ゲスト
(ka0000)
サイレント・キリング
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/11 15:00
- 完成日
- 2016/11/26 02:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「まったく……最近は面倒なことばかりだね」
海から戻ったばかりのロルフ・シュトライトは執務室で頭を抱えていた。
最近、帝国全土で増え始めた子供を攫う事件。それに、エルフと人間の間で起こる小競り合い。そういった事件に合わせて歪虚や亜人の活動も活発化している。
そんな中、とある村がゴブリンたちに占拠されたという通報があった。
たかがゴブリンと侮ってはいけない。ゴブリンたちは村に入るとすぐさま子供を人質に取り、大人たちは監禁してしまったそうだ。このことは、家に隠れて無事だった一人の子供から伝えられた。
「外部に出さなければ村が占拠された情報も伝わらない……考えたものですな」
「感心している場合じゃないよ、ウェルナー。この一件どう対処する?」
報告書を持ってきていたウェルナー・ブラウヒッチ兵長は少し考えてから返答した。
「空中から一気に……というのは少なくともまずいでしょうな」
ヒンメルリッター得意の空を絡めた戦法。それを頭から否定するウェルナー。その答えにロルフも頷く。
「そう。ここは場所が悪い」
地形的に何か不都合があるというわけではない。平野部に作られたごく一般的な村だ。だが、この村はエルフハイムからそう遠くない場所にある。
「ゴブリンの数がわかりませんから1騎や2騎で行くわけにはいきません。人質もいますからね。ですが、そうなるとエルフハイム側からいらぬ誤解を生みかねません」
困ったような表情を浮かべるウェルナー。
森の入り口にほど近い村にヒンメルリッターの大部隊が着陸する。その様子を見てエルフたちがどう思うか。あるいは帝国軍が襲撃の準備を整えていると邪推したりしないか。ロルフとウェルナーが危惧しているのはそれだった。
そもそもロルフたち第五師団のエルフハイムに対する基本姿勢は『不干渉』にある。
この方針は先代師団長エルンスト・ウィンザーのころから決められていたものである。制空を一手に担う第5師団がエルフハイムの監視を行うこと自体は容易であるが、エルフハイム全土を常に監視することは戦力的にも難しい。加えて、必要以上の監視は災いの種にもなりかねない。
『いつでも上から見られてるってのは案外窮屈なもんだ。いつも見下ろす側の俺たちがそういうことを忘れちゃぁいけねぇよ』
とは、先代の言葉だ。
そのため、基本的な対応は第3師団に任せ、自分たちは定期的なエルフハイム上空の飛行を除けば極力不干渉でいるという、悪く言えば人任せな対応をとるに至っていた。
「だからこそ、こんなことでカミラさんたち第3師団の方に負担をかけるわけにもいかないしね」
第3師団も第5師団も帝国軍に変わりはない。第5師団への疑惑は第3師団への不信につながるということだ。
「ではどうしますか? 少数精鋭で地上からが望ましいように思いますが……」
「うちは空での戦いには慣れていても地上での戦いは得意じゃないからね。僕からしてそうなんだけど……」
ひとしきり考えたうえでロルフは決断した。
「今回もハンターに頼んでみようか」
こうして、第5師団から依頼が発せられる。
人質の安全を確保するためにも静かに、それでいて可能な限り素早く、敵を殲滅してほしい、と。
「まったく……最近は面倒なことばかりだね」
海から戻ったばかりのロルフ・シュトライトは執務室で頭を抱えていた。
最近、帝国全土で増え始めた子供を攫う事件。それに、エルフと人間の間で起こる小競り合い。そういった事件に合わせて歪虚や亜人の活動も活発化している。
そんな中、とある村がゴブリンたちに占拠されたという通報があった。
たかがゴブリンと侮ってはいけない。ゴブリンたちは村に入るとすぐさま子供を人質に取り、大人たちは監禁してしまったそうだ。このことは、家に隠れて無事だった一人の子供から伝えられた。
「外部に出さなければ村が占拠された情報も伝わらない……考えたものですな」
「感心している場合じゃないよ、ウェルナー。この一件どう対処する?」
報告書を持ってきていたウェルナー・ブラウヒッチ兵長は少し考えてから返答した。
「空中から一気に……というのは少なくともまずいでしょうな」
ヒンメルリッター得意の空を絡めた戦法。それを頭から否定するウェルナー。その答えにロルフも頷く。
「そう。ここは場所が悪い」
地形的に何か不都合があるというわけではない。平野部に作られたごく一般的な村だ。だが、この村はエルフハイムからそう遠くない場所にある。
「ゴブリンの数がわかりませんから1騎や2騎で行くわけにはいきません。人質もいますからね。ですが、そうなるとエルフハイム側からいらぬ誤解を生みかねません」
困ったような表情を浮かべるウェルナー。
森の入り口にほど近い村にヒンメルリッターの大部隊が着陸する。その様子を見てエルフたちがどう思うか。あるいは帝国軍が襲撃の準備を整えていると邪推したりしないか。ロルフとウェルナーが危惧しているのはそれだった。
そもそもロルフたち第五師団のエルフハイムに対する基本姿勢は『不干渉』にある。
この方針は先代師団長エルンスト・ウィンザーのころから決められていたものである。制空を一手に担う第5師団がエルフハイムの監視を行うこと自体は容易であるが、エルフハイム全土を常に監視することは戦力的にも難しい。加えて、必要以上の監視は災いの種にもなりかねない。
『いつでも上から見られてるってのは案外窮屈なもんだ。いつも見下ろす側の俺たちがそういうことを忘れちゃぁいけねぇよ』
とは、先代の言葉だ。
そのため、基本的な対応は第3師団に任せ、自分たちは定期的なエルフハイム上空の飛行を除けば極力不干渉でいるという、悪く言えば人任せな対応をとるに至っていた。
「だからこそ、こんなことでカミラさんたち第3師団の方に負担をかけるわけにもいかないしね」
第3師団も第5師団も帝国軍に変わりはない。第5師団への疑惑は第3師団への不信につながるということだ。
「ではどうしますか? 少数精鋭で地上からが望ましいように思いますが……」
「うちは空での戦いには慣れていても地上での戦いは得意じゃないからね。僕からしてそうなんだけど……」
ひとしきり考えたうえでロルフは決断した。
「今回もハンターに頼んでみようか」
こうして、第5師団から依頼が発せられる。
人質の安全を確保するためにも静かに、それでいて可能な限り素早く、敵を殲滅してほしい、と。
リプレイ本文
●
「人を助けるのに、外交問題まで気にしないといけないとは、お偉いさん方も大変だねぇ……」
夜に溶け込むような真っ黒な外套に身を包む仙堂 紫苑(ka5953)。その言葉にはどこか皮肉が混じっているようにも聞こえる。他との軋轢など気にして人助けなどはできない。
「だけど、エルフハイムとの関係悪化の影響が最初に出るのは近くにあるこの村である。そう考えて納得するしかないわね」
双眼鏡で村の方を見ながらケイ(ka4032)がつぶやいた。
行動を起こすのは日が落ちてから。それまでは、村を遠目に望む茂みに身を潜め、可能な範囲での情報収集を行う。
「つまり、こっそりゴブリンをやっつければいいんだね! なんだか話にきく『仕置人』みたいな感じでカッコいいかも!」
「ゴブリンを静かに処理して、村人さんを無事に救出。倒すだけなら楽なんですけどねー?」
夢路 まよい(ka1328)にそう返しながら、葛音 水月(ka1895)は逃げてきた子供から得た情報を整理していく。ゴブリンを倒すだけなら、言う通り楽な仕事だろう。だがそれによって村人に被害を出してはいけないのだから難しい。
「絶対助けてくるって約束しましたからね。ニンジャでプロカードゲーマーの名に懸けて!」
地図を睨みながら情報を確認するルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。
「なんか、みんなノリノリじゃないかい?」
樹導 鈴蘭(ka2851)は双眼鏡をのぞきながら呟く。ゴブリンの数ぐらいはなんとか把握しておきたい。情報では10匹だったそうだが、その後数が増えているかもしれない。
「もう少し近づかないとはっきりとしたことはわからないな」
フェイル・シャーデンフロイデ(ka4808)は隠の徒を使って接近、村の中まで偵察することも考慮に入れていた。フェイルの能力があれば不可能ではなかっただろうが、ここで見つかっては元も子もない。リスクは避けるべきだろう。
「急ぐことは無いよ。もうすぐ日が落ちるからね……」
玉兎 小夜(ka6009)の言葉通り、徐々に日が落ちて、やがて夜が来る。
「……星も無い、月も無い夜、か……」
こうして、闇夜に紛れハンターたちは村へと向かっていった。
●
「ルンルン忍法、分身の術!」
ルンルンが式符を使用。村の入り口付近から式神を進ませて周囲の安全を確認していく。
「……とりあえず大丈夫そうです。侵入しましょう!」
元気よく、しかし静かなルンルンの言葉に従いハンターたちは村へと入り込む。
皆、隠密行動には長けており、これなら早々敵に見つかることは無いだろう。
「さすがに暗いわね……建物の位置は大丈夫?」
周囲を警戒しながらケイが言った。村の家々の配置は子供から聞いたものに加えて、遠目でも確認している。だが、こう暗いとどれがどの家か正確に把握できるものだろうか。
「灯りはなー……つけるわけにもいかないから仕方ない。気を……」
「静かに」
「気を付けていこ」と続けようとした小夜。そこに水月が小さく、しかし鋭い注意をかける。
灯りが前から近づいてくる。巡回だ。ルンルンの式神が向かったのとは別方向から来たと見える。
一歩前にでるフェイル。暗闇に赤い目が光る。
「……!」
踏み出そうとしたフェイルの肩をつかむ鈴蘭。
そのまま一同は静かに闇に潜む。ゴブリンは……周囲を見回すものの気づかない。あくまでも型通りの巡回といったところ。そのまま灯りとともにゴブリンは離れていく。
「巡回が途絶えると不審がられる可能性があるから、今はまだ回避していった方がいいですね」
「確かに、その通りだな」
水月の言葉にフェイルが警戒を解く。
「……救援に来た人間がいるとは思っていないのかもな。警戒が薄い気がする」
頭が回るゴブリンだと思ったが、まだまだ甘いなと紫苑が息をつく。
こうしてハンターたちは途中途中で出会う巡回を躱しながら一つの家にたどり着く。
「村長の家。村だと一番大きい家だから、ここなら人が一番集められるだろう、ね」
子供が
「一部のゴブリンが離れました。巡回に行ったみたいです。後は見張りだけです。それでは……」
「お任せあれ」
隠の徒を使用した水月が戻ってきた。周辺の確認を行っていたのだ。その水月からの言葉で、ルンルンが生命感知を使用する。
「中に複数の生体反応と……そこから少し離れていくつか。多分これが見張りのゴブリンじゃないでしょうか」
「複数の生体反応……それが人質だね」
「もう少し詳しい位置をお願い」
ルンルンに問うまよい。それにより指示された場所を一瞥したのち、意識を集中させる。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ」
まよいがドリームメイズを使用。神秘的な迷路の幻影が描き出され、ゴブリンたちは幻影に包まれる。
「……動きが止まりました。うまくいったようです」
ルンルンの言葉に頷くまよい。だが、まだ作戦は始まったばかりだ。
「後は順番に、寝首を掻いてもらおうかな」
物音でも立てて起こさないように、ハンターたちは静かに扉を開け、中に入る。中には武器を枕に眠りこけるゴブリンと、同様に眠り込んでいた子供たちの姿があった。頬には涙の後も見える。時間も遅いわけだし、泣きつかれて眠ってしまったといったところだろうか。
「とりあえず……鎖の杭」
眠るゴブリンの口元を抑えながら紫苑は敵の動きを拘束する鎖の杭を使用。突然のことに驚き目を覚ますゴブリンだが、体も動かず声も出せない。
「仕留めておくか。別に生かす必要もない」
そう言ってシオンはゴブリンを奥に引っ張っていく。
「とりあえず、子供は無事みたいだしよかった……」
「むむ、ニンジャセンサーに感有り。哨戒が一匹戻ってきてます」
子供たちの無事を確認し安堵する水月。だがそれもつかの間のこと。ルンルンの声に皆が身構える。
「やぁ、お子様ず。寒いのはもうちっと我慢してね?」
入口に視線を向けながらも、小夜は眠る子供に手を添え小さくつぶやいた。
「声を出されたら……」
入り込んできゴブリンに対し、扉近くに潜伏していた鈴蘭が飛びつく。声を出す暇もなく口元を抑えられる。
「子供が起きちゃうからね」
同時に、一瞬閃きスパーク。エレクトリックショックだ。体を痙攣させたゴブリンはそのまま声を上げることなく絶命する。
「……ここが拠点のような扱いなのかもしれないな」
戻ってくるゴブリンの存在からそう考えるフェイル。そう考えるとここに村人を集め匿っていくのは正しいのだろうか。
「でも、寝ている子を起こして他の場所にってのもね」
小夜の言葉通り、そちらの方がリスキーであるように思える。やはり当初の予定通りに事を運ぶべきだろう。
●
一匹のゴブリンが歩いている。勘のいいゴブリンだ。何か、村に異変が起こっていることに気づいた。だが、気づいたやつが先に死ぬのが世の倣いだ。
足元に影が落ちた、そう思った時には、のど元をレイピアで突き刺されていた。断末魔の声をあげようとする……も、それは口元を抑えられ止められる。そのままレイピアによって切り裂かれ、絶命する。
動かなくなったゴブリンを見下ろしたフェイルは、そのまま速やかに物陰へ死体を移動する。
(夜だから血痕は見えない。それは良いとして血の匂いはどうにもならないか)
それでも、多少なり発覚を遅らせるために死体を隠そうということなのだろうが、果たしてその必要があるのかどうか。こうしている間にも各所で戦闘が始まっているのだから。
「さっきと同じ手順でいいよね?」
「問題無しです。よろしくお願いしますー」
水月からの了解が取れたところで、まよいは闇の中鋭く目を凝らしながら、再度ドリームメイズを使用。見張りを眠らせる。
「それでは、一体ずつ、確実に」
眠ったことを確認した水月は速やかにゴブリンに近づくと、口を押さえながら地面に押し付ける。触れた瞬間にゴブリンは目を覚ましてしまったが、関係ない。のど元に超重刀を押し込み、貫く。
「……オッケーです。中に入りましょう」
家に入ると、おびえた様子の村人がいた。中にはゴブリンはいないようだ。
「お静かに。子供たちはもう救出してますよ」
村人が何かを言う前に、それを制する水月。少し落ち着きを取り戻した様子の大人たちに、他の大人がどこにいるか確認を取る。
「これでドリームメイズは打ち止め。とりあえず私はこの人たちを連れてくね」
「僕は他の救出へ。道中気を付けてくださいね」
まよいと水月は軽く打合せると、すぐに行動へと移った。
「もう大丈夫ですよ」
別の家では鈴蘭がケイとともに人質を奪還したところだった。先ほどと同様、口をふさいでからのエレクトリックショックで見張りは速やかに倒されていた。
「……裏口から出たほうがいいわね」
これから人質を連れ出そうというところで、ケイが鈴蘭に言う。何者かの気配。状況的に味方ではないだろう。
「倒しますか?」
「護衛を優先しましょう。連れて行ってもらえる? ここは抑えるわ」
そういって手裏剣を構えるケイ。鈴蘭に連れられて人質の大人が出ていくのと、ゴブリンが踏み込んでくるのはほぼ同時。
「あらあらごめんなさい? 邪魔しないで頂戴ね?」
だが、その動きはタイミングよく放たれた、手裏剣により制される。
痛みに悲鳴を上げ、逃げようとするゴブリン。そうはさせまいと、ケイは銀飛輪を用いた制圧射撃で足を止めさせる。
「声、出さないでほしいのよね」
ケイは回り込むと、そのまま喉を狙い高加速射撃を使用しつつ手裏剣を投擲。今度は声も上げられない。さらに胸や目など、急所を乱れうちとどめを刺す。
「まぁ、さすがにバレるわよね」
松明の明かりが動き回っているのが闇の中でも見えた。
「こんばんは、首狩り兎です! サイレント首狩り失礼しますっ」
言葉と同時に、迫るゴブリンを画竜点睛にてたたき切る小夜。その後ろには逃げてきた人質と鈴蘭の姿があった。
「助かりました」
「なんのなんの……さ、反撃開始だっ!」
集まってくるゴブリンたちを前に、小夜は再度刀を納めマテリアルを練る。
「南無阿弥陀仏」
別方向から近づいてきたゴブリンはルンルンが仕留めた。ある程度接近すれば生命感知に引っかかるため、場所はよくわかる。喉元に刀を突きさし、そのまま掻き切り叫び声も上げさせない。
「このまま迎え撃ちましょう」
「そうだな。家に入られる前に仕留めたい……」
そう言って紫苑も太刀を抜く。
「……血なまぐさいものを子供のそばに置いておきたくないからな」
最初にゴブリンを始末したときも、わざわざ子供たちから離れたところに引っ張っていった紫苑。それらは子供たちに対する気遣いからくるものだった。
そんな紫苑のその言葉に同意するルンルン。こうして、小夜とともに護衛として残っていた2人も、家から離れすぎない程度に迎撃に出る。
「派手に始めましたねー」
その様子を見て水月がつぶやいた。ちょうど、最後の人質を連れて戻ってきたところだった。
●
この依頼で重要だったのは隠密行動だ。
だが、それも人質がいたからこそ。人質を皆救出すれば、依頼はただのゴブリン討伐依頼へと変わる。
「ウィンドスラッシュ!」
まよいが魔法を放ち、一体のゴブリンを風の刃で切り伏せる。
人質を集めた村長の家にゴブリンたちは向かってきている。再度人質を盾に取れれば逆転の目がある。とでも考えているのだろうか。だが、そうはいかない。
「これでも食べて待っていると良いさ……すぐに終わらせてくる」
戦闘が激しくなり目が覚める子供も出てきたが、大人たちがこの場にいたことで泣き叫ぶようなことは無かった。その子供たちにマシュマロを与えてフェイルも戦闘に参加する。
「僕も、あとでお菓子を作ってあげるからさ。おとなしく待っててね」
鈴蘭も子供を気遣いそう告げる。もう頬を涙で濡らす子供たちはいなかった。
「他愛無いわね」
倒れたゴブリンから手裏剣を引き抜くケイ。もう視界内に敵はいなくなっていた。
「ふう……やはり数は多かったが、それだけだったな」
紫苑のいう通り、当初の数は10程度ということだったが、気づけば30程のゴブリンと戦う羽目になっていた。
「ニンジャセンサーには感無し! とりあえずは殲滅できたみたいです」
「……よし、それじゃ村内を捜索ですかね。隠れられても困りますし」
ルンルンが生命感知を解除したところで、水月がそう提案する。どこかに潜伏されていたら後で災いをもたらすことになる。
「このまま何人かでここを護衛して、残りが村を回ればいいかしらね」
「了解。早速行ってくるわね」
ケイの言葉にまよいはじめ各自が動き出した。
「さ、それじゃ約束通りお菓子を……そういえば、小夜さんは?」
「ん? さっきまでいたと思ったけどな……村を回ってるんだろう」
鈴蘭の疑問に、紫苑がそう答えた。
「…………」
当の小夜はというと……家の屋根に上っていた。その表情は戦いが終わって弛緩……してはいない。むしろ、今までで最大の緊張感を持っている。
(立ち向かってくる敵だけのはずがない……きっと逃げる敵がいる)
そう考えていた小夜は、闇の中を見据える。見えるだろうか。いや、例え見えなくても五感をフルに使い見つけなければならない。
「……いた」
瞬間、小夜は抜刀。窮地を脱したと気を緩ませたゴブリンは、空間を切り裂く斬撃により、両断された。
「ヴォーパルバニーは貫きて尚も貫かん」
納刀とともに小夜は大きく息を吐いた。
「……出る幕は、無かったか」
その様子を陰で見ていたフェイルは、そう呟いた。
こうして、夜が明ける。ゴブリンに制圧された村はハンターたちの活躍により、一夜にして取り戻されたのだった。
「人を助けるのに、外交問題まで気にしないといけないとは、お偉いさん方も大変だねぇ……」
夜に溶け込むような真っ黒な外套に身を包む仙堂 紫苑(ka5953)。その言葉にはどこか皮肉が混じっているようにも聞こえる。他との軋轢など気にして人助けなどはできない。
「だけど、エルフハイムとの関係悪化の影響が最初に出るのは近くにあるこの村である。そう考えて納得するしかないわね」
双眼鏡で村の方を見ながらケイ(ka4032)がつぶやいた。
行動を起こすのは日が落ちてから。それまでは、村を遠目に望む茂みに身を潜め、可能な範囲での情報収集を行う。
「つまり、こっそりゴブリンをやっつければいいんだね! なんだか話にきく『仕置人』みたいな感じでカッコいいかも!」
「ゴブリンを静かに処理して、村人さんを無事に救出。倒すだけなら楽なんですけどねー?」
夢路 まよい(ka1328)にそう返しながら、葛音 水月(ka1895)は逃げてきた子供から得た情報を整理していく。ゴブリンを倒すだけなら、言う通り楽な仕事だろう。だがそれによって村人に被害を出してはいけないのだから難しい。
「絶対助けてくるって約束しましたからね。ニンジャでプロカードゲーマーの名に懸けて!」
地図を睨みながら情報を確認するルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。
「なんか、みんなノリノリじゃないかい?」
樹導 鈴蘭(ka2851)は双眼鏡をのぞきながら呟く。ゴブリンの数ぐらいはなんとか把握しておきたい。情報では10匹だったそうだが、その後数が増えているかもしれない。
「もう少し近づかないとはっきりとしたことはわからないな」
フェイル・シャーデンフロイデ(ka4808)は隠の徒を使って接近、村の中まで偵察することも考慮に入れていた。フェイルの能力があれば不可能ではなかっただろうが、ここで見つかっては元も子もない。リスクは避けるべきだろう。
「急ぐことは無いよ。もうすぐ日が落ちるからね……」
玉兎 小夜(ka6009)の言葉通り、徐々に日が落ちて、やがて夜が来る。
「……星も無い、月も無い夜、か……」
こうして、闇夜に紛れハンターたちは村へと向かっていった。
●
「ルンルン忍法、分身の術!」
ルンルンが式符を使用。村の入り口付近から式神を進ませて周囲の安全を確認していく。
「……とりあえず大丈夫そうです。侵入しましょう!」
元気よく、しかし静かなルンルンの言葉に従いハンターたちは村へと入り込む。
皆、隠密行動には長けており、これなら早々敵に見つかることは無いだろう。
「さすがに暗いわね……建物の位置は大丈夫?」
周囲を警戒しながらケイが言った。村の家々の配置は子供から聞いたものに加えて、遠目でも確認している。だが、こう暗いとどれがどの家か正確に把握できるものだろうか。
「灯りはなー……つけるわけにもいかないから仕方ない。気を……」
「静かに」
「気を付けていこ」と続けようとした小夜。そこに水月が小さく、しかし鋭い注意をかける。
灯りが前から近づいてくる。巡回だ。ルンルンの式神が向かったのとは別方向から来たと見える。
一歩前にでるフェイル。暗闇に赤い目が光る。
「……!」
踏み出そうとしたフェイルの肩をつかむ鈴蘭。
そのまま一同は静かに闇に潜む。ゴブリンは……周囲を見回すものの気づかない。あくまでも型通りの巡回といったところ。そのまま灯りとともにゴブリンは離れていく。
「巡回が途絶えると不審がられる可能性があるから、今はまだ回避していった方がいいですね」
「確かに、その通りだな」
水月の言葉にフェイルが警戒を解く。
「……救援に来た人間がいるとは思っていないのかもな。警戒が薄い気がする」
頭が回るゴブリンだと思ったが、まだまだ甘いなと紫苑が息をつく。
こうしてハンターたちは途中途中で出会う巡回を躱しながら一つの家にたどり着く。
「村長の家。村だと一番大きい家だから、ここなら人が一番集められるだろう、ね」
子供が
「一部のゴブリンが離れました。巡回に行ったみたいです。後は見張りだけです。それでは……」
「お任せあれ」
隠の徒を使用した水月が戻ってきた。周辺の確認を行っていたのだ。その水月からの言葉で、ルンルンが生命感知を使用する。
「中に複数の生体反応と……そこから少し離れていくつか。多分これが見張りのゴブリンじゃないでしょうか」
「複数の生体反応……それが人質だね」
「もう少し詳しい位置をお願い」
ルンルンに問うまよい。それにより指示された場所を一瞥したのち、意識を集中させる。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ」
まよいがドリームメイズを使用。神秘的な迷路の幻影が描き出され、ゴブリンたちは幻影に包まれる。
「……動きが止まりました。うまくいったようです」
ルンルンの言葉に頷くまよい。だが、まだ作戦は始まったばかりだ。
「後は順番に、寝首を掻いてもらおうかな」
物音でも立てて起こさないように、ハンターたちは静かに扉を開け、中に入る。中には武器を枕に眠りこけるゴブリンと、同様に眠り込んでいた子供たちの姿があった。頬には涙の後も見える。時間も遅いわけだし、泣きつかれて眠ってしまったといったところだろうか。
「とりあえず……鎖の杭」
眠るゴブリンの口元を抑えながら紫苑は敵の動きを拘束する鎖の杭を使用。突然のことに驚き目を覚ますゴブリンだが、体も動かず声も出せない。
「仕留めておくか。別に生かす必要もない」
そう言ってシオンはゴブリンを奥に引っ張っていく。
「とりあえず、子供は無事みたいだしよかった……」
「むむ、ニンジャセンサーに感有り。哨戒が一匹戻ってきてます」
子供たちの無事を確認し安堵する水月。だがそれもつかの間のこと。ルンルンの声に皆が身構える。
「やぁ、お子様ず。寒いのはもうちっと我慢してね?」
入口に視線を向けながらも、小夜は眠る子供に手を添え小さくつぶやいた。
「声を出されたら……」
入り込んできゴブリンに対し、扉近くに潜伏していた鈴蘭が飛びつく。声を出す暇もなく口元を抑えられる。
「子供が起きちゃうからね」
同時に、一瞬閃きスパーク。エレクトリックショックだ。体を痙攣させたゴブリンはそのまま声を上げることなく絶命する。
「……ここが拠点のような扱いなのかもしれないな」
戻ってくるゴブリンの存在からそう考えるフェイル。そう考えるとここに村人を集め匿っていくのは正しいのだろうか。
「でも、寝ている子を起こして他の場所にってのもね」
小夜の言葉通り、そちらの方がリスキーであるように思える。やはり当初の予定通りに事を運ぶべきだろう。
●
一匹のゴブリンが歩いている。勘のいいゴブリンだ。何か、村に異変が起こっていることに気づいた。だが、気づいたやつが先に死ぬのが世の倣いだ。
足元に影が落ちた、そう思った時には、のど元をレイピアで突き刺されていた。断末魔の声をあげようとする……も、それは口元を抑えられ止められる。そのままレイピアによって切り裂かれ、絶命する。
動かなくなったゴブリンを見下ろしたフェイルは、そのまま速やかに物陰へ死体を移動する。
(夜だから血痕は見えない。それは良いとして血の匂いはどうにもならないか)
それでも、多少なり発覚を遅らせるために死体を隠そうということなのだろうが、果たしてその必要があるのかどうか。こうしている間にも各所で戦闘が始まっているのだから。
「さっきと同じ手順でいいよね?」
「問題無しです。よろしくお願いしますー」
水月からの了解が取れたところで、まよいは闇の中鋭く目を凝らしながら、再度ドリームメイズを使用。見張りを眠らせる。
「それでは、一体ずつ、確実に」
眠ったことを確認した水月は速やかにゴブリンに近づくと、口を押さえながら地面に押し付ける。触れた瞬間にゴブリンは目を覚ましてしまったが、関係ない。のど元に超重刀を押し込み、貫く。
「……オッケーです。中に入りましょう」
家に入ると、おびえた様子の村人がいた。中にはゴブリンはいないようだ。
「お静かに。子供たちはもう救出してますよ」
村人が何かを言う前に、それを制する水月。少し落ち着きを取り戻した様子の大人たちに、他の大人がどこにいるか確認を取る。
「これでドリームメイズは打ち止め。とりあえず私はこの人たちを連れてくね」
「僕は他の救出へ。道中気を付けてくださいね」
まよいと水月は軽く打合せると、すぐに行動へと移った。
「もう大丈夫ですよ」
別の家では鈴蘭がケイとともに人質を奪還したところだった。先ほどと同様、口をふさいでからのエレクトリックショックで見張りは速やかに倒されていた。
「……裏口から出たほうがいいわね」
これから人質を連れ出そうというところで、ケイが鈴蘭に言う。何者かの気配。状況的に味方ではないだろう。
「倒しますか?」
「護衛を優先しましょう。連れて行ってもらえる? ここは抑えるわ」
そういって手裏剣を構えるケイ。鈴蘭に連れられて人質の大人が出ていくのと、ゴブリンが踏み込んでくるのはほぼ同時。
「あらあらごめんなさい? 邪魔しないで頂戴ね?」
だが、その動きはタイミングよく放たれた、手裏剣により制される。
痛みに悲鳴を上げ、逃げようとするゴブリン。そうはさせまいと、ケイは銀飛輪を用いた制圧射撃で足を止めさせる。
「声、出さないでほしいのよね」
ケイは回り込むと、そのまま喉を狙い高加速射撃を使用しつつ手裏剣を投擲。今度は声も上げられない。さらに胸や目など、急所を乱れうちとどめを刺す。
「まぁ、さすがにバレるわよね」
松明の明かりが動き回っているのが闇の中でも見えた。
「こんばんは、首狩り兎です! サイレント首狩り失礼しますっ」
言葉と同時に、迫るゴブリンを画竜点睛にてたたき切る小夜。その後ろには逃げてきた人質と鈴蘭の姿があった。
「助かりました」
「なんのなんの……さ、反撃開始だっ!」
集まってくるゴブリンたちを前に、小夜は再度刀を納めマテリアルを練る。
「南無阿弥陀仏」
別方向から近づいてきたゴブリンはルンルンが仕留めた。ある程度接近すれば生命感知に引っかかるため、場所はよくわかる。喉元に刀を突きさし、そのまま掻き切り叫び声も上げさせない。
「このまま迎え撃ちましょう」
「そうだな。家に入られる前に仕留めたい……」
そう言って紫苑も太刀を抜く。
「……血なまぐさいものを子供のそばに置いておきたくないからな」
最初にゴブリンを始末したときも、わざわざ子供たちから離れたところに引っ張っていった紫苑。それらは子供たちに対する気遣いからくるものだった。
そんな紫苑のその言葉に同意するルンルン。こうして、小夜とともに護衛として残っていた2人も、家から離れすぎない程度に迎撃に出る。
「派手に始めましたねー」
その様子を見て水月がつぶやいた。ちょうど、最後の人質を連れて戻ってきたところだった。
●
この依頼で重要だったのは隠密行動だ。
だが、それも人質がいたからこそ。人質を皆救出すれば、依頼はただのゴブリン討伐依頼へと変わる。
「ウィンドスラッシュ!」
まよいが魔法を放ち、一体のゴブリンを風の刃で切り伏せる。
人質を集めた村長の家にゴブリンたちは向かってきている。再度人質を盾に取れれば逆転の目がある。とでも考えているのだろうか。だが、そうはいかない。
「これでも食べて待っていると良いさ……すぐに終わらせてくる」
戦闘が激しくなり目が覚める子供も出てきたが、大人たちがこの場にいたことで泣き叫ぶようなことは無かった。その子供たちにマシュマロを与えてフェイルも戦闘に参加する。
「僕も、あとでお菓子を作ってあげるからさ。おとなしく待っててね」
鈴蘭も子供を気遣いそう告げる。もう頬を涙で濡らす子供たちはいなかった。
「他愛無いわね」
倒れたゴブリンから手裏剣を引き抜くケイ。もう視界内に敵はいなくなっていた。
「ふう……やはり数は多かったが、それだけだったな」
紫苑のいう通り、当初の数は10程度ということだったが、気づけば30程のゴブリンと戦う羽目になっていた。
「ニンジャセンサーには感無し! とりあえずは殲滅できたみたいです」
「……よし、それじゃ村内を捜索ですかね。隠れられても困りますし」
ルンルンが生命感知を解除したところで、水月がそう提案する。どこかに潜伏されていたら後で災いをもたらすことになる。
「このまま何人かでここを護衛して、残りが村を回ればいいかしらね」
「了解。早速行ってくるわね」
ケイの言葉にまよいはじめ各自が動き出した。
「さ、それじゃ約束通りお菓子を……そういえば、小夜さんは?」
「ん? さっきまでいたと思ったけどな……村を回ってるんだろう」
鈴蘭の疑問に、紫苑がそう答えた。
「…………」
当の小夜はというと……家の屋根に上っていた。その表情は戦いが終わって弛緩……してはいない。むしろ、今までで最大の緊張感を持っている。
(立ち向かってくる敵だけのはずがない……きっと逃げる敵がいる)
そう考えていた小夜は、闇の中を見据える。見えるだろうか。いや、例え見えなくても五感をフルに使い見つけなければならない。
「……いた」
瞬間、小夜は抜刀。窮地を脱したと気を緩ませたゴブリンは、空間を切り裂く斬撃により、両断された。
「ヴォーパルバニーは貫きて尚も貫かん」
納刀とともに小夜は大きく息を吐いた。
「……出る幕は、無かったか」
その様子を陰で見ていたフェイルは、そう呟いた。
こうして、夜が明ける。ゴブリンに制圧された村はハンターたちの活躍により、一夜にして取り戻されたのだった。
依頼結果
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作戦相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/11/10 12:34:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/07 10:43:34 |