秘書であるらしい。
「でも、なんだか紳士的な賊ですね。みんな着飾ってるんですよね?」
「身なりのいい人間が急に暴れ出したら、怖いというより驚いちゃうからね。その隙を突いて、場を制圧するっていう魂胆だろうさ」
ヴァネッサはそう解説すると、マリカと親父は「なるほど~」と頷く。
「でも、どうします? こんな酷いことする人たちは許せません!」
「連中の居場所はすぐにでもわかるだろうから、今回はハンターさんにお願いしようか。そうだねぇ、連中よりも悪~いイメージでお仕置きして、自分たちから逮捕されたがるくらい怖がらすのもいいかもね」
ヴァネッサは「そういえば、ハンターズソサエティの支給品に使えそうな武器がいくつか混じってたね」と微笑んだ。
最近では観光立国としても名を上げる、港湾都市ポルトワール。
その繁栄の陰にひっそりと「ダウンタウン」と呼ばれる地域が佇んでいた。
どこぞの船から抜け出した者、生活に困窮して流れ着いた者、最初からこの辺に住んでいた者……そんないわくつきの連中が集まり、いくつものコミュニティーを形成したのだ。そう、ダウンタウンは一箇所ではなく、ポルトワール中央区を除く周辺区域に点在している。
現在、ここを仕切っているのが、ヴァネッサ(kz0030)という女傑をリーダーとする集団である。
彼女はここに居着くや否や、そのカリスマ性を発揮し、多くの仲間を獲得。すぐさま重犯罪の抑制に動き出した。
当時のダウンタウンは、時の為政者を悩ませるほど荒れており、コミュニティーの存続を認めさせるには、まずは血生臭さを排する必要があった。
そこでヴァネッサは地元由来の盗賊団、渡航者で結成された強盗団などを順に壊滅させ、手に入れた金銭はダウンタウンの善良な市民のためになるような運用を行った。
彼女は頭がよく、人を見る才能がある。自分の領分でない部分は、信頼できる者に任せた。今回の場合、ダウンタウンに理解のある権力者に金を工面した上で便宜を図ってもらう……といった感じだ。
「ふふっ、餅は餅屋っていうしね」
これが功を奏し、ポルトワールを仕切る統合本部もヴァネッサの手腕を認めた。これ以降、現在に至るまで、重大犯罪は成りを潜めている。
ただ、ダウンタウンのみならず、犯罪の芽はどこでも育まれるものだ。そして、今日もまた……
昼間でも日が差さぬ薄暗い路地を、上品な黒スーツを着こなした壮年の男が悠然と歩く。その隣に屈強な男が控え、後ろには構成員らしき男らが付き従う。
黒ずくめの男、総勢9人の行脚。さすがに都市統合本部が提供する食べ物の配給に向かうという雰囲気ではない。
先頭を行く男は粗末な小屋の前で立ち止まり、手にした杖で扉を叩いて、家主が出るのを待った。
「ああ、なんだい?」
素っ気もなしに出たのは、無精ヒゲの親父。
「ごきげんよう、旦那さん。ちょっといいかね?」
紳士は相手の了承も得ず、まずは手下を狭い家の中に入れる。あまりにも手慣れた感じで、親父の方が目を丸くした。
「な、何してんだ、あんたら!」
「昨夜、私はお前にビールを奢りましたよね?」
全員が入ったのを確認し、スーツの男は扉を閉めた。
「あ、ああ。そりゃ忘れてねぇよ……」
そう……昨夜、ふたりは寂れた酒場にいた。
カウンター席で1杯のビールをチビチビやってる親父に対し、この紳士は気前よくビールを1杯奢り「ぐいっと飲むものだろう?」と声をかけた。親父は喜んで飲んだが、その後は特に会話が弾むこともなく、その場を後にしたのだが……
出会ったことを否定しないと見るや、今度は屈強な男が騒ぎ始めた。
「こちらの旦那はお礼がほしいと、こう言ってるんだ。どうだ、親父。お前にその気持ちはあるか、んん~?」
親父は「ありがとうございました」と言えば済む話ではないことは、すでに承知している。でなければ、こんなに人を連れてこない。
「で、俺は何をすれば……?」
「あなたの心に感謝の気持ちがあるのなら、ビール20杯分のお金を差し出しなさい。どんなことをしてでもね」
紳士の要求はあまりにも理不尽。しかし、そんな無法がまかり通ってしまうのが、ダウンタウンという土地なのだ。
「家の中を見てもらったらわかるだろうが、そんな金はすぐに用意できない」
「じゃあ、3日後まで待ちましょう。明日の同じ時間、またここに来ます」
紳士はおもむろに懐中時計を開き、「では、3日後の昼2時ということで」と伝えると、扉を開いて出て行こうとした。
その時だ。屈強な男がしたり顔で言い添える。
「1日待つ分の利子は10杯分だ。つまり30杯分追加だな、はっはっは!」
「そ、そんな!」
「俺はいいんだぜ? お前が今から20杯分しっかり痛めつけられるってんならよ?」
この時、取り巻きの7人の目が細くなる。彼らは暴力にモノを言わせる連中で、上の許可が出れば容赦なく暴れ尽くすだろう。
親父は力なく頷き、連中にご退出いただくが、金を工面する手段など持ち合わせているはずがない。執行猶予に値する時間をただ無為に過ごし、夜は「元気なうちにもう1杯」とばかりに、昨日と同じ酒場へ足を向けた。
●運命の出会い
親父が伏し目がちに酒場を覗き込むと、いつもの席には女性がふたり座っていた。
「はぁ、なるほど。ツイてない尽くし、か……」
それでもいつもと同じような景色が見たいと、彼は女性らの隣に陣取り、いつものようにビールを1杯だけ頼んだ。
注文が届くのを待つ間、親父は隣の席を眺める。彼女らは夕食ついでに飲んでいるらしく、赤毛の女性が短髪の女性に対して敬語を使っていることから、主従関係であるかのように見えた。
「この辺に名家はないと思うが……」
彼がそう呟くと、隣から元気な声がする。赤毛の女性だ。
「もう、ヴァネッサさんは隠れ家が多すぎです! 私がどれだけ一生懸命お掃除してるか知ってますか?」
「おかげさまで掃除したとこしか使わないようになったよ。また別の隠れ家も教えるから、よろしく頼むよ」
相手は感謝こそするが、まったく悪びれもせず、楽しそうに微笑みながらジョッキをあおる。
親父は、この黒髪の女性の名を聞き逃さなかった。そして意を決し、声をかける。
「あ、あの……ダウンタウンで名高きヴァネッサさんとお見受けいたします。どうか、この俺の話を聞いていただければ……!」
ヴァネッサは相手の表情を見て、「まずは落ち着いて。それと全部話すんだよ」と伝え、その一部始終に耳を傾けた。
親父の話を聞き終えたヴァネッサは、渋い表情でつまみを頬張る。
「手の込んだというか、実に情けないというか……そんな程度の低い賊がいるとは思わなかったね」
彼女が力なく首を振ると、マリカ・ミスティーと名乗る赤毛の女性も「うんうん」と頷いた。先ほどの話では家政婦かと思ったが、本人によればヴァネッサの秘書であるらしい。
「でも、なんだか紳士的な賊ですね。みんな着飾ってるんですよね?」
「身なりのいい人間が急に暴れ出したら、怖いというより驚いちゃうからね。その隙を突いて、場を制圧するっていう魂胆だろうさ」
ヴァネッサはそう解説すると、マリカと親父は「なるほど~」と頷く。
「でも、どうします? こんな酷いことする人たちは許せません!」
「連中の居場所はすぐにでもわかるだろうから、今回はハンターさんにお願いしようか。そうだねぇ、連中よりも悪~いイメージでお仕置きして、自分たちから逮捕されたがるくらい怖がらすのもいいかもね」
ヴァネッサは「そういえば、ハンターズソサエティの支給品に使えそうな武器がいくつか混じってたね」と微笑んだ。
リプレイ本文
●因果応報
ヴァネッサが集まったハンターに事情を説明すると、真っ先に トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が声を上げた。
「そんなチンケなシノギくらい見逃してやれば良いものを」
煙草を咥えながら何気なく語る青年に対し、麗しき義賊は答える。
「ま、親父と酒場で会わなくたって、連中はいずれ処理したと思うよ」
そんな彼女の横で、マリカと一緒になってメーナ(ka1713)が「うんうん」と頷いた。
「悪いことした奴は、怖がらせた分だけ恐怖を味わうと良いのよ!」
これに雪風 凍華(ka2189)も、おおむね同意する。
「……まあ、裏社会を生きていくのがどれだけ怖いか、思い知らせるにはいい機会だろうけどね」
淡々とした口振りと機械的な表情から、発した言葉の本気度が伺える。
「ま、俺は金が貰えりゃなんだって良いがな。目をつけられる馬鹿が悪い」
トライフはそう結論付け、ヴァネッサに血糊の準備を願い出て、そのまま外へ。煙草を吸いがてら、連中のアジトを事前に調べるつもりだ。
「他に入口がないか調べとく。後の準備は任せた」
彼がそういうと、メーナが「いってらっしゃ~い!」と元気に送り出す。
「さて、他の連中はどんなに怖くなれるのかな?」
トライフは不安というより、やや期待に傾いた気持ちを呟いた。
●恐怖の夜
襲撃の日。夜空には月が登り、ダウンタウンを明るく照らしていた。
ヴァネッサと秘書のマリカは被害者男性を連れ、その一部始終を見届ける。ハンターに要求された物は、すべて手渡した。あとは退治の瞬間を待つばかりである。
「皆さん、大丈夫ですかね。ちっちゃい女の子とか、華奢な娘さんもいましたけど……」
親父は純粋に子供や女性の心配をしたが、ヴァネッサはクスリと笑う。
「心配ないよ。悪人よりも、ああいう子の方が怖いんだ」
その言葉が届いたのか、捕縛用のロープを持って歩くシュマ・グラシア(ka1907)と紅鬼 姫乃(ka2472)が「クシュン!」とくしゃみした。
「シュマ、裏口に行きまシュ」
「私は正面に回りますわ。いよいよですわね、ふふふ♪」
ふたりの会話を聞いて思い出したのか、牧 渉(ka0033)はトライフを捕まえ、改めて扉の数を確認する。
「正面と勝手口以外の扉はなかったんですね?」
「ああ、存在しない。窓は裏口から見えるのさえ抑えれば、特に問題ない」
このやり取りをジト目で見ていたアニス・テスタロッサ(ka0141)は、素直な感想を述べる。
「まるでお化け屋敷の楽屋だな」
それもそのはず。渉と話すトライフは血糊ベッタリのまるごとうさぎを着込んでいた。本人は顔を隠すつもりで用意したらしいが、どうにも目立ってしょうがない。
「俺は小細工なしだ」
そう言いながらアニスが銃を準備していると、依頼の早期解決を目指すJ(ka3142)が歩み寄る。
「裏口と窓から逃げる敵の処理はお任せしますね」
残業しない主義のJだが、その指示はあまりにも簡潔。これは「生死は問わない」ということか。
アニスも「わかってるさ」と八重歯を見せて、ニヤリと笑う。
「それでは、そろそろ取り掛かりましょうか」
Jの言葉で皆が持ち場へと散り、作戦決行の運びとなった。
●正門の虎
正面の扉から聞こえる音は、随分と騒がしい。どうやら手下が団欒しているようだ。
そこへ姫乃が、釘バットによるノックでご挨拶。扉が悲鳴を上げるかのように「ゴン、ゴン、ガン!」と鳴り響くと、サッと音が消えた。しかしすぐさま、「なんだぁ~?!」と威勢よく野太い声が響く。
お迎えが来るとわかると、今度はJが前へ。そして無駄のない動きでパイルバンカーを突き出し、一気に扉をブチ抜く!
ドガッシャーーーン!
豪快にぶっ壊れた扉の残骸を、メーナが丁寧に金砕棒で掃除し、いつものふわふわ笑顔を浮かべながら「おっじゃましまーす」とご陽気に侵入する。大広間には2人の賊がいたが、その両方が酷いギャップに思わずコケた。
「た、たぶん侵入者だと思うけど、なんだてめぇら?!」
戸惑い混じりの脅迫など、何が怖かろう。しかしその声には、わずかに余裕が感じられた。
そんなことはお構いなしと、凍華は白銀の髪を揺らしながら素早い動作で銃を抜き、床に向かって威嚇射撃。乾いた音が大広間に突き刺さる。
「……僕は君達の命を奪う事になんら躊躇いはないよ。命を無駄にしたくないなら、無駄な抵抗はしない事だね」
「このガキ、ハンターか! 軍の手入れじゃねぇなら、てめぇら始末すりゃ逃げ切れ……」
そう言いながら銃を抜こうとした賊だが、凍華は迷わず遠射を駆使し、その武器を容赦なく弾き飛ばす。
「る、って……あれ?」
「言ったよね、躊躇いはないって」
銃を弾かれた本人は驚くだけで済むが、後ろにいる賊は恐怖に駆られて声を失った。
戸惑いの表情を浮かべたまま、先頭の男はJのパイルバンカーに頭をドツかれて幸せなまま気絶。後ろの敵には笑顔のメーナが迫る。
「オニのカナボウって言うのかしら、コレ」
彼女の呟きこそ普通だが、金砕棒を引き摺って歩く様は「恐ろしい」の一言に尽きる。
賊もさっさと逃げ出したいのだが、凍華の射撃、いやターコイズブルーに染まった瞳に睨まれては、さすがに派手な動きはできない。しかしメーナからも逃げなくては……敵はすでに混乱し、思考がマトモではなかった。
そこへメーナが地面から力いっぱい金砕棒を振りかぶり、敵の足元を狙って攻撃。なんと狙いは足の小指!
「ビンギュアアァァァーーーーーッ!!」
彼女の攻撃が命中したかは、あえて言及を避けることにする。
●後門の狼
正面の騒ぎが派手だったこともあり、勝手口の解錠は簡単に済ませられた。
「なんだか声にならない悲鳴が上がってましたけど、正面は何をやってるんでしょうね?」
渉の素朴な疑問に対し、シュマは「知らない方が幸せでシュ」と大人の発言をする。
「シュマは自分にできることをしまシュ。怖がらせるのは苦手でシュから、おにーさんにお任せしまシュ」
シュマとアニスは、そのまま裏口付近に待機。残った3人が中へと突入する。そこは廊下だったが、すでに2人の手下が勝手口めがけて逃げ出さんとしていた。
「げぇっ! こっちにも敵が!」
その声にいち早く反応し、渉がスローイングを駆使したダーツを太腿に刺して先制する。
「痛ててっ!」
敵が痛みで身をよじるのを見て、トライフラビットが釘バットを引き摺って接近。それをおもむろに振り上げる。
「う、うおぅわぁ!」
賊はこれを避けるも、今度は渉が立ち塞がる。彼は刺さったダーツを引き抜き、そこへバタフライナイフを突き立てた。
「ウギュアッ!」
敵が前屈みになったところで、渉は突き出た尻を蹴り飛ばし、シェマの元へと導く。
「よっと。後はお任せしますよ」
この賊はまだ体力的に余裕があったが、シュマに抜かりはない。
向かってくるところをウォーターシュートで顔面を容赦なく叩き、一発で敵の戦意を喪失させると、いそいそとロープで身柄を拘束する。
「シュシュシュ。幼女に縛られるとか、結構なご褒美でシュねー」
少女は全身を使ってうまく敵を縛っていくが……この時、賊が「わりと手馴れてませんか?」という言葉を飲んだことは知る由もない。
こうして敵を踏ん縛ると、続いて奥の敵にアースバレットを打ち込むべく、マギスタッフをかざす。
「大漁、大漁でシュ」
この敵も前衛の渉、後衛のシュマ、そして無言で脅迫するトライフという連携で、あっさりと捕縛に成功した。
「アニス、外はお任せでシュ」
「ああ、存分に暴れてきな!」
シュマに代わって賊を縛るアニスは、裏口から攻め上がる味方を見送った。
●降伏の意味は
その頃、大広間には2人の賊が舞い戻り、女性陣に襲い掛かる。
序盤、敵が余裕を感じさせたのは、仲間が奥から武器を持ち出す段取りを知っていたからだ。本来であれば戦況を変える可能性を秘めていたが、先の2人が捕縛されたのではさして意味もなく、ただ武器を多めに担いで出てきたに過ぎない。
ここでは姫乃が血糊のついた釘バットを振るい、まずは手近にある壷などの調度品をぶっ壊す。
「ふふふ♪ 他の方も抵抗すると仰るなら、もっと激しく致しますがいかがかしら?」
猫目に犬歯という獣の姿となった姫乃は、返事を聞かずに今度は壁を叩く。それも何度も何度も……これにはさすがの賊も、思わず息を呑んだ。
そこへメーナの足の小指を狙う攻撃、名付けて「金砕棒チャレンジ」が繰り出されるのだから、もう堪ったものではない。これのおかげで大広間の床にはいくつも穴が開いた。
「もし当たると、とっても痛そうね!」
笑顔で嬉しそうに言うこっちゃないという表情を浮かべながら、敵は部屋を逃げ惑う。その隙を突き、凍華の銃が敵の武器を弾き落とした。
あれだけ持ってた武器もダガー1本になって慌てたところで穴に足を突っ込み、よろめいたところを姫乃に狙われる。
「あら、壁に近づくと……」
少女の言葉に続いて響く轟音は、賊のすぐ耳元で炸裂した。
「一緒に叩き割ってしまいますわよ?」
ここまでやられては、もう耐えられない。賊は我慢できず、あろうことかハンターに降伏を申し出た。
Jは彼を手際良く縛ると、もうひとりに対しても「ご一緒した方がよろしいと思うのですが、いかがでしょう?」と素直に捕まることを勧める。
「い、い、痛くしないでください……」
おそらくメーナと姫乃を指す発言だろうが、降伏の意図は伝わった。Jは武器の放棄を要求し、両手を頭の後ろに持っていかせ、万全の体勢で捕縛を行う。
その最中、別の部屋から紳士と手下が頃合いを見計らってハンターの突破を図ろうと出てきたが、まったく自分たちに有利な展開になっておらず、それどころか降伏を願い出る仲間の姿を見て混乱する。
「きっ、貴様ら! 私に雇われながら降伏してしまうとは!」
「私は降伏した人はお利口さんだと思うんですけど?」
メーナが真剣に首を傾げるが、その場にいたハンターは誰もが首を縦に振った。どうやら紳士に降伏する気はないらしい。
●脱走者と紳士と
その頃、アニスは暇だった。
雑魚とお喋りする気はないし、まだ全員を捕縛していないはずだから、しっかり外を見張る必要がある。彼女は銃を構えて立っていた。
そこにガラス窓が割れる音が響く。華奢な窓枠をデカい体で壊すのは、なんと屈強な男だった。
紳士の手下をまとめ役である彼が窓からの脱出を図るとは、ある意味で想定外。しかも紳士も部下も後に続かない状況を目の当たりにすれば、たとえアニスでなくても閉口してしまうだろう。
「おい、ウソだろ……」
そう言いながらも狙いを定め、彼女は引き金を引く。狙いは右脚だ。
「窓から逃げる子は悪い子だ。容赦しねぇぜ」
男の悲鳴が響くのは当然だが、アニスはそれを最後まで聞かず、続けざまに左脚にも銃弾を撃ち込んだ。
「うぎゃあーー! いい、痛てぇーーー!!」
「うるせぇ! 出会い頭に殺されてねぇだけマシだと思え!」
アニスはあまりのやかましさに耐え切れず、一気に間を詰め、男の急所を蹴り飛ばす。
「ムペ!」
屈強な男は奇妙な悲鳴を上げ、そのまま気絶した。
すると今度はシュマに縛られた男共が恐怖を覚え、悲鳴を二重奏を響かせる。
「お、お、お助けぇーーー! お助けぇぇぇーーーーー!!」
「黙れ! 一度叫ぶごとに弾ぶち込むぞ!」
情けない男どものお守りは大変だ。アニスは思わず、アジトに視線を向けた。
残すは紳士と手下の処理だが、相手に女性陣を突破する根性があるはずもない。いや、目の前で仲間が捕縛されたのを見れば当然か。
そこへ裏口から迫っていたシュマが、別の扉からひょっこり顔を覗かせた。
「あ、ここにいまシュ」
敵と見るや、容赦なくウォーターシュートをぶつけるシュマ。さらに渉は紳士の肩口を狙い、ダーツを刺す。
「むおっ! な、なんたる野蛮な……!」
さすがは紳士、敵には屈しないと思われたが、姫乃が脚をへし折る勢いでバットをぶつけると、その余裕はどこかへ吹き飛んだ。
「むんぎゃあぁぁーーー!」
床に転がる紳士に向かって、凍華が銃を突きつければチェックメイト。こうして賊の一味は仲良く全員が捕縛された。
●依頼の仕上げ
その後、連中は大広間に集められた。
屈強な男はアニスが引き摺ってきたが、今も気絶しているのを見ると、アジトの中にいた手下から「ひでぇことしやがる」との声が上がった。
すると、アニスは黙って発言者の傷を踏みにじる。さらにJは悲鳴を上げようとする賊の頬にパイルバンカーを当て、それを飲み込むよう無言の圧力をかけた。
「ぐげ、うぐっ!」
「なんとも仲のいいこった。コイツはお前ら見捨てて、窓から逃げたってのに」
それを聞いた賊は「ええっ?」と驚くが、別の手下が頷くのを見て真実であることを知ると、遠慮なく唾を飛ばした。
「クソッ! 偉ぶってた癖にてめぇはさっさとトンズラかよ!」
悪態を付く手下に対し、シュマは極めて冷静に「みんな、同じ穴のムジナでシュよ」と言い放つ。
「今度はまっとうに生きて、罪を償うでシュ。もしもまた同じようなことをしたら……シュシュシュシュ……」
シュマが独特の笑みを見せると、賊の顔色が蒼くなる。どうやら効果はあったようだ。当の本人はなぜ怖がっているのか、ピンと来てないようだが。
姫乃は「紳士さんには、ダウンタウンを散歩していただきましょうか」と提案すると、渉もJも黙って頷いた。
これは首謀者にお灸を据えるための演出だったが、提案者の表情が本気っぽかったので、紳士は素直に「もうしません」と謝る。本当にそんなことをさせられたら命はない。それでも姫乃はクスクスと微笑んでいた。
その頃、トライフはこっそりと輪を抜け出し、一味が蓄えた財をくすねようと部屋を回っていた。
「もうあいつらには無用の長物だろうしな。ブツは着ぐるみの中なりに隠して……」
そう言いながら開いた扉の奥に、メーナの明るい声が響く。凍華とヴァネッサも一緒だ。
「これ全部、みんなから巻き上げたお金なのかしら?」
メーナの言葉に、ヴァネッサは「そうだろうね」と頷く。
「誰から巻き上げたかは、紳士を尋問すればわかるはずだ」
凍華がそう言うと、女義賊は「私の出番だね」と微笑み、これらを該当者に返すことを約束する。自分がやるか陸軍がやるかはわからないが。
この一部始終を見ていたトライフは、そそくさと別の部屋に行こうとするが、そこをヴァネッサに呼び止められた。
「ああ、トライフ。今回は悪いけど、こういうことになった。私の懐にも入らないんだから、我慢してくれるか?」
そこに「君のギャラはちゃんと出るんだし」とダメ押しされれば、トライフも諦めるより他ない。彼はしぶしぶ了承し、任務は終わりとばかりに部屋の扉を閉めた。
ヴァネッサが集まったハンターに事情を説明すると、真っ先に トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が声を上げた。
「そんなチンケなシノギくらい見逃してやれば良いものを」
煙草を咥えながら何気なく語る青年に対し、麗しき義賊は答える。
「ま、親父と酒場で会わなくたって、連中はいずれ処理したと思うよ」
そんな彼女の横で、マリカと一緒になってメーナ(ka1713)が「うんうん」と頷いた。
「悪いことした奴は、怖がらせた分だけ恐怖を味わうと良いのよ!」
これに雪風 凍華(ka2189)も、おおむね同意する。
「……まあ、裏社会を生きていくのがどれだけ怖いか、思い知らせるにはいい機会だろうけどね」
淡々とした口振りと機械的な表情から、発した言葉の本気度が伺える。
「ま、俺は金が貰えりゃなんだって良いがな。目をつけられる馬鹿が悪い」
トライフはそう結論付け、ヴァネッサに血糊の準備を願い出て、そのまま外へ。煙草を吸いがてら、連中のアジトを事前に調べるつもりだ。
「他に入口がないか調べとく。後の準備は任せた」
彼がそういうと、メーナが「いってらっしゃ~い!」と元気に送り出す。
「さて、他の連中はどんなに怖くなれるのかな?」
トライフは不安というより、やや期待に傾いた気持ちを呟いた。
●恐怖の夜
襲撃の日。夜空には月が登り、ダウンタウンを明るく照らしていた。
ヴァネッサと秘書のマリカは被害者男性を連れ、その一部始終を見届ける。ハンターに要求された物は、すべて手渡した。あとは退治の瞬間を待つばかりである。
「皆さん、大丈夫ですかね。ちっちゃい女の子とか、華奢な娘さんもいましたけど……」
親父は純粋に子供や女性の心配をしたが、ヴァネッサはクスリと笑う。
「心配ないよ。悪人よりも、ああいう子の方が怖いんだ」
その言葉が届いたのか、捕縛用のロープを持って歩くシュマ・グラシア(ka1907)と紅鬼 姫乃(ka2472)が「クシュン!」とくしゃみした。
「シュマ、裏口に行きまシュ」
「私は正面に回りますわ。いよいよですわね、ふふふ♪」
ふたりの会話を聞いて思い出したのか、牧 渉(ka0033)はトライフを捕まえ、改めて扉の数を確認する。
「正面と勝手口以外の扉はなかったんですね?」
「ああ、存在しない。窓は裏口から見えるのさえ抑えれば、特に問題ない」
このやり取りをジト目で見ていたアニス・テスタロッサ(ka0141)は、素直な感想を述べる。
「まるでお化け屋敷の楽屋だな」
それもそのはず。渉と話すトライフは血糊ベッタリのまるごとうさぎを着込んでいた。本人は顔を隠すつもりで用意したらしいが、どうにも目立ってしょうがない。
「俺は小細工なしだ」
そう言いながらアニスが銃を準備していると、依頼の早期解決を目指すJ(ka3142)が歩み寄る。
「裏口と窓から逃げる敵の処理はお任せしますね」
残業しない主義のJだが、その指示はあまりにも簡潔。これは「生死は問わない」ということか。
アニスも「わかってるさ」と八重歯を見せて、ニヤリと笑う。
「それでは、そろそろ取り掛かりましょうか」
Jの言葉で皆が持ち場へと散り、作戦決行の運びとなった。
●正門の虎
正面の扉から聞こえる音は、随分と騒がしい。どうやら手下が団欒しているようだ。
そこへ姫乃が、釘バットによるノックでご挨拶。扉が悲鳴を上げるかのように「ゴン、ゴン、ガン!」と鳴り響くと、サッと音が消えた。しかしすぐさま、「なんだぁ~?!」と威勢よく野太い声が響く。
お迎えが来るとわかると、今度はJが前へ。そして無駄のない動きでパイルバンカーを突き出し、一気に扉をブチ抜く!
ドガッシャーーーン!
豪快にぶっ壊れた扉の残骸を、メーナが丁寧に金砕棒で掃除し、いつものふわふわ笑顔を浮かべながら「おっじゃましまーす」とご陽気に侵入する。大広間には2人の賊がいたが、その両方が酷いギャップに思わずコケた。
「た、たぶん侵入者だと思うけど、なんだてめぇら?!」
戸惑い混じりの脅迫など、何が怖かろう。しかしその声には、わずかに余裕が感じられた。
そんなことはお構いなしと、凍華は白銀の髪を揺らしながら素早い動作で銃を抜き、床に向かって威嚇射撃。乾いた音が大広間に突き刺さる。
「……僕は君達の命を奪う事になんら躊躇いはないよ。命を無駄にしたくないなら、無駄な抵抗はしない事だね」
「このガキ、ハンターか! 軍の手入れじゃねぇなら、てめぇら始末すりゃ逃げ切れ……」
そう言いながら銃を抜こうとした賊だが、凍華は迷わず遠射を駆使し、その武器を容赦なく弾き飛ばす。
「る、って……あれ?」
「言ったよね、躊躇いはないって」
銃を弾かれた本人は驚くだけで済むが、後ろにいる賊は恐怖に駆られて声を失った。
戸惑いの表情を浮かべたまま、先頭の男はJのパイルバンカーに頭をドツかれて幸せなまま気絶。後ろの敵には笑顔のメーナが迫る。
「オニのカナボウって言うのかしら、コレ」
彼女の呟きこそ普通だが、金砕棒を引き摺って歩く様は「恐ろしい」の一言に尽きる。
賊もさっさと逃げ出したいのだが、凍華の射撃、いやターコイズブルーに染まった瞳に睨まれては、さすがに派手な動きはできない。しかしメーナからも逃げなくては……敵はすでに混乱し、思考がマトモではなかった。
そこへメーナが地面から力いっぱい金砕棒を振りかぶり、敵の足元を狙って攻撃。なんと狙いは足の小指!
「ビンギュアアァァァーーーーーッ!!」
彼女の攻撃が命中したかは、あえて言及を避けることにする。
●後門の狼
正面の騒ぎが派手だったこともあり、勝手口の解錠は簡単に済ませられた。
「なんだか声にならない悲鳴が上がってましたけど、正面は何をやってるんでしょうね?」
渉の素朴な疑問に対し、シュマは「知らない方が幸せでシュ」と大人の発言をする。
「シュマは自分にできることをしまシュ。怖がらせるのは苦手でシュから、おにーさんにお任せしまシュ」
シュマとアニスは、そのまま裏口付近に待機。残った3人が中へと突入する。そこは廊下だったが、すでに2人の手下が勝手口めがけて逃げ出さんとしていた。
「げぇっ! こっちにも敵が!」
その声にいち早く反応し、渉がスローイングを駆使したダーツを太腿に刺して先制する。
「痛ててっ!」
敵が痛みで身をよじるのを見て、トライフラビットが釘バットを引き摺って接近。それをおもむろに振り上げる。
「う、うおぅわぁ!」
賊はこれを避けるも、今度は渉が立ち塞がる。彼は刺さったダーツを引き抜き、そこへバタフライナイフを突き立てた。
「ウギュアッ!」
敵が前屈みになったところで、渉は突き出た尻を蹴り飛ばし、シェマの元へと導く。
「よっと。後はお任せしますよ」
この賊はまだ体力的に余裕があったが、シュマに抜かりはない。
向かってくるところをウォーターシュートで顔面を容赦なく叩き、一発で敵の戦意を喪失させると、いそいそとロープで身柄を拘束する。
「シュシュシュ。幼女に縛られるとか、結構なご褒美でシュねー」
少女は全身を使ってうまく敵を縛っていくが……この時、賊が「わりと手馴れてませんか?」という言葉を飲んだことは知る由もない。
こうして敵を踏ん縛ると、続いて奥の敵にアースバレットを打ち込むべく、マギスタッフをかざす。
「大漁、大漁でシュ」
この敵も前衛の渉、後衛のシュマ、そして無言で脅迫するトライフという連携で、あっさりと捕縛に成功した。
「アニス、外はお任せでシュ」
「ああ、存分に暴れてきな!」
シュマに代わって賊を縛るアニスは、裏口から攻め上がる味方を見送った。
●降伏の意味は
その頃、大広間には2人の賊が舞い戻り、女性陣に襲い掛かる。
序盤、敵が余裕を感じさせたのは、仲間が奥から武器を持ち出す段取りを知っていたからだ。本来であれば戦況を変える可能性を秘めていたが、先の2人が捕縛されたのではさして意味もなく、ただ武器を多めに担いで出てきたに過ぎない。
ここでは姫乃が血糊のついた釘バットを振るい、まずは手近にある壷などの調度品をぶっ壊す。
「ふふふ♪ 他の方も抵抗すると仰るなら、もっと激しく致しますがいかがかしら?」
猫目に犬歯という獣の姿となった姫乃は、返事を聞かずに今度は壁を叩く。それも何度も何度も……これにはさすがの賊も、思わず息を呑んだ。
そこへメーナの足の小指を狙う攻撃、名付けて「金砕棒チャレンジ」が繰り出されるのだから、もう堪ったものではない。これのおかげで大広間の床にはいくつも穴が開いた。
「もし当たると、とっても痛そうね!」
笑顔で嬉しそうに言うこっちゃないという表情を浮かべながら、敵は部屋を逃げ惑う。その隙を突き、凍華の銃が敵の武器を弾き落とした。
あれだけ持ってた武器もダガー1本になって慌てたところで穴に足を突っ込み、よろめいたところを姫乃に狙われる。
「あら、壁に近づくと……」
少女の言葉に続いて響く轟音は、賊のすぐ耳元で炸裂した。
「一緒に叩き割ってしまいますわよ?」
ここまでやられては、もう耐えられない。賊は我慢できず、あろうことかハンターに降伏を申し出た。
Jは彼を手際良く縛ると、もうひとりに対しても「ご一緒した方がよろしいと思うのですが、いかがでしょう?」と素直に捕まることを勧める。
「い、い、痛くしないでください……」
おそらくメーナと姫乃を指す発言だろうが、降伏の意図は伝わった。Jは武器の放棄を要求し、両手を頭の後ろに持っていかせ、万全の体勢で捕縛を行う。
その最中、別の部屋から紳士と手下が頃合いを見計らってハンターの突破を図ろうと出てきたが、まったく自分たちに有利な展開になっておらず、それどころか降伏を願い出る仲間の姿を見て混乱する。
「きっ、貴様ら! 私に雇われながら降伏してしまうとは!」
「私は降伏した人はお利口さんだと思うんですけど?」
メーナが真剣に首を傾げるが、その場にいたハンターは誰もが首を縦に振った。どうやら紳士に降伏する気はないらしい。
●脱走者と紳士と
その頃、アニスは暇だった。
雑魚とお喋りする気はないし、まだ全員を捕縛していないはずだから、しっかり外を見張る必要がある。彼女は銃を構えて立っていた。
そこにガラス窓が割れる音が響く。華奢な窓枠をデカい体で壊すのは、なんと屈強な男だった。
紳士の手下をまとめ役である彼が窓からの脱出を図るとは、ある意味で想定外。しかも紳士も部下も後に続かない状況を目の当たりにすれば、たとえアニスでなくても閉口してしまうだろう。
「おい、ウソだろ……」
そう言いながらも狙いを定め、彼女は引き金を引く。狙いは右脚だ。
「窓から逃げる子は悪い子だ。容赦しねぇぜ」
男の悲鳴が響くのは当然だが、アニスはそれを最後まで聞かず、続けざまに左脚にも銃弾を撃ち込んだ。
「うぎゃあーー! いい、痛てぇーーー!!」
「うるせぇ! 出会い頭に殺されてねぇだけマシだと思え!」
アニスはあまりのやかましさに耐え切れず、一気に間を詰め、男の急所を蹴り飛ばす。
「ムペ!」
屈強な男は奇妙な悲鳴を上げ、そのまま気絶した。
すると今度はシュマに縛られた男共が恐怖を覚え、悲鳴を二重奏を響かせる。
「お、お、お助けぇーーー! お助けぇぇぇーーーーー!!」
「黙れ! 一度叫ぶごとに弾ぶち込むぞ!」
情けない男どものお守りは大変だ。アニスは思わず、アジトに視線を向けた。
残すは紳士と手下の処理だが、相手に女性陣を突破する根性があるはずもない。いや、目の前で仲間が捕縛されたのを見れば当然か。
そこへ裏口から迫っていたシュマが、別の扉からひょっこり顔を覗かせた。
「あ、ここにいまシュ」
敵と見るや、容赦なくウォーターシュートをぶつけるシュマ。さらに渉は紳士の肩口を狙い、ダーツを刺す。
「むおっ! な、なんたる野蛮な……!」
さすがは紳士、敵には屈しないと思われたが、姫乃が脚をへし折る勢いでバットをぶつけると、その余裕はどこかへ吹き飛んだ。
「むんぎゃあぁぁーーー!」
床に転がる紳士に向かって、凍華が銃を突きつければチェックメイト。こうして賊の一味は仲良く全員が捕縛された。
●依頼の仕上げ
その後、連中は大広間に集められた。
屈強な男はアニスが引き摺ってきたが、今も気絶しているのを見ると、アジトの中にいた手下から「ひでぇことしやがる」との声が上がった。
すると、アニスは黙って発言者の傷を踏みにじる。さらにJは悲鳴を上げようとする賊の頬にパイルバンカーを当て、それを飲み込むよう無言の圧力をかけた。
「ぐげ、うぐっ!」
「なんとも仲のいいこった。コイツはお前ら見捨てて、窓から逃げたってのに」
それを聞いた賊は「ええっ?」と驚くが、別の手下が頷くのを見て真実であることを知ると、遠慮なく唾を飛ばした。
「クソッ! 偉ぶってた癖にてめぇはさっさとトンズラかよ!」
悪態を付く手下に対し、シュマは極めて冷静に「みんな、同じ穴のムジナでシュよ」と言い放つ。
「今度はまっとうに生きて、罪を償うでシュ。もしもまた同じようなことをしたら……シュシュシュシュ……」
シュマが独特の笑みを見せると、賊の顔色が蒼くなる。どうやら効果はあったようだ。当の本人はなぜ怖がっているのか、ピンと来てないようだが。
姫乃は「紳士さんには、ダウンタウンを散歩していただきましょうか」と提案すると、渉もJも黙って頷いた。
これは首謀者にお灸を据えるための演出だったが、提案者の表情が本気っぽかったので、紳士は素直に「もうしません」と謝る。本当にそんなことをさせられたら命はない。それでも姫乃はクスクスと微笑んでいた。
その頃、トライフはこっそりと輪を抜け出し、一味が蓄えた財をくすねようと部屋を回っていた。
「もうあいつらには無用の長物だろうしな。ブツは着ぐるみの中なりに隠して……」
そう言いながら開いた扉の奥に、メーナの明るい声が響く。凍華とヴァネッサも一緒だ。
「これ全部、みんなから巻き上げたお金なのかしら?」
メーナの言葉に、ヴァネッサは「そうだろうね」と頷く。
「誰から巻き上げたかは、紳士を尋問すればわかるはずだ」
凍華がそう言うと、女義賊は「私の出番だね」と微笑み、これらを該当者に返すことを約束する。自分がやるか陸軍がやるかはわからないが。
この一部始終を見ていたトライフは、そそくさと別の部屋に行こうとするが、そこをヴァネッサに呼び止められた。
「ああ、トライフ。今回は悪いけど、こういうことになった。私の懐にも入らないんだから、我慢してくれるか?」
そこに「君のギャラはちゃんと出るんだし」とダメ押しされれば、トライフも諦めるより他ない。彼はしぶしぶ了承し、任務は終わりとばかりに部屋の扉を閉めた。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 9人 |
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MVP一覧
- 世界は子供そのもの
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 シュマ・グラシア(ka1907) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/09/24 17:38:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/20 22:22:23 |
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質問所 牧 渉(ka0033) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/09/24 02:30:04 |