ゲスト
(ka0000)
【HW】千石原の乱・叛
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/03 07:30
- 完成日
- 2016/11/04 18:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
夢――睡眠中に感じるイメージ。
人間の脳が見せる不可思議な映像は、起床時に貯えた情報を整理する為に見せているのか。
未だ謎が多く研究対象となる現象だ。
だからこそ、解明されていない事象も発生する。
集団で同一の夢を見る、一種の奇跡。
その奇跡が今宵見せるのは、東方のある小国。
――詩天。
その国は、そう呼ばれていた。
詩天の空気は、いつになく張り詰めていた。
先代詩天、三条氏時が死去してから数ヶ月。次期詩天を巡って三条家内は、大きく揺れ動いていた。
先代詩天の嫡男にして符術師として大きな才能を見せる三条真美。
先代詩天に長く仕え、氏時に付き従ってきた甥の三条秋寿。
三条家では嫡男でなくとも『三条家内で符術師として有能であれば詩天となる資格を有する』と定められている事が混乱を更に激化させた。
どちらが詩天として相応しいか。
双方に味方する武将達の溝は決定的に大きくなっていく。
そして――双方はついに激突する。
●
「殿、本当によろしいのですか?」
水野 武徳(kz0196)の家臣は、今一度問い質した。。
三条家を二つに分けたお家騒動は、千石原にて激突する事になった。
真美派の重鎮である角雄大は若峰南方の歪虚残党征伐を理由に進軍を開始。だが、この軍が一万三千の兵を連れての討伐である。誰が見ても過剰と表現できる兵力は、三条秋寿に向けてのものである事は明白であった。
これに対して三条秋寿は若峰の西にある『月下城』より挙兵。三条真美の身柄を抑える為に若峰へ向けて出発。事態に気付いた角は若峰に向けて引き返す。
両軍は千石原にて対峙。既に陽も落ち、合戦前の夜を過ごしていた。
「うむ、わしは決めたぞ。真美様にお味方する」
「誠で御座いますか、殿!」
武徳の声に家臣達は驚きを隠せない。
何故なら、武徳は今秋寿側に陣を張っている。この時点で真美の味方をするという事は裏切り以外の何物でも無い。
「殿、今の布陣をご存じでしょう。戦力差も地の利も秋寿様の方が有利ですぞ!」
慌てた家臣が食って掛かるが、それも仕方ない。
秋寿派は街道を抑えると同時に角ら真美派の武将を取り囲むように布陣している。
しかも、角らは一万三千に対して秋寿は一万七千。
このままならば秋寿は圧勝だ。
それでも、武徳は頭を振る。
「馬鹿者。貴様は何を見ておる。目の前の戦ではなく、その後を見るのだ」
「その後、でございますか」
「左様。秋寿殿は先代に似てお優しい。優しすぎるのだ。あれでは、家臣に実権を奪われる」
秋寿派につく武将達は、三条家恩顧の武将ばかりだ。
既に大きな権力を保持している。ここで戦が起これば邪魔物を一気に排除してより権力を拡大するだろう。下手をすれば秋寿を神輿として秋寿派の臣下達が実権を握りかねない。
武徳は、秋寿が彼らを抑えられないと読んでいるのだ。
「秋寿殿へ味方すれば終いじゃ。古きモノは腐りゆく。なれば、ここで大掃除じゃ。古きモノを滅して新しきモノを迎え入れる。罪はわしらが背負っていけば良い」
「しかし、秋寿様には永く懇意にされた本田喜兵衛殿もおられます。本田殿も裏切られるのですか?」
本田喜兵衛。
三条家に仕え始めた時から共に過ごした戦友とも称するべき武将だ。誰よりも先んじて敵陣へ突き進むその姿から『死者を率いる武将』として恐れられている。
家臣からみれば大切な友と見ていたのだが、当の武徳にすれば違ったようだ。
「懇意? 馬鹿を申せ。ただの腐れ縁じゃ。勝手にわしを部下扱いしおって……だが、それも今日限りよ」
武徳は厳しく、かつ冷淡に言い放つ。
今回の騒乱は、言うなれば勝たなければ命はない。生きる為には裏切りも必要。
義にも劣る行為かもしれんが、これも武門の定め。何より武徳の裏切りはこれが初めてではない。
「よいか。わしらはこの不破山へ布陣しておる。ここから喜兵衛の背後をついて襲撃。速やかにこれを討ち滅ぼす。さらに喜兵衛の旗印である『三つ扇』を持って敵本陣をつく。これで敵方は混乱するはずじゃ。そうなれば戦の潮目は一気にこちらへ傾くはずじゃ。
それから……この手紙を山倉智久に届けよ」
懐から取り出した手紙を武徳は、家臣へ手渡す。
覚悟を決めた家臣達。主の命に従い、各々動き始める。
「この戦、半日が良いところだな。わしらが鬼にならねば、詩天の未来は無いと知れ」
人間の脳が見せる不可思議な映像は、起床時に貯えた情報を整理する為に見せているのか。
未だ謎が多く研究対象となる現象だ。
だからこそ、解明されていない事象も発生する。
集団で同一の夢を見る、一種の奇跡。
その奇跡が今宵見せるのは、東方のある小国。
――詩天。
その国は、そう呼ばれていた。
詩天の空気は、いつになく張り詰めていた。
先代詩天、三条氏時が死去してから数ヶ月。次期詩天を巡って三条家内は、大きく揺れ動いていた。
先代詩天の嫡男にして符術師として大きな才能を見せる三条真美。
先代詩天に長く仕え、氏時に付き従ってきた甥の三条秋寿。
三条家では嫡男でなくとも『三条家内で符術師として有能であれば詩天となる資格を有する』と定められている事が混乱を更に激化させた。
どちらが詩天として相応しいか。
双方に味方する武将達の溝は決定的に大きくなっていく。
そして――双方はついに激突する。
●
「殿、本当によろしいのですか?」
水野 武徳(kz0196)の家臣は、今一度問い質した。。
三条家を二つに分けたお家騒動は、千石原にて激突する事になった。
真美派の重鎮である角雄大は若峰南方の歪虚残党征伐を理由に進軍を開始。だが、この軍が一万三千の兵を連れての討伐である。誰が見ても過剰と表現できる兵力は、三条秋寿に向けてのものである事は明白であった。
これに対して三条秋寿は若峰の西にある『月下城』より挙兵。三条真美の身柄を抑える為に若峰へ向けて出発。事態に気付いた角は若峰に向けて引き返す。
両軍は千石原にて対峙。既に陽も落ち、合戦前の夜を過ごしていた。
「うむ、わしは決めたぞ。真美様にお味方する」
「誠で御座いますか、殿!」
武徳の声に家臣達は驚きを隠せない。
何故なら、武徳は今秋寿側に陣を張っている。この時点で真美の味方をするという事は裏切り以外の何物でも無い。
「殿、今の布陣をご存じでしょう。戦力差も地の利も秋寿様の方が有利ですぞ!」
慌てた家臣が食って掛かるが、それも仕方ない。
秋寿派は街道を抑えると同時に角ら真美派の武将を取り囲むように布陣している。
しかも、角らは一万三千に対して秋寿は一万七千。
このままならば秋寿は圧勝だ。
それでも、武徳は頭を振る。
「馬鹿者。貴様は何を見ておる。目の前の戦ではなく、その後を見るのだ」
「その後、でございますか」
「左様。秋寿殿は先代に似てお優しい。優しすぎるのだ。あれでは、家臣に実権を奪われる」
秋寿派につく武将達は、三条家恩顧の武将ばかりだ。
既に大きな権力を保持している。ここで戦が起これば邪魔物を一気に排除してより権力を拡大するだろう。下手をすれば秋寿を神輿として秋寿派の臣下達が実権を握りかねない。
武徳は、秋寿が彼らを抑えられないと読んでいるのだ。
「秋寿殿へ味方すれば終いじゃ。古きモノは腐りゆく。なれば、ここで大掃除じゃ。古きモノを滅して新しきモノを迎え入れる。罪はわしらが背負っていけば良い」
「しかし、秋寿様には永く懇意にされた本田喜兵衛殿もおられます。本田殿も裏切られるのですか?」
本田喜兵衛。
三条家に仕え始めた時から共に過ごした戦友とも称するべき武将だ。誰よりも先んじて敵陣へ突き進むその姿から『死者を率いる武将』として恐れられている。
家臣からみれば大切な友と見ていたのだが、当の武徳にすれば違ったようだ。
「懇意? 馬鹿を申せ。ただの腐れ縁じゃ。勝手にわしを部下扱いしおって……だが、それも今日限りよ」
武徳は厳しく、かつ冷淡に言い放つ。
今回の騒乱は、言うなれば勝たなければ命はない。生きる為には裏切りも必要。
義にも劣る行為かもしれんが、これも武門の定め。何より武徳の裏切りはこれが初めてではない。
「よいか。わしらはこの不破山へ布陣しておる。ここから喜兵衛の背後をついて襲撃。速やかにこれを討ち滅ぼす。さらに喜兵衛の旗印である『三つ扇』を持って敵本陣をつく。これで敵方は混乱するはずじゃ。そうなれば戦の潮目は一気にこちらへ傾くはずじゃ。
それから……この手紙を山倉智久に届けよ」
懐から取り出した手紙を武徳は、家臣へ手渡す。
覚悟を決めた家臣達。主の命に従い、各々動き始める。
「この戦、半日が良いところだな。わしらが鬼にならねば、詩天の未来は無いと知れ」
リプレイ本文
「可能な限り短時間で本田喜兵衛を討て」
水野 武徳(kz0196)は、静かに配下の者へ指示を出す。
今頃千石原の中央では、三条真美と三条秋寿の軍が衝突している頃。
本田喜兵衛の軍も間もなく中央へ移動する手筈なのだが、武徳はこの喜兵衛を襲撃しようとしている。
――それは、秋寿軍への裏切りに他ならない。
「水野殿。我ら榊党、今回の義挙にお味方致しますぞ」
武徳寄騎の国人衆『榊党』の頭首、榊 兵庫(ka0010)は、武徳の決断に従う事にした。
現在の詩天は戦国乱世に近い。生き残る為には裏切りも止む無し。
このまま三条家恩顧の武将が詩天を治めれば、国人衆に飛躍のチャンスない。大博打となるが、武徳の策へ乗る事を兵庫は選択したのだ。
「うむ。榊党頭首の槍働き、期待しておるぞ」
武徳は小声で囁く。
あまり大きな声を出せば、喜兵衛の兵に気付かれる。
できるだけ近づいて奇襲を仕掛けなければ、喜兵衛を短時間で仕留める事は難しくなる。
そんな最中、エルバッハ・リオン(ka2434)は誰にも聞こえないように呟く。
(裏切りですか。よくある事と言えばそれまでですが、個人的には良い感じはしませんね)
リオンの中ではこの裏切りを快く思ってはいない。
生き残る為の策と言えば聞こえは良いが、所詮は義理を捨て利を取る事。
それが武士としての在り方なのか。
だが、その苦悩をリオンは己の中へ封じ込める。
「戦場で迷いは、命取りになりますね」
リオンは頭を振って脳裏に浮かんだ想いを振り払った。
今、武徳を止めても遅い。
もう、戦いが始まってしまったのだから。
●
時間は、少々遡る。
武徳が配下に裏切りの意を伝えた直後。武徳の陣に馳せ参じた将にも動揺が走る。
「秋寿様を裏切るなど、馬鹿な……」
銀 真白(ka4128)は、体を震わせる。
武徳の謀反により戦局は大きく変わる。今の所、秋寿側が有利な戦況であるが金張山から本陣に向けて攻撃を仕掛ければ混乱は必至。一気に戦局は真美側へと傾く。
そしてそれは、秋寿側の者達の危機を意味している。
「敵方に知り合いでもいるのか?」
雇われの傭兵である鞍馬 真(ka5819)が、真白へ話し掛ける。
鞍馬の姿を目にした真白は、先程までの興奮を抑えるよう努めた。
元々表情は感情に出難い真白ではあるが、裏切りの事実はそれだけ衝撃的だった。
「友人がな。今も秋寿様の傍にいるはずだ」
「そうか……おそらく他の兵にも友や親類が敵陣にいるだろうな」
鞍馬の視界には多数の兵がいる。
聞けば、武徳と喜兵衛は古い間柄。腐れ縁と武徳は称していたが、初陣から共に戦った中だ。きっと今までも様々な出来事があったはずだ。
目指す先は同じであったはずなのに――何処で道を違えたのか。
「それで、どうする? 今から敵方の陣へ行くのか?」
鞍馬は、大太刀「鬼霧雨」の鯉口を切る。
もし、真白がここで敵陣へ行けば武徳の策が漏れて奇襲は失敗する。そうなれば武徳もただでは済まない。真白が敵陣へ行くのであれば、鞍馬は斬り掛かるつもりだ。
だが、真白の心は既に決まっている。
「そんな事、できるはずがあるまい。武徳様が主君である限り、命には従わなければならない」
真白も一人の武人だ。
主君の命であれば従わなければならない。
せめて、友人が無事にこの窮地を切り抜けて欲しい。
そして、できればこの戦場で友人と出会いたくない。
「安心しろ」
真白の苦悩を読み取ったのか、鞍馬は静かに声をかける。
戦前の喧噪に包まれる武徳の陣。張り詰めた緊張感の中、鞍馬は主戦場となる千石原へと目を向けた。
「万一の時は、雇われの私が代わりに役目を果たす。友を手にかけさせない」
●
「何奴!」
本田喜兵衛は、陣幕の向こう側に気配を感じ取った。
見張りの兵……否、それであればあまりにも気配が多すぎる。
長い戦働きが、喜兵衛の脳内で警鐘が鳴り響く。
「はっはっ。人の身で鬼となるなど、笑い話ですかね?」
黒耀 (ka5677)が数名の兵を背後に姿を現す。
手には魔導符剣「インストーラー」。
その状況だけで喜兵衛は、警戒を強める。
「……鬼、か? 何用だ」
「人の決意が鬼となるなら、真の鬼はいずこ?
ふふっ、まあ良いでしょう。その覚悟に免じて私も珍しく刀を取りましょう」
符術マジックカード【ぷろていん】を発動させた黒耀 。
周囲の兵の攻撃力を引き上げる。
「さあさ、一世一代の大勝負。御身を粉にして働かれよ」
黒耀 は、インストーラーの切っ先で喜兵衛を指し示す。
直後、兵達は一斉に敵兵へと斬り掛かる。
「敵に背後を取られるはずはない。ならば、謀反か。だが、背後に居たのは……まさかっ!?」
「水野様はこの詩天を憂いておられます。共に歩んだ縁を切ってでも、変える覚悟をされています」
悠里(ka6368)は、喜兵衛を見据えた。
死を恐れぬ将として知られ、敵陣を駆け抜けてきた武人。無敵とも言える強さを誇った喜兵衛であったが、予想外の裏切りで窮地に陥ろうとしていた。
「馬鹿な! 武徳が秋寿様を――拙者を裏切ったと申すか!」
「やれやれ。相変わらずの大声じゃな」
悠里の傍らから武徳が姿を現す。
咄嗟に黒耀 と悠里が武徳の前に出る。
喜兵衛が武徳へ襲い掛かる事を、危惧しての事だ。
だが、喜兵衛は武徳へ襲い掛かる事はせず、その場で体を震わせていた。
「何故、このような真似をする」
「秋寿殿がおっては、わしはいつまでもこのままじゃ。力が欲しくなったのよ」
「抜かせ。面倒を嫌うお主が権力? 拙者を見くびるな!」
喜兵衛の怒声が響き渡る。
その間にも周囲では兵達が斬り合いを続け、次々と喜兵衛の兵が倒れていく。
「詩天は変わらねばならん。いつまでも先代への想いだけで政をしてはならん」
「ならば、拙者らが皆で力を合わせれば良いではないか!」
「…………」
喜兵衛の問いに、武徳は沈黙で答える。
悠里には武徳の沈黙を意味が分かる気がする。
仮に臣下が力を合わせたとしても、秋寿は先代ではない。優しすぎる秋寿は、先代と同様に振る舞おうとする。そして、先代以上にその重圧で潰されていく。
おそらく臣下達は強権を振るって地盤を固めようとするだろう。
それが国人衆や周辺国、引いては幕府に仇為す行為であっても。事実、国人衆へ領地没収などを画策する動きも出始めている。
暴走する想いを止める為に、武徳は立ち上がったのかもしれない。
「もう良い。終わらせてやってくれ」
「武徳っ!」
武徳が踵を返すと同時に、喜兵衛は砕棒を手に走り出す。
しかし、その動きを察知したリオンが行く手を阻む。
「あら。まんまと欺かれたお馬鹿さんはまだお気付きでは無いようですね。ここがあなたの終点。お似合いの最後ですね」
「武徳の行く手を阻むばかりか、愚弄する気か」
武徳へ向かう前に邪魔をするリオンを蹴散らそうとする喜兵衛。
突き進む喜兵衛を、そのまま放置するリオンではない。
ブリザードで足止めを試みる。
「行かせると思いですか?」
喜兵衛を襲う冷気。吹き荒れる嵐が凍り付かせ、足を止める。
動かない足を無理矢理前に出し続ける喜兵衛。
「武徳……武徳、武徳っ! 待て! 貴様が……貴様がっ!」
武徳の名を叫びつつ、砕棒を振るう喜兵衛。
「あまり時間もありません。終わらせていただきます」
そこへリオンが追撃のウインドスラッシュを放つ。
鋭い風が喜兵衛の鎧を切り裂いていく。
引き裂かれる喜兵衛の体。
それでも、歩みは止まらない。
「嘘。あれだけ傷付いているのに、まだ……」
リオンの目に異様な光景が飛び込む。
既に鎧の隙間から多くの血を流しているにも関わらず、前へ進まんとする喜兵衛。
肉体は悲鳴を上げているものの、強い意志が体を突き動かす。
間もなく、砕棒がリオンへと迫る――。
「させませぬ。水野殿の義挙、達成させるが詩天の為」
重い砕棒の一撃を兵庫が十文字槍「人間無骨」で受け止める。
そのガラ空きとなった瞬間を、鞍馬は逃さない。
「眠れ」
ソウルエッジで強化された大太刀「鬼霧雨」を、下から切り上げる。
ウインドスラッシュで傷つけられていた鎧から、溢れ出す血液。
強烈な一撃は、強靱な喜兵衛を跪かせる。
砕棒を取り落とした喜兵衛。
「馬鹿な……武徳が拙者を……」
「せめて武人として死なせてやるのが、わしのできる精一杯じゃ」
既に喜兵衛は瀕死の重傷。
だが、ここは戦場。
大将首は、獲るが慣わしだ。
「御免っ!」
兵庫の十文字槍が喜兵衛の首を捉える。
刎ねられた首は、勢い余って地面を転がる。
武徳を前にした喜兵衛であったが、その瞳には最早光は失われていた。
「安心せい。お主の想いも罪もわしが背負ってやる。先にあの世で待っておれ」
●
「本田喜兵衛殿、ご謀反!」
この一報が本庄友埜及び三条秋寿の陣へもたらされる頃には、千石原も混乱していた。
一時は秋寿優勢と思われていた戦いであったが、この混乱で形勢は一気に逆転する。
「本田喜兵衛殿、謀反でござるぞ!」
喜兵衛の旗印である『三つ扇』の家紋を掲げ、兵庫率いる『榊党』本隊は敵陣へ突入。
周囲の敵を次々と葬り去っていく。勇猛果敢に斬り掛かる様は、名将に恥じない働きだ。しかし、その働きが時に危うい状況を生み出す。
「むっ! その槍捌き、もしや『槍の兵庫』か!」
兵庫の十字槍が敵将の護衛を屠った瞬間、将が何かに気付いたようだ。
国人衆でありながら、その武勇は詩天でも指折りとされる兵庫の槍捌き。その見事過ぎる槍捌きが、この策に綻びを生じさせようとしている。
「何故、榊党が本田殿の旗印を持つのだ? まさか、この謀反は……」
そう言い掛けた瞬間、敵将の顔面を十字槍が突き刺さる。
「……些か、我が槍も名が売れすぎたか。気付かなければ、見逃す事も出来たであろうが……水野殿の義挙を見事達成する為にも、ここで葬らせていただく」
武徳の策を成功させる為には、あくまでも謀反は『本田喜兵衛が引き起こしたもの』でなければならない。その為には、榊党の名は伏せて広範囲に暴れてみせる必要がある。
しかし、見事過ぎる槍捌きが策にヒビを入れるのであれば――。
「狙うは本庄友埜、三条秋寿の首っ! 我と思わん者はついて参れ!」
兵庫は敵陣深く攻めかかる。混乱に乗じて敵大将の首を狙いに動く。
●
「はっ!」
真白は、戦の流れに身を任せて本庄友埜の陣で戦い続けていた。
仮に三条秋寿の陣へ足を踏み入れられたとしても、下知が無ければ本庄の陣から動かないだろう。
秋寿の陣へ行けば、友がいるかもしれない。
友と出会えば、戦いは避けて通れなくなる。
「本田喜兵衛殿に義あり! 臆するものは去れっ!」
試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵を突き刺す真白。
幾人もの兵士を倒しているが、未だに終わりは見えない。
「終われぬ。このような場所で……終わる訳にはいかない」
疲労困憊となった体を引き起こし、真白は戦い続ける。
武人としての覚悟があり、戦場で死を恐れる事は無い。
討ち死にしたとしても、それは誉れ。主の為に働き、倒れるのだから。
だが、それは裏切りの末に倒れる事は許されない。
ここで死んでも、残るは汚名だけ。
その考えが、真白を戦いへと駆り出す。
何故、このような事になったのか。
主の考えが解らぬ。
何故、秋寿様ではダメなのか。
何故――。
「真白様っ!」
ゴースロンに騎乗した悠里が、真白の元へ駆けつける。
戦いの余り、単身敵陣へ進み過ぎていた為だ。
「お一人で進むのは危険です。お味方の元へお戻り下さい」
「そうか……悠里殿、教えてくれ。
何故、こうなってしまったのか。どうして裏切らなければならなかったのか」
真白は、悠里に問いかけた。
正直、この問いをぶつけられるなら誰でも良かった。
納得できる答えが返ってくるとも思っていない。
真白が抱く苦悩の片鱗を、誰かに聞いて欲しかったのだ。
「僕にも分かりません。
ですが、これだけは分かります。
水野様も戦友まで捨てられ、苦しんだ末に選ばれた選択です」
悠里の答え。
それが、今出せる精一杯のものだ。
悠里にも武徳の考えがすべて分かった訳ではない。
ただ、先の喜兵衛とのやり取りから悠里は確信していた。
簡単に選ばれた答えじゃない。
傷付き、苦しみの果てに罪を背負う事を、武徳は選んだ。
少なくとも悠里は、そう考えていた。
「……そうか」
真白は、静かにそう呟いた。
●
「惑うならこちらへ参りなさい。真なる鬼が、冥府へ誘いましょう」
魔導バイクで敵陣の突き進む黒耀 。
背には『三つ扇』の旗印。敵陣は謀反により未だ混乱。
敵集団を発見した段階で風雷陣を打ち込み、敵兵士蹴散らしている。
「さすがは敵の主力。備えはしっかりしているようですが、混沌の中では充分に力を発揮できぬようですね。
おや、あれは……」
黒耀 の目に飛び込んで来たのは敵陣の中で戦う鞍馬とリオンの姿であった。
「陣が乱れている割に、連携しています。精鋭でしょうか」
「関係ない。一兵でも多く敵を倒す」
リオンがファイアーボールで兵士を蹴散らす背後で、鞍馬が鬼霧雨で敵を屠る。
混乱していても『三つ扇』の旗を付けている以上、本庄側から見えれば倒すべき敵は一目瞭然。大勢で取り囲もうとするのは当然であった。
「小賢しい真似をされますね」
黒耀 は魔導バイクを二人の元まで走らせ、救援へと向かう。
すれ違い様にインストーラーの一撃で兵士を弾き飛ばす。
「お二人とも、無理はいけません。一旦引きましょう」
「気遣いは感謝する。だが、私はこの戦場を見届ける。混沌に塗れはしているが、この戦場の光景を脳裏に焼き付ける」
鞍馬は黒耀 の救援を感謝しつつも、申し出を拒否する。
鞍馬は武勲を上げたい訳ではない。この千石原の戦いを記憶したいのだ。
大きく歴史が動くこの光景を感じ取る。敵味方問わず、倒れて逝く者達の想いを受け止める。
歴史書には描かれない部分を、鞍馬はその体に刻み込もうとしている。
「私も鞍馬さんを助けに来たのですが、このように申されまして。それで加勢していたのです」
「ほう、それは酔狂な。では、私も加勢します。存分にこの時間を楽しみましょう」
黒耀 は、レアカード【五光】を懐から取り出した。
●
「敵将、本庄友埜……捕らえたり」
兵庫の榊党が、敵将の捕縛に成功した。
本庄が捕縛された事で、千石原の一戦も趨勢は決した。最早、秋寿側の敗北は確定。既に撤退を始めた軍もあるようだ。
「うむ、上出来じゃ。皆の戦働きに感謝する。
だが、これで終わりではない。これが始まりじゃ。その事を忘れてはならん」
武徳は、己に言い聞かせるように言い放つ。
倒れていった者達の想いと己が背負った罪と共に、武徳は詩天と共に歩み始める。
水野 武徳(kz0196)は、静かに配下の者へ指示を出す。
今頃千石原の中央では、三条真美と三条秋寿の軍が衝突している頃。
本田喜兵衛の軍も間もなく中央へ移動する手筈なのだが、武徳はこの喜兵衛を襲撃しようとしている。
――それは、秋寿軍への裏切りに他ならない。
「水野殿。我ら榊党、今回の義挙にお味方致しますぞ」
武徳寄騎の国人衆『榊党』の頭首、榊 兵庫(ka0010)は、武徳の決断に従う事にした。
現在の詩天は戦国乱世に近い。生き残る為には裏切りも止む無し。
このまま三条家恩顧の武将が詩天を治めれば、国人衆に飛躍のチャンスない。大博打となるが、武徳の策へ乗る事を兵庫は選択したのだ。
「うむ。榊党頭首の槍働き、期待しておるぞ」
武徳は小声で囁く。
あまり大きな声を出せば、喜兵衛の兵に気付かれる。
できるだけ近づいて奇襲を仕掛けなければ、喜兵衛を短時間で仕留める事は難しくなる。
そんな最中、エルバッハ・リオン(ka2434)は誰にも聞こえないように呟く。
(裏切りですか。よくある事と言えばそれまでですが、個人的には良い感じはしませんね)
リオンの中ではこの裏切りを快く思ってはいない。
生き残る為の策と言えば聞こえは良いが、所詮は義理を捨て利を取る事。
それが武士としての在り方なのか。
だが、その苦悩をリオンは己の中へ封じ込める。
「戦場で迷いは、命取りになりますね」
リオンは頭を振って脳裏に浮かんだ想いを振り払った。
今、武徳を止めても遅い。
もう、戦いが始まってしまったのだから。
●
時間は、少々遡る。
武徳が配下に裏切りの意を伝えた直後。武徳の陣に馳せ参じた将にも動揺が走る。
「秋寿様を裏切るなど、馬鹿な……」
銀 真白(ka4128)は、体を震わせる。
武徳の謀反により戦局は大きく変わる。今の所、秋寿側が有利な戦況であるが金張山から本陣に向けて攻撃を仕掛ければ混乱は必至。一気に戦局は真美側へと傾く。
そしてそれは、秋寿側の者達の危機を意味している。
「敵方に知り合いでもいるのか?」
雇われの傭兵である鞍馬 真(ka5819)が、真白へ話し掛ける。
鞍馬の姿を目にした真白は、先程までの興奮を抑えるよう努めた。
元々表情は感情に出難い真白ではあるが、裏切りの事実はそれだけ衝撃的だった。
「友人がな。今も秋寿様の傍にいるはずだ」
「そうか……おそらく他の兵にも友や親類が敵陣にいるだろうな」
鞍馬の視界には多数の兵がいる。
聞けば、武徳と喜兵衛は古い間柄。腐れ縁と武徳は称していたが、初陣から共に戦った中だ。きっと今までも様々な出来事があったはずだ。
目指す先は同じであったはずなのに――何処で道を違えたのか。
「それで、どうする? 今から敵方の陣へ行くのか?」
鞍馬は、大太刀「鬼霧雨」の鯉口を切る。
もし、真白がここで敵陣へ行けば武徳の策が漏れて奇襲は失敗する。そうなれば武徳もただでは済まない。真白が敵陣へ行くのであれば、鞍馬は斬り掛かるつもりだ。
だが、真白の心は既に決まっている。
「そんな事、できるはずがあるまい。武徳様が主君である限り、命には従わなければならない」
真白も一人の武人だ。
主君の命であれば従わなければならない。
せめて、友人が無事にこの窮地を切り抜けて欲しい。
そして、できればこの戦場で友人と出会いたくない。
「安心しろ」
真白の苦悩を読み取ったのか、鞍馬は静かに声をかける。
戦前の喧噪に包まれる武徳の陣。張り詰めた緊張感の中、鞍馬は主戦場となる千石原へと目を向けた。
「万一の時は、雇われの私が代わりに役目を果たす。友を手にかけさせない」
●
「何奴!」
本田喜兵衛は、陣幕の向こう側に気配を感じ取った。
見張りの兵……否、それであればあまりにも気配が多すぎる。
長い戦働きが、喜兵衛の脳内で警鐘が鳴り響く。
「はっはっ。人の身で鬼となるなど、笑い話ですかね?」
黒耀 (ka5677)が数名の兵を背後に姿を現す。
手には魔導符剣「インストーラー」。
その状況だけで喜兵衛は、警戒を強める。
「……鬼、か? 何用だ」
「人の決意が鬼となるなら、真の鬼はいずこ?
ふふっ、まあ良いでしょう。その覚悟に免じて私も珍しく刀を取りましょう」
符術マジックカード【ぷろていん】を発動させた黒耀 。
周囲の兵の攻撃力を引き上げる。
「さあさ、一世一代の大勝負。御身を粉にして働かれよ」
黒耀 は、インストーラーの切っ先で喜兵衛を指し示す。
直後、兵達は一斉に敵兵へと斬り掛かる。
「敵に背後を取られるはずはない。ならば、謀反か。だが、背後に居たのは……まさかっ!?」
「水野様はこの詩天を憂いておられます。共に歩んだ縁を切ってでも、変える覚悟をされています」
悠里(ka6368)は、喜兵衛を見据えた。
死を恐れぬ将として知られ、敵陣を駆け抜けてきた武人。無敵とも言える強さを誇った喜兵衛であったが、予想外の裏切りで窮地に陥ろうとしていた。
「馬鹿な! 武徳が秋寿様を――拙者を裏切ったと申すか!」
「やれやれ。相変わらずの大声じゃな」
悠里の傍らから武徳が姿を現す。
咄嗟に黒耀 と悠里が武徳の前に出る。
喜兵衛が武徳へ襲い掛かる事を、危惧しての事だ。
だが、喜兵衛は武徳へ襲い掛かる事はせず、その場で体を震わせていた。
「何故、このような真似をする」
「秋寿殿がおっては、わしはいつまでもこのままじゃ。力が欲しくなったのよ」
「抜かせ。面倒を嫌うお主が権力? 拙者を見くびるな!」
喜兵衛の怒声が響き渡る。
その間にも周囲では兵達が斬り合いを続け、次々と喜兵衛の兵が倒れていく。
「詩天は変わらねばならん。いつまでも先代への想いだけで政をしてはならん」
「ならば、拙者らが皆で力を合わせれば良いではないか!」
「…………」
喜兵衛の問いに、武徳は沈黙で答える。
悠里には武徳の沈黙を意味が分かる気がする。
仮に臣下が力を合わせたとしても、秋寿は先代ではない。優しすぎる秋寿は、先代と同様に振る舞おうとする。そして、先代以上にその重圧で潰されていく。
おそらく臣下達は強権を振るって地盤を固めようとするだろう。
それが国人衆や周辺国、引いては幕府に仇為す行為であっても。事実、国人衆へ領地没収などを画策する動きも出始めている。
暴走する想いを止める為に、武徳は立ち上がったのかもしれない。
「もう良い。終わらせてやってくれ」
「武徳っ!」
武徳が踵を返すと同時に、喜兵衛は砕棒を手に走り出す。
しかし、その動きを察知したリオンが行く手を阻む。
「あら。まんまと欺かれたお馬鹿さんはまだお気付きでは無いようですね。ここがあなたの終点。お似合いの最後ですね」
「武徳の行く手を阻むばかりか、愚弄する気か」
武徳へ向かう前に邪魔をするリオンを蹴散らそうとする喜兵衛。
突き進む喜兵衛を、そのまま放置するリオンではない。
ブリザードで足止めを試みる。
「行かせると思いですか?」
喜兵衛を襲う冷気。吹き荒れる嵐が凍り付かせ、足を止める。
動かない足を無理矢理前に出し続ける喜兵衛。
「武徳……武徳、武徳っ! 待て! 貴様が……貴様がっ!」
武徳の名を叫びつつ、砕棒を振るう喜兵衛。
「あまり時間もありません。終わらせていただきます」
そこへリオンが追撃のウインドスラッシュを放つ。
鋭い風が喜兵衛の鎧を切り裂いていく。
引き裂かれる喜兵衛の体。
それでも、歩みは止まらない。
「嘘。あれだけ傷付いているのに、まだ……」
リオンの目に異様な光景が飛び込む。
既に鎧の隙間から多くの血を流しているにも関わらず、前へ進まんとする喜兵衛。
肉体は悲鳴を上げているものの、強い意志が体を突き動かす。
間もなく、砕棒がリオンへと迫る――。
「させませぬ。水野殿の義挙、達成させるが詩天の為」
重い砕棒の一撃を兵庫が十文字槍「人間無骨」で受け止める。
そのガラ空きとなった瞬間を、鞍馬は逃さない。
「眠れ」
ソウルエッジで強化された大太刀「鬼霧雨」を、下から切り上げる。
ウインドスラッシュで傷つけられていた鎧から、溢れ出す血液。
強烈な一撃は、強靱な喜兵衛を跪かせる。
砕棒を取り落とした喜兵衛。
「馬鹿な……武徳が拙者を……」
「せめて武人として死なせてやるのが、わしのできる精一杯じゃ」
既に喜兵衛は瀕死の重傷。
だが、ここは戦場。
大将首は、獲るが慣わしだ。
「御免っ!」
兵庫の十文字槍が喜兵衛の首を捉える。
刎ねられた首は、勢い余って地面を転がる。
武徳を前にした喜兵衛であったが、その瞳には最早光は失われていた。
「安心せい。お主の想いも罪もわしが背負ってやる。先にあの世で待っておれ」
●
「本田喜兵衛殿、ご謀反!」
この一報が本庄友埜及び三条秋寿の陣へもたらされる頃には、千石原も混乱していた。
一時は秋寿優勢と思われていた戦いであったが、この混乱で形勢は一気に逆転する。
「本田喜兵衛殿、謀反でござるぞ!」
喜兵衛の旗印である『三つ扇』の家紋を掲げ、兵庫率いる『榊党』本隊は敵陣へ突入。
周囲の敵を次々と葬り去っていく。勇猛果敢に斬り掛かる様は、名将に恥じない働きだ。しかし、その働きが時に危うい状況を生み出す。
「むっ! その槍捌き、もしや『槍の兵庫』か!」
兵庫の十字槍が敵将の護衛を屠った瞬間、将が何かに気付いたようだ。
国人衆でありながら、その武勇は詩天でも指折りとされる兵庫の槍捌き。その見事過ぎる槍捌きが、この策に綻びを生じさせようとしている。
「何故、榊党が本田殿の旗印を持つのだ? まさか、この謀反は……」
そう言い掛けた瞬間、敵将の顔面を十字槍が突き刺さる。
「……些か、我が槍も名が売れすぎたか。気付かなければ、見逃す事も出来たであろうが……水野殿の義挙を見事達成する為にも、ここで葬らせていただく」
武徳の策を成功させる為には、あくまでも謀反は『本田喜兵衛が引き起こしたもの』でなければならない。その為には、榊党の名は伏せて広範囲に暴れてみせる必要がある。
しかし、見事過ぎる槍捌きが策にヒビを入れるのであれば――。
「狙うは本庄友埜、三条秋寿の首っ! 我と思わん者はついて参れ!」
兵庫は敵陣深く攻めかかる。混乱に乗じて敵大将の首を狙いに動く。
●
「はっ!」
真白は、戦の流れに身を任せて本庄友埜の陣で戦い続けていた。
仮に三条秋寿の陣へ足を踏み入れられたとしても、下知が無ければ本庄の陣から動かないだろう。
秋寿の陣へ行けば、友がいるかもしれない。
友と出会えば、戦いは避けて通れなくなる。
「本田喜兵衛殿に義あり! 臆するものは去れっ!」
試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵を突き刺す真白。
幾人もの兵士を倒しているが、未だに終わりは見えない。
「終われぬ。このような場所で……終わる訳にはいかない」
疲労困憊となった体を引き起こし、真白は戦い続ける。
武人としての覚悟があり、戦場で死を恐れる事は無い。
討ち死にしたとしても、それは誉れ。主の為に働き、倒れるのだから。
だが、それは裏切りの末に倒れる事は許されない。
ここで死んでも、残るは汚名だけ。
その考えが、真白を戦いへと駆り出す。
何故、このような事になったのか。
主の考えが解らぬ。
何故、秋寿様ではダメなのか。
何故――。
「真白様っ!」
ゴースロンに騎乗した悠里が、真白の元へ駆けつける。
戦いの余り、単身敵陣へ進み過ぎていた為だ。
「お一人で進むのは危険です。お味方の元へお戻り下さい」
「そうか……悠里殿、教えてくれ。
何故、こうなってしまったのか。どうして裏切らなければならなかったのか」
真白は、悠里に問いかけた。
正直、この問いをぶつけられるなら誰でも良かった。
納得できる答えが返ってくるとも思っていない。
真白が抱く苦悩の片鱗を、誰かに聞いて欲しかったのだ。
「僕にも分かりません。
ですが、これだけは分かります。
水野様も戦友まで捨てられ、苦しんだ末に選ばれた選択です」
悠里の答え。
それが、今出せる精一杯のものだ。
悠里にも武徳の考えがすべて分かった訳ではない。
ただ、先の喜兵衛とのやり取りから悠里は確信していた。
簡単に選ばれた答えじゃない。
傷付き、苦しみの果てに罪を背負う事を、武徳は選んだ。
少なくとも悠里は、そう考えていた。
「……そうか」
真白は、静かにそう呟いた。
●
「惑うならこちらへ参りなさい。真なる鬼が、冥府へ誘いましょう」
魔導バイクで敵陣の突き進む黒耀 。
背には『三つ扇』の旗印。敵陣は謀反により未だ混乱。
敵集団を発見した段階で風雷陣を打ち込み、敵兵士蹴散らしている。
「さすがは敵の主力。備えはしっかりしているようですが、混沌の中では充分に力を発揮できぬようですね。
おや、あれは……」
黒耀 の目に飛び込んで来たのは敵陣の中で戦う鞍馬とリオンの姿であった。
「陣が乱れている割に、連携しています。精鋭でしょうか」
「関係ない。一兵でも多く敵を倒す」
リオンがファイアーボールで兵士を蹴散らす背後で、鞍馬が鬼霧雨で敵を屠る。
混乱していても『三つ扇』の旗を付けている以上、本庄側から見えれば倒すべき敵は一目瞭然。大勢で取り囲もうとするのは当然であった。
「小賢しい真似をされますね」
黒耀 は魔導バイクを二人の元まで走らせ、救援へと向かう。
すれ違い様にインストーラーの一撃で兵士を弾き飛ばす。
「お二人とも、無理はいけません。一旦引きましょう」
「気遣いは感謝する。だが、私はこの戦場を見届ける。混沌に塗れはしているが、この戦場の光景を脳裏に焼き付ける」
鞍馬は黒耀 の救援を感謝しつつも、申し出を拒否する。
鞍馬は武勲を上げたい訳ではない。この千石原の戦いを記憶したいのだ。
大きく歴史が動くこの光景を感じ取る。敵味方問わず、倒れて逝く者達の想いを受け止める。
歴史書には描かれない部分を、鞍馬はその体に刻み込もうとしている。
「私も鞍馬さんを助けに来たのですが、このように申されまして。それで加勢していたのです」
「ほう、それは酔狂な。では、私も加勢します。存分にこの時間を楽しみましょう」
黒耀 は、レアカード【五光】を懐から取り出した。
●
「敵将、本庄友埜……捕らえたり」
兵庫の榊党が、敵将の捕縛に成功した。
本庄が捕縛された事で、千石原の一戦も趨勢は決した。最早、秋寿側の敗北は確定。既に撤退を始めた軍もあるようだ。
「うむ、上出来じゃ。皆の戦働きに感謝する。
だが、これで終わりではない。これが始まりじゃ。その事を忘れてはならん」
武徳は、己に言い聞かせるように言い放つ。
倒れていった者達の想いと己が背負った罪と共に、武徳は詩天と共に歩み始める。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/02 00:54:34 |
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質問卓 悠里(ka6368) 人間(リアルブルー)|15才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/10/29 22:37:02 |
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相談卓 悠里(ka6368) 人間(リアルブルー)|15才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/11/02 01:04:59 |