ゲスト
(ka0000)
大江家の鬼の子、かぼちゃパニック
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/08 09:00
- 完成日
- 2016/11/14 07:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●おつかい
「分かったよ! あっ、わかりました! あの畑に行って残っているかぼちゃを採って帰ってくればいいんだね……いいんですね」
テユカは元気よく言う。
「はい、そうです。畑の位置は知っていますね?」
大江家の家令は心配しつつも顔に出さず、テユカの頭に帽子を載せつつ淡々としゃべる。テユカの角は毛糸の帽子で隠れた。
「うん。何度も行ったもの……です」
テユカは大江家にやってきて半年と少し。鬼の里にいるより外を知るきっかけに良いと他の鬼と一緒に雇われたのがテユカ。あとは大人なため仕事しかしていないが、テユカはまだ子供なため、学問好きの大江家がきちんと勉強を教える方針だった。
おかげでテユカもみっちりと勉強させられているが、遊びたいし、家の仕事の手伝いにとあれこれ忙しい日々。嫌いな勉強だが、一緒に来た大人たちに「読み書き重要」と言われ、しぶしぶ勉強に励む。
勉強きらいとはいえ、大江家で過ごす日々は楽しい。
「では、気を付けて行ってくるんですよ」
「はーい」
見送る家令は内心を表情に出した。
「紅葉様や若葉様の時のように誰かつけさせるのも過保護すぎますね……時代が変わりましたし」
紅葉や今は亡き大江家次女若葉がテユカくらいのころは、妖怪との戦いが続くときだった。町の様子も変わる。
「……テユカが行く場所も我々も何度も行っていますしねぇ……帽子もかぶっていれば鬼だって分からないでしょうし。……おや、芝太郎と芝次郎がついていっている? 見回りですか?」
紅葉があちこちで拾ってきたペットが家を抜け出してテユカについていっている。
●畑
大江家の隠れ畑にテユカは到着した。
竹藪の向こうに耕作できそうな土地を紅葉が見つけたのが始まりだった。隠れ畑と言っているが、すでに通り道ができているため出入りがあるのは知られている。
「あれ、シバたちとトラさんたち」
テユカはついてくる影に気づいた。
柴犬の芝太郎と芝次郎、少し離れたところに虎猫の寅吉、寅美、一虎、虎左衛門、虎子、寅江がいる。
「みんなはお散歩?」
「わん」
テユカは芝次郎を撫でる。
「さあ、あたしはお仕事だよ!」
夏の間、雑草むしりに来たことはある。かぼちゃもすでに収穫も済み、隅っこにいくつか転がっているだけだ。
テユカは背負い籠を置いて、作業を開始する。
「かぼちゃ、美味しいといいなぁ。紅葉様がかぼちゃ料理一覧を作っていたっけ」
楽しみだなぁとかぼちゃを籠に入れる。半分くらい作業をして違和感を覚えた。
「トラさんたち、どうしたの?」
かぼちゃに向かって威嚇をしているのだ。か細い子猫の鳴き声も聞こえる。
「ね、あれ? シバたちも?」
柴犬たちは別の方を見て威嚇をしている。
「……え? え?」
テユカはひとまず籠を背負う。
ゆらりとかぼちゃが浮かんだのはこの直後だ。
「ええええっ! 妖怪、妖怪だよぉおおおお。トラさんたち逃げないと!」
1匹捕まえてとりあえず籠に放り込む。怒りより悲鳴のような鳴き声に変わる。
その先に子猫が2匹おり、助けを求めているように見える。
「わわわっ」
柴犬の方には得体の知れない生き物が現れる。虎や狐のような生き物であり、蛇のような胴体の形をした物。
「わわああああっ、大変だよ、大変だよ! どうしよー。誰か、人を呼んできて!」
この子たちを置いて逃げてはいけないとテユカは思う。しかし、猫や犬が呼びに行ってもわかる者だろうか。
「わあああああああ、どうしようぉぉ」
テユカの悲鳴が街道まで飛んでいった。
さて、通りすがりのハンターの耳には届いたのだろうか?
「分かったよ! あっ、わかりました! あの畑に行って残っているかぼちゃを採って帰ってくればいいんだね……いいんですね」
テユカは元気よく言う。
「はい、そうです。畑の位置は知っていますね?」
大江家の家令は心配しつつも顔に出さず、テユカの頭に帽子を載せつつ淡々としゃべる。テユカの角は毛糸の帽子で隠れた。
「うん。何度も行ったもの……です」
テユカは大江家にやってきて半年と少し。鬼の里にいるより外を知るきっかけに良いと他の鬼と一緒に雇われたのがテユカ。あとは大人なため仕事しかしていないが、テユカはまだ子供なため、学問好きの大江家がきちんと勉強を教える方針だった。
おかげでテユカもみっちりと勉強させられているが、遊びたいし、家の仕事の手伝いにとあれこれ忙しい日々。嫌いな勉強だが、一緒に来た大人たちに「読み書き重要」と言われ、しぶしぶ勉強に励む。
勉強きらいとはいえ、大江家で過ごす日々は楽しい。
「では、気を付けて行ってくるんですよ」
「はーい」
見送る家令は内心を表情に出した。
「紅葉様や若葉様の時のように誰かつけさせるのも過保護すぎますね……時代が変わりましたし」
紅葉や今は亡き大江家次女若葉がテユカくらいのころは、妖怪との戦いが続くときだった。町の様子も変わる。
「……テユカが行く場所も我々も何度も行っていますしねぇ……帽子もかぶっていれば鬼だって分からないでしょうし。……おや、芝太郎と芝次郎がついていっている? 見回りですか?」
紅葉があちこちで拾ってきたペットが家を抜け出してテユカについていっている。
●畑
大江家の隠れ畑にテユカは到着した。
竹藪の向こうに耕作できそうな土地を紅葉が見つけたのが始まりだった。隠れ畑と言っているが、すでに通り道ができているため出入りがあるのは知られている。
「あれ、シバたちとトラさんたち」
テユカはついてくる影に気づいた。
柴犬の芝太郎と芝次郎、少し離れたところに虎猫の寅吉、寅美、一虎、虎左衛門、虎子、寅江がいる。
「みんなはお散歩?」
「わん」
テユカは芝次郎を撫でる。
「さあ、あたしはお仕事だよ!」
夏の間、雑草むしりに来たことはある。かぼちゃもすでに収穫も済み、隅っこにいくつか転がっているだけだ。
テユカは背負い籠を置いて、作業を開始する。
「かぼちゃ、美味しいといいなぁ。紅葉様がかぼちゃ料理一覧を作っていたっけ」
楽しみだなぁとかぼちゃを籠に入れる。半分くらい作業をして違和感を覚えた。
「トラさんたち、どうしたの?」
かぼちゃに向かって威嚇をしているのだ。か細い子猫の鳴き声も聞こえる。
「ね、あれ? シバたちも?」
柴犬たちは別の方を見て威嚇をしている。
「……え? え?」
テユカはひとまず籠を背負う。
ゆらりとかぼちゃが浮かんだのはこの直後だ。
「ええええっ! 妖怪、妖怪だよぉおおおお。トラさんたち逃げないと!」
1匹捕まえてとりあえず籠に放り込む。怒りより悲鳴のような鳴き声に変わる。
その先に子猫が2匹おり、助けを求めているように見える。
「わわわっ」
柴犬の方には得体の知れない生き物が現れる。虎や狐のような生き物であり、蛇のような胴体の形をした物。
「わわああああっ、大変だよ、大変だよ! どうしよー。誰か、人を呼んできて!」
この子たちを置いて逃げてはいけないとテユカは思う。しかし、猫や犬が呼びに行ってもわかる者だろうか。
「わあああああああ、どうしようぉぉ」
テユカの悲鳴が街道まで飛んでいった。
さて、通りすがりのハンターの耳には届いたのだろうか?
リプレイ本文
●竹藪の向こう
悲鳴が聞こえた瞬間、雪継・白亜(ka5403)は双眼鏡でその方向を見る。竹やぶの一か所に人が通るような道がある。
「あの奥か?」
周囲に偶然居合わせたハンターたちは互いを認めると人命救助のために動き始める。
「街道のそばで襲われるとは運が悪いですね……いえ、それはさておき、まずは状況把握と敵がいれば排除です」
静かにつぶやくとエルバッハ・リオン(ka2434)は走り出す。
「正規の依頼じゃないのだし無視したっていいのに……私、何やっているのかしらね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)はため息交じりにつぶやきながらも、素早く向かう。けだるげであったが決心した後は優美さを身に着けた素早い行動であった。
「抜き差しならぬ状況……ということか。ひとまず事態の収拾を」
ロニ・カルディス(ka0551)は竹藪の道をすり抜けつつ前を見る。その先は開けており、畑のようだ。
「鬼の子どもと、わんことにゃんこが大ピンチだな。必ず全員助け出すぞ」
ゼルド(ka6476)はきゅと唇を結び、マテリアルを活性させていく。
「うわ、本当だ! 危ないよ! 僕はにゃんこの保護に行くのだ! 全力でいくよ!」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)はさわやかな笑顔とともに、マテリアルを解放しつつ一気に走る。
●にゃん逃げる
ハンターが現場を目にできたとき、雑魔たちが動いた。ハンターは祈りつつ、子猫のか弱い悲鳴に怒りがわく。
「早く助けます」
エルバッハのマテリアルが大きく膨れるように広がり、収縮する。一度に2つの魔法を紡ぎあげ、解き放った。ジャック・オー・ランタンに向けた放ち、一つ目のウィンドスラッシュは避けられたが二つ目に使ったファイアアローは命中する。それはかぼちゃに住み着いた雑魔をつぶすだけの力があった。
「一番奥の犬が大変ね」
アルスレーテは跳ぶように移動し、鋭い攻撃を繰り出す。柴犬に向かう雑魔の目をそらす役割だ。それは成功し、雑魔の虎顔が可愛らしい表情ままアルスレーテに向いた。
無言だが怒っているのは感じ取れた。
「こんなところに敵がいるとは。助けに来たぞ」
白亜は救援者が銃撃の音に驚いて危険にさらされることを危惧していた。そのため、テユカのそばまで来て、声を掛けてから引き金を引く。ジャック・オー・ランタンに足止めを使ったのだが、虎猫たちが散り散りに逃げていく。威嚇も腰が引けていたし、襲われていたから限界は来ていたのだ。
子猫たちは動けない。柴犬たちはびくびくしながらもそこにとどまる。
「後で探さなば」
「大丈夫だよ、トラたち賢いからおうちに帰ったかも」
テユカは助けが来たことに安堵して言った。
祖霊の力を存分に引き出し、マテリアルをまとってネフィリアは前に出る。
「僕はこにゃんこ保護に向かうのだ! そこのかぼちゃ、どくのだ。どかないと吹っ飛ばすのだ!」
ジャック・オー・ランタンはどくことはなく、ゆらりゆらりと牙をむく相手を探しているようだ。
ネフィリアはマテリアルと砂で紡いだこん棒を素早く、思いっきり叩き込んだ。粉々になり、それは塵と化した。
ロニは仲間の後を慎重な足どりで進む。
「農作物に気をつけ……ることもなさそうだな」
ロニは畑であっても普通に踏んで問題ないと知った。かぼちゃは雑魔か隅っこで収穫を待っているのみ。全力で進み、敵の目から柴犬たちを守るように杖を構えて立った。
「助けに来たぞ。君は……落ち着いてきたみたいだね。近くのわんこを呼んで逃げろ。バケモノは俺たちが倒すから」
ゼルドの言葉にテユカはうなずく。
テユカは柴犬たちの名前を呼んだ。柴犬たちはおろおろしつつも、テユカの方に向かって行く。
ゼルドからすると犬たちはテユカを守るのが仕事と思っているようだった。
ゼルドはテユカたちをかばいつつ、近くの狐顔でツチノコのような姿の雑魔に攻撃を仕掛けたのだった。
●続く戦闘
エルバッハは首をかしげる。【ダブルキャスト】とともに魔法を紡ぐのだが、再び一回目が回避された。
「たまたまなんでしょうね」
魔法は発動しているし、命中のために必要な距離も集中力も問題ない。ジャック・オー・ランタンは倒せているため、よけるか否かの確率論のような手ごたえ。
「次はどう使うか……戦況によりますね」
周囲を見渡した。
アルスレーテは手にしていた投擲武器を捨て鉄扇を持った。両手に鉄扇を持つとふわりと構えてから舞うように攻撃を仕掛ける。武闘と舞踏は戦いと踊りで遠くあり、体をうまく使うということで近いと言える。そのために試行錯誤中の戦い方。
「かっこつけたかっただけよ!」
敵によけられたため、恥ずかしくなって怒ってみた。
白亜はリロードをして、足止めか威嚇すべきか考える。敵が意識しているのはハンターであり、動けない子猫やテユカたちではないようだ。それならば、とジャック・オー・ランタンに向かって通常攻撃をする。
「早く、虎猫たちを見つけてあげないとな」
虎猫たちが賢いとはいえ、怯えて逃げているため気の毒である。
白亜の銃弾はぎりぎり当たり、かぼちゃ頭を粉砕したのだった。
「こにゃんこ、ああ、怪我している! 行くよー」
ネフィリアの攻撃により一層力がこもる。怒りに流されても攻撃はダメだがうまく使えば大きな力になる。
ジャック・オー・ランタンは反応できずに倒される。
ここの時点でジャック・オー・ランタンは消えていなくなったが、用心と確認のためネフィリアは子猫の下に急いだ。
ロニは目の前の虎のようなツチノコを見て、祈りとともにマテリアルを杖に込める。
「相も変わらずよくわからない生き物だが、獣であれば悪さをしないようにしつけねばな!」
光を帯びる杖は雑魔に叩き込まれる。しかし、雑魔はぴょいと避けた。見かけによらずすばしっこいのか、よけつつ雑魔は敵を確認するようにハンターを見ているようだった。
ゼルドは目の前の狐顔のツチノコ雑魔にマテリアルを紡ぎあげて攻撃を仕掛ける。敵の目を向け離れようとするテユカと柴犬を隠すように。
「お前の相手は俺だ! 行くぞ」
狐のような雑魔は「ケケケ」と笑いながらよけたのだった。雑魔の目にゼルド自身が写っているようであるため、思惑通りではある。一層気を引き締める。
ぴょいと飛んだ虎のようなツチノコのような雑魔は、ガッと大きく口を開き、炎を吐き出した。近にいるロニとアルスレーテは構えたが、よけることもなかった。全く当たらない。
狐のようなツチノコのような雑魔は避けた直後にとびかかるようにゼルドに向かう。
「遅い」
避けた何も起こらなかった。
●決着
続いて雑魔たちが行動をした。
虎のような雑魔は再び炎を吐く。アルスレーテは避け、ロニはとっさに【ホーリーヴェール】を使用する。
「火吐くのって、厄介よね。ケガしたら治してあげるから」
「期待しているが、問題ない」
アルスレーテとロニは前の敵に攻撃に移る。
「でも、その前に倒してしまえばいいのよね。舞うように叩く!」
アルスレーテのなめらかな足さばきと、マテリアルとともに起こる旋風が雑魔を釘付けとした。
「こにゃんこはそこで待っているんだよ! 片づけるんだから」
勢いよく近づいたネフィリアのこぶしは勢いよく飛び出し、雑魔をたたく。ロケットパンチは元に戻る。
「しつけと言うのは行動の直後にするべきとは言ったものだ」
ロニの杖が虎の鼻先に振り下ろされ、それは命中する。
雑魔は霧散し、消えた。
「しつけと言うより、討伐よね」
「雑魔だからな、消えてなくなる」
「こにゃんこの怪我見ないと」
戦場の状況を確認し、それぞれの行動に移る。
狐の雑魔は再びゼルドにつっこむが、あらぬ方向に転げて行った。そこにジャック・オー・ランタン対応を行っていた援護射撃組が攻撃を叩き込む。
「まだ使えますから一気に行きますね」
エルバッハが【ダブルキャスト】に載せて2つの魔法を使う。
「早く倒してしまえばいいんだ」
白亜の銃弾も吸い込まれるように当たる。
「これで終わりだ!」
ゼルドの攻撃が鋭く決まる。怒涛のような攻撃になすすべもなく雑魔は霧散したのだった。
「やれやれですね」
エルバッハはほっと息を吐き、柴犬の首にしっかりしがみついているテユカを見つけ微笑む。柴犬たちは逃げるのかやる気なのか前足が宙に浮いている状態だった。
「ふむ……もう何もいないな」
白亜は用心して周囲を見ておく。
「これで終わり……他の子たちは大丈夫か?」
ゼルドはテユカと柴犬たちを見て安堵したが、虎猫たちがいないことに渋い顔になった。
「こにゃんこの怪我ひどいよ!」
ネフィリアの声を聞いて、アルスレーテが動いた。
「そうね、大丈夫よ」
アルスレーテは子猫に話しかけるように手のひらに受け取る。小さくても生きようとして抗うのを感じた。
「よく頑張ったわね」
アルスレーテのマテリアルが子猫のマテリアルに働きかける。少しずつ傷はふさがり、子猫の息もはっきりしてきた。
「ああ、良かった」
ネフィリアがぱっと表情を明るくした。アルスレーテからその子猫を受け取り、もう一匹に怪我がないかを確認する。こちらは何もなかった。
「お姉さん、お兄さん……ありがとう、ございました」
テユカが籠を背負ったままお辞儀をした。籠の中から入っていたモノが転がってくる。
「にゃー」
テユカがとっさに投げ込んだ虎猫が落ちてきた。
ハンターにも自然と笑みがこぼれる。
「それより、注意して銃は使ったのだが、ペットたちがいなくなってしまったようだ」
白亜はテユカに謝る。
「気にしなくていいよ? トラたちは頭いいし」
「しかし、怯えたら当分隠れていることもありうる。だから、探す」
白亜は言う。
「そうだね、今のうちに確認しておけば、怪我しているのも対応できるし。あ、みんなは怪我してないの? 治す必要あったら言って」
アルスレーテは持ち替えの時に落とした武器を拾ってしまう。
攻撃を受けたこともあったが問題なかった。
「ところで、あなたはここで何をしていたんですか?」
エルバッハが質問を投げかけた。問い忘れていたが街道沿いの竹藪にいることは不自然と言えば不自然。大江家といえば天ノ都に居を構えている。
どうしてだろうという視線がテユカに集まる。
「えとね、ここは大江家の隠れ畑で、かぼちゃ少しあるから回収しに来たの。そうしたら、妖怪が出てきたんだ」
テユカが説明をした。
「もう、隠れ畑じゃないな」
ゼルドは落ちていた毛糸の帽子をテユカに渡しながら笑う。
「ああっ!」
テユカはおろおろしている。
「そんなに困らせるつもりはなかったんだが。入口がしっかりあったからばれるのは時間の問題だったとは思うが」
ゼルドはテユカをなだめる。彼の言ったことに他のハンターもうなずく。どうせばれるか、すでにばれていて様子を見られていただけかもしれない。
「それでは虎猫捜索中、私はかぼちゃの収穫を手伝っていますね」
「私も待ってるね。妖怪もいないと思うけど、用心もかねて」
エルバッハとアルスレーテが告げる。
「あ、この子猫どうしよう?」
ネフィリアはテユカに尋ねる。
「分からないよ? あ、虎子が舐めてるね……」
虎猫が二匹の世話を始めたようだ。
「なら、虎猫たちを探すついでに親がいないか見てくればいいわけだな」
ロニの宣言に捜索隊はうなずいた。
「そうだ、確認だ、虎猫たちは何匹だ? 名前は分かるか?」
「全部で五匹。寅吉、寅美、一虎、虎左衛門と寅江だよ」
「特徴はあるのか……?」
「えと、首輪の色や形が違うよ。でもね、紅葉様が『トラや』って言っても来るから」
白亜は苦笑した。猫の方が人を良く見ているのだと。
●改めてお礼
かぼちゃの収穫と言ってもテユカが持って帰られる分量だけだ。籠に載せるとすぐに終わる。
「柴犬たちは怪我していないのね」
アルスレーテが柴犬たちを撫でている。人懐こく、撫でてくれと言わんばかりにじゃれついてくる。
「子猫たちは連れて帰るみたいですね。親がいないと分かっているのでしょうか」
エルバッハの視線の先に、虎子になついている様子の子猫がいる。
「家令さん良いっていうかな」
テユカは不安そうだ。
アルスレーテもエルバッハも確実なことは言えないが、虎猫が連れて帰るならむげにはしないだろう。そもそも、こっそり増えたら分からないのではなかろうか?
虎猫捜索隊が戻ってくるまで10分もかからない。
近くで隠れていたり、竹に器用にぼってじっとしていたりしていたらしい。
「この猫は怪我をしていた」
「はい、治すね」
ロニから虎猫を受け取るとアルスレーテは【母なるミゼリア】を使う。
「おとなしく出てきてくれたから助かったよ」
ゼルドが下すと、虎猫は子猫のほうに向かう。
「この子は結局なんという名の子なんだろう」
白亜は自分が連れてきたのがメスだとはわかるが、名前はどれか分からない。
「寅美だね」
「……首輪かな」
「うん。寅美はね、ちょっと大きいかな」
白亜は寅美を置いてみると分かる。並ぶと確かに大きさが違うような気がした。首輪には同じ色もあるが模様が記入されている。
「にゃんこの会議が始まったみたいだ」
ネフィリアが言うように、子猫を囲んで虎猫たちは何かうにゃうにゃ言っている。ほほえましくもあり固唾をのんでしまう迫力もある。
「なんかこっち見てる」
テユカが言う通りちらちら見ている。
なお、ハンターたちは親らしい猫は見ていない。ここにいればいい飼い主が来ると分かっておいていったのか、最悪な事態があったのか分からない。できれば前者だとほっとする。
「にゃあ」
虎猫会議は終了した。
虎猫は子猫を咥えて移動を始めたのだった。
「大江家の猫が増えるんですね」
エルバッハの言葉に猫たちが肯定するように鳴いたのだった。
悲鳴が聞こえた瞬間、雪継・白亜(ka5403)は双眼鏡でその方向を見る。竹やぶの一か所に人が通るような道がある。
「あの奥か?」
周囲に偶然居合わせたハンターたちは互いを認めると人命救助のために動き始める。
「街道のそばで襲われるとは運が悪いですね……いえ、それはさておき、まずは状況把握と敵がいれば排除です」
静かにつぶやくとエルバッハ・リオン(ka2434)は走り出す。
「正規の依頼じゃないのだし無視したっていいのに……私、何やっているのかしらね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)はため息交じりにつぶやきながらも、素早く向かう。けだるげであったが決心した後は優美さを身に着けた素早い行動であった。
「抜き差しならぬ状況……ということか。ひとまず事態の収拾を」
ロニ・カルディス(ka0551)は竹藪の道をすり抜けつつ前を見る。その先は開けており、畑のようだ。
「鬼の子どもと、わんことにゃんこが大ピンチだな。必ず全員助け出すぞ」
ゼルド(ka6476)はきゅと唇を結び、マテリアルを活性させていく。
「うわ、本当だ! 危ないよ! 僕はにゃんこの保護に行くのだ! 全力でいくよ!」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)はさわやかな笑顔とともに、マテリアルを解放しつつ一気に走る。
●にゃん逃げる
ハンターが現場を目にできたとき、雑魔たちが動いた。ハンターは祈りつつ、子猫のか弱い悲鳴に怒りがわく。
「早く助けます」
エルバッハのマテリアルが大きく膨れるように広がり、収縮する。一度に2つの魔法を紡ぎあげ、解き放った。ジャック・オー・ランタンに向けた放ち、一つ目のウィンドスラッシュは避けられたが二つ目に使ったファイアアローは命中する。それはかぼちゃに住み着いた雑魔をつぶすだけの力があった。
「一番奥の犬が大変ね」
アルスレーテは跳ぶように移動し、鋭い攻撃を繰り出す。柴犬に向かう雑魔の目をそらす役割だ。それは成功し、雑魔の虎顔が可愛らしい表情ままアルスレーテに向いた。
無言だが怒っているのは感じ取れた。
「こんなところに敵がいるとは。助けに来たぞ」
白亜は救援者が銃撃の音に驚いて危険にさらされることを危惧していた。そのため、テユカのそばまで来て、声を掛けてから引き金を引く。ジャック・オー・ランタンに足止めを使ったのだが、虎猫たちが散り散りに逃げていく。威嚇も腰が引けていたし、襲われていたから限界は来ていたのだ。
子猫たちは動けない。柴犬たちはびくびくしながらもそこにとどまる。
「後で探さなば」
「大丈夫だよ、トラたち賢いからおうちに帰ったかも」
テユカは助けが来たことに安堵して言った。
祖霊の力を存分に引き出し、マテリアルをまとってネフィリアは前に出る。
「僕はこにゃんこ保護に向かうのだ! そこのかぼちゃ、どくのだ。どかないと吹っ飛ばすのだ!」
ジャック・オー・ランタンはどくことはなく、ゆらりゆらりと牙をむく相手を探しているようだ。
ネフィリアはマテリアルと砂で紡いだこん棒を素早く、思いっきり叩き込んだ。粉々になり、それは塵と化した。
ロニは仲間の後を慎重な足どりで進む。
「農作物に気をつけ……ることもなさそうだな」
ロニは畑であっても普通に踏んで問題ないと知った。かぼちゃは雑魔か隅っこで収穫を待っているのみ。全力で進み、敵の目から柴犬たちを守るように杖を構えて立った。
「助けに来たぞ。君は……落ち着いてきたみたいだね。近くのわんこを呼んで逃げろ。バケモノは俺たちが倒すから」
ゼルドの言葉にテユカはうなずく。
テユカは柴犬たちの名前を呼んだ。柴犬たちはおろおろしつつも、テユカの方に向かって行く。
ゼルドからすると犬たちはテユカを守るのが仕事と思っているようだった。
ゼルドはテユカたちをかばいつつ、近くの狐顔でツチノコのような姿の雑魔に攻撃を仕掛けたのだった。
●続く戦闘
エルバッハは首をかしげる。【ダブルキャスト】とともに魔法を紡ぐのだが、再び一回目が回避された。
「たまたまなんでしょうね」
魔法は発動しているし、命中のために必要な距離も集中力も問題ない。ジャック・オー・ランタンは倒せているため、よけるか否かの確率論のような手ごたえ。
「次はどう使うか……戦況によりますね」
周囲を見渡した。
アルスレーテは手にしていた投擲武器を捨て鉄扇を持った。両手に鉄扇を持つとふわりと構えてから舞うように攻撃を仕掛ける。武闘と舞踏は戦いと踊りで遠くあり、体をうまく使うということで近いと言える。そのために試行錯誤中の戦い方。
「かっこつけたかっただけよ!」
敵によけられたため、恥ずかしくなって怒ってみた。
白亜はリロードをして、足止めか威嚇すべきか考える。敵が意識しているのはハンターであり、動けない子猫やテユカたちではないようだ。それならば、とジャック・オー・ランタンに向かって通常攻撃をする。
「早く、虎猫たちを見つけてあげないとな」
虎猫たちが賢いとはいえ、怯えて逃げているため気の毒である。
白亜の銃弾はぎりぎり当たり、かぼちゃ頭を粉砕したのだった。
「こにゃんこ、ああ、怪我している! 行くよー」
ネフィリアの攻撃により一層力がこもる。怒りに流されても攻撃はダメだがうまく使えば大きな力になる。
ジャック・オー・ランタンは反応できずに倒される。
ここの時点でジャック・オー・ランタンは消えていなくなったが、用心と確認のためネフィリアは子猫の下に急いだ。
ロニは目の前の虎のようなツチノコを見て、祈りとともにマテリアルを杖に込める。
「相も変わらずよくわからない生き物だが、獣であれば悪さをしないようにしつけねばな!」
光を帯びる杖は雑魔に叩き込まれる。しかし、雑魔はぴょいと避けた。見かけによらずすばしっこいのか、よけつつ雑魔は敵を確認するようにハンターを見ているようだった。
ゼルドは目の前の狐顔のツチノコ雑魔にマテリアルを紡ぎあげて攻撃を仕掛ける。敵の目を向け離れようとするテユカと柴犬を隠すように。
「お前の相手は俺だ! 行くぞ」
狐のような雑魔は「ケケケ」と笑いながらよけたのだった。雑魔の目にゼルド自身が写っているようであるため、思惑通りではある。一層気を引き締める。
ぴょいと飛んだ虎のようなツチノコのような雑魔は、ガッと大きく口を開き、炎を吐き出した。近にいるロニとアルスレーテは構えたが、よけることもなかった。全く当たらない。
狐のようなツチノコのような雑魔は避けた直後にとびかかるようにゼルドに向かう。
「遅い」
避けた何も起こらなかった。
●決着
続いて雑魔たちが行動をした。
虎のような雑魔は再び炎を吐く。アルスレーテは避け、ロニはとっさに【ホーリーヴェール】を使用する。
「火吐くのって、厄介よね。ケガしたら治してあげるから」
「期待しているが、問題ない」
アルスレーテとロニは前の敵に攻撃に移る。
「でも、その前に倒してしまえばいいのよね。舞うように叩く!」
アルスレーテのなめらかな足さばきと、マテリアルとともに起こる旋風が雑魔を釘付けとした。
「こにゃんこはそこで待っているんだよ! 片づけるんだから」
勢いよく近づいたネフィリアのこぶしは勢いよく飛び出し、雑魔をたたく。ロケットパンチは元に戻る。
「しつけと言うのは行動の直後にするべきとは言ったものだ」
ロニの杖が虎の鼻先に振り下ろされ、それは命中する。
雑魔は霧散し、消えた。
「しつけと言うより、討伐よね」
「雑魔だからな、消えてなくなる」
「こにゃんこの怪我見ないと」
戦場の状況を確認し、それぞれの行動に移る。
狐の雑魔は再びゼルドにつっこむが、あらぬ方向に転げて行った。そこにジャック・オー・ランタン対応を行っていた援護射撃組が攻撃を叩き込む。
「まだ使えますから一気に行きますね」
エルバッハが【ダブルキャスト】に載せて2つの魔法を使う。
「早く倒してしまえばいいんだ」
白亜の銃弾も吸い込まれるように当たる。
「これで終わりだ!」
ゼルドの攻撃が鋭く決まる。怒涛のような攻撃になすすべもなく雑魔は霧散したのだった。
「やれやれですね」
エルバッハはほっと息を吐き、柴犬の首にしっかりしがみついているテユカを見つけ微笑む。柴犬たちは逃げるのかやる気なのか前足が宙に浮いている状態だった。
「ふむ……もう何もいないな」
白亜は用心して周囲を見ておく。
「これで終わり……他の子たちは大丈夫か?」
ゼルドはテユカと柴犬たちを見て安堵したが、虎猫たちがいないことに渋い顔になった。
「こにゃんこの怪我ひどいよ!」
ネフィリアの声を聞いて、アルスレーテが動いた。
「そうね、大丈夫よ」
アルスレーテは子猫に話しかけるように手のひらに受け取る。小さくても生きようとして抗うのを感じた。
「よく頑張ったわね」
アルスレーテのマテリアルが子猫のマテリアルに働きかける。少しずつ傷はふさがり、子猫の息もはっきりしてきた。
「ああ、良かった」
ネフィリアがぱっと表情を明るくした。アルスレーテからその子猫を受け取り、もう一匹に怪我がないかを確認する。こちらは何もなかった。
「お姉さん、お兄さん……ありがとう、ございました」
テユカが籠を背負ったままお辞儀をした。籠の中から入っていたモノが転がってくる。
「にゃー」
テユカがとっさに投げ込んだ虎猫が落ちてきた。
ハンターにも自然と笑みがこぼれる。
「それより、注意して銃は使ったのだが、ペットたちがいなくなってしまったようだ」
白亜はテユカに謝る。
「気にしなくていいよ? トラたちは頭いいし」
「しかし、怯えたら当分隠れていることもありうる。だから、探す」
白亜は言う。
「そうだね、今のうちに確認しておけば、怪我しているのも対応できるし。あ、みんなは怪我してないの? 治す必要あったら言って」
アルスレーテは持ち替えの時に落とした武器を拾ってしまう。
攻撃を受けたこともあったが問題なかった。
「ところで、あなたはここで何をしていたんですか?」
エルバッハが質問を投げかけた。問い忘れていたが街道沿いの竹藪にいることは不自然と言えば不自然。大江家といえば天ノ都に居を構えている。
どうしてだろうという視線がテユカに集まる。
「えとね、ここは大江家の隠れ畑で、かぼちゃ少しあるから回収しに来たの。そうしたら、妖怪が出てきたんだ」
テユカが説明をした。
「もう、隠れ畑じゃないな」
ゼルドは落ちていた毛糸の帽子をテユカに渡しながら笑う。
「ああっ!」
テユカはおろおろしている。
「そんなに困らせるつもりはなかったんだが。入口がしっかりあったからばれるのは時間の問題だったとは思うが」
ゼルドはテユカをなだめる。彼の言ったことに他のハンターもうなずく。どうせばれるか、すでにばれていて様子を見られていただけかもしれない。
「それでは虎猫捜索中、私はかぼちゃの収穫を手伝っていますね」
「私も待ってるね。妖怪もいないと思うけど、用心もかねて」
エルバッハとアルスレーテが告げる。
「あ、この子猫どうしよう?」
ネフィリアはテユカに尋ねる。
「分からないよ? あ、虎子が舐めてるね……」
虎猫が二匹の世話を始めたようだ。
「なら、虎猫たちを探すついでに親がいないか見てくればいいわけだな」
ロニの宣言に捜索隊はうなずいた。
「そうだ、確認だ、虎猫たちは何匹だ? 名前は分かるか?」
「全部で五匹。寅吉、寅美、一虎、虎左衛門と寅江だよ」
「特徴はあるのか……?」
「えと、首輪の色や形が違うよ。でもね、紅葉様が『トラや』って言っても来るから」
白亜は苦笑した。猫の方が人を良く見ているのだと。
●改めてお礼
かぼちゃの収穫と言ってもテユカが持って帰られる分量だけだ。籠に載せるとすぐに終わる。
「柴犬たちは怪我していないのね」
アルスレーテが柴犬たちを撫でている。人懐こく、撫でてくれと言わんばかりにじゃれついてくる。
「子猫たちは連れて帰るみたいですね。親がいないと分かっているのでしょうか」
エルバッハの視線の先に、虎子になついている様子の子猫がいる。
「家令さん良いっていうかな」
テユカは不安そうだ。
アルスレーテもエルバッハも確実なことは言えないが、虎猫が連れて帰るならむげにはしないだろう。そもそも、こっそり増えたら分からないのではなかろうか?
虎猫捜索隊が戻ってくるまで10分もかからない。
近くで隠れていたり、竹に器用にぼってじっとしていたりしていたらしい。
「この猫は怪我をしていた」
「はい、治すね」
ロニから虎猫を受け取るとアルスレーテは【母なるミゼリア】を使う。
「おとなしく出てきてくれたから助かったよ」
ゼルドが下すと、虎猫は子猫のほうに向かう。
「この子は結局なんという名の子なんだろう」
白亜は自分が連れてきたのがメスだとはわかるが、名前はどれか分からない。
「寅美だね」
「……首輪かな」
「うん。寅美はね、ちょっと大きいかな」
白亜は寅美を置いてみると分かる。並ぶと確かに大きさが違うような気がした。首輪には同じ色もあるが模様が記入されている。
「にゃんこの会議が始まったみたいだ」
ネフィリアが言うように、子猫を囲んで虎猫たちは何かうにゃうにゃ言っている。ほほえましくもあり固唾をのんでしまう迫力もある。
「なんかこっち見てる」
テユカが言う通りちらちら見ている。
なお、ハンターたちは親らしい猫は見ていない。ここにいればいい飼い主が来ると分かっておいていったのか、最悪な事態があったのか分からない。できれば前者だとほっとする。
「にゃあ」
虎猫会議は終了した。
虎猫は子猫を咥えて移動を始めたのだった。
「大江家の猫が増えるんですね」
エルバッハの言葉に猫たちが肯定するように鳴いたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/05 16:02:35 |
|
![]() |
女子とわんことにゃんこ救出作戦 ゼルド(ka6476) 鬼|20才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/11/07 05:29:07 |