ゲスト
(ka0000)
【郷祭】ミュージッククリップ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/01 22:00
- 完成日
- 2016/11/15 00:15
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは同盟領、農耕推進地ジェオルジまで続く道中の宿場町。
「やぁ~れやれ。ようやく酒にありつける」
「ディレクター、ここの酒場は撮っとかなくていいんですか?」
「どうせ撮るなら移民先の酒場でいいよ」
ドヤドヤと酒場にリアルブルー人と思しき集団がやって来た。
「あ……おい、しぃっ!」
先頭の一人が店内の様子に気付き後続を黙らせた。
「おい、何だ……」
「騒がせてすまない」
後続で不満を漏らす者もいたがすぐに黙った。
「あら、いいのよ。黙らせる技量がないならそれだけ。誰かが諭すこともないのなら、やっぱりそれだけ」
入口近くの席に座っていた化粧の濃い女性が不敵に微笑む。
店内には郷愁を誘う物悲しげな曲が流れていた。
旋律は緩やかに。
響きは優しく。
「名のあるバンドかい?」
「名前で満足してもらってないの。演奏で満足してもらってるバンドよ」
聞かれた女性、変わらず不敵。
やがて、最後の余韻を残し終演。大きな――いや、もう一曲ねだるようなリズムのある拍手が店内を満たした。
これにカウンターの店員が指を一つ立て、化粧の濃い女性にウインクした。
女性、艷やかな笑みを浮かべ指を鳴らした。実際の音は拍手に飲まれているが、勝ち誇ったように伸ばした腕が雄弁に思いを伝えている。
それを見たバンドリーダーが仲間と頷きあう。店内から喜びの拍手が一瞬響くとすぐにピタリとやんだ。
そして、今度は弾むようなメロディーが流れ始める――。
「私はシェイク。プロモーターよ。演奏していた楽団「シェイクス」と一緒に郷祭に向かってるところ」
んふ、と頬杖を付くオカマ興行師のシェイクが満足そうに言う。先ほどの化粧の濃い女性だ。
「俺たちはサルバトーレ・ロッソの撮影班だ。アンタと同じで郷祭に向かっている」
先の一団の一人が撮影カメラを構える格好をして返す。
「ああ、映画だかテレビだかいうのがあるんだっけ?」
シェイクスの演奏はすでに好評の内に幕を閉じ、酒場の客はまた好き好きに飲んでいる。
楽しそうで和やかな雰囲気の中、ディレクターは深いため息をつく。
「そんな高尚なもんじゃないよ。報告映像の撮影に来たのさ」
「報告映像?」
「そ。昨年、ロッソの民間人をこの地に降ろして同盟と協力して定住促進したんだが、その後の彼らの生活や定住した土地の様子をレポートしなくちゃならんのさ」
サルバトーレ・ロッソが歪虚との激しい戦闘に参戦し、その前に艦内の民間人を移民させたのはちょうど一年前の郷祭のころだった。新たな村を起こした例もあれば、移民を機に新たな村づくりをしたケースもある。
「そ、そ。俺たちゃ悲しい映像班。楽しい祭りも寂しく仕事、ってね」
「もちろん、映画だかテレビだかみたいな仕事もしたいんだがねぇ」
撮影スタッフたちは自嘲気味に酒をちびりとすする。愚痴ってはいるが腐り切ってはいない。楽しくはないが仕事に対してはプライドがある、といった雰囲気だけはまとい続けている。
ただ、シェイクはそんな人生を良しとしない。このあたり、プロモーターである。
「あら、それじゃその報告映像、楽しいものにしちゃえばいいじゃない」
「そうはいかねぇよ」
「楽しい祭りを映すのに?」
「祭りはあくまで移民者たちの様子や土地の雰囲気を伝えるために撮るだけさ」
「じゃ、祭りそのものも別に一本撮っちゃえばいいじゃない。生きのいい、元気な子たちを紹介してあげるわよ?」
シェイクの言葉にピンと来た者もいる。
「なるほど。ミュージッククリップか……」
「おまけのお遊びなら撮ってもいいかな」
「こっちの音楽をロッソに伝える、ってのも面白いな」
「民生部分が激減して艦内の楽しみも少なくなってきてるし……ちょうどいい!」
野心に瞳を輝かす者、意気に感じて酒を飲み干す者、楽しい悪戯ができるとあってうきうきする者、そして使命に感じ立ち上がる者。
「よし、やろう!」
こうしてロッソ撮影班の内の一組が、郷祭を背景に歌い祭りの準備をしたり日々の生活を送る様子を伝えるミュージッククリップの製作に乗り出すのだった。
そんなわけで、シェイクのプロモートするフラ・キャンディ(kz0121)と一緒に出演し歌って踊りつつ郷祭準備期間の雰囲気を伝える映像作品に出演してくれる人、求ム。
「やぁ~れやれ。ようやく酒にありつける」
「ディレクター、ここの酒場は撮っとかなくていいんですか?」
「どうせ撮るなら移民先の酒場でいいよ」
ドヤドヤと酒場にリアルブルー人と思しき集団がやって来た。
「あ……おい、しぃっ!」
先頭の一人が店内の様子に気付き後続を黙らせた。
「おい、何だ……」
「騒がせてすまない」
後続で不満を漏らす者もいたがすぐに黙った。
「あら、いいのよ。黙らせる技量がないならそれだけ。誰かが諭すこともないのなら、やっぱりそれだけ」
入口近くの席に座っていた化粧の濃い女性が不敵に微笑む。
店内には郷愁を誘う物悲しげな曲が流れていた。
旋律は緩やかに。
響きは優しく。
「名のあるバンドかい?」
「名前で満足してもらってないの。演奏で満足してもらってるバンドよ」
聞かれた女性、変わらず不敵。
やがて、最後の余韻を残し終演。大きな――いや、もう一曲ねだるようなリズムのある拍手が店内を満たした。
これにカウンターの店員が指を一つ立て、化粧の濃い女性にウインクした。
女性、艷やかな笑みを浮かべ指を鳴らした。実際の音は拍手に飲まれているが、勝ち誇ったように伸ばした腕が雄弁に思いを伝えている。
それを見たバンドリーダーが仲間と頷きあう。店内から喜びの拍手が一瞬響くとすぐにピタリとやんだ。
そして、今度は弾むようなメロディーが流れ始める――。
「私はシェイク。プロモーターよ。演奏していた楽団「シェイクス」と一緒に郷祭に向かってるところ」
んふ、と頬杖を付くオカマ興行師のシェイクが満足そうに言う。先ほどの化粧の濃い女性だ。
「俺たちはサルバトーレ・ロッソの撮影班だ。アンタと同じで郷祭に向かっている」
先の一団の一人が撮影カメラを構える格好をして返す。
「ああ、映画だかテレビだかいうのがあるんだっけ?」
シェイクスの演奏はすでに好評の内に幕を閉じ、酒場の客はまた好き好きに飲んでいる。
楽しそうで和やかな雰囲気の中、ディレクターは深いため息をつく。
「そんな高尚なもんじゃないよ。報告映像の撮影に来たのさ」
「報告映像?」
「そ。昨年、ロッソの民間人をこの地に降ろして同盟と協力して定住促進したんだが、その後の彼らの生活や定住した土地の様子をレポートしなくちゃならんのさ」
サルバトーレ・ロッソが歪虚との激しい戦闘に参戦し、その前に艦内の民間人を移民させたのはちょうど一年前の郷祭のころだった。新たな村を起こした例もあれば、移民を機に新たな村づくりをしたケースもある。
「そ、そ。俺たちゃ悲しい映像班。楽しい祭りも寂しく仕事、ってね」
「もちろん、映画だかテレビだかみたいな仕事もしたいんだがねぇ」
撮影スタッフたちは自嘲気味に酒をちびりとすする。愚痴ってはいるが腐り切ってはいない。楽しくはないが仕事に対してはプライドがある、といった雰囲気だけはまとい続けている。
ただ、シェイクはそんな人生を良しとしない。このあたり、プロモーターである。
「あら、それじゃその報告映像、楽しいものにしちゃえばいいじゃない」
「そうはいかねぇよ」
「楽しい祭りを映すのに?」
「祭りはあくまで移民者たちの様子や土地の雰囲気を伝えるために撮るだけさ」
「じゃ、祭りそのものも別に一本撮っちゃえばいいじゃない。生きのいい、元気な子たちを紹介してあげるわよ?」
シェイクの言葉にピンと来た者もいる。
「なるほど。ミュージッククリップか……」
「おまけのお遊びなら撮ってもいいかな」
「こっちの音楽をロッソに伝える、ってのも面白いな」
「民生部分が激減して艦内の楽しみも少なくなってきてるし……ちょうどいい!」
野心に瞳を輝かす者、意気に感じて酒を飲み干す者、楽しい悪戯ができるとあってうきうきする者、そして使命に感じ立ち上がる者。
「よし、やろう!」
こうしてロッソ撮影班の内の一組が、郷祭を背景に歌い祭りの準備をしたり日々の生活を送る様子を伝えるミュージッククリップの製作に乗り出すのだった。
そんなわけで、シェイクのプロモートするフラ・キャンディ(kz0121)と一緒に出演し歌って踊りつつ郷祭準備期間の雰囲気を伝える映像作品に出演してくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「え、ええと……クリムゾンウエストとリアルブルーが一緒になって、その魂をいつまでも、って気持ちを込めてますぅ」
わた……と、身振りを交え弓月・小太(ka4679)が説明した。
ここは農耕推進地ジェオルジ。郷祭の準備で忙しい村で借りたスタッフルーム。
「そういうこと。……ほら、フラっちもアピールアピール」
小太の隣でキーリ(ka4642)がふっふーん、と得意げに胸を張ってからフラ・キャンディ(kz0121)を促した。
「え! ボクも? ええと……『リラ・ゼーレ』、よろしくね」
フラ、突然振られてにこぱ笑顔。
「OK、リラ・ゼーレだな。画像編集した時にテロップ流すから、楽しみにな」
「てろっぷ?」
スタッフがフラに笑顔を返したところで、キーリが問い質す。
「ああ、画面に文字を表示するんだ」
リアルブルー出身の鞍馬 真(ka5819)が手短に説明した。もちろん、クリムゾンウエスト出身のキーリ、フラはいまいちピンとこない。
これを見てケイ・R・シュトルツェ(ka0242)が座ったまま脚を組み替えくすと微笑した。
「じゃ、集音マイクとかも初めてね」
「しゅうおんまいく?」
今度はフラが珍しそうに復唱。
「あれだね。ほかに撮影管理をするカチンコとかもあるみたい」
リアルブルー出身の霧雨 悠月(ka4130)が、スタッフの掲げる長い柄のついたマイクを指差した。
「カメラくらいは分かるわよ?」
「さすが。簡単なのは出回ってるよね」
むー、と口を出したキーリを悠月がとりなす。
「で、撮影時の歌は口パク?」
「まさか。本格的な編集スタジオなんてないから生の一発勝負。イケる?」
挑戦的に聞いたケイに、肩をすくめるスタッフ。
「こっちじゃいつでも生の一発勝負よ」
当然、と言わんばかりに立ち上がるケイ。
「映像……」
その横に、アリア・セリウス(ka6424)。
「祭りは準備中という話ですけど、それでも結構活気がありますねぇ」
小太はスタッフルームの窓から外の様子を覗いている。振り向いて、「ま、まずは映像に残せそうな場所を探す所からでしょうかぁ?」と皆に確認した。
「残す……映像に」
アリア、小太の言葉に目を閉じ軽く天を仰いだ。
自分の歌声、踊る姿。それが、町の活気と行きかう人の気配、笑顔、言葉さえも溶け込んで――。
「とても良い機会ね。何もかも、感じて歌と紡ぎましょう」
目を開いて言う。やや微笑したのは、これまでただ直走っていた自分を思い返したのかもしれない。
「踊りも、だよね?」
横でフラがにこり。
「演奏も、だな」
その後ろに真が立つ。
「うーん、わくわくするね……ちょっぴり気恥ずかしいけど」
悠月も軽く伸びをして準備完了。
「撮影は本部報告用の現地映像を取りつつ、だな。もっともリラ・ゼーレに使う時間の方が長くなるけど」
「あら、いいの?」
スタッフの説明。ケイが気にする。
「事務的な仕事と芸術仕事の、当然の手間の取り方だ。退屈な事務的仕事を刺激的にしてくれて感謝したいくらいさ」
「それに、君たちの映像をどこで取るかとか、報告映像を取りつつ考えてもらえるだろ?」
にやり、とスタッフたち。悪戯そうだ。
これを受けてフラたちも悪戯そうな笑みで返した。
気持ちが一つになった瞬間である。
「じゃ、行こう!」
フラ、元気よく外に出る。
●
「まず最初はステージで。演奏組と歌唱組が手前と奥を入れ替わる手はずで。……テイクスタート!」
映像監督の合図でカチンコが鳴る。集音マイクが高い位置から奥へと回される。
最初の音はカスタネット。画面横からフラがカスタネットを叩きつつ軽やかに出で奥へ。続いてしゃんしゃんと神楽鈴を鳴らす小太が逆から続きやはり奥へステップ。最後にフルートの真がゆるかやに登場し、踊るように奥へ。
前奏の後は、画面奥から悠月とケイが歩いて前に。出だし第一声を合わせる!
♪
蒼い風に誘われて、流れ流れて見知らぬ世界
紅い夕日に立ちすくむ、君の瞳に夢を見る
二人引き合うリラ・ゼーレ、揺れる世界でしっかりと
♪
流れる「リラ・ゼーレのテーマ」。
「流れ流れて」の部分で両脇からダンスのキーリとアリアがふわっとターンを決めつつ出てきて雰囲気づくり。キーリのリトルファイアが出たのはもちろん「紅い夕陽」の部分。「二人引き合う」で歌と踊りの二人組がポジションチェンジ。キーリと悠月、ケイとアリアの組を作り歌と踊りを左右対称で魅せる。小太の鈴、真のフルート、フラのカスタネットも盛り上げサビに。
♪
居場所を探した二人の奇跡
一人じゃないよ、僕がいる
♪
「カァット!」
ここで監督から満足そうなストップの声。
「一発回答出してくれたな。実力で売ってるとか言うシェイクが勧めるだけある!」
「でも、これだけ?」
フラ、物足りなさそうに聞いてみる。
「あくまで出だしのみ、だ。後は流れでいろんな場所で。この続きや、別の歌、な?」
そんなこんなで場所移動する。
●
「へえっ。日系や中華系の移民は剣術道場とか立ち上げてんのか~」
「良し、ばっちり映したぜ!」
どうやら、青竜紅刃流の門下生たちを映した様子だ。ロッソから移民して、東洋風の村づくりを手伝っている。
「ぼ、僕の踊りや音楽があうなら頑張るのですよぉ」
ここで小太が立候補。もちろん「よし、頼む!」
というわけで小太、和風を強調するため腰切と袴姿になる。
「小太さん、頑張って!」
恋人のフラの応援を背に、しゃららら……と慣れた風に神楽鈴を連続で鳴らす。この風情は一朝一夕では出せない。そして木刀を手に、厳かに舞う。
「いいね。チクワを焼く様子も撮影したから合成して……」
「後から袴の道場門下生が増えただろ。文化が浸透する変化として使えるな」
しゃん、しゃんと熱を帯び始める小太の舞を見つつ、作品の出来に思いをはせるスタッフ。
その様子に、真が素朴な疑問を抱いた。
「なあ、そういったアイデアって、全部形になるんだろうか?」
見ていても、全部入り切るとは思えなかった。
「悲しいが……それが俺らの仕事さ」
「使わない映像も、もちろんミスは許されないし全力だ」
「地味で、大変だな……」
同情する真。これにスタッフに気に入られた。
「ありがとな」
「いや、せっかく一緒に仕事をするんだ。土地も知りたいが、仕事仲間のことも知っておきたい」
真に言葉に、いい笑顔をするスタッフだった。
「分かってるじゃねぇか、兄ぃちゃん」
「あの少年もミスなく全力で、いい雰囲気を出してくれてるよ」
スタッフたちは小太の舞を褒めて、お互いさまを強調するのだった。
場所は変わって、軒に花の鉢を飾っているところで。
「リラ・ゼーレのポップな面?」
え、と聞き返したキーリだが……。
「ふむーん、良いわね。凄く良いわ。花のある場所なんて。私、エルフだし」
「……いや、肉串を食べながら言われても……たれが頬についてるし」
屋台で買い食いしていたところ振り向いたキーリに突っ込む悠月。
「舐め取っていいわよ?」
「いや、ちょっと……」
ん、とほっぺを差し出すキーリだが、悠月はわしわしっとハンカチで拭う。
「ひっどい扱いね~。それより、こういう民話、知ってる?」
キーリ、屋台で聞いた話を紡ぎ始める。
「森の奥の鬼女は嫉妬の鬼。毎年町に下りてはその年の祭で選ばれた一人の美女『花の花嫁』を襲って食っていましたとさ。やがて花の花嫁選びは途絶えたものの、今度は庭先に花がきれいに咲いた一軒を襲うようになって、今度は花も植えなくなったとさ」
軒の鉢を渡る妖精のように躍ったと思えばエネルギッシュに踊り鬼女の悪行を表現したり。
「ある年、花の花嫁立候補者が出たようで。若い娘を周りが止めるも決意は固く、『だったら同じ綺麗な花で、町の全部を飾ればいいじゃない』……」
キーリの、喜びと華やかさを表現するダンスが続く。
「あーまさか撮影ってこんなに難しいなんてねー。表情硬くなってなかった? 大丈夫?」
「キーリさん、表情硬いというかクールなんだから問題ないよ」
心配から思わず屋台で買い食いするキーリに、付き合いで一緒に食べるフラが慰める。というか、慰めてないが。
「あによフラっち。そんなに私、ダメだった?」
「ち、違う違う。良かったよ……あれ?」
ここで悠月の気配に気付くフラ。
「あ、フラさんは食べてて。キーリさんも」
どうやら次は悠月が歌う番らしい。買い食いする女性二人を自然なままにしてほしいようで。
「そう?」
「悠月さん、何歌うの?」
冷たいキーリにニコリと返すフラ。
「さっき結構聞き込んだんだ。……自然に、楽しく、元気いっぱいに。皆で気持ちよくなれるように、気持ちを込めてね!」
悠月、インカムを装着し歌い出した!
♪
君の、差し出す手の平 そこに、あるものは何?
勇気、それもあるけど 笑顔で立ち上がれるよ
♪
そこまで歌って少女たちに手を振り駆け出す悠月。スタッフも台車でカメラが走る。
もちろん長くは持たないが、すぐにあるのは街の教会。
伝統的な建物で、悠月の見上げる姿を追ってカメラが上にパンする。
「すまない」
下では真が短剣で暴れていた。スタッフも一緒だ。
おかげで、悠月の到着と同時に白いハトが空に舞った。
万感の悠月と入れ替わり、そのまま真のバイオリン演奏。古い教会とマッチする伸びのある旋律が流れる。真は教会の衣装を借りてそれを着ている。
「今回は踊るよ」
そこに、悠月がターンしてイン。場所のイメージを損なわないよう、通行人をイメージしたダンスを披露する。
掃除をする人たちとともに、光と影の中、歴史を感じてもらうのに十分だった。
●
そして、アリア。
「走れる? 一気に場面転換させる演出を入れたいんだ」
スタッフからの要望に意外そうな顔を一瞬したが、無言で頷いた。
走ることはある。
「祭りはこれから。……そして、物語もまた途中」
自らと重ね合わせ、だれにも聞こえないように呟く。
「ふさわしい」
今度はしっかりと言い切って顔を上げる。「テイク」の掛け声とカチンコの音が聞こえた。
――走る。
草原を、町から離れるように。
しかし、すぐに転んだ。
草原に大の字に横たわる。
そして呟くように歌うのだ。
最初はハミングで。
やがてはっきり分かるように。
♪
すべてはヤギの言う通り
夫婦の喧嘩も明日の天気も
放したヤギの言う通り
ヤギの助言は何もなく
時だけ過ぎて明日になる
明日になれば全て良くなる
♪
民謡をひとくさり歌ったとこで、近くにヤギが。
立ち上がり、改めて歌う。
♪
風の中で声が流れる
きっといつかの昔の夢
遠く、高く、月のように……
♪
そして、ケイ。
つば広の白い帽子を深くかぶっていた。紅を差した唇が、にこり。
「走った人を一瞬振り向いて、そして前を向いてゆっくりと散策するように歩いて」
スタッフからは、アリアと逆になるような指示だった。
「夜も入れるといいかもしれないわ」
「分かった。後で撮って合成するようにしよう」
どうやらケイ、場所の変化だけではなく時の変化もいれるつもりだ。
「明日になれば全て良くなる、希望を胸にすればことのほか……」
ゆっくり散策しながら民謡を口ずさんだところで、川辺に出る。
そこで、白い帽子を高々と投げ上げた。
同時に歌い出す。
♪
高く…何処までも高く
遠く…何処までも遠く
優しく吹く風に混じる
優しい人々の囁き……
♪
「あ、フラさんっ。せっかくですし一緒に街を見てまわりませんかぁ? 屋台とか食べられなかったですしぃ」
小太は自分のパートが済んだ後、フラを誘った。フラがキーリと買い食いしていたのは、内緒だ。
「うんっ。でも……」
フラが言い淀んだのは、ちょうどケイとスタッフが戻って来たから。
「あ、いいよ。ちょうど町の人々が歌われるところだから」
スタッフの説明に、フラも安心。
「じゃ……」
「あ」
小太、自然にフラの手を取った。だんだん慣れてきたようで、最近はフラの方が少し恥じらい嬉しがっているようで。
「実は……さっきボクは食べたから小太さんに食べさせてあげるね」
「いいわね」
睦まじい様子にケイも笑顔。が、すぐに真顔で歌い出す。
♪
聴こえるでしょう、アナタの心にも
聴こえるでしょう、アナタの魂にも
遥けきこの地はいつまでも
いつまでもアナタと共に……
♪
街角に響くケイの歌声。
スタッフは、祭りの準備をする人々の生き生きした顔を映していた。
●
そして今日も夕暮れ。
♪
ダンス・ダンス 知らない人も一緒に
ダンス・ダンス 同じリズムで一緒に
出てきて踊ろう ダンスカーニバル
♪
酒場で悠月が歌っている。
「頑張るわね、ユッキー」
「みんなノリがいいから気持ちいいでしょう」
堰で見ながらキーリが感心する。横でアリアがとんとん、と指でリズムを取ってご機嫌だ。
「それより、感謝するわ」
「ん?」
改めて言うケイに、真が視線を送る。
「リラ・ゼーレ。この名前、使っててくれてたのね」
「みんなで決めた名前だもん。ボクが一人ででも守るよ」
「フラさんは一人にさせませんよぅ」
前のめりになりケイに力強く言うフラ。横で小太言葉を重ねる。
「いい名前だしな」
真も言葉を添えた。ふうん、と横でアリア。
ここで歌い終わった悠月が戻って来た。大きな拍手がわき起こっている。
「もうサイコーだね。祭りが近いからみんなノリがいいよ」
どさっ、と脱力しつつ椅子に座る。
「よ、追加の撮影も終わったぜ」
町に散っていた撮影スタッフもやって来た。
「できたの?」
フラ、身を乗り出す。
「いや。編集はロッソに戻ってからだな。見てもらう機会がないのは申し訳ないんだが……」
「ちょっと」
おっと、キーリが絡んできた。
「私のセリフとか、棒読みになってなかったでしょうね?」
ぐぐい、とスタッフにガンつける。
「なってないなってない。つーか、民話のところは歌じゃなくて語りだろ? あんなもんだ」
「きっと大丈夫だよ、キーリさん」
スタッフの説明に悠月が言葉を添えた。
これに反応し、ぐりんと悠月の方を見るキーリ。ぎくりとする悠月。
「それよりユッキー、随分と落ち着いてたじゃない。何、慣れてるの? アイドル活動でもしてたんじゃない?」
「アイドルはキーリさんに譲っておくよ」
「……ならいいわ」
「な、納得してますぅ」
キーリの手の平返しに小太が汗たら~。
「それよか、ありがとな。いい仕事ができたよ。ほれ、受け取ってくれ」
撮影スタッフは荷物から「ツナ缶」を取り出してひょいひょいと投げて渡すのだった。
「いい仕事……もちろん」
受け取ったアリアも、この周囲に伝わる歌を聞いてメモを取って理解した収穫もさることながら、風景と一体になって歌えたとの手ごたえから笑顔で頷いている。
「何よりだ」
スタッフとの意思疎通に貢献した真も受け取り、にこやかだった。
後の話になるが、ミュージッククリップはロッソ内で無料視聴され好評を博したという。
「え、ええと……クリムゾンウエストとリアルブルーが一緒になって、その魂をいつまでも、って気持ちを込めてますぅ」
わた……と、身振りを交え弓月・小太(ka4679)が説明した。
ここは農耕推進地ジェオルジ。郷祭の準備で忙しい村で借りたスタッフルーム。
「そういうこと。……ほら、フラっちもアピールアピール」
小太の隣でキーリ(ka4642)がふっふーん、と得意げに胸を張ってからフラ・キャンディ(kz0121)を促した。
「え! ボクも? ええと……『リラ・ゼーレ』、よろしくね」
フラ、突然振られてにこぱ笑顔。
「OK、リラ・ゼーレだな。画像編集した時にテロップ流すから、楽しみにな」
「てろっぷ?」
スタッフがフラに笑顔を返したところで、キーリが問い質す。
「ああ、画面に文字を表示するんだ」
リアルブルー出身の鞍馬 真(ka5819)が手短に説明した。もちろん、クリムゾンウエスト出身のキーリ、フラはいまいちピンとこない。
これを見てケイ・R・シュトルツェ(ka0242)が座ったまま脚を組み替えくすと微笑した。
「じゃ、集音マイクとかも初めてね」
「しゅうおんまいく?」
今度はフラが珍しそうに復唱。
「あれだね。ほかに撮影管理をするカチンコとかもあるみたい」
リアルブルー出身の霧雨 悠月(ka4130)が、スタッフの掲げる長い柄のついたマイクを指差した。
「カメラくらいは分かるわよ?」
「さすが。簡単なのは出回ってるよね」
むー、と口を出したキーリを悠月がとりなす。
「で、撮影時の歌は口パク?」
「まさか。本格的な編集スタジオなんてないから生の一発勝負。イケる?」
挑戦的に聞いたケイに、肩をすくめるスタッフ。
「こっちじゃいつでも生の一発勝負よ」
当然、と言わんばかりに立ち上がるケイ。
「映像……」
その横に、アリア・セリウス(ka6424)。
「祭りは準備中という話ですけど、それでも結構活気がありますねぇ」
小太はスタッフルームの窓から外の様子を覗いている。振り向いて、「ま、まずは映像に残せそうな場所を探す所からでしょうかぁ?」と皆に確認した。
「残す……映像に」
アリア、小太の言葉に目を閉じ軽く天を仰いだ。
自分の歌声、踊る姿。それが、町の活気と行きかう人の気配、笑顔、言葉さえも溶け込んで――。
「とても良い機会ね。何もかも、感じて歌と紡ぎましょう」
目を開いて言う。やや微笑したのは、これまでただ直走っていた自分を思い返したのかもしれない。
「踊りも、だよね?」
横でフラがにこり。
「演奏も、だな」
その後ろに真が立つ。
「うーん、わくわくするね……ちょっぴり気恥ずかしいけど」
悠月も軽く伸びをして準備完了。
「撮影は本部報告用の現地映像を取りつつ、だな。もっともリラ・ゼーレに使う時間の方が長くなるけど」
「あら、いいの?」
スタッフの説明。ケイが気にする。
「事務的な仕事と芸術仕事の、当然の手間の取り方だ。退屈な事務的仕事を刺激的にしてくれて感謝したいくらいさ」
「それに、君たちの映像をどこで取るかとか、報告映像を取りつつ考えてもらえるだろ?」
にやり、とスタッフたち。悪戯そうだ。
これを受けてフラたちも悪戯そうな笑みで返した。
気持ちが一つになった瞬間である。
「じゃ、行こう!」
フラ、元気よく外に出る。
●
「まず最初はステージで。演奏組と歌唱組が手前と奥を入れ替わる手はずで。……テイクスタート!」
映像監督の合図でカチンコが鳴る。集音マイクが高い位置から奥へと回される。
最初の音はカスタネット。画面横からフラがカスタネットを叩きつつ軽やかに出で奥へ。続いてしゃんしゃんと神楽鈴を鳴らす小太が逆から続きやはり奥へステップ。最後にフルートの真がゆるかやに登場し、踊るように奥へ。
前奏の後は、画面奥から悠月とケイが歩いて前に。出だし第一声を合わせる!
♪
蒼い風に誘われて、流れ流れて見知らぬ世界
紅い夕日に立ちすくむ、君の瞳に夢を見る
二人引き合うリラ・ゼーレ、揺れる世界でしっかりと
♪
流れる「リラ・ゼーレのテーマ」。
「流れ流れて」の部分で両脇からダンスのキーリとアリアがふわっとターンを決めつつ出てきて雰囲気づくり。キーリのリトルファイアが出たのはもちろん「紅い夕陽」の部分。「二人引き合う」で歌と踊りの二人組がポジションチェンジ。キーリと悠月、ケイとアリアの組を作り歌と踊りを左右対称で魅せる。小太の鈴、真のフルート、フラのカスタネットも盛り上げサビに。
♪
居場所を探した二人の奇跡
一人じゃないよ、僕がいる
♪
「カァット!」
ここで監督から満足そうなストップの声。
「一発回答出してくれたな。実力で売ってるとか言うシェイクが勧めるだけある!」
「でも、これだけ?」
フラ、物足りなさそうに聞いてみる。
「あくまで出だしのみ、だ。後は流れでいろんな場所で。この続きや、別の歌、な?」
そんなこんなで場所移動する。
●
「へえっ。日系や中華系の移民は剣術道場とか立ち上げてんのか~」
「良し、ばっちり映したぜ!」
どうやら、青竜紅刃流の門下生たちを映した様子だ。ロッソから移民して、東洋風の村づくりを手伝っている。
「ぼ、僕の踊りや音楽があうなら頑張るのですよぉ」
ここで小太が立候補。もちろん「よし、頼む!」
というわけで小太、和風を強調するため腰切と袴姿になる。
「小太さん、頑張って!」
恋人のフラの応援を背に、しゃららら……と慣れた風に神楽鈴を連続で鳴らす。この風情は一朝一夕では出せない。そして木刀を手に、厳かに舞う。
「いいね。チクワを焼く様子も撮影したから合成して……」
「後から袴の道場門下生が増えただろ。文化が浸透する変化として使えるな」
しゃん、しゃんと熱を帯び始める小太の舞を見つつ、作品の出来に思いをはせるスタッフ。
その様子に、真が素朴な疑問を抱いた。
「なあ、そういったアイデアって、全部形になるんだろうか?」
見ていても、全部入り切るとは思えなかった。
「悲しいが……それが俺らの仕事さ」
「使わない映像も、もちろんミスは許されないし全力だ」
「地味で、大変だな……」
同情する真。これにスタッフに気に入られた。
「ありがとな」
「いや、せっかく一緒に仕事をするんだ。土地も知りたいが、仕事仲間のことも知っておきたい」
真に言葉に、いい笑顔をするスタッフだった。
「分かってるじゃねぇか、兄ぃちゃん」
「あの少年もミスなく全力で、いい雰囲気を出してくれてるよ」
スタッフたちは小太の舞を褒めて、お互いさまを強調するのだった。
場所は変わって、軒に花の鉢を飾っているところで。
「リラ・ゼーレのポップな面?」
え、と聞き返したキーリだが……。
「ふむーん、良いわね。凄く良いわ。花のある場所なんて。私、エルフだし」
「……いや、肉串を食べながら言われても……たれが頬についてるし」
屋台で買い食いしていたところ振り向いたキーリに突っ込む悠月。
「舐め取っていいわよ?」
「いや、ちょっと……」
ん、とほっぺを差し出すキーリだが、悠月はわしわしっとハンカチで拭う。
「ひっどい扱いね~。それより、こういう民話、知ってる?」
キーリ、屋台で聞いた話を紡ぎ始める。
「森の奥の鬼女は嫉妬の鬼。毎年町に下りてはその年の祭で選ばれた一人の美女『花の花嫁』を襲って食っていましたとさ。やがて花の花嫁選びは途絶えたものの、今度は庭先に花がきれいに咲いた一軒を襲うようになって、今度は花も植えなくなったとさ」
軒の鉢を渡る妖精のように躍ったと思えばエネルギッシュに踊り鬼女の悪行を表現したり。
「ある年、花の花嫁立候補者が出たようで。若い娘を周りが止めるも決意は固く、『だったら同じ綺麗な花で、町の全部を飾ればいいじゃない』……」
キーリの、喜びと華やかさを表現するダンスが続く。
「あーまさか撮影ってこんなに難しいなんてねー。表情硬くなってなかった? 大丈夫?」
「キーリさん、表情硬いというかクールなんだから問題ないよ」
心配から思わず屋台で買い食いするキーリに、付き合いで一緒に食べるフラが慰める。というか、慰めてないが。
「あによフラっち。そんなに私、ダメだった?」
「ち、違う違う。良かったよ……あれ?」
ここで悠月の気配に気付くフラ。
「あ、フラさんは食べてて。キーリさんも」
どうやら次は悠月が歌う番らしい。買い食いする女性二人を自然なままにしてほしいようで。
「そう?」
「悠月さん、何歌うの?」
冷たいキーリにニコリと返すフラ。
「さっき結構聞き込んだんだ。……自然に、楽しく、元気いっぱいに。皆で気持ちよくなれるように、気持ちを込めてね!」
悠月、インカムを装着し歌い出した!
♪
君の、差し出す手の平 そこに、あるものは何?
勇気、それもあるけど 笑顔で立ち上がれるよ
♪
そこまで歌って少女たちに手を振り駆け出す悠月。スタッフも台車でカメラが走る。
もちろん長くは持たないが、すぐにあるのは街の教会。
伝統的な建物で、悠月の見上げる姿を追ってカメラが上にパンする。
「すまない」
下では真が短剣で暴れていた。スタッフも一緒だ。
おかげで、悠月の到着と同時に白いハトが空に舞った。
万感の悠月と入れ替わり、そのまま真のバイオリン演奏。古い教会とマッチする伸びのある旋律が流れる。真は教会の衣装を借りてそれを着ている。
「今回は踊るよ」
そこに、悠月がターンしてイン。場所のイメージを損なわないよう、通行人をイメージしたダンスを披露する。
掃除をする人たちとともに、光と影の中、歴史を感じてもらうのに十分だった。
●
そして、アリア。
「走れる? 一気に場面転換させる演出を入れたいんだ」
スタッフからの要望に意外そうな顔を一瞬したが、無言で頷いた。
走ることはある。
「祭りはこれから。……そして、物語もまた途中」
自らと重ね合わせ、だれにも聞こえないように呟く。
「ふさわしい」
今度はしっかりと言い切って顔を上げる。「テイク」の掛け声とカチンコの音が聞こえた。
――走る。
草原を、町から離れるように。
しかし、すぐに転んだ。
草原に大の字に横たわる。
そして呟くように歌うのだ。
最初はハミングで。
やがてはっきり分かるように。
♪
すべてはヤギの言う通り
夫婦の喧嘩も明日の天気も
放したヤギの言う通り
ヤギの助言は何もなく
時だけ過ぎて明日になる
明日になれば全て良くなる
♪
民謡をひとくさり歌ったとこで、近くにヤギが。
立ち上がり、改めて歌う。
♪
風の中で声が流れる
きっといつかの昔の夢
遠く、高く、月のように……
♪
そして、ケイ。
つば広の白い帽子を深くかぶっていた。紅を差した唇が、にこり。
「走った人を一瞬振り向いて、そして前を向いてゆっくりと散策するように歩いて」
スタッフからは、アリアと逆になるような指示だった。
「夜も入れるといいかもしれないわ」
「分かった。後で撮って合成するようにしよう」
どうやらケイ、場所の変化だけではなく時の変化もいれるつもりだ。
「明日になれば全て良くなる、希望を胸にすればことのほか……」
ゆっくり散策しながら民謡を口ずさんだところで、川辺に出る。
そこで、白い帽子を高々と投げ上げた。
同時に歌い出す。
♪
高く…何処までも高く
遠く…何処までも遠く
優しく吹く風に混じる
優しい人々の囁き……
♪
「あ、フラさんっ。せっかくですし一緒に街を見てまわりませんかぁ? 屋台とか食べられなかったですしぃ」
小太は自分のパートが済んだ後、フラを誘った。フラがキーリと買い食いしていたのは、内緒だ。
「うんっ。でも……」
フラが言い淀んだのは、ちょうどケイとスタッフが戻って来たから。
「あ、いいよ。ちょうど町の人々が歌われるところだから」
スタッフの説明に、フラも安心。
「じゃ……」
「あ」
小太、自然にフラの手を取った。だんだん慣れてきたようで、最近はフラの方が少し恥じらい嬉しがっているようで。
「実は……さっきボクは食べたから小太さんに食べさせてあげるね」
「いいわね」
睦まじい様子にケイも笑顔。が、すぐに真顔で歌い出す。
♪
聴こえるでしょう、アナタの心にも
聴こえるでしょう、アナタの魂にも
遥けきこの地はいつまでも
いつまでもアナタと共に……
♪
街角に響くケイの歌声。
スタッフは、祭りの準備をする人々の生き生きした顔を映していた。
●
そして今日も夕暮れ。
♪
ダンス・ダンス 知らない人も一緒に
ダンス・ダンス 同じリズムで一緒に
出てきて踊ろう ダンスカーニバル
♪
酒場で悠月が歌っている。
「頑張るわね、ユッキー」
「みんなノリがいいから気持ちいいでしょう」
堰で見ながらキーリが感心する。横でアリアがとんとん、と指でリズムを取ってご機嫌だ。
「それより、感謝するわ」
「ん?」
改めて言うケイに、真が視線を送る。
「リラ・ゼーレ。この名前、使っててくれてたのね」
「みんなで決めた名前だもん。ボクが一人ででも守るよ」
「フラさんは一人にさせませんよぅ」
前のめりになりケイに力強く言うフラ。横で小太言葉を重ねる。
「いい名前だしな」
真も言葉を添えた。ふうん、と横でアリア。
ここで歌い終わった悠月が戻って来た。大きな拍手がわき起こっている。
「もうサイコーだね。祭りが近いからみんなノリがいいよ」
どさっ、と脱力しつつ椅子に座る。
「よ、追加の撮影も終わったぜ」
町に散っていた撮影スタッフもやって来た。
「できたの?」
フラ、身を乗り出す。
「いや。編集はロッソに戻ってからだな。見てもらう機会がないのは申し訳ないんだが……」
「ちょっと」
おっと、キーリが絡んできた。
「私のセリフとか、棒読みになってなかったでしょうね?」
ぐぐい、とスタッフにガンつける。
「なってないなってない。つーか、民話のところは歌じゃなくて語りだろ? あんなもんだ」
「きっと大丈夫だよ、キーリさん」
スタッフの説明に悠月が言葉を添えた。
これに反応し、ぐりんと悠月の方を見るキーリ。ぎくりとする悠月。
「それよりユッキー、随分と落ち着いてたじゃない。何、慣れてるの? アイドル活動でもしてたんじゃない?」
「アイドルはキーリさんに譲っておくよ」
「……ならいいわ」
「な、納得してますぅ」
キーリの手の平返しに小太が汗たら~。
「それよか、ありがとな。いい仕事ができたよ。ほれ、受け取ってくれ」
撮影スタッフは荷物から「ツナ缶」を取り出してひょいひょいと投げて渡すのだった。
「いい仕事……もちろん」
受け取ったアリアも、この周囲に伝わる歌を聞いてメモを取って理解した収穫もさることながら、風景と一体になって歌えたとの手ごたえから笑顔で頷いている。
「何よりだ」
スタッフとの意思疎通に貢献した真も受け取り、にこやかだった。
後の話になるが、ミュージッククリップはロッソ内で無料視聴され好評を博したという。
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相談なのですよぉー 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/11/01 00:20:37 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/01 00:11:16 |