ようこそ、亜人サーカスへ

マスター:桐咲鈴華

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/25 22:00
完成日
2014/10/03 21:30

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 すっかり日も落ちて、暗闇に鎖された草原。そこを冒険者の二人組が歩いていた。
「今日はここで野宿かな」
「そうだな……って、ん? おい、見ろよ。明かりがあるぜ」
 二人組のうちの一人が、遠くを指さす。うっすらと暗闇の中に浮かぶ朱色の明かり。地図によれば街は遠く、まだ到着するには時間を要する訳なのだが……。
 不思議に思った冒険者は、明かりに近づいてみることにした。少しずつぼやけていた輪郭が顕わになっていき、やがてそれは派手な色をしたテントを彩る電飾だという事が解った。
「これは……サーカスのテント?」
「こんなところに珍しいな。どれ、せっかくだから入ってみるか。どの道辺りは暗すぎてもう進めないしな」
 寝床を貸して貰えれば儲けものだしな。と、二人はサーカステントの中へと入っていった。
 中は外の電飾とうって変って、最低限の明かりのみで薄暗かった。奥にステージがあり、そこへ向かって放射状に、階段のように椅子が設置してある。
 中には自分たちの他に誰もおらず、二人はゆっくり、ステージの方へと近づいていった。
 ステージは楽屋に繋がっているから、その付近ならばきっと誰か居るだろう、と想像したのだ。
 そして二人が、ステージの上に立ったその瞬間。
 
「レディース・アンド・ジェントルメェン! 本日は当サーカスにお越し頂き、誠にありがとうございます!」

 突如として鳴り響いた声に驚く間もなく、眩いスポットライトが二人に向かって照らされる。
「本日のお客様は2名!それなりに鍛えていらっしゃる模様……良いですね、あなた方ならば、当サーカスの出演者として相応しい!」
2人は声の主の方を向く。今しがた楽屋から出てきた、道化師のような恰好をした……それは、人間ではない。ゴブリンだった。
「さて、それでは始めましょうか……種も仕掛けもございません。圧倒的なスリルに溢れた、世紀の亜人サーカス! 身体の髄まで……ご堪能下さい!」
 冒険者が慌ててステージから降りようとした時にはもう遅かった。頭上から降りてきた檻がステージを取り囲い、冒険者たちは閉じ込められてしまった。
 司会者のゴブリンが指を鳴らすと、投げナイフを大量に構えたゴブリンが楽屋からぞろぞろと出てくる。
「さて、それでは……まずはナイフ投げから。参加者のお二人の運命や、いかに!」
 そして冒険者の二人に向かって投げられる、大量の投げナイフ。叫び声をあげる間もなく、鮮血が檻の外へと飛び散っていった。
 
 


「……以上が、偶然そこを通りかかった、また別の冒険者からの報告です」

 後味の悪そうな顔をしつつ、ハンターオフィスのスタッフは説明を続ける。

「最近、冒険者や行商人の変死体が見つかる事件が多発していました。胴体が真っ二つにされていたり、全身が焼かれていたり……今までは原因は解らず仕舞いだったのですが、その冒険者の報告により、その原因が解りました」

 それが今回のこの事件、通称『亜人サーカス』です。とスタッフは付け足す。

「冒険者や行商人を誘い込み、サーカスと称して惨殺する、極めて悪質で危険な事件です。わざわざサーカスの設備を用意したり、流暢な人語を操れるところを見ると…その指揮をしているゴブリンは、かなりの知能を持つものと予想されます」

 報告にあった投げナイフは勿論、被害者の死体から、様々な曲芸を殺害方法に使っている事が予想されます。とスタッフは付け足しつつ、資料を手渡してゆく。

「凶悪な亜人が居ると分かった以上、放っておく訳にはいきません。これ以上の被害が出る前に、何としてでも亜人を排除して下さい。どうか……お気をつけて」

 スタッフはハンター達を見送るのだった。

リプレイ本文

●忍び込むハンター達

 今宵の月はとても綺麗だ。晴れ渡る夜空に輝く三日月。散りばめる星空がその輝きを引き立てる。そんな三日月の輝きにも負けない煌きを誇る、電飾で彩られた巨大なサーカステント。その中に、ハンター達の姿はあった。
「おお、サーカスなのじゃ、楽しみなのじゃー。ゾウ使い、ゾウ使いは出てくるのかのぉ」
 無邪気な様子でテントに入ってくるのは小柄な少女、切金 凪(ka2321)。その後に続いて二人のハンターが入ってくる。
「おー、こんな辺鄙な場所にあるとはいえ立派なもんじゃねーの。灯りがついてるって事はまだショーの予定はあるってことかね」
 興味津々、といった風にシャルラッハ・グルート(ka0508)はテント内を見回す。その後ろからは、そわそわと落ち着きがない風にシェルミ=K=シュルシュタット(ka3047)が入ってきた。
 テント内は外の派手な電飾と違って薄暗く、足元が解る程度の最低限の灯りだけだった。3人はこれから出し物が始まるのか、と期待する風に観客席の最前列に腰掛けた。
「待ってれば始まるかのう? どんな芸が見れるかのう?」
 期待に胸を躍らせてはしゃぐ凪。シャルラッハが紙巻煙草を咥えつつ、トランシーバーを握る。
(あとは裏口の奴らの連絡待ちだな)

 
 表から入り込んだとは別のハンター達もまた、このテントに潜入していた。裏にある、ステージに通じるであろう楽屋側。そこから無事テントに潜入した一行は、表のハンター達とは別の位置から行動を開始する。不意を突く為だ。
 ステージの裏側、先行して舞台裏を探索するキール・スケルツォ(ka1798)。不審なものが無いか、注意して探していたが……。
(何もねぇな、檻を降ろす為の仕掛けやテントを隠蔽するアイテムなんかがあると踏んでいたんだが)
 仕掛けが何もないとすると逆に不審だ。背後を着いてきたリズリエル・ュリウス(ka0233)に伝える。
「こちらリズリエル。どうやら仕掛けは無い模様だ。探索を続行する。待機を継続してくれ」
 了解、とシャルラッハの声がトランシーバーから返って来る。楽屋に舞台裏は調べたとなると、次はサーカステントの上側だ。リズリエルはショットアンカーを射出。テントの梁にきつくそれらが結びついたのを確認すると、それを伝ってテントの鉄骨へと登ってゆく。後から入ってきたスヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376)もそれに続いて登る。
 リズリエルの読み通り、テントの鉄骨はしっかりとしており、人が乗っても問題ない。3人はそこを伝うようにゆっくりと移動する。
「やんっ」
 リズリエルは背後の艶っぽい声に振り向く。キールの尻尾がスヴィトラーナの胸の谷間に滑り込んでいた。
「もう、悪戯しないでったら」
「たまたまだっつーの」
 ヘラヘラと笑うキールと、特に咎める事のないスヴィトラーナを尻目に、やれやれと言った調子でリズリエルは嘆息する。テントの鉄骨から下を見下ろす。ステージと観客席が一望でき、表から潜入した3人の姿も確認出来る。だが……。
(敵の位置はここからは見えんな。楽屋にもゴブリン共の姿は見えなかった。一体どこに居ると言うんだ…?)
 テントの外周を伝いながら偵察するも、それらしい影は見つからない。だが、鉄骨伝いに移動していくと、そこにはステージを囲うように落ちる為の、鉄製の檻が用意してある。
「ここまで徹底して何もないと、既に敵さんが気付いてる可能性があるわね。どちらにしろ、先にささっと機材を壊してしまいましょう?」
 スヴィトラーナの提案に2人も了承する。檻が落ちる事がなければ少なくとも行動を制限される事はない。3人が機材の破壊を試みようとした、その時。

「レディース・アンド・ジェントルメェン! 本日は当サーカスにお越し頂き、誠にありがとうございます!」

 突如としてテント中に響き渡る大声。瞬間、テントの照明が自動的に点けられ、スポットライトが観客席と鉄骨を伝うハンター達を照らし出す。

「本日のゲストは、ハンターズソサエティからわざわざお越し頂けたハンター達です! 良いですね、貴方方ならば当サーカスの出演者として相応しい!」

 パン! という音とともにステージ上にクラッカーと紙吹雪が散りばめられる。そこに現れたのは、道化師のような格好をした亜人だ。その姿はゴブリンのように見える。
「なんじゃ、最初からバレておったのかのう? わざわざ知らぬ体を装っておったのに徒労ではないか」
 凪が巨大な剣を持ち上げつつ呟く。道化師ゴブリンはちちち、と指を振る仕草をする。
「それは勿論! 何せ、貴方方ハンター様方をお招きする為のお膳立てでした故! ですがこうしてお越し頂けたという事は、我々のショーの『出演者』様方はさぞ良い招待状となった事でしょうねぇ!」
「……ふざけやがって。そんな事の為に夜な夜な殺戮ショーを繰り広げたってか? 胸糞悪い話だぜ」
 芝居がかった口調で流暢な言葉を話す道化師の言葉に煙草を噛み潰しながら立ち上がるシャルラッハ。ツヴァイハンダーを構えつつ、道化師を見据える。
「てめえらみたいな物騒なサーカス団は、とっととぶっ潰してやるぜ!」
 鋭い眼光が道化師を射抜く。道化師はおやおや、と困った風な素振りを見せる。
「招待状がお気に召しませんでしたか、いやはや。それにしてもギラギラとした方ですねぇ、まるで猛獣のようではないですか」
 道化師ゴブリンはパチン、と指を鳴らす。するとサーカスの照明が更に多く灯り、それにあわせてゴブリン達がステージ上に突如として現れる。
「当サーカスには種も仕掛けも一切ございません! 突如とした現れた我が団員達を前に、ハンター様方の運命や、いかに!」
 芝居がかった口調でステッキを振るい、道化師は高らかに宣言する。

「さあ、亜人サーカスの開幕です!」


●ショータイム

 その宣言と同時に、ローブに身を包んでいたシェルミが噤んでいた口をにぃ、と開く。
「レディィスアンドジェエエントルメェェンたぁゴブリンにしちゃあ随分と嬉しぃぃいご歓迎じゃぁああねぇのかよぉ? あぁん? 歓迎の鞭は用意してんだろうなァ?」
 げらげらと大声をあげながらステージに近づく。
「なかなか傾(かぶ)いたお方ですな。ええ、ええ、お客様のコールに応えるのもサーカスの務め。ご要望通り、最初は鞭によって歓迎致しましょう!」
 それに応えた道化師はパチンと指を鳴らす。すると舞台裏から大きな四足獣と、それを調教する為の鞭を携えたゴブリンが現れる。
「お客様参加型のショー! さあ傾奇者さんは猛獣から逃げ切れるのか!」
 ピシィ! と鞭の鳴る音と共にシェルミに飛びかかる獣。シェルミはそれを敢えて避けずに食らいつかせ、ナイフによって獣の急所を斬り付ける。鮮血をあげて獣が崩れ落ちた。
「おらおらおらぁ! てめぇらこの程度で、す、かぁああん?おいおい冗談じゃああねぇぞこらぁもっとぶちのめしてくんねぇえとこちとらぁ鐚一文感じすらしねえぇえんですけどぉ?」
 噛み付かれた傷を気にせずに啖呵を切るシェルミにおやおや、と困る仕草を見せる道化師。
「うるせぇぞクソガキ、げらげら笑いすぎだ」
 その前に鉄骨から飛び降りたキールが、直接道化師に襲いかかる。道化師は「おおっと!」とわざとらしい声をあげて、キールの太刀の一閃を回避した。
「あの高さから軽々と飛び降りるとは、貴方には軽業師の才があるやもしれませんなぁ!」
「逃げんじゃねぇぞ。おめぇらのネタと命が尽きるまで、何度でもアンコールをくれてやっからよ」
「ほほう、アンコールをさせて下さるとは芸人冥利に尽きますな! ならば貴方には!」
 道化師が指を鳴らすと、ゴブリン達が素早くキールを取り囲む。その手にはナイフ。
「お言葉に甘えてアンコールをさせて頂くとしましょう!」
 声と共に放られるナイフ。180度全方位から、ナイフが迫る。そのキールの頭に突如として衝撃。
「ぐおっ!」
 上から飛び降りたスヴィトラーナがキールを踏みつけて再度跳ぶ。重さでキールが屈んだお陰でナイフは全て彼の頭上を通り過ぎ、スヴィトラーナもまた跳躍からステージに着地する。
「魅せてあげるわ」
 そのまま鞭を周囲に振るい、取り囲んでいたゴブリン達をまとめて薙ぎ払った。
「ほほう、軽やかな動きですな。それに素晴らしい鞭使いだ! 貴方は良い猛獣使いになれることでしょう!」
「あらあら、猛獣使いに興味なんてないわ」
「それは残念。しかしご安心ください。当サーカスはどんなお人であっても『芸』とすることが矜持ですが故」
 再び指を鳴らす道化師。その横に並ぶは、火の点いたトーチを手に持ち、口に何かを含んだゴブリン達。
「場も暖まってきたところで、出演者様方にも温まってもらいましょう! ど派手な火吹き芸、とくとご覧あれ!」
 その号令と共にゴブリンがトーチに向かって口に含んだ油を噴き出す。油は炎となり、火炎放射となって2人を襲う。
「余所見は禁物じゃぞ!」
 そこへ横から踏み込んできた凪が、巨大な剣を振りかざしてゴブリンを吹き飛ばす。剣を振り回し、遠心力で自身の身体を持ち上げ、ゴブリンを蹴りつけ、両断する。
「さぁ、我の芸とそちらの芸のどちらが上か、勝負といくのじゃ!」
 巨剣の舞によって火吹きゴブリンを蹂躙した凪が、道化師に大見得を切る。
「ブラボー! おお、ブラボー! 身の丈を超える剣を振り回す少女。しかも実に可憐ときた! 貴方様の剣舞、私は大いに感動しております!」
 拍手を贈る道化師。その背後から迫る剣。道化師はひらりと身をかわして対峙する。
「確かに種も仕掛けもねえみてえだな。だがスリルが足りねぇ、こんな中途半端な芸じゃ満足出来ねえ、だから俺がてめえにスリルを味わわせてやるよ!」
 シャルラッハが渾身の力を込めて道化師に剣を叩き付ける。しかしその剣が道化師を捉える事はない。巧みにひらりひらりと攻撃をかわす道化師。まるで質量を感じさせない動きだ。
「ならば、更なるスリルを味わわせて差し上げましょう。種も仕掛けも、御座いません!」
 道化師は言葉と同時に飛び上がる。テント上に下げられた空中ブランコにぶら下がりつつ、その指をパチンと鳴らす。
 するとサーカステントの上側から、空中ブランコで揺られるゴブリン達が姿を現した。その手に持って居るのは、チャクラム。
「空中ブランコからの輪投げ! ちょーっとこの輪っかは鋭いですが、上手く入りますかねぇ? 最も、入らなければ怪我しますがね!」
 ブランコに揺られるゴブリンがそれぞれチャクラムを投げる。チャクラムの刃はステージ上に居る全員を襲う。
「さあさあ、頑張って避けて下さいませ? 良きショーを、楽しませて下さい!」
「ならば私が楽しませてやろう。貴様の最期を飾るショーをな」
 おや? と道化師が言うまでもなく、横合いから鋭い一閃が道化師を襲った。ショットアンカーによるワイヤーアクションで慣性をつけたリズリエルが、ブランコにぶら下がる道化師を斬りつけたのだ。
「ぐうっ!?」
 顔に傷がつきつつも道化師は指を鳴らす。ブランコのゴブリンはチャクラムを投擲するも、リズリエルのワイヤーアクションによるマルチステップはそれを華麗に回避してゆく。アンカーの巧みな切り替えによる三次元軌道に翻弄されるゴブリンは、辛うじて何とかチャクラムによる一撃を与えるも、無慈悲なダガーの一閃によりブランコごと次々切り落とされてゆく。
 ステージ上に叩き付けられて動かなくなるゴブリンとは対象的に、華麗に着地する道化師とリズリエル。道化師は傷を抑えている。
「貴様等には優雅さが足りん、技芸が足りん。そして何より――」
 対峙するリズリエルはダガーを道化師に突きつけ、高らかに言い放つ。

「喝采が足りん!」

 その一言に、道化師は目を剥いた。
「同じ業種と言うのも愚劣! サーカスとは人を楽しませてこそのもの。その時に得られる万雷の拍手こそが誉れだ! 観客の笑顔の無い欺瞞の舞台など、幕を上げるまでもない! これにて閉幕だ!」
 リズリエルの言葉を聞き、道化師は暫し呆然としている。その周囲を、ハンター達は取り囲む。
「これで終わりかぁぁ? あぁくそ足りねぇ、おいおっさんよぉ。ちょっと俺の事ぶっ刺してくれ」
「だから、俺がお前の趣味に付き合い義理はねぇっつーの!」
 シェルミはまだ満足していない様子だ。キールはそれに激しくツッコミを入れる。
「逃げるなんて、許さないのだから」
 スヴィトラーナも道化師に詰め寄る。その鞭でいつでも捕まえられるように。だが、
「…………く、ふふふ」
 道化師の口元が、歪む。
「……素晴らしい、素晴らしいですよ、貴方達は……」
 ふらふらと覚束ない足取りで立ち上がる道化師。
「なる程、喝采……ですか。私のサーカスには、喝采が足りないと。確かにそうです。私のサーカスには何かが足りないと思っていました。猟奇的な楽しみ方やスリルはあろうとも、サーカスの終わりには説明出来ぬ空虚を感じていました」
 道化師は、周囲のハンター達を見据える。
「貴方たちの芸は素晴らしかった! 戦いの中に見せる輝き、息を呑む素晴らしい動き! そう、私はこれを求めていた! 感動を、喝采を!」
 天を仰ぎ、道化師は吼える。追い詰められて見せるその姿は、ハンター達にはとても不気味に思えた。
「感謝しますよハンター様方。お陰で私の、新たに進むべき道が見えたようです!」
「何を言ってやがる。今日でこのサーカスの公演は終いだぜ。似非道化師よ」
 シャルラッハが剣を構えて詰め寄る。道化師は、さして慌ても、逃げもしない。
「貴方方の技芸に免じて、暫くは人を襲う事はしないでおきましょう。……ですが、このサーカスを閉幕する気も毛頭御座いません故」
 シャルラッハの渾身の剣が、振り下ろされる。
「最後にお見せしましょうか、世紀の大脱出ショーを!」
 その言葉を最期に、シャルラッハの剣が道化師を叩き潰した。
「……けっ、何が大脱出だよ」
 シャルラッハは煙草を取り出して火をつける。道化師はステージの上で無残な姿になっていた。
「終わったか。最後まで不気味な野郎だったぜ」
 キールも太刀を仕舞いつつ、言葉をはき捨てる。
「月の夜に輝くのは、私のテントだけで十分というわけだ。さて帰るとしよう、ロサが風呂と布団を用意してくれているからな」
 ゴブリン達の死体を確認したハンター達は、サーカステントを後にした。サーカステントの電飾は少しずつ小さくなり、やがて消えていった。










 ハンター達が去ったその後の、サーカステントの外。

 道化師のような姿をした『何か』は、ぽつりと一言。
「……だから言ったでしょう? 『種も仕掛けもございません』と」

 サーカステントは歪み、忽然とその姿を消した。後に何も残さぬまま。
 
 そう、まるで。手品のように……。

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MVP一覧

  • うさぎのどうけし
    リズリエル・ュリウスka0233
  • 幼き心は折れぬ刃
    切金 凪ka2321

重体一覧

参加者一覧

  • うさぎのどうけし
    リズリエル・ュリウス(ka0233
    人間(紅)|16才|女性|疾影士
  • 威を放つ猛獣
    シャルラッハ・グルート(ka0508
    人間(紅)|25才|女性|闘狩人
  • 猛獣を御す閃鞭
    スヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376
    人間(紅)|28才|女性|霊闘士
  • 《律》するは己が中の獣
    キール・スケルツォ(ka1798
    人間(蒼)|37才|男性|疾影士
  • 幼き心は折れぬ刃
    切金 凪(ka2321
    人間(蒼)|10才|女性|闘狩人
  • 傷つきたがりの傾奇者
    シェルミ=K=シュルシュタット(ka3047
    人間(紅)|18才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シャルラッハ・グルート(ka0508
人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/09/25 19:59:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/21 06:48:17